(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069939
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】橋脚および地下構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/16 20060101AFI20240515BHJP
E01D 19/02 20060101ALI20240515BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
E02D27/16
E01D19/02
E02D27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180243
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小林 克哉
(72)【発明者】
【氏名】松林 周磨
(72)【発明者】
【氏名】向井 寿
(72)【発明者】
【氏名】肌勢 弘章
【テーマコード(参考)】
2D046
2D059
【Fターム(参考)】
2D046CA08
2D059AA03
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】基礎の細径化が可能な橋脚等を提供する。
【解決手段】橋脚1は、地盤Gに設けた鋼管31の内側にコンクリートConを充填して形成された鋼管コンクリート杭30と、鋼管コンクリート杭30の上端部に挿入された接続管40と、接続管40の上端部に接合された脚柱部50と、を有する。鋼管コンクリート杭30は、地下構造物Sの構築予定箇所の間に配置される。また接続管40の外面に、接続管40から外側に延びる孔あき板が鉛直方向に沿って設けられ、孔あき板が、接続管40と鋼管31の間のコンクリートConに埋設される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けた鋼管の内側にコンクリートを充填して形成された鋼管コンクリート杭と、
前記鋼管コンクリート杭の上端部に挿入された接続管と、
前記接続管の上端部に接合された脚柱部と、
を有することを特徴とする橋脚。
【請求項2】
前記接続管の外面に、前記接続管から外側に延びる孔あき板が鉛直方向に沿って設けられ、
前記孔あき板が、前記接続管と前記鋼管の間の充填材に埋設されたことを特徴とする請求項1記載の橋脚。
【請求項3】
前記鋼管コンクリート杭の側方に補強杭が設けられ、
前記補強杭の上端部と前記鋼管とが、連結材により連結されたことを特徴とする請求項1記載の橋脚。
【請求項4】
前記鋼管に梁部材の一端が固定され、前記梁部材の他端が、地盤に設けた山留壁に固定されたことを特徴とする請求項1記載の橋脚。
【請求項5】
前記鋼管の内側に配置された鉄筋の上端部が、前記鋼管と前記接続管の間の充填材、または、前記接続管内の充填材に埋設されたことを特徴とする請求項1記載の橋脚。
【請求項6】
前記鋼管コンクリート杭と前記接続管を結合するための結合筋が、前記接続管の内部から前記鋼管内に突出するように配置され、
前記結合筋が、前記接続管内の充填材と前記鋼管内のコンクリートに埋設されたことを特徴とする請求項1記載の橋脚。
【請求項7】
請求項1記載の橋脚を、前記鋼管コンクリート杭が地下構造物の構築予定箇所を避けて配置されるように構築した後、
前記地盤の表面に仮設床を設けて当該仮設床以深の地盤を掘削し、掘削箇所に前記地下構造物を構築することを特徴とする地下構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚および地下構造物の構築方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、立体交差橋や高架橋等の橋脚として、鋼製の角筒脚を、接合ユニットを介してコンクリート杭の杭頭に接合したものが記載されている。接合ユニットは、角筒脚の基部に形成された基部構造体と、基部構造体および杭頭に外嵌される円筒鋼殻とを有し、円筒鋼殻内にコンクリートを打設することで、コンクリート杭と角筒脚が接合ユニットを介して接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な理由により、地下構造物の構築予定のある地盤に橋脚を設ける必要が生じることがあり、この場合、橋脚の基礎が、構築予定の地下構造物と干渉することが起こり得る。
【0005】
