(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070010
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】係止装置
(51)【国際特許分類】
B65H 75/24 20060101AFI20240515BHJP
B65H 18/04 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B65H75/24
B65H18/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180335
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000151667
【氏名又は名称】株式会社東伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 哲
(72)【発明者】
【氏名】栗塚 隆臣
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 祐治
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 崇
【テーマコード(参考)】
3F055
3F058
【Fターム(参考)】
3F055AA01
3F055AA06
3F055AA10
3F055CA04
3F058AA02
3F058AA03
3F058AA04
3F058AB01
3F058CA03
3F058DA04
3F058DB11
3F058DB19
3F058JA02
3F058JA15
3F058KA08
(57)【要約】
【課題】巻芯の着脱操作を容易に実行することができる係止装置を提案する。
【解決手段】巻取軸に対して径の異なる巻芯を装着するための係止装置である。この係止装置は、本体部と、保持部と、突出部と、を備える。本体部は、巻取軸を挿入可能な軸孔が設けられた筒状である。保持部は、本体部の外周を覆うように配置され、本体部に対して軸孔を中心に回転可能に構成されている。突出部は、本体部の周囲にて本体部の周方向に間隔を開けて配置され、保持部の回転に伴って周方向に移動する。また本体部は、押出部と、磁石と、を備える。押出部は、突出部が所定の押出位置にあるときに、突出部を当該本体部の外側に向かって押し出す。磁石は、突出部が押出位置とは異なる吸引位置にあるときに、突出部を当該本体部の中心側に向かって移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取軸に対して径の異なる巻芯を装着するための係止装置であって、
前記巻取軸を挿入可能な軸孔が設けられた筒状の本体部と、
前記本体部の外周を覆うように配置され、前記本体部に対して前記軸孔を中心に回転可能に構成された保持部と、
前記本体部の周囲にて前記本体部の周方向に間隔を開けて配置され、前記保持部の回転に伴って前記周方向に移動する複数の突出部と、を備え、
前記本体部は、
前記突出部が所定の押出位置にあるときに、前記突出部を当該本体部の外側に向かって押し出す押出部と、
前記突出部が前記押出位置とは異なる吸引位置にあるときに、前記突出部を当該本体部の中心側に向かって移動させる複数の磁石と、を備える、係止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の係止装置であって、
前記突出部は、磁石により吸引可能な軟磁性体部材を含む、係止装置。
【請求項3】
請求項1に記載の係止装置であって、
前記保持部の回転可能な範囲を制限する制限部を備える、係止装置。
【請求項4】
請求項3に記載の係止装置であって、
前記制限部は、
前記本体部と前記保持部との間に配置される球状体と、
前記本体部に設けられ、前記球状体と係合する第1溝部と、
前記保持部に設けられ、前記球状体と係合する第2溝部と、を備え、
前記第1溝部及び前記第2溝部のうちの少なくともいずれか一方は、前記周方向に長さを有する、係止装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の係止装置であって、
