(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069902
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20240515BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20240515BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180190
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松原 渉吾
(72)【発明者】
【氏名】吉見 朋晃
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC06
5H605DD01
5H605EC01
5H605EC05
5H605EC08
5H605EC13
5H605EC20
5H611BB01
5H611BB04
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】温度変化による変形を抑制可能な駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置は、モータ80と、ECU10と、を備える。モータ80は、モータフレーム840を有する。ECU10は、少なくとも1枚の基板31、32、および、内部に基板31、32を収容し、モータフレーム840に固定されるコネクタハウジング50を有する。コネクタハウジング50は、モータフレーム840とは異なる材料でコネクタ55と一体に形成されており、コネクタハウジング50の本体よりも線膨張率が小さい材料で形成される変形防止部材71が設けられている。これにより、温度変化によるコネクタハウジング50の変形を抑制することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材(840)を有するモータ(80)と、
少なくとも1枚の基板(31、32)、および、内部に前記基板を収容し、前記ケース部材に固定されるハウジング(50、150)を有する制御ユニット(10)と、
を備え、
前記ハウジングは、前記ケース部材とは異なる材料でコネクタ(55)と一体に形成されており、当該ハウジングの本体よりも線膨張率が小さい材料で形成される変形防止部材(71~79)が設けられている駆動装置。
【請求項2】
前記変形防止部材(71、74、77)は、前記ハウジングに埋め込まれている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記変形防止部材には、孔部(713)が形成されている請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記変形防止部材には、溝部(715)が形成されている請求項2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記変形防止部材(72、75、78)は、前記ハウジングの外側に取り付けられている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記変形防止部材(73、76、79)は、前記ハウジングの内側に取り付けられている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、天板部(51)、および、筒部(52)を有し、前記筒部の先端が前記ケース部材に固定されており、
前記変形防止部材(71~73)は、前記天板部に設けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、天板部(51)、および、筒部(52)を有し、前記筒部の先端が前記ケース部材に固定されており、
前記変形防止部材(74~77)は、前記筒部に設けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記ハウジングは、天板部(51)、および、筒部(52)を有し、前記筒部の先端が前記ケース部材に固定されており、
