IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-窒化物半導体装置 図1
  • 特開-窒化物半導体装置 図2
  • 特開-窒化物半導体装置 図3
  • 特開-窒化物半導体装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070020
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/337 20060101AFI20240515BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20240515BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H01L29/80 C
H01L29/80 H
H01L29/80 F
H01L21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180354
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】郡司 祥和
【テーマコード(参考)】
5F102
5F152
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD04
5F102GJ04
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GL08
5F102GL15
5F102GL17
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR01
5F102GT06
5F102GV05
5F102GV08
5F102HC01
5F152LL05
5F152LM09
5F152LN03
5F152LN18
5F152MM06
5F152NN09
5F152NN27
5F152NP09
5F152NP27
5F152NQ09
5F152NQ17
(57)【要約】
【課題】ゲート閾値電圧を高くする。
【解決手段】窒化物半導体装置10は、窒化物半導体によって構成された電子走行層16と、電子走行層16の上面16Aの上に形成され、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層18と、電子供給層18の上面18Aの上の一部に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層22と、ゲート層22の上面22Aの上に形成されたゲート電極24と、電子供給層18の上に形成されたソース電極28およびドレイン電極30と、を備える。ゲート層22は、電子供給層18の上において、ソース電極28とドレイン電極30との間に位置している。電子供給層18は、n型不純物を含む。電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22は、各上面の結晶方位が非極性面の層である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体によって構成された電子走行層と、
前記電子走行層の上面の上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層と、
前記電子供給層の上面の上の一部に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層と、
前記ゲート層の上面の上に形成されたゲート電極と、
前記電子供給層の上に形成されたソース電極およびドレイン電極と、を備え、
前記ゲート層は、前記電子供給層の上において、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置しており、
前記電子供給層は、n型不純物を含み、
前記電子走行層、前記電子供給層、および前記ゲート層は、前記各上面の結晶方位が非極性面の層である、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記電子走行層、前記電子供給層、および前記ゲート層は、前記各上面の結晶方位がm面の層である、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート層は、結晶方位がc面である側面を有する、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
窒化物半導体によって構成され、上面の結晶方位が非極性面である基板を備え、
前記電子走行層は、前記基板の前記上面の上に形成されている、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記電子走行層は、前記上面の結晶方位が非極性面である基板の一部である、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記電子走行層の前記上面に前記電子供給層が積層されており、前記電子走行層の前記上面と前記電子供給層の下面とが接触している、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記電子供給層の前記上面に前記ゲート層が積層されており、前記電子供給層の前記上面と前記ゲート層の下面とが接触している、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート層は、
前記ゲート電極が形成される前記上面および前記電子供給層に接する下面を含むリッジ部と、
前記電子供給層に接する下面を含み、前記リッジ部よりも薄い延在部と、を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記電子走行層は、GaN層であり、
前記電子供給層は、前記n型不純物であるSiを含むAlGaN層であり、
