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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070011
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】油圧シリンダの保護装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
E02F9/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180337
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏弥
(72)【発明者】
【氏名】有木 亮
(72)【発明者】
【氏名】今川 真光
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 志津
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015BA01
(57)【要約】
【課題】支持部材とガード部材との摺動部分の潤滑を長期にわたって維持することができる油圧シリンダの保護装置を提供する。
【解決手段】油圧シリンダの保護装置26は、支持部材40と、支持部材40に移動自在に支持されたガード部材42とを含む。支持部材40は、ガード部材42に摺動自在に接触する中空の案内レール44を有する。案内レール44には、案内レール44の内部にグリースを充填するためのグリースニップル46と、案内レール44の内部に充填されたグリースを支持部材40の案内レール44とガード部材42との摺動部分に供給するためのグリース供給口48とが形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、前記シリンダチューブに摺動自在に装着されたピストンロッドとを備える油圧シリンダを保護するための保護装置であって、
支持部材と、前記支持部材に移動自在に支持されたガード部材とを含み、
前記支持部材は、前記ガード部材に摺動自在に接触する中空の案内レールを有し、
前記案内レールには、前記案内レールの内部にグリースを充填するためのグリースニップルと、前記案内レールの内部に充填されたグリースを前記案内レールと前記ガード部材との摺動部分に供給するためのグリース供給口とが形成されている油圧シリンダの保護装置。
【請求項2】
前記グリースニップルは、前記ガード部材の移動範囲外に位置し、前記ガード部材の位置によらず露出している、請求項1に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記シリンダチューブに接続される一対のホースを保護するホースガードを有し、
前記ホースガードは、前記グリースニップルへのアクセスを阻害しない位置に配置されている、請求項1に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項4】
前記グリースニップルは前記案内レールの一端側に設けられ、前記グリース供給口は前記案内レールの他端側に設けられている、請求項1に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項5】
前記案内レールは一対設けられている、請求項1に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項6】
前記ガード部材は、前記シリンダチューブから前記ピストンロッドが押し出された際に前記ピストンロッドの少なくとも一部を覆うガード板と、前記ガード板に連結され前記案内レールに摺動自在に接触する被案内体とを備える、請求項1に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項7】
前記ガード部材は、前記ガード板と前記被案内体とを連結する連結体を含む、請求項6に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項8】
前記ガード板は、前記ピストンロッドの正面を保護する正面部と、前記ピストンロッドの側面を保護する側面部とを有する、請求項6に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項9】
前記支持部材は、前記案内レールを支持する支持体を含み、前記ガード部材の前記被案内体には、前記支持体を避けて前記案内レール上を移動するための切り欠きが形成されている、請求項6に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項10】
前記支持部材の前記案内レールおよび前記ガード部材の前記被案内体はともに円筒形状であり、
前記案内レールは、前記案内レールの軸方向に延びる支持板に支持され、前記被案内体には、前記被案内体の軸方向に延びる切り欠きが形成されており、
