IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-減速装置 図1
  • 特開-減速装置 図2
  • 特開-減速装置 図3
  • 特開-減速装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070029
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20240515BHJP
   F16H 55/18 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F16H1/46
F16H55/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180371
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 俊文
【テーマコード(参考)】
3J027
3J030
【Fターム(参考)】
3J027FA04
3J027FA12
3J027FA17
3J027FA37
3J027FB02
3J027FC20
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GC26
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD12
3J030AA01
3J030AB03
3J030BA10
3J030CA10
(57)【要約】
【課題】異音や振動の発生を防止しつつ、コストの増大を抑えることができる構造を実現する。
【解決手段】減速装置1は、入力部材2と、出力部材3と、キャリア4と、第1遊星ローラ機構5と、第2遊星ローラ機構6とを備える。第1遊星ローラ機構5は、入力部材2と一体的に回転する第1サンローラ51と、使用時にも回転しない部分に支持された第1リングローラ52と、キャリア4に対して自身の中心軸を中心とする回転を可能に支持された第1遊星ローラ53とを備える。第2遊星ローラ機構6は、入力部材2および第1サンローラ51と一体的に回転する第2サンローラ62と、出力部材3と一体的に回転する第2リングローラ63と、キャリア4に対して自身の中心軸を中心とする回転を可能に支持された第2遊星ローラ64とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材と、
前記入力部材と同軸に、かつ、該入力部材に対する相対回転を可能に支持された出力部材と、
前記入力部材および前記出力部材と同軸に、かつ、該入力部材および該出力部材に対する相対回転を可能に支持されたキャリアと、
外周面に第1内径側転がり接触面を有し、かつ、前記入力部材と一体的に回転する第1サンローラと、内周面に第1外径側転がり接触面を有し、前記第1サンローラと同軸に配置され、かつ、使用時にも回転しない部分に支持された第1リングローラと、外周面に、前記第1内径側転がり接触面と前記第1外径側転がり接触面とに転がり接触する第1転動面を有し、かつ、前記キャリアに対して自身の中心軸を中心とする回転を可能に支持された少なくとも1個の第1遊星ローラと、を含む第1遊星ローラ機構と、
外周面に第2内径側転がり接触面を有し、前記第1サンローラと同軸に配置され、かつ、前記入力部材および前記第1サンローラと一体的に回転する第2サンローラと、内周面に第2外径側転がり接触面を有し、前記第2サンローラと同軸に配置され、かつ、前記出力部材と一体的に回転する第2リングローラと、外周面に、前記第2内径側転がり接触面と前記第2外径側転がり接触面とに転がり接触する第2転動面を有し、かつ、前記キャリアに対して自身の中心軸を中心とする回転を可能に支持された少なくとも1個の第2遊星ローラと、を含む第2遊星ローラ機構と、
を備える、
減速装置。
【請求項2】
前記第1遊星ローラと前記第2遊星ローラとの円周方向に関する位相が互いにずれている、
請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記キャリア、前記第1遊星ローラ機構、および前記第2遊星ローラ機構を収容するハウジングをさらに備え、
前記入力部材が、前記ハウジングに対し回転可能に支持され、かつ、前記出力部材が、前記ハウジングに対し回転可能に支持されている、
請求項1に記載の減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の駆動系に組み込んで、駆動源の回転を減速(トルクを増大)させてから、駆動輪に伝達するための減速装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速機として、トルクコンバータと遊星歯車機構とを備える構造が広く使用されている。遊星歯車機構は、サンギヤと、該サンギヤの周囲に配置されたリングギヤと、サンギヤおよびリングギヤのそれぞれに噛合した複数の遊星ギヤとを備える。
【0003】
ところで、サンギヤと遊星ギヤとの噛合部、および、遊星ギヤとリングギヤとの噛合部には、不可避なバックラッシュが存在する。遊星歯車機構では、このようなバックラッシュに起因して、歯打ち音と呼ばれる不快な異音や振動が発生する可能性がある。
