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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069922
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】シール材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/22 20060101AFI20240515BHJP
   F16J 15/328 20160101ALI20240515BHJP
   F16K 5/06 20060101ALI20240515BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F16J15/22
F16J15/328
F16K5/06 Z
C09K3/10 M
C09K3/10 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180216
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 洸平
(72)【発明者】
【氏名】井上 広大
【テーマコード(参考)】
3H054
3J043
4H017
【Fターム(参考)】
3H054AA03
3H054BB02
3H054CA32
3H054CE05
3H054GG04
3H054GG14
3J043AA06
3J043BA06
3J043CA10
3J043CA13
3J043CB13
3J043CB14
3J043CB18
3J043DA02
3J043DA11
3J043FB11
4H017AA04
4H017AA29
4H017AB12
4H017AD01
4H017AE05
(57)【要約】
【課題】シール材を、摩耗粉を発生させず、ファイヤーセーフ試験にも耐え得るものにする。
【解決手段】シール材1に、合成樹脂材料によりコーティングされた膨張黒鉛テープ(PTFE特殊処理膨張黒鉛シート3)が少なくとも外周側に位置するように膨張黒鉛テープ2aが渦巻き状又は同心円状に巻き重ねられた膨張黒鉛テープ本体2と、膨張黒鉛テープ本体2の軸方向両面に固定された合成樹脂製リング状シート(PTFEシート4)とを設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料によりコーティングされた膨張黒鉛テープが少なくとも外周側に位置するように膨張黒鉛テープが渦巻き状又は同心円状に巻き重ねられた膨張黒鉛テープ本体と、
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面に固定された合成樹脂製リング状シートとを備えている
ことを特徴とするシール材。
【請求項2】
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面における半径方向内側には、前記膨張黒鉛テープが露出しており、
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面におけるその他の部分には、前記合成樹脂製リング状シートが露出している
ことを特徴とする請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
前記膨張黒鉛テープ本体の外周側は、PTFEにコーティングされた膨張黒鉛テープが露出しており、
前記合成樹脂製リング状シートは、PTFEのリング状シートである
ことを特徴とする請求項1に記載のシール材。
【請求項4】
液体水素用ボール弁において、一次シールよりも被密封流体から離れた位置に配置される二次シールである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のシール材。
【請求項5】
合成樹脂材料により表面がコーティングされた特殊処理膨張黒鉛テープと、前記合成樹脂材料により表面がコーティングされていない無処理膨張黒鉛テープと、一対の合成樹脂製リング状シートとを準備する準備工程と、
前記特殊処理膨張黒鉛テープと、前記無処理膨張黒鉛テープとを所定の長さにそれぞれ切断する切断工程と、
前記無処理膨張黒鉛テープが内周側に配置され、前記特殊処理膨張黒鉛テープが外周側に配置されるように、渦巻き状又は同心円状に巻き重ねて膨張黒鉛テープ本体を形成する巻き重ね工程と、