前記変形防止部材(76~79)は、前記天板部および前記筒部に設けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを駆動する駆動装置が知られている。例えば特許文献1の駆動装置は、モータの駆動を制御する制御ユニットが、モータの軸方向の一方側に一体に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、コネクタ部とカバーとが別体で形成されている。ここで、例えば樹脂等でコネクタとカバーとを一体に形成してモータに組み付け、温度変化の大きい箇所に搭載した場合、線膨張率の違いにより、コネクタ側が変形する虞がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度変化による変形を抑制可能な駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置は、モータ(80)と、制御ユニット(10)と、を備える。モータは、ケース部材(840)を有する。制御ユニットは、少なくとも1枚の基板(31、32)、および、内部に基板を収容し、ケース部材に固定されるハウジング(50、150)を有する。ハウジングは、ケース部材とは異なる材料でコネクタ(55)と一体に形成されており、当該ハウジングの本体よりも線膨張率が小さい材料で形成される変形防止部材(71~79)が設けられている。これにより、温度変化によるハウジングの変形を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態によるステアリングシステムを示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態による駆動装置を示す一部切欠断面図である。
【
図5】第1実施形態による変形防止部材およびモジューラ側基板を示す平面図である。
【
図6】第1実施形態の変形防止部材に形成される孔部の形状を示す模式図である。
【
図7】第1実施形態の変形防止部材に形成される溝部を説明する模式図である。
【
図8】第2実施形態によるECUを示す断面図である。
【
図9】第2実施形態によるECUを示す断面図である。
【
図10】第3実施形態によるコネクタハウジングを示す断面図である。
【
図11】第4実施形態によるコネクタハウジングを示す断面図である。
【
図12】第5実施形態によるコネクタハウジングを示す断面図である。
【
図13】第5実施形態による変形防止部材を示す平面図である。
【
図14】第6実施形態によるコネクタハウジングを示す断面図である。
【
図15】第7実施形態によるコネクタハウジングを示す断面図である。
【
図16】第8実施形態によるコネクタハウジングを示す断面図である。
【
図17】第9実施形態によるコネクタハウジングを示す断面図である。
【
図18】第10実施形態によるコネクタハウジングを示す断面図である。
【
図19】他の実施形態によるECUを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明による駆動装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態による駆動装置を
図1~
図7に示す。
図1に示すように、駆動装置1は、モータ80と、制御ユニットとしてのECU10とを備え、車両のステアリング操作を補助するための操舵装置である電動パワーステアリング装置8に適用される。
図1は、電動パワーステアリング装置8を備えるステアリングシステム90の全体構成を示すものである。ステアリングシステム90は、操舵部材であるステアリングホイール91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98、および、電動パワーステアリング装置8等を備える。
【0010】
ステアリングホイール91は、ステアリングシャフト92と接続される。ステアリングシャフト92には、操舵トルクを検出するトルクセンサ93が設けられる。ステアリングシャフト92の先端には、ピニオンギア96が設けられる。ピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には、タイロッド等を介して一対の車輪98が連結される。
【0011】
運転者がステアリングホイール91を回転させると、ステアリングホイール91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によってラック軸97の直線運動に変換される。一対の車輪98は、ラック軸97の変位量に応じた角度に操舵される。
【0012】
ECU10には、コネクタ55が設けられている。コネクタ55には、車両系コネクタ56、および、信号系コネクタ57が含まれる。車両系コネクタ56は、車両電源5および車両通信網6と接続される。本実施形態の車両通信網6は、CAN(Controller Area Network)であるが、CAN以外のものであってもよい。図中、車両通信網6を「CAN」と記載した。本実施形態の車両系コネクタ56は、電源およびグランドと接続されるパワー系コネクタと通信系コネクタとが一体になった一体型のハイブリッドコネクタである。信号系コネクタ57は、トルクセンサ93と接続される。本実施形態では、車両系コネクタ56と信号系コネクタ57とは、間口が異なるコネクタとして構成されている。