【0004】
国際公開第2020/170297号パンフレットには、バックラッシュに起因する異音や振動の発生を防止することができる遊星歯車装置が記載されている。国際公開第2020/170297号パンフレットに記載の遊星歯車装置は、第1内歯車および第2内歯車と、外歯車と、3対の第1遊星歯車および第2遊星歯車と、太陽ローラと、3対の第1ローラおよび第2ローラと、キャリアと、第1リングおよび第2リングとを備える。
【0005】
第1内歯車および第2内歯車は、互いに同軸に、かつ、相対回転を可能に配置されている。
【0006】
外歯車は、第1内歯車および第2内歯車の径方向内側に、該第1内歯車および該第2内歯車と同軸に配置されている。
【0007】
対をなす第1遊星歯車および第2遊星歯車は、互いに同軸に配置されている。対をなす第1遊星歯車および第2遊星歯車は、対をなす第1ローラおよび第2ローラを介して、一体的な回転を可能に結合されている。それぞれの第1遊星歯車は、第1内歯車と外歯車とに噛合し、かつ、それぞれの第2遊星歯車は、第2内歯車に噛合している。
【0008】
太陽ローラは、外歯車に対して該外歯車と一体的な回転を可能に結合固定されている。太陽ローラは、外歯車のピッチ円直径と同じ外径を有する。
【0009】
対をなす第1ローラおよび第2ローラは、対をなす第1遊星歯車および第2遊星歯車と同軸に配置され、かつ、該対をなす第1遊星歯車および第2遊星歯車と一体的な回転を可能に結合固定されている。第1ローラは、第1リングおよび太陽ローラと転がり接触し、かつ、第2ローラは、第2リングと転がり接触している。第1ローラは、第1遊星歯車のピッチ円直径と同じ外径を有し、かつ、第2ローラは、第2遊星歯車のピッチ円直径と同じ外径を有する。
【0010】
キャリアは、一体的な回転を可能に結合された第1遊星歯車および第2遊星歯車と第1ローラおよび第2ローラとからなる遊星部のそれぞれを、それぞれの遊星部の中心軸を中心とする回転(自転)を可能に支持する。
【0011】
第1リングおよび第2リングは、第1内歯車および第2内歯車と同軸に配置されている。第1リングは、第1内歯車のピッチ円直径と同じ内径を有し、かつ、第2リングは、第2内歯車のピッチ円直径と同じ内径を有する。
【0012】
国際公開第2020/170297号パンフレットに記載の遊星歯車装置では、ギヤドライブ式の動力伝達機構部である遊星歯車機構部と、トラクションドライブ式の動力伝達機構部である摩擦ローラ機構部とを組み合わせることで、バックラッシュに起因する異音や振動の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2020/170297号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
国際公開第2020/170297号パンフレットに記載の遊星歯車装置では、遊星歯車機構部における減速比と、摩擦ローラ機構部における減速比との間にずれが存在していると、摩擦ローラ機構部の転がり接触部において有害な滑りが生じ、摩耗が進行しやすくなる。遊星歯車機構部における減速比と、摩擦ローラ機構部における減速比とを厳密に一致させることができれば、摩擦ローラ機構部での有害な滑りの発生を抑制することができる。
【0015】
しかしながら、遊星歯車機構部における減速比と、摩擦ローラ機構部における減速比とを厳密に一致させるためには、遊星歯車装置を構成するそれぞれの部材の形状精度、寸法精度、および組立精度を十分に高くする必要があり、コストが増大する。
【0016】
本発明は、異音や振動の発生を防止しつつ、コストの増大を抑えることができる、減速装置の構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の減速装置の一態様は、入力部材と、出力部材と、キャリアと、第1遊星ローラ機構と、第2遊星ローラ機構とを備える。
【0018】
前記出力部材は、前記入力部材と同軸に、かつ、該入力部材に対する相対回転を可能に支持されている。
【0019】
前記キャリアは、前記入力部材および前記出力部材と同軸に、かつ、該入力部材および該出力部材に対する相対回転を可能に支持されている。
【0020】
前記第1遊星ローラ機構は、第1サンローラと、第1リングローラと、少なくとも1個の第1遊星ローラとを備える。
【0021】
前記第1サンローラは、外周面に第1内径側転がり接触面を有し、かつ、前記入力部材と一体的に回転する。
【0022】
前記第1リングローラは、内周面に第1外径側転がり接触面を有し、前記第1サンローラと同軸に配置され、かつ、使用時にも回転しない部分に支持されている。
【0023】
前記第1遊星ローラは、外周面に、前記第1内径側転がり接触面と前記第1外径側転がり接触面とに転がり接触する第1転動面を有し、かつ、前記キャリアに対して自身の中心軸を中心とする回転を可能に支持されている。
【0024】
前記第2遊星ローラ機構は、第2サンローラと、第2リングローラと、少なくとも1個の第2遊星ローラとを備える。
【0025】
前記第2サンローラは、外周面に第2内径側転がり接触面を有し、前記第1サンローラと同軸に配置され、かつ、前記入力部材および前記第1サンローラと一体的に回転する。
