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特開2024-69962構造計算システム、構造計算方法及び構造計算プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069962
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】構造計算システム、構造計算方法及び構造計算プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20240515BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20240515BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20240515BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/13
G06F111:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180282
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中塚 光一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴博
(72)【発明者】
【氏名】山口 温弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 元嗣
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 拓
(72)【発明者】
【氏名】三富 遼太
(72)【発明者】
【氏名】吉原 和輝
(72)【発明者】
【氏名】青山 優也
(72)【発明者】
【氏名】リー ショヤン
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DJ02
5B146DJ14
5B146DL08
(57)【要約】
【課題】検定比目標値に応じた構造設計を、効率的に行なうための構造計算システム、構造計算方法及び構造計算プログラムを提供する。
【解決手段】計算装置20は、ユーザ装置10に接続される制御部21を備える。そして、制御部21が、ユーザ装置10から、設計対象の構造物の各構造部材に関する情報を取得し、構造部材の先行計算の性能指標を用いた構造計算により、各構造部材の検定比計算値を算出し、先行計算の性能指標及び検定比計算値と検定比目標値との近さに応じて、後続計算で用いる部材候補選定用の性能指標を算出し、性能指標に近い性能指標を持つ部材断面を選定し、後続計算で部材断面を用いた構造計算により、再度、各構造部材の検定比計算値を算出する繰り返し処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ装置に接続される制御部を備えた構造計算システムであって、
前記制御部が、
前記ユーザ装置から、設計対象の構造物の各構造部材に関する情報を取得し、
前記構造部材の先行計算の性能指標を用いた構造計算により、各構造部材の検定比計算値を算出し、
前記先行計算の性能指標及び前記検定比計算値と検定比目標値との近さに応じて、後続計算で用いる部材候補選定用の性能指標を算出し、
前記性能指標に近い性能指標を持つ部材断面を選定し、前記部材断面を用いた前記構造計算により、再度、各構造部材の検定比計算値を算出する繰り返し処理を実行することを特徴とする構造計算システム。
【請求項2】
前記制御部が、前記検定比計算値が検定比目標値に近い程、前記先行計算の性能指標に近い後続計算の性能指標を算出することを特徴とする請求項1に記載の構造計算システム。
【請求項3】
前記制御部が、前記検定比計算値と検定比目標値とが一致する場合に、前記繰り返し処理を終了することを特徴とする請求項1又は2に記載の構造計算システム。
【請求項4】
前記制御部が、前記構造計算により算出した評価指標値が収束したと判定した場合、前記繰り返し処理を終了することを特徴とする請求項1又は2に記載の構造計算システム。
【請求項5】
前記制御部が、設計対象の構造物の各構造部材の属性情報により、複数のグループを生成し、
前記グループ毎に、後続計算の性能指標を算出することを特徴とする請求項1に記載の構造計算システム。
【請求項6】
ユーザ装置に接続される制御部を備えた構造計算システムを用いて、構造計算を行なう方法であって、
前記制御部が、
前記ユーザ装置から、設計対象の構造物の各構造部材に関する情報を取得し、
前記構造部材の先行計算の性能指標を用いた構造計算により、各構造部材の検定比計算値を算出し、
前記先行計算の性能指標及び前記検定比計算値と検定比目標値との近さに応じて、後続計算で用いる部材候補選定用の性能指標を算出し、
