(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069931
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】燃料情報提供装置及び燃料情報提供方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20240515BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240515BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20240515BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20240515BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240515BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240515BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20240515BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20240515BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240515BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
H01M8/04313
H01M8/04694
H01M8/0444
H01M8/00 Z
B60L3/00 N
B60L50/70
F17C5/06
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180231
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 光徳
【テーマコード(参考)】
3E172
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD03
3E172DA87
3E172EA35
3E172JA01
3E172KA22
3E172KA23
5H125AA01
5H125AC07
5H125CC03
5H125CC04
5H125EE32
5H125EE51
5H125EE55
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB26
5H127AB29
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA39
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127DB82
5H127DB92
5H127DC99
5H127EE04
5H127FF14
5H127FF18
5H127FF20
(57)【要約】
【課題】燃料電池車に対する、品質の低い燃料水素ガスの供給を回避する。
【解決手段】燃料情報提供装置であって、プロセッサと、プロセッサによって実行されるプログラムが記憶された記憶媒体と、を備え、前記プロセッサは、第1の車両が検知した燃料品質情報、燃料充填場所情報、及び、燃料充填時間情報を取得し、取得した前記燃料品質情報に基づいて、予め定めた複数の燃料ランク区分のいずれに属するか判定し、取得した前記燃料品質情報又は判定された前記燃料ランク区分の少なくとも一方と、取得した前記燃料充填場所情報を、前記第1の車両とは異なる第2の車両に提供する、燃料情報提供装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料情報提供装置であって、
プロセッサと、プロセッサによって実行されるプログラムが記憶された記憶媒体と、を備え、
前記プロセッサは、
第1の車両が検知した燃料品質情報、燃料充填場所情報、及び、燃料充填時間情報を取得し、
取得した前記燃料品質情報に基づいて、予め定めた複数の燃料ランク区分のいずれに属するか判定し、
取得した前記燃料品質情報又は判定された前記燃料ランク区分の少なくとも一方と、取得した前記燃料充填場所情報を、前記第1の車両とは異なる第2の車両に提供する、
燃料情報提供装置。
【請求項2】
前記一つ又は複数のプロセッサは、
さらに、前記燃料ランク区分と、前記燃料充填場所情報に従って、出力情報を生成し、
生成した前記出力情報を、前記第1の車両とは異なる第2の車両に備えられた出力装置から出力させる、請求項1に記載の燃料情報提供装置。
【請求項3】
前記一つ又は複数のプロセッサは、
前記燃料品質情報、前記燃料充填場所情報、及び、前記燃料充填時間情報を、通信手段を介して、燃料品質を管理する管轄機関に送信する、請求項1又は2に記載の燃料情報提供装置。
【請求項4】
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えた燃料情報提供装置を用いた燃料情報提供方法であって、