このようなケースでも、干渉部分において確実な止水処理を行うなど適切な対策を施せば、地下構造物の要求性能を満たすことは可能である。しかしながら、更なる品質向上のためには、構築予定の地下構造物と干渉しないように橋脚を構築することも有効であり、そのためには橋脚の基礎が細径化されることが望ましい。橋脚の基礎を細径化することは、現に存在する地下構造物等を避けて橋脚を設ける場合にも有効である。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、基礎の細径化が可能な橋脚等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための第1の発明は、地盤に設けた鋼管の内側にコンクリートを充填して形成された鋼管コンクリート杭と、前記鋼管コンクリート杭の上端部に挿入された接続管と、前記接続管の上端部に接合された脚柱部と、を有することを特徴とする橋脚である。
【0008】
本発明では、橋脚の基礎として鋼管コンクリート杭を用いる。鋼管コンクリート杭は、鋼管によるコンクリートの拘束効果を有し構造性能が高く、橋脚の基礎を細径化できる。また、鋼管コンクリート杭と脚柱部とを、鋼管コンクリート杭の上端部に挿入した接続管を介して接続することで、鋼管コンクリート杭と脚柱部とを強固に接続でき、施工も容易である。
【0009】
前記接続管の外面に、前記接続管から外側に延びる孔あき板が鉛直方向に沿って設けられ、前記孔あき板が、前記接続管と前記鋼管の間の充填材に埋設されることが望ましい。
この場合、孔あき板と充填材を介した応力伝達により、スリムな構成で接続管と鋼管コンクリート杭とを確実に固定できる。
【0010】
前記鋼管コンクリート杭の側方に補強杭が設けられ、前記補強杭の上端部と前記鋼管とが、連結材により連結されることが望ましい。また前記鋼管に梁部材の一端が固定され、前記梁部材の他端が、地盤に設けた山留壁に固定されることも望ましい。
上記の補強杭や梁部材により橋脚の基礎を補強することで、地震等による大きな水平力に耐えることができ、橋脚の供用中の安定性が向上する。
【0011】
前記鋼管の内側に配置された鉄筋の上端部が、前記鋼管と前記接続管の間の充填材、または、前記接続管内の充填材に埋設されることが望ましい。さらに、前記鋼管コンクリート杭と前記接続管を結合するための結合筋が、前記接続管の内部から前記鋼管内に突出するように配置され、前記結合筋が、前記接続管内の充填材と前記鋼管内のコンクリートに埋設されることが望ましい。
上記の鉄筋や結合筋により、接続管と鋼管コンクリート杭との一体性を高めることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の橋脚を、前記鋼管コンクリート杭が地下構造物の構築予定箇所を避けて配置されるように構築した後、前記地盤の表面に仮設床を設けて当該仮設床以深の地盤を掘削し、掘削箇所に前記地下構造物を構築することを特徴とする地下構造物の構築方法である。
本発明では橋脚の基礎を細径化できるため、構築予定の地下構造物との干渉回避が容易であり、地下構造物の更なる品質向上が可能である。また上記の手順により仮設床以深の地盤を掘削して地下構造物を構築することで、地下構造物の上方の交通等に影響を与えることもない。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、基礎の細径化が可能な橋脚等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】鋼管コンクリート杭30と接続管40の接合部を示す図。
【
図4】地下構造物Sの構築方法について説明する図。
【
図5】地下構造物Sの構築方法について説明する図。
【
図7】鋼管コンクリート杭30と接続管40の接合部の別の例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(1.橋脚とその構築方法)
図1、2の(a)~(c)は、本発明の実施形態に係る橋脚の構築方法について説明する図である。各図において、上図は橋脚の構築方法の各工程を平面において示したものであり、下図は上図の線A-Aによる鉛直方向の断面を示したものである。
【0017】
本実施形態では、既設の橋脚から新設の橋脚へと橋梁の上部工(不図示)の受け替えを行うため、河川等の水域の地盤に新設の橋脚を構築するものとし、まず
図1(a)に示すように、水域Wに延びる桟橋10を構築する。桟橋10は、水底の地盤Gに打設した鋼管杭12によって支持される。また橋脚の構築箇所に当たる桟橋10の先端部には開口11が設けられており、当該開口11に対応する平面位置で、水域Wを締め切るための仮締切体20が形成される。なお、鋼管杭12に代えて、H形鋼による杭を用いることも可能である。
【0018】
仮締切体20は、平面において閉領域を成すように並べた複数本の鋼管矢板21により形成される。各鋼管矢板21は水底の地盤Gに打設され、仮締切体20内の底部の地盤Gをセメント等の固化材により改良することで地盤改良体22が形成される。地盤改良の具体的方法については既知であり、説明を省略する。また、鋼管矢板21に代えて、鋼矢板を用いることも可能である。