前記ゲート層は、前記アクセプタ型不純物を含むGaN層である、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物半導体(以下、単に「窒化物半導体」と言う場合がある)を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)の製品化が進んでいる。HEMTは、半導体ヘテロ接合の界面付近に形成された二次元電子ガス(2DEG)を導電経路(チャネル)として使用する。HEMTを利用したパワーデバイスは、典型的なシリコン(Si)パワーデバイスと比較して低オン抵抗および高速・高周波動作を可能にしたデバイスとして認知されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の窒化物半導体装置は、窒化ガリウム(GaN)層によって構成された電子走行層と、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層によって構成された電子供給層とを含む。これら電子走行層と電子供給層とのヘテロ接合の界面付近において電子走行層中に2DEGが形成される。また、特許文献1の窒化物半導体装置では、アクセプタ型不純物を含むゲート層(たとえばp型GaN層)が、電子走行層上であってゲート電極の直下の位置に設けられている。この構成では、ゲート層から下方に広がる空乏層によりゲート層の直下のチャネルが消失することによって、ノーマリーオフが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-73506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるようなHEMTにおいて、より確実なノーマリーオフ動作を達成するためには、十分な大きさのゲート閾値電圧を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である窒化物半導体装置は、窒化物半導体によって構成された電子走行層と、前記電子走行層の上面の上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層と、前記電子供給層の上面の上の一部に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層と、前記ゲート層の上面の上に形成されたゲート電極と、前記電子供給層の上に形成されたソース電極およびドレイン電極と、を備え、前記ゲート層は、前記電子供給層の上において、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置しており、前記電子供給層は、n型不純物を含み、前記電子走行層、前記電子供給層、および前記ゲート層は、前記各上面の結晶方位が非極性面の層である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様である窒化物半導体装置によれば、ゲート閾値電圧を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
図2図2は、図1の窒化物半導体装置の例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図3図3は、c軸方向に成長させて形成された窒化物半導体により構成される、電子走行層、電子供給層、およびゲート層を備える参考例の窒化物半導体装置の概略断面図である。
図4図4は、変更例の窒化物半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示における窒化物半導体装置の実施形態を説明する。
なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするために、断面図では、ハッチング線が省略されている場合がある。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0010】
以下の詳細な記載は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置、システム、および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図していない。
【0011】
[窒化物半導体装置]
図1を参照して、窒化物半導体装置10の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る窒化物半導体装置10の概略断面図である。なお、本開示において使用される「平面視」という用語は、図1に示される互いに直交するXYZ軸のZ軸に沿って上方から窒化物半導体装置10を視ることをいう。
【0012】
窒化物半導体装置10は、窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)として構成され得る。窒化物半導体装置10は、基板12と、基板12上に形成された電子走行層16と、電子走行層16上に形成された電子供給層18と、を含む。さらに、窒化物半導体装置10は、電子供給層18上に形成されたゲート層22と、ゲート層22の上に形成されたゲート電極24とを含む。
【0013】
基板12、電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22の各々は、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体により構成されている。ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体には、ガリウム(Ga)原子などの異種原子および窒素(N)原子の配置に起因して、c軸方向に自発的な分極が発生する。そのため、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体は、垂直な方向に分極が発生する極性面の結晶方位と、垂直な方向に分極が発生しない非極性面の結晶方位とを有する。
【0014】
極性面は、c面であり、非極性面は、m面およびa面である。ウルツ鉱型結晶構造におけるc面は、(0001)面である。ウルツ鉱型結晶構造におけるm面は、(10-10)面、及び(10-10)面と等価な他の面である。ウルツ鉱型結晶構造におけるa面は、(-2110)面、及び(-2110)面と等価な他の面である。詳細は後述するが、基板12、電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22の各々は、各上面の結晶方位が非極性面の層である。
【0015】
(基板)
基板12は、窒化物半導体により形成された基板である。基板12は、たとえば、窒化ガリウム(GaN)基板である。基板12の厚さは、たとえば200μm以上1500μm以下である。なお、以下の説明において、明示的に別段の記載がない限り、厚さとは、図1のZ方向に沿った寸法を指す。