第1の車両が検知した燃料品質情報、燃料充填場所情報、及び、燃料充填時間情報を取得するステップと、
取得した前記燃料品質情報に基づいて、予め定めた複数の燃料ランク区分のいずれに属するか判定するステップと、
取得した前記燃料品質情報又は判定された前記燃料ランク区分の少なくとも一方と、取得した前記燃料充填場所情報を、前記第1の車両とは異なる第2の車両に提供するステップと、
を含む、燃料情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主には燃料電池車に適用され得る、燃料情報提供装置及び燃料情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池車への水素充填に関連して、品質の劣悪な水素充填を回避するため、又は、燃料電池の故障を未然に防止すること等を目的として、供給される燃料が不良か否かを検出する技術や、供給された水素が汚染されていることが検知された場合に水素の充填を中止する技術等が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1は、車両の水素タンク充填管路に汚染ガスセンサーを設置すること、及び、汚染ガスセンサーの信号を受けて遮断バルブを制御すること、を開示している。また、水素タンクに充填される前の汚染された水素の情報を、車両から充填施設の制御装置に送信することを開示している。
【0004】
特許文献2は、水素充填路に導入された水素中の不純物濃度又は水素濃度を検知するセンサを用いて、水素の含有不純物濃度が基準値を満たしていない場合、MH式水素タンクの直前に設けられたバルブを閉じることで、水素吸蔵合金等の被毒を防止することを開示している。
【0005】
特許文献3は、供給される水素に不純物が含まれているか否かを検出する不良燃料検知部と、周囲に警告を発する警告灯と、不良検出部から出力される信号を受けて警告灯を作動させるECUとを備える構成を開示している。
【0006】
特許文献4は、燃料電池の制御方法において、発電部内及び水素循環のための通流管内の不純物濃度を算出し、算出した不純物濃度が所定値以上である場合に、ガスを外部へ排出することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-122694号公報
【特許文献2】特開2003-130291号公報
【特許文献3】特開2010-242952号公報
【特許文献4】特開2017-059451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上述した特許文献に記載された技術によっては、市場のニーズを適切に満たしているとは言えず、以下に述べる課題が存在した。すなわち先行技術では、特定の車両に対して品質の劣悪な水素の充填を回避することはできるものの、他の車両に対して品質の劣悪な水素の充填を回避させることはできないという問題があった。また、当該品質の劣悪な水素を提供する水素ステーション(水素ディスペンサ)は、継続して他車両に当該水素を提供し続ける可能性があるという問題があった。そしてこのような問題が継続することにより、車社会において燃料電池車の信頼性を低下させることにもなりかねないことから、解決の必要があった。
【0009】
本開示は上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、本開示の目的とするところは、複数の燃料電池車に対して、品質の劣悪な水素ガスの供給を回避可能な、燃料情報提供装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本開示の一実施形態における燃料情報提供装置は、一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えた燃料情報提供装置において、前記一つ又は複数のプロセッサは、第1の車両が検知した燃料品質情報、及び、燃料充填場所情報を取得し、取得した前記燃料品質情報に基づいて、予め定めた複数の燃料ランク区分のいずれに属する判定し、取得した前記燃料品質情報又は判定された前記燃料ランク区分の少なくとも一方と、取得した前記燃料充填場所情報を、前記第1の車両とは異なる第2の車両に提供する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示の燃料情報提供装置によれば、燃料電池車に対して、品質の低い燃料水素ガスの供給を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る燃料情報提供装置を備えた燃料電池車の構成例を示す模式図である。
【
図2】実施形態に係る燃料情報提供装置を備えた燃料電池車の構成例を示す他の模式図である。
【
図3】実施形態に係る燃料情報提供装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】実施形態に係る燃料情報提供装置の処理の一形態を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る燃料情報提供装置の処理の一形態を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る燃料情報提供装置を用いた燃料情報提供方法の一形態を示す模式図である。