【0013】
電動パワーステアリング装置8は、駆動装置1、および、モータ80の回転を減速してラック軸97に伝える動力伝達部としての減速ギア89等を備える。本実施形態の電動パワーステアリング装置8は、所謂「ラックアシストタイプ」であるが、モータ80の回転をステアリングシャフト92に伝える所謂「コラムアシストタイプ」等としてもよい。
【0014】
モータ80は3相ブラシレスモータである。モータ80は、操舵に要するトルクの一部または全部を出力するものであって、車両電源5から電力が供給されることで駆動され、減速ギア89を正逆回転させる。
【0015】
図2に示すように、駆動装置1は、モータ80の軸方向の一方側にECU10が一体的に設けられており、いわゆる「機電一体型」である。ECU10は、モータ80の出力軸とは反対側において、シャフト870の軸Axに対して同軸に配置されている。ここで、「同軸」とは、例えば組み付けや設計に係る誤差やズレは許容されるものとする。以下、モータ80の軸方向を駆動装置1の軸方向とみなし、単に「軸方向」とする。
【0016】
モータ80は、モータケース830、モータフレーム840、ステータ860、ロータ865、および、モータ巻線880等を有する。ステータ860は、モータケース830に固定されており、モータ巻線880が巻回される。モータ巻線880は、2系統の3相巻線から構成されている。
【0017】
ロータ865は、ステータ860の径方向内側に設けられ、ステータ860に対して相対回転可能に設けられる。ロータ865は、ロータコア866および複数の永久磁石867が設けられている。複数の永久磁石867は、ロータコア866の外側に設けられている。
【0018】
シャフト870は、ロータ865に嵌入され、ロータ865と一体に回転する。シャフト870は、軸受871、872により、モータケース830およびモータフレーム840に回転可能に支持される。ECU10によりモータ巻線880への通電が制御されることで、ステータ860に回転磁界が形成される。ロータ856は、ステータ860に形成される回転磁界により、シャフト870を軸として回転する。
【0019】
シャフト870のECU10側の端部は、モータフレーム840に形成される軸孔849に挿通され、ECU10側に露出する。シャフト870のECU10側の端部には、マグネット875が設けられる。また、モータフレーム840には、リード線挿通孔が形成され、モータ巻線880の各相と接続されるリード線881がECU10側に取り出される。
【0020】
モータケース830は、底部831および筒部832からなる略有底筒状に形成され、開口側にECU10が設けられる。底部831には、軸受871が設けられる。筒部832には、ステータ860が固定される。筒部832の開口側端部には、段差部833を介して板厚の薄い溝形成壁834が形成されている。
【0021】
モータフレーム840は、例えばアルミ合金等の金属で形成されており、フレーム部841、フランジ部842、および、ヒートシンク845等を有する。フレーム部841は、モータケース830の筒部832の内側に圧入されている。フランジ部842は、フレーム部841の外周に形成され、モータケース830の段差部833に当接する。フレーム部841の外壁、フランジ部842のECU10側の面、および、モータケース830の溝形成壁834の内壁によって区画された環状空間は、シール溝843であって、接着材が充填される。
【0022】
図2~
図4に示すように、ECU10は、ECU基板31、モジューラ側基板32、基板間接続端子ユニット35、および、コネクタハウジング50等を有する。
図4に示すように、ECU基板31は、ネジ等の固定部材319により、モータフレーム840に固定される。ECU基板31には、モータ80の駆動制御に係るインバータを構成するスイッチング素子、マイコンやASIC等の制御部品が実装され、外周側にて、リード線881と接続される。
【0023】
ECU基板31のモータ80側の面には、スイッチング素子、および、回転角センサ等の電子部品が実装される。ECU基板31のモータ80側の面に実装される各種電子部品は、モータフレーム840に放熱可能に設けられていてもよい。ECU基板31のモータ80と反対側の面には、アルミ電解コンデンサ等の比較的大型の部品が実装されている。
【0024】
モジューラ側基板32は、ECU基板31のモータ80と反対側に配置され、フィルタ回路を構成するチョークコイルやコンデンサ、通信ドライバ等の部品が実装されている。基板31、32は、基板間接続端子ユニット35により接続されている。
【0025】