【0016】
基板12は、上面12Aの結晶方位が非極性面である非極性基板である。非極性基板は、その上面12Aが、結晶構造がなす非極性面に対して特定角度以下の傾きを有する面である場合を含む。上記特定角度は、たとえば、±2度以下であり、±1度以下であることが好ましい。非極性基板は、たとえば、上面12Aの結晶方位がm面であるm面基板、上面12Aの結晶方位がa面であるa面基板である。
【0017】
(電子走行層)
電子走行層16は、窒化物半導体によって構成されている。電子走行層16は、たとえばGaN層である。電子走行層16の厚さは、たとえば0.5μm以上2μm以下である。
【0018】
電子走行層16は、上面16Aおよび下面16Bを有する。下面16Bは、電子走行層16における基板12の上面12Aに対向する面であり、上面16Aは、電子走行層16における下面16Bの反対側に位置する面である。電子走行層16は、上面16Aおよび下面16Bの結晶方位が非極性面である非極性面層である。電子走行層16を構成する非極性面層は、その上面16Aが、結晶構造がなす非極性面に対して特定角度以下の傾きを有する面である場合を含む。上記特定角度は、たとえば、±2度以下であり、±1度以下であることが好ましい。電子走行層16の一例は、上面16Aおよび下面16Bの結晶方位がm面であるm面層である。電子走行層16の別の一例は、上面16Aおよび下面16Bの結晶方位がa面であるa面層である。
【0019】
なお、電子走行層16におけるリーク電流を抑制するために、電子走行層16の一部に不純物を導入することによって電子走行層16の表層領域以外を半絶縁性にしてもよい。この場合、不純物は、たとえば炭素(C)である。不純物の濃度は、たとえば4×1016cm-3以上とすることができる。すなわち、電子走行層16は、不純物濃度の異なる複数のGaN層、一例ではCドープGaN層およびノンドープGaN層を含むことができる。この場合、CドープGaN層は、バッファ層上に形成されている。CドープGaN層は、0.5μm以上2μm以下の厚さを有することができる。CドープGaN層中のC濃度は、5×1017cm-3以上9×1019cm-3以下とすることができる。ノンドープGaN層は、CドープGaN層上に形成されている。ノンドープGaN層は、0.05μm以上0.4μm以下の厚さを有することができる。ノンドープGaN層は、電子供給層18と接している。一例では、電子走行層16は、厚さ0.4μmのCドープGaN層と、厚さ0.4μmのノンドープGaN層とを含む。CドープGaN層中のC濃度は約2×1019cm-3である。
【0020】
また、図1に示す一例では、電子走行層16は、基板12の上面12Aに積層されており、基板12の上面12Aと、電子走行層16の下面16Bとが接している。なお、電子走行層16は、基板12の上面12Aに接してなく、中間層を介して、基板12の上に形成されていてもよい。この場合、基板12と電子走行層16の間の中間層は、その上面および下面の結晶方位が基板12と同じ非極性面である非極性面層である。
【0021】
上記中間層としては、たとえば、バッファ層が挙げられる。バッファ層は、基板12と電子走行層16との間の熱膨張係数の不整合によるウェハ反りやクラックの発生を抑制することができる任意の材料によって構成され得る。また、バッファ層は、1つまたは複数の窒化物半導体層を含むことができる。バッファ層は、たとえば、窒化物アルミニウム(AlN)層、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層、および異なるアルミニウム(Al)組成を有するグレーテッドAlGaN層のうち少なくとも1つを含んでもよい。たとえば、バッファ層は、AlNの単膜、AlGaNの単膜、AlGaN/GaN超格子構造を有する膜、AlN/AlGaN超格子構造を有する膜、またはAlN/GaN超格子構造を有する膜などによって構成されていてもよい。
【0022】
一例において、バッファ層は、基板12上に形成されたAlN層である第1バッファ層と、AlN層(第1バッファ層)上に形成されたAlGaN層である第2バッファ層を含むことができる。第1バッファ層はたとえば200nmの厚さを有するAlN層であってよく、第2バッファ層はたとえば300nmの厚さを有するグレーテッドAlGaN層であってよい。なお、バッファ層におけるリーク電流を抑制するために、バッファ層の一部に不純物を導入することによってバッファ層の表層領域以外を半絶縁性にしてもよい。この場合、不純物は、たとえば炭素(C)または鉄(Fe)である。不純物濃度は、たとえば4×1016cm-3以上とすることができる。
【0023】
(電子供給層)
電子供給層18は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する。電子供給層18は、窒化物半導体によって構成されている。電子供給層18は、たとえばAlGaN層である。窒化物半導体では、Al組成が高いほどバンドギャップが大きくなる。このため、AlGaN層である電子供給層18は、GaN層である電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する。一例では、電子供給層18は、AlGa1-xNによって構成されている。つまり、電子供給層18は、AlGa1-xN層であるといえる。xは0<x<0.4であり、より好ましくは0.1<x<0.3である。電子供給層18は、たとえば5nm以上20nm以下の厚さを有することができる。
【0024】
電子供給層18は、上面18Aおよび下面18Bを有する。下面18Bは、電子供給層18における電子走行層16の上面16Aに対向する面であり、上面18Aは、電子供給層18における下面18Bの反対側に位置する面である。電子供給層18は、上面18Aおよび下面18Bの結晶方位が非極性面である非極性面層である。電子供給層18を構成する非極性面層は、その上面18Aが、結晶構造がなす非極性面に対して特定角度以下の傾きを有する面である場合を含む。上記特定角度は、たとえば、±2度以下であり、±1度以下であることが好ましい。電子供給層18の一例は、上面18Aおよび下面18Bの結晶方位がm面であるm面層である。電子供給層18の別の一例は、上面18Aおよび下面18Bの結晶方位がa面であるa面層である。
【0025】