【0019】
図1(a)の下図の符号Sは、地下構造物の構築予定箇所を示したものであり、本実施形態では、複数の地下構造物Sが橋軸直交方向に間隔を空けて構築される予定とする。橋軸直交方向は
図1(a)の上図および下図の左右方向に対応する。橋脚は地下構造物Sの構築予定箇所の間に構築するものとし、仮締切体20も地下構造物Sの構築予定箇所の間で形成される。
【0020】
こうして仮締切体20を形成した後、
図1(b)に示すように、仮締切体20内の地盤Gに鋼管31を打設し、鋼管31内にコンクリートConを充填することで、鋼管コンクリート杭30を形成する。鋼管コンクリート杭30は、地下構造物Sの構築予定箇所の間で、両脇の地下構造物Sを避けるように配置され、その下端部は、仮締切体20の下方に突出する。またコンクリートConは、鋼管31の上端部の下方まで充填される。
【0021】
次に、
図1(c)に示すように仮締切体20内で排水および地盤Gの掘削を行い、鋼管31の上端部に接続管40を挿入する。そして、鋼管31と接続管40の間、および接続管40の内側に充填材であるコンクリートConを充填することで、接続管40が鋼管コンクリート杭30の上端部に埋設され、鋼管コンクリート杭30と接続管40とが接合される。なお図示は省略しているが、仮締切体20の内面には腹起しが配置され、これにより、周囲からの水圧等に対して仮締切体20が補強される。また鋼管31と接続管40の間、および接続管40の内側の充填材としては、コンクリートConに代えてモルタルやグラウトなどその他のセメント系材料を用いることも可能である。
【0022】
図3は、鋼管コンクリート杭30と接続管40の接合部を示す図である。
図3(a)は当該接合部の鉛直方向の断面であり、
図3(b)は当該接合部の水平方向の断面である。
図3(a)は
図3(b)の線B1-B1による断面を示したものであり、
図3(b)は
図3(a)の線B2-B2による断面を示したものである。
【0023】
接続管40は、鋼管コンクリート杭30と後述する脚柱部50(
図2(a)等参照)とを接続するためのものである。接続管40は鋼管によって形成された鋼製の筒状部材であり、鋼管コンクリート杭30の鋼管31および接続管40の水平方向の断面は円形とするが、これに限ることはない。
【0024】
接続管40の鋼管31内への挿入部分では、接続管40の外面に、接続管40の径方向の外側に延びる孔あき板41が設けられる。また接続管40の内面にも、接続管40の径方向の内側に延びる孔あき板42が設けられる。孔あき板41、42は、板面を鉛直方向に沿って配置した鋼板であり、接続管40の周方向に間隔を空けて複数枚設置される。
【0025】
鋼管コンクリート杭30内の外縁部では、複数本の主鉄筋32が鋼管31内のコンクリートConに埋設される。主鉄筋32は、鋼管コンクリート杭30の全長にわたる鉛直方向の鉄筋であり、複数本の主鉄筋32が、鋼管31の周方向に間隔を空けて配置される。主鉄筋32の上端部は隣り合う孔あき板41の間に挿入され、鋼管31と接続管40の間のコンクリートConに埋設される。
【0026】
接続管40内の外縁部には、接続管40と鋼管コンクリート杭30を結合一体化するための結合筋43が設けられる。結合筋43は鉛直方向の鉄筋であり、接続管40の内部から下方の鋼管31内に突出するように配置される。結合筋43は、接続管40の周方向に間隔を空けて複数本設けられ、隣り合う孔あき板42の間に配置される。各結合筋43は、接続管40内のコンクリートConと鋼管31内のコンクリートConに埋設される。
【0027】
また、各孔あき板41、42の孔411、421には接続管40の周方向に延びる短尺の鉄筋44が通され、これにより、孔あき板41、42と、鋼管31と接続管40の間および接続管40の内側のコンクリートConとの一体性が向上する。
【0028】
以上のように接続管40を設けた後、
図2(a)に示すように、鋼製の脚柱部50を、接続管40の上端部に溶接やボルト等で接合する。本実施形態では脚柱部50が円筒状の鋼管によって形成されており、鋼管の内部では、所定の高さまで充填材であるコンクリートConが充填される。ただし脚柱部50の形状および構成が上記に限ることはない。
【0029】
次に、
図2(b)に示すように仮締切体20を撤去して仮締切体20内の地盤Gを埋め戻すとともに、脚柱部50の上端部に鋼製の横梁部60を溶接やボルト等で接合する。この後、
図2(c)に示すように桟橋10を撤去する。以上の手順により、本発明の実施形態に係る橋脚1が構築される。橋脚1は、鋼管コンクリート杭30、接続管40、脚柱部50、横梁部60等から構成され、橋梁の上部工を既設の橋脚から受け替えることが可能になる。
