(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070035
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】半導体発光素子、半導体発光素子の製造方法、発光モジュール及び発光モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/22 20100101AFI20240515BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20240515BHJP
【FI】
H01L33/22
H01L33/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180384
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 振一郎
【テーマコード(参考)】
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F142AA05
5F142BA34
5F142CA11
5F142CB03
5F142CD02
5F142CD18
5F142CG03
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG06
5F142CG07
5F142CG14
5F142CG26
5F142GA31
5F142HA03
5F241AA03
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA74
5F241CA75
5F241CB11
5F241CB14
5F241CB25
(57)【要約】
【課題】深紫外光の取り出し効率を改善することが可能な半導体発光素子を提供する。
【解決手段】半導体発光素子(100,200,300)は、基板(10)と、半導体層(20)とを備える。基板の構成材料は、単結晶の窒化アルミニウムである。基板は、第1主面(10a)と、第1主面の反対面である第2主面(10b)とを有する。半導体層は、第1主面上に配置されているn型半導体層(21)と、n型半導体層上に配置されており、かつ深紫外光を発生させる活性層(22)と、活性層上に配置されているp型半導体層(23)とを有する。半導体層は、いずれかの断面視において、複数のメサ構造(24)を有する。第2主面には複数の突出部(10c)が形成されている。突出部は、メサ構造に対向している。突出部は頂面(10d)を有する。tan
-1{(W2-W1)/2L}で定義される角度(θ1)は-25°以上65°以下である。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
半導体層とを備え、
前記基板の構成材料は、単結晶の窒化アルミニウムであり、
前記基板は、第1主面と、前記第1主面の反対面である第2主面とを有し、
前記半導体層は、前記第1主面上に配置されているn型半導体層と、前記n型半導体層上に配置されており、かつ深紫外光を発生させる活性層と、前記活性層上に配置されているp型半導体層とを有し、
前記半導体層は、いずれかの断面視において複数のメサ構造を有し、
前記第2主面には、複数の突出部が形成されており、
前記突出部は、前記メサ構造に対向しており、
前記突出部は、頂面を有し、
前記メサ構造の幅をW1とし、前記頂面の幅を幅W2とし、前記活性層と前記頂面との間の距離をLとすると、tan-1{(W2-W1)/2L}により定義される角度は、-25°以上65°以下である、半導体発光素子。
【請求項2】
隣り合う2つの前記突出部の間における前記基板の厚さは、90μm以下である、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記メサ構造は、平面視において第1方向に沿って延在しており、
前記突出部は、平面視において前記メサ構造と対向しながら前記第1方向に沿って延在しており、
前記突出部は、前記頂面に連なっており、かつ前記第1方向に直交する第2方向において互いに対向している第1側面及び第2側面とをさらに有し、
前記第1側面と前記第2側面との間の距離は、前記頂面から離れるにつれて大きくなっている、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
隣り合う2つの前記突出部のうちの一方の前記第1側面の下端は、隣り合う2つの前記突出部のうちの他方の前記第2側面の下端に連なっている、請求項3に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1側面と前記頂面に平行な面とがなす角度及び前記第2側面と前記頂面に平行な面とがなす角度は、56°±20°である、請求項3に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記突出部の高さを前記メサ構造の前記第2方向における幅で除した値は、0.5以上3以下である、請求項3に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記頂面上に配置されている反射防止膜をさらに備える、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記突出部は、前記頂面に連なっている側面をさらに有し、
前記メサ構造及び前記頂面は、平面視において円形であり、
前記側面は、円錐面を構成しており、
前記側面の直径は、前記頂面から離れるにつれて大きくなっている、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
隣り合う2つの前記突出部のうちの一方の前記側面の下端は、隣り合う2つの前記突出部のうちの他方の前記側面の下端に連なっている、請求項8に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記側面と前記頂面に平行な面とがなす角度は、56°±20°である、請求項8に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記メサ構造の平面視における中心を通り、かつ前記第1主面に直交する断面視において、前記突出部の高さを前記メサ構造の幅で除した値は、0.5以上5以下である、請求項8に記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記突出部は、前記頂面に連なっている側面をさらに有し、
前記側面は、断面視において曲線状であり、
断面視において互いに対向している前記側面の部分の間の距離は、前記頂面から離れるにつれて大きくなっている、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項13】
隣り合う2つの前記突出部の間における前記基板の厚さは、90μm以下である、請求項12に記載の半導体発光素子。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の前記半導体発光素子と、
透明部材と、
液体とを備え、
前記半導体発光素子は、前記透明部材の内部に配置されており、
前記液体は、前記半導体発光素子を封止するように前記透明部材の内部に充填されており、
前記透明部材及び前記液体は、前記深紫外光に対して透明である、発光モジュール。
【請求項15】
第1主面及び前記第1主面の反対面である第2主面を有する基板を準備する工程と、
前記第1主面上に半導体層を形成する工程と、
前記第2主面に複数の突出部を形成する工程とを備え、
前記基板の構成材料は、単結晶の窒化アルミニウムであり、
前記第2主面は、窒化アルミニウムの窒素極性面であり、
前記半導体層は、前記第1主面上に配置されているn型半導体層と、前記n型半導体層上に配置されており、かつ深紫外光を発生させる活性層と、前記活性層上に配置されているp型半導体層とを有し、
前記半導体層は、いずれかの断面視において複数のメサ構造を有し、
前記第2主面に前記突出部を形成する工程は、前記メサ構造に対向する前記第2主面の部分上にマスクを形成する工程と、前記マスクから露出している前記基板をウェットエッチングする工程とを有する、半導体発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記メサ構造は、平面視において直線状に延在しており、