電子供給層18は、n型不純物を含む。n型不純物は、たとえば、シリコン(Si)である。電子供給層18は、たとえばn型AlGaN層である。n型不純物の濃度は、たとえば、1×1019cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0026】
n型不純物は、非極性面である電子供給層18の下面18Bに分極電荷を発生させる。n型不純物に基づく電子供給層18の分極によって、電子走行層16と電子供給層18との間のヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、電子走行層16と電子供給層18とのヘテロ接合界面に近い位置(たとえば、界面から数nm程度の距離)において電子走行層16内には二次元電子ガス(2DEG)20が広がっている。なお、電子走行層16における2DEG20の発生量は、電子供給層18中のn型不純物の濃度によって調整できる。たとえば、2DEG20の発生量を多くする場合、電子供給層18中のn型不純物の濃度を高めればよい。
【0027】
また、図1に示す一例では、電子供給層18は、電子走行層16の上面16Aに積層されており、電子走行層16の上面16Aと、電子供給層18の下面18Bとが接している。なお、電子供給層18は、電子走行層16の上面16Aに接してなく、中間層を介して、電子走行層16の上に形成されていてもよい。この場合、電子走行層16と電子供給層18の間の中間層は、その上面および下面の結晶方位が電子走行層16と同じ非極性面である非極性面層である。
【0028】
(ゲート層)
ゲート層22は、電子供給層18よりも小さなバンドギャップを有するとともに、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されている。ゲート層22は、たとえばAlGaN層である電子供給層18よりも小さなバンドギャップを有する任意の材料によって構成され得る。一例では、ゲート層22は、アクセプタ型不純物がドーピングされたGaN層(p型GaN層)である。アクセプタ型不純物は、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、およびCのうち少なくとも1つを含むことができる。ゲート層22中のアクセプタ型不純物の最大濃度は、たとえば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0029】
上記のように、ゲート層22にアクセプタ型不純物が含まれることによって、電子走行層16および電子供給層18のエネルギーレベルが引き上げられる。このため、ゲート層22の直下の領域において、電子走行層16と電子供給層18との間のヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルは、フェルミ準位とほぼ同じか、またはそれよりも大きくなる。したがって、ゲート電極24に電圧を印加していないゼロバイアス時において、ゲート層22の直下の領域における電子走行層16には、2DEG20が形成されない。一方、ゲート層22の直下の領域以外の領域における電子走行層16には、2DEG20が形成されている。
【0030】
このように、アクセプタ型不純物がドーピングされたゲート層22の存在によってゲート層22の直下の領域で2DEG20が空乏化される。その結果、窒化物半導体装置10のノーマリーオフ動作が実現される。ゲート電極24に適切なオン電圧が印加されると、ゲート電極24の直下の領域における電子走行層16に2DEG20によるチャネルが形成されるため、ソース-ドレイン間が導通する。なお、ゲート層の形状および結晶構造については、後述する。
【0031】
(ゲート電極)
ゲート電極24は、1つまたは複数の金属層によって構成されている。ゲート電極24は、一例では窒化チタン(TiN)層である。あるいは、ゲート電極24は、Tiを含む材料によって形成された第1金属層と、第1金属層上に積層され、TiNを含む材料によって形成された第2金属層とによって構成されていてもよい。ゲート電極24は、ゲート層22とショットキー接合を形成することができる。ゲート電極24は、平面視でゲート層22よりも小さい領域に形成され得る。ゲート電極24は、たとえば、50nm以上200nm以下の厚さを有することができる。
【0032】
(パッシベーション膜)
窒化物半導体装置10は、電子供給層18、ゲート層22、およびゲート電極24を覆うパッシベーション膜26をさらに含む。パッシベーション膜26は、平面視でゲート層22に対してX方向の両側に設けられたソース開口部26Aおよびドレイン開口部26Bを有する。X方向は、ソース開口部26Aおよびドレイン開口部26Bの離隔方向ともいえる。
【0033】
パッシベーション膜26は、たとえば窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、アルミナ(Al)、AlN、および酸窒化アルミニウム(AlON)のうちいずれか1つを含む材料によって構成され得る。一例では、パッシベーション膜26は、SiNを含む材料によって形成されている。パッシベーション膜26のうちゲート層22およびゲート電極24を覆う部分は、ゲート層22およびゲート電極24の表面に沿って形成されているため、非平坦な表面を有する。パッシベーション膜26は、たとえば、200nm以下の厚さを有する。ここで、パッシベーション膜26の厚さは、たとえば、電子供給層18に接する部分の厚さであってよいし、ゲート電極24の上面に接する部分の厚さであってもよい。
【0034】
ソース開口部26Aおよびドレイン開口部26Bの各々は、ゲート層22から離隔されている。ゲート層22は、ソース開口部26Aとドレイン開口部26Bとの間に位置している。ゲート層22は、X方向においてドレイン開口部26Bよりもソース開口部26A寄りに配置されている。つまり、ゲート層22とドレイン開口部26BとのX方向の間の距離は、ゲート層22とソース開口部26AとのX方向の間の距離よりも長い。
【0035】
(ソース電極、ドレイン電極、およびフィールドプレート電極)
窒化物半導体装置10は、ソース開口部26Aを介して電子供給層18に接しているソース電極28と、ドレイン開口部26Bを介して電子供給層18に接しているドレイン電極30とをさらに含む。
【0036】
ソース電極28およびドレイン電極30は、1つまたは複数の金属層(たとえば、Ti、Al、AlCu、TiNなど)によって構成されている。ソース電極28およびドレイン電極30は、それぞれソース開口部26Aおよびドレイン開口部26Bを介して2DEG20とオーミック接触している。
