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特開2024-70032マルチチップモジュール基板及びその製造方法
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  • 特開-マルチチップモジュール基板及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070032
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】マルチチップモジュール基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
H05K3/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180378
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000228833
【氏名又は名称】日本シイエムケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 善晃
【テーマコード(参考)】
5E314
【Fターム(参考)】
5E314BB02
5E314DD01
5E314DD02
5E314GG11
(57)【要約】
【課題】マザーボードへ搭載する際にはんだが再溶融しても、導体層からのソルダーレジストの剥離を防止することができるMCM基板の提供。
【解決手段】電子部品がプリント配線板にはんだ実装され、封止樹脂又はアンダーフィルによって当該電子部品とプリント配線板との間の隙間が封止されたマルチチップモジュール基板であって、当該プリント配線板は、絶縁基材上に、表面及び両側面に粗化処理を施すか又は化学被膜を被覆した導体層と、当該導体層を保護するソルダーレジストを有することを特徴とするマルチチップモジュール基板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品がプリント配線板にはんだ実装され、封止樹脂又はアンダーフィルによって当該電子部品とプリント配線板との間の隙間が封止されたマルチチップモジュール基板であって、当該プリント配線板は、絶縁基材上に、表面及び両側面に粗化処理を施すか又は化学被膜を被覆した導体層と、当該導体層を保護するソルダーレジストを有することを特徴とするマルチチップモジュール基板。
【請求項2】
前記粗化処理は、有機酸系マイクロエッチング剤による処理であることを特徴とする請求項1に記載のマルチチップモジュール基板。
【請求項3】
前記化学被膜は、シランカップリング処理による被膜であることを特徴とする請求項1に記載のマルチチップモジュール基板。
【請求項4】
電子部品がプリント配線板にはんだ実装され、封止樹脂又はアンダーフィルによって当該電子部品とプリント配線板との間の隙間が封止されたマルチチップモジュール基板の製造方法であって、絶縁基材上に形成した導体層の表面及び両側面に、粗化処理を施すか又は化学被膜を形成する工程と、当該導体層を保護するソルダーレジストを形成し、プリント配線板を得る工程と、当該プリント配線板にはんだボールを介して電子部品を実装する工程と、当該電子部品とプリント配線板のソルダーレジストとの間隙に封止樹脂又はアンダーフィルを塗布後、硬化する工程とを有することを特徴とするマルチチップモジュール基板の製造方法。
【請求項5】
前記粗化処理を、有機酸系マイクロエッチング剤を用いて行うことを特徴とする請求項4記載のマルチチップモジュール基板の製造方法。
【請求項6】
前記化学被膜の形成を、シランカップリング処理により行うことを特徴とする請求項4記載のマルチチップモジュール基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、半導体部品やチップ部品等がプリント配線板にはんだ実装されたマルチチップモジュール基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチチップモジュール基板(以後「MCM基板」とも表記する)は、半導体部品やチップ部品等からなる電子部品がプリント配線板にはんだ実装されたものであり、車載機器等の各種電子機器に広く使用されている。図5及び図6に示したように、MCM基板では、接続信頼性を向上させるために、電子部品の実装後、当該電子部品とプリント配線板との間の隙間が封止樹脂又はアンダーフィルによって封止される。
しかしながら、MCM基板をマザーボードに搭載する際、はんだが再溶融してIC接続信頼性に問題が発生する(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、はんだの再溶融・体積膨張に伴うはんだフラッシュ11により、図6に示したように、プリント配線板のソルダーレジスト10にクラック12が入り、ソルダーレジストが導体層から剥離する、導体層へ再溶融したはんだ13が付着する、といった問題が発生していた。
さらに詳しくは、プリント配線板における絶縁基材と導体層との段差部分を起点としてソルダーレジストにクラックが入り、ソルダーレジストが導体層から剥離していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-277661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き従来の問題に鑑みなされたものであり、マザーボードへ搭載する際にはんだが再溶融しても、導体層からのソルダーレジストの剥離を防止することができるMCM基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、一般的に、ソルダーレジストは、封止樹脂又はアンダーフィルとの密着性よりも導体層との密着性が劣るため、はんだの再溶融時、ソルダーレジストにクラックが入りやすくなっていたところ、表面及び両側面に所定の前処理を施した導体層にソルダーレジストを形成すれば、ソルダーレジストと導体層との密着性が向上し、極めて良い結果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、電子部品がプリント配線板にはんだ実装され、封止樹脂又はアンダーフィルによって当該電子部品とプリント配線板との間の隙間が封止されたマルチチップモジュール基板であって、当該プリント配線板は、絶縁基材上に、表面及び両側面に粗化処理を施すか又は化学被膜を被覆した導体層と、当該導体層を保護するソルダーレジストを有することを特徴とするマルチチップモジュール基板により上記課題を解決したものである。
