(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007003
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20240111BHJP
E05B 83/20 20140101ALI20240111BHJP
【FI】
B60J5/10 H
E05B83/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108093
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 遼
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH02
2E250LL05
(57)【要約】
【課題】バックドアからの突出物を気にせずに介助者が車椅子を車室内に案内可能とする。
【解決手段】車両後部構造は、バックドア20及びテールゲート40を備える。バックドア20は、車体の後部開口12上部に車幅方向に延設される回動軸L1が設けられる。テールゲート40は、車体の後部開口12下部に車幅方向に延設される回動軸L2が設けられる。テールゲート40の車体へのロックを解除可能なレバーカバー131が、テールゲート40の上面70Aから突設される。バックドア20の下面21B1にはU字フック121が設けられる。U字フック121は、バックドア20の内面21B3よりも車室内に突出されるとともにレバーカバー131に引っ掛けられ、バックドア20の開放時にレバーカバー131を後方に倒す。このU字フック121が可撓性部材から構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部開口上部に車幅方向に延設される回動軸が設けられたバックドアと、
前記車体の後部開口下部に車幅方向に延設される回動軸が設けられたテールゲートと、
を備える、車両後部構造であって、
前記テールゲートの前記車体へのロックを解除可能なレバーが、前記テールゲートの上面から突設され、
前記バックドアの下面には、当該バックドアの内面よりも車室内に突出されるとともに前記レバーに引っ掛けられ、前記バックドアの開放時に前記レバーを後方に倒すU字フックが設けられ、
前記U字フックが可撓性部材から構成される、
車両後部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両後部構造であって、
前記レバーは、車両前方に突出する突起部を備える、
車両後部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両後部構造であって、
前記レバーの回転中心側から前記突起部に接続される接続部の、前記U字フックと当接する当接面と、前記突起部の、前記U字フックと当接する当接面との成す角は鈍角である、
車両後部構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両後部構造であって、
前記バックドアの開放時に前記U字フックと当接する前記レバーの面と対向する背面は、前記テールゲートが前記車体にロックされているときに、車両前方に傾斜される、
車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車両後部にバックドア及びテールゲートが設けられた、車両後部構造が開示される。
【背景技術】
【0002】
例えば福祉車両では、その後部構造として、例えば特許文献1のように、上下両開きのドアが設けられる。例えば上開きのドアとして車両後部にはバックドアが設けられ、下開きのドアとしてテールゲートが設けられる。
【0003】
特許文献1では、例えば
図14に例示されるように、バックドア520の下面に開錠機構620が設けられる。開錠機構620には、バックドア520の内面520A(車室側の面)から突出するようにしてフック621が設けられる。またテールゲート540にはロック機構550が設けられる。ロック機構550には、テールゲート540の上面から突出するピン630が設けられる。
【0004】
バックドア520が上開きする際にフック621がピン630に当接してそのままピン630が車両後方に倒される。ピン630の後倒れによって、テールゲート540のロック機構550が解除される。例えば
図15に例示されるように、ピン630の後倒れによってロックユニット546とストライカ518との係合が解除される。バックドア520及びテールゲート540が開放されることで車室内に車椅子を乗り入れやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、