【0026】
前記第2リングローラは、内周面に第2外径側転がり接触面を有し、前記第2サンローラと同軸に配置され、かつ、前記出力部材と一体的に回転する。
【0027】
前記第2遊星ローラは、外周面に、前記第2内径側転がり接触面と前記第2外径側転がり接触面とに転がり接触する第2転動面を有し、かつ、前記キャリアに対して自身の中心軸を中心とする回転を可能に支持されている。
【0028】
本発明の減速装置の一態様では、前記第1遊星ローラと前記第2遊星ローラとの円周方向に関する位相が互いにずれていることが好ましい。
【0029】
本発明の減速装置の一態様は、前記第1遊星ローラ機構および前記第2遊星ローラ機構を収容するハウジングをさらに備えることができる。この場合、前記入力部材は、前記ハウジングに対し回転可能に支持され、かつ、前記出力部材は、前記ハウジングに対し回転可能に支持される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の減速装置によれば、異音や振動の発生を防止しつつ、コストの増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例の減速装置を示す模式図である。
図2図2は、第1例の減速装置を、軸方向から見た端面図である。
図3図3は、図2のX-X断面図である。
図4図4は、第1例の減速装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1図3により説明する。本例の減速装置1は、入力部材2と、出力部材3と、キャリア4と、第1遊星ローラ機構5と、第2遊星ローラ機構6とを備える。減速装置1は、入力部材2の回転を、キャリア4と第1遊星ローラ機構5と第2遊星ローラ機構6とからなる減速機構部7により減速してから出力部材3に伝達する。換言すれば、減速装置1は、入力部材2の回転トルクを、減速機構部7により増大してから出力部材3に伝達し、該出力部材3から出力する。さらに、本例の減速装置1は、減速機構部7を収容するハウジング8を備える。
【0033】
以下の説明において、減速装置1に関して、軸方向、径方向、および円周方向とは、特に断らない限り、入力部材2の軸方向、径方向、および円周方向をいう。入力部材2の軸方向、径方向、および円周方向は、出力部材3の軸方向、径方向、および円周方向と一致し、かつ、キャリア4の軸方向、径方向、および円周方向と一致する。また、減速装置1に関して、軸方向片側は、入力部材2側である図1および図3の左側をいい、軸方向他側は、出力部材3側である図1および図3の右側をいう。
【0034】
本例では、ハウジング8は、ハウジング本体9と、ブッシュ14と、蓋体10とを備える。
【0035】
ハウジング本体9は、円筒部11と、該円筒部11の軸方向片側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった中空円形状の内向きフランジ部12と、円筒部11の軸方向他側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がった中空円形状の外向きフランジ部13とを備える。
【0036】
円筒部11は、軸方向片側部分の内周面の円周方向複数箇所に、軸方向に伸長する係合凹溝56を有する。本例では、係合凹溝56の軸方向片側の端部は、内向きフランジ部12の軸方向片側面に開口している。
【0037】
外向きフランジ部13は、円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する通孔15を有する。なお、外向きフランジ部13の軸方向片側面は、入力部材2の中心軸に直交する平坦面により構成されている。
【0038】
ブッシュ14は、円環状に構成されており、円周方向複数箇所に、軸方向他側面に開口するねじ孔16を有し、かつ、内周面の軸方向片側部分に、軸方向他側を向いた段差面38を有する。ブッシュ14は、軸方向片側面の径方向外側の端部を、ハウジング本体9の円筒部11の内周面に備えられた軸方向他側を向いた突き当て面69に突き当てた状態で、ハウジング本体9の円筒部11の軸方向他側部分に、締り嵌めで内嵌固定されている。
【0039】
蓋体10は、中空円形板状に構成されている。蓋体10は、径方向内側部分の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する内径側通孔17を有し、かつ、径方向外側部分の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する外径側通孔18を有する。
【0040】
ハウジング本体9およびブッシュ14と、蓋体10とは、内径側通孔17を挿通したボルト19をねじ孔16に螺合することにより互いに結合固定されて、ハウジング8を構成する。ハウジング8は、ハウジング本体9の外向きフランジ部13の軸方向片側面を、車体などの使用時にも回転しない固定部分に備えられた被取付面に突き当てた状態で、蓋体10の外径側通孔18とハウジング本体9の通孔15とに軸方向他側から挿通したボルト(図示省略)を、前記被取付面に開口したねじ孔に螺合することにより、前記固定部分に対し支持固定される。
