(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069892
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】昇降機作業者後方支援システム及び昇降機作業者後方支援方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20240515BHJP
G06F 11/07 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B66B5/00 G
G06F11/07 193
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180172
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 陽介
(72)【発明者】
【氏名】金井 昌洙
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一朗
【テーマコード(参考)】
3F304
5B042
【Fターム(参考)】
3F304BA26
3F304ED16
5B042JJ02
5B042KK15
5B042KK17
5B042MA08
5B042MA09
5B042MC40
(57)【要約】
【課題】現場で昇降機について作業中の保守員からの問い合わせに迅速に後方支援が行えるようにする。
【解決手段】昇降機の作業者が保持する保全作業用端末と、作業者からの保全作業に関する問い合わせに応答する支援センタとを備える。保全作業用端末は、昇降機の作業スケジュール及び昇降機の保全作業を指示するアプリケーションプログラムを記憶する。支援センタは、作業者と通話が可能な後方支援者端末を備える。作業者から支援センタに通話用呼び出しがあるとき、作業スケジュールとログに適合した後方支援者端末を選択して通話できる状態に接続し、接続した後方支援者端末に、該当する作業者の保全作業用端末から送信された作業スケジュールとログ又はログの解析結果を表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機の作業者が保持する保全作業用端末と、前記作業者からの保全作業に関する問い合わせに応答する支援センタとを備える昇降機作業者後方支援システムであって、
前記保全作業用端末は、
前記昇降機の作業スケジュール及び前記昇降機の保全作業を指示するアプリケーションプログラムを記憶する端末側記憶部と、
前記アプリケーションプログラムを実行する処理部と、
前記支援センタとの通信を行う外部通信部と、を備え、
前記支援センタは、
前記保全作業用端末から送信された作業スケジュールとアプリケーションプログラムのログを受信するセンタ側通信部と、
前記センタ側通信部が受信した作業スケジュールとログを記憶するセンタ側記憶部と、
前記作業者が保持した通話用端末又は前記保全作業用端末と通話が可能な後方支援者端末と、を備え、
前記通話用端末又は前記保全作業用端末から前記支援センタに通話用呼び出しがあるとき、前記センタ側記憶部が記憶した作業スケジュールとログに適合した前記後方支援者端末を選択して通話できる状態に接続し、接続した前記後方支援者端末に、該当する作業者の前記保全作業用端末から送信されて前記センタ側記憶部が記憶した作業スケジュールとログ又はログの解析結果を表示する
昇降機作業者後方支援システム。
【請求項2】
前記保全作業用端末の処理部は、前記アプリケーションプログラムの実行により前記昇降機の故障原因が特定できない場合に、前記支援センタに作業スケジュールとログを送信する
請求項1に記載の昇降機作業者後方支援システム。
【請求項3】
前記保全作業用端末は、前記アプリケーションプログラムの前記処理部での実行により、作業スケジュールとログの前記支援センタへの送信後に、前記支援センタを呼び出すボタンを表示部が表示し、表示したボタンの選択で、前記支援センタに通話用呼び出しを行う
請求項1に記載の昇降機作業者後方支援システム。
【請求項4】
前記支援センタは、前記通話用端末又は前記保全作業用端末からの通話用呼び出し時に、発信端末の電話番号を識別して前記作業者を特定し、特定した作業者の前記保全作業用端末から送信された作業スケジュールとログを、センタ側記憶部から取り出して、選択された前記後方支援者端末に表示させる
請求項3に記載の昇降機作業者後方支援システム。
【請求項5】