図14に例示されるように、バックドア520の内面よりも車両前方にフック621が突設されていることから、
図15のようにバックドア520が開状態(上開き状態)にあるとき、フック621はバックドア520の内面520Aよりも下方に突出する。
【0007】
このとき、車室内に車椅子を案内する際に、車椅子を後ろから押す介助者は、バックドア520から下方に突出するフック621を避けながら車椅子を車室内に押す必要がある。
【0008】
そこで本明細書で開示される車両後部構造は、バックドアからの突出物を気にせずに介助者が車椅子を車室内に案内可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示される車両後部構造は、バックドア及びテールゲートを備える。バックドアは、車体の後部開口上部に車幅方向に延設される回動軸が設けられる。テールゲートは、車体の後部開口下部に車幅方向に延設される回動軸が設けられる。テールゲートの車体へのロックを解除可能なレバーが、テールゲートの上面から突設される。バックドアの下面にはU字フックが設けられる。U字フックは、バックドアの内面よりも車室内に突出されるとともにレバーに引っ掛けられ、バックドアの開放時にレバーを後方に倒す。このU字フックが可撓性部材から構成される。
【0010】
上記構成によれば、バックドア開放時に、U字フックがバックドアの内面よりも下方に突出する。このU字フックが可撓性部材から構成されているため、仮に介助者の頭にU字フックが当たってもU字フックがそのまま撓む。これにより介助者はU字フックを気にせずに車椅子を車室内に案内可能となる。
【0011】
また上記構成において、レバーは、車両前方に突出する突起部を備えてもよい。
【0012】
上記構成によれば、可撓性のU字フックが突起部に引っかかることで、レバーからのU字フックの抜けが抑制可能となる。
【0013】
また上記構成において、レバーの回転中心側から突起部に接続される接続部の、U字フックと当接する当接面と、突起部の、U字フックと当接する当接面との成す角は鈍角であってよい。
【0014】
上記構成によれば、レバーがU字フックによって倒され、テールゲートのロック機構が解除された後に、レバーからU字フックから抜けやすくなる。
【0015】
また上記構成において、バックドアの開放時にU字フックと当接するレバーの面と対向する背面は、テールゲートが車体にロックされているときに、車両前方に傾斜されてよい。
【0016】
開放状態のバックドア及びテールゲートを閉止状態にする際に、例えば最初にテールゲートが閉じられ、その後バックドアが閉じられる。バックドアが閉じられる際に、U字フックはレバーを乗り越える必要がある。このときレバーの背面が前傾されていることで、U字フックはレバーを乗り越えやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に開示される車両後部構造によれば、バックドアからの突出物を気にせずに介助者が車椅子を車室内に案内可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る車両後部構造を備える車両の斜視図である。
【
図2】バックドア及びテールゲート開放時の斜視図である。
【
図3】ロック機構の一部(露出部分)を例示する斜視図である。
【
図4】ロック機構の内部構造を例示する斜視図である。
【
図5】ロック機構の動作説明のための斜視図である。
【
図7】開錠機構の構成を例示する分解斜視図である。
【
図8】本実施形態に係る車両後部構造の開放時の動作を説明する側面断面図(1/3)である。
【
図9】本実施形態に係る車両後部構造の開放時の動作を説明する側面断面図(2/3)である。
【
図10】本実施形態に係る車両後部構造の開放時の動作を説明する側面断面図(3/3)である。
【
図11】開放状態のテールゲートを例示する斜視図である。
【
図12】レバーカバーの別例(表面)を例示する斜視図である。
【
図13】レバーカバーの別例(裏面)を例示する斜視図である。
【
図14】従来技術に係る車両後部構造の開放時の動作を説明する側面断面図である。
【
図15】従来技術に係るバックドア及びテールゲート開放時の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本実施形態に係る車両後部構造を備える車両10が例示される。なお
図1-
