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特開2024-69957建築物における漏水検知システムと漏水検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069957
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】建築物における漏水検知システムと漏水検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
G01M3/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180276
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓久
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
(72)【発明者】
【氏名】今仲 雅之
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】白井 真彦
(72)【発明者】
【氏名】道坂 岳央
(72)【発明者】
【氏名】菰田 夏樹
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA19
2G067BB13
2G067BB22
2G067CC02
2G067DD22
2G067EE08
2G067EE13
(57)【要約】
【課題】大掛かりな水分検知センサの設置構造を不要にして、漏水検知性に優れている、建築物における漏水検知システムと漏水検知方法を提供すること。
【解決手段】建築物における漏水検知システム100であり、建築物30を構成する2つの部材(土台12と外壁20)の界面に水分検知センサ80が介在しており、水分検知センサ80が記憶している漏水の有無に関する検知データを、水分検知センサ80と非接触の状態でリーダー装置90が取得するようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物における漏水検知システムであって、
前記建築物を構成する2つの部材の界面に、水分検知センサが介在しており、該水分検知センサが記憶している漏水の有無に関する検知データを、該水分検知センサと非接触の状態でリーダー装置が取得するようになっていることを特徴とする、建築物における漏水検知システム。
【請求項2】
前記2つの部材が、土台と外壁の構成部材であることを特徴とする、請求項1に記載の建築物における漏水検知システム。
【請求項3】
前記2つの部材が、土台と柱であることを特徴とする、請求項1に記載の建築物における漏水検知システム。
【請求項4】
前記2つの部材が、柱と外壁であることを特徴とする、請求項1に記載の建築物における漏水検知システム。
【請求項5】
前記2つの部材が、外壁に設けられている開口回りに存在する部材であることを特徴とする、請求項1に記載の建築物における漏水検知システム。
【請求項6】
前記建築物が木造建築物であることを特徴とする、請求項1に記載の建築物における漏水検知システム。
【請求項7】
前記水分検知センサが、アンテナと、制御部と、検知部とを有し、
基材の上に、前記アンテナと前記制御部と前記検知部が搭載され、該アンテナと該制御部と該検知部の一部が被覆部材により被覆されており、
前記検知部が前記被覆部材から露出している露出領域の導通もしくは非導通の状態により、水分の有無が検知されるようになっており、
前記制御部は、前記リーダー装置から供給された電力によって動作し、前記検知部の導通もしくは非導通の状態を判定して記憶することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建築物における漏水検知システム。
【請求項8】
建築物における漏水検知方法であって、
前記建築物を構成する2つ部材の界面に水分検知センサを介在させ、該水分検知センサが漏水の有無に関する検知データを記憶し、該水分検知センサと非接触の状態でリーダー装置にて該検知データを取得して漏水の有無を特定することを特徴とする、建築物における漏水検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物における漏水検知システムと漏水検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の異常気象に起因する大雨や台風により、建築物の床下浸水や床上浸水の件数が増加しており、その他、堤防の決壊による洪水や津波等により、建築物が浸水に至る件数も増加している。また、建築物の老朽化により、老朽化した雨仕舞い箇所から建築物の内部に雨漏りが生じ得る。このように、建築物に浸入した雨水は、建築物を構成する相互に接続されている様々な2つの部材の界面に入り込むことになるが、2つの部材の接合界面に隙間がない場合は、界面に入り込んだ水分が蒸散し難く、界面に存在する水分が建築物の構成部材の腐食等の原因になることから好ましくない。また、仮に時間の経過とともに水分が蒸散したとしても、長期間に亘って部材間に水分が残っている状態が続くことにより、構成部材の早期の腐食等の原因になる。