前記制限部によって前記保持部が回転可能な範囲において、前記突出部は、前記押出位置と、当該押出位置を挟むように配置される少なくとも2つの前記吸引位置と、に移動可能に構成されている、係止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スリッター装置にてシートを巻き取るために、シートの巻芯を固定する際に用いる係止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、フィルム、金属箔等の連続したシート状の長尺巻物を巻き戻しながら任意の縦方向幅に連続して切断して得られる製品シートを巻き取るスリッター装置が知られている。スリッター装置は、その軸回りに回転する巻取軸を備えており、円筒形の巻芯を巻取軸に装着し、巻芯を回転させることで製品シートを巻き取るように構成されている。
【0003】
巻取軸の外周には突出部材が備えられており、この突出部材は、例えば、外部から供給される空気の圧力によって巻取軸の径方向外側へ突出する。そして突出部材が巻芯の内周面と当接することで、巻芯が巻取軸に固定される。
【0004】
製品シートの巻き取りに用いられる巻芯は、巻き取るシートの種類や用途などに応じて様々な径のものが使用される。しかし、多種の巻芯に合わせて様々な径の巻取軸を揃えることは、コストの増大につながることになる。そこで、特許文献1では、1つの巻取軸に対して様々な径の巻芯を取り付けられるように、巻取軸に取り付けるアダプタとして用いられる係止装置が提案されている。この係止装置は、環状にした板バネにより、係止装置の外周に配置された複数の保持部を外側方向へ押し出し、巻芯の内周面と当接させることで巻芯を保持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の係止装置における保持部のように、外周方向へ突出する部材を備える構成では、巻取軸を巻芯に挿入するときには当該部材が突出せずに内側に引き込まれていることで、巻芯の着脱の操作を容易にすることができる。しかしながら特許文献1に記載される係止装置では、当該部材を十分に内側に引き込むことが難しい場合がある。
【0007】
本開示の目的は、巻芯の着脱操作を容易に実行することができる係止装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、巻取軸に対して径の異なる巻芯を装着するための係止装置である。この係止装置は、本体部と、保持部と、突出部と、を備える。本体部は、巻取軸を挿入可能な軸孔が設けられた筒状の形状である。保持部は、本体部の外周を覆うように配置され、本体部に対して軸孔を中心に回転可能に構成されている。突出部は、本体部の周囲にて本体部の周方向に間隔を開けて配置され、保持部の回転に伴って周方向に移動する。また本体部は、押出部と、磁石と、を備える。押出部は、突出部が所定の押出位置にあるときに、突出部を当該本体部の外側に向かって押し出す。磁石は、突出部が押出位置とは異なる吸引位置にあるときに、突出部を当該本体部の中心側に向かって移動させる。
【0009】
このように構成された係止装置では、保持部を本体部に対して相対的に回転させることで、突出部が外側へ突出した状態と、中心側への引き込まれた状態と、を切り替えることができる。よって、保持部を回転させて突出部が内側に引き込まれた状態とすることで、巻芯の着脱操作を容易に実行することができる。
【0010】
上述した係止装置において、突出部は、磁石により吸引可能な軟磁性体を含む部材であってもよい。このような構成であれば、吸引位置にある突出部を磁石により直接移動させることができるため、部品の増加によって係止装置の構造が複雑化してしまうことを抑制できる。
【0011】
上述した係止装置は、保持部の回転可能な範囲を制限する制限部を備えていてもよい。このような構成であれば、本体部に対する保持部の回転可能な範囲が限られたものとなるため、保持部が本体部に対して無制限に回転する構成と比較して、突出部を押圧位置や吸引位置に移動させる操作を実行し易くなる。
【0012】
上述した係止装置において、制限部は、本体部と保持部との間に配置される球状体と、本体部に設けられ、球状体と係合する第1溝部と、保持部に設けられ、球状体と係合する第2溝部と、を備えていてもよい。また、第1溝部及び第2溝部のうちの少なくともいずれか一方は、周方向に長さを有していてもよい。
【0013】
このように構成された係止装置では、第1溝部及び第2溝部に球状体が係合することで回転範囲を制御することができる。また、係合する媒体が球状体であることから、引っ掛かりを抑制してスムーズな回転を実現できる。
【0014】
上述した係止装置において、制限部によって保持部が回転可能な範囲において、突出部は、押出位置と、当該押出位置を挟むように配置される少なくとも2つの吸引位置と、に移動可能に構成されていてもよい。このような構成であれば、突出部の使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】