図13において、車両前後方向が記号FRで表される軸で示され、車幅方向が記号RWで表される軸で示され、鉛直方向が記号UPで表される軸で示される。記号FRはFrontの略であり、前後方向軸FRは車両前方を正方向とする。記号RWはRight Widthの略であり、幅方向軸RWは右幅方向を正方向とする。また高さ軸UPは上方向を正方向とする。
【0020】
図1に示されているように、これらFR軸、RW軸、UP軸は互いに直交する。以下適宜、これら3軸を基準に、本実施形態に係る車両後部構造が説明される。例えば「前端」は任意の部材のFR軸正方向側の端部を指し、「後端」は任意の部材のFR軸負方向側の端部を指す。「幅内側」はRW軸に沿って相対的に車両の幅方向内側を指すものとし、「幅外側」はRW軸に沿って相対的に車両の幅方向外側を指すものとする。さらに「上側」は相対的にUP軸の正方向側を指し、「下側」は相対的にUP軸の負方向側を指す。
【0021】
<全体構成>
図1、
図2を参照して、本実施形態に係る車両後部構造を備える車両10は、例えば車椅子を車内に乗せることのできる福祉車両であってよい。
【0022】
本実施形態に係る車両後部構造は、バックドア20及びテールゲート40を備える。バックドア20が上開きし、テールゲート40が下開きすることで車両10の後部開口12が大きく開放される。これにより、介助者は車椅子を車室14内へ容易に乗り入れ可能となる。
【0023】
図2を参照して、バックドア20が開放状態(上開き状態)のとき、バックドア20の内面パネルであるドアパネルインナ21Bよりも下方に、開錠機構120のU字フック121が突出する。後述されるようにU字フック121は可撓性の部材から構成されているため、仮に介助者の頭にU字フック121が当たっても、U字フック121が撓むのみで済む。したがって介助者はU字フック121を避ける等の動作を要せずして、車椅子を車室14内に押し進めることが可能となる。
【0024】
またテールゲート40が開放状態(下開き状態)のとき、テールゲート40の上端からロック機構50のレバーカバー131が車両後方に突出する。このとき
図11に例示されるようにレバーカバー131の突起部131Cが上方を向く。言い換えると突起部131Cは介助者の足裏と対向する。
【0025】
後述されるように、レバーカバー131の突起部131Cはその頂点がR加工され、またその突出高さはU字フック121の直径と同等程度となっている。このような構造を備えることで、介助者の足裏への突起部131Cへの引っ掛かりが抑制され、介助者は円滑に車椅子を車室14内に押し進めることが可能となる。
【0026】
<テールゲート>
図1、
図2を参照して、テールゲート40は、車体の後部開口12の下部に設けられた回動軸L2周りに回動可能となっている。回動軸L2は車幅方向に延設される。例えば車体の後部開口12の下端に設けられたブラケット49と、テールゲート40のドアパネル44の下端に設けられたフランジ(図示せず)とに、図示しない回転ピンが挿入されたヒンジ機構によって回動軸L2が定められる。
【0027】
図2に例示されるように、テールゲート40は、リアバンパの中央部(車幅方向中央部)を含む部分であり、後方に倒れるようにして開放される。したがって車両10のリアバンパは、車両後面の車幅方向両側部に設けられるリアバンパ19,19と、テールゲート40に設けられるテールゲートバンパ42とに分割される。
【0028】
なお、
図2には、ストライカ18等の位置を明確にするため、車室14内にはスロープ等の補助器具の図示を省略しているが、車椅子利用者の乗車を容易にするために、これらの補助器具が車室14に設けられてもよい。
【0029】
テールゲート40は、テールゲートバンパ42、ドアパネル44、ロックユニット46、ストライカ48及びロック機構50を含んで構成される。
【0030】
ドアパネル44は車幅方向かつ上下方向に延設される板材であり、その上端にはウェザストリップ45が車幅方向全長に亘って設けられる。さらに後述されるようにウェザストリップ45よりもレバーカバー131が突出される。
【0031】
ドアパネル44の前面にはロック機構50及びロックユニット46が設けられる。ロックユニット46はドアパネル44の前面から車両前方かつ上方に配置される。ロックユニット46はテールゲート40の車幅方向両端に一対設けられる。ロックユニット46は、例えば車幅方向外側に、車両前後方向に切り込まれるスリットが設けられており、またロックユニット46の内部には図示しないラッチが設けられる。
【0032】
また、車室14後方の側壁、特にタイヤハウスの内側壁である、デッキトリムサイドパネル16には、テールゲート40用のストライカ18が設けられる。なお、
図2には車両右側のストライカ18のみが図示されているが、車両構造の対称性より、車両左側のデッキトリムサイドパネル16にもストライカ18が設けられる。