前記被案内体の切り欠きの幅は、前記支持板の厚みよりも大きく、かつ前記案内レールの外径よりも小さい、請求項6に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項11】
前記ガード部材の前記被案内体の内径は前記支持部材の前記案内レールの外径よりも大きく、前記被案内体と前記案内レールとの摺動部分は線状である、請求項10に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項12】
前記ピストンロッドの先端にはロッド側ピンが挿入され、前記ロッド側ピンにはロッド側ブラケットが取り付けられ、
前記ガード部材は、前記ロッド側ブラケットおよび前記ロッド側ピンを介して前記ピストンロッドに装着される、請求項1に記載の油圧シリンダの保護装置。
【請求項13】
前記シリンダチューブのキャップ側端部にはキャップ側ピンが挿入され、前記キャップ側ピンにはキャップ側ブラケットが取り付けられ、
前記支持部材は、前記キャップ側ブラケットおよび前記キャップ側ピンを介して前記シリンダチューブに装着される、請求項1に記載の油圧シリンダの保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダチューブと、シリンダチューブに摺動自在に装着されたピストンロッドとを備える油圧シリンダを保護するための保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの建設機械には、ブームやアーム、バケットなどを作動させるための複数の油圧シリンダが装着されている。これらの油圧シリンダには、土砂などによってピストンロッドが傷つくのを防止するための保護装置が設けられることがある(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
油圧シリンダの保護装置は、支持部材と、支持部材に摺動自在に支持されたガード部材とを含む。ガード部材は、ピストンロッドの作動に伴って支持部材上を摺動し、シリンダチューブから押し出されたピストンロッドを保護するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-220853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
支持部材とガード部材との摺動部分にはグリースを塗布して、摺動部分の摩耗や破損、摺動部分から生じる異音などを抑制する必要がある。しかし、摺動部分の潤滑を維持するためには、刷毛を用いてグリースを摺動部分に頻繁に塗布しなければならず、メンテナンス作業に手間がかかるという問題があった。これに加え、摺動部分は、通常、奥の方に位置しているため、グリースの塗布作業が困難であるという問題もある。
【0006】
本発明の課題は、支持部材とガード部材との摺動部分にグリースを容易に供給することができる油圧シリンダの保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の油圧シリンダの保護装置が提供される。すなわち、
「シリンダチューブと、前記シリンダチューブに摺動自在に装着されたピストンロッドとを備える油圧シリンダを保護するための保護装置であって、
支持部材と、前記支持部材に移動自在に支持されたガード部材とを含み、
前記支持部材は、前記ガード部材に摺動自在に接触する中空の案内レールを有し、
前記案内レールには、前記案内レールの内部にグリースを充填するためのグリースニップルと、前記案内レールの内部に充填されたグリースを前記案内レールと前記ガード部材との摺動部分に供給するためのグリース供給口とが形成されている油圧シリンダの保護装置」が提供される。
【0008】
好ましくは、前記グリースニップルは、前記ガード部材の移動範囲外に位置し、前記ガード部材の位置によらず露出している。前記支持部材は、前記シリンダチューブに接続される一対のホースを保護するホースガードを有し、前記ホースガードは、前記グリースニップルへのアクセスを阻害しない位置に配置されているのが望ましい。前記グリースニップルは前記案内レールの一端側に設けられ、前記グリース供給口は前記案内レールの他端側に設けられていてもよい。前記案内レールは一対設けられているのが好適である。
【0009】
前記ガード部材は、前記シリンダチューブから前記ピストンロッドが押し出された際に前記ピストンロッドの少なくとも一部を覆うガード板と、前記ガード板に連結され前記案内レールに摺動自在に接触する被案内体とを備えるのが好都合である。
【0010】
前記ガード部材は、前記ガード板と前記被案内体とを連結する連結体を含んでいてもよい。前記ガード板は、前記ピストンロッドの正面を保護する正面部と、前記ピストンロッドの側面を保護する側面部とを有するのが好ましい。
【0011】
前記支持部材は、前記案内レールを支持する支持体を含み、前記ガード部材の前記被案内体には、前記支持体を避けて前記案内レール上を移動するための切り欠きが形成されているのが望ましい。
【0012】
