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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069886
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】微粒化装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 19/06 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
B02C19/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180162
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】常本 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】村山 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】東城 裕一
(72)【発明者】
【氏名】森岡 勇樹
【テーマコード(参考)】
4D067
【Fターム(参考)】
4D067CA01
4D067CA06
4D067CA08
4D067GA20
(57)【要約】
【課題】高速噴射による剪断力や衝撃力による一次的な微粒化と、回転ノズルを用いた圧壊力及び摩擦力による二次的な微粒化を連続して行う微粒化装置を提供する。
【解決手段】微粒化装置は、原料Mを供給する給液ポンプPと、給液ポンプPから供給された原料Mを加圧する増圧機3と、加圧された原料Mをフィルタ処理する高圧フィルタ4と、フィルタ処理された原料Mを噴射する噴射チャンバー5であって、原料Mを噴射する噴流ノズル10と、噴流ノズル10と連結される回転ノズル11であって、噴流ノズル10から噴射された原料Mを衝突させる複数の硬質体11cを内部に有する粉砕室11bを有する回転ノズル11と、を有する噴射チャンバー5と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を供給する給液ポンプと、
前記給液ポンプから供給された前記原料を加圧する増圧機と、
加圧された前記原料をフィルタ処理する高圧フィルタと、
フィルタ処理された前記原料を噴射する噴射チャンバーであって、
前記原料を噴射する噴流ノズルと、
前記噴流ノズルと連結される回転ノズルであって、前記噴流ノズルから噴射された前記原料を衝突させる複数の硬質体を内部に有する粉砕室を有する回転ノズルと、
を有する噴射チャンバーと、
を有する微粒化装置。
【請求項2】
流速調整源から供給される流体を前記粉砕室に導入する流速調整部を更に有する、
請求項1に記載の微粒化装置。
【請求項3】
前記粉砕室は、円形状の断面を有する、
請求項1または2に記載の微粒化装置。
【請求項4】
前記硬質体は、球体、または、円柱体である、
請求項1~3のいずれかに記載の微粒化装置。
【請求項5】
前記粉砕室は、内部表面に、凹凸部を有する、
請求項1~4のいずれかに記載の微粒化装置。
【請求項6】
前記回転ノズルは、処理後の前記原料を排出する排出口と連結され、
前記回転ノズルと前記排出口の間に配置されるフィルタを有する、
請求項1~5のいずれかに記載の微粒化装置。
【請求項7】
前記粉砕室は、粉砕室用上側部材と、粉砕室用下側部材で構成される、
請求項1~6のいずれかに記載の微粒化装置。
【請求項8】
前記噴射チャンバーは、第1の噴射チャンバーと、第2の噴射チャンバーと、を有し、
前記第1の噴射チャンバーと前記第2の噴射チャンバーは、それぞれ、前記原料の供給および停止を切り換える導入側開閉弁と排出側開閉弁とを有する、
請求項1~7のいずれかに記載の微粒化装置。
【請求項9】
前記第1の噴射チャンバーを通る第1の流路と、
前記第2の噴射チャンバーを通る第2の流路と、
前記第1の流路または前記第2の流路の少なくとも一方を循環させる循環流路と、