【0003】
以上のことから、建築物を構成する2つの部材間に存在する水分を検知すること、言い換えると、2つの部材間における漏水の有無を検知することが、建築物の安全性や耐久性の観点から重要になる。
【0004】
ここで、特許文献1には、点検が困難な、サッシ内部や配管内部などの漏水検査を行うことを可能にした、漏水検知構造が提案されている。具体的には、建物に設けられている防水部、もしくはその近傍に設けられている漏水センサと、防水部を通過した漏水を漏水センサに誘導する誘導手段と、漏水センサに接続されて、当該漏水センサで漏水を検知した際にその旨を報知する報知手段とを備えている。ここで、誘導手段は、防水部の所定の箇所から漏水センサに向けて下方に傾斜する傾斜面によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-154706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の漏水検知構造は、漏水センサを設置するための誘導手段を別途設ける必要があることから、建築物を構成する界面を備えた様々な2つの部材に対する適用が困難であり、大掛かりな漏水センサの設置構造ゆえに漏水センサの設置コストが高価になるといった課題もある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、大掛かりな水分検知センサの設置構造を不要にして、漏水検知性に優れている、建築物における漏水検知システムと漏水検知方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による建築物における漏水検知システムの一態様は、
前記建築物を構成する2つの部材の界面に、水分検知センサが介在しており、該水分検知センサが記憶している漏水の有無に関する検知データを、該水分検知センサと非接触の状態でリーダー装置が取得するようになっていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、水分検知センサが建築物を構成する2つの部材の界面に介在し、水分検知センサが記憶している漏水の有無に関する検知データを、水分検知センサと非接触の状態でリーダー装置が取得することにより、大掛かりな漏水センサの設置構造を不要にして、漏水検知性に優れている漏水検知システムとなる。本態様の漏水検知システムが適用される建築物には、戸建て住宅や集合住宅の他、物流倉庫や工場、アミューズメント施設や公共施設等が含まれる。
【0010】
また、本発明による建築物における漏水検知システムの他の態様は、
前記2つの部材が、土台と外壁の構成部材であることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、水分検知センサが介在する2つの部材が、土台と外壁の構成部材であることから、これらの部材が、建築物が大雨や洪水等によって浸水した際に漏水し易い建築物の下方にあることにより、建築物における漏水の有無を高い精度で検知することができる。ここで、外壁の構成部材とは、外装材や、外装材の室内側にある外壁パネルフレームを構成する縦桟や横桟、通気層を形成する胴縁(通気胴縁)等が挙げられる。また、壁には、耐力壁も含まれる。
【0012】
また、本発明による建築物における漏水検知システムの他の態様は、
前記2つの部材が、土台と柱であることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、水分検知センサが介在する2つの部材が、土台と柱の下端であることから、これらの部材が、建築物が大雨や洪水等によって浸水した際に漏水し易い建築物の下方にあることにより、建築物における漏水の有無を高い精度で検知することができる。
【0014】
また、本発明による建築物における漏水検知システムの他の態様は、
前記2つの部材が、柱と外壁であることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、水分検知センサが介在する2つの部材が、柱の例えば下方と外壁であることから、これらの部材が、建築物が大雨や洪水等によって浸水した際に漏水し易い建築物の下方にあることにより、建築物における漏水の有無を高い精度で検知することができる。ここで、例えば1階の柱と外壁の間において、柱の下方位置(例えば下端)から上方に向かって、一定の間隔で複数の水分検知センサが介在することにより、床上浸水後の浸水高さをある程度の精度で検知することが可能になることから好ましい。
【0016】
また、本発明による建築物における漏水検知システムの他の態様は、
前記2つの部材が、外壁に設けられている開口回りに存在する部材であることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、水分検知センサが介在する2つの部材が、外壁に設けられている窓等の開口回りに存在する部材であることから、これらの部材が、一般の雨水による漏水の可能性の比較的高い部材であることから、建築物における漏水の有無を高い精度で検知することができる。
【0018】
また、本発明による建築物における漏水検知システムの他の態様は、
