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特開2024-7002ワイヤライン工法対応型のボーリング孔先端位置計測技術を含むコア採取装置およびコア採取方法
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  • 特開-ワイヤライン工法対応型のボーリング孔先端位置計測技術を含むコア採取装置およびコア採取方法 図1
  • 特開-ワイヤライン工法対応型のボーリング孔先端位置計測技術を含むコア採取装置およびコア採取方法 図2
  • 特開-ワイヤライン工法対応型のボーリング孔先端位置計測技術を含むコア採取装置およびコア採取方法 図3
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  • 特開-ワイヤライン工法対応型のボーリング孔先端位置計測技術を含むコア採取装置およびコア採取方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007002
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ワイヤライン工法対応型のボーリング孔先端位置計測技術を含むコア採取装置およびコア採取方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 25/02 20060101AFI20240111BHJP
   E21B 47/02 20060101ALI20240111BHJP
   E21B 47/04 20120101ALI20240111BHJP
   G01N 1/08 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
E21B25/02
E21B47/02
E21B47/04
G01N1/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108092
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597024522
【氏名又は名称】サンコーコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 彰久
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 光泰
(72)【発明者】
【氏名】磯 さち恵
(72)【発明者】
【氏名】壇 英恵
(72)【発明者】
【氏名】山中 義彰
(72)【発明者】
【氏名】大友 智子
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA19
2G052AC03
2G052AC04
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA28
2G052BA29
2G052CA02
2G052CA08
2G052CA16
2G052EC07
2G052GA01
2G052GA09
2G052HA12
2G052HA19
2G052HC04
2G052HC06
2G052HC32
2G052HC42
2G052HC44
2G052JA08
(57)【要約】
【課題】ボーリング作業を中断することなく信頼性の高いボーリング孔先端位置計測を簡易に行うことを可能としたコア採取装置およびコア採取方法を提案する。
【解決手段】コア採取装置1は、地中に挿入されるボーリング用ロッド2と、ボーリング用ロッド2内に挿通されるサンプラー3と、サンプラー3に接続可能なオーバーショット4と、オーバーショット4に接続されたワイヤ5と、オーバーショット4とワイヤ5との間に介設されたプローブ6とを備えている。プローブ6には、傾斜角と高さ位置および方位を計測可能な計測器が搭載されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に挿入されるボーリング用ロッドと、
前記ボーリング用ロッド内に挿通されるサンプラーと、
前記サンプラーに接続可能なオーバーショットと、
前記オーバーショットに接続されたワイヤと、を備えるコア採取装置であって、
前記オーバーショットと前記ワイヤとの間に計測器を搭載したプローブが介設されており、
前記計測器は、傾斜角と高さ位置および方位を計測可能であることを特徴とする、コア採取装置。
【請求項2】
前記プローブには、ジャイロ、磁気方位センサ、バッテリーおよびデータ記録手段が搭載されていることを特徴とする、請求項1に記載のコア採取装置。
【請求項3】