図5Aが押出位置に突出部が位置するときの係止装置を示す正面図であり、
図5Bが吸引位置に突出部が位置するときの係止装置を示す正面図である。
【
図7】係止装置を用いて構成された巻取軸の斜視図である。
【0016】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.係止装置]
図1に示す係止装置1は、本体部11と、保持部13と、複数の突出部15と、を備える。係止装置1は、各部品が組みつけられた状態において中央に後述する軸孔17を有する円筒形状である。係止装置1は、
図6に示す巻取軸100に対して取り付けられる装置である。
【0017】
ここで、巻取軸100の構成について説明する。巻取軸100は、スリッターなどのロール巻取装置に用いられるものであって、円柱形の軸心部101の外周に嵌め合わせられた円筒形の巻取ユニット102が、軸心部101の軸方向に並べて複数装着されている。
【0018】
巻取ユニット102は、シリンダブロックに軸受を介して回転可能に取り付けられた外周環に、内外へ出入りするように設けられた係止部材103を備えている。巻取軸100は、本実施形態の係止装置1を用いない場合でも、巻芯を保持可能である。巻取軸100には、巻取ユニット102の係止部材103が外周環の外周面からの突出量が小さくなるように内方へ退避した位置で、図示しない巻芯が外周環の外側に装着される。
【0019】
巻取軸100は、軸心部101を介して供給される空気又はバネ等の付勢手段によって、複数の係止部材103のそれぞれを径方向外側へ移動させ、係止部材103を巻芯の内側に押しつけることで、巻取ユニット102に対して巻芯を固定することができる。
【0020】
係止装置1は、巻取軸100に対して、巻取軸100が保持可能な巻芯の径とは径の異なる巻芯を装着させるためにアダプタとして用いられる。係止装置1は、巻取ユニット102の外周環の外側に嵌め合わせて巻取軸100に取り付けられる。そして、係止装置1の外周に巻芯が装着される。
【0021】
[1-2.本体部]
図2A~2B及び
図3A~3Cに示されるように、本体部11は、巻取軸100を挿入可能な軸孔17が設けられた筒状の部品である。以下の説明において、筒状の本体部11の中心軸Aと外周とを結ぶ線分の方向を半径方向とし、中心軸Aを中心として回転する方向を周方向として記載する。また中心軸Aの長さ方向を軸方向として記載する。
【0022】
本体部11は、1つの環状溝21と、6つの押出溝23と、が形成されており、さらに6つの磁石25を備える。
環状溝21は、本体部11の外周面に形成され、周方向の全周に形成された溝である。環状溝21は、中心軸Aの長さ方向に関して、本体部11の略中央部分に設けられている。環状溝21の底には、周方向に間隔を空けた6か所に磁石25が配置されている。この磁石25は、突出部15が後述する吸引位置にあるときに、突出部15を本体部11の中心側(すなわち中心軸Aの位置する方向)に向かって移動させる。
【0023】
押出溝23は、周方向に間隔を空けた6か所に設けられる。押出溝23は、本体部11の軸方向の一方の端部11aから他方の端部11bに向かって伸びて環状溝21を跨ぐように形成されている。押出溝23の軸方向の長さは、突出部15の軸方向の長さとほぼ同じ長さである。
【0024】
図3Aに示されるように、それぞれの押出溝23は、周方向の一方の端部に位置する第1底面23aと、周方向の他方の端部に位置する第2底面23bと、を有している。それらは中心軸Aからの距離が異なる。より詳細には、第1底面23aから第2底面23bに向かって徐々に外周から中心軸Aに向かう深さが小さくなるように構成されている。つまり、第2底面23bの方が第1底面23aよりも半径方向の外側に位置するように構成されている。第2底面23bは、突出部15が後述する押出位置にあるときに、突出部15を本体部11の外側(すなわち中心軸Aから離れる方向)に向かって押し出す。
【0025】
本体部11の外周端部において押出溝23が形成されていない部分には、半球状の第1溝部27が形成されている。
図1に示されるように、第1溝部27には球状体の一部が嵌り込むことが可能である。なお本体部11の他方の端部11bはフランジ状に広がっている。
【0026】
[1-3.保持部]
図4A~4Dに示す保持部13は、本体部11の外周を覆うように配置され、本体部11に対して軸孔17を中心として回転可能に構成されている。
【0027】