【0037】
窒化物半導体装置10は、パッシベーション膜26上に形成されたフィールドプレート電極31をさらに含む。フィールドプレート電極31は、平面視でゲート層22とドレイン電極30との間の領域に少なくとも部分的に延在している。フィールドプレート電極31は、ドレイン電極30から離隔されている。したがって、フィールドプレート電極31は、たとえば、平面視でドレイン電極30(ドレイン開口部26B)とゲート層22との間に位置する端部31Aを含む。
【0038】
フィールドプレート電極31は、ソース電極28に電気的に接続されている。その一例として、図1の例においては、フィールドプレート電極31は、ソース電極28と連続している。この場合、フィールドプレート電極31は、ソース電極28と一体的に形成されている。一体的に形成された電極のうち、ソース電極28は、少なくともパッシベーション膜26のソース開口部26Aに埋設された部分を含んでいてよく、フィールドプレート電極31は、残りの部分を含んでいてよい。フィールドプレート電極31は、ゲート電極24にゲート電圧が印加されていないゼロバイアス時に、ゲート電極24の端部近傍の電界集中を緩和する役割を果たす。
【0039】
(ゲート層の形状および結晶構造)
ゲート層22は、必ずしもこの構成に限定されないが、ステップ構造を有し得る。一例では、ゲート層22は、リッジ部42と、リッジ部42の両側から互いに反対方向に延在する延在部43を含む。リッジ部42および延在部43によって、ゲート層22のステップ構造が形成されている。
【0040】
リッジ部42は、ゲート層22の相対的に厚い部分に相当する。ゲート電極24は、リッジ部42に接している。リッジ部42は、図1のXZ平面に沿った断面において矩形状または台形状を有し得る。リッジ部42は、例えば100nm以上200nm以下の厚さを有し得る。リッジ部42の厚さT1とは、リッジ部42の上面から下面(電子供給層18に接するゲート層22の下面22B)までの距離のことである。リッジ部42(ゲート層22)の厚さT1は、ゲート耐圧などの種々のパラメータを考慮して決定され得る。
【0041】
延在部43は、ソース側延在部44およびドレイン側延在部46を含む。ソース側延在部44は、リッジ部42からパッシベーション膜26のソース開口部26Aに向かって(図1において-X方向に)延在している。ドレイン側延在部46は、リッジ部42からパッシベーション膜26のドレイン開口部26Bに向かって(図1において+X方向に)延在している。図1の例では、ドレイン側延在部46は、ソース側延在部44よりもリッジ部42から長く延びている。ただし、ソース側延在部44とドレイン側延在部46は同じ長さであってもよい。
【0042】
ソース側延在部44は、例えば10nm以上30nm以下の厚さT2を有し得る。ソース側延在部44は、リッジ部42からソース開口部26Aに向かう方向において、例えば0.2μm以上0.3μm以下の幅W1を有し得る。ドレイン側延在部46は、例えば10nm以上30nm以下の厚さT3を有し得る。ドレイン側延在部46は、リッジ部42からドレイン開口部26Bに向かう方向において、例えば0.2μm以上0.6μm以下の幅W2を有し得る。ソース側延在部44の厚さT2とドレイン側延在部46の厚さT3は、互いに等しい。ここで、ソース側延在部44の厚さT2とドレイン側延在部46の厚さT3の差がたとえばソース側延在部44の厚さの10%以内であれば、ソース側延在部44の厚さT2とドレイン側延在部46の厚さT3とが互いに等しいといえる。
【0043】
ゲート層22は、上面22Aおよび下面22Bを有する。下面22Bは、ゲート層22における電子供給層18の上面18Aに対向する面であり、上面22Aは、ゲート層22における下面22Bの反対側に位置する面である。ステップ構造を有するゲート層22の上面22Aは、リッジ部42の上面を意味する。ステップ構造を有するゲート層22の下面22Bは、リッジ部42の下面、ソース側延在部44の下面、およびドレイン側延在部46の下面を含む面を意味する。
【0044】
ゲート層22は、上面22Aおよび下面22Bの結晶方位が非極性面である非極性面層である。ゲート層22を構成する非極性面層は、その上面22Aが、結晶構造がなす非極性面に対して特定角度以下の傾きを有する面である場合を含む。上記特定角度は、たとえば、±2度以下であり、±1度以下であることが好ましい。ゲート層22の一例は、上面22Aおよび下面22Bの結晶方位がm面であるm面層である。ゲート層22の別の一例は、上面22Aおよび下面22Bの結晶方位がa面であるa面層である。
【0045】
また、ゲート層22は、結晶方位がc面である側面を有することが好ましい。ゲート層22の側面としては、たとえば、平面視において、リッジ部42におけるソース電極28を向く第1側面42A、リッジ部42におけるドレイン電極30を向く第2側面42B、ソース側延在部44におけるソース電極28を向く第3側面44A、およびドレイン側延在部46におけるドレイン電極30を向く第4側面46Aが挙げられる。これらゲート層22の側面のうちの少なくとも1つの面の結晶方位がc面である。なお、ゲート層22に関して、結晶方位がc面である側面は、結晶構造がなすc面に対して特定角度以下の傾きを有する側面である場合を含む。上記特定角度は、たとえば、±2度以下であり、±1度以下であることが好ましい。
【0046】
また、図1に示す一例では、ゲート層22は、電子供給層18の上面18Aに積層されており、電子供給層18の上面18Aと、ゲート層22の下面22Bとが接している。なお、ゲート層22は、電子供給層18の上面18Aに接してなく、中間層を介して、電子供給層18の上に形成されていてもよい。この場合、電子供給層18とゲート層22の間の中間層は、その上面および下面の結晶方位が電子供給層18と同じ非極性面である非極性面層である。
【0047】
[窒化物半導体装置の製造方法]
次に、窒化物半導体装置10の製造方法の一例を概略的に説明する。以下では、基板12がm面基板であり、電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22の各々がm面層である場合について説明する。
【0048】
図2は、窒化物半導体装置10の例示的な製造工程を示す概略断面図である。なお、理解を容易にするために、図2では、図1の構成要素と同様な構成要素には同一の符号が付されている場合がある。
【0049】