前記マスクは、平面視において、前記メサ構造と対向しながら直線状に延在しているパターンを有する、請求項15に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記メサ構造及び前記マスクは、平面視において円形である、請求項15に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項18】
前記ウェットエッチングは、前記ウェットエッチングにより前記第2主面に形成される凹部の側壁面が前記マスクの下にある前記第2主面の部分に平行な面と56°±6°の角度をなすように進行する、請求項15に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項19】
前記ウェットエッチングは、前記ウェットエッチングにより前記第2主面に形成される凹部の第1側壁面の下端が前記第1側壁面と間隔を空けて対向する前記凹部の第2側壁面の下端と接触することにより停止する、請求項15に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項20】
前記ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、熱アルカリ溶液である、請求項15に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項21】
前記マスクは、前記ウェットエッチング後に反射防止膜として残存する、請求項15に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項22】
前記突出部をドライエッチングする工程をさらに備え、
前記ドライエッチングは、前記突出部の形状が凸レンズ形状となるように行われる、請求項15から請求項20のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項23】
半導体発光素子を準備する工程と、
前記半導体発光素子をサブマウント上に搭載する工程とを備え、
前記半導体発光素子を準備する工程は、第1主面及び前記第1主面の反対面である第2主面を有する基板を準備する工程と、前記第1主面上に半導体層を形成する工程と、前記第2主面に複数の突出部を形成する工程とを有し、
前記基板の構成材料は、単結晶の窒化アルミニウムであり、
前記第2主面は、窒化アルミニウムの窒素極性面であり、
前記半導体層は、前記第1主面上に配置されているn型半導体層と、前記n型半導体層上に配置されており、かつ深紫外光を発生させる活性層と、前記活性層上に配置されているp型半導体層とを有し、
前記半導体層は、複数のメサ構造を有し、
前記第2主面に前記突出部を形成する工程は、前記メサ構造に対向する前記第2主面の部分上にマスクを形成する工程と、前記マスクから露出している前記基板をウェットエッチングする工程とを有し、
前記ウェットエッチングは、前記半導体発光素子を前記サブマウント上に搭載する工程の後に行われる、発光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体発光素子、半導体発光素子の製造方法、発光モジュール及び発光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1(M.Khizar他4名、Nitride deep-ultraviolet light-emitting diodes with microlens array、Applied Physics Letters、86、173504、2005年4月18日)には、半導体発光素子が記載されている。非特許文献1に記載の半導体発光素子は、基板と、半導体層とを有している。基板は、第1主面と、第1主面の反対面である第2主面とを有している。基板の構成材料は、サファイアである。半導体層は、第1主面上に配置されており、深紫外光を発生させる活性層を含んでいる。半導体層は、メサ構造を有している。第2主面には、複数のマイクロレンズが形成されている。
【0003】
特許文献1(特開2017-17110号公報)には、半導体発光素子が記載されている。特許文献1に記載の半導体発光素子は、基板と、半導体層とを有している。基板は、第1主面と、第1主面の反対面である第2主面と、第1主面及び第2主面に対して傾斜している外周側面とを有している。基板の構成材料は、窒化アルミニウムである。半導体層は、第1主面上に配置されており、深紫外光を発生させる活性層を含んでいる。半導体層は、メサ構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M.Khizar他4名、Nitride deep-ultraviolet light-emitting diodes with microlens array、Applied Physics Letters、86、173504、2005年4月18日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載の半導体発光素子及び特許文献1に記載の半導体発光素子は、深紫外光の取り出し効率に改善の余地がある。
【0007】
より具体的には、非特許文献1に記載の半導体発光素子では、1つのメサ構造に対して1つのマイクロレンズが対応しているわけではない。また、非特許文献1に記載の半導体発光素子では、第2主面に対してドライエッチングすることにより複数のマイクロレンズが形成される。しかしながら、ドライエッチングで基板を深くエッチングすることは困難であり、隣り合う2つのマイクロレンズの間における基板の厚さが大きくなってしまう。その結果、非特許文献1に記載の半導体発光素子では、活性層で発生した深紫外光が第2主面から取り出されるまでに基板中において通過する距離が長くなってしまい、基板の構成材料に深紫外光に対する吸収係数の大きい窒化アルミニウムを用いると、深紫外光の取り出し効率が低下する。
【0008】
特許文献1に記載の半導体発光素子でも、活性層で発生した深紫外光が外周側面から取り出されるまでに基板中において通過する距離が長いため、同様に深紫外光の取り出し効率が低下する。
【0009】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、深紫外光の取り出し効率を改善することが可能な半導体発光素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の半導体発光素子は、基板と、半導体層とを備える。基板の構成材料は、単結晶の窒化アルミニウムである。基板は、第1主面と、第1主面の反対面である第2主面とを有する。半導体層は、第1主面上に配置されているn型半導体層と、n型半導体層上に配置されており、かつ深紫外光を発生させる活性層と、活性層上に配置されているp型半導体層とを有する。半導体層は、いずれかの断面視において複数のメサ構造を有する。第2主面には、複数の突出部が形成されている。突出部は、メサ構造に対向している。突出部は、頂面を有する。メサ構造の幅をW1とし、頂面の幅を幅W2とし、活性層と頂面との間の距離をLとすると、tan-1{(W2-W1)/2L}により定義される角度は、-25°以上65°以下である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の半導体発光素子によると、深紫外光の取り出し効率を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1とは反対側から見た半導体発光素子100の平面図である。
【
図3A】
図1中のIII-IIIにおける断面図である。
【
図3B】半導体発光素子100における断面SEM写真の一例である。
【
図4】変形例に係る半導体発光素子100の断面図である。
【
図7】半導体層形成工程S2を説明する断面図である。
【
図8】メサ構造形成工程S3を説明する断面図である。
【
図9】第1電極形成工程S4を説明する断面図である。
【
図10】第2電極形成工程S5を説明する断面図である。
【
図11】基板裏面加工工程S6を説明する断面図である。
【
図12】マスク形成工程S7を説明する断面図である。
【
図13A】半導体発光素子100及び半導体発光素子100Aにおける電流と光出力との関係を示すグラフである。
【
図13B】半導体発光素子100及び半導体発光素子100Aにおける電流と外部量子効率との関係を示すグラフである。
【
図14A】半導体発光素子100における角度θ1と光取り出し効率との関係を示す第1グラフである。
【
図14B】半導体発光素子100における角度θ1と光取り出し効率との関係を示す第2グラフである。
【
図15】半導体発光素子100における角度θ2と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
【
図17】