【0033】
テールゲート40が閉止状態にあるとき、言い換えるとテールゲート40が車体にロックされているときに、ロックユニット46のラッチがストライカ18に係止される。後述するように、ロック機構50の操作レバーであるレバーカバー131が車両前後方向後方に倒されたときに、ロックユニット46とストライカ18との係合が解除される。これにより閉止状態のテールゲート40が下開きに開放される。
【0034】
図3-
図5を参照して、ロック機構50は、テールゲート40のロックを解除可能な機構であって、操作レバーであるレバーカバー131、レバーフレーム110、ボールジョイント90、アーム56、コネクティングリンク58、及び一対のケーブル64A,64Bを含んで構成される。
【0035】
図3を参照して、ロック機構50はカバー70内に収容される。カバー70は、前板部材であるカバープレート71と、箱型形状のカバートレイ72が設けられる。カバートレイ72は車両前方部分が切り欠かれる。またカバープレート71は上端部分が切り欠かれる。これらの切欠きにより開口73が形成される。開口73からレバーカバー131が突出する。
【0036】
ロック機構50の開錠プロセスは特許文献1等にて既知であるため以下では簡単に説明される。まずレバーカバー131が車両後方に倒されることで、レバーフレーム110が、回転ピン100を回動中心として
図5のように後方に倒される(回動される)。これにより連結アーム110Cが上方に回動される。
【0037】
さらにボールジョイント90が連結アーム110Cに従って、車幅方向前方かつ上方に引き上げられる。ボールジョイント90の引き上げに伴って、ボールジョイント90の下端に接続されたアーム56のフランジ56Gが上方向に付勢される。これにより、回転ピン60を回転中心として、アーム56が反時計回りに回動させられる。
【0038】
アーム56が反時計回りに回動することで、突出部56F1がコネクティングリンク58の外アーム58Cの下端に当接する。さらにアーム56の反時計回りの回動が進行すると、これに伴ってコネクティングリンク58も反時計回りに回動させられる。その結果、ケーブル64A及びケーブル64Bが引かれ、ロックユニット46(
図2参照)が開錠される。つまりテールゲート40のロックが解除される。
【0039】
<レバー機構>
図4、
図5を参照して、ロック機構50はレバー機構としてU字フック130及びレバーカバー131を備える。U字フック130はフックカバー132を介してレバーフレーム110に固定される。例えばU字フック130は鉄製の丸棒を曲げ加工することで形成される。
【0040】
U字フック130にレバーカバー131が被せられる。レバーカバー131は例えばポリアセテート等の樹脂材料から構成される。レバーカバー131はテールゲート40の車体へのロックを解除可能なレバーである。
図3を参照して、レバーカバー131はテールゲート40(より詳細にはカバー70の)の上面70Aから突設される。
図2を参照して、レバーカバー131の上端はウェザストリップ45よりも上方に突出する。
【0041】
レバーカバー131は立設部131A、傾斜部131B、及び突起部131Cを備える。なお以下では
図5に例示される立設状態においてレバーカバー131の構成が説明される。立設部131AはU字フック130を収容する中空部である。傾斜部131Bは、立設部131Aの上端に接続される接続部である。傾斜部131B(接続部)は立設部131Aに対して車両後方に傾斜される。また傾斜部131Bは、レバーカバー131の回転中心である回転ピン100側から突起部131Cに接続される接続部である。
【0042】
突起部131Cは車両前方に突設される。突起部131Cの頂点はR加工されている。また突起部131Cは頂点から末広がりの傾斜構造となっている。突起部131Cの突出高さはU字フック121(
図9参照)の直径と同等程度となっている。さらに後述されるように、突起部131Cの傾斜面131C1と、傾斜部131Bの当接面131B1とによって、開錠機構120のU字フック121が引っ掛かる窪み構造が形成される。
【0043】
例えば突起部131Cの傾斜面131C1(当接面)と、傾斜部131Bの当接面131B1との成す角は鈍角となる。このような、窪み構造が広く開かれるような鈍角設定とすることで、
図10のようにレバーカバー131が後倒れされてテールゲート40が開放状態となったときに、U字フック121は突起部131Cを乗り越えてレバーカバー131から離脱可能となる。
【0044】