【0041】
入力部材2は、ハウジング8の軸方向片側部分に回転可能に支持されており、電動モータやエンジンなどの駆動源により回転駆動される。
【0042】
本例では、入力部材2は、段付円柱形状を有する。具体的には、入力部材2は、軸方向片側部分に小径軸部20を有し、かつ、軸方向他側部分に大径軸部21を有する。
【0043】
本例では、大径軸部21が、キャリア4と3つのラジアル軸受22a、22b、22cとを介して、ハウジング8を構成するハウジング本体9の内向きフランジ部12に回転可能に支持されている。また、小径軸部20が、駆動源にトルクの伝達を可能に接続される。
【0044】
出力部材3は、入力部材2と同軸に、かつ、該入力部材2に対する相対回転を可能に支持されている。本例では、出力部材3は、ハウジング8の軸方向他側部分に回転可能に支持されている。
【0045】
本例では、出力部材3は、第1出力部材素子23と、第2出力部材素子24とを備える。
【0046】
第1出力部材素子23は、円形板状の基板部25と、該基板部25の軸方向他側面の中央位置から軸方向他側に向けて突出する円柱状の軸部26とを有する。
【0047】
基板部25は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する通孔27を有する。
【0048】
第2出力部材素子24は、段付円筒形状を有する。具体的には、第2出力部材素子24は、軸方向片側の大径筒部28と、軸方向他側の小径筒部29とを、中空円形板状の側板部30により接続してなる。
【0049】
大径筒部28は、円周方向複数箇所に、内周面と軸方向片側の端面と開口する凹部31を有する。
【0050】
小径筒部29は、円周方向複数箇所に、軸方向他側面に開口するねじ孔32を有する。
【0051】
第1出力部材素子23と第2出力部材素子24とは、通孔27を挿通したボルト33をねじ孔32に螺合することにより互いに結合固定されて、出力部材3を構成する。
【0052】
本例では、出力部材3を構成する第2出力部材素子24の小径筒部29が、ハウジング8を構成するブッシュ14の内側に、ラジアル転がり軸受34により、回転可能に支持されている。
【0053】
ラジアル転がり軸受34は、内輪35と、外輪36と、該内輪35と該外輪36との間の円周方向複数箇所に転動自在に配置された複数個の転動体37とを備える。
【0054】
内輪35は、第2出力部材素子24の小径筒部29に外嵌されており、かつ、第2出力部材素子24の側板部30の軸方向他側面の径方向内側の端部と、第1出力部材素子23の基板部25の軸方向片側面の径方向外側部分との間で軸方向に挟持されている。
【0055】
外輪36は、ブッシュ14に内嵌されており、かつ、ブッシュ14の段差面38と、蓋体10の軸方向片側面の径方向内側の端部との間で軸方向に挟持されている。
【0056】
それぞれの転動体37は、内輪35と外輪36との間の円周方向複数箇所に転動自在に配置されている。本例では、それぞれの転動体37は、玉により構成されている。すなわち、本例では、ラジアル転がり軸受34は、ラジアル玉軸受により構成されている。ただし、出力部材をハウジングに回転可能に支持するためのラジアル転がり軸受を、円筒ころ軸受により構成したり、複数の転がり軸受を有する軸受ユニットにより構成したりすることもできる。
【0057】
キャリア4は、入力部材2および出力部材3と同軸に、かつ、該入力部材2および該出力部材3に対する相対回転を可能に支持されている。
【0058】
本例では、キャリア4は、第1キャリア素子39と、第2キャリア素子40とを備える。
【0059】
第1キャリア素子39は、略円筒状の第1基部41と、第1側板部42と、複数個の第1支持軸部43と、複数個の第2支持軸部44とを備える。
【0060】
第1側板部42は、略中空円形板状に構成されており、第1基部41の軸方向片側の端部から径方向外側に向けて突出している。
【0061】
それぞれの第1支持軸部43は、第1側板部42の軸方向片側面の円周方向等間隔複数箇所から軸方向片側に向けて突出している。それぞれの第1支持軸部43は、円柱形状を有し、かつ、軸方向片側面に開口するねじ孔45aを有する。
【0062】
第1支持軸部43は、後述する第1遊星ローラ機構5を構成する第1遊星ローラ53と同数備えられている。本例では、第1遊星ローラ機構5は、第1遊星ローラ53を3個備える。したがって、第1支持軸部43は、第1側板部42の軸方向片側面の円周方向等間隔3箇所から軸方向片側に向けて突出している。
【0063】
それぞれの第2支持軸部44は、第1側板部42の軸方向片側面のうち、第1支持軸部43が備えられた部分から円周方向に外れた部分の円周方向等間隔複数箇所から軸方向片側に向けて突出している。それぞれの第2支持軸部44は、円柱形状を有し、かつ、軸方向片側面に開口するねじ孔45bを有する。
【0064】
第2支持軸部44は、後述する第2遊星ローラ機構6を構成する第2遊星ローラ64と同数備えられている。本例では、第2遊星ローラ機構6は、第2遊星ローラ64を3個備える。このため、本例では、第2支持軸部44は、第1側板部42の軸方向片側面のうち、円周方向に隣り合う第1支持軸部43同士の円周方向中央位置から軸方向片側に向けて突出している。換言すれば、第2支持軸部44は、第1支持軸部43に対し、円周方向に関する位相が60度ずれた部分に備えられている。