前記建築物が木造建築物であることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、漏水検知システムが適用される建築物が木造建築物であることにより、木質材料ゆえに高含水状態となり易く、漏水後も水漏れ状態が維持され易いことから、漏水の履歴を看過することなく、漏水の有無を高精度に検知することができる。さらに、鉄骨造の建築物に比べて電波干渉が生じ難く、水分検知センサに記憶されている検知データをリーダー装置にて読み取り易くなる。
【0020】
また、本発明による建築物における漏水検知システムの他の態様は、
前記水分検知センサが、アンテナと、制御部と、検知部とを有し、
基材の上に、前記アンテナと前記制御部と前記検知部が搭載され、該アンテナと該制御部と該検知部の一部が被覆部材により被覆されており、
前記検知部が前記被覆部材から露出している露出領域の導通もしくは非導通の状態により、水分の有無が検知されるようになっており、
前記制御部は、前記リーダー装置から供給された電力によって動作し、前記検知部の導通もしくは非導通の状態を判定して記憶することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、水分検知センサを構成するアンテナと制御部と検知部の一部が被覆部材によって被覆されていることにより、水分による水分検知センサの破損を抑止できる。また、制御部が、リーダー装置から供給された電力によって動作し、検知部の導通もしくは非導通の状態を判定して記憶することにより、バッテリーレスの水分検知センサを形成でき、建築物における漏水の長期間の検知に際してバッテリー交換を不要にできる。
【0022】
また、本発明による建築物における漏水検知方法の一態様は、
前記建築物を構成する2つ部材の界面に水分検知センサを介在させ、該水分検知センサが漏水の有無に関する検知データを記憶し、該水分検知センサと非接触の状態でリーダー装置にて該検知データを取得して漏水の有無を特定することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、水分検知センサが建築物を構成する2つの部材の界面に介在し、水分検知センサが記憶している漏水の有無に関する検知データを、水分検知センサと非接触の状態でリーダー装置が取得することにより、大掛かりな漏水センサの設置構造を不要にして、高精度に漏水の有無を検知することができる。また、リーダー装置にて検知データを非接触の状態で取得することから、検知データの取得性も良好になる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から理解できるように、本発明の建築物における漏水検知システムと漏水検知方法によれば、大掛かりな漏水センサの設置構造を不要にして、漏水検知性に優れている、建築物における漏水検知システムと漏水検知方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る漏水検知システムと漏水検知方法の一例を説明する斜視図である。
図2】水分検知センサの一例の構成を示す平面図である。
図3図2のIII-III矢視図であって、水分検知センサの一例の構成を示す縦断面図である。
図4】リーダー装置と水分検知センサの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係る漏水検知システムと漏水検知方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0027】
[実施形態に係る漏水検知システムと漏水検知方法]
図1乃至図4を参照して、実施形態に係る漏水検知システムと漏水検知方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る漏水検知システムと漏水検知方法の一例を説明する斜視図である。また、図2は、水分検知センサの一例の構成を示す平面図であり、図3は、図2のIII-III矢視図であって、水分検知センサの一例の構成を示す縦断面図である。さらに、図4は、リーダー装置と水分検知センサの機能構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
図1に示す漏水検知システム100が適用される建築物30は、戸建ての木造建築物である。ここで、適用対象の建築物は、集合住宅や物流倉庫、各種公共施設であってもよいし、鉄骨造建物、RC(Reinforced Concrete)造建物、SRC(Steel Reinforced Concrete)造建物等であってもよいが、以下で説明するように、電波干渉が生じ難く、水分検知センサに記憶されている検知データをリーダー装置にて読み取り易い観点から、木造建築物への適用が好ましい。
【0029】
木造建築物30は、RC造の基礎10(布基礎等)の天端に土台12が固定され、土台12(横架材の一例)に対して柱14(間柱を含む)が立設し、土台12と柱14に対して外壁パネル(外壁の一例)が取り付けられることにより、その外装が形成される。図1では、柱14に固定される窓台16を横架材の他の例としてさらに図示しており、図1は、それらの一部を取り出して示している。
【0030】