【0030】
なお、仮締切体20の撤去時は、鋼管矢板21の上部を切断して除去し、
図2(b)に示すように、鋼管矢板21の下部は地盤G中に残置する。これは、
図2(c)における桟橋10の撤去時も同様であり、桟橋10を支持する鋼管杭12についても、その上部を除去し、下部を地盤G中に残置する。ただし、
図2(b)、(c)の工程で鋼管矢板21や鋼管杭12の全長を引抜いて除去してもよい。
【0031】
(2.地下構造物Sの構築方法)
本実施形態では、新設の橋脚1に橋梁の上部工を受け替えた後、地下構造物Sを構築する。
図4、5の(a)、(b)は、地下構造物Sの構築方法、特に地盤Gを床付け面まで掘削する過程について説明する図である。各図において、上図は地下構造物Sの構築方法の各工程を下図の線C-Cによる水平方向の断面で示したものであり、下図は上図の線A-Aによる鉛直方向の断面を示したものである。
【0032】
地下構造物Sを構築する際は、まず
図4(a)に示すように、水底の地盤Gに鋼管矢板等による山留壁2を構築し、山留壁2の橋脚1側の地盤Gの表面に、仮設の水底を構成する仮設床となる鉄樋3を設置する。当該地盤Gには、鉄樋3を支持する中間杭9も打設される。また鉄樋3の下方では、地盤Gが浅く掘削されて山留壁2の支保工4が設置される。支保工4は接続管40や脚柱部50の平面位置を避けて設けられるが、上図では煩雑さの回避のため支保工4の図示を省略している。
【0033】
続けて
図4(b)に示すように鉄樋3以深の地盤Gを所定深度まで掘削(一次掘削)した後、山留壁2の橋脚1側の地盤Gに、鋼製連壁等による山留壁5を形成する。山留壁5の下端部は、地下構造物Sの構築予定箇所よりも深い位置にある。なお地盤Gの掘削に伴い、地盤Gに残置していた鋼管矢板21の下部は、上から順に段階的に撤去される。これは地盤Gに残置していた鋼管杭12の下部についても同様である。後述する工程においても、地盤Gに残置していた鋼管矢板21や鋼管杭12の下部は、地盤Gの掘削に伴い上から順に段階的に撤去される。
【0034】
また本実施形態では、地盤Gの床付け面をセメント等の固化材により地盤改良し、地盤改良体80を形成する。さらに、鋼管コンクリート杭30の橋軸方向の側方に補強杭70を打設する。橋軸方向は、
図4(b)の上図の上下方向、下図の紙面法線方向に対応する。
【0035】
図6(a)は補強杭70を示す図であり、
図4(b)の上図の線D-Dによる鉛直方向の断面を示したものである。本実施形態の補強杭70は、鋼管コンクリート杭30を挟んで橋軸方向の両側に一対設けられる。補強杭70の下端部は地盤改良体80を貫通して地盤改良体80の下方に達し、その周囲では、地盤改良体90を地盤改良体80の下方に追加的に形成することで、補強杭70の引抜抵抗性が向上する。
【0036】
なお、本実施形態の補強杭70は鋼管杭であり、下端部等の外面にリブを設けて引抜抵抗性を高めることも可能であるが、これに限ることはない。また補強杭70の位置は、鋼管コンクリート杭30の橋軸方向の側方にあり、補強杭70も、鋼管コンクリート杭30と同様、橋軸直交方向に隣り合う地下構造物Sの構築予定箇所の間で、両脇の地下構造物Sを避けるように配置される。
【0037】
その後、
図5(a)に示すように、鋼管31の橋軸直交方向の両側に、橋軸直交方向の梁部材である抑え切梁6を設置する。一方の抑え切梁6(
図5(a)の左側の抑え切梁6)の一端は、鋼管31の周囲に設けたフレーム7を介して鋼管31に固定され、当該抑え切梁6の他端は、腹起し8を介して山留壁2に固定される。フレーム7はH形鋼等の鋼材により鋼管31を囲むように形成されるが、これに限ることはない。
【0038】
他方の抑え切梁6(
図5(a)の右側の抑え切梁6)の一端は、上記と同じくフレーム7を介して鋼管31に固定され、当該抑え切梁6の他端は、山留壁2の反対側に位置する別の山留壁や地下構造物等に固定される。
【0039】
図6(b)は、
図6(a)と同じく、
図5(a)の上図の線D-Dによる鉛直方向の断面を示したものである。本実施形態では、補強杭70の上端部を、連結材である水平固定梁71を介して鋼管31に連結する。水平固定梁71は鋼製の箱型部材であり、その一端が溶接やボルト等で鋼管31の外面に固定される。水平固定梁71の他端は補強杭70の上端部に固定される。当該上端部は、溶接やボルト等で補強杭70の杭頭に接合された部分である。なお、水平固定梁71の形状や構成は上記に限定されない。
【0040】
この後、
図5(b)に示すように水底の地盤Gを床付け面の地盤改良体80まで掘削する。地盤Gの掘削時には、山留壁5に加わる土圧を支持するための支保工4も設けられる。この支保工4も鋼管コンクリート杭30の平面位置を避けて設けられるが、上図では煩雑さの回避のため支保工4の図示を省略している。以下、掘削箇所に地下構造物Sを構築し、地下構造物Sの上方の地盤Gを埋め戻して鉄樋3等を撤去する手順となる。