を更に有する、請求項8に記載の微粒化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流ノズルから高圧噴射により原料を一次的に微粒化した後、回転ノズルにおいて二次的に微粒化を行う微粒化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原料を高圧噴射する際の衝撃を利用し、原料を微粒化する微粒化装置が知られている。また、原料の微粒化や作業効率化を図るために、湿式ジェットミルとビーズミルとを複合化させた複合型の微粒化装置や、歯を有する回転体に原料を衝突させる微粒化装置が知られている。
【0003】
特許第3686528号公報(以下、「特許文献1」)に記載の流体衝突装置は、硬質体への衝突力を利用する。特許文献1の流体衝突装置では、チャンバー内に偏心状態で回転可能に支承された硬質球体に、噴射ノズルから噴射された高圧流体を衝突させる。そして、ボールを回転させて衝撃をボールの回転で逃がしながら微粒化処理を行う。
【0004】
特許第5628228号公報(以下、「特許文献2」)に記載の微粒化装置は、原料粒子を微粒化する際、湿式粉砕(ジェットミル、ホモジナイザー)と、ビーズミルやボールミルの粉砕、分散処理を複合化させる。
【0005】
特開2011-50913号公報(以下、「特許文献3」)に記載の微粒化装置は、外縁に歯を有し高速回転する回転体と、原料粒子と液体とをプレミキシングした混合液を回転体の接近する歯に向けて噴射するノズルとを有する。そして、混合液を回転体の歯に衝突させて、液体内に分散している原料粒子を微粒化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3には、湿式粉砕(ジェットミル、ホモジナイザー)と、ビーズミルやボールミルの粉砕、分散処理を複合化する各装置の粉砕力を向上させるものではない。そのため、メンテナンス費用を含む各装置の費用が高額となり、各装置を連結するための制御や工程が複雑となる。また、各装置の作業時間や作業スペースが必要となる。
【0007】
本発明は、高速噴射による剪断力や衝撃力による一次的な微粒化と、回転ノズルを用いた圧壊力および摩擦力による二次的な微粒化を連続して行う微粒化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、
原料を供給する給液ポンプと、
前記給液ポンプから供給された前記原料を加圧する増圧機と、
加圧された前記原料をフィルタ処理する高圧フィルタと、
フィルタ処理された前記原料を噴射する噴射チャンバーであって、
前記原料を噴射する噴流ノズルと、
前記噴流ノズルと連結される回転ノズルであって、前記噴流ノズルから噴射された前記原料を衝突させる複数の硬質体を内部に有する粉砕室(11b)を有する回転ノズルと、
を有する噴射チャンバーと、
を有する微粒化装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の微粒化装置によれば、高速噴射による剪断力や衝撃力による一次的な微粒化と、回転ノズルを用いた圧壊力および摩擦力による二次的な微粒化を連続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の微粒化装置の構成図
図2】実施形態の噴射チャンバーの上面断面図
図3】別の実施形態の噴射チャンバーの上面断面図
図4】別の実施形態の噴射チャンバーの上面断面図
図5】(a)実施形態の粉砕室内部の概要図、(b)実施形態の粉砕室内部の断面図、(c)別の実施形態の粉砕室内部の概要図、(d)別の実施形態の粉砕室内部の断面形状図、(e)別の実施形態の粉砕室の概要図、(f)別の実施形態の粉砕室の概要図、(g)別の実施形態の粉砕室内部の断面図
図6】(a)実施形態の噴射チャンバーの斜視図、(b)実施形態の噴射チャンバーの側面断面図
図7】実施形態の噴流ノズルの側面断面図