外壁20は、外装材23(外壁面材)と、その背面にある縦桟21と横桟22とを有し、縦桟21と横桟22はパネルフレームを形成する。外壁20は、土台12と柱14等に対して釘等の固定手段により固定される。ここで、外装材23は、窯業系サイディングや金属系サイディング、木質系サイディング、樹脂系サイディング等のサイディングボード等により形成される。尚、外壁の構成は多様にあり、縦胴縁によって通気層が形成されてよく、透湿防水シートや断熱材(断熱フォームを含む)等が外装材23の背面にさらに設けられていてもよい。
【0031】
土台12の側面と外壁20(の下方の横桟22)の背面の界面には、間隔を置いて複数(図1では2つ)の水分検知センサ80Aが介層されている。
【0032】
また、柱14の側面のうち、対向する外壁パネル20(図1では、一方の外壁パネル20のみを図示)にて形成される目地26(図示例は縦目地)に対応する位置であって、土台12に近い位置には、別途の水分検知センサ80Bが介層されている。この水分検知センサ80Bに関しては、柱14の上方に向かって一定の間隔で複数の水分検知センサ80Bが設置されることにより、床上浸水後の浸水高さをある程度の精度で検知することが可能になる。
【0033】
さらに、柱14と土台12の接続部のうち、外壁パネル20に近い位置には、さらに別途の水分検知センサ80Cが設置されている。
【0034】
漏水検知システム100は、土台12と外壁パネル20の界面に介在する水分検知センサ80Aや、柱14と外壁パネル20の界面であって目地26の下方に対応する位置に介在する水分検知センサ80B、柱14と土台12の接続部に設置される水分検知センサ80C等に対して、リーダー装置90(もしくは、リーダー・ライタ装置)から指令信号がX1方向に送信され、指令信号を受信した水分検知センサ80が漏水の有無に関する検知データを電波としてX2方向に送信し、リーダー装置90にて漏水の有無に関する検知データを取得するシステムである。すなわち、リーダー装置90は、水分検知センサ80と非接触の状態で漏水の有無を特定するものである。図1では、リーダー装置90にある表示画面96に、「漏水有」が表示されている状態を一例として示している。
【0035】
建築物30が大雨や洪水等によって浸水した際に漏水し易い箇所は、当該建築物30の下方であることから、図示例における水分検知センサ80Aが介在する2つの部材を、土台12と外壁20としている。
【0036】
また、他の水分検知センサ80Bが介在する2つの部材が、柱14と外壁パネル20であって、それらの界面における目地26の下方(下端近傍)に対応する位置に水分検知センサ80Bが設置されることにより、外壁20の目地26から浸入した水が確実に落下する位置に水分検知センサ80Bが存在することで、目地単位の雨漏れや目地26の異常を検知でき、漏水の原因箇所の特定が容易となる。
【0037】
さらに、他の水分検知センサ80Cが介在する2つの部材が、柱14と土台12であって、それらの接続部における外壁パネル20に近い位置に水分検知センサ80Cが設置されることにより、横架材の一例である窓台16と柱14の接続部など、建物の上部から浸入した結露水を含む水分が浸入初期に溜まり易い位置に水分検知センサ80Cが存在することで、このような浸入ルートの水分を早期に発見することが可能になる。
【0038】
ここで、水分検知センサ80が介在する2つの部材としては、図示例の他にも、外壁20に設けられている窓やガラリ等の開口回り等があり、開口回りに存在する部材には、外壁20の窓周り部材である、縦横の胴縁、まぐさやまぐさ受け、窓台16等からなる縁部材、サッシ等が挙げられる。
【0039】
水分検知センサ80はプレート状を呈しており、プレート状の水分検知センサが2つの部材の界面に介層された状態で、当該2つの部材が相互に接続される。この水分検知センサ80の設置に際して、水分を水分検知センサに導くための斜路を設ける等、大掛かりな水分検知センサの設置構造は不要である。
【0040】
次に、図2乃至図4を参照して、漏水検知システム100を形成する、水分検知センサ80とリーダー装置90のそれぞれの構成について詳説する。
【0041】
水分検知センサ80は、基材71の上に、アンテナ50と、制御部40と、検知部60が搭載されることにより形成される。アンテナ50と制御部40と検知部60の一部は、被覆部材72により覆われており、これらの各要素の防水が図られている。また、検知部60のうち、被覆部材72から露出している露出領域60Aは、漏水の有無を検知する検知領域となっている。ここで、被覆部材72としては、ポリエステル等のフィルムの他、高分子膜によるコーティング材等が適用できる。
【0042】
基材71は、耐水性を備えたプラスチックフィルム等により形成され、基材71の背面は、不図示の両面接着テープ等を介して土台12の側面に貼り付けられる。
【0043】
検知部60は、相互に離間する第1電極61と第2電極62を有する。第1電極61と第2電極62はいずれも、導電性ペーストや金属箔等により形成される。
【0044】
検知領域60Aに水分が存在する場合は、第1電極61と第2電極62の間に電流が流れ(導通状態)、電気回路として閉回路を形成する。一方、検知領域60Aに水分が存在しない場合は、第1電極61と第2電極62の間に電流は流れず(非導通状態)、電気回路として開回路を形成する。
【0045】