【0065】
第1側板部42の軸方向片側面からの第2支持軸部44の突出量は、第1側板部42の軸方向片側面からの第1支持軸部43の突出量よりも小さくなっている。また、それぞれの第1支持軸部43の中心軸と、それぞれの第2支持軸部44の中心軸とは、互いに平行に配置され、かつ、第1基部41の中心軸を中心とする同一の仮想円上に存在する。
【0066】
第2キャリア素子40は、略円筒状の第2基部46と、第2側板部47とを備える。
【0067】
第2側板部47は、略中空円形板状に構成されており、第2基部46の軸方向他側の端部から径方向外側に向けて突出している。
【0068】
第2側板部47は、円周方向等間隔複数箇所に、軸方向に貫通する第1通孔48を有する。本例では、第1通孔48は、第2側板部47の円周方向等間隔3箇所に備えられている。
【0069】
また、第2側板部47は、第1通孔48が備えられた部分から円周方向に外れた部分の円周方向等間隔複数箇所に、円周方向に隣接する部分よりも軸方向他側にオフセットしたオフセット部49を有する。具体的には、本例では、第2側板部47は、円周方向に隣り合う第1通孔48同士の円周方向中央位置に、3個のオフセット部49を有する。それぞれのオフセット部49は、軸方向に貫通する第2通孔50を有する。
【0070】
さらに、第2キャリア素子40は、第2側板部47の軸方向他側面のうち、第1通孔48の軸方向他側の開口を囲む部分から軸方向他側に向けて突出する円筒状の第1突出部59を有し、かつ、第2側板部47の軸方向他側面のうち、第2通孔50の軸方向他側の開口を囲む部分から軸方向他側に向けて突出する円筒状の第2突出部60を有する。
【0071】
第1キャリア素子39と第2キャリア素子40は、第1支持軸部43の軸方向片側の端面と第1突出部59の軸方向他側の端面とを突き合わせ、かつ、第2支持軸部44の軸方向片側の端面と第2突出部60の軸方向他側の端面とを突き合わせた状態で、第1通孔48を挿通したボルト70aを、第1支持軸部43に備えられたねじ孔45aに螺合し、かつ、第2通孔50を挿通したボルト70bを、第2支持軸部44に備えられたねじ孔45bに螺合することにより互いに結合固定されて、キャリア4を構成する。
【0072】
本例では、キャリア4は、4個のラジアル軸受22a、22b、22c、22dにより、入力部材2、出力部材3、およびハウジング8に対する相対回転を可能に支持されている。具体的には、入力部材2の大径軸部21の軸方向片側部分の外周面と第2キャリア素子40の第2側板部47の内周面との間にラジアル軸受22aが配置され、かつ、第2基部46の外周面とハウジング本体9の内向きフランジ部12の内周面との間にラジアル軸受22bが配置されている。また、大径軸部21の軸方向他側の端部外周面と第1キャリア素子39の第1側板部42の内周面との間にラジアル軸受22cが配置され、かつ、第1基部41の外周面と出力部材3を構成する第2出力部材素子24の小径筒部29の内周面との間にラジアル軸受22dが配置されている。
【0073】
本例では、4個のラジアル軸受22a、22b、22c、22dはいずれも、滑り軸受により構成されている。ただし、キャリアを、入力部材、出力部材、およびハウジングに対する相対回転を可能に支持するためのラジアル軸受の一部または全部を、玉軸受やラジアルニードル軸受などのラジアル転がり軸受により構成することもできる。
【0074】
第1遊星ローラ機構5は、第1サンローラ51と、第1リングローラ52と、少なくとも1個の第1遊星ローラ53とを備える。
【0075】
第1サンローラ51は、外周面に第1内径側転がり接触面54を有し、かつ、入力部材2と一体的に回転する。
【0076】
本例では、第1内径側転がり接触面54は、入力部材2の大径軸部21の軸方向中間部外周面に直接形成されている。すなわち、第1サンローラ51は、入力部材2と一体に構成されている。
【0077】
ただし、第1サンローラを、入力部材とは別体に構成することもできる。具体的には、第1サンローラを、外周面に第1内径側転がり接触面を有する円環状部材により構成し、該円環状部材を、スプライン係合などにより、入力部材にトルク伝達可能に外嵌することもできる。
【0078】
第1リングローラ52は、内周面に第1外径側転がり接触面55を有し、第1サンローラ51と同軸に配置され、かつ、使用時にも回転しない部分に支持されている。
【0079】
本例では、第1リングローラ52は、円環状に構成されており、内周面に第1外径側転がり接触面55を有し、かつ、外周面の円周方向複数箇所に第1係合凸部57を有する。第1リングローラ52は、それぞれの第1係合凸部57を、ハウジング8を構成するハウジング本体9の円筒部11の内周面に備えられた係合凹溝56に係合させることで、ハウジング8に対し回転を不能に支持されている。
【0080】
ただし、第1外径側転がり接触面を、ハウジングの内周面に直接形成することもできる。すなわち、第1リングローラを、ハウジングと一体に構成することもできる。
【0081】