基板間接続端子ユニット35は、基板間接続端子351、および、端子バインダ355を有する。基板間接続端子351は、一端側がECU基板31に接続され、他端側がモジューラ側基板32に接続される。基板間接続端子351は、コネクタ端子58よりも径方向外側の領域にて、基板31、32間を接続する。基板31、32の接続は、電気的導通が取れるものであればよく、基板対基板(BtoB)コネクタやピンヘッダ等を用いることができる。
【0026】
端子バインダ355は、樹脂等にて環状に形成されており、複数の基板間接続端子351の中間部分を保持する。これにより、複数の基板間接続端子351の相対的な位置精度が確保される。端子バインダ355は、環状に限らず、複数に分割されていてもよい。
【0027】
コネクタハウジング50は、略有底筒状に形成され、内部に基板31、32等を収容する。コネクタハウジング50は、天板部51、筒部52およびコネクタ55を有し、樹脂等で一体に形成されている。本実施形態のコネクタハウジング50は、コネクタ55が一体に形成されたモジューラコネクタとなっている。本実施形態では、コネクタハウジング50は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)で形成されている。
【0028】
筒部52の開口側の先端には、軸方向に突出する凸部53が環状に形成されている。凸部53は、シール溝843に挿入される。また、凸部53の内周側の荷重受部531がモータフレーム840の段差部844に当接する。これにより、コネクタハウジング50は、モータフレーム840に固定される。
【0029】
天板部51には、間口がモータ80と反対側を向くように、コネクタ55が設けられている。
図3に示すように、車両系コネクタ56および信号系コネクタ57は、冗長的に2組設けられている。
【0030】
電源用端子581は、車両系コネクタ56に設けられ、車両電源5の正極と接続される電源端子、および、グランドと接続されるグランド端子が含まれる。通信端子582は、車両系コネクタ56に設けられ、車両通信網6と接続される。センサ端子583は、信号系コネクタ57に設けられ、トルクセンサ93と接続される。以下、模式図等でコネクタの区別が不要である場合、単に「コネクタ55」とし、端子の区別が不要である場合、電源用端子581、通信端子582およびセンサ端子583をまとめて「コネクタ端子58」とする。
【0031】
図4に示すように、コネクタ端子ユニット59は、コネクタ端子58、および、コネクタ端子バインダ595を有し、コネクタ55の間口ごとに設けられている。コネクタ端子58は、一端側がモジューラ側基板32に接続され、他端側がコネクタ55の間口側に露出している。コネクタ端子バインダ595は、樹脂等にて形成されており、複数のコネクタ端子58の中間部分を保持する。これにより、間口毎に設けられる複数のコネクタ端子58の相対的な位置精度が確保される。また、コネクタ端子バインダ595は、複数のコネクタ間口に対応するように跨がって設けられていてもよい。
【0032】
コネクタハウジング50の天板部51のコネクタ55と対応する箇所には、バインダ収容室511が形成されている。バインダ収容室551は、コネクタ55の間口よりも大径に形成されており、モータ80側に開口している。コネクタ端子バインダ595は、バインダ収容室551に配置される。
【0033】
コネクタハウジング50は、基板31、32およびコネクタ端子ユニット59等がモータフレーム840に組み付けられた状態にて、モータ80の反対側から被せるようにして組み付けられる。ここで、コネクタ55にハーネスが挿着された状態では、コネクタ間口側から水や異物が侵入する虞がないため、コネクタハウジング50とコネクタ端子バインダ595とが接触せず、隙間が空いていても差し支えない。また、例えば弾性変形する爪等を用いたプレスフィット嵌合やレーザ照射等により、コネクタハウジング50とコネクタ端子バインダ595とが接続されるように構成してもよい。コネクタ端子バインダ595を設けることで、組み付け時等に、端子351、58と基板31、32との接続箇所に過大な荷重がかかるのを防ぐことができる。
【0034】
本実施形態の駆動装置1では、金属製のモータフレーム840に樹脂製のコネクタハウジング50が直接的に取り付けられている。また、駆動装置1は、電動パワーステアリング装置8に適用されており、例えばエンジンルーム等の比較的温度変化の大きい箇所に搭載された場合、
図20に示す参考例のコネクタハウジング950では、モータフレーム840と線膨張率が異なるため、温度変化によりコネクタハウジング950が変形する虞がある。コネクタハウジング950が変形すると、端子351、58と基板31、32との接続部や、基板31、32に実装されている電子部品に応力がかかり、接続機能失陥や電子部品の故障等が生じる虞がある。なお、
図20の参考例では、各部材を模式的に示しており、バインダ355、595等の部材の記載を省略した。
【0035】