昇降機の作業者が保持する保全作業用端末と、前記作業者からの保全作業に関する問い合わせに応答する支援センタとを備えるシステムで、昇降機作業者の後方支援を行う昇降機作業者後方支援方法であって、
前記保全作業用端末は、
前記昇降機の作業スケジュール及び前記昇降機の保全作業を指示するアプリケーションプログラムを記憶すると共に、前記支援センタに作業スケジュールとアプリケーションプログラムのログを送信する送信処理を行い、
前記支援センタは、
前記保全作業用端末から送信された作業スケジュールとアプリケーションプログラムのログを受信して記憶する記憶処理を行い、
前記作業者が保持した通話用端末又は前記保全作業用端末から、前記支援センタに通話用呼び出しがあるとき、前記記憶処理で記憶された作業スケジュールとログに適合した後方支援者端末を選択して通話できる状態に接続する後方支援者端末選択処理と、
接続した前記後方支援者端末に、該当する作業者の前記保全作業用端末から送信されて前記記憶処理で記憶された作業スケジュールとログ又はログの解析結果を表示する表示処理と、を行う
昇降機作業者後方支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機作業者後方支援システム及び昇降機作業者後方支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降機の保守においては、種々の原因によって故障や障害が発生し、保守員による修理や部品交換などのメンテナンスが必要になる。ここで、故障や障害に対応した保守員の知識や経験だけでは故障や障害の解決が難しい場合、後方支援者へ電話で支援を要請することがある。
昇降機の保守員から支援を要請された後方支援者は、保守員から、昇降機の故障状態や、支援要請時点での調査内容など、支援に必要な現地情報を聞き出す必要があるが、全て口頭で聞き出すと、情報の伝達に時間を要するため、故障や障害に対して迅速な解決ができない場合がある。
【0003】
特許文献1には、コンピュータ機器等のシステムの保守時に、保守対象のログ情報をサーバに送信し、サーバが受信したログを解析した後、問題への対処方法を作業者の端末へ送信することで、口頭でのやり取りを省略し、故障や障害に対する迅速な解決を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、保守対象のログ情報をサーバに送信するようにした場合、サーバには機器の稼働状況を示す多数のログ情報が送信されるため、サーバは、受信した多数のログ情報を解析する必要が生じる。したがって、サーバは、ログの解析に時間を要してしまうことになって、現場の保守員が必要な情報を迅速に得ることが困難になる。また、現場の作業者は、必ずしも障害復旧の作業全般の情報が必要なのではなく、その場の状況に応じた問題への対処方法を求めているのであり、ログの解析による自動応答では適切な情報が得られない場合もある。
【0006】
また、昇降機は、機種や設置環境などの相違によって、障害復旧の方法が異なる場合が多々あり、後方支援を行うそれぞれの技術者も、担当する機種が決まっている。このため、後方支援者が待機したセンタに保守員が電話したとしても、センタ側の電話受付者が、作業中の機種や故障の状況などを聞いて、適切な後方支援者に保守員からの電話を転送する必要があった。したがって、従来の方法では、保守員が復旧作業中の機種の障害復旧の支援が可能な後方支援者に電話が繋がるまでに、時間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、現場で昇降機について作業中の保守員からの問い合わせに迅速に支援が可能な障害発生時昇降機作業者後方支援システム及び昇降機作業者後方支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、昇降機の作業者が保持する保全作業用端末と、作業者からの保全作業に関する問い合わせに応答する支援センタとを備える昇降機作業者後方支援システムである。
ここで、保全作業用端末は、昇降機の作業スケジュール及び昇降機の保全作業を指示するアプリケーションプログラムを記憶する端末側記憶部と、アプリケーションプログラムを実行する処理部と、支援センタとの通信を行う端末側通信部と、を備える。
支援センタは、保全作業用端末から送信された作業スケジュールとアプリケーションプログラムのログを受信するセンタ側通信部と、センタ側通信部が受信した作業スケジュールとログを記憶するセンタ側記憶部と、作業者が保持した通話用端末又は保全作業用端末と通話が可能な後方支援者端末と、を備える。