サンプラーをボーリング用ロッド内の下端部に装着するサンプラー取付工程と、
前記ボーリング用ロッドを地中に挿入する削孔工程と、
前記サンプラーにワイヤを接続するワイヤ
接続工程と、
前記ボーリング用ロッドの傾きおよび先端位置を計測する計測工程と、
前記ワイヤを引き上げることで前記サンプラーを回収するサンプラー回収工程と、を備えるコア採取方法であって、
前記ワイヤ接続工程では、前記ワイヤに連結されたオーバーショットを前記サンプラーに接続し、
前記計測工程では、前記ワイヤと前記オーバーショットとの間に介設されたプローブに搭載された計測器により前記プローブの傾斜角と高さ位置および方位を計測する作業と、計測結果に基づいて前記ボーリング用ロッドの傾きおよび先端位置を算出する作業と、を行うことを特徴とする、コア採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング調査におけるコア採取およびボーリング孔先端位置計測に使用するコア採取装置およびコア採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中の土質等を調査することを目的として、地中から柱状の試料(コア)を採取するボーリング工法を採用する場合がある。例えば、特許文献1には、先端にコアチューブが設けられたボーリング用ロッドを地中に貫入することによりコアを採取するボーリング工法が開示されている。
ボーリング工法では、コアを採取した位置(ボーリング孔先端位置)を的確に把握する必要がある。ボーリング孔を孔曲りがないように削孔すれば、ボーリング孔の深さを把握することで、コアを採取した位置を把握することができる。一方、ボーリング孔は、削孔時に傾斜する場合がある。大深度のボーリング調査では、わずかな傾斜であっても、ボーリング孔の先端位置に大きなズレが生じてしまう。
そのため、ボーリング工法では、ボーリング孔の先端位置の計測を行いながら削孔する場合がある。例えば、特許文献2には、削孔ロッドの先端にインナービットを装着した状態でボーリング孔を削孔し、インナービットを回収してから、ボーリング孔内に計測器を挿入することで、ボーリング孔の先端位置の計測を行っている。ところが、前記従来の計測方法では、計測器の挿入、先端位置の計測および計測器の回収といった一連の作業を、コアを採取および回収するためのボーリング作業(ボーリング孔の削孔)とは別に実施する必要があるため、位置計測においてボーリング作業を中断する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-154039号公報
【特許文献2】特開2018-115952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ボーリング作業を中断することなく信頼性の高いボーリング孔先端位置計測を簡易に行うことを可能としたコア採取装置およびコア採取方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明のコア採取装置は、地中に挿入されるボーリング用ロッド(以下、ロッドという)と、前記ロッド内に挿通されるサンプラーと、前記サンプラーに接続可能なオーバーショットと、前記オーバーショットに接続されたワイヤとを備えている。前記オーバーショットと前記ワイヤとの間には、傾斜角と高さ位置および方位を計測可能な計測器を搭載したプローブが介設されている。前記プローブには、ジャイロ、磁気方位センサ、バッテリーおよびデータ記録手段を搭載することが望ましい。
また、本発明のコア採取方法は、サンプラーをロッド内の下端部に装着するサンプラー取付工程と、前記ロッドを地中に挿入する削孔工程と、前記サンプラーにワイヤを接続するワイヤ接続工程と、前記ロッド先端の傾きおよび先端位置を計測する計測工程と、前記ワイヤを引き上げることで前記サンプラーを回収するサンプラー回収工程とを備えている。前記ワイヤ接続工程では前記ワイヤに連結されたオーバーショットを前記サンプラーに接続する。また、前記計測工程では、前記ワイヤと前記オーバーショットとの間に介設されたプローブに搭載された計測器により前記プローブの傾斜角、高さ位置および方位を計測する作業と、計測結果に基づいて前記ロッドの傾きおよび先端位置を算出する作業とを行う。