巻き重ねた前記膨張黒鉛テープ本体を一対の合成樹脂製リング状シートで挟み込んだ状態で、成形金型でプレス成形するプレス成形工程とを含む
ことを特徴とするシール材の製造方法。
【請求項6】
前記プレス成形工程では、
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面における半径方向内側に、前記無処理膨張黒鉛テープを露出させ、
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面におけるその他の部分に、前記合成樹脂製リング状シートを露出させる
ことを特徴とする請求項5に記載のシール材の製造方法。
【請求項7】
前記準備工程では、
PTFEにより表面がコーティングされた特殊処理膨張黒鉛テープと、
前記PTFEにより表面がコーティングされていない無処理膨張黒鉛テープと、
一対のPTFE製リング状シートとを準備する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のシール材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シール材は、回転する軸、往復運動をする軸等に対して、圧力の加わった流体が、機器の外部へ流出するのを防ぐために使用される。耐摩耗性や使用環境等を考慮してシールの材料が選択され、例えば、膨張黒鉛やPTFE等が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1のように、軸と接触する摺動面部のみを可撓性黒鉛テープで形成したリング状パッキンは知られている。
【0004】
また、特許文献2のグランドパッキンは、焼成されたPTFEからなる表面層を備える膨張黒鉛テープを、表面層が径内側となる状態で渦巻き状又は同心円状に巻き重ねる構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭55-104158号公報
【特許文献2】特開2015-129532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非常に厳しい使用環境の場合、シール材に使用できる材料が制限される。例えば、液体水素用のシール材は、高温でもシール性能を維持することが求められるため、膨張黒鉛を使用することが考えられる。
【0007】
しかし、液体水素用途では禁油禁水であることが求められるため、膨張黒鉛を潤滑剤に含浸させることができない。このため、摺動特性が悪化し、ボール弁の作動性を阻害するおそれや膨張黒鉛の摩耗粉が発生する懸念があった。
【0008】
一方で、PTFEは摺動特性に優れるが、耐熱温度が高くないため、高温でのシール性の維持が求められる環境では使用することが難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シール材を、摩耗粉を発生させず、ファイヤーセーフ試験にも耐え得るものにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、この発明では、摩耗粉の流出を防止する合成樹脂製リング状シートをシール材に設けた。
【0011】
具体的には、第1の発明では、
合成樹脂材料によりコーティングされた膨張黒鉛テープが少なくとも外周側に位置するように膨張黒鉛テープが渦巻き状又は同心円状に巻き重ねられた膨張黒鉛テープ本体と、
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面に固定された合成樹脂製リング状シートとを備えている。
【0012】
前記の構成によると、膨張黒鉛テープ本体は、耐熱性が高く、ファイヤーセーフ試験においても焼け残る。一方、合成樹脂製リング状シートにより、膨張黒鉛テープからの摩耗粉の流出が防止される。さらに、合成樹脂材料にコーティングされた膨張黒鉛テープが少なくとも摺動面となる外周側にあるので、摩耗粉の発生を防ぎながら、摺動特性及び耐摩耗性が向上する。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面における半径方向内側には、前記膨張黒鉛テープが露出しており、
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面におけるその他の部分には、前記合成樹脂製リング状シートが露出している。
【0014】