第1遊星ローラ53は、外周面に、第1内径側転がり接触面54と第1外径側転がり接触面55とに転がり接触する第1転動面58を有し、キャリア4に対して自身の中心軸(自転軸)を中心とする回転を可能に支持されている。
【0082】
本例では、第1遊星ローラ機構5は、第1遊星ローラ53を3個備える。それぞれの第1遊星ローラ53は、円環状に構成されており、第1キャリア素子39の第1支持軸部43と第2キャリア素子40の第1突出部59との周囲に、2個のラジアル転がり軸受61aにより回転可能に支持されている。すなわち、第1遊星ローラ53の軸方向他側の端部内周面と第1支持軸部43の外周面との間部分と、第1遊星ローラ53の軸方向片側の端部内周面と第1突出部59の外周面との間部分とに、それぞれラジアル転がり軸受61aが配置されている。
【0083】
第2遊星ローラ機構6は、第2サンローラ62と、第2リングローラ63と、少なくとも1個の第2遊星ローラ64とを備える。
【0084】
第2サンローラ62は、外周面に第2内径側転がり接触面65を有し、かつ、入力部材2および第1サンローラ51と一体的に回転する。
【0085】
本例では、第2内径側転がり接触面65は、入力部材2の大径軸部21の外周面うち、第1サンローラ51が外嵌された部分より軸方向他側に位置する部分に直接形成されている。すなわち、第2サンローラ62は、入力部材2および第1サンローラ51と一体に構成されている。
【0086】
ただし、第2サンローラを、入力部材とは別体に構成することもできる。具体的には、第2サンローラを、外周面に第2内径側転がり接触面を有する円環状部材により構成し、該円環状部材を、スプライン係合などにより、入力部材にトルク伝達可能に外嵌することもできる。
【0087】
本例では、第2サンローラ62の外径(すなわち第2内径側転がり接触面65の直径)は、第1サンローラ51の外径(すなわち第1内径側転がり接触面54の直径)よりも大きい。
【0088】
第2リングローラ63は、内周面に第2外径側転がり接触面66を有し、第2サンローラ62と同軸に配置され、かつ、出力部材3と一体的に回転する。
【0089】
本例では、第2リングローラ63は、円環状に構成されており、内周面に第2外径側転がり接触面66を有し、かつ、外周面の円周方向複数箇所に第2係合凸部67を有する。第2リングローラ63は、それぞれの第2係合凸部67を、出力部材3を構成する第2出力部材素子24の大径筒部28の内周面に備えられた凹部31に係合させることで、出力部材3に対しトルク伝達可能に支持されている。
【0090】
ただし、第2外径側転がり接触面を、出力部材の内周面に直接形成することもできる。すなわち、第2リングローラを、出力部材と一体に構成することもできる。
【0091】
本例では、第2リングローラ63の内径(すなわち第2外径側転がり接触面66の直径)は、第1リングローラ52の内径(すなわち第1外径側転がり接触面55の直径)よりも小さい。
【0092】
第2遊星ローラ64は、外周面に、第2内径側転がり接触面65と第2外径側転がり接触面66とに転がり接触する第2転動面68を有し、かつ、キャリア4に対して自身の中心軸(自転軸)を中心とする回転を可能に支持されている。このため、第2遊星ローラ64は、第1遊星ローラ53と一体的には回転(自転)せず、第1遊星ローラ53とは独立して回転する。
【0093】
本例では、第2遊星ローラ機構6は、第2遊星ローラ64を3個備える。それぞれの第2遊星ローラ64は、円環状に構成されており、第1キャリア素子39の第2支持軸部44と第2キャリア素子40の第2突出部60との周囲に、2個のラジアル転がり軸受61bにより回転可能に支持されている。すなわち、第2遊星ローラ64の軸方向他側の端部内周面と第2支持軸部44の外周面との間部分と、第2遊星ローラ64の軸方向片側の端部内周面と第2突出部60の外周面との間部分とに、それぞれラジアル転がり軸受61bが配置されている。
【0094】
すなわち、本例の減速装置1では、キャリア4に、第1支持軸部43および第2支持軸部44が備えられている。そして、第1遊星ローラ53が、第1支持軸部43(および第1突出部59)の周囲に該第1支持軸部43を中心とする回転を可能に支持され、かつ、第2遊星ローラ64が、第2支持軸部44(および第2突出部60)の周囲に該第2支持軸部44を中心とする回転を可能に支持されている。
【0095】
なお、それぞれの第2支持軸部44は、第1側板部42の軸方向片側面のうち、第1支持軸部43が備えられた部分から円周方向に外れた部分の円周方向等間隔複数箇所から軸方向片側に向けて突出している。したがって、本例では、第1支持軸部43の周囲に支持された第1遊星ローラ53と、第2支持軸部44の周囲に支持された第2遊星ローラ64との円周方向に関する位相は互いにずれている。具体的には、本例では、それぞれの第1遊星ローラ53とそれぞれの第2遊星ローラ64との円周方向に関する位相は、互いに60度ずれている。
【0096】