そして、通話用端末又は保全作業用端末から支援センタに通話用呼び出しがあるとき、センタ側記憶部が記憶した作業スケジュールとログに適合した後方支援者端末を選択して通話できる状態に接続し、接続した後方支援者端末に、該当する作業者の保全作業用端末から送信されてセンタ側記憶部が記憶した作業スケジュールとログ又はログの解析結果を表示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、昇降機の故障や障害発生時に、故障や障害の対応を行う作業者が、後方支援者へ問い合わせる場合において、後方支援者による短時間で効率的な支援が可能になる。したがって、昇降機の故障や障害対応にかかる時間を短縮することができるという効果を有する。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態例による障害発生時昇降機作業者後方支援システムによる支援処理の概略を示す図である。
【
図2】本発明の一実施の形態例による障害発生時昇降機作業者後方支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施の形態例による障害発生時昇降機作業者後方支援システムの作業関連情報ファイルの例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施の形態例による保全作業と支援処理の例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施の形態例による問い合わせ時のボタン画面の例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施の形態例による問い合わせ操作画面の例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施の形態例による問い合わせ時の後方支援者の端末の画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)による障害発生時昇降機作業者後方支援システム及び昇降機作業者後方支援方法を、添付図面を参照して説明する。
【0012】
[障害発生時昇降機作業者後方支援システムの概略]
図1を参照して、本例の障害発生時昇降機作業者後方支援システムの概略を説明する。
本例の障害発生時昇降機作業者後方支援システムは、昇降機(エレベーター)11が設置された現場10で、修理や点検などの保全作業を行う作業者aが、作業に何らかの支障が生じた場合に、問い合わせ窓口である支援センタ20に電話で問い合わせを行うものである。
【0013】
作業者aは、所持したノート型コンピュータ端末やタブレット端末などで構成される保全作業用端末100を、昇降機11の制御盤12に有線又は無線で接続して、昇降機11や制御盤12の状態を確認しながら、保全作業を行う。保全作業用端末100には、予め昇降機の保全作業を支援するアプリケーションプログラムが実装され、作業者aは、そのアプリケーションプログラムの指示に基づいて作業を実行する。なお、アプリケーションプログラムには、作業者aが行う保全作業のスケジュールも含まれている。
【0014】
保全作業の問い合わせ窓口である支援センタ20は、作業者aが所属する会社に用意され、保全作業を支援するアプリケーションプログラムや、保全作業用端末100から伝送されたログのデータを記憶する記憶部22が、支援センタ20内のネットワーク21に接続されている。記憶部22は、後述する処理で作業者aのログやスケジュールを記憶している。
また、支援センタ20のネットワーク21には、後方支援者が操作する後方支援者端末200が接続されている。作業者aが所持するスマートフォンなどの通話用端末190は、支援センタ20に電話の発信を行うことで後方支援者端末200に繋がり、後方支援者は、後方支援者端末200を通して作業者aと通話を行うことができる。
支援センタ20には、複数台の後方支援者端末200が用意されており、それぞれの後方支援者端末200に割り当てられた後方支援者が、電話をした作業者aに対して、特定の機種や作業内容を支援するようになっている。
【0015】
すなわち、作業者aが通話用端末190で支援センタ20に電話した際に、支援センタ20は、記憶部22に記憶された該当する作業者aのスケジュールやログに基づいて、適切な後方支援者端末200を選択する。そして、後方支援者は、その選択された後方支援者端末200で作業者aからの電話に応答する。