図8】別の実施形態の微粒化装置の概要図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の微粒化装置1は、処理対象の原料Mの粉砕、分散、乳化等を行う。微粒化装置1は、原料タンク2と、給液ポンプPと、増圧機3と、高圧フィルタ4と、噴射チャンバー5と、熱交換器6と、排出口7と、を有する。
【0013】
原料タンク2は、原料Mを貯留する。原料タンク2の形状や大きさは、原料Mの物性(酸性、アルカリ性)や分量等を考慮して変更できる。
給液ポンプPは、原料タンク2から供給される原料Mを増圧機3に供給する。
【0014】
増圧機3は、ピストンの往復によって、加圧室内の圧力を上昇または下降させる。これにより、増圧機3は、微粒化装置1内を通過する流体の圧力を10~300MPaの範囲内で加圧する。
高圧フィルタ4は、増圧機3で加圧された原料Mに混在する粗大粒子や不純物等のコンタミを取り除く。
【0015】
図2図4に示すように、噴射チャンバー5は、高圧フィルタ4で粗大粒子や不純物等のコンタミが取り除かれた原料Mを噴流ノズル10から噴射する。これにより、噴射チャンバー5は、原料Mを一次的に微粒化する。
【0016】
熱交換器6は、微粒化処理後の原料Mの温度が適温になるように温度を調整する。多くの原料Mは、高温になり過ぎると、物性に悪影響を及ぼすことがある。そのため、原料Mの温度を5~35℃で調整することが望ましい。
【0017】
排出口7は、噴射チャンバー5で処理された原料Mを排出する。原料Mを1回だけ処理する場合は、排出口7から排出された原料Mを回収タンク(不図示)に溜める。原料Mを複数回処理する場合は、排出口7から排出された原料Mを噴射チャンバー5に戻し、再度、微粒化処理を施した後に、排出口7から排出された原料Mを回収タンク(不図示)に溜める。
【0018】
図2図4を参照して、噴射チャンバー5(5A、5B、5C)の詳細について説明する。噴射チャンバー5は、噴流ノズル10と回転ノズル11とを有する。噴流ノズル10は、噴流ノズルチップ10aを有する。噴流ノズル10は、原料Mを噴流ノズルチップ10aに通過させることで、原料Mを一次的に微粒化する。
噴射チャンバー5は、複数の噴流ノズル10を有してもよい。噴流ノズル10Aと噴流ノズル10Bは、同一の構造を有してもよい。噴流ノズルチップ10Aaと噴流ノズルチップ10Baは、同一の構造を有してもよい。増圧機3から供給される原料Mを複数の噴流ノズル10に分岐させて導入してもよい。複数の噴流ノズル10を利用することによって、原料Mの微粒化処理量を増やすことができる。
【0019】
回転ノズル11は、噴流ノズル10で一次的に微粒化された原料Mを二次的に微粒化する。回転ノズル11は、本体11aと、粉砕室11bと、硬質体11cと、導入路11dと吐出口11fと、を有する。
本体11aは、回転ノズル11の基台である。粉砕室11bは、本体11aの内部に配置される。本体11aは、原料Mを微粒化するための噴射チャンバー5の土台でもある。
【0020】
粉砕室11bは、原料Mを二次的に微粒化する。粉砕室11bは、本体11aに形成される粉砕空間である。粉砕室11bは、円形状の断面を有する。粉砕室11bは、硬質体11cの直径と同程度の大きさの断面を有する。粉砕室11b内に原料Mが供給され、複数の硬質体11cが粉砕室11b内を移動し続けることで、原料Mを微粒化できる。
【0021】
例えば、図5(a)、(b)に示すように、円環状の粉砕室11b内に、複数の硬質体(球体)11cが収容される。球体11cの直径は、粉砕室11bの断面の直径よりも小さい。円形状の断面を有する円環状の粉砕室11bにより、球体11cが粉砕室11bの内部を回転しやすくなる。そして、球体11cが粉砕室11bの内部を回転するときに、球体11cと粉砕室11bの隙間で原料Mをすり潰す。なお、粉砕室11bの断面は、円形だけでなく、楕円でもよい。球体11cは、球面を有する。球体11cが粉砕室11b内を回転する際に、球体11cも回転することで、球体11cの球面の位置が360度回転する。そのため、原料Mが常に異なる箇所ですり潰され、原料Mの接触回数が増える。これにより、噴流によって一時的に微粒化した原料Mに、粗粉砕のエネルギーを付加することで二次的な微粒化を行うことができる。