なおテールゲート40及びバックドア20を閉止状態とする際には、まずテールゲート40が閉じられ、次にバックドア20が閉じられる。テールゲート40が閉止状態にある(テールゲート40が車体にロックされている)とき、リターンスプリング62(
図4参照)等の付勢により、レバーカバー131は
図8に例示されるような前傾姿勢となる。
【0045】
このとき、レバーカバー131の背面131A1は、車両前方に傾斜される。なお背面131A1とは、バックドア20及びテールゲート40の開放時にU字フック121と当接する、レバーカバー131の当接面(当接面131B1及び傾斜面131C1)と対向する面を指す。
【0046】
テールゲート40を閉止させ、次にバックドア20を閉止させようとする際に、バックドア20のU字フック121は、前傾姿勢の背面131A1と当接した後、撓みながら背面131A1に沿って移動して最終的にレバーカバー131を乗り越える。その結果、
図8に例示されるようにU字フック121の先端はレバーカバー131よりも車両前方に配置される。
【0047】
<バックドア>
図2、
図6、
図7を参照して、バックドア20は、車体の後部開口12の上部に設けられた回動軸L1周りに回動可能となっている。回動軸L1は車幅方向に延設される。例えば車体の後部開口12の上端とバックドア20の上端に設けられた図示しないヒンジ機構によって回動軸L1が定められる。
【0048】
バックドア20は、車外への露出面となるパネル材であるドアパネルアウタ21Aと、車室内パネル材であるドアパネルインナ21Bを備える。ドアパネルアウタ21Aにはドアハンドル24が設けられる。ドアハンドル24を開操作することで、ロックユニット22がストライカ48から開放され、閉止状態のバックドア20が開放状態に移行する。ドアハンドル24とロックユニット22との連結構造は既知であるためここでは説明が省略される。
【0049】
また例えば
図8を参照して、ドアパネルインナ21Bは車両上下方向に延設されるとともにその下端は車両後方に屈曲される側面視L字状に形成される。
図2を参照して、ドアパネルインナ21Bの下端部である下面21B1に、ロックユニット22及び開錠機構120が設けられる。
【0050】
ロックユニット22はテールゲート40のカバー70上面に設けられた、ストライカ48と係合可能となっている。またロックユニット22の車幅方向に隣接するようにして、開錠機構120が設けられる。
図7を参照して、開錠機構120はU字フック121、ブラケット122、及びプレート123を備える。
【0051】
U字フック121は樹脂ワイヤ等の可撓性部材から構成される。
図6、
図7を参照して、U字フック121はバックドア20の下面21B1に設けられる。そしてU字フック121は、バックドア20の閉止時(言い換えると立位時)には、ドアパネルインナ21Bの鉛直面である内面21B3(
図8参照)よりも車室内に突出される。つまりバックドア20の開放時(上開き状態のとき)には、ドアパネルインナ21Bよりも下方に、開錠機構120のU字フック121が突出される。
【0052】
ここで、上述のようにU字フック121は可撓性部材から構成されているため、仮に介助者の頭にU字フック121が当たっても、U字フック121はそのまま変形する。したがって、介助者はU字フック121を避ける等の動作を伴うことなく、車椅子を車室14内に押し進めることが可能となる。
【0053】
ブラケット122はU字フック121及びプレート123をドアパネルインナ21Bの下面21B1に固定する固定部材である。ブラケット122は本体部122A、傾斜板122B、及びフランジ122Cを備える。
【0054】
フランジ122Cは本体部122Aの車幅方向両端に一対設けられる。フランジ122Cには厚さ方向に締結孔122C1が穿孔され、ドアパネルインナ21Bの下面21B1に設けられた締結孔21B2に軸合わせされる。さらにボルト・ナット締結により、ブラケット122がドアパネルインナ21Bの下面21B1に固定される。
【0055】
本体部122Aの先端部に傾斜板122Bが設けられる。バックドア20の閉止時において、傾斜板122Bはドアパネルインナ21Bよりも車室内側に突出するように配置される。さらにバックドア20の閉止時において、傾斜板122Bは、本体部122Aに対して車両前方かつ下方に延設される下り傾斜となるように配置される。
【0056】
U字フック121はプレート123とブラケット122に挟持される。プレート123は本体部123Aと傾斜板123Bを備える。本体部123Aはブラケット122の本体部122AとU字フック121を挟んで対向する。
【0057】