前記支持部材の前記案内レールおよび前記ガード部材の前記被案内体はともに円筒形状であり、前記案内レールは、前記案内レールの軸方向に延びる支持板に支持され、前記被案内体には、前記被案内体の軸方向に延びる切り欠きが形成されており、前記被案内体の切り欠きの幅は、前記支持板の厚みよりも大きく、かつ前記案内レールの外径よりも小さいのが好適である。
【0013】
前記ガード部材の前記被案内体の内径は前記支持部材の前記案内レールの外径よりも大きく、前記被案内体と前記案内レールとの摺動部分は線状でよい。
【0014】
前記ピストンロッドの先端にはロッド側ピンが挿入され、前記ロッド側ピンにはロッド側ブラケットが取り付けられ、前記ガード部材は、前記ロッド側ブラケットおよび前記ロッド側ピンを介して前記ピストンロッドに装着されるのが好都合である。
【0015】
前記シリンダチューブのキャップ側端部にはキャップ側ピンが挿入され、前記キャップ側ピンにはキャップ側ブラケットが取り付けられ、前記支持部材は、前記キャップ側ブラケットおよび前記キャップ側ピンを介して前記シリンダチューブに装着され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、支持部材の中空の案内レールには、案内レールの内部にグリースを充填するためのグリースニップルと、案内レールの内部に充填されたグリースをガード部材と案内レールとの摺動部分に供給するためのグリース供給口とが形成されているので、支持部材の案内レールとガード部材との摺動部分にグリースを容易に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に従って構成された保護装置を備える油圧ショベルの側面図。
図2図1に示すバケットシリンダをキャップ側から見た斜視図。
図3図1に示すバケットシリンダをロッド側から見た斜視図。
図4図2に示すガード部材が取り外された状態のバケットシリンダの斜視図。
図5図2に示す支持部材の斜視図。
図6図2に示すバケットシリンダの一部断面斜視図。
図7】(a)図2に示すガード部材を表面側から見た斜視図、(b)(a)に示すガード部材を裏面側から見た斜視図。
図8図6に示す案内レールおよび被案内体の拡大断面図。
図9】(a)ピストンロッドがシリンダチューブに引き込まれた状態を示すバケットシリンダの側面図、(b)ピストンロッドがシリンダチューブから押し出された状態を示すバケットシリンダの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る油圧シリンダの保護装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
本発明に係る保護装置は、たとえば、油圧ショベルのフロント作業機の油圧シリンダに装着され得る。図1において全体を符号2で示す油圧ショベルは、下部走行体4と、下部走行体4に旋回自在に支持された上部旋回体6と、上部旋回体6に装着されたフロント作業機8とを備える。
【0020】
フロント作業機8は、上部旋回体6に揺動自在に取り付けられたブーム10と、ブーム10の先端に揺動自在に支持されたアーム12と、アーム12の先端に揺動自在に支持されたバケット14とを含む。また、フロント作業機8には、ブーム10を揺動させるブームシリンダ16と、アーム12を揺動させるアームシリンダ18と、バケット14を揺動させるバケットシリンダ20とが設けられている。
【0021】
本明細書においては、本発明に係る油圧シリンダの保護装置がバケットシリンダ20に装着されている例を説明する。ただし、本発明に係る油圧シリンダの保護装置は、バケットシリンダ20用に限定されることはなく、ピストンロッドの保護が望まれる様々な油圧シリンダに装着され得る。
【0022】
(バケットシリンダ20)
図2および図3に示すとおり、バケットシリンダ20は、円筒形状のシリンダチューブ22と、シリンダチューブ22に摺動自在に装着された円柱形状のピストンロッド24(図3参照)と、ピストンロッド24を保護するための保護装置26とを備えている。
【0023】
(シリンダチューブ22)
図2に示すように、シリンダチューブ22のキャップ側端部には、キャップ側ピン28が挿入されるピン挿入部30が設けられている。そして、ピン挿入部30に挿入されたキャップ側ピン28によって、シリンダチューブ22はアーム12の基端側に連結される(図1参照)。
【0024】
(ピストンロッド24)
図3に示すように、ピストンロッド24の先端には、ロッド側ピン32が挿入されるピン挿入部34が設けられている。そして、ピストンロッド24は、ピン挿入部34に挿入されたロッド側ピン32によって、第1のリンク部材36を介してアーム12の先端側に連結されるとともに、第2のリンク部材38を介してバケット14に連結される(図1参照)。
【0025】
(保護装置26)
図2および図3に示すとおり、保護装置26は、支持部材40と、支持部材40に移動自在に支持されたガード部材42とを含む。支持部材40およびガード部材42は、鋼材などの適宜の金属材料から形成され得る。
【0026】
(支持部材40の案内レール44)