【0022】
別の粉砕室11bの例として、図5(c)、(d)に示すように、粉砕室11bは、多角形状(正方形、長方形等)の断面を有してもよい。そして、粉砕室11bの内部に、複数の硬質体(円筒体)11cdが収容されてもよい。円筒体11cdの高さおよび幅は、粉砕室11bの断面の高さおよび幅よりも小さい。多角形状の断面を有する円環状の粉砕室11bにより、円筒体11cdが粉砕室11bの内部を回転しやすくなる。そして、円筒体11cdが粉砕室11bの内部を回転するときに、円筒体11cdと粉砕室11bの隙間で原料Mをすり潰す。円筒体11cdは、上面と下面が円形であり、側面が円柱状である。円筒体11cdが粉砕室11bを回転する際に、円筒体11cdが粉砕室11b内をスライドしながら移動する。そのため、円筒体11cdの側面と粉砕室11bとの間において、原料Mのすり潰し量を確保できる。これにより、噴流によって一時的に微粒化した原料Mに、すり潰しのエネルギーを付加することで二次的な微粒化を行うことができる。
【0023】
別の粉砕室11bの例として、図5(e)に示すように、粉砕室11bの内部表面に凹凸部11hを形成してもよい。これにより、原料Mをよりすり潰すことができる。なお、凹凸部11hは、凹凸状の溝に限られず、ディンプル形状や面荒らし形状でもよい。凹状の凹凸部11hの場合、凹凸部11hは、硬質体11cが嵌らないような微細な溝深さや幅を有するものであればよい。凸状の凹凸部11hの場合、凹凸部11hは、硬質体11cが粉砕室11b内を通過できる高さを有するものであればよい。凹凸部11hの凹凸に原料Mが出入りすることで、粉砕室11b内における硬質体11cの回転を利用した摩擦だけでなく、より複雑な影響を原料Mに付加することで、二次的な微粒化を促進できる。
【0024】
別の粉砕室11bの例として、図5(f)に示すように、粉砕室11bをらせん状にしてもよい。これにより、球体11cの動きが不規則になり、粉砕室11bの内部の特定の部位に原料Mや球体11cが留まるのを抑制できる。粉砕室11bをらせん状にすることで、粉砕室11bが捻じれた形状を有する。捻じれた箇所では、原料Mの流速が他の箇所よりも低くなる傾向があり、一時的に原料Mや球体11cが留まる。一方、粉砕室11b内では、他の原料Mや球体11cが回転しており、留まった原料Mや球体11cが押し出されるタイミングで、より強い流れを生み出すことができる。そのため、微粒化できずに粉砕室11b内に残ってしまう原料Mを減らすことができる。
【0025】
別の粉砕室11bの例として、図5(g)に示すように、粉砕室11bを曲線形にしてもよい。これにより、球体11cの動きが不規則になり、粉砕室11bの内部の特定の部位に原料Mや球体11cが留まるのを抑制できる。粉砕室11bを曲線形にすることで、粉砕室11bが捻じれた形状を有する。捻じれた箇所では、原料Mの流速が他の箇所よりも低くなる傾向があり、一時的に原料Mや球体11cが留まる。一方、粉砕室11b内では、他の原料Mや球体11cが回転しており、留まった原料Mや球体11cが押し出されるタイミングで、より強い流れを生み出すことができる。そのため、微粒化できずに粉砕室11b内に残ってしまう原料Mを減らすことができる。
【0026】
硬質体11cは、原料Mの粒径を微粒化する。硬質体11cは、粉砕室11b内を移動可能な大きさを有する。硬質体5cは、例えば、図5(a)に示す球体や、図5(c)に示す円柱体である。また、硬質体5cは、図4に示すビーズのような微細な球体でも良い。硬質体5cの大きさは、0.1~20mm、より好ましくは、0.5~10mmである。粗大粒子や不純物等のコンタミの混入を最小限に留めるために、硬質体11cの材質は、樹脂やセラミックであることが望ましい。
【0027】