なお、後方支援者が後方支援者端末200で通話応答する際には、後方支援者は、後方支援者端末200で、作業者aのスケジュールやログなどの作業関連情報ファイルを開封して、後方支援者端末200の画面に作業関連情報を表示するようにする。この作業関連情報としては、作業者aのスケジュールやログの他に、ログの解析結果も表示してもよい。
【0016】
これにより、後方支援者は、画面上の作業関連情報を見ながら、作業者aが作業中の昇降機11の状態を確認して、作業時に必要な適切なアドバイスを行うことができる。例えば、後方支援者は、修理が必要と思われる箇所や、交換が必要と思われる部品などを作業者aに対して指示することが可能になる。
【0017】
[昇降機作業者後方支援システムの構成]
次に、
図2を参照して、本例の昇降機作業者後方支援システムの具体的な構成を説明する。
本例の昇降機作業者後方支援システムは、昇降機(エレベーター)11の保全作業を行う作業者aが所持する保全作業用端末100と、作業者aが所持する通話用端末190と、支援センタ20とで構成される。なお、保全作業用端末100に通話機能を持たせて、保全作業用端末100が通話用端末190を兼ねるようにしてもよい。
【0018】
昇降機11は、昇降機11の動作を制御する制御盤12と、昇降機11の状態を監視する遠隔監視装置13とを備える。作業者aによる保全作業時には、作業者aは、保全作業用端末100に、遠隔監視装置13が監視した稼働情報や故障検出情報を読み出すことができる。
【0019】
ノート型コンピュータ装置やタブレット端末などで構成される保全作業用端末100は、機器接続部111、処理部112、通信部113、表示部114、操作部115、及び記憶部120を備える。
機器接続部111は、接続したケーブルによる通信又は近距離無線通信で、昇降機11の遠隔監視装置13から稼働情報や故障検出情報を取得する。取得した稼働情報や故障検出情報は、処理部112を経由して記憶部120に送られ、記憶される。
【0020】
処理部112は、記憶部120に保持された昇降機用アプリケーションプログラム121や遠隔監視装置用アプリケーションプログラム122を実行して、遠隔監視装置13からの情報読み出しや、昇降機11の保全作業の支援などを実行する。
通信部113は、インターネットなどを経由して、支援センタ20のセンタ側通信部23と通信を行う。また、通信部113は、通話用端末190との通信を行う。なお、通信部113は、通話用端末190を経由してセンタ側通信部23と通信を行うようにしてもよい。
表示部114は、処理部112での各アプリケーションプログラムの実行に基づいた保全作業の支援情報などを表示する。
操作部115は、作業者aの操作により、保全作業の開始、終了、及び作業の進捗状況などを登録する。
【0021】
記憶部(端末側記憶部)120には、昇降機用アプリケーションプログラム121や遠隔監視装置用アプリケーションプログラム122の他に、アプリ操作ログ123、通信ログ124、ユーザ情報125、作業スケジュール126、作業関連情報127などが記憶される。
昇降機用アプリケーションプログラム121は、昇降機11に設置された機器の動作測定や異常検出を行うアプリケーション群である。
遠隔監視装置用アプリケーションプログラム122は、遠隔監視装置13を操作して昇降機11のデータを得ることができるアプリケーション群である。
【0022】
アプリ操作ログ123は、昇降機用アプリケーションプログラム121や遠隔監視装置用アプリケーションプログラム122の操作履歴である。
通信ログ124は、昇降機11と保全作業用端末100間の通信の履歴である。
ユーザ情報125は、この端末を所持した作業者に付与された作業者番号などである。
作業スケジュール126は、この端末を所持した作業者aの作業スケジュールである。作業スケジュール126には、作業者aの識別番号、作業者aが作業を行う昇降機(現場)の情報、作業内容などが含まれ、作業開始前に予め登録されている。
なお、作業関連情報127については、
図3で後述する。
【0023】
スマートフォンなどで構成される通話用端末190は、通信部191、処理部192、通話部193、表示部194、及び操作部195を備える。
通信部191は、電話回線などを介して外部と通信を行う。支援センタ20への通話も、通信部191を介して行われる。
処理部192は、通話のための通信などの処理や、表示部194での表示のための処理を行う。また、処理部192は、保全作業用端末100からの指示に基づいて、通話などの通信も行う。
通話部193は、通話用端末190に内蔵されたスピーカやマイクロフォンを使用した通話の処理を行う。