支持部材40は、ガード部材42に摺動自在に接触する中空の案内レール44を有する。案内レール44は、シリンダチューブ22に隣接して配置されている。図示の実施形態の案内レール44は、X軸方向に延びる円筒形状であり、Y軸方向に間隔をおいて一対設けられている。ただし、案内レール44の断面形状(X軸方向を横断する断面形状)は角形状でもよく、また、案内レール44の数量は一本であってもよい。
【0027】
なお、図2に矢印Xで示すX軸方向は、シリンダチューブ22およびピストンロッド24の軸方向に一致している。図2に矢印Yで示すY軸方向は、X軸方向に直交する方向であり、キャップ側ピン28およびロッド側ピン32の軸方向に一致している。また、図2に矢印Zで示すZ軸方向は、X軸方向およびY軸方向のそれぞれに直交する方向である。
【0028】
中空の案内レール44の内部には、グリースが充填され得るようになっている。図4に示すとおり、案内レール44には、案内レール44の内部にグリースを充填するためのグリースニップル46と、案内レール44の内部に充填されたグリースを案内レール44とガード部材42との摺動部分に供給するためのグリース供給口48とが形成されている。
【0029】
(グリースニップル46)
案内レール44のグリースニップル46は、案内レール44の軸方向一端側(図4におけるX軸方向手前側)に設けられており、案内レール44の軸方向一端部からX軸方向に突出して配置されている。
【0030】
(グリース供給口48)
案内レール44のグリース供給口48は、案内レール44の軸方向他端側(図4におけるX軸方向奥側)に設けられている。このため、案内レール44の一端側のグリースニップル46から供給されたグリースは、グリース供給口48から漏出する前に、案内レール44の内部に隙間なく充填され得る。
【0031】
図示の実施形態では、図4における案内レール44の上端がガード部材42に摺動自在に接触するようになっている。このため、図示の実施形態のグリース供給口48は、図4における案内レール44の上端に配置されている。また、グリース供給口48の位置は、Z軸方向と整合している。
【0032】
グリース供給口48の数量については、1本の案内レール44につき1個でよいが、複数個であってもよい。1本の案内レール44に複数個のグリース供給口48が形成されていても、グリース供給口48の直径が案内レール44の内径よりも小さいことによって、案内レール44の内部に所要量のグリースが充填され得る。
【0033】
なお、案内レール44の軸方向(X軸方向)両側端部は閉塞されており、案内レール44の内部に充填されたグリースは、グリース供給口48以外の部分から漏出しないようになっている。
【0034】
(支持体50)
図5を参照して説明すると、支持部材40は、案内レール44を支持する支持体50を含む。図示の実施形態の支持体50は、案内レール44の外周面に接合された支持板52を有する。
【0035】
(支持板52)
支持板52は、案内レール44の軸方向に延びており、案内レール44の軸方向の全長にわたって案内レール44を支持している。支持板52は、Z軸方向に位置づけられ、グリース供給口48の反対側に配置されている。また、支持板52は、案内レール44の軸方向一端部(グリースニップル46側の端部)よりもX軸方向に突出した突出部52aを有する。
【0036】
(連結部材54)
図5に示すとおり、支持部材40は、一対の支持板52同士を連結する連結部材54を含む。図示の実施形態の連結部材54は、一対の支持板52の端部同士を連結する第1の連結片56と、一対の支持板52の中間部同士を連結する第2の連結片58と、一対の支持板52同士を連結するとともにシリンダチューブ22の外周面に密着する第3の連結片60とを有する。
【0037】
第1の連結片56は板状であり、一対の支持板52の突出部52aのそれぞれに接合されている。また、第2の連結片58も板状であり、一対の支持板52の中間部のそれぞれに接合されている。
【0038】
図4に示すとおり、第1の連結片56は、4個のボルト62によってキャップ側ブラケット64に締結されている。キャップ側ブラケット64は、キャップ側ピン28に取り付けられている。つまり、支持部材40は、キャップ側ブラケット64およびキャップ側ピン28を介してシリンダチューブ22に装着されている。
【0039】
また、図2に示すとおり、第1の連結片56には、シリンダチューブ22に接続される一対のホース(図示していない。)を保護するホースガード66がボルト68によって固定されている。ホースガード66は、バケットシリンダ20のキャップ側端部に位置しているが、グリースニップル46へのアクセス(案内レール44の内部にグリースを補給する際に、グリースガンをグリースニップル46に位置づけること)を阻害しない位置に配置されている。なお、上記一対のホースの一方はキャップ側油室に接続され、上記一対のホースの他方は、パイプ70を介してロッド側油室に接続される。
【0040】
図5に示すように、連結部材54の第3の連結片60は、X軸方向に間隔をおいて一対設けられており、一対の支持板52のそれぞれに接合されている。第3の連結片60は、円弧状周縁60aを有しており、円弧状周縁60aの半径は、シリンダチューブ22の外周半径に対応している。