図2に示されるように、窒化物半導体装置10の製造方法は、基板12上に、第1窒化物半導体層51、第2窒化物半導体層52、および第3窒化物半導体層53を形成することを含む。第1窒化物半導体層51は、窒化物半導体装置10の電子走行層16を形成する層である。第2窒化物半導体層52は、窒化物半導体装置10の電子供給層18を形成する層である。第3窒化物半導体層53は、窒化物半導体装置10のゲート層22を形成する層である。
【0050】
基板12として、上面12Aの結晶方位がm面であるm面基板が用意される。m面基板は、たとえば、c軸方向にバルク成長させたGaNを、m面に平行な面で切り出すことにより得られる。第1窒化物半導体層51、第2窒化物半導体層52、および第3窒化物半導体層53は、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法を用いて、基板12上にエピタキシャル成長させることができる。これらの層は、格子定数の比較的近い窒化物半導体から形成されているため、連続的にエピタキシャル成長させることができる。
【0051】
第1窒化物半導体層51、第2窒化物半導体層52、および第3窒化物半導体層53は、基板12上に順に積層されることによって形成される。このとき、第1窒化物半導体層51、第2窒化物半導体層52、および第3窒化物半導体層53は、基板12の結晶構造を引き継いで形成される。つまり、基板12の上面12Aはm面であることから、基板12上に形成される第1窒化物半導体層51の成長方向は、m面に直交する方向になる。そのため、第1窒化物半導体層51は、上面51A及び下面51Bが共にm面であるm面層になる。同様の理由により、第1窒化物半導体層51上に形成される第2窒化物半導体層52も上面52A及び下面52Bが共にm面であるm面層になり、第2窒化物半導体層52上に形成される第3窒化物半導体層53も上面53A及び下面53Bが共にm面であるm面層になる。
【0052】
なお、第1窒化物半導体層51、第2窒化物半導体層52、および第3窒化物半導体層53は、基板12の各々のエピタキシャル成長中に、必要に応じて、成長チャンバ内にドーピングガスを導入してもよい。これにより、所望の層に不純物をドーピングすることができる。たとえば、第2窒化物半導体層52のエピタキシャル成長中に、n型不純物としてSiをドーピングする。これにより、n型不純物を含む第2窒化物半導体層52を形成できる。
【0053】
また、窒化物半導体装置10の製造方法は、ゲート電極24を形成することを含む。ゲート電極24は、第3窒化物半導体層53上に形成された金属層をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して形成される。
【0054】
さらに、窒化物半導体装置10の製造方法は、ソース側延在部44およびドレイン側延在部46を形成することを含む。ソース側延在部44およびドレイン側延在部46は、第3窒化物半導体層53をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して形成される。エッチングに際してマスクされる第3窒化物半導体層53の部分はリッジ部42として残される。
【0055】
[作用]
次に、窒化物半導体装置10の作用を説明する。
窒化物半導体装置10は、窒化物半導体により構成されている電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22の各層が、上面および下面の結晶方位が非極性面である非極性面層である。
【0056】
この場合、電子供給層18の下面18Bは、非極性面であるため、下面18Bには、結晶構造の非対称性に起因する分極電荷は発生しない。そのため、電子走行層16に発生する2DEG20の発生量は、電子供給層18にドーピングしたn型不純物の濃度に依存した量になる。したがって、電子供給層18中のn型不純物の濃度を変化させることによって、電子走行層16に発生する2DEG20の発生量を調整することが容易である。よって、窒化物半導体装置10は、2DEG20の発生量を、ゲート閾値電圧をより高くできる範囲に調整することが可能であり、そのように調整することによってゲート閾値電圧を高くすることができる。
【0057】
また、所定の基板上にエピタキシャル成長により形成された窒化物半導体層には、基板の格子定数と窒化物半導体層の格子定数との不整合などに起因して、転位欠陥(結晶欠陥)が生じる場合がある。この転位欠陥の密度および形成方向は、基板の上面の結晶方位に応じて変化する。詳述すると、転位欠陥は、結晶構造のc軸方向に延びる。また、エピタキシャル成長により窒化物半導体層を形成する際の成長方向(形成される窒化物半導体層の厚さ方向)がc軸方向である場合、転位欠陥は、同一層内および層間を跨いで成長方向に引き継がれる。
【0058】
図3は、c軸方向に成長させて形成された窒化物半導体により構成される、電子走行層116、電子供給層118、およびゲート層122を備える参考例の窒化物半導体装置の概略断面図である。図3では、電子走行層116、電子供給層118、およびゲート層122に生じ得る転位欠陥D1~D3を模式的に示している。電子走行層116、電子供給層118、およびゲート層122の構成は、各々の上面および下面の結晶方位がc面である点を除いて、上記実施形態の窒化物半導体装置10の電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22と同様である。なお、図3は、図1における範囲A1に対応する部分を示している。また、理解を容易にするために、図3では、図1の構成要素と同様な構成要素には同一の符号が付されている場合がある。
【0059】
図3に示すように、電子走行層116に生じる転位欠陥D1は、図示しない基板の上面の転位欠陥を引き継いで形成されるとともに、成長方向である厚さ方向(Z方向)に延びる。電子供給層118に生じる転位欠陥D2は、電子走行層116の上面116Aに達した転位欠陥D1を引き継いで形成されるとともに、成長方向である厚さ方向(Z方向)に延びる。同様に、ゲート層122に生じる転位欠陥D3は、電子供給層118の上面118Aに達した転位欠陥D2を引き継いで形成されるとともに、成長方向である厚さ方向(Z方向)に延びる。
【0060】