図16とは反対側から見た半導体発光素子200の平面図である。
【
図18B】半導体発光素子200における鳥瞰SEM写真の一例である。
【
図19A】半導体発光素子200及び半導体発光素子200Aにおける電流と光出力との関係を示すグラフである。
【
図19B】半導体発光素子200及び半導体発光素子200Aにおける電流と外部量子効率との関係を示すグラフである。
【
図20】半導体発光素子200における角度θ1と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
【
図21】半導体発光素子200における角度θ2と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
【
図22】半導体発光素子200における角度θ1と深紫外光の出射角の半値幅との関係を示すグラフである。
【
図23A】角度θ1が-5°である場合の半導体発光素子200における深紫外光の出射角度及び強度を示すグラフである。
【
図23B】角度θ1が26°である場合の半導体発光素子200における深紫外光の出射角度及び強度を示すグラフである。
【
図23C】角度θ1が35°である場合の半導体発光素子200における深紫外光の出射角度及び強度を示すグラフである。
【
図23D】角度θ1が50°である場合の半導体発光素子200における深紫外光の出射角度及び強度を示すグラフである。
【
図24】幅W1を変化させた場合の半導体発光素子200における角度θ1と深紫外光の出射角の半値幅との関係を示すグラフである。
【
図26】
図25とは反対側から見た半導体発光素子300の平面図である。
【
図27】
図25中のXXVII-XXVIIにおける断面図である。
【
図28】半導体発光素子300における角度θ1と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
【
図29】半導体発光素子300における角度θ2と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
【
図30】半導体発光素子300における厚さTと光取り出し効率との関係を示すグラフである。
【
図32】半導体発光素子400の製造工程図である。
【
図34】発光モジュール500の製造工程図である。
【
図35】変形例に係る発光モジュール500の製造工程図である。
【
図36】発光モジュール500における電流と深紫外光の出力との関係を示すグラフである。
【
図37】発光モジュール500における電流と深紫外光の取り出し効率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る半導体発光素子を説明する。第1実施形態に係る半導体発光素子を半導体発光素子100とする。
【0015】
<半導体発光素子100の構成>
以下に、半導体発光素子100の構成を説明する。
【0016】
図1は、半導体発光素子100の平面図である。
図2は、
図1とは反対側から見た半導体発光素子100の平面図である。
図3Aは、
図1中のIII-IIIにおける断面図である。
図3Bは、半導体発光素子100における断面SEM写真の一例である。
図1から
図3Bに示されているように、半導体発光素子100は、基板10と、半導体層20と、n電極31と、p電極32と、パッド電極33と、パッド電極34とを有している。
【0017】
基板10は、第1主面10aと、第2主面10bとを有している。第1主面10a及び第2主面10bは、基板10の厚さ方向における端面である。第2主面10bは、第1主面10aの反対面である。基板10の構成材料は、窒化アルミニウム(AlN)の単結晶である。基板10の構成材料は、好ましくは、昇華法(PVT:Physical Vapor Transport)により製造された窒化アルミニウムの単結晶である。深紫外光に対する基板10の吸収係数は、1cm-1以上50cm-1以下であってもよい。深紫光とは、波長が100nm以上350nm以下の光であり、より狭義には波長が200nm以上300nm以下の光である。第2主面10bは、窒化アルミニウムの-c面(N(窒素)極性面)になっていることが好ましい。
【0018】
半導体層20は、n型半導体層21と、活性層22と、p型半導体層23とを有している。n型半導体層21は、第1主面10a上に配置されている。活性層22は、n型半導体層21上に配置されている。p型半導体層23は、活性層22上に配置されている電子ブロック層23aと、電子ブロック層23a上に配置されているクラッド層23bと、クラッド層23b上に配置されているコンタクト層23cとを有している。
【0019】
n型半導体層21の構成材料は、例えばAlGaNである。n型半導体層21の構成材料は、AlInGaNであってもよい。n型半導体層21の構成材料には、n型不純物がドープされている。n型不純物は、例えば、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、酸素(O)、炭素(C)等である。
【0020】
活性層22は、例えば、多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有している。より具体的には、活性層22は、交互に積層されている井戸層及び障壁層を有している。井戸層の構成材料は、例えばAlGaN又はAlInGaNである。障壁層の構成材料は、例えばAlGaN又はAlInGaNである。活性層22からは、深紫外光が発生する。
【0021】
電子ブロック層23aの構成材料は、例えばAlGaN又はAlNである。クラッド層23bの構成材料は、例えばAlGaNである。コンタクト層23cの構成材料は、例えばGaNである。p型半導体層23の構成材料には、p型不純物がドープされている。p型不純物は、例えば、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)等である。
【0022】
半導体層20は、断面視において、複数のメサ構造24を有している。半導体発光素子100では、第1方向DR1に直交する断面視において半導体層20が複数のメサ構造24を有しているが、半導体層20は、いずれかの断面視において複数のメサ構造24を有していればよい。メサ構造24の周囲では、n型半導体層21が露出するように活性層22及びp型半導体層23が除去されている。メサ構造24は、平面視において、第1方向DR1に沿って延在している。複数のメサ構造24は、第2方向DR2において間隔を空けて並んでいる。第2方向DR2は、平面視において第1方向DR1に直交している方向である。複数のメサ構造24は、例えば、平面視において櫛歯状になっている。
【0023】
メサ構造24の幅を、幅W1とする。半導体発光素子100では、幅W1が、第2方向DR2において測定される。メサ構造24は、第1端24aと、第2端24bとを有している。半導体発光素子100では、第1端24a及び第2端24bが、第2方向DR2におけるメサ構造24の両端である。
【0024】
第2主面10bには、複数の突出部10cが形成されている。突出部10cは、平面視において、第1方向DR1に沿って延在している。複数の突出部10cは、第2方向DR2に沿って並んでいる。突出部10cは、メサ構造24に対向している。好ましくは、突出部10cの第2方向DR2における中央が、メサ構造24の第2方向DR2における中央と重なっている。
【0025】
突出部10cは、頂面10dと、側面10eとを有している。頂面10dは、第2主面10bにより構成されている。つまり、頂面10dは、窒化アルミニウムの-c面(N極性面)である。側面10eは、上端において、頂面10dに連なっている。半導体発光素子100では、側面10eは、第1側面10ea及び第2側面10ebである。第1側面10ea及び第2側面10ebは、上端において、頂面10dに連なっている。第1側面10ea及び第2側面10ebは、第2方向DR2において対向している。
【0026】
1つの突出部10cの第1側面10eaの下端は、好ましくは、当該1つの突出部10cに隣り合っている他の1つの突出部10cの第2側面10ebの下端に連なっている。このことを別の観点から言えば、第2主面10bには側壁面が第1側面10ea及び第2側面10ebにより構成されている凹部が形成されており、当該凹部は第1方向DR1に直交する断面視においてV字状である。
【0027】
頂面10dは、第3端10daと、第4端10dbとを有している。半導体発光素子100では、第3端10da及び第4端10dbが、第2方向DR2における頂面10dの両端である。半導体発光素子100では、第3端10daが頂面10dと第1側面10eaとの稜線であり、第4端10dbが頂面10dと第2側面10ebとの稜線である。第1端24aは、第4端10dbよりも第3端10daの近くにある。