【
図7】実施形態に係る燃料情報提供装置を用いた燃料情報提供方法の一形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本開示を実施するための好適な実施形態について説明する。また、以下で詳述する以外の構成については、公知の各種の車載センサを含む公知の車両構造や車載システムを適宜補完してもよい。
【0014】
[燃料電池車FCV]
図1及び
図2は、本実施形態に係る燃料情報提供装置10を備えた燃料電池車FCVの構成例を示す模式図である。この燃料電池車FCVは、
図1に示すように、車両の駆動トルクを生成する駆動力源21から出力される駆動トルクを左前輪3LF、右前輪3RF、左後輪3LR及び右後輪3RR(以下、特に区別を要しない場合には「車輪3」と総称する)に伝達する四輪駆動車として構成されている。駆動力源21は、本実施形態では前輪側に配置された公知の電動モータが例示できる。
【0015】
なお、本実施形態の駆動力源21としての電動モータは、前輪側と後輪側でそれぞれ1つずつ配置されていてもよく、あるいは各車輪3にそれぞれ1つの電動モータが配置される形態であってもよい。また、駆動力源21は、上記した電動モータに加えて、さらにガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいはガスタービンエンジン等の内燃機関を備えていてもよい。
【0016】
かような駆動力源21に所望の電力を供給する電源システムは、例えばPEFC(固体高分子形燃料電池)など公知の燃料電池セルが複数積層されて構成された燃料電池スタック30と、それぞれ公知の燃料タンク23と配管を含む水素ガス供給部と、それぞれ公知のコンプレッサ31と配管を含む空気供給部と、リチウムイオン二次電池や鉛蓄電池などの公知の2次電池33と、公知のコンバータ22と、これらを制御する制御装置100と、を含んでいる。なお本実施形態における制御装置100は、後述する燃料情報提供装置10として機能することもできる。
【0017】
本実施形態の電源システムでは、燃料電池スタック30及びおよび2次電池の各々が上記した電動モータを含む負荷に対して電力を供給可能となっている。
【0018】
図1及び
図2に示すように、この燃料電池スタック30は、上記したコンバータ22及び配線を介して、例えば上記した駆動力源21(電動モータ)を含む負荷に接続されている。また
図1及び
図2に示すように、燃料電池スタック30における電流および電圧は、それぞれ公知の電圧センサ85及び電流センサ87によって検出される。
【0019】
コンバータ22は、直流電流と交流電流との変換を行う公知のAC/DCコンバータや、直流電流の電圧を所望の電圧に調整する公知のDC/DCコンバータを含んで構成されている。一例として、本実施形態のコンバータ22は、制御装置100の制御信号を受けて、燃料電池スタック30が発電して出力する出力電圧を設定する機能や、燃料電池スタック30が発電した電力を負荷に供給する際に所望の電圧に昇圧する機能などを有している。
【0020】
また、本実施形態の燃料電池車FCVは、運転制御に用いられる装備として、上記した駆動力源21、電動ステアリング装置8及びブレーキ装置4LF、4RF、4LR、4RR(以下、特に区別を要しない場合には「ブレーキ装置4」と総称する)を備えている。
【0021】
駆動力源21は、図示しない変速機や前輪差動機構5F及び後輪差動機構5Rを介して前輪駆動軸2F及び後輪駆動軸2Rに伝達される駆動トルクを出力する。駆動力源21や変速機の駆動は、一つ又は複数の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を含んで構成された公知の制御装置により制御される。
【0022】
前輪駆動軸2Fには電動ステアリング装置8が設けられている。電動ステアリング装置8は図示しない電動モータやギヤ機構を含み、車両駆動制御装置20により制御されることによって左前輪3LF及び右前輪3RFの操舵角を調節する。
【0023】
車両駆動制御装置20は、燃料電池車FCVの駆動トルクを出力する駆動力源21、ステアリングホイール9又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリング装置8、燃料電池車FCVの制動力を制御するブレーキ装置4の駆動などを制御する公知の一つ又は複数の電子制御装置(ECU)を含む。車両駆動制御装置20は、駆動力源21から出力された出力を変速して車輪3へ伝達する変速機の駆動を制御する機能を備えていてもよい。
【0024】
また、
図1及び
図2に示すように、燃料電池スタック30へ燃料(水素)ガスを供給するための水素ガス供給部においては、燃料タンク23に貯蔵された水素ガスは、水素供給流路に設置された公知の構造を有する水素吸気バルブ32aなどを介して、上述した燃料電池スタック30のアノード側流路に供給される。