ゲート層122において、その厚さ方向に延びる転位欠陥D3は、ゲート層122の上面122Aに設けられるゲート電極124と、ゲート層122の下面122Bに接する電子供給層118との間の電気的なリークパスになる。このリークパスは、ゲート電極124と電子走行層16内に形成される2DEG20との間のリークパスということもできる。この場合、ゲート層122に生じた転位欠陥D3に起因するゲートリーク電流を考慮してゲート定格電圧を設定する必要が生じるため、ゲート定格電圧を高くすることが難しくなる。
【0061】
これに対して、窒化物半導体装置10の電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22の各層は、上面および下面の結晶方位が非極性面である非極性面層である。つまり、電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22の各層は、c軸方向に直交する方向にエピタキシャル成長させることにより形成された層である。そのため、基板12の上面12Aに転位欠陥が生じていたとしても、その転位欠陥が電子走行層16に引き継がれないため、電子走行層16に生じる転位欠陥が少なくなる。同様に、電子走行層16から電子供給層18、および電子供給層18からゲート層22に転位欠陥が電子走行層16に引き継がれないため、電子供給層18およびゲート層22に生じる転位欠陥が少なくなる。
【0062】
また、電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22は、上面および下面の結晶方位が非極性面である非極性面層であるため、転位欠陥が生じたとしても、その形成方向であるc軸方向は、上面および下面に沿った方向になる。そのため、生じた転位欠陥が層の厚さ方向のリークパスになり難い。ゲート層22の場合、ゲート層22に生じた転位欠陥が、ゲート電極24と電子供給層18との間の電気的なリークパスになり難い。
【0063】
このように、窒化物半導体装置10の電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22の各層を、上面および下面の結晶方位が非極性面である非極性面層とすることにより、これら各層に生じる転位欠陥を少なくできる。また、転位欠陥が生じたとしても、その転位欠陥が層の厚さ方向のリークパスになり難い。この場合、ゲート層22に生じた転位欠陥に起因するゲートリーク電流が抑制されるため、ゲート定格電圧をより高く設定できる。
【0064】
[効果]
窒化物半導体装置10によれば、以下の効果が得られる。
(1-1)
窒化物半導体装置10は、窒化物半導体によって構成された電子走行層16と、電子走行層16の上面16Aの上に形成され、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層18と、電子供給層18の上面18Aの上の一部に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層22と、ゲート層22の上面22Aの上に形成されたゲート電極24と、電子供給層18の上に形成されたソース電極28およびドレイン電極30と、を備える。ゲート層22は、電子供給層18の上において、ソース電極28とドレイン電極30との間に位置している。電子供給層18は、n型不純物を含む。電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22は、各上面の結晶方位が非極性面の層である。
【0065】
この構成によれば、電子供給層18中のn型不純物の濃度を変化させることによって、2DEG20の発生量を、ゲート閾値電圧をより高くできる範囲に調整することが可能であり、そのように調整することによってゲート閾値電圧を高くすることができる。
【0066】
さらに、この構成によれば、ゲート層22に転位欠陥が生じ難く、かつ転位欠陥が生じたとしても、その転位欠陥がゲート層22の厚さ方向のリークパスになり難い。これにより、ゲート層22に生じた転位欠陥に起因するゲートリーク電流が抑制されるため、ゲート定格電圧をより高く設定できる。ゲート定格電圧を高く設定できることにより、ゲート閾値電圧を高くした場合にも、ゲートドライブ電圧とゲート閾値電圧の差分を確保することができるため、通電量の低下を抑制できる。
【0067】
(1-2)
電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22は、各上面の結晶方位がm面の層である。この構成によれば、上記(1-1)の効果をより確実に得ることができる。
【0068】
(1-3)
ゲート層22は、結晶方位がc面である側面を有する。この構成によれば、ゲート層22の上面22Aの結晶方位を非極性面にすることが容易である。よって、上記(1-1)の効果をより確実に得ることができる。
【0069】
(1-4)
窒化物半導体装置10は、窒化物半導体によって構成され、上面12Aの結晶方位が非極性面である基板12を備える。電子走行層16は、基板12の上面12Aの上に形成されている。この構成によれば、基板12の上に、電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22をエピタキシャル成長させることにより、電子走行層16、電子供給層18、およびゲート層22の各層を、上面の結晶方位が非極性面の層として容易に形成できる。
【0070】
(1-5)ゲート層22は、ゲート電極24が形成される上面22A及び電子供給層18に接する下面22Bを含むリッジ部42と、電子供給層18に接する下面22Bを含み、リッジ部42よりも薄い延在部43と、を備える。この構成によれば、ゲート電極24への正電圧の印加時に、ゲート層22の電界集中を緩和できる。そのため、ゲートリーク電流の発生をさらに抑制できる。
【0071】
<変更例>
上記実施形態は例えば以下のように変更できる。上記実施形態と以下の各変更例は、技術的な矛盾が生じない限り、互いに組み合せることができる。なお、以下の変更例において、上記実施形態と共通する部分については、上記実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
・ゲート層22は、図1に示すソース側延在部44およびドレイン側延在部46のいずれか一方または両方を有していない形状であってもよい。
図4に示される変更例の窒化物半導体装置200は、電子走行層16が基板12を兼ねている。つまり、窒化物半導体装置200の電子走行層16は、上面16Aの結晶方位が非極性面である基板12の一部である。窒化物半導体装置200は、たとえば、c軸方向にバルク成長させたGaNを、電子走行層16分の厚さを有するように、非極性面に平行な面で切り出して得られる基板12の上に、電子供給層18、およびゲート層22をエピタキシャル成長させることにより製造できる。