【0028】
頂面10dは、幅W2を有している。半導体発光素子100では、幅W2が頂面10dの第2方向DR2における幅である。このことを別の観点から言えば、半導体発光素子100では、幅W2が第2方向DR2における第3端10daと第4端10dbとの間の距離である。幅W2は、幅W1よりも大きくてもよく、幅W1よりも小さくてもよく、幅W1に等しくてもよい。
【0029】
突出部10cは、幅W3を有している。半導体発光素子100では、幅W3が第2方向DR2における第1側面10eaの下端と第2側面10ebの下端との間の距離である。突出部10cの第2方向DR2における幅は、頂面10dから離れるにつれて大きくなっている。すなわち、第1方向DR1に直交する断面視において、突出部10cは上底の長さ(幅W2)が下底の長さ(幅W3)よりも小さい台形状である。
【0030】
第1端24a及び第3端10daを通る仮想直線(
図3A中の点線)と第2主面10bの法線方向とがなす角度を、角度θ1とする。角度θ1は、例えば、-25°以上65°以下である。なお、角度θ1の値が負であることは、幅W1が幅W2よりも大きいことを意味する。角度θ1は、-10°以上30°以下であることが好ましく、0°以上20°以下であることがさらに好ましい。なお、角度θ1は、活性層22と頂面10dとの間の距離をLとすると、tan
-1{(W2-W1)/2L}により算出できる。
【0031】
側面10e(第1側面10ea、第2側面10eb)と頂面10dとがなす角度を、角度θ2とする。角度θ2は、例えば、56°±20°である。角度θ2は、好ましくは56°±10°であることが好ましく、56°±6°であることがさらに好ましい。隣り合う2つの突出部10cの間における基板10の厚さを、厚さTとする。厚さTは、90μm以下である。厚さTは、好ましくは、50μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。厚さTは、0であってもよい。
【0032】
突出部10cの高さを、高さHとする。高さHは、側面10e(第1側面10ea、第2側面10eb)の下端と頂面10dとの間の距離である。半導体発光素子100では、高さHを幅W1で除した値が、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがさらに好ましく、0.5以上3以下であることが特に好ましい。
【0033】
n電極31は、平面視においてメサ構造24の間から露出しているn型半導体層21上に配置されている。p電極32は、p型半導体層23(より具体的には、コンタクト層23c)上に配置されている。n電極31の構成材料及びp電極32の構成材料は、例えば金属材料である。n電極31は、例えば、チタン(Ti)の層、アルミニウムの層及び金(Au)の層をn型半導体層21側からこの順に積層することで構成されている。p電極32は、例えば、ニッケル(Ni)の層及び金の層をp型半導体層23側からこの順に積層することで構成されている。
【0034】
パッド電極33は、n電極31上に配置されている。パッド電極33の構成材料は、例えば金属材料である。パッド電極33は、チタンの層、アルミニウムの層及び金の層をn電極31側からのこの順に積層することで構成されている。パッド電極34は、p電極32上に配置されている。パッド電極34の構成材料は、例えば金属材料である。パッド電極34は、チタンの層、アルミニウムの層及び金の層をp電極32側からのこの順に積層することで構成されている。
【0035】
<変形例>
図4は、変形例に係る半導体発光素子100の断面図である。
図4に示されるように、半導体発光素子100は、反射防止膜40をさらに有していてもよい。反射防止膜40の構成材料は、例えば二酸化シリコン(SiO
2)である。反射防止膜40は、頂面10d上に配置されている。
【0036】
<半導体発光素子100の製造方法>
以下に、半導体発光素子100の製造方法を説明する。
【0037】
図5は、半導体発光素子100の製造工程図である。
図5に示されているように、半導体発光素子100の製造方法は、準備工程S1と、半導体層形成工程S2と、メサ構造形成工程S3と、第1電極形成工程S4と、第2電極形成工程S5と、基板裏面加工工程S6と、マスク形成工程S7と、突出部形成工程S8と、個片化工程S9とを有している。
【0038】
半導体発光素子100の製造方法では、まず準備工程S1が行われる。
図6は、準備工程S1を説明する断面図である。
図6に示されるように、準備工程S1では、基板10が準備される。準備工程S1で準備された基板10は、第1主面10a上に半導体層20が形成されておらず、第2主面10bに複数の突出部10cが形成されていない。
【0039】
半導体層形成工程S2は、準備工程S1の後に行われる。
図7は、半導体層形成工程S2を説明する断面図である。
図7に示されるように、半導体層形成工程S2では、半導体層20が形成される。半導体層20を構成している各層は、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法で形成される。なお、半導体層20が形成された後、アニールが行われることにより、p型半導体層23が活性化される。
【0040】
メサ構造形成工程S3は、半導体層形成工程S2の後に行われる。
図8は、メサ構造形成工程S3を説明する断面図である。
図8に示されているように、メサ構造形成工程S3では、半導体層20にメサ構造24が形成される。メサ構造形成工程S3では、第1に、半導体層20上にマスクが形成される。マスクは、例えば、ニッケル等の金属材料で形成される。第2に、上記のマスクを用いて、異方性エッチングが行われる。これにより、メサ構造24が形成される。第3に、上記のマスクが除去される。
【0041】
第1電極形成工程S4は、メサ構造形成工程S3の後に行われる。
図9は、第1電極形成工程S4を説明する断面図である。
図9に示されているように、第1電極形成工程S4では、n電極31及びp電極32が形成される。第1電極形成工程S4では、例えば真空蒸着法により、n電極31及びp電極32が順次形成される。なお、n電極31が形成された後及びp電極32が形成された後には、アニールが行われる。
【0042】
第2電極形成工程S5は、第1電極形成工程S4の後に行われる。
図10は、第2電極形成工程S5を説明する断面図である。
図10に示されるように、第2電極形成工程S5では、パッド電極33及びパッド電極34が形成される。第2電極形成工程S5では、例えば真空蒸着法により、パッド電極33及びパッド電極34が形成される。
【0043】
基板裏面加工工程S6は、第2電極形成工程S5の後に行われる。
図11は、基板裏面加工工程S6を説明する断面図である。
図11に示されるように、基板裏面加工工程S6では、第2主面10bに対する機械加工(研削及び研磨)が行われる。これにより、基板10の厚さが小さくなる。
【0044】
マスク形成工程S7は、基板裏面加工工程S6の後に行われる。
図12は、マスク形成工程S7を説明する断面図である。
図12に示されるように、マスク形成工程S7では、第2主面10b上にマスク50が形成される。マスク50は、複数のパターン51を有している。パターン51は、メサ構造24と対向しながら平面視において第1方向DR1に沿って延在している。複数のパターン51は、第2方向DR2において、間隔を空けて並んでいる。隣り合う2つのパターン51の間が、マスク50の開口部52になっている。マスク50の構成材料は、好ましくは、反射防止膜40の構成材料と同一である。
【0045】
マスク50の形成においては、第1に、マスク50の構成材料が成膜される。マスク50の構成材料の成膜は、例えばPE-CVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)法を用いて行われることが好ましい。PE-CVD法に代えて、蒸着法、スパッタ法、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いてマスク50の構成材料が成膜されてもよい。第2に、成膜されたマスク50の構成材料が、パターンニングされる。パターンニングは、フォトリソグラフィで形成されたレジストパターンを用いて成膜されたマスク50の構成材料をエッチングすることにより行われる。マスク50の構成材料としては、熱アルカリ耐性のレジストが用いられてもよい。この場合、マスク50は、フォトリソグラフィで直接形成されてもよい。パターンニングは、メサ構造24の位置に対して位置合わせを行った上で形成される。位置合わせの方法は、例えば、両面アライメント可能な装置を用いて基板10の第2主面10b側からメサ構造24やアライメントマークを透視する方法が用いられる。また、位置合わせは、基板10のエッジを基準としてもよい。