保持部13は、周方向に間隔を空けた6か所に離れて設けられる切り欠き31を有する。切り欠き31は、一端13a側から他端13bに向かって長さを有するスリットである。
切り欠き31は、
図1に示されるように、突出部15を挿入可能な大きさを有する。切り欠き31における半径方向外側の部分は、突出部15の直径よりも幅が細くなっている。そのため、切り欠き31に配置された突出部15は、切り欠き31から外側に脱落することはない。一方で、切り欠き31における半径方向内側の部分の幅は、突出部15の直径よりも大きい。しかし、突出部15が内側方向へ移動したときは本体部11と当接して脱落が抑制される。
【0028】
保持部13の一端13aの内側のうち、切り欠き31が形成されていない部分に、円周方向に沿って伸びる第2溝部33が形成されている。
図1に示されるように、第2溝部33には球状体の一部が嵌り込むことが可能である。
【0029】
保持部13の外周面には、周方向に間隔を空けた3か所に、ボールプランジャ35が配置されている。ボールプランジャ35は、荷重を加えない状態において先端の球体部分が保持部13の外縁部分よりも外側に突出しており、球体部分に半径方向内側に向かう荷重が加えられると内側に移動する。
【0030】
[1-4.突出部]
突出部15は、
図1に示されるように、円柱状の部材である。突出部15は、切り欠き31に収められた状態において、上述したように、半径方向に一定範囲で移動可能に構成されている。突出部15は、磁石25により吸引可能な軟磁性体部材である。
【0031】
[1-5.係止装置の作動]
図5A、5Bを用いて係止装置1の作動を説明する。
図5Aと
図5Bとは、本体部11に対して保持部13が相対的に回転している点で相違する。なお、保持部13の位置を固定して示している。
【0032】
保持部13は、中心軸Aを中心として、本体部11に対して相対的に回転変位する。保持部13の回転可能な範囲は、金属製の球である球状体41と、第1溝部27と、第2溝部33と、によって制限される。球状体41は、その約半分が第1溝部27に係合し、残りの約半分が第2溝部33に係合する。第1溝部27は球状体41とほぼ同じ半径の半球状であるため、本体部11に対する球状体41の位置は変化しない、一方、第2溝部33は周方向に長さを有しているため、球状体41は第2溝部33の長さ方向に移動可能である。このような構成であるため、保持部13は、球状体41が第2溝部33において移動可能な範囲において、本体部11に対して回転変位が可能となっている。保持部13は、本体部11に対して、
図5Aの位置から
図5Bの位置までの間で変位可能である。球状体41、第1溝部27、及び第2溝部33が、制限部に相当する。
【0033】
複数の突出部15は、本体部11の周囲にて本体部11の周方向に間隔を開けて配置される。この複数の突出部15は、保持部13の回転に伴って周方向に移動する。
突出部15は、保持部13の回転に伴い、押出溝23の底面(すなわち本体部11の外周面)に沿って移動する。ここで、突出部15が第2底面23bに近接する位置を押出位置とし、第1底面23aに近接する位置を吸引位置とする。押出位置及び吸引位置は、突出部15を基準とした、本体部11における位置である。
図5Aは、複数の突出部15それぞれが押出位置にある場合を示す。
図5Bは、複数の突出部15それぞれが吸引位置にある場合を示す。
【0034】
突出部15は、
図5Aに示す押出位置にあるとき、第2底面23bによって本体部11の外側に押し出され、突出部15の一部は保持部13の外縁よりも半径方向の外側に突出する。第2底面23bは、押出部の一例である。
【0035】
第1底面23aは第2底面23bよりも中心軸Aに近い位置(すなわち、半径方向の内側)にあるため、突出部15は、
図5Bに示す吸引位置にあるときは、押出位置にあるときと比較して、半径方向内側に移動可能である。そして第1底面23aの近傍には磁石25が設けられているため、突出部15は磁石25により吸引され、半径方向の内側に向かって移動させられる。
上述した制限部は、突出部15が押出位置と吸引位置を含む範囲内で移動するように、保持部13の移動を制限する。
【0036】
スリッター装置による巻取運転を行うときには、係止装置1が
図5Bに示す状態において、巻芯51を係止装置1の外側に配置する。このとき、巻芯51の内周面には、ボールプランジャ35のみが接触している。そして、図示しない巻取軸を回転させることで本体部11を反時計回りに回転させると、保持部13は巻芯51とボールプランジャ35との摩擦力を受けて本体部11から遅れて回転し、