かかるコア採取装置およびコア採取方法によれば、サンプラーを回収する際に使用するワイヤに計測器が搭載されたプローブが設けられているため、サンプラーの回収とともにロッドの先端位置および向きを計測することができる。そのため、ロッドの先端位置計測によって、コア採取の作業が中断されることがなく、サンプラー回収後に計測器を掘削孔内に挿入して計測を行う従来のコア採取方法に比べて作業性に優れている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のコア採取装置およびコア採取方法によれば、ボーリング作業を中断することなく信頼性の高いボーリング孔先端位置計測を簡易に行うことが可能となり、ひいては、ボーリング調査に要する手間と時間を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係るコア採取装置を示す断面図である。
図2】プローブの概要を示す断面図である。
図3】本実施形態のコア採取方法の手順を示すフローチャートである。
図4】コア採取方法の各工程の作業状況を示す断面図であって、(a)はサンプラー取付工程、(b)は削孔工程、(c)はワイヤ接続工程および計測工程、(d)はサンプラー回収工程である。
図5図4に続くコア採取方法の各工程の作業状況を示す断面図であって、(a)はサンプラー取付工程、(b)は削孔工程、(c)はワイヤ接続工程および計測工程、(d)はサンプラー回収工程である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態では、大深度のボーリング作業により地中から試料を採取する場合について説明する。試料は、ボーリング掘削毎(2~3m毎)に採取する。ボーリング作業におけるボーリング孔の孔曲がりは、100mで1度以内とすることが好ましい。
ボーリング作業には、コア採取装置1を使用する。図1にコア採取装置1を示す。コア採取装置1は、図1に示すように、ロッド(ボーリング用ロッド)2と、サンプラー3と、オーバーショット4と、ワイヤ5と、プローブ6とを備えている。
【0009】
ロッド2は、地中に挿入される円筒状の管材21,21,…を連結することにより構成されている。ロッド2の先端(下端)には、円筒状のビット22が一体に設けられている。
サンプラー3は、ロッド2内に挿通される筒状体を主体に構成されている。サンプラー(コアチューブ)3の先端(下端)は開口されていて、地中に圧入された際に、内部にコア(土砂、岩盤等)を取り込むことが可能である。サンプラー3の後端(上端)には、オーバーショット4と係合する係合部材31が形成されている。係合部材31は、上方から送り込まれたオーバーショット4と係合する。係合部材31とオーバーショット4は、ワンタッチジョイントであることが好ましいが、フックやマグネットにより係合する形式であってもよい。本実施形態のサンプラー3の下端縁部には、コアチューブビット32が一体に設けられている。サンプラー3は、ロッド2の下端に係合し、ロッド2の圧入に伴って、地中に圧入される。
【0010】
オーバーショット4の先端部は、サンプラー3の係合部材31に係合する形状を有している。オーバーショット4の後端部には、ワイヤ5が接続されている。ワイヤ5は、ボーリング孔外から延設されている。ロッド2内にオーバーショット4を送り込み、ロッド2の下端部に配設されたサンプラー3の係合部材31をオーバーショット4により掴み、ワイヤ5を巻き取ることで、サンプラー3(コア)を回収する。
プローブ6は、オーバーショット4とワイヤ5との間に介設されている。プローブ6には、傾斜角と高さ位置および方位を計測可能な計測器が搭載されている。図2にプロ―ブを示す。図2に示すように、プローブ6には、ジャイロ(加速度センサ)61、磁気方位センサ62等の計測器に加え、これらの計測器の測定結果を送信するデータ記録手段63と、その動力源としてのバッテリー64が搭載されている。本実施形態では、ジャイロ61の各種ドリフト(例えば、ノイズ、時間、温度等によるドリフト)補償として、磁気方位センサ62との差異や計測時間の影響を補正処理する。なお、磁気方位センサ62は、磁性(例えば鋼管)による影響を受けるため、先端位置を計測するプローブ6の区間は、非磁性体の管材とする。
【0011】
次に、本実施形態のコア採取装置を利用したコア採取方法について説明する。図3にコア採取方法の手順を示す。また、図4(a)~(d)および図5(a)~(d)にコア採取方法の作業状況を示す。図5に示すように、コア採取方法は、サンプラー取付工程S1と、削孔工程S2と、ワイヤ接続工程S3と、計測工程S4と、サンプラー回収工程S5とを備えている。
サンプラー取付工程S1は、サンプラー3をロッド2に装着する工程である。サンプラー3は、図4(a)に示すように、ロッド2内(下端部)に装着する。サンプラー3には、ロッド2と嵌合するための嵌合手段(図示せず)が外面に設けられている。サンプラー3は、ロッド2の下端部において、嵌合手段を介してロッド2と嵌合する。
【0012】