【0046】
突出部形成工程S8はマスク形成工程S7の後に行われる。突出部形成工程S8では、マスク50を用いて開口部52から露出している基板10をウェットエッチングすることにより、複数の突出部10cが形成される。ウェットエッチングは、熱アルカリ溶液を用いて行われる。熱アルカリ溶液は、例えばTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)である。熱アルカリ溶液は、KOH(水酸化カリウム)水溶液であってもよい。
【0047】
熱アルカリ溶液を用いたウェットエッチングが行われることにより、開口部から露出している第2主面10bに、凹部が形成される。凹部は、第1方向DR1に直交する断面視において、第1側壁面と、第1側壁面と間隔を空けて対向している第2側壁面とを有している。熱アルカリ溶液を用いたウェットエッチングは、第1側壁面及び第2側壁面が第2主面10bに対して一定の角度(例えば、56°±6°)をなすように進行する(
図3Bを参照)。熱アルカリ溶液を用いたウェットエッチングが進行していくと、第1側壁面の下端と第2側壁面の下端とが接触し、ウェットエッチングの進行が停止される。
【0048】
なお、ウェットエッチング後には、第1側壁面が1つの突出部10cの第1側面10eaとなり、第2側壁面が当該1つの突出部10cに隣り合う他の1つの突出部10cの第2側面10ebとなり、パターン51の下にある第2主面10bが頂面10dとなる。マスク50は、突出部形成工程S8の後に除去されてもよく、突出部形成工程S8の後に残存されてもよい。突出部形成工程S8の後にマスク50が残存される場合、残存したパターン51が反射防止膜40となる。
【0049】
個片化工程S9は、突出部形成工程S8の後に行われる。個片化工程S9では、ダイシング加工が行われることにより、複数の半導体発光素子100へと個片化される。以上により、
図1から
図3Aに示される構造の半導体発光素子100が製造される。
【0050】
<半導体発光素子100の効果>
以下に、半導体発光素子100の効果を説明する。
【0051】
半導体発光素子100では、半導体層20が複数のメサ構造24を有しているとともに第2主面10bに複数の突出部10cが形成されている。また、半導体発光素子100では、1つのメサ構造24が1つの突出部10cと対向している。そのため、ライトエスケープコーン内にある深紫外光は頂面10dから取り出され、ライトエスケープコーン外にある深紫外光も側面10e(第1側面10ea、第2側面10eb)から取り出される。
【0052】
また、半導体発光素子100では、厚さTが90μm以下となるように基板10を深くエッチングすることにより突出部10cが形成されている。通常、ドライエッチングでは基板10を深くエッチングすることが困難であるし、ウェットエッチングでは正確なエッチングが困難である。しかしながら、半導体発光素子100では、第2主面10bを窒化アルミニウムの-c面(N極性面)とするとともに、ウェットエッチングに熱アルカリ溶液を用いることで、ウェットエッチングが凹部の間隔を空けて互いに対向する第1側壁面及び第2側壁面が第2主面10bに対して一定の角度をなすように進行する。
【0053】
このウェットエッチングは、第1側壁面の下端及び第2側壁面の下端が互いに接触することにより停止されるため、突出部10cを形成する加工精度が高く、突出部10cの寸法の正確性を確保したりメサ構造24との正確な対応関係を確保したりすることが可能である。そして、基板10が深くエッチングされる結果、活性層22で発生した深紫外光が基板10外に取り出されるまでに通過する距離が短くなり、窒化アルミニウムで構成されている基板10中での深紫外光の吸収が少なくなる。このように、半導体発光素子100によると、深紫外光の取り出し効率を改善することが可能である。
【0054】
比較例に係る半導体発光素子を、半導体発光素子100Aとする。半導体発光素子100Aの構成は、第2主面10bに複数の突出部10cが形成されていない(すなわち、第2主面10bが平坦面で構成されている)点を除いて、半導体発光素子100の構成と共通している。
【0055】
図13Aは、半導体発光素子100及び半導体発光素子100Aにおける電流と光出力との関係を示すグラフである。
図13Bは、半導体発光素子100及び半導体発光素子100Aにおける電流と外部量子効率との関係を示すグラフである。
図13A及び
図13Bに示されるように、半導体発光素子100は、半導体発光素子100Aと比較して、高い光出力及び外部量子効率(EQE:External Quantum Efficiency)を示す。より具体的には、半導体発光素子100は、100mAの電流が流れる際に、半導体発光素子100Aと比較して、1.55倍の光出力及び外部量子効率を示す。この比較から、半導体発光素子100によると深紫外光の取り出し効率が改善されることが、裏付けられる。
【0056】
なお、
図13A及び
図13Bでは、チップサイズが1mm×1mmとされ、平面視におけるメサ構造24の面積が0.30mm
2とされている。また、
図13A及び
図13Bでは、半導体発光素子100において、幅W1及び幅W2が90μmとされ、幅W3が180μmとされ、角度θ2が56°とされ、厚さTが34μmとされ、高さHが67μmとされている。また、
図13A及び
図13Bには、電流と光出力又は外部量子効率との関係の実験値が示されている。
【0057】
図14Aは、半導体発光素子100における角度θ1と光取り出し効率との関係を示す第1グラフである。
図14Bは、半導体発光素子100における角度θ1と光取り出し効率との関係を示す第2グラフである。
図14A及び
図14Bに示されているように、半導体発光素子100では、角度θ1が-25°以上65°以下の範囲で深紫外光の取り出し効率(LEE:Light Extraction Efficiency)が特に改善されており、角度θ1が-10°以上30°以下で深紫外光の取り出し効率がさらに改善されている。このように、角度θ1は、-25°以上65°以下であることが好ましく、-10°以上30°以下であることがさらに好ましい。なお、
図14A及び
図14Bには、光線追跡法を用いて計算された角度θ1と光取り出し効率との関係が示されている。
【0058】
図15は、半導体発光素子100における角度θ2と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
図15に示されるように、半導体発光素子100では、角度θ2が約56°である際に深紫外光の取り出し効率が最大になっている。また、半導体発光素子100では、角度θ2が56°±20°である際に深紫外光の取り出し効率が特に改善され、角度θ2が56°±10°である際に深紫外光の取り出し効率がさらに改善されている。このことから、角度θ2は、56°±20°であることが好ましく、56°±10°であることがさらに好ましい。
図15には、光線追跡法を用いて計算された角度θ2と光取り出し効率との関係が示されている。
【0059】
なお、
図14A、
図14B及び
図15では、高さHを幅W1で除した値が変化され、角度θ2が56°とされ、幅W2が90μmとされ、厚さTが10μmとされ、深紫外光に対する基板10の吸収係数が10cm
-1とされている。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半導体発光素子を説明する。
【0061】
第2実施形態に係る半導体発光素子を半導体発光素子200とする。ここでは、半導体発光素子100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0062】
<半導体発光素子200の構成>
以下に、半導体発光素子200の構成を説明する。
【0063】
図16は、半導体発光素子200の平面図である。
図17は、
図16とは反対側から見た半導体発光素子200の平面図である。
図17中では、パッド電極34の図示が省略されている。
図18Aは、
図16中のXVIII-XVIIIにおける断面図である。
図18Bは、半導体発光素子200における鳥瞰SEM写真の一例である。
図16から
図18Bに示されるように、半導体発光素子200は、基板10と、半導体層20と、n電極31と、p電極32と、パッド電極33とを有している。この点に関して、半導体発光素子200の構成は、半導体発光素子100の構成と共通している。