制御部40は、通信回路42、制御回路44、及び記憶回路46を有する。通信回路42は、制御回路44から出力される信号を、アンテナ50に出力する。
【0046】
制御回路44はメモリを含み、メモリは検知部60の検知領域60Aの状態を記憶する。例えば、検知領域60Aに閉回路が形成されている場合は、漏水有りに相当するフラグ「1」を記憶回路46に記憶し、検知領域60Aに開回路が形成されている場合は、漏水無しに相当するフラグ「0」を記憶回路46に記憶する。
【0047】
アンテナ50は、制御部40がリーダー装置90と無線通信を実行するための機器である。アンテナ50は、リーダー装置90から出力される電波(電磁波等)を受信し、制御部40の動作に必要な電力を生成する。また、アンテナ50は、リーダー装置90から出力される指令信号を受信し、制御部40から出力される検知データをリーダー装置90に送信する。
【0048】
このように、水分検知センサ80は、リーダー装置90から供給された電力によって動作し、検知部60の導通もしくは非導通の状態を判定して記憶することにより、バッテリーレスの水分検知センサとして機能する。
【0049】
リーダー装置90は、通信部92、指令部94、及び表示部96を有する。指令部94にて出力された、検知データの読み出しを実行する指令信号は、通信部92を介して水分検知センサ80のアンテナ50に送信される。水分検知センサ80では、受信した指令信号の内容を制御回路44が判断し、記憶回路46に記憶されている検知データを、アンテナ50を介してリーダー装置90の通信部92に送信する。
【0050】
ここで、指令部94から出力される指令信号には、検知データの読み出しを実行する指令信号の他に、検知部60に対して漏水の有無を測定させる、測定実行指令信号が含まれていてもよい。このように、指令信号に複数種の信号が存在する場合は、水分検知センサ80の制御回路44において、指令信号の内容が判断され、指令信号に応じた制御が実行されることになる。
【0051】
表示部96は、図1に示すように表示画面(モニタ)を含んでおり、漏水の有無に関する検知結果が表示される。表示部96では、漏水有りの場合に、赤色のアラーム表示や点灯表示がなされてよく、その他、ブザーによる報知が実行されてもよい。
【0052】
また、図示を省略するが、リーダー装置90にも記憶部があり、建築物30に設置される水分検知センサ80の設置位置が建築物をトレースした図形データに描画され、各設置位置における水分検知センサ80ごとに、漏水の有無に関する検知結果がプロットされてよい。表示画面96に表示された建築物30のトレース画像において、各水分検知センサ80における漏水の有無(例えば、漏水無しの場合は「○」、漏水有りの場合は「×」で表示)が表示されることにより、建築物30のどの領域に漏水があるかの傾向を特定することができ、漏水源の特定に繋がる。
【0053】
以上で説明した漏水検知システム100を適用することにより、建築物30を構成する2つの部材の界面に配設されている水分検知センサ80に対して、リーダー装置90が非接触の状態で漏水の有無に関する検知データを取得することができるため、スムーズな漏水検知を実現できる。
【0054】
また、相互に接続される2つの部材の界面に水分検知センサ80が介在することにより、部材同士の接触面は乾燥し難く、含水状態を継続させ易いことから、漏水開始から時間が経過している場合でも、漏水の有無を高精度に検知することができる。
【0055】
また、建築物30における地盤に近い下方にある2つの部材の界面に水分検知センサ80が設置されることにより、建築物30が大雨や洪水等によって浸水した際に、漏水し易い建築物の下方に水分検知センサ80が存在することから、建築物30における漏水の有無を高精度に検知することができる。
【0056】
また、漏水検知システム100を構成する水分検知センサ80がバッテリーレスの水分検知センサであることから、建築物30における漏水の長期間の検知に際してバッテリー交換を不要にできる。
【0057】
さらに、図示例のように、漏水検知システム100が適用される建築物が木造建築物である場合は、木質材料ゆえに高含水状態となり易く、漏水後も水漏れ状態が維持され易いことから、漏水の履歴を看過することなく、漏水の有無を高精度に検知することができる。さらに、鉄骨造の建築物に比べて電波干渉が生じ難く、水分検知センサ80に記憶されている検知データをリーダー装置90にて読み取り易くなる。
【0058】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0059】
10:基礎(布基礎)
12:土台
14:柱
16:窓台
20:外壁(外壁パネル)
21:縦桟
22:横桟
23:外装材
25:固定手段(釘)
26:目地(縦目地)
30:建築物(木造建築物、戸建て住宅)
40:制御部
42:通信回路
44:制御回路
46:記憶回路
50:アンテナ
60:検知部
60A:露出領域(検知領域)
61:第1電極
62:第2電極
71:基材
72:被覆部材
80,80A,80B,80C:水分検知センサ
90:リーダー装置
92:通信部
94:指令部
96:表示部(表示画面)
100:建築物における漏水検知システム(漏水検知システム)
図1
図2
図3
図4