【0025】
なお、燃料電池スタック30から排出された水素ガスの一部は、循環流路および公知の循環ポンプによって水素供給流路に還流されてもよい。また、燃料電池スタック30から排出された水素ガスの残部は、制御装置100による制御の下で、公知の水素排気バルブの開閉動作を介して所定のタイミングで公知の希釈器によって希釈された後で大気放出(排気)されてもよい。
【0026】
一方で
図1及び
図2に示すように、燃料電池スタック30へ酸素ガス(空気)を供給するための空気供給部は、上記したコンプレッサ31の他に、燃料電池スタック30への酸素(空気)供給量を調整する公知の空気吸気弁および空気排出弁(背圧弁)などを備えて構成されている。また、この空気供給部は、燃料電池スタック30へと供給される空気の流量を計測可能な公知の流量センサ(不図示)をさらに備えていてもよい。
【0027】
そしてコンプレッサ31で取り込まれた空気は、空気吸気弁および公知の加湿器(不図示)などを経由して、燃料電池スタック30内のカソード側流路に供給される。また、燃料電池に供給された空気は、制御装置100による空気排出弁(背圧弁)の制御の下で、カソードオフガスとして上記した希釈器へ供給される。
【0028】
制御装置100は、一つ又は複数のプロセッサ(CPU(Central Processing Unit))と、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えて構成されている。制御装置100は、車載される公知の1又は複数の電子制御装置(ECU)として構成することができる。この制御装置100は、一例としてスマートフォンを利用する形態など公知の種々の通信装置CDを介してインターネットなどの公知の外部ネットワークNETと接続可能に構成されていてもよい。
【0029】
かような制御装置100には、直接的に又はCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、コンプレッサ31、各バルブ32(水素吸気バルブ32a、水素排気バルブ、空気吸気弁及び空気排気弁)、電圧センサ85及び電流センサ87などの公知のセンサ類80などが電気的に接続されている。
【0030】
本実施形態の燃料電池スタック30は、例えばそれぞれが1V程度の起電力を有する公知の燃料電池セルが直列接続して複数積層されたスタック構造を有している。一例として、本実施形態の燃料電池スタック30としては、燃料電池を両端で加圧して保持する一対の公知のエンドプレート内に、燃料電池車FCVが必要とするシステム電圧となるように燃料電池セルが直列接続された構造の固体高分子形燃料電池(PEFC)が例示できる。
【0031】
また、燃料電池スタック30を構成する個々の燃料電池セルは、それぞれ燃料極側と空気極側に設置される一対の公知のセパレータの間に、公知のMEA(膜電極接合体)が介在する構造を有している。このMEAは、公知のカソード触媒層と、このカソード触媒層と対向配置された公知のアノード触媒層と、これらカソード触媒層とアノード触媒層との間に配置される公知の高分子電解質膜を少なくとも含んで構成されている。なお、膜電極接合体は、それぞれ公知の、空気極側ガス拡散層と燃料極側ガス拡散層をさらに含んで構成されていてもよい。このうち本実施形態におけるカソード触媒層では、ステンレスやチタンなどの金属材料やカーボン材料などに例示される触媒担体に対し、例えば白金(Pt)ナノ粒子や白金-コバルト(Pt-Co)粒子などの貴金属微粒子など公知の触媒金属が結合された形態となっている。
【0032】
[燃料情報提供装置10]
続いて、本実施形態に係る燃料情報提供装置10の構成例を具体的に説明する。なお、本実施形態の燃料情報提供装置10は、充填された燃料(例えば水素ガス)の品質に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて充填された燃料品質のランク(「燃料ランク」とも称する)を判定すると共に、当該燃料ランクを外部に提供するものとする。
【0033】
図3は、本実施形態に係る燃料情報提供装置10の構成例を示すブロック図である。
燃料情報提供装置10には、専用線又はCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、センサ類80(水素濃度センサ81、不純物センサ82、タンク内圧力センサ83、タンク内温度センサ84、電圧センサ85及び電流センサ87など)が接続されている。
【0034】
また、燃料情報提供装置10には、専用線又はCANやLIN等の通信手段を介して、車車間通信部39、ナビゲーション装置40、HMI43(ディスプレイ43a、スピーカ43b)、制御装置100が接続されている。また、燃料情報提供装置10は、公知の通信手段45を介して、例えばインターネットなどの外部ネットワークNETと接続可能に構成されている。なお、燃料情報提供装置10は、燃料電池車FCVに搭載された電子制御装置に限られるものではなく、スマートフォンやウェアラブル機器等の端末装置であってもよい。
【0035】