【0064】
半導体発光素子200では、メサ構造24が、平面視において円形である。半導体発光素子200では、第1端24a及び第2端24bが、平面視におけるメサ構造24の中心を通り、かつ第2主面10bに直交する断面視におけるメサ構造24の両端である。半導体発光素子200では、幅W1が、メサ構造24の平面視における直径である。半導体発光素子200では、複数のメサ構造24が、平面視において正三角格子状に並んでいる。
【0065】
半導体発光素子200では、突出部10cが円錐台状である。すなわち、半導体発光素子200では、平面視において頂面10dが円形であり、側面10eが円錐面で構成されており、側面10eの直径が頂面10dから離れるにつれて大きくなっている。半導体発光素子200では、第3端10da及び第4端10dbが、平面視における頂面10dの中心を通り、かつ第2主面10bに直交する断面視における頂面10dの両端である。半導体発光素子200では、幅W2が頂面10dの直径であり、幅W3が下端における側面10eの直径である。半導体発光素子200では、複数の突出部10cが、側面10eの下端が互いに接触するように正三角格子状に並んでいる(
図18Bを参照)。半導体発光素子200では、好ましくは、平面視において、頂面10dの中心がメサ構造24の中心と重なっている。
【0066】
半導体発光素子200では、角度θ1は、平面視における頂面10dの中心を通り、かつ第2主面10bに直交する断面視における第1端24a及び第3端10daを通る仮想直線(
図18中の点線参照)と頂面10dとがなす角度である。半導体発光素子200では、高さHを幅W1で除した値が、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがさらに好ましく、0.5以上5以下であることが特に好ましい。
【0067】
半導体発光素子200では、角度θ1が、半導体発光素子100と同様に、例えば-20°以上65°以下であり、好ましくは-10°以上30°以下であり、さらに好ましくは0°以上20°以下である。これに加えて、半導体発光素子200では、出射される深紫外光の強度を維持しつつ深紫外光の指向性を高める観点から、角度θ2が、-5°以上32°以下であることが好ましく、10°以上20°以下であることがさらに好ましい。これらの点に関して、半導体発光素子200の構成は半導体発光素子100の構成と異なっている。
【0068】
<半導体発光素子200の製造方法>
以下に、半導体発光素子200の製造方法を説明する。
【0069】
半導体発光素子200の製造方法は、半導体発光素子100の製造方法は、準備工程S1と、半導体層形成工程S2と、メサ構造形成工程S3と、第1電極形成工程S4と、第2電極形成工程S5と、基板裏面加工工程S6と、マスク形成工程S7と、突出部形成工程S8と、個片化工程S9とを有している。この点に関して、半導体発光素子200の製造方法は、半導体発光素子100の製造方法と共通している。
【0070】
半導体発光素子200の製造方法では、マスク形成工程S7において、パターン51が平面視において円形に形成され、複数のパターン51が平面視において正三角格子状に配置される。この点に関して、半導体発光素子200の製造方法は、半導体発光素子100の製造方法と異なっている。
【0071】
<半導体発光素子200の効果>
以下に、半導体発光素子200の効果を説明する。
【0072】
比較例に係る半導体発光素子を、半導体発光素子200Aとする。半導体発光素子200Aの構成は、第2主面10bに複数の突出部10cが形成されていない点を除いて、半導体発光素子200の構成と共通している。
図19Aは、半導体発光素子200及び半導体発光素子200Aにおける電流と光出力との関係を示すグラフである。
図19Bは、半導体発光素子200及び半導体発光素子200Aにおける電流と外部量子効率との関係を示すグラフである。
図19A及び
図19Bに示されるように、半導体発光素子200は、半導体発光素子200Aと比較して、高い光出力及び外部量子効率を示す。より具体的には、半導体発光素子200は、200mAの電流が流れる際に、半導体発光素子200Aと比較して、1.89倍の光出力及び外部量子効率を示す。この比較から、半導体発光素子200によると深紫外光の取り出し効率がさらに改善されることが、裏付けられる。
【0073】
なお、
図19A及び
図19Bでは、チップサイズが2mm×2mmとされ、平面視におけるメサ構造24の面積が0.778mm
2とされている。また、
図19A及び
図19Bでは、半導体発光素子200において、幅W1及び幅W2が100μmとされ、幅W3が175μmとされ、角度θ2が56°±6°とされ、厚さTが38μmとされ、高さHが56μmとされている。また、
図19A及び
図19Bには、電流と光出力又は外部量子効率との関係の実験値が示されている。
【0074】
図20は、半導体発光素子200における角度θ1と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
図20に示されるように、半導体発光素子200では、角度θ1が-10°以上30°以下の範囲で深紫外光の取り出し効率が特に改善されており、角度θ1が0°以上20°以下で深紫外光の取り出し効率がさらに改善されている。このことから、半導体発光素子200でも、角度θ1は、-10°以上30°以下の範囲内にあることが好ましく、0°以上20°以下の範囲内にあることがさらに好ましい。
図20には、光線追跡法を用いて計算された角度θ1と光取り出し効率との関係が示されている。
【0075】
図21は、半導体発光素子200における角度θ2と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
図21に示されるように、半導体発光素子200では、角度θ2が約56°である際に深紫外光の取り出し効率が最大になっている。また、半導体発光素子200では、角度θ2が56°±10°である際に深紫外光の取り出し効率が特に改善され、角度θ2が56°±6°である際に深紫外光の取り出し効率がさらに改善されている。このことから、半導体発光素子200でも、角度θ2は、56°±10°の範囲内にあることが好ましく、56°±6°の範囲内にあることがさらに好ましい。なお、
図20及び
図21では、高さHを幅W2で除した値が変化され、角度θ2が56°とされ、幅W2が90μmとされ、深紫外光に対する基板10の吸収係数が10cm
-1とされ、厚さTが10μmとされている。
図21には、光線追跡法を用いて計算された角度θ2と光取り出し効率との関係が示されている。
【0076】
図22は、半導体発光素子200における角度θ1と深紫外光の出射角の半値幅との関係を示すグラフである。
図23Aは、角度θ1が-5°である場合の半導体発光素子200における深紫外光の出射角度及び強度を示すグラフである。
図23Bは、角度θ1が26°である場合の半導体発光素子200における深紫外光の出射角度及び強度を示すグラフである。
図23Cは、角度θ1が35°である場合の半導体発光素子200における深紫外光の出射角度及び強度を示すグラフである。
図23Dは、角度θ1が50°である場合の半導体発光素子200における深紫外光の出射角度及び強度を示すグラフである。
図22から
図23Dでは、出射角の半値幅及び強度が光線追跡法を用いて計算されている。
図22から
図23Dに示されるように、半導体発光素子200では、角度θ2が32°に近づくように大きくなるにつれて、出射される深紫外光の半値幅(FWMH:Full Width Half Maximum)が小さくなる。また、出射される深紫外光の半値幅は、角度θ2が32°となる近傍において局所的に大きくなる。さらに、出射される深紫外光の半値幅は、角度θ2が40°以上になると再び小さくなる。
【0077】
しかしながら、角度θ2が40°以上の範囲内では、出射される深紫外光の半値幅が小さくなるものの、サイド方向(第2主面10bの法線方向に対する傾斜角が大きくなる方向)に深紫外光の強度のピークが発生する(
図23D参照)。また、角度θ2が40°以上となる範囲では、出射される深紫外光の強度が相対的に弱くなる(
図20参照)。そのため、半導体発光素子200では、角度θ1を-5°以上32°以下とすることにより、出射される深紫外光の強度を維持しつつ、出射される深紫外光の指向性を高めることができる。
【0078】
図24は、幅W1を変化させた場合の半導体発光素子200における角度θ1と深紫外光の出射角の半値幅との関係を示すグラフである。