図4に戻り、本実施形態では、コネクタハウジング50に、変形防止部材71を設けている。変形防止部材71は、コネクタハウジング50よりも線膨張率が小さい素材で形成されている。本実施形態では、変形防止部材71は、鉄やSUS等で形成される金属板であって、天板部51にインサート成形されている。変形防止部材71を天板部51に設けることで、コネクタ55近辺の変形を好適に抑制することができる。
【0036】
図5は、
図4の紙面上方向から見たときの変形防止部材71およびモジューラ側基板32を模式的に示している。変形防止部材71には、コネクタ端子58を挿通可能な貫通穴711が形成されている。貫通穴711は、四角形に限らず、コネクタ端子58を挿通可能であれば、形状や個数は問わない。なお、
図5では、説明の簡単化のため、コネクタ端子58が接続されるモジューラ側基板32の端子孔の1つに「58」を付番した。
【0037】
変形防止部材71として用いられる金属板は、貫通穴711以外の孔部が形成されていない平板であってもよいし、
図6(a)に示すように、パンチングメタルであってもよい。また、図(6)および
図6(c)に示すように、網目状の金属板を変形防止部材71に用いてもよい。すなわち、変形防止部材71には、貫通穴711とは別に、複数の孔部713が設けられていてもよく、孔部713の形状は、丸、四角形、六角形等の多角形等であってもよい。孔部713を形成することで、変形防止部材71をコネクタハウジング50にインサート成形する際、樹脂のまわりがよくなる。また、樹脂と金属との食いつきがよくなるので、変形防止部材71のずれを抑制することができる。
【0038】
また、
図7に示すように、例えば削り加工等により、溝部715を変形防止部材71に形成してもよい。本実施形態の溝部715は、凹部であるが、裏面側に貫通するスリット状であってもよいし、溝に替えて凸状に形成されていてもよい。
図7では、溝部715は、貫通穴711を挟んで両側に形成されているが、溝部715の数や形状、形成位置は問わない。溝部715を形成することでも、樹脂と金属との食いつきがよくなるので、変形防止部材71のずれを抑制することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の駆動装置1は、モータ80と、ECU10と、を備える。モータ80は、モータフレーム840を有する。ECU10は、少なくとも1枚の基板31、32、および、内部に基板31、32を収容し、モータフレーム840に固定されるコネクタハウジング50を有する。
【0040】
コネクタハウジング50は、モータフレーム840とは異なる材料でコネクタ55と一体に形成されている。コネクタハウジング50には、コネクタハウジング50の本体よりも線膨張率が小さい材料で形成される変形防止部材71が設けられている。これにより、温度変化によるコネクタハウジング50の変形が抑制されるので、変形により過大な応力がかかるのを防ぐことができ、端子接続部や電子部品を保護することができる。
【0041】
変形防止部材71は、コネクタハウジング50に埋め込まれている。変形防止部材71をコネクタハウジング50にインサート成形等により埋め込まれた状態とすることで、剥離しても剥落の虞がなく、金属の暴露もないので、変形防止効果を長期的に維持可能である。また、コネクタハウジング50の加工が容易である。
【0042】
変形防止部材71には、孔部713または溝部715が形成されていてもよい。これにより、コネクタハウジング50の本体と変形防止部材71との食いつきがよくなるので、変形防止部材71のズレや剥離を抑制可能である。
【0043】
コネクタハウジング50は、天板部51、および、筒部52を有し、筒部52の先端がモータフレーム840に固定されている。変形防止部材71は、天板部51に設けられている変形防止板である。これにより、コネクタ55の近傍の変形を好適に抑制可能である。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態を
図8および
図9に示す。なお、
図9は、コネクタハウジング150を模式的に示しており、シール溝843に充填される接着材の記載は省略した。第3実施形態以降の断面図についても同様である。
図8に示すように、本実施形態では、コネクタ端子バインダ595が設けられておらず、コネクタ端子58は、コネクタハウジング150にインサート成形されている。また、
図9に示すように、端子バインダ355を省略し、モジューラ側基板32をネジ等の固定部材329により、コネクタハウジング150に固定するようにしてもよい。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
(第3実施形態)