かような本実施形態の燃料情報提供装置10は、制御部50及び公知の記憶部(メモリ60およびデータベース70)を備えている。制御部50は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えて構成される。制御部50の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。上記した記憶部のうちメモリ60は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の公知のメモリデバイスで構成される。
【0036】
また、上記した記憶部のうちデータベース70は、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)あるいはUSBフラッシュやストレージ装置等の更新可能な公知の記録媒体で構成される。ただし、本実施形態では上記した記憶部の数や種類は特に限定されない。本実施形態の記憶部は、制御部50により実行されるコンピュータプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメータ、検出データ、演算結果等の情報を記録するように構成されていてもよい。
【0037】
なお本実施形態におけるデータベース70は、燃料となる水素ガスに含まれる不純物の濃度毎に複数に区分された、燃料ランク区分を含んでいてもよい。具体的に、データベース70は、燃料となる水素ガスに含まれ得る不純物の種類(水、炭化水素、メタン、酸素、ヘリウム、窒素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、など)と、それらにおける燃料中で許容される数値等を含んで構成される。なお、データベース70は、前記各々の不純物に対する燃料への含有率を、段階的に設定して構成されていてもよい。
【0038】
上記したデータベース70は、燃料電池車FCVに搭載されていてもよい。またデータベース70は、移動体通信等の無線通信手段を介して燃料情報提供装置10と通信可能な外部サーバに少なくともその一部が格納されていてもよい。また、データベース70の全体が単一のデータベースとして構成されていてもよいし、障害物の方向毎等に、別の単一のデータベースとして構成されていてもよい。
【0039】
燃料情報提供装置10の制御部50は、
図3に示されるとおり、燃料ランク判定部51、充填継続可否決定部52、外部提供情報決定部54、指令部55、を含んで構成されている。
【0040】
燃料ランク判定部51は、燃料電池車FCV内に搭載された燃料タンク(水素タンク)内に充填された燃料(水素ガス)に含まれる不純物の含有量や、水素濃度等に基づいて、当該燃料のランクを判定する機能を有する。より具体的には、燃料ランク判定部51は、本実施形態の燃料情報提供装置10において、データベース70中に含まれる燃料ランク区分に基づいて、充填される燃料のランクを判定する。なお燃料電池車FCVの、車種、走行地域、等に応じて、燃料ランク区分の判断基準値を可変とすることができる。
【0041】
充填継続可否決定部52は、燃料電池車FCVに搭載される燃料タンク内に、燃料ランク判定部51で判定されたランクを有する燃料を継続して充填することの可否を決定する機能を備えている。具体的に、充填継続可否決定部52は、燃料ランク判定部51で判定された燃料のランクに基づいて、データベース70に照らし合わせて、燃料を継続して充填するか否かを決定する。
【0042】
外部提供情報決定部54は、燃料電池車FCVに搭載される燃料タンク内に充填される燃料に関する情報に関連して、燃料電池車FCVの外部に提供する出力情報を生成する機能を備える。具体的には、外部提供情報決定部54は、燃料ランク判定部51により判定された、燃料ランクや、水素濃度、燃料含有不純物含有量、燃料充填場所情報、燃料充填時間情報、等の情報のうち、いずれの情報を外部提供情報とするかを決定し、出力情報を生成する。
【0043】
指令部55は、外部提供情報決定部54が生成した出力情報を、制御装置100に対して信号として出力する。制御装置100は、通信手段45を介して、入力された信号に基づいて、燃料電池車FCVとは異なる車両FCV2に対して情報を送信する。これにより、
図6に示されるように、燃料電池車FCVとは異なる車両(燃料電池車FCV2)は、水素ディスペンサHDにより供給される燃料品質情報などを取得することが可能となる。なお、指令部55は、外部サーバSVに対して情報を送信してもよい。この場合、
図7に示されるように、燃料電池車FCVとは異なる車両FCV2、FCV3、FCV4は、外部サーバSVを介して上記情報を受信することもできる。
【0044】
[燃料情報提供装置10における燃料情報提供方法]
次に
図4のフローチャートを参照しつつ、本実施形態の燃料情報提供装置10による燃料情報提供方法について説明する。なお以下で説明する燃料電池車FCVの燃料情報提供は、上述した燃料情報提供装置10によって実行される。
【0045】
まず燃料情報提供装置10の制御部50は、燃料電池車FCVの水素充填口のレセプタクル24に、水素ディスペンサHDのノズルH2が接続されているか否かを確認する(ステップ1)。この確認は、図示しない近接センサ等を用いて行うことができる。