図24に示されるように、幅W1を変化させた場合も、角度θ1と出射される深紫外光の出射強度の半値幅との関係は、同様の傾向を示す。
図24では、出射角の半値幅が光線追跡法を用いて計算されている。
【0079】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る半導体発光素子を説明する。
【0080】
第3実施形態に係る半導体発光素子を半導体発光素子300とする。ここでは、半導体発光素子100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0081】
<半導体発光素子300の構成>
以下に、半導体発光素子300の構成を説明する。
【0082】
図25は、半導体発光素子300の平面図である。
図26は、
図25とは反対側から見た半導体発光素子300の平面図である。
図26中では、パッド電極34の図示が省略されている。
図27は、
図25中のXXVII-XXVIIにおける断面図である。
図25から
図27に示されるように、半導体発光素子300は、基板10と、半導体層20と、n電極31と、p電極32と、パッド電極33とを有している。この点に関して、半導体発光素子300の構成は、半導体発光素子100の構成と共通している。
【0083】
半導体発光素子300では、メサ構造24が、平面視において多角形状である。より具体的には、半導体発光素子300では、メサ構造24が、平面視において正六角形状である。半導体発光素子300では、第1端24a及び第2端24bが、平面視におけるメサ構造24の互いに対向する一対の角を通り、かつ第2主面10bに直交する断面視におけるメサ構造24の両端である。半導体発光素子300では、幅W1が、平面視におけるメサ構造24の互いに対向する一対の角の間の距離である。半導体発光素子300では、複数のメサ構造24が、平面視において正三角格子状に並んでいる。
【0084】
半導体発光素子300では、突出部10cが多角形錐台状である。より具体的には、半導体発光素子300では、突出部10cが正六角錐台状であり、平面視において頂面10dが正六角形状であり、互いに対向している一対の側面10eの部分の距離が頂面10dから離れるにつれて大きくなっている。
【0085】
半導体発光素子300では、第3端10da及び第4端10dbが、平面視における頂面10dの互いに対向する一対の角を通り、かつ第2主面10bに直交する断面視における頂面10dの両端である。半導体発光素子300では、幅W2が平面視における互いに対向している一対の頂面10dの角の間の距離であり、幅W3が下端における互いに対向している一対の側面10eの部分の間の距離である。半導体発光素子300では、複数の突出部10cが、側面10eの下端が互いに接触するように正三角格子状に並んでいる。半導体発光素子300では、好ましくは、平面視において、頂面10dの中心がメサ構造24の中心と重なっている。
【0086】
半導体発光素子300では、角度θ1は、平面視における頂面10dの中心を通り、かつ第2主面10bに直交する断面視における第1端24a及び第3端10daを通る仮想直線(
図27中の点線参照)と頂面10dとがなす角度である。半導体発光素子300では、高さHを幅W1で除した値が、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがさらに好ましく、0.5以上5以下であることが特に好ましい。これらの点に関して、半導体発光素子300の構成は半導体発光素子100の構成と異なっている。
【0087】
<半導体発光素子300の製造方法>
以下に、半導体発光素子300の製造方法を説明する。
【0088】
半導体発光素子300の製造方法は、半導体発光素子100の製造方法は、準備工程S1と、半導体層形成工程S2と、メサ構造形成工程S3と、第1電極形成工程S4と、第2電極形成工程S5と、基板裏面加工工程S6と、マスク形成工程S7と、突出部形成工程S8と、個片化工程S9とを有している。この点に関して、半導体発光素子300の製造方法は、半導体発光素子100の製造方法と共通している。
【0089】
半導体発光素子300の製造方法では、マスク形成工程S7において、パターン51が平面視において正六角形状に形成され、複数のパターン51が平面視において正三角格子状に配置される。この点に関して、半導体発光素子300の製造方法は、半導体発光素子100の製造方法と異なっている。
【0090】
<半導体発光素子300の効果>
以下に、半導体発光素子300の効果を説明する。
【0091】
半導体発光素子300では、第2主面10bに複数の突出部10cが形成されているとともに半導体層20が複数のメサ構造24を有しており、メサ構造24と突出部10cとが対向している。また、半導体発光素子300では、厚さTが、90μm以下になっている。そのため、半導体発光素子300でも、半導体発光素子100と同様に、深紫外光の取り出し効率を改善することが可能である。
【0092】
図28は、半導体発光素子300における角度θ1と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
図28に示されるように、半導体発光素子300では、角度θ1が-10°以上30°以下の範囲で深紫外光の取り出し効率が特に改善されており、角度θ1が0°以上20°以下で深紫外光の取り出し効率がさらに改善されている。このことから、半導体発光素子300でも、角度θ1は、-10°以上30°以下の範囲内にあることが好ましく、0°以上20°以下の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0093】
図29は、半導体発光素子300における角度θ2と光取り出し効率との関係を示すグラフである。
図29に示されるように、半導体発光素子300では、角度θ2が約56°である際に深紫外光の取り出し効率が最大になっている。また、半導体発光素子300では、角度θ2が56°±10°である際に深紫外光の取り出し効率が特に改善され、角度θ2が56°±6°である際に深紫外光の取り出し効率がさらに改善されている。このことから、半導体発光素子300でも、角度θ2は、56°±10°の範囲内にあることが好ましく、56°±6°の範囲内にあることがさらに好ましい。なお、
図28及び
図29では、高さHを幅W1で除した値が変化され、角度θ2が56°とされ、幅W2が90μmとされ、深紫外光に対する基板10の吸収係数が10cm
-1とされ、厚さTが10μmとされている。また、
図28には光線追跡法を用いて計算された角度θ1と光取り出し効率との関係が示されており、
図29には光線追跡法を用いて計算された角度θ2と光取り出し効率との関係が示されている。
【0094】
図30は、半導体発光素子300における厚さTと光取り出し効率との関係を示すグラフである。
図30に示されるように、半導体発光素子300では、厚さTが小さくなるにしたがって、深紫外光の取り出し効率が高まっている。また、このグラフからは、深紫外光に対する基板10の構成材料の吸収係数(α)が大きい場合でも、厚さTを小さくすることにより高い深紫外光の取り出し効率が達成可能であることが分かる。
図30には、光線追跡法を用いて計算された厚さTと光取り出し効率との関係が示されている。
【0095】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る半導体発光素子を説明する。
【0096】
第4実施形態に係る半導体発光素子を半導体発光素子400とする。ここでは、半導体発光素子200と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0097】
<半導体発光素子400の構成>
以下に、半導体発光素子400の構成を説明する。
【0098】
図31は、半導体発光素子400の断面図である。
図31に示されるように、半導体発光素子400は、基板10と、半導体層20と、n電極31と、p電極32と、パッド電極33とを有している。この点に関して、半導体発光素子400の構成は、半導体発光素子200の構成と共通している。
【0099】
半導体発光素子400では、突出部10cとして、第2主面10bに突出部10fが形成されている。突出部10fは、凸レンズ形状を有している。より具体的には、断面視において、側面10eが曲線状になっており、側面10eの互いに対向する部分の間の距離が頂面10dから離れるにつれて大きくなっている。突出部10fは、半導体発光素子200における突出部10cの外面(仮想面)に内接していることが好ましい。突出部10fの表面の全体は、断面視において曲線状であってもよい。これらの点に関して、半導体発光素子400の構成は、半導体発光素子200の構成と共通している。