導入路11dは、噴流ノズル10から噴射される原料Mを回転ノズル11内に導入する。導入路11dは、本体11a内に形成される。導入路11dの径、長さ、偏心量等は、規定値としてもよいし、適宜変更できる構造としてもよい。例えば、導入路11dの径が小さければ、噴流ノズル10から導入される原料Mが絞り出されることになり、微粒化が促進される。導入路11dの長さが短ければ、球体11cに衝突する距離が短くなる。そのため、球体11cに衝突することによる粉砕エネルギーが高まり、微粒化が促進される。また、球体11cに衝突する距離が短ければ、球体11cの損傷を緩和するために、偏心量を調整できる。
【0028】
吐出口11fが流路11iに対して垂直であることにより、原料Mが単に通過するのを防ぎ、安定的に原料Mが排出される。流路11iの径は、吐出口11fと同じであることが望ましいが、吐出口11fよりも大きくても、小さくてもよい。流路11iと粉砕室11bの接続部において、原料Mと接触する可能性や、接続部に対する応力集中等がある場合には、流路11iと粉砕室11bの接続部を円弧状にしたり、欠け部を形成したりしてもよい。流路11iと吐出口11fの接続部においても同様に、流路11iと吐出口11fの接続部を円弧状にしたり、欠け部を形成したりしてもよい。
【0029】
吐出口11fは、粉砕室11b内で処理された原料Mを吐出する。図2図4に示すように、粉砕室11bの内側に、吐出口11fに繋がる流路11iが形成される。粉砕室11b内で処理された原料Mは、吐出口11fから吐出される。開閉部(不図示)により、事前またはリアルタイムで調整する時間間隔で、処理後の原料Mの吐出量を調整してもよい。
【0030】
なお、図4に示すビーズ11ccを用いる場合、回転ノズル11は、ビーズ用フィルタ11gを有してもよい。ビーズ用フィルタ11gは、処理後の原料Mと一緒にビーズ11ccが吐出することを防ぐ。ビーズ用フィルタ11gは、例えば、ビーズ11ccの粒径よりも小さいメッシュ構造のフィルタである。
【0031】
回転ノズル11は、流速調整源Fから供給される流体Wを粉砕室11bに導入する流速調整部12を有する。噴流ノズル10と同様に、流速調整部12は、例えば、ノズルチップやオリフィス形状の部材である。なお、流速調整部12は、粉砕室11b内の硬質体11cの循環回転を促すためのものであり、噴流ノズル10のような粉砕力は不要である。流速調整部12は、噴流ノズル10よりも低圧で流体Wを内部に導入する。
【0032】
微粒化装置1は、第1の流速調整部12Aと、第2の流速調整部12Bとを有してもよい。これにより、1か所からの流体Wを導入する場合に比べて、粉砕室11b内における硬質体11cの移動量が多くなる。そのため、硬質体11cが粉砕室11b内をより多く回転し、原料Mへの粉砕が促進される。この場合、第1の流速調整部12Aから第1の調整路11eaを介して、流体Wを粉砕室11b内に導入するとともに、第2の流速調整部12Bから第2の調整路11ebを介して、流体Wを粉砕室11b内に導入する。これにより、流速を加速させることができる。また、第1の流速調整部12Aと第2の流速調整部12Bのいずれかを一時的に停止するように制御してもよい。これにより、粉砕室11b内における回転数がランダムとなり、原料Mの処理方法を変えることができる。
【0033】
流速調整部12から供給される流体Wの量は、原料Mの処理に影響しない範囲である。原料Mによっては、原料Mの濃度が重要になるものもある。その場合、ビーズ用フィルタ11gを用いて、原料Mの濃度を調整してもよい。具体的には、ビーズ用フィルタ11gに濃度センサー等を付加し、制御装置13によって原料Mにおける最適な濃度を判定する。そして、制御装置13は、最適な濃度の下限以下にならないように、処理後の原料Mを排出する。
例えば、ビーズ用フィルタ11gに形成されるメッシュ径を調整することで、粉砕室11b内における原料Mおよび流体Wの量を絞ることで、最終的に排出される原料Mの濃度が低下しないようにする。その他、メッシュを2枚、3枚構造として、制御装置13の指示に基づいて、メッシュの重なり方を調整することにより、原料Mの排出量を調整してもよい。
【0034】