図5Aのように本体部11と保持部13の相対的な位置が変化する。これにより、突出部15が半径方向外側に突出し、巻芯51の内周面と接触する。突出部15はボールプランジャ35よりも巻芯51と強く接触するため、巻芯51と係止装置1とが固定される。その結果、巻取軸の回転に伴って巻芯51を回転させることができる。
【0037】
[1-6.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)係止装置1では、突出部15が押出位置にあるとき、本体部11における第2底面23bが、突出部15を本体部11の外側に向かって押し出す。また、突出部15が吸引位置にあるとき、本体部11に設けられた磁石25が、突出部15を本体部11の中心側に向かって移動させる。
【0038】
このような構成であるため、突出部15が保持部13の外周から外側へ突出したり内側へ引き込まれたりすることを、本体部11と保持部13との相対的な回転により実現できる。よって、簡便に突出部15を内側に引き込んだ状態とすることができ、巻芯の着脱操作を容易に実行することができるようになる。
【0039】
(1b)係止装置1では、突出部15は、磁石25により吸引可能な軟磁性体部材で構成されている。そのため、吸引位置にある突出部15を磁石25により直接的に移動させることができることから、突出部の構造が複雑化してしまうことを抑制できる。
【0040】
(1c)係止装置1では、球状体41、第1溝部27、及び第2溝部33が、保持部13の回転可能な範囲を制限する制限部として機能する。このように回転範囲が制限されることで、保持部13を回転させて所望の位置に回転させる操作を容易なものとすることができる。当該係止装置1では、本体部11に対して保持部13を一方に回転させることで突出部15を突出させることができ、他方に回転させることで突出部15を引っ込めることができる。
【0041】
(1d)係止装置1では、制限部が、本体部11と保持部13との間に配置される球状体41と、本体部11に設けられ、球状体41と係合する第1溝部27と、保持部13に設けられ、周方向に長さを有しており、球状体41と係合する第2溝部33と、を含む。
【0042】
上記のように構成されているため、係止装置1は、第1溝部27及び第2溝部33に球状体41が係合することで回転範囲を制御することができる。また、係合する部分が球状であるため、溝内で引っ掛かりにくくなり、本体部11と保持部13の回転をスムーズに行わせることができる。
【0043】
[2.その他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0044】
(2a)上記実施形態では、係止装置1として、スリッターの巻取軸100に取り付けるアダプタである構成を例示した。しかしながら、スリッター以外の装置において、巻芯を保持するための装置に用いる構成であってもよい。また、
図7に示されるように、係止装置1を、アダプタではなく、巻取軸を構成する要素として用いてもよい。つまり、係止装置1を巻取軸に外嵌するのではなく、巻取ユニット102に代えて複数の係止装置1を用いて巻取軸200を構成してもよい。
【0045】
(2b)上記実施形態では、本体部11が、押出部である第2底面23bと、磁石25とを備える構成を例示した。しかし、押出部と磁石とを有していれば、本体部の具体的な構成は実施形態の構成に限定されない。例えば、押出部は押出溝23の一部でなく、周囲よりも外側に突出した部分であってもよい。また、押出部として、保持部13の回転に応じて外側に突出する機構を用いてもよい。
【0046】
(2c)上記実施形態では、保持部13として、本体部11に外嵌する環状形状であって、スリット状の切り欠き31により突出部15を保持する構成を例示したが、保持部の具体的な形状は特に限定されない。例えば、保持部13は全体として環状である必要はなく、例えば、それぞれが1つの突出部15を保持する複数の保持部が本体部11に取り付けられていてもよい。また、保持部と突出部とが、ヒンジやリンク機構を介して連結された構成であってもよい。
【0047】
(2d)上記実施形態では、突出部15として、軟磁性体により構成される円柱状の部材を例示した。しかしながら、具体的な構成はこれに限定されない。突出部は、板状、ブロック状、角棒状、球状などであってもよい。また突出部は、軟磁性体ではなく、それ以外の磁性体であってもよい。例えば突出部が磁石を備えていてもよい。また、突出部の一部のみが軟磁性体であってもよいし、突出部と連動する部分に軟磁性体が設けられている構成であってもよい。例えば、磁性体を備えない突出部と、該突出部と連結している磁性体と、を備え、本体部の磁石が上述した磁性体を駆動させることで、突出部が中央側に移動するように構成されていてもよい。