本例では、キャリア4の中心軸に直交する仮想平面内において、それぞれの第1遊星ローラ53の中心軸と、それぞれの第2遊星ローラ64の中心軸とは、キャリア4を中心とする同一の仮想円上に存在する。換言すれば、キャリア4の中心軸に直交する仮想平面内において、該キャリア4を中心とし、かつ、それぞれの第1遊星ローラ53の中心軸を通る第1の仮想円の直径は、キャリア4を中心とし、かつ、それぞれの第2遊星ローラ64の中心軸を通る第2の仮想円の直径と同じである。したがって、本例では、第2遊星ローラ64の外径(すなわち第2転動面68の直径)は、第1遊星ローラ53の外径(すなわち第1転動面58の直径)よりも小さい。
【0097】
本例の減速装置1では、転がり接触部を構成するそれぞれの面、すなわち第1内径側転がり接触面54、第1外径側転がり接触面55、および第1転動面58と、第2内径側転がり接触面65、第2外径側転がり接触面66、および第2転動面68とには、トラクショングリースが塗布されている。トラクショングリースは、一般的に摺接部の潤滑に用いられる、石けん系グリースなどのグリースよりも高いトラクション係数および高い摩擦係数を有し、かつ、圧力-粘度係数が高く、圧力が作用するとガラス状に硬化するのに対し、圧力が解除されると軟化する性質を有する。
【0098】
ただし、本発明の減速装置の一態様を実施する場合、それぞれの転がり接触部に、トラクショングリースに代えて、トラクションオイルを供給することもできる。トラクションオイルは、トラクショングリースと同様に、圧力-粘度係数が高く、圧力が作用するとガラス状に硬化するのに対し、圧力が解除されると軟化する性質を有する。
【0099】
また、本例の減速装置1では、それぞれの転がり接触部の滑り性を良好に確保し、かつ、該転がり接触部を構成するそれぞれの面の摩耗を防止するために、転がり接触部を構成するそれぞれの面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:2013)を、0.40μm以下、好ましくは0.30μm以下、より好ましくは0.20μm以下としている。なお、転がり接触部を構成するそれぞれの面の算術平均粗さRaの下限値は、特に限定されるものではないが、製造コストの面から、例えば、0.05μmとすることができる。
【0100】
さらに、本例の減速装置1では、転がり接触部を構成するそれぞれの面のビッカース硬さHv(JIS Z 2244:2009)を、550以上、好ましくは600以上、より好ましくは650以上としている。これにより、減速機構部7を構成するそれぞれのローラ、すなわち第1サンローラ51、第1リングローラ52、および第1遊星ローラ53、並びに、第2サンローラ62、第2リングローラ63、および第2遊星ローラ64に、割れなどの損傷が生じるのを防止している。
【0101】
本例の減速装置1では、入力部材2の回転は、キャリア4と第1遊星ローラ機構5と第2遊星ローラ機構6とからなる減速機構部7により減速されてから、出力部材3に伝達される。換言すれば、減速装置1は、入力部材2の回転トルクを、減速機構部7により増大してから出力部材3に伝達し、該出力部材3から出力する。
【0102】
具体的には、入力部材2の回転は、次のような経路を通って、出力部材3に伝達される。入力部材2の回転に伴い、第1サンローラ51が回転すると、第1内径側転がり接触面54と第1転動面58との転がり接触に基づいて、それぞれの第1遊星ローラ53が自身の中心軸を中心に回転(自転)する。それぞれの第1遊星ローラ53が自転すると、第1転動面58と第1外径側転がり接触面55との転がり接触に基づき、それぞれの第1遊星ローラ53が、キャリア4の中心軸を中心に回転(公転)する。それぞれの第1遊星ローラ53の公転に伴い、キャリア4も自身の中心軸を中心に回転し、該キャリア4に支持された第2遊星ローラ64が、キャリア4の中心軸を中心に回転(公転)する。キャリア4の回転によってそれぞれの第2遊星ローラ64が公転するとともに、入力部材2の回転に伴って第2サンローラ62が回転すると、第2転動面68と第2内径側転がり接触面65との転がり接触に基づいて、それぞれの第2遊星ローラ64が自身の中心軸を中心に回転(自転)する。それぞれの第2遊星ローラ64が自転すると、第2転動面68と第2外径側転がり接触面66との転がり接触に基づいて、第2リングローラ63が回転し、出力部材3も回転する。
【0103】
本例の減速装置1では、減速機構部7を構成するそれぞれのローラ同士での間での動力伝達を、転がり接触(トラクションドライブ)により行っている。要するに、本例の減速装置1は、動力の伝達経路中に、歯車同士の噛合部を有していない。このため、本例の減速装置1では、歯車同士の噛合部に不可避に存在するバックラッシュに起因する異音や振動が発生しない。
【0104】
また、本例の減速装置1では、国際公開第2020/170297号パンフレットに記載の遊星歯車装置のように、遊星歯車機構部における減速比と、摩擦ローラ機構部における減速比とを厳密に一致させるべく、それぞれの部材の形状精度、寸法精度、および組立精度を過度に高くする必要がない。このため、本例の減速装置1によれば、コストの増大を抑えることができる。
【0105】