前記の構成によると、膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面全体が合成樹脂製リング状シートに覆われているのではなく、一部膨張黒鉛テープが露出しているので、一体成形時に合成樹脂製リング状シートが径方向外側からも押さえ付けられ、堅固に一体成形される。また、ファイヤーセーフ試験においても耐熱性の高い膨張黒鉛テープ部分が焼け残るので、一定のシール性能が維持される。
【0015】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
前記膨張黒鉛テープ本体の外周側は、PTFEにコーティングされた膨張黒鉛テープが露出しており、
前記合成樹脂製リング状シートは、PTFEのリング状シートである。
【0016】
前記の構成によると、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、耐久性が高く、低摩耗性、良好なシール性を有する。その上、PTFEにコーティングされた膨張黒鉛テープは、コーティングされていない無処理膨張黒鉛テープのように摩耗粉を発生しないので、摩耗粉の放出が防止される。
【0017】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
液体水素用ボール弁において、一次シールよりも被密封流体から離れた位置に配置される二次シールである。
【0018】
前記の構成によると、ファイヤーセーフ試験にも耐え得る摩耗粉が発生しないシール材が得られる。
【0019】
第5の発明のシール材の製造方法では、
合成樹脂材料により表面がコーティングされた特殊処理膨張黒鉛テープと、前記合成樹脂材料により表面がコーティングされていない無処理膨張黒鉛テープと、一対の合成樹脂製リング状シートとを準備する準備工程と、
前記特殊処理膨張黒鉛テープと、前記無処理膨張黒鉛テープとを所定の長さにそれぞれ切断する切断工程と、
前記無処理膨張黒鉛テープが内周側に配置され、前記特殊処理膨張黒鉛テープが外周側に配置されるように、渦巻き状又は同心円状に巻き重ねて膨張黒鉛テープ本体を形成する巻き重ね工程と、
巻き重ねた前記膨張黒鉛テープ本体を一対の合成樹脂製リング状シートで挟み込んだ状態で、成形金型でプレス成形するプレス成形工程とを含む。
【0020】
前記の構成によると、特殊処理膨張黒鉛テープは、全体ではなく、摺動する外周側に限定しているので、費用面で優れており、プレス成形で一体化できるので、製造が容易で品質が安定する。これにより、摩耗粉を発生させず、ファイヤーセーフ試験にも耐え得るシール材が容易に得られる。
【0021】
第6の発明では、第5の発明において、
前記プレス成形工程では、
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面における半径方向内側に、前記無処理膨張黒鉛テープを露出させ、
前記膨張黒鉛テープ本体の軸方向両面におけるその他の部分に、前記合成樹脂製リング状シートを露出させる。
【0022】
前記の構成によると、合成樹脂製リング状シートが軸方向両面全体に露出する場合に比べて合成樹脂製リング状シートを膨張黒鉛テープで包み込むように堅固に一体成形される。また、ファイヤーセーフ試験において、膨張黒鉛テープが焼け残るので、一定のシール性能が維持される。
【0023】
第7の発明では、第5又は第6の発明において、
前記準備工程では、
PTFEにより表面がコーティングされた特殊処理膨張黒鉛テープと、
前記PTFEにより表面がコーティングされていない無処理膨張黒鉛テープと、
一対のPTFE製リング状シートとを準備する。
【0024】
前記の構成によると、PTFEは、耐久性が高く、低摩耗性、良好なシール性を有する。その上、PTFEにコーティングされた膨張黒鉛テープは、コーティングされていない膨張黒鉛のように摩耗粉を発生しないので、摩耗粉の放出が防止されるシール材が得られる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、シール材を、摩耗粉を発生させず、ファイヤーセーフ試験にも耐え得るものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】シール材が設けられた液体水素用ボール弁及びその周辺を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るシール材を拡大して示す断面図である。
図3】シール材の製造工程を示す図である。
図4】シール材の製造工程を示す図であり、(a)が巻き重ね工程を示し、(b)がプレス成形工程を示す。