【0048】
(2e)上記実施形態では、制限部として、球状体41と、第1溝部27と、周方向に長さを有する第2溝部33と、を含む構成を例示した。しかし、制限部は実施形態で示した構成以外の構成であってもよい。例えば、第1溝部27が周方向に長さを有していてもよい。また、球状体41に替えて、本体部11に突起が設けられており、当該突起が第2溝部33に係合するように構成されていてもよい。また、そのような突起は保持部13側に設けられていて、第1溝部27が周方向に長さを有していてもよい。また、突起は本体部11又は保持部13に一体に形成されていてもよいし、本体部11又は保持部13に対して着脱可能な部材であってもよい。
【0049】
(2f)上記実施形態では、制限部によって制限される回転可能な範囲において、各突出部15が1つの押出位置と1つの吸引位置とに変位可能となる構成を例示した。しかしながら、制限部によって保持部13が回転可能な範囲において、突出部15は、2つ以上の吸引位置や押出位置に移動可能に構成されていてもよい。例えば、
図8に示されるように、突出部15は、押出位置(つまり第2底面23bが設けられる位置)と、当該押出位置を挟むように配置される少なくとも2つの吸引位置(つまり第1底面23aが設けられる位置)と、に移動可能に構成されていてもよい。
【0050】
(2g)上記実施形態では、ボールプランジャ35を巻芯51と当接させて保持部13と巻芯51との間に摩擦力を生じさせることによって、本体部11を回転させることで保持部13との相対的な位置を変化させる構成を例示した。しかしながら、本体部11と保持部13との相対的な位置を変化させることが可能であれば、ボールプランジャ35は設けられていなくてもよい。例えば巻芯51の内周面と保持部13の外周面とが滑らないように構成されていれば、ボールプランジャ35を設けなくてもよい。またボールプランジャ35に替えて、摩擦力を生じさせるための別の部品や装置が配置されていてもよい。
【0051】
(2h)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0052】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
巻取軸に対して径の異なる巻芯を装着するための係止装置であって、
前記巻取軸を挿入可能な軸孔が設けられた筒状の本体部と、
前記本体部の外周を覆うように配置され、前記本体部に対して前記軸孔を中心に回転可能に構成された保持部と、
前記本体部の周囲にて前記本体部の周方向に間隔を開けて配置され、前記保持部の回転に伴って前記周方向に移動する複数の突出部と、を備え、
前記本体部は、
前記突出部が所定の押出位置にあるときに、前記突出部を当該本体部の外側に向かって押し出す押出部と、
前記突出部が前記押出位置とは異なる吸引位置にあるときに、前記突出部を当該本体部の中心側に向かって移動させる複数の磁石と、を備える、係止装置。
[項目2]
項目1に記載の係止装置であって、
前記突出部は、磁石により吸引可能な軟磁性体部材を含む、係止装置。
[項目3]
項目1に記載の係止装置であって、
前記保持部の回転可能な範囲を制限する制限部を備える、係止装置。
[項目4]
項目3に記載の係止装置であって、
前記制限部は、
前記本体部と前記保持部との間に配置される球状体と、
前記本体部に設けられ、前記球状体と係合する第1溝部と、
前記保持部に設けられ、前記球状体と係合する第2溝部と、を備え、
前記第1溝部及び前記第2溝部のうちの少なくともいずれか一方は、前記周方向に長さを有する、係止装置。
[項目5]
項目3又は項目4に記載の係止装置であって、
前記制限部によって前記保持部が回転可能な範囲において、前記突出部は、前記押出位置と、当該押出位置を挟むように配置される少なくとも2つの前記吸引位置と、に移動可能に構成されている、係止装置。
【符号の説明】
【0053】
1…係止装置、11…本体部、11a…端部、11b…端部、13…保持部、13a…一端、13b…他端、15…突出部、17…軸孔、21…環状溝、23…押出溝、23a…第1底面、23b…第2底面、25…磁石、27…第1溝部、31…切り欠き、33…第2溝部、35…ボールプランジャ35、41…球状体、51…巻芯、100…巻取軸、101…軸心部、102…巻取ユニット、103…係止部材、200…巻取軸