表示部194は、発信先などの通話に関連した表示を行う。
操作部195は、作業者aの操作を受け付ける。
なお、通話用端末190は、保全作業用端末100の昇降機用アプリケーションプログラム121からの指示に連携して作動し、保全作業用端末100からの指令で、支援センタ20に通話用の発信のための操作画面を表示するようにしている。
【0024】
支援センタ20は、記憶部22、センタ側通信部23、データ処理部24、及び後方支援者端末200を備える。
これらの記憶部22、センタ側通信部23、データ処理部24、及び後方支援者端末200は、支援センタ20内のネットワーク21に接続されている。
記憶部(センタ側記憶部)22は、センタ側通信部23で保全作業用端末100から受信したログなどの情報と、支援作業を行う各作業者の作業スケジュール、各作業者が所持した通話用端末190の電話番号などの情報を保持する。
センタ側通信部23は、保全作業用端末100又は通話用端末190と通信を行う。
データ処理部24は、記憶部22に記憶されたログなどの情報を解析する処理を行う。またデータ処理部24は、支援センタ20への電話着信時に、後方支援者端末200を選択する処理を行う。
【0025】
後方支援者端末200は、通話用端末190からの電話に応答して通話する機能を備えると共に、記憶部22に記憶された情報やデータ処理部24での解析結果を表示する機能を備え、表示された情報に基づいて、保全作業を行う作業者aの支援を行う。
【0026】
[作業関連情報ファイルの例]
図3は、保全作業用端末100の記憶部120に記憶される作業関連情報127の一例を示す。
図3に示す一例の作業関連情報127には、作業者aを示すユーザ情報125から得た作業者番号、作業スケジュール126から得た作業現場番号及び作業内容、アプリ操作ログ123から得た使用アプリケーションと操作ログ、及び通信ログ124から得た通信ログが含まれる。
これらの作業関連情報127は、保全作業時に次に説明する手順にて支援センタ20に送信される。
【0027】
[保全作業と支援処理の流れ]
図4は、保全作業を行う作業者aが現場で昇降機11の保全作業を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、対象となる昇降機(エレベーター)11に故障が発生したとする(ステップS11)。これにより、昇降機11の遠隔監視装置13が故障の発生を保全作業用端末100に通知し、不図示の昇降機監視センタからの指示で、昇降機11が設置された現地に、作業者aが出動する(ステップS12)。現地に到着した作業者aは、所持した保全作業用端末100を昇降機11に接続し、故障状態を確認する(ステップS13)。
【0028】
そして、保全作業用端末100は、昇降機用アプリケーションプログラム若しくは遠隔監視装置用アプリケーションプログラムを用いて、処理部112で故障原因の調査を実行する(ステップS14)。ステップS14における処理部112による故障原因の調査で、保全作業用端末100は、故障原因が特定できたか否かを判断する(ステップS15)。
【0029】
ステップS15で故障原因が特定できた場合(ステップS15のYES)、保全作業用端末100は、表示部114が特定した故障原因を表示し、作業者は、表示された故障原因の修理や部品交換を実施する(ステップS16)。この作業の完了後、作業者は昇降機が正常に動作することを確認して、作業を終了する(ステップS17)。ここまでは、支援センタ20による後方支援が行われないで、作業が完了した場合である。
【0030】
次に、後方支援が必要な場合の手順について説明する。ステップS15で故障原因が特定できない場合(ステップS15のNO)、保全作業用端末100は、作業者のスケジュールとアプリケーションプログラムの操作ログを、定められたフォーマットのデータにする処理を行う(ステップS21)。このフォーマット化する処理は、例えば昇降機用アプリケーションプログラムに基づいて行われる。
フォーマット化されたデータは、保全作業用端末100から支援センタ20の記憶部120に記憶された後で、データ処理部24において解析される(ステップS22)。そして、ステップS22における解析結果に基づいて、作業者aは、事故原因とその対処方法などを判断する。なお、ステップS22における解析時には、過去の類似した事例のデータを参照したり、データ処理部24で学習した結果を利用したりしてもよい。
【0031】