【0041】
図5および図6を参照することによって理解されるとおり、第3の連結片60は、円弧状のクランプ72と共同してシリンダチューブ22を締め付けることにより、支持部材40をシリンダチューブ22に固定するようになっている。なお、第3の連結片60には接続片74が接合されており、接続片74とクランプ72とがボルト76によって締結されている。
【0042】
(ガード部材42)
図6および図7を参照して説明すると、保護装置26のガード部材42は、シリンダチューブ22からピストンロッド24が押し出された際にピストンロッド24の少なくとも一部を覆うガード板78と、ガード板78に連結され案内レール44に摺動自在に接触する被案内体80とを備える。また、図示の実施形態のガード部材42は、ガード板78と被案内体80とを連結する連結体82を含んでいる。
【0043】
(ガード板78)
ガード板78は、ピストンロッド24の正面を保護する正面部78aと、ピストンロッド24の側面を保護する一対の側面部78bとを有している。正面部78aはXY平面に整合し、各側面部78bはXZ平面に整合している。正面部78aのY軸方向両側端部には、側面部78bに向かって傾斜する傾斜部78cが設けられている。
【0044】
(被案内体80)
ガード部材42の被案内体80は、X軸方向に延びる円筒形状であり、Y軸方向に間隔をおいて一対設けられている。ただし、被案内体80の断面形状(X軸方向を横断する断面形状)は、案内レール44の断面形状に応じて適宜の形状(たとえば、角形状)が採用され得る。また、被案内体80の数量は、案内レール44の数量と同様に一本であってもよい。
【0045】
図8に示すとおり、被案内体80には、支持部材40の支持体50を避けて案内レール44上を移動するための切り欠き80aが形成されている。切り欠き80aは、円筒形状の被案内体80の軸方向(X軸方向)に延びており、被案内体80の軸方向一端部から軸方向他端部にわたって形成されている。
【0046】
被案内体80の切り欠き80aの幅wは支持板52の厚みtよりも大きい(w>t)。このため、被案内体80は、支持体50の支持板52を避けて案内レール44上をスムーズに移動することができる。また、切り欠き80aの幅wは、案内レール44の外径d1よりも小さい(w<d1)。これによって、ガード部材42に対して、支持部材40から離れる方向に外力が作用しても、被案内体80が案内レール44から外れないようになっている。
【0047】
被案内体80の内径d2は、案内レール44の外径d1よりも大きい(d2>d1)。したがって、図示の実施形態においては、被案内体80の内周面と案内レール44の外周面との摺動部分s(図8参照)が、X軸方向に沿って延びる線状となっている。被案内体80は案内レール44に沿ってX軸方向に摺動するため、線上の摺動部分sには、グリース供給口48から漏出したグリースが満遍なく塗り広げられる。
【0048】
(連結体82)
図6および図7を参照して説明すると、ガード部材42の連結体82は板状であり、ガード板78の正面部78aとZ軸方向に間隔をおいて配置されている。連結体82とガード板78とは複数個のボルト84によって締結されている。また、連結体82と被案内体80とは溶接などによって接合されている。
【0049】
連結体82は、図7(b)に示す4個のボルト86を介して、図3に示すロッド側ブラケット88に締結される。図3に示すように、ロッド側ブラケット88は、ロッド側ピン32に取り付けられている。つまり、ガード部材42は、ロッド側ブラケット88およびロッド側ピン32を介してピストンロッド24に装着されている。したがって、ピストンロッド24の移動に伴って、ガード部材42が移動し、案内レール44上を被案内体80が摺動する。
【0050】
図示の実施形態のように、ガード板78と間隔をおいて、ガード板78と被案内体80との間に連結体82が設けられていると、土砂などがガード板78に衝突してガード板78が変形してしまうようなときでも、被案内体80の変形を抑制することができる。すなわち、ガード板78が多少変形しても、被案内体80の変形が抑制されるため、被案内体80の摺動が阻害されず、ピストンロッド24の進退動作に悪影響を及ぼすのが防止される。
【0051】
また、連結体82とガード板78がボルト84によって締結されているので、ガード板78の交換が必要となった場合に、案内レール44と被案内体80との連結を解除することなく、ガード板78のみを取り外して交換することが可能である。
【0052】
(グリースの充填)
上述したとおりの保護装置26への給脂作業においては、グリースガンを用いてグリースニップル46から案内レール44の内部にグリースを充填する。この際は、グリース供給口48からグリースが若干漏出するまでグリースを充填する。グリース供給口48から漏出したグリースは、案内レール44と被案内体80との摺動部分sに付着する。このように図示の実施形態では、グリースガンを用いて給脂作業を行うことができるので、案内レール44の内部にグリースを容易に供給することができる。