前記性能指標に近い性能指標を持つ部材断面を選定し、前記部材断面を用いた前記構造計算により、再度、各構造部材の検定比計算値を算出する繰り返し処理を実行することを特徴とする構造計算方法。
【請求項7】
ユーザ装置に接続される制御部を備えた構造計算システムを用いて、構造計算を行なうためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記ユーザ装置から、設計対象の構造物の各構造部材に関する情報を取得し、
前記構造部材の先行計算の性能指標を用いた構造計算により、各構造部材の検定比計算値を算出し、
前記先行計算の性能指標及び前記検定比計算値と検定比目標値との近さに応じて、後続計算で用いる部材候補選定用の性能指標を算出し、
前記性能指標に近い性能指標を持つ部材断面を選定し、前記部材断面を用いた前記構造計算により、再度、各構造部材の検定比計算値を算出する繰り返し処理を実行する手段として機能させることを特徴とする構造計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の構造設計を行なうための構造計算システム、構造計算方法及び構造計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物(例えば、建物)の架構体は、柱、梁及び耐力壁等を含む構造部材を有している。これらの構造部材は、建築物の形状や荷重条件に応じて、その配置や断面形状等を含む設計因子が決定される。そして、梁及び耐力壁を含む構造部材を有する建築物の架構体を、コンピュータを用いて設計する設計方法も検討されている(例えば、特許文献1)。この文献に記載された設計方法では、コンピュータが、構造部材の少なくとも一つについて、遺伝的アルゴリズムに基づいて、設計因子の少なくとも一つの最適解を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-153994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載された技術では、遺伝的アルゴリズムにより構造断面の候補の組み合わせの最適化を図っている。しかしながら、構造断面候補を設定する際に、構造断面の性能値を考慮せずに組み合わせ最適化を行うため、候補の組み合わせパターンが膨大になり、計算を収束させるために長時間を要する。この場合、大規模の構造物の設計は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための構造計算システムは、ユーザ装置に接続される制御部を備える。そして、前記制御部が、前記ユーザ装置から、設計対象の構造物の各構造部材に関する情報を取得し、前記構造部材の先行計算の性能指標を用いた構造計算により、各構造部材の検定比計算値を算出し、前記先行計算の性能指標及び前記検定比計算値と検定比目標値との近さに応じて、後続計算で用いる部材候補選定用の性能指標を算出し、前記性能指標に近い性能指標を持つ部材断面を選定し、前記部材断面を用いた前記構造計算により、再度、各構造部材の検定比計算値を算出する繰り返し処理を実行する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、効率的に、構造部材断面を選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態のシステムの説明図である。
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
図3】実施形態の処理手順の説明図である。
図4】実施形態の収束状況の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図4に従って、構造計算システム、構造計算方法及び構造計算プログラムの一実施形態を説明する。本実施形態では、構造物として、鉄骨造の建物の構造部材の断面を計算する構造計算システムとして説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態では、ネットワークを介して接続されたユーザ装置10、計算装置20を用いる。
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、ユーザ装置10、計算装置20を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0010】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0011】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶装置H14は、ユーザ装置10、計算装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0012】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、ユーザ装置10、計算装置20における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0013】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0014】
〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは
〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0015】
(システム構成)
次に、図1を用いて、構造計算システムの各機能を説明する。
ユーザ装置10は、構造計算を行なうユーザが利用するコンピュータ端末である。
【0016】
計算装置20は、構造計算を行なうコンピュータシステムである。計算装置20は、制御部21、記憶部22を備える。
制御部21は、後述する処理(管理段階、グルーピング段階、構造計算段階、候補作成段階等を含む処理)を行なう。このための各処理のためのプログラムを実行することにより、制御部21は、管理部211、グルーピング部212、構造計算部213、候補作成部214等として機能する。
【0017】
管理部211は、ユーザ装置から設計データを取得する。この管理部211は、設計フェーズに応じた検定比目標値を特定するための目標設定テーブルを備える。この目標設定テーブルでは、設計フェーズが早い段階では、後続の設計フェーズよりも低い検定比目標値が設定される。この管理部211は、部材断面データベース(図示せず)から断面候補を選定する。この部材断面データベースは、性能指標と部材断面とを関連付けて記憶する。ここで、性能指標は、必要な部材耐力または部材耐力を算出できる材料強度や断面性能を表す指標である。そして、部材断面データベースは、後続計算用の部材候補選定用の断面性能に近い断面性能を持つ部材断面を選定する場合に用いられる。
【0018】
グルーピング部212は、建物を構成する構造部材のグルーピングを行なう。このグルーピング部212は、後述する学習処理によってグルーピングを行なう。そして、同じグループに属する構造部材について同じ性能指標(例えば、断面係数)を設定する。
【0019】
構造計算部213は、構造計算を行なう。構造計算部213は、各構造部材に許容応力度を特定するための許容情報を備える。この構造計算部213は、構造計算プログラムによって実現される。この構造計算部213には、RC造・S造・SRC造・木構造およびこれらを組み合わせた混構造等の構造物について、構造物形状、部材の材料、荷重データ等を入力する。そして、構造解析、断面検定などの構造計算等を行なう。
【0020】
候補作成部214は、先行候補における検定比に応じて、構造計算に用いる性能指標候補を決定する。本実施形態では、例えば、鉄骨造において、曲げが支配的な場合を想定して、曲げ耐力Ma或いは「Ma=ft・Z」より、ftを一定として断面係数Z(断面性能)を性能指標として用いる。
【0021】
(構造設計処理)
次に、図3を用いて、構造設計処理を説明する。
まず、計算装置20の制御部21は、設計情報の取得処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部21の管理部211は、ユーザ装置10から、構造計算対象(設計対象)の設計図を取得する。設計図には、建物の構造部材のオブジェクトが配置されている。オブジェクトには、属性情報(例えば、部材の長さ、各荷重条件における応力値)が付加されている。また、各構造部材には、性能指標(例えば、断面係数)が設定されている。
【0022】
次に、計算装置20の制御部21は、部材のグルーピング処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21のグルーピング部212は、部材の長さ、各荷重条件における応力値等の特性値の近さよりクラスタリング処理(教師無し学習)を行なうことにより、同一部材断面とする部材群を設定する。そして、グルーピング部212は、同じグループに属する構造部材に対して、共通するグループ識別子を付与する。
【0023】
次に、計算装置20の制御部21は、検定比目標値の設定処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の管理部211は、ユーザ装置10から、設計フェーズを取得する。この場合、管理部211は、目標設定テーブルを用いて、設計フェーズに応じた検定比目標値を設定する。例えば、見積時の設計フェーズにおいては、検定比目標値として、「0.9」、実際に設計する設計フェーズにおいては、検定比目標値を、見積時よりも「1」に近い「0.95」等が設定される。
【0024】