その後、作業者aは、通話用端末190を用いて支援センタ20に電話連絡を行い、支援センタ20は、通話用端末190の発信番号に基づいて作業者を特定するとともに、データ処理部24の解析結果に基づいて、適切な後方支援者端末200を選定する(ステップS23:後方支援者端末選択処理)。そして、支援センタ20は、後方支援者端末200の表示画面に作業関連情報を表示する。
なお、適切な後方支援者とは、作業者が保全作業中の機種の昇降機11について熟知した後方支援者である。
そして、選択処理で選ばれた後方支援者端末200に関わる後方支援者は、作業者aの通話用端末190に電話連絡を行い、後方支援者端末200で電話に応答した後方支援者は、画面に表示された昇降機11の事故に対する対処方法を作業者aに伝達する(ステップS23)。
【0032】
なお、上記説明では、昇降機11の事故に対する対処方法がデータ処理部24で解析できた場合の例を示したが、データ処理部24で対処方法が特定できない場合でも、後方支援者端末200で作業者aからの電話に応答している後方支援者は、昇降機の状態や操作ログに基づいて、事故に対する対処を推定してアドバイスすることも可能である。
【0033】
この後方支援者との通話を終えた作業者aは、後方支援者のアドバイスに基づいて、ステップS16の修理や部品交換を行い、終了完了後にステップS17での動作確認を行って作業を終了する。
【0034】
[各端末の表示例]
次に、各端末における表示例を説明する。
図5は、保全作業用端末100で昇降機11の保全作業実行時の、作業者aによる入力画面の例を示す。
図5に示すように、画面の左側に文字(アルファベット)や数字の入力ボタンが表示され、画面の右側にモード、セット、リセット、OKなどの入力を補助するボタンが表示される。また、画面の上側に、入力した文字や数字の表示箇所が表示される。
作業者aは、この入力画面で、操作状況を示すコードなどを保全作業用端末100に入力する。この
図5に示す画面で入力された操作ログは、
図4のフローチャートのステップS22で説明したように、支援センタ20側に送信される。
【0035】
図6は、
図4のフローチャートのステップS23で、通話用端末190の表示部194に表示される、支援センタ20に通話用発信を行う画面の例を示す。
図6に示す画面では、「テクニカルサポートセンターに問い合わせます」の文字と、OKボタン及びキャンセル(Cancel)ボタンが表示される。作業者aがOKボタンをタッチすることで、通話用端末190で支援センタ20への通話用発信が行われる。なお、この通話用発信を行う画面は、保全作業用端末100に表示されるようにしてもよい。
【0036】
図7は、通話用端末190で支援センタ20に通話した際に、後方支援者端末200に表示される画面の例を示す。
図7に示すように、後方支援者端末200には、作業者名、作業現場、作業内容、使用アプリケーションプログラム、操作履歴情報、通信履歴情報などが表示される。また、
図7には示していないが、データ処理部24における解析により、故障原因や交換部品名などが判別した場合には、それらを同じ画面上に表示するようにしてもよい。
【0037】
[本実施の形態例による効果]
以上説明したように、本例によると、昇降機11の保全作業を行う作業者aは、所持した保全作業用端末100で故障原因がわからない場合には、自動的に操作ログなどの作業関連情報が支援センタ20に送信され、通話用端末190で支援センタ20への発信を行うことができる。そして、その発信を受けた支援センタ20では、自動的に作業中の昇降機11の支援に適した後方支援者端末200に電話が繋がり、その後方支援者端末200からの通話により、作業内容の支援が行われるようになる。
この場合、通話直前に送信された、後方支援者端末200からの作業関連情報やその情報の解析結果が表示されるので、後方支援者は、現在の昇降機11の作業状態を把握しながら、適切に作業者aの支援ができるようになる。
【0038】
したがって、従来のように、支援センタ20側で作業者aからの受けた電話から、適切な後方支援者を選ぶ作業が不要になり、作業者aは、自動で適切な後方支援者に繋がって、迅速にアドバイスが受けられるようになる。また、後方支援者端末200では、通話直前に送信された作業関連情報やその情報の解析結果が表示されるため、後方支援者端末200側で作業者が作業中の昇降機の状態を検索する作業も不要になり、後方支援者による支援も迅速に行えるようになる。
【0039】
また、本例のシステムでは、保全作業用端末100の処理部112は、