【0041】
このように、地下構造物Sを構築する際は、
図4(b)に示す工程(一次掘削)までは鋼管コンクリート杭30を基礎として橋脚1の安定性を確保し、それ以深の地盤Gを掘削する際には、補強杭70や抑え切梁6を追加して地震等の水平力に対し橋脚1の安定性を確保することができる。これらの施工は鉄樋3下で行われるので、水上交通や水域Wの河積に影響を与えることもない。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、橋脚1の基礎として鋼管コンクリート杭30を用いる。鋼管コンクリート杭30は、鋼管31によるコンクリートConの拘束効果を有し構造性能が高く、橋脚1の基礎を細径化できる。また、鋼管コンクリート杭30と脚柱部50とを、鋼管コンクリート杭30の上端部に挿入した接続管40を介して接続することで、鋼管コンクリート杭30と脚柱部50とを強固に接続でき、施工も容易である。
【0043】
また本実施形態では、接続管40の外面の孔あき板41が接続管40と鋼管31の間のコンクリートConに埋設される構成となっており、孔あき板41とコンクリートConを介した応力伝達により、スリムな構成で接続管40と鋼管コンクリート杭30とを確実に固定できる。また本実施形態では、橋脚1の基礎が、鋼管31でコンクリートConを巻いた構造(鋼管コンクリート杭30)となることにより、コンクリートCon内の主鉄筋32の段数や本数を低減でき、主鉄筋32と孔あき板41との干渉を避けることが容易となり、主鉄筋32のあきも確保しやすい。
【0044】
また本実施形態では、前記の補強杭70や抑え切梁6により橋脚1を補強することで、橋軸方向や橋軸直交方向の大きな水平力に耐えることができ、橋脚1の供用中の地震等に対し安定性を確保できる。さらに本実施形態では、前記の主鉄筋32や結合筋43により、接続管40と鋼管コンクリート杭30との一体性を高めることができる。
【0045】
また本実施形態では橋脚1の基礎を細径化できるため、地下構造物Sの構築予定箇所との干渉回避も容易であり、地下構造物Sの更なる品質向上が可能である。また
図4、5の手順により鉄樋3以深の地盤Gを掘削して地下構造物Sを構築することで、水上交通等に影響を与えることもない。
【0046】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限定されない。例えば本実施形態では、橋脚1の鋼管コンクリート杭30が、地盤G内の地下構造物Sの構築予定箇所の間に配置されるが、橋脚1の設置箇所はこれに限らず、様々な理由により干渉を回避すべき箇所が地盤Gに存在する場合に、当該箇所を避けて橋脚1を設けることが容易である。干渉を回避すべき箇所には、現に地盤Gに存在する、地下構造物等の障害物なども含まれる。
【0047】
また橋脚1は水域Wに設けるものにも限らない。例えば橋脚1は地上に設けることもでき、この場合、橋脚1の構築後に、鉄樋3の代わりに覆工板を用い
図4、5と同様の手順を実施することで、地上交通等を阻害せずに地下構造物Sを構築することも可能である。
【0048】
また鋼管コンクリート杭30と接続管40の接合部も、
図3で説明した構成に限らない。例えば
図7(a)に示すように、前記の主鉄筋32が、鋼管コンクリート杭30の径方向に2段同心円状に並べて配置され、内側の主鉄筋32の上端部が、前記の結合筋43の代わりに接続管40内のコンクリートConに埋設される構成としてもよい。なお
図7(a)は、鋼管コンクリート杭30と接続管40の接合部に関し、
図3(b)に対応する断面を示したものである。以下の
図7(b)~(d)についても同様である。
【0049】
また
図7(b)に示すように、
図3(b)の構成から、接続管40の内側の孔あき板42や結合筋43等を省略することも可能である。さらに、
図7(c)に示すように、接続管40の内側の孔あき板42や結合筋43等を省略するとともに、接続管40と鋼管31の間には、前記の主鉄筋32に代えて結合筋43を配置する構成としてもよい。結合筋43は、接続管40と鋼管31の間から下方の鋼管31内に突出するように配置される。また
図7(d)に示すように、
図3(b)から接続管40の内外の孔あき板41、42、および結合筋43等を省略した構成としてもよい。
【0050】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0051】
1:橋脚
3:鉄樋
2、5:山留壁
6:抑え切梁
10:桟橋
20:仮締切体
30:鋼管コンクリート杭
31:鋼管
32:主鉄筋
40:接続管
41、42:孔あき板
43:結合筋
50:脚柱部
60:横梁部
70:補強杭
71:水平固定梁