【0073】
・上記各実施形態では、窒化物半導体装置10は、窒化物半導体HEMTとして構成されたが、窒化物半導体HEMTに限定されず、窒化物半導体ダイオードとして構成されてもよい。
【0074】
本開示で使用される「~上に」という用語は、文脈によって明らかにそうでないことが示されない限り、「~上に」と「~の上方に」との双方の意味を含む。したがって、「第1層が第2層上に形成される」という表現は、或る実施形態では第1層が第2層に接触して第2層上に直接配置され得るが、他の実施形態では第1層が第2層に接触することなく第2層の上方に配置され得ることが意図される。すなわち、「~上に」という用語は、第1層と第2層との間に他の層が形成される構造を排除しない。
【0075】
本開示で使用されるZ方向は必ずしも鉛直方向である必要はなく、鉛直方向に完全に一致している必要もない。したがって、本開示による種々の構造は、本明細書で説明されるZ方向の「上」および「下」が鉛直方向の「上」および「下」であることに限定されない。例えば、X方向が鉛直方向であってもよく、またはY方向が鉛直方向であってもよい。
【0076】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に対象物を区別するために用いられており、対象物を順位づけするものではない。
<付記>
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0077】
[付記1]
窒化物半導体によって構成された電子走行層(16)と、
前記電子走行層(16)の上面(16A)の上に形成され、前記電子走行層(16)よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層(18)と、
前記電子供給層(18)の上面(18A)の上の一部に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層(22)と、
前記ゲート層(22)の上面(22A)の上に形成されたゲート電極(24)と、
前記電子供給層(18)の上に形成されたソース電極(28)およびドレイン電極(30)と、を備え、
前記ゲート層(22)は、前記電子供給層(18)の上において、前記ソース電極(28)と前記ドレイン電極(30)との間に位置しており、
前記電子供給層は、n型不純物を含み、
前記電子走行層(16)、前記電子供給層(18)、および前記ゲート層(22)は、前記上面の結晶方位が非極性面の層である、窒化物半導体装置(10,200)。
【0078】
[付記2]
前記電子走行層(16)、前記電子供給層(18)、および前記ゲート層(22)は、前記各上面の結晶方位がm面の層である、付記1に記載の窒化物半導体装置(10,200)。
【0079】
[付記3]
前記ゲート層(22)は、結晶方位がc面である側面(42A,42B,44A,46A)を有する、付記1または付記2に記載の窒化物半導体装置(10,200)。
【0080】
[付記4]
窒化物半導体によって構成され、上面(12A)の結晶方位が非極性面である基板(12)を備え、
前記電子走行層(16)は、前記基板(12)の前記上面(12A)の上に形成されている、付記1~3のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置(10)。
【0081】
[付記5]
前記電子走行層(16)は、前記上面(16A)の結晶方位が非極性面である基板の一部である、付記1~3のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置(200)。
【0082】
[付記6]
前記電子走行層(16)の前記上面(16A)に前記電子供給層(18)が積層されており、前記電子走行層(16)の前記上面(16A)と前記電子供給層(18)の下面(18B)とが接触している、付記1~5のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置(10,200)。
【0083】
[付記7]
前記電子供給層(18)の前記上面(18A)に前記ゲート層(22)が積層されており、前記電子供給層(18)の前記上面(18A)と前記ゲート層(22)の下面(22B)とが接触している、付記1~6のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置(10,200)。
【0084】
[付記8]
前記ゲート層(22)は、
前記ゲート電極(24)が形成される前記上面(22A)および前記電子供給層(18)に接する下面(22B)を含むリッジ部(42)と、
前記電子供給層(18)に接する下面(22B)を含み、前記リッジ部(42)よりも薄い延在部(43)と、を備える、付記1~7のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置(10,200)。
【0085】
[付記9]
前記電子走行層(16)は、GaN層であり、
前記電子供給層(18)は、前記n型不純物であるSiを含むAlGaN層であり、
前記ゲート層(22)は、前記アクセプタ型不純物を含むGaN層である、付記1~8のいずれか1つに記載の窒化物半導体装置(10,200)。
【符号の説明】
【0086】
A1…範囲
D1~D3…転移欠陥
10,200…窒化物半導体装置
T1~T3…厚さ
W1,W2…幅
12…基板
12A…上面
16,116…電子走行層
16A,116A…上面
16B…下面
18,118…電子供給層
18A,118A…上面
18B…下面
20…2DEG(二次元電子ガス)
22,122…ゲート層
22A,122A…上面
22B,122B…下面
24,124…ゲート電極
26…パッシベーション膜
26A…ソース開口部
26B…ドレイン開口部
28…ソース電極
30…ドレイン電極
31…フィールドプレート電極
31A…端部
42…リッジ部
42A…第1側面
42B…第2側面
43…延在部
44…ソース側延在部
44A…第3側面
46…ドレイン側延在部
46A…第4側面
51…第1窒化物半導体層
51A…上面
51B…下面
52…第2窒化物半導体層
52A…上面
52B…下面
53…第3窒化物半導体層
53A…上面
53B…下面
図1
図2
図3
図4