ビーズ用フィルタ11gにより、濃度だけでなく、圧力を調整してもよい。ビーズ用フィルタ11gの開閉を制御装置13によって制御することで、粉砕室11b内における原料Mと流体Wの量を調整できる。そのため、流体Wの追加によって、圧力の低下を防ぐことができる。
【0035】
また、ビーズ用フィルタ11gの開閉を切り換えることによって、粉砕室11b内からの原料Mの排出を止めるとともに、噴流ノズル10からの原料Mの供給を止めた状態で回転ノズル11を稼動させてもよい。これにより、粉砕室11b内における二次的な微粒化のみを繰り返すことができる。
【0036】
ビーズ用フィルタ11gおよび流路11iの位置を調整してもよい。粉砕室11bから排出される原料Mは、粉砕室11b内の硬質体11cによって二次的な微粒化がなされる。ここで、粉砕室11bによって、最適な排出位置が異なる場合もある。そのため、ビーズ用フィルタ11gおよび流路11iの位置を調整することで、原料Mに対する最適な微粒化を施すことができる。
【0037】
次に、噴流ノズル10のみ、図2に示す第1の噴射チャンバー5A、図3に示す第2の噴射チャンバー5B、図4に示す第3の噴射チャンバー5Cの処理性能について、検証試験結果を説明する。噴流ノズル10のみ、第1の噴射チャンバー5A、第2の噴射チャンバー5B、第3の噴射チャンバー5Cに対して、それぞれ、原料Mの対象、供給量、圧力、速度、処理回数等を同条件として、性能評価実施した。
【0038】
その結果、噴流ノズル10のみによる微粒化に比べて、第1の噴射チャンバー5A、第2の噴射チャンバー5B、第3の噴射チャンバー5Cは、初期段階(10パスまで)における微粒化性能が高いことが判明した。これは、噴流による一次的な微粒化だけなく、硬質体11cへの衝突等による二次的な微粒化が加わったためと考えられる。初期段階(10パス)における微粒化の性能は、第1の噴射チャンバー5A、第2の噴射チャンバー5B、第3の噴射チャンバー5Cの順に微粒化に効果があった。
【0039】
図6(a)は、噴射チャンバー5の斜視図である。図6(b)は、噴射チャンバー5の側面断面図である。図6(b)に示すように、粉砕室10bは、回転ノズル11の本体11a内に一体に形成される。なお、粉砕室用上側部材30aと粉砕室用下側部材30bを連結することで、粉砕室10bを形成してもよい。粉砕室用上側部材30aと粉砕室用下側部材30bは、対になり、円環状の粉砕室10bを形成する。粉砕室用上側部材30aと粉砕室用下側部材30bは、それぞれ、上面断面視で半円弧状、側面断面視で半円状の溝を有する。粉砕室用上側部材30aと粉砕室用下側部材30bは、連結具(不図示)で連結される。連結具は、粉砕室用上側部材30aと粉砕室用下側部材30b自体に埋め込むものや、外側から連結するもの等であればよい。
【0040】
図7に示すように、噴流ノズル10の変形例として、スリットノズルと呼ばれる第2の噴流ノズル20を利用してもよい。第2の噴流ノズル20は、導水ノズル21と、上流ノズル22と、下流ノズル23と、荷重受けノズル24とを有する。上流ノズル22と下流ノズル23には、それぞれ溝または貫通孔が片面または両面に形成される。溝は、縦方向又は横方向に延びる。貫通孔は、横方向に延びる。溝または貫通孔に原料Mを通過させることで、段差状の狭い領域で原料Mを微粒化する。第2の噴流ノズル20は、噴流ノズル10よりも原料Mの衝突箇所が多いため、乳化等のより細かな処理を実現できる。
【0041】
別の実施形態として、図8に示すように、微粒化装置1は、1つのシステム内において、複数の噴射チャンバー5を有してもよい。具体的には、微粒化装置1は、図2に示す第1の噴射チャンバー5Aと、図3に示す第2の噴射チャンバー5Bと、図4に示す第3の噴射チャンバー5Cとを有する。
【0042】
第1の噴射チャンバー5Aは、噴流ノズルチップ10aを有する噴流ノズル10と複数の硬質体(球体)11cを粉砕室11bに配置する回転ノズル11とを有する。
第2の噴射チャンバー5Bは、噴流ノズルチップ10aを有する噴流ノズル10と複数の硬質体(球体)11cbを粉砕室11bに配置する回転ノズル11とを有する。ここで、球体11cbは、第1の噴射チャンバー5Aの球体11cよりも小さい。