図5】(a)がファイヤーセーフ試験におけるシール性確認試験を示す断面図であり、(b)がその一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は本発明の実施形態のシール材1を示す。詳しい説明は省略するが、シール材1は、例えば、リング状で、水素ステーションなどに用いられる液体水素用ボール弁10の背面一次シール11よりも被密封流体から離れた箇所に位置する背面二次シール(ファイヤーセーフシール)として、液体水素用ボール弁10のシール溝10aに嵌め込まれて使用される。液体水素用ボール弁10は、図示しないスプリングにより、矢印の方向に押し付けられた状態で使用される。液体水素は、気体水素に比べ極低温であるため、シール材1は、極低温に耐えられると共に、後述するファイヤーセーフテストに耐え得ることが求められる。
【0029】
図2に拡大して示すように、シール材1は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂によりコーティングされた特殊処理膨張黒鉛テープとしてのPTFE特殊処理膨張黒鉛シート3が少なくとも外周側に位置するように膨張黒鉛テープ2aが渦巻き状又は同心円状に巻き重ねられた膨張黒鉛テープ本体2を備えている。PTFEは、耐久性が高く、低摩耗性、良好なシール性を有する。
【0030】
炭素原子の分子結合をしているグラフェンとグラフェンの間に、イオンや他の分子などが挿入されることで黒鉛層間化合物が形成される。この黒鉛層間化合物を急熱するとグラフェン間に入れられた物質が燃焼しガス化する。そのガスによりグラフェンの積層間が押し広げられ、元の体積の数十倍にも膨張し、膨張黒鉛が得られる。無処理の膨張黒鉛テープ2aは、このようにして得られた膨張黒鉛シートを所定の幅及び長さに切断することで得られる。無処理の膨張黒鉛テープ2aは、例えば、厚さ0.38mm、幅8mmのものである。
【0031】
膨張黒鉛テープ本体2は、後述する方法で、外周側のみがPTFE特殊処理膨張黒鉛シート3で構成され、それ以外は、特殊処理されていない無処理の膨張黒鉛テープ2aで構成されている。
【0032】
PTFE特殊処理膨張黒鉛シート3自体は、例えば、特許文献3に記載の方法で得られる。PTFE特殊処理膨張黒鉛シート3は、コーティングされていない膨張黒鉛のように摩耗粉を発生しにくく、摩耗粉の放出が防止される。
【0033】
膨張黒鉛テープ本体2の軸方向両面には、合成樹脂製リング状シート(PTFE製リング状シート)としてのPTFEシート4が固定されている。例えば、このPTFEシート4の外径は、パッキン外径マイナス0.5~1.0mmで、内径はパッキン内径と同一、厚さは0.5~1.0mmである。このPTFEシート4は、厚さ0.5~1.0mmのPTFEシートから切削又は打ち抜きにより得られる。
【0034】
膨張黒鉛テープ本体2の軸方向両面における半径方向内側には、膨張黒鉛テープ2aが露出して円周方向に連続するリング状の軸方向黒鉛露出部2bを形成している。そして、膨張黒鉛テープ本体2の軸方向両面におけるその他の部分には、PTFEシート4が露出している。軸方向黒鉛露出部2bの径方向の長さは特に限定されないが、0.5~1.0mm程度である。
【0035】
-シール材の製造方法-
次に、図3を用いて本実施形態に係るシール材1の製造方法について説明する。
【0036】
まず、準備工程において、PTFE特殊処理膨張黒鉛シート3と、PTFEにより表面がコーティングされていない無処理膨張黒鉛テープ2aと、一対のPTFEシート4とを準備する。PTFEシート4は、予め所定の外径、内径及び厚さとなるように切削又は打ち抜きにより製作しておく。
【0037】
次いで、切断工程において、PTFE特殊処理膨張黒鉛シート3と、無処理膨張黒鉛テープ2aとを所定の長さにそれぞれ切断する。具体的には、計量器30で正確な重さを量りながら所定長さとなるように切断する。
【0038】
次に、図4(a)に示すように、巻き重ね工程において、無処理膨張黒鉛テープ2aが内周側に配置され、PTFE特殊処理膨張黒鉛シート3が外周側に配置されるように、渦巻き状又は同心円状に巻き重ねて膨張黒鉛テープ本体2を形成する。例えば、PTFE特殊処理膨張黒鉛シート3が外周側に1.5巻き程度となるように、切断工程で長さ調整しておく。
【0039】