【0046】
次に燃料情報提供装置10の制御部50は、燃料タンク23のバルブ25を開く(ステップ2)。次いで、水素ディスペンサHDにより供給される燃料水素ガスが燃料タンク23に充填を開始される(ステップ3)。
【0047】
次いで燃料情報提供装置10の制御部50は、燃料品質センサ(例えば、水素濃度センサ81、不純物センサ82、など)を用いて、燃料タンク23に充填されている燃料水素ガスの燃料品質情報(例えば、水素濃度情報、及び、不純物情報)を取得する(ステップ4)。なおこのステップ4において、制御部50は、燃料電池スタック30が発電した出力結果に基づいて、公知のインピーダンス演算などにより、燃料水素ガス中の水素濃度情報や不純物情報を取得してもよい。具体的には、燃料電池スタック30が発電した出力結果に基づき、電圧センサ85及び電流センサ87が検知した電圧値や電流値を用いて、燃料水素ガス中の水素濃度、不純物種類、不純物量、等の情報を取得してもよい。
【0048】
次いで制御部50の燃料ランク判定部51は、燃料タンク23に充填される燃料水素ガスの燃料ランク(水素濃度ランク及び不純物ランク)を判定する(ステップ5)。具体的に、燃料ランク判定部51は、上記ステップ4で取得された水素濃度情報に基づいて、水素濃度ランク区分に基づいて判定を行う。なお水素濃度ランク区分の一例として、以下のランクA~ランクCの3種類の区分を示す。
水素濃度ランクA:水素濃度99.0%以上、
水素濃度ランクB:水素濃度95.0%以上99.0%未満、
水素濃度ランクC:水素濃度95.0%未満。
【0049】
また燃料ランク判定部51は、上記ステップ4で取得された不純物情報に基づいて、不純物ランク区分に基づいて判定を行う。なお不純物ランク区分の一例として、以下のランクI~ランクIIの2種類の区分を示す。
不純物ランクI:不純物中に一酸化炭素を含む。
不純物ランクII:不純物中に一酸化炭素を含まない。
【0050】
なお上述の水素濃度ランク及び不純物ランクの判断基準は、適宜変更することができる。例えば、水素濃度ランクの数値は、対象とする燃料電池車の車種や走行地域等に応じて、変更可能である。また、不純物ランクは、一酸化炭素以外の不純物の含有有無により区分されていてもよいし、任意の不純物の含有量を基準として区分されていてもよい。なお、判定された水素濃度ランク及び不純物ランクは、メモリ60に保存される。
【0051】
次いで制御部50の充填継続可否決定部52は、燃料ランク判定部51の判定に基づいて、燃料タンク23へ充填される燃料水素ガスの水素濃度が、予め定められた規定以上か否かを決定する(ステップ6)。具体的に、予め設定された水素濃度ランクの規定が「B以上」である場合、充填継続可否決定部52は、「水素濃度ランクA」及び「水素濃度ランクB」を規定以上と決定する(ステップ6のYes)。一方でこの場合、燃料ランク判定部51の判定が「水素濃度ランクC」であれば、充填継続可否決定部52は、規定以下と決定する(ステップ6のNo)。
【0052】
充填継続可否決定部52で水素濃度ランクが規定以上と決定された場合(ステップ6のYes)、制御部50は、燃料タンク23のバルブ25を引き続き開とすることにより、燃料タンク23への燃料水素ガスの充填を継続する(ステップ7)。
【0053】
次いで、制御部50の外部提供情報決定部54は、燃料電池車FCVとは異なる車両や外部サーバに対して提供する情報の内容を決定する(ステップ8)。具体的に、外部提供情報決定部54は、燃料電池車FCVが充填した燃料水素ガスの燃料品質情報、燃料ランク情報、燃料充填場所情報、燃料充填時間情報、などを、外部提供情報として決定できる。外部提供情報決定部54はさらに、外部提供情報として決定した情報をメモリ60に保存する。また、制御部50は、外部提供情報決定部54が外部提供情報として決定した内容を、HMI43(ディスプレイ43a、スピーカ43b)等を介して、出力してもよい。
【0054】
次いで、制御部50の指令部55は、燃料電池車FCVの制御装置100に対して、外部提供情報決定部54が外部提供情報として決定した情報の送信を指示する(ステップ9)。具体的に、指令部55は、上記外部提供情報決定部54が外部提供情報として決定した情報を、燃料電池車FCVとは異なる燃料電池車FCV2、又は、外部サーバSVからの要求に応じて送信するよう指示する。なお燃料電池車FCVのシステムがOFFとなった場合、制御部50は、上記処理フローを終了する。
【0055】
充填継続可否決定部52が、水素濃度ランクが規定以下と決定した場合(ステップ6のNo)の流れを、
図5を用いて説明する。
【0056】
充填継続可否決定部52が、水素濃度ランクを規定以下と決定した場合(ステップ6のNo)、充填継続可否決定部52は引き続き、不純物ランクが、予め定められた規定以上か否かを決定する(ステップ10)。具体的に、予め設定された不純物ランクの規定が「不純物ランクI以上」である場合、充填継続可否決定部52は、「不純物ランクI」を規定以上と決定する(ステップ10のYes)。一方でこの場合、燃料ランク判定部51の判定が「不純物ランクII」であれば、充填継続可否決定部52は、不純物ランクの規定が規定以下と決定する(ステップ10のNo)。