第3実施形態~第10実施形態は、主に変形防止部材が上記実施形態と異なるので、この点を中心に説明する。第3実施形態~第10実施形態では、第1実施形態のコネクタハウジング50を示しているが、第2実施形態のコネクタハウジング150としてもよく、バインダ355、595の有無やモジューラ側基板32の固定位置等は問わない。
【0046】
第3実施形態を
図10に示す。変形防止部材72は、コネクタハウジング50の外側に設けられており、かしめ部512により、天板部51のモータ80と反対側の面に取り付けられている。樹脂カシメにて変形防止部材72を固定することで、コネクタハウジング50の板厚を比較的薄くできるため、駆動装置1の軽量化に寄与する。かしめ部512の位置や個数は適宜設定可能である。後述の実施形態においても同様である。また、変形防止部材72には、コネクタ55が挿通されるコネクタ挿通孔721が形成されている。
【0047】
本実施形態では、変形防止部材71は、コネクタハウジング50の外側に取り付けられている。変形防止部材72を外付けにすることで、コネクタハウジング50をモータ80に組み付けた後に後加工することが可能である。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0048】
(第4実施形態)
第4実施形態を
図11に示す。変形防止部材73は、コネクタハウジング50の内側に設けられており、かしめ部513にて、天板部51のモータ80側の面に取り付けられている。変形防止部材73には、コネクタ端子58が挿通される図示しない端子挿通孔が形成されており、コネクタ端子58との絶縁が確保されている。また、変形防止部材73には、バインダ収容室511や基板固定部等を逃がす逃がし穴等が適宜形成されている。
【0049】
本実施形態では、変形防止部材73は、コネクタハウジング50の内側に取り付けられている。コネクタハウジング50の内部は、密閉空間となるため、変形防止部材73に耐環境用の加工が不要となる。また、放熱ゲルを塗布し、モジューラ側基板32に実装された電子部品を当接させることで、変形防止部材73を放熱板としても機能させることもできる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0050】
(第5実施形態)
第5実施形態を
図12および
図13に示す。
図12および
図13に示すように、本実施形態の変形防止部材74は、円筒形の金属リングであって、筒部52にインサート成形されている。変形防止部材74は、第1実施形態と同様、パンチングメタルや網目状の金属板で形成してもよいし、溝部を形成してもよい。これにより、インサート成形する際、樹脂のまわりがよくなるとともに、樹脂と金属との食いつきがよくなるので、変形防止部材74のずれを抑制することができる。第8実施形態も同様である。
【0051】
本実施形態では、変形防止部材74は、筒部52に設けられている。筒状の変形防止部材74を筒部52に設けることで、側面変形に起因する天板部51の横ずれや、天板部51が持ち上がることでのコネクタ55への負荷を軽減可能である。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0052】
(第6実施形態、第7実施形態)
第6実施形態を
図14、第7実施形態を
図15に示す。
図14に示すように、第6実施形態では、変形防止部材75は、円筒形の金属リングであって、かしめ部522にて、筒部52の径方向外側に取り付けられている。本実施形態では、変形防止部材75は、筒部52の略全体を覆うように軸方向に亘って形成されている。
【0053】
図15に示すように、第7実施形態では、変形防止部材76は、円筒形の金属リングであって、かしめ部523にて、筒部52の径方向内側に取り付けられている。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
(第8実施形態)
第8実施形態を
図16に示す。本実施形態の変形防止部材77は、略有底筒状に形成され、コネクタハウジング50にインサート成形されている。
図16では、変形防止部材77は、天板部51に設けられる部分と、筒部52に設けられる部分とが一体に形成されているが、別体であってもよい。第9実施形態および第10実施形態も同様である。
【0055】
本実施形態では、変形防止部材77は、天板部51および筒部52に設けられている。変形防止部材77を天板部51および筒部52に設けることで、ECU10の内部をモータフレーム840および変形防止部材77で囲んだ状態となるため、変形防止に加え、ECU10の内部への外来ノイズ、および、ECU10からの放出ノイズを低減することができる。すなわち変形防止部材77は、ノイズ遮蔽部材としても機能する。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