また、国際公開第2020/170297号パンフレットに記載の遊星歯車装置は、ギヤドライブ式の動力伝達機構部である遊星歯車機構部と、トラクションドライブ式の動力伝達機構部である摩擦ローラ機構部とを有しているため、部品点数が多く、部品の製造、管理、および組立に要するコストが嵩みやすい。これに対し、本例の減速装置1は、トラクションドライブ式の減速機構部7のみを有する。すなわち、本例の減速装置1は、ギヤドライブ式の動力伝達機構部を有していない分、国際公開第2020/170297号パンフレットに記載の遊星歯車装置に比べて部品点数を削減することができる。したがって、本例の減速装置1によれば、部品の製造、管理、および組立に要するコストを低減することができる。
【0106】
本例の減速装置1は、減速機構部7を構成するそれぞれのローラの直径を変更することで、入力部材2と出力部材3との間の減速比を調節することができる。すなわち、本例の減速装置は、歯車式の減速装置のように、歯数を変更することにより減速比を調整する構造に比べて、減速比の設定の自由度が高い。
【0107】
なお、本例では、第2サンローラ62の外径が第1サンローラ51の外径よりも大きく、第2リングローラ63の内径が第1リングローラ52の内径よりも小さく、かつ、第2遊星ローラ64の外径が第1遊星ローラ53の外径よりも小さい。ただし、転がり接触部での有害な滑りの発生を防止することができる限り、減速機構部を構成するそれぞれのローラの直径は、任意に設定することができる。
【0108】
また、本例では、キャリア4の中心軸に直交する仮想平面内において、それぞれの第1遊星ローラ53の中心軸と、それぞれの第2遊星ローラ64の中心軸とが、キャリア4を中心とする同一の仮想円上に存在する。ただし、転がり接触部での有害な滑りの発生を防止することができる限り、キャリアを中心とし、かつ、第1遊星ローラの中心軸を通る第1の仮想円の直径と、キャリアを中心とし、かつ、第2遊星ローラの中心軸を通る第2の仮想円の直径とを互いに異ならせることもできる。
【0109】
本例では、第1支持軸部43と第2支持軸部44との円周方向に関する位相を互いにずらすことで、第1遊星ローラ53と第2遊星ローラ64との円周方向に関する位相を互いにずらしている。このため、第1遊星ローラ53の周辺に配置された部材と、第2遊星ローラ64の周辺に配置された部材とを、円周方向に重畳して配置することができる。具体的には、例えば、第1遊星ローラ53の軸方向他側の端部内周面と第1支持軸部43の外周面との間部分に配置されたラジアル転がり軸受61aと、第2遊星ローラ64の軸方向片側の端部内周面と第2突出部60の外周面との間部分に配置されたラジアル転がり軸受61bとを、円周方向に重畳して配置することができる。したがって、減速装置1の軸方向寸法を短く抑えやすく、減速装置1を小型に構成しやすい。
【0110】
本例の減速装置1では、キャリア4と第1遊星ローラ機構5と第2遊星ローラ機構6とからなる減速機構部7をハウジング8に収容し、かつ、入力部材2と出力部材3とのそれぞれを、ハウジング8に対し回転自在に支持している。具体的には、減速機構部7を、ハウジング8の軸方向中間部に備えられた円筒部11に収容している。また、入力部材2を、ハウジング8の軸方向片側の端部に備えられた内向きフランジ部12に対し、キャリア4およびラジアル軸受22a、22bを介して回転可能に支持し、かつ、出力部材3を、円筒部11の軸方向他側部分に内嵌固定されたブッシュ14に対し、ラジアル転がり軸受34により回転可能に支持している。このため、減速装置1を、自動車の駆動系などに組み込む以前の状態において、予め組み立ててアセンブリ化しておくことができ、減速装置1の取り扱い性を良好にできる。
【0111】
本例の減速装置1は、自動車の駆動系に限らず、各種機械装置の動力伝達装置として使用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 減速装置
2 入力部材
3 出力部材
4 キャリア
5 第1遊星ローラ機構
6 第2遊星ローラ機構
7 減速機構部
8 ハウジング
9 ハウジング本体
10 蓋体
11 円筒部
12 内向きフランジ部
13 外向きフランジ部
14 ブッシュ
15 通孔
16 ねじ孔
17 内径側通孔
18 外径側通孔
19 ボルト
20 小径軸部
21 大径軸部
22a、22b、22c、22d ラジアル軸受
23 第1出力部材素子
24 第2出力部材素子
25 基板部
26 軸部
27 通孔
28 大径筒部
29 小径筒部
30 側板部
31 凹部
32 ねじ孔
33 ボルト
34 ラジアル転がり軸受
35 内輪
36 外輪
37 転動体
38 段差面
39 第1キャリア素子
40 第2キャリア素子
41 第1基部
42 第1側板部
43 第1支持軸部
44 第2支持軸部
45a、45b ねじ孔
46 第2基部
47 第2側板部
48 第1通孔
49 オフセット部
50 第2通孔
51 第1サンローラ
52 第1リングローラ
53 第1遊星ローラ
54 第1内径側転がり接触面
55 第1外径側転がり接触面
56 係合凹溝
57 第1係合凸部
58 第1転動面
59 第1突出部
60 第2突出部
61a、61b ラジアル転がり軸受
62 第2サンローラ
63 第2リングローラ
64 第2遊星ローラ
65 第2内径側転がり接触面
66 第2外径側転がり接触面
67 第2係合凸部
68 第2転動面
69 突き当て面
70a、70b ボルト
図1
図2
図3
図4