次に、計算装置20の制御部21は、グループ化された構造部材を用いての構造計算処理を実行する(ステップS14)。具体的には、制御部21の構造計算部213は、構造部材に設定された構造断面を用いて、構造計算を行なう。なお、1回目の構造計算では、部材断面データベースから取得した断面係数(Z1)を用いる。そして、構造計算部213は、各構造部材に生じる構造解析や断面検定などの構造計算を行なって、各部材の応力等を算出し、部材断面を算定する。更に、構造計算部213は、算出した部材断面の応力度と許容応力度の比率(検定比計算値)を算出する。更に、構造計算部213は、評価指標値として鉄骨重量を算出する。そして、構造計算部213は、構造計算の実行回数に関連付けて、構造計算結果(断面係数、検定比計算値、鉄骨重量等)を記憶部22に記録する。
【0025】
次に、計算装置20の制御部21は、制約条件チェック処理を実行する(ステップS15)。具体的には、制御部21の管理部211は、構造部材の応力度、変形、保有水平耐力等が所定範囲に収まっているかどうかを確認する。ここで、制約条件が所定範囲に収まっていない場合には、管理部211は、収束しておらず、違反事項があると特定する。
【0026】
次に、計算装置20の制御部21は、収束したかどうかについての判定処理を実行する(ステップS16)。具体的には、制御部21の管理部211は、各構造部材の検定比計算値が検定比目標値を超える違反数が、予め定めた基準数以下になっており、先行実行回数で算出した鉄骨重量に対する変化が、複数回、基準範囲内に収まっている場合に、収束したと判定する。
【0027】
収束していないと判定した場合(ステップS16において「NO」の場合)、計算装置20の制御部21は、各グループの断面係数及び検定比計算値を用いて、次の断面係数候補の選定処理を実行する(ステップS17)。具体的には、制御部21の管理部211は、下記式を用いて、実行回数n時(先行回)の断面係数Znに対して、次の実行回数〔n+1〕時(後続回)の断面係数Zn+1(性能指標候補)を決定する。この場合、グルーピングした構造部材の内で、検定比目標値との差分が最も大きい(遠い)構造部材の検定比を用いる。
【0028】
【数1】
ここで、Knは実行回数n時の検定比(検定比計算値)、Kgoalは検定比目標値である。また、αは係数(1≧α>0)である。このαの大きさにより、目標検定比へ近づける速度を調整する。例えば、「1」に近づくほど一気に目標検定比を目指すことになるが、その分、変動が大きいので、バランスがくずれやすくなる。一方、αが小さいほど、徐々に目標検定比に近づくので収束時間はかかるが、計算は安定する。この〔数1〕では、検定比計算値Knと検定比目標値Kgoalとの差分(近さ)に応じて、後続計算に用いる断面係数候補が算出される。この場合、検定比計算値Knと検定比目標値Kgoalとの差分が小さい程(近いほど)、先行計算の断面係数Znに近い断面係数Zn+1が算出される。
【0029】
そして、計算装置20の制御部21は、断面係数Zn+1に近い断面係数を持つ部材断面を部材断面データベースより選定し、選定した部材断面の性能を用いて、構造計算処理(ステップS14)以降の処理を繰り返す。
【0030】
一方、収束したと判定した場合(ステップS16において「YES」の場合)、計算装置20の制御部21は、出力処理を実行する(ステップS18)。具体的には、制御部21の管理部211は、ユーザ装置10に、構造計算の計算結果(収束時の断面係数、検定比計算値、鉄骨重量等)を出力する。
【0031】
図4には、〔数1〕において、例えば、検定比目標値Kgoalとして「0.9」、係数αとして「0.25」を用いて、構造計算部213(構造計算プログラム)において設計した場合の違反数及び鉄骨重量を示している。
【0032】
(作用)
図4に示すように、〔数1〕を用いることにより、検定比目標値を超える違反数は、10回程度の実行回数で「0」になる。この場合、目的変数である鉄骨重量は、ほぼ収束している。
【0033】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、次の断面係数候補の選定処理を実行する(ステップS17)。これにより、検定比計算値と検定比目標値との差分に応じて、構造計算に用いる部材断面候補を、効率的に選定することができる。この結果、検定比目標値に近い検定比を算出する部材断面を速やかに特定することができる。
【0034】
(2)本実施形態では、計算装置20の制御部21は、部材のグルーピング処理(ステップS12)、グループ化された構造部材を用いての構造計算処理(ステップS14)を実行する。これにより、建物の構造部材の配置、属性情報等が共通する構造部材をまとめて構造計算を行なうことができる。
【0035】
(3)本実施形態では、計算装置20の制御部21は、検定比目標値の設定処理を実行する(ステップS13)。これにより、設計フェーズに応じて、検定比目標値を設定することができる。ここでは、設計フェーズが早い段階では、後続の設計フェーズよりも低い検定比目標値が設定される。初期段階等の先行フェーズの設計に対して、後続の設計フェーズでは設計精度が向上するので、より「1」に近い検定比目標値を用いて、違反の発生を抑制できる。