(第9実施形態、第10実施形態)
第9実施形態を
図17、第10実施形態を
図18に示す。
図17に示すように、第9実施形態の変形防止部材78は、略有底筒状に形成され、コネクタハウジング50の外側に設けられている。変形防止部材78は、筒部52の径方向外側に設けられるかしめ部524にて、コネクタハウジング50に取り付けられている。また、変形防止部材78には、コネクタ55が挿通されるコネクタ挿通孔781が形成されている。
【0057】
図18に示すように、第10実施形態の変形防止部材79は、略有底筒状に形成され、コネクタハウジング50の内側に設けられている。変形防止部材79は、天板部51のモータ80側に設けられるかしめ部515、および、筒部52の径方向内側に設けられるかしめ部525にて、コネクタハウジング50に取り付けられている。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0058】
実施形態では、ECU10が「制御ユニット」、ECU基板31およびモジューラ側基板32が「基板」、コネクタハウジング50、150が「ハウジング」、モータフレーム840が「ケース部材」に対応する。
【0059】
(他の実施形態)
上記第3実施形態等では、変形防止部材は、樹脂カシメにてコネクタハウジングに取り付けられている。他の実施形態では、変形防止部材は、ねじ等の固定部材を用いてコネクタハウジングに取り付けられていてもよい。例えば、第4実施形態、第7実施形態および第10実施形態のように、変形防止部材がコネクタハウジングの内側に取り付けられており、放熱板としても機能させる場合、金属製の固定部材を放熱パスとしても機能させることができる。また他の実施形態では、変形防止部材は、接着材や加熱圧着によりコネクタハウジングに取り付けられていてもよい。接着材や加熱圧着とすることでも、コネクタハウジングの板厚を薄くできるので、軽量化に寄与する。
【0060】
上記実施形態では、変形防止部材に孔部や溝部を設けてもよい。他の実施形態では、例えば、天板部および筒部に変形防止部材を設ける場合、天板部に設けられる部分と、筒部に設けられる部分とで、孔部や溝部の加工形状が異なっていてもよい。
【0061】
上記実施形態では、変形防止部材は、金属板である。他の実施形態では、変形防止部材は、コネクタハウジング本体よりも線膨張率の低い金属以外の材料(例えばセラミック、ベークライト、繊維強化樹脂)等により形成されていてもよい。また上記実施形態では、変形防止部材は、平板または筒状に形成されている。他の実施形態では、変形防止部材は、コネクタハウジングの形状に応じた任意の形状に形成され、例えば階段状等に形成されていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、コネクタハウジングは、モータフレームに固定されている。他の実施形態では、例えばモータケースの底部がECU側に配置されている場合等、コネクタハウジングがモータケースに固定されていてもよい。この場合、モータケースが「ケース部材」に対応する。
【0063】
上記実施形態では、ECUは、ECU基板およびモジューラ側基板の2枚の基板を有している。他の実施形態では、
図19に示すように、基板は1枚であってもよい。
図19では、第1実施形態のように端子バインダを用いている例を示したが、第2実施形態のように、インサート成形等によりコネクタ端子がコネクタハウジングに保持されていてもよい。また、基板は3枚以上であってもよい。
【0064】
上記実施形態では、コネクタは、系統毎に設けられている。また、車両系コネクタは、パワー系コネクタと通信系コネクタとが一体になった一体型のハイブリッドコネクタである。他の実施形態では、コネクタは、複数系統に共通で設けられていてもよい。また、パワー系コネクタと通信系コネクタとが別体であってもよい。
【0065】
上記実施形態では、コネクタは、軸方向端部に設けられている。他の実施形態では、コネクタは、例えば径方向外側を向いて設けられている、といった具合に、コネクタや端子の数や配置、間口の向き等は、上記実施形態と異なっていてもよい。また、モータ巻線の系統数は2系統に限らず、1系統や3系統以上であってもよい。
【0066】
上記実施形態では、駆動装置は電動パワーステアリング装置に適用される。他の実施形態では、電動パワーステアリング装置以外の車載装置に適用してもよいし、車載以外の装置に適用してもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・駆動装置
10・・・ECU(制御ユニット)
31・・・ECU基板(基板) 32・・・モジューラ側基板(基板)
50、150・・・コネクタハウジング(ハウジング)
71~79・・・変形防止部材
80・・・モータ
840・・・モータフレーム(ケース部材)