また、本発明は、電子部品がプリント配線板にはんだ実装され、封止樹脂又はアンダーフィルによって当該電子部品とプリント配線板との間の隙間が封止されたマルチチップモジュール基板の製造方法であって、絶縁基材上に形成した導体層の表面及び両側面に、粗化処理を施すか又は化学被膜を形成する工程と、当該導体層を保護するソルダーレジストを形成し、プリント配線板を得る工程と、当該プリント配線板にはんだボールを介して電子部品を実装する工程と、当該電子部品とプリント配線板のソルダーレジストとの間隙に封止樹脂又はアンダーフィルを塗布後、硬化する工程とを有することを特徴とするマルチチップモジュール基板の製造方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のMCM基板によれば、ソルダーレジストを被覆する前に、導体層の表面及び両側面に粗化処理を施すか又は化学被膜を被覆しているので、ソルダーレジストと導体層との密着性が向上する。その結果、MCM基板をマザーボードに搭載する際、はんだが再溶融しても、ソルダーレジストのクラック及び導体層からのソルダーレジストの剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】マザーボードへ搭載した本発明MCM基板の実施の形態を示す概略断面説明図。
図2図1の丸で囲んだMCM基板の拡大断面図。
図3】(a)~(c)は、本発明MCM基板の製造例を示す概略断面工程図。
図4】(d)は、図2に続く概略断面工程図で、(e)は、MCM基板をマザーボードへ搭載した状態を示す概略断面説明図。
図5】従来のマザーボードへ搭載したMCM基板の概略断面説明図。
図6図5の丸で囲んだMCM基板の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、マザーボードへ搭載した本発明MCM基板の実施の形態を、図1及び図2を用いて説明する。
図1において、200はMCM基板で、その電子部品5搭載面とは反対側の面において、はんだ2を介してマザーボード100へ搭載されている。
MCM基板200は、両面プリント配線板pwと、当該両面プリント配線板pwの一方の面Aにはんだを介して実装された電子部品1と、他方の面Bにはんだ3を介して実装された電子部品5とから構成され、当該電子部品5とプリント配線板pwとの間の隙間は、封止樹脂又はアンダーフィル4により封止されている。
図2に示したように、当該両面プリント配線板pwは、絶縁基材7の上下に、表面及び両側面に粗化処理を施すか又は化学被膜を被覆(図2中の「9」)した導体層8と、当該導体層8を保護するソルダーレジスト10を有している。
【0011】
粗化処理は、導体層の表面及び両側面に粗化による微細な凹凸を設ける処理であり、好適には有機酸系マイクロエッチング剤を用いて行うことができる。有機酸系マイクロエッチング剤としては、例えば、CZ-8101、CZ-8100(メック社製)等を挙げることができる。粗化処理を施した導体層はソルダーレジストとの密着性が向上するため、MCM基板をマザーボードに搭載する際、はんだが再溶融しても、ソルダーレジストのクラック及び導体層からのソルダーレジストの剥離を防止することができる。特に、従来は、絶縁基材7と導体層8との段差部分を起点としてソルダーレジスト10にクラックが入り、導体層8から剥離する現象が生じていたため、粗化処理を導体層8の表面及び両側面に対して行えば、導体層に均等に微細な凹凸ができ、導体層8とソルダーレジスト10との密着性を向上させることができる。
【0012】
化学被膜としては、シランカップリング剤が用いられる。化学被膜を被覆した導体層はソルダーレジストと化学結合にて密着するため、MCM基板をマザーボードに搭載する際、はんだが再溶融しても、ソルダーレジストのクラック及び導体層からのソルダーレジストの剥離を防止することができる。また、化学被膜を被覆した導体層の表面は平滑な表面になるため、信号の伝送遅延を防止することが可能となる。そのため、高速伝送や高周波、5G、ミリ波等の基板では有効であり、より好ましい。
従来は、特に絶縁基材7と導体層8との段差部分を起点としてソルダーレジスト10にクラックが入り、導体層8から剥離する現象が生じていたため、導体層8の表面及び両側面に均等に化学被膜を形成すれば、導体層8とソルダーレジスト10との密着性を向上させることができる。
【0013】
尚、この実施の形態では、プリント配線板pwとして両面基板を使用して説明したが、プリント配線板は、両面基板以外にも、片面基板、4層基板、6層基板、8層基板、10層基板、12層基板、又はそれ以上の層数基板が使用できることは言うまでもない。
【0014】
続いて、本発明MCM基板200の製造方法と、MCM基板200をマザーボード100へ搭載する方法を図3及び図4を用いて説明する。
【0015】
まず、絶縁基材7の上下に導体層8を写真法等にて形成し、当該導体層8の表面及び両側面に対して粗化処理を施すか、又は表面及び両側面に化学被膜を形成する(図3(a)中の「9」)。
粗化処理は、好適には有機酸系マイクロエッチング剤を用いて行う。また、化学被膜の形成は、シランカップリング処理により行う。粗化処理及び化学被膜の形成は、常法により行うことができる。
【0016】
次に、図3(b)に示したように、表面及び両側面に粗化処理を施すか又は化学被膜を被覆した導体層8にソルダーレジスト10を形成し、両面プリント配線板pwを得る。ソルダーレジスト10は、次工程ではんだ実装する部分に開口部を設ける。
【0017】
次に、図3(c)に示したように、両面プリント配線板pwの一方の面にはんだボールを介して電子部品1を実装する。同様に、他方の面にも、はんだボール3を介して電子部品5を実装する。
【0018】
次に、図4(d)に示したように、電子部品5と両面プリント配線板pwのソルダーレジスト10との間の隙間に、封止樹脂又はアンダーフィル4を塗布し、硬化することによって、MCM基板を得る。
【0019】
そして、図4(e)に示したように、電子部品5搭載面と反対側の面にはんだボール2を介してMCM基板をマザーボード100へ搭載する。
【符号の説明】
【0020】
1:電子部品
2、3:はんだ(はんだボール)
4:封止樹脂又はアンダーフィル
5:電子部品
6:点線部分(MCM基板の拡大断面図)
7:絶縁基材
8:導体層
9:粗化処理又は化学被膜の被覆
10:ソルダーレジスト
11:はんだフラッシュ
12:クラック
13:再溶融はんだ
100:マザーボード
200:MCM基板
300:従来のMCM基板
pw:プリント配線板
A:MCM基板第1面
B:MCM基板第2面
図1
図2
図3
図4
図5
図6