【0057】
充填継続可否決定部52で不純物ランクが規定以上と決定された場合(ステップ10のYes)、制御部50は、燃料タンク23のバルブ25を引き続き開とすることにより、燃料タンク23への燃料水素ガスの充填を継続する(ステップ11)。
【0058】
次いで、制御部50の外部提供情報決定部54は、燃料電池車FCVとは異なる車両や外部サーバに対して提供する情報の内容を決定する(ステップ12)。具体的に、外部提供情報決定部54は、燃料電池車FCVが充填した燃料水素ガスの燃料品質情報、燃料ランク情報、燃料充填場所情報、燃料充填時間情報、などを、外部提供情報として決定できる。外部提供情報決定部54はさらに、外部提供情報として決定した情報をメモリ60に保存する。また、制御部50は、外部提供情報決定部54が外部提供情報として決定した内容を、HMI43(ディスプレイ43a、スピーカ43b)等を介して、出力してもよい。具体的に制御部50は、水素濃度ランクが規定以下であったこと等を、HMI43(ディスプレイ43a、スピーカ43b)等を介して、警告報知してもよい。
【0059】
次いで、制御部50の指令部55は、燃料電池車FCVの制御装置100に対して、外部提供情報決定部54が外部提供情報として決定した情報の送信を指示する(ステップ13)。具体的に、指令部55は、上記外部提供情報決定部54が外部提供情報として決定した情報を、燃料電池車FCVとは異なる燃料電池車FCV2、又は、外部サーバSVからの要求に応じて送信するよう指示する。なお燃料電池車FCVのシステムがOFFとなった場合、制御部50は、上記処理フローを終了する。
【0060】
一方で、充填継続可否決定部52で不純物ランクが規定以上ではないと決定された場合(ステップ10のNo)、制御部50は、燃料タンク23のバルブ25を閉じることにより、燃料タンク23への燃料水素ガスの充填を終了する(ステップ14)。
【0061】
次いで、制御部50の外部提供情報決定部54は、燃料電池車FCVとは異なる車両や外部サーバに対して提供する情報の内容を決定する(ステップ15)。具体的に、外部提供情報決定部54は、燃料電池車FCVが充填した燃料水素ガスの燃料品質情報、燃料ランク情報、燃料充填場所情報、燃料充填時間情報、などを、外部提供情報として決定できる。外部提供情報決定部54はさらに、外部提供情報として決定した情報をメモリ60に保存する。また、制御部50は、外部提供情報決定部54が外部提供情報として決定した内容を、HMI43(ディスプレイ43a、スピーカ43b)等を介して、出力してもよい。具体的に制御部50は、水素濃度ランク及び不純物ランクが共に規定以下であったこと等を、HMI43(ディスプレイ43a、スピーカ43b)等を介して、警告・エラー報知してもよい。
【0062】
次いで、制御部50の指令部55は、燃料電池車FCVの制御装置100に対して、外部提供情報決定部54が外部提供情報として決定した情報の送信を指示する(ステップ16)。具体的に、指令部55は、上記外部提供情報決定部54が外部提供情報として決定した情報を、燃料電池車FCVとは異なる燃料電池車FCV2、又は、外部サーバSVからの要求に応じて送信するよう指示する。なお燃料電池車FCVのシステムがOFFとなった場合、制御部50は、上記処理フローを終了する。
【0063】
以上説明した本実施形態におけるの燃料情報提供装置10によれば、燃料電池車FCVへの品質の低い燃料水素ガスの供給を回避することが可能となると共に、他の車両に対しても燃料水素ガスの品質情報を提供することができる。情報を提供された燃料電池車FCV2は、そのような品質の低い燃料水素ガスを充填することを、事前に回避することができる。
【0064】
本実施形態におけるの燃料情報提供装置10は、取得した燃料品質情報、燃料充填場所情報、及び、燃料充填時間情報などを、通信手段を介して、燃料品質を管理する管轄機関に送信することもできる。このように、実際に車両に充填した燃料水素ガスの情報が管轄機関に提供されることにより、燃料水素ガス全体の品質向上を見込むことができる。
【0065】
本実施形態の燃料情報提供装置10において、制御部50の少なくとも一部は、燃料電池車FCVの外部に設けられていてもよい。この場合、制御部50は、生成された出力情報(燃料ランク区分、前記燃料充填場所情報、など)を、燃料電池車FCVとは異なる燃料電池車FCV2に備えられた出力装置から出力させるようにしてもよい。
【0066】
上述のとおり添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明したが、当業者であれば上記した実施形態に対して更なる変形を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0067】
FCV 燃料電池車
10 燃料情報提供装置
50 制御部
51 燃料ランク判定部
52 充填継続可否決定部
54 外部提供情報決定部
55 指令部
80 センサ類