削孔工程S2は、ロッド2を地中に挿入してボーリング孔を形成する工程である。ロッド2を地中に挿入する際には、図4(b)に示すように、ボーリングマシンMを利用して、ロッド2を回転させながら、地中に圧入する。このとき、管材21を適宜つぎ足しながら、ロッド2の下端が所定の深さに到達するまで圧入する。ロッド2を回転させると、ロッド2の下端に設けられたビット22が地盤Gを切削し、ロッド2が地盤Gに圧入される。このとき、サンプラー3もロッド2に伴って地盤Gに圧入される。サンプラー3を地盤Gに圧入すると、サンプラー3内に、コアチューブビット32の内側の地盤G(岩盤や土砂等)が取り込まれる。
【0013】
ワイヤ接続工程S3は、ロッド2の下端部に装着されたサンプラー3にワイヤ5を接続する工程である。ワイヤ接続工程では、図4(c)に示すように、ワイヤ5に連結されたオーバーショット4によりサンプラー3の係合部材31を掴むことで、サンプラー3にワイヤ5を接続する。
【0014】
計測工程S4は、ロッド2の傾きおよび先端位置を計測する工程である。計測工程S4では、ワイヤ5とオーバーショット4との間に介設されたプローブ6に搭載された計測器により計測する。計測工程S4では、まず、ジャイロ61、磁気方位センサ62によりプローブ6の傾斜角と高さ位置および方位を計測する。次に、プローブ6の傾斜角と高さ位置および方位の計測結果からロッド2の傾きおよび先端位置を算出する。プローブ6からロッド2(サンプラー3)の先端部までの距離は既知のため、プローブ6の高さ位置および方位からロッド2の先端位置も算出できる。また、ロッド2内に挿通されたプローブ6の傾斜角から、ロッド2の先端部における傾きも推定(算出)できる。ジャイロ61および磁気方位センサ62による計測結果(データ)は、データ記録手段63に蓄積される。
【0015】
サンプラー回収工程S5は、図4(d)に示すように、ワイヤ5を巻き上げる(引き上げる)ことでサンプラー3(コア)を回収する工程である。係合部材31は、サンプラー3の嵌合手段に連結されていて、ワイヤ5を巻き上げることで係合部材31に引張力が作用すると、ロッド2とサンプラー3との嵌合状態が解除されて、サンプラー3の引き上げが可能となる。サンプラー3の回収に伴ってプローブ6が地上に引き上げられると、データ記録手段63に蓄積されたデータが、コンピュータ等の端末に送信される。
サンプラー3を回収したら、図5(a)に示すように、新たなサンプラー3をロッド2の先端部に装着する(サンプラー取付工程S1)。サンプラー3をロッド2に装着したら、ロッド2の上端に管材21を連結する。次に、図5(b)に示すように、ボーリング孔を削孔する(削孔工程S2)。なお、前回実施した計測工程S4においてロッド2の傾きが確認された場合は、傾きを調整しながら、削孔する。所定の深さまでボーリング孔を削孔したら、図5(c)に示すように、サンプラー3にワイヤ5を接続するとともに(ワイヤ接続工程S3)、ロッド2の傾きおよび先端位置を計測する(計測工程S4)。計測後、図5(d)に示すように、サンプラー3を回収する(サンプラー回収工程S5)。同様に、サンプラー取付工程S1~サンプラー回収工程S5を繰り返すことで、所定の深さまでボーリング孔を削孔し、コアを採取する。
【0016】
本実施形態のコア採取装置1およびこのコア採取装置1を利用したコア採取方法によれば、サンプラー3を回収する際に使用するワイヤ5に計測器が搭載されたプローブ6が設けられているため、サンプラー3の回収とともにロッド2の先端位置および向き(傾き)を計測することができる。そのため、ロッド2の位置計測によって、コア採取の作業が中断されることがなく、サンプラー3の回収後に計測器を掘削孔内に挿入して計測を行う従来のコア採取方法に比べて作業性に優れている。
また、先端位置計測の頻度を増やすことが可能であるため、孔曲がりの修正掘削を速やかに実施することが可能となり、要求される掘削精度を達成できる。
【0017】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、プローブ6に設けられる計測器は前記実施形態で示したものに限定されるものではない。
前記実施形態では、サンプラー3にコアチューブビット32が設けられている場合について説明したが、コアチューブビット32は必要に応じて設ければよい。
【符号の説明】
【0018】
1 コア採取装置
2 ロッド(ボーリング用ロッド)
21 管材
22 ビット
3 サンプラー
31 係合部材
32 コアチューブビット
4 オーバーショット
5 ワイヤ
6 プローブ
61 ジャイロ
62 磁気方位センサ
63 データ記録手段
64 バッテリー
G 地盤
M ボーリングマシン
S1 サンプラー取付工程
S2 削孔工程
S3 ワイヤ接続工程
S4 計測工程
S5 サンプラー回収工程
図1
図2
図3
図4
図5