【0036】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、計算装置20の制御部21は、部材のグルーピング処理を実行する(ステップS12)。ここで、人手により設定したグルーピングを用いてもよい。
【0037】
・上記実施形態では、性能指標として、部材の断面係数Zを用いる。変更する性能指標は断面係数Zに限定されるものではない。
例えば、鉄骨造において、せん断が支配的な場合、せん断耐力Qa或いは「Qa=fs・As」より、fsを一定としてせん断断面積Asを性能指標として用いてもよい。
【0038】
また、軸力が支配的な場合、軸耐力Na或いは「Na=ft・断面積A」より、ftを一定として断面積Aを性能指標として用いてもよい。
また、鉄筋コンクリート(RC)造において、曲げが支配的な場合、曲げ耐力Ma或いは「Ma=at・ft・有効せいj」より、〔ft・j〕を一定として引張鉄筋断面積atを性能指標として用いてもよい。
【0039】
また、せん断が支配的な場合、せん断耐力Qa或いは「Qa=fs・b・j」より、〔fs・j〕を一定として「b(部材幅)」を性能指標として用いてもよい。
また、軸力が支配的な場合、軸耐力Na或いは「Na=fc・A」より、fcを一定として「A(断面積)」を性能指標として用いてもよい。
【0040】
・上記実施形態では、計算装置20の制御部21は、検定比目標値の設定処理を実行する(ステップS13)。ここでは、設計フェーズに応じた検定比目標値を特定する。これに代えて、手入力により、検定比目標値を設定してもよい。
【0041】
・上記実施形態では、収束したと判定した場合(ステップS16において「YES」の場合)、計算装置20の制御部21は、出力処理を実行する(ステップS18)。これに代えて、計算装置20の制御部21は、部材のグルーピング処理(ステップS12)を再実行してもよい。この場合には、クラスタリング処理において用いる構造部材のオブジェクトの属性情報を変更して、他の部材群を設定する。例えば、配置及び要素種別に応じて、部材のグルーピングを変更する。
【0042】
・上記実施形態では、計算装置20の制御部21は、部材のグルーピング処理(ステップS12)、グループ化された構造部材を用いての構造計算処理(ステップS14)を実行する。ここで、異なるグループを生成して、構造計算処理(ステップS14)を実行するようにしてもよい。この場合には、クラスタリング処理において用いる属性情報を変更して、構造部材のグループ候補を生成する。次に、計算装置20の制御部21は、各グループ候補を用いての構造計算処理(ステップS14)を実行する。そして、すべてのグループ候補について終了した場合、計算装置20の制御部21は、収束後の目的変数値(例えば、鉄骨重量)を比較し、その順番で比較結果をユーザ装置10に出力する。
・上記実施形態では、計算装置20の制御部21は、部材のグルーピング処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21のグルーピング部212は、クラスタリング処理(教師無し学習)を行なう。ここでは、グルーピング処理は、教師無し学習に限定されるものではない。過去にグルーピングを行なって構造計算した事例を教師情報とする教師あり学習により、グルーピング予測モデルを生成してもよい。このグルーピング予測モデルを用いることにより、部材の属性を入力として、グループ候補を出力する。
【0043】
・上記実施形態では、先行回の断面係数、先行回の検定比及び検定比目標値を含む〔数1〕を用いて、後続回の断面係数候補(性能指標候補)を算出する。後続回の断面係数候補を算出する方法は、〔数1〕を用いる場合に限定されない。先行回で計算した検知比と検定比目標値との近さに対応する断面係数候補を算出する関数であれば、指数関数を含む式を用いてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、〔数1〕では、係数αとして、定数(一例として「0.25」)を用いる。この係数αは、計算状況に応じて、動的に変更してもよい。変更する場合には、例えば、検定比と検定比目標値との近さを示す変数を用いる。
【0045】
・上記実施形態では、計算装置20に、管理部211、グルーピング部212、構造計算部213、候補作成部214等を設けたが、ハードウェア構成はこれに限定されるものではない。例えば、構造計算部213を、別のハードウェアに設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…ユーザ装置、20…計算装置、21…制御部、211…管理部、212…グルーピング部、213…構造計算部、214…候補作成部、22…記憶部。
図1
図2
図3
図4