図4のフローチャートのステップS15に示したように、アプリケーションプログラムの実行により昇降機の故障原因が特定できない場合でも、支援センタ20に作業スケジュールとログを送信することで、後方支援者端末200側では、作業内容に問題がないかを判断できるようになる。これにより、後方支援者は、作業者aによる実際の作業内容を見ながら、適切な支援を行うことができる。例えば、後方支援者は、操作ログを見て、操作手順に間違いがないかなどを判断することも可能になる。
【0040】
また、本例のシステムでは、
図6に示すように、支援センタ20に対して、作業スケジュールとログの送信後に、支援センタ20を呼び出すボタンを表示部194に表示し、表示されたボタンを選択することにより、支援センタ20に通話用呼び出しを行うようにした。これにより、支援センタ20への通話が、画面操作により簡単に行うことができるようになったため、作業者の負担を大きく軽減することができるようになった。
【0041】
さらに、本例のシステムでは、支援センタ20は、通話用端末190又は保全作業用端末100(以下、「発信端末」)からの通話用呼び出し時に、発信端末の電話番号を識別して作業者aを特定することができる。このため、特定された作業者aの発信端末から送信された作業スケジュールとログを、記憶部22から取り出して、選択された後方支援者端末200に表示させることができるので、後方支援者端末200を操作している後方支援者は、昇降機11の状態などを直ちに判断できるようになり、迅速な後方支援が可能になる。
【0042】
[変形例]
なお、ここまで説明した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上述した実施の形態例で説明した構成や処理は、各種の変形や変更が可能である。
【0043】
例えば、上述した実施の形態例では、作業者aは保全作業用端末100と通話用端末190を所持するようにしたが、保全作業用端末100に通話機能を持たせて、保全作業用端末100が直接、支援センタ20に通話するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態例では、保全作業用端末100からのデータ送信に続いて、通話用端末190で発信用のボタンを表示するようにしたが、通話用端末190又は保全作業用端末100からの発信については、作業者が手動で行ってもよい。逆に、このような発信用のボタンを表示することなく、通話用端末190が自動的に発信するようにしてもよい。
【0044】
さらに、保全作業用端末100からのデータ送信は、保全作業用端末100内のアプリケーションプログラムの実行で、故障原因が特定できない場合に行うようにした。これに対して、保全作業用端末100からのデータ送信は、例えば作業開始からの時間が、基準となる作業時間を経過した場合や、何らかのトラブルを検知した場合などの、通常の保全作業と異なる状況を検知した場合に自動的に行うようにしてもよい。
【0045】
また、
図1に示す構成では、保全作業用端末100は、本例の処理を行うアプリケーションプログラムを内蔵したものとしたが、既存の保全作業用端末に実装されたプログラムを修正して、同様の処理を行うようにしてもよい。
この場合のプログラムについては、外部のメモリ、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置いて、転送してもよい。
さらに、本例の処理をアプリケーションプログラムで行う代わりに、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0046】
また、
図2に示す構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。また、
図4に示すフローチャートについても、処理結果が同じであれば、処理順序を変更してもよいし、複数の処理を同時に実行してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…現場、11…昇降機、12…制御盤、13…遠隔監視装置、20…支援センタ、21…ネットワーク、22…記憶部、23…センタ側通信部、24…データ処理部、100…保全作業用端末、111…機器接続部、112…処理部、113…通信部、114…表示部、115…操作部、120…記憶部、121…昇降機用アプリケーションプログラム、122…遠隔監視装置用アプリケーションプログラム、123…アプリケーションプログラム操作ログ、124…通信ログ、125…ユーザ情報、126…作業スケジュール、127…作業関連情報、190…通話用端末、191…通信部、192…処理部、193…通話部、194…表示部、195…操作部、200…後方支援者端末