バックドア20の閉止時において、傾斜板123Bはドアパネルインナ21Bよりも車室内側に突出するように配置される。また傾斜板123Bはブラケット122の傾斜板122Bと平行となるように位置決めされる。つまり傾斜板123Bは、本体部122Aに対して車両前方かつ下方に延設される下り傾斜となるように配置される。
【0058】
傾斜板122B,123Bに挟まれる可撓性のU字フック121は傾斜板122B,123Bに沿って配向される。すなわちバックドア20の閉止時において、U字フック121は車両前方かつ下方に傾斜されるように位置決めされる。このような下方傾斜とすることで、U字フック121がレバーカバー131に引っかかりやすくなる。
【0059】
<バックドア及びテールゲートの開放時動作>
バックドア20(
図2参照)のドアハンドル24を手動にて開放操作すると、ロックユニット22とストライカ48との係合が解除される。これに伴いバックドア20が回動軸L1を回動中心として上方に持ち上げられる。
【0060】
図8、
図9を参照して、このとき、バックドア20の下端では、U字フック121の軌跡上に前傾姿勢のレバーカバー131が位置する。したがってバックドア20の開放過程でU字フック121はレバーカバー131に引っ掛かる。
【0061】
上述のようにレバーカバー131の前面(U字フック121との対向面)には突起部131C及び傾斜部131Bが設けられる。突起部131Cの傾斜面131C1及び傾斜部131Bの当接面131B1による窪みにU字フック130が引っ掛かることで、レバーカバー131からのU字フック121の抜けが抑制される。
【0062】
U字フック121に引っ掛けられたレバーカバー131が後倒しされてロックユニット46(
図2参照)とストライカ18との係合が解除されると、テールゲート40が
図10のように下開き展開する。その後レバーカバー131が倒され、例えば突起部131Cの傾斜面131C1が、水平面に対して垂直の状態から更に後方に傾くと、U字フック121が突起部131Cから抜ける。その後、バックドア20及びテールゲート40は互いに干渉することなく展開する。
【0063】
<バックドアの閉鎖時動作>
開放状態のバックドア20及びテールゲート40を閉止状態にするに際して、まずテールゲート40が例えば手動で閉じられる。上述した
図8のように、テールゲート40の閉止状態において、レバーカバー131の背面131A1は前傾姿勢となる。バックドア20の閉止時に、可撓性のU字フック121がこの背面131A1を乗り越える。その結果U字フック121の折り返し部はレバーカバー131よりも前方に配置される。
【0064】
図12、
図13には、本実施形態に係るレバーカバー131の別例が例示される。レバーカバー131を
図12、
図13のよう立位にした状態において、レバーカバー131は、立設部131Aの上端に第一突起部131Dを備える。第一突起部131Dの上端には接続部131Eが接続される。さらに接続部131Eの上端に第二突起部131Fが接続される。
【0065】
また
図13を参照して、レバーカバー131の裏面(U字フック121との非接触面)には、ロック機構50のU字フック130を保持する保持爪131G,131Gが設けられる。
【0066】
図12を参照して、第一突起部131D及び第二突起部131Fは、接続部131Eと比較して車両前方に突出する。つまり、第一突起部131D、接続部131E、及び第二突起部131Fにより窪みが形成される。バックドア20開放時には、この窪みにU字フック121が引っ掛けられる。
【0067】
また、テールゲート40の閉止状態において、レバーカバー131の背面131A1(
図13参照)は前傾姿勢となる。バックドア20の閉止時に、可撓性のU字フック121がこの背面131A1を乗り越える。その結果U字フック121の折り返し部はレバーカバー131よりも前方に配置される。
【符号の説明】
【0068】
10 車両、12 後部開口、14 車室、18,48 ストライカ、20 バックドア、21A ドアパネルアウタ、21B ドアパネルインナ、21B1 バックドアの下面、21B3 バックドアの内面、22,46 ロックユニット、40 テールゲート、50 ロック機構、70 カバー、70A カバーの上面、120 開錠機構、121 U字フック、122 ブラケット、122A ブラケットの本体部、122B ブラケットの傾斜板、123 プレート、123A プレートの本体部、123B プレートの傾斜板、131 レバーカバー、131A レバーカバーの立設部、131A1 レバーカバーの背面、131B レバーカバーの傾斜部、131B1 傾斜部の当接面、131C レバーカバーの突起部、131C1 突起部の傾斜面。