【0053】
(バケットシリンダ20の作動)
図9(a)に示すとおり、シリンダチューブ22の内部にピストンロッド24が引き込まれている際、保護装置26のガード板78はシリンダチューブ22の外側に位置する。そして、図9(b)に示すように、シリンダチューブ22からピストンロッド24が押し出されると、ピストンロッド24の移動に伴って、ガード部材42が移動する。この結果、ピストンロッド24の露出部分の外側にガード板78が位置することになるので、土砂などによってピストンロッド24が傷つくのが防止される。
【0054】
上記のとおり、ピストンロッド24の移動に伴ってガード部材42が移動する際には、案内レール44上を被案内体80が摺動する。これによって、グリース供給口48から漏出したグリースが、案内レール44と被案内体80との線状の摺動部分sに沿って塗り広げられる(線状の摺動部分sにグリースが供給される)。
【0055】
したがって、図示の実施形態の保護装置26においては、グリースガンを用いてグリースニップル46から案内レール44の内部にグリースを充填することにより、支持部材40の案内レール44とガード部材42の被案内体80との線状の摺動部分sにグリースを供給することができる。これにより、案内レール44に沿って被案内体80が滑らかに摺動し、摺動部分sの摩耗や破損、摺動部分sから生じる異音などが抑制され、保護装置26の寿命の長期化が実現される。
【0056】
また、図9(a)に示すとおり、シリンダチューブ22の内部にピストンロッド24が引き込まれている場合、すなわち、ガード板78がグリースニップル46に最接近した場合でも、グリースニップル46は、ガード板78の端部よりもX軸方向に突出している。つまり、グリースニップル46は、ガード部材42のガード板78の移動範囲外に位置しており、ガード部材42の位置によらず常に露出している。したがって、ピストンロッド24の停止位置に関わらず、グリースニップル46から案内レール44にグリースを容易に充填することができる。
【0057】
図示の実施形態では、バケットシリンダ20のキャップ側端部にホースガード66が装着されている。けれども、図9(a)を参照することによって理解されるとおり、シリンダチューブ22の内部にピストンロッド24が引き込まれた際のガード板78のX軸方向端部(グリースニップル46側)と、ホースガード66のX軸方向端部(グリースニップル46側)とは離れており、ガード板78とホースガード66との隙間にグリースニップル46が位置しているので、グリースニップル46へのアクセスがホースガード66によって阻害されることはない。
【0058】
油圧ショベル2においては、フロント作業機8における複数の連結部(たとえばアーム12とバケット14とのピン連結部)に定期的にグリースを補給する必要があり、上記連結部にはグリースニップル(図示していない。)が設けられている。そして、フロント作業機8の連結部のグリースニップルと、保護装置26のグリースニップル46とが同一形式である場合には、同一形式のグリースガンを用いて、フロント作業機8の連結部と保護装置26とにグリース補給作業を行うことができるので、メンテナンス作業の効率が向上する。
【0059】
なお、図示の実施形態の支持部材40は、溶接などの接合ではなく、キャップ側ブラケット64およびキャップ側ピン28を介してシリンダチューブ22に装着されている。また、ガード部材42も、溶接などの接合ではなく、ロッド側ブラケット88およびロッド側ピン32を介してピストンロッド24に装着されている。したがって、バケットシリンダ20にあらかじめ保護装置26が装着されていなかった場合でも、後からバケットシリンダ20に保護装置26を容易に装着することができる。
【0060】
また、支持部材40は、第3の連結片60およびクランプ72による締め付けだけでなく、キャップ側ピン28およびキャップ側ブラケット64を介してシリンダチューブ22に装着されているので、シリンダチューブ22の周方向に沿って支持部材40が移動する(回ってしまう)ことがない。
【0061】
さらに、バケットシリンダ20に保護装置26が装着される際、支持部材40およびガード部材42がシリンダチューブ22やピストンロッド24に溶接されないので、シリンダチューブ22およびピストンロッド24の溶接歪みの発生が防止される。
【符号の説明】
【0062】
20:バケットシリンダ(油圧シリンダ)
22:シリンダチューブ
24:ピストンロッド
26:保護装置
28:キャップ側ピン
32:ロッド側ピン
40:支持部材
42:ガード部材
44:案内レール
46:グリースニップル
48:グリース供給口
50:支持体
52:支持板
64:キャップ側ブラケット
66:ホースガード
78:ガード板
78a:正面部
78b:側面部
78c:傾斜部
80:被案内体
80a:切り欠き
82:連結体
88:ロッド側ブラケット
s:摺動部分
w:切り欠きの幅
t:支持板の厚み
d1:案内レールの外径
d2:被案内体の内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9