さらに、図4(b)に示すように、プレス成形工程において、巻き重ねた膨張黒鉛テープ本体2を一対のPTFEシート4で挟み込んだ状態で、成形金型20でプレス成形する。具体的には、中心に上側貫通孔21aを有するドーナツ形の上型21と、リング状の成形溝22a及び上側貫通孔21aに挿通される下側挿通軸22bを有する下型22とを準備し、成形溝22aに、巻き重ねた膨張黒鉛テープ本体2を一対のPTFEシート4で挟み込んだものを挿入し、図示しないプレスでプレス成形する。
【0040】
このプレス成形工程では、図2に示すように、膨張黒鉛テープ本体2の軸方向両面における半径方向内側に、膨張黒鉛テープ2aを露出させた軸方向黒鉛露出部2bを形成し、膨張黒鉛テープ本体2の軸方向両面におけるその他の部分に、PTFEシート4を露出させる。これにより、PTFEシート4が軸方向両面全体に露出する場合に比べてPTFEシート4を膨張黒鉛テープ2aで包み込むように堅固に一体成形される。
【0041】
本実施形態では、PTFE特殊処理膨張黒鉛シート3は、全体ではなく、摺動する外周側に限定しているので、費用面で優れており、プレス成形で一体化できるので、製造が容易で品質が安定する。
【0042】
-ファイヤーセーフテスト-
図5は本発明の実施形態のシール材1に対する、ファイヤーセーフ試験に対応する耐熱試験を示す図である。
【0043】
詳細な説明は省略するが、ファイヤーセーフ試験は、火災時を想定し、試験対象のシール材1が図5(b)の評価シール材の位置に嵌め込まれたバルブを炎で加熱し、加熱前後のシール性を確認する試験である。
【0044】
加熱条件は、750℃~1000℃の炎で30分間試験対象のバルブ表面を加熱する。
【0045】
加熱後、図5に示す試験装置で、シール性能を試験する。常温で、流体として水を利用し、圧力は、試験バルブによって異なるが、例えば、0.2MPaG(低圧試験)及び6.3MPaG(高圧試験)とする。高圧試験圧力で安定させた状態で5分以上、金属製漏斗から漏洩する漏洩量を測定する。漏洩基準は、試験バルブによって変動する。
【0046】
本実施形態に係るシール材1では、この値よりも少ない漏れ量を達成することができる。
【0047】
このように、膨張黒鉛テープ本体2は、耐熱性が高く、ファイヤーセーフ試験においても焼け残る。一方、PTFEシート4により、膨張黒鉛テープからの摩耗粉の流出が防止される。さらに、コーティングされていない膨張黒鉛に比べて摩耗粉を発生しにくいPTFE特殊処理膨張黒鉛シート3が少なくとも外周側にあるので、摩耗粉の発生を防ぎながら、摺動特性及び耐摩耗性が向上する。
【0048】
本実施形態では、膨張黒鉛テープ本体2の軸方向両面全体がPTFEシート4に覆われているのではなく、一部膨張黒鉛テープ2aが露出しているので、一体成形時にPTFEシート4が径方向外側からも押さえ付けられ、堅固に一体成形される。また、ファイヤーセーフ試験においても膨張黒鉛テープ2a部分が焼け残るので、一定のシール性能が維持される。
【0049】
したがって、本実施形態によると、シール材1を、摩耗粉を発生させず、ファイヤーセーフ試験にも耐え得るものにすることができる。
【0050】
(その他の実施形態)
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0051】
すなわち、前記実施形態では、合成樹脂製リング状シートは、PTFEシートで構成したが、例えば、PE(ポリエチレン)などの各種合成樹脂で構成されていてもよい。要は、膨張黒鉛よりも低摩擦のものであればよい。また、合成樹脂材料によりコーティングされた膨張黒鉛テープは、PTFE特殊処理膨張黒鉛シート3以外にも、エポキシ、フェノール、ナイロン、PE等の合成樹脂材料でコーティングされたものでもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、シール材1は、液体水素用ボール弁のファイヤーセーフシールとして使用されているが、他の用途で使用してもよい。例えば、石油石化プラントや発電所関係などでファイヤーセーフのニーズがあれば、本発明が適用可能である。
【0053】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0054】
1 シール材
2 膨張黒鉛テープ本体
2a 膨張黒鉛テープ
2b 軸方向黒鉛露出部
3 PTFE特殊処理膨張黒鉛シート(特殊処理膨張黒鉛テープ)
4 PTFEシート(合成樹脂製リング状シート、PTFE製リング状シート)
10 液体水素用ボール弁
10a シール溝
11 背面一次シール
20 成形金型
21 上型
21a 上側貫通孔
22 下型
22a 成形溝
22b 下側挿通軸
30 計量器
図1
図2
図3
図4
図5