第3の噴射チャンバー5Cは、噴流ノズルチップ10aを有する噴流ノズル10と複数の硬質体(ビーズ)11ccを粉砕室11bに配置する回転ノズル11とを有する。ここで、ビーズ11ccは、第2の噴射チャンバー5Bの球体11cbよりも小さい。
微粒化装置1が、径や大きさの異なる硬質体11cを有する回転ノズル11を有する複数の噴射チャンバー5を有することにより、原料Mに応じて最適な形態の噴射チャンバー5を選択できる。
【0043】
微粒化装置1は、複数の噴射チャンバー5に原料Mの供給および停止を切り換える導入側開閉弁8および排出側開閉弁9を有する。これにより、原料Mの処理の切換を最適化できる。導入側開閉弁8は、噴射チャンバー5の上流に配置され、原料Mの供給および停止を上流で切り換える。排出側開閉弁9は、噴射チャンバー5の下流に配置され、原料Mの供給および停止を下流で切り換える。
【0044】
図8に示すように、微粒化装置1は、第1の流路L1と、第2の流路L2と、第3の流路L3と、循環流路L4とを有してもよい。第1の流路L1は、第1の噴射チャンバー5Aを通る。第2の流路L2は、第2の噴射チャンバー5Bを通る。第3の流路L3は、第3の噴射チャンバー5Cを通る。循環流路L4は、第1~第3の流路L1~L3の少なくとも一つを循環させる。これにより、複数回の微粒化処理を施す場合に、原料Mを循環させることで、微粒化を促進できる。
【0045】
別の形態としては、微粒化装置1は、同じ噴射チャンバー5を複数(例えば、3箇所)有してもよい。稼動中に1つのチャンバーが故障したとしても、別のチャンバーは稼動状態とし、処理作業を止める必要がない。
【0046】
微粒化装置1は、微粒化装置1の稼動を制御する制御装置13を有してもよい。制御装置13は、原料タンク2からの原料Mの供給量、給液ポンプPの回転数や原料Mの供給量、増圧機3の往復移動数や加圧圧力、流速調整源Fの流体Wの供給量、圧力や速度、導入側開閉弁8と排出側開閉弁9の開閉等を制御する。
【0047】
以下、本実施形態の微粒化装置1における微粒化処理手順について説明する。
まず、原料タンク2内に処理対象となる原料Mを投入し、スラリー状に調整する。次に、原料タンク2内の原料Mが、給液ポンプPによって、増圧機3に供給される。供給された原料Mは、増圧機3によって加圧される。加圧された原料Mは、高圧フィルタ4を通った後、噴射チャンバー5に供給され、噴射される。なお、この処理を複数回繰り返してもよい。
【0048】
ここで、噴射チャンバー5内の微粒化処理の手順を詳細に説明する。
まず、噴流ノズル10から粉砕室11b内に配置される球体11cに向けて原料Mを衝突させる。これにより、粒子の分散と同時に、粉砕室11b内に流体の流れが生じる。複数の球体11cが粉砕室11b内に配置されていることによって、複数の球体11cや粉砕室11b内の内壁で原料Mがさらに粉砕される。
【0049】
なお、原料Mと球体11cの流れが十分ではない場合、流速調整源Fから供給される流体Wを流速調整部12から粉砕室11b内に供給することで、流体の流れを適正化できる。
【0050】
また、図8に示す第1~第3の噴射チャンバー5A~5Cのように、複数系統の流路により、複雑な処理に対応できるようにしてもよい。
【0051】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 微粒化装置
2 原料タンク
3 増圧機
4 高圧フィルタ
5 噴射チャンバー
6 熱交換器
7 排出口
8 導入側開閉弁
9 排出側開閉弁
10 噴流ノズル
11 回転ノズル
12 流速調整部
13 制御装置
20 第2の噴流ノズル
21 導水ノズル
22 上流ノズル
23 下流ノズル
24 荷重受けノズル
P 給液ポンプ
F 流速調整源
L1 第1の流路
L2 第2の流路
L3 第3の流路
L4 循環流路
M 原料

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8