【0100】
<半導体発光素子400の製造方法>
以下に、半導体発光素子400の製造方法を説明する。
【0101】
図32は、半導体発光素子400の製造工程図である。
図32に示されるように、半導体発光素子400の製造方法は、半導体発光素子100の製造方法は、準備工程S1と、半導体層形成工程S2と、メサ構造形成工程S3と、第1電極形成工程S4と、第2電極形成工程S5と、基板裏面加工工程S6と、マスク形成工程S7と、突出部形成工程S8と、個片化工程S9とを有している。この点に関して、半導体発光素子400の製造方法は、半導体発光素子200の製造方法と共通している。
【0102】
半導体発光素子400の製造方法は、さらに、ドライエッチング工程S10を有している。ドライエッチング工程S10では、ドライエッチングが行われることにより突出部10cの角部が丸まり、突出部10cが突出部10fとなる。これらの点に関して、半導体発光素子400の製造方法は、半導体発光素子200の製造方法と異なっている。
【0103】
<半導体発光素子400の効果>
以下に、半導体発光素子400の効果を説明する。
【0104】
半導体発光素子400では、複数の突出部10cとして第2主面10bに複数の突出部10fが形成されているとともに半導体層20が複数のメサ構造24を有しており、メサ構造24と突出部10fとが対向している。また、半導体発光素子300では、厚さTが90μm以下になっている。そのため、半導体発光素子300でも、半導体発光素子200と同様に、深紫外光の取り出し効率を改善することが可能である。
【0105】
半導体発光素子400では、突出部10fが凸レンズ形状になっている。そのため、半導体発光素子400では、深紫外光が突出部10fを通過することにより、コリメートされることになる。そのため、半導体発光素子400によると、深紫外光の指向性を高めることが可能である。
【0106】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る発光モジュールを説明する。第5実施形態に係る発光モジュールを発光モジュール500とする。
【0107】
<発光モジュール500の構成>
以下に、発光モジュール500の構成を説明する。
【0108】
図33は、発光モジュール500の断面図である。
図33に示されているように、発光モジュール500は、基台60と、サブマウント71と、絶縁層72と、配線73及び配線74と、接続パッド75及び接続パッド76と、ボンディングワイヤ77及びボンディングワイヤ78と、接続材79及び接続材80と、透明部材81と、液体82とを有している。
【0109】
基台60の構成材料は、例えば金属材料、樹脂材料、セラミック材料等である。基台60の構成材料は、熱伝導率が高いことが好ましい。この場合、基台60がヒートシンクとして機能する。サブマウント71は、基台60上に配置されている。サブマウント71の構成材料は、例えば窒化アルミニウム、珪素、炭化珪素(SiC)、ダイヤモンド等の熱伝導率が高い材料であることが好ましい。
【0110】
絶縁層72は、サブマウント71の外周を取り囲むように、基台60上に配置されている。配線73及び配線74は、例えば、絶縁層72に埋め込まれている。配線73は、一方端においてパッド73aを有しており、他方端において外部から給電されている。配線74は、一方端においてパッド74aを有しており、他方端において外部から給電されている。パッド73a及びパッド74aは、絶縁層72から露出している。
【0111】
接続パッド75及び接続パッド76は、サブマウント71上に配置されている。ボンディングワイヤ77は、一方端においてパッド73aに接続されており、他方端において接続パッド75に接続されている。ボンディングワイヤ78は、一方端においてパッド74aに接続されており、他方端において接続パッド76に接続されている。接続パッド75は、接続材79により、パッド電極33に接続されている。接続パッド76は、接続材80により、パッド電極34に接続されている。接続材79及び接続材80の構成材料は、例えば金-スズ合金である。このように、パッド電極33は接続材79及びボンディングワイヤ77を介して配線73に電気的に接続されており、パッド電極34は接続材80及びボンディングワイヤ78を介して配線74に電気的に接続されているため、配線73の他方端と配線74の他方端との間に印加される電流に基づいて、活性層22から深紫外光が発生することになる。
【0112】
透明部材81は、例えば、一方端から他方端に向かって径が大きくなっており、他方端において開口している半球状である。透明部材81の他方端は、例えば接着剤により絶縁層72上に接続されている。透明部材81は、活性層22から発生する深紫外光に対して透明である。透明部材81は、活性層22から発生する深紫外光に対して、例えば60パーセント以上の透過率を有している。透明部材81の構成材料は、例えば、無機材料又は樹脂材料である。無機材料の具体例として、合成石英、石英ガラス、無アルカリガラス、サファイア、蛍石(CaF)等が挙げられる。樹脂材料の具体例として、芳香族環を有しないシリコーン樹脂、非晶質のフッ素含有樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂等が挙げられる。樹脂材料は、無機材料を含有していてもよい。
【0113】
透明部材81の内部には、半導体発光素子100が配置されている。なお、図示されていないが、半導体発光素子100に代えて、半導体発光素子200、半導体発光素子300又は半導体発光素子400が用いられてもよい。透明部材81の内部には、液体82が充填されている。そのため、半導体発光素子100は、液体82により封止されている。液体82は、活性層22から発生する深紫外光に対して透明である。液体82は、活性層22から発生する深紫外光に対して、例えば60パーセント以上の透過率を有している。液体82は、例えば、純水、液体有機化合物、塩溶液、粒子分散溶液等である。液体82の屈折率は、1よりも大きい。液体82の屈折率は、1.5以上であることが好ましい。
【0114】
<発光モジュール500の製造方法>
以下に、発光モジュール500の製造方法を説明する。
【0115】
図34は、発光モジュール500の製造工程図である。
図34に示されているように、発光モジュール500の製造方法は、半導体発光素子準備工程S11と、半導体発光素子ボンディング工程S12と、ワイヤボンディング工程S13と、透明部材取り付け工程S14と、液体充填工程S15とを有している。
【0116】
発光モジュール500の製造方法では、まず、半導体発光素子準備工程S11が行われる。半導体発光素子準備工程S11では、準備工程S1から個片化工程S9が行われることにより、半導体発光素子100が準備される。半導体発光素子ボンディング工程S12では、パッド電極33が接続材79により接続パッド75に接続されるとともにパッド電極34が接続材80により接続パッド76に接続される。
【0117】
ワイヤボンディング工程S13は、半導体発光素子ボンディング工程S12の後に行われる。ワイヤボンディング工程S13では、ボンディングワイヤ77がパッド73a及び接続パッド75に接続されるとともに、ボンディングワイヤ78がパッド74a及び接続パッド76に接続される。透明部材取り付け工程S14は、ワイヤボンディング工程S13の後に行われる。透明部材取り付け工程S14では、接着剤等により、透明部材81が絶縁層72に取り付けられる。液体充填工程S15は、透明部材取り付け工程S14の後に行われる。液体充填工程S15では、透明部材81の内部に液体82が充填され、半導体発光素子100が液体82により封止される。以上により、
図33に示される構造の発光モジュール500が形成される。
【0118】
<変形例>
図35は、変形例に係る発光モジュール500の製造工程図である。
図35に示されるように、発光モジュール500の製造方法では、半導体発光素子準備工程S11において突出部形成工程S8が行われず、半導体発光素子ボンディング工程S12が行われた後であってワイヤボンディング工程S13が行われる前に突出部形成工程S8が行われてもよい。これにより、基板10が厚い状態でサブマウント71上への半導体発光素子100の搭載を行うことができるため、半導体発光素子ボンディング工程S12における半導体発光素子100の損傷(例えば、基板10の割れ)を抑制可能である。
【0119】
<発光モジュール500の効果>
以下に、発光モジュール500の効果を説明する。
【0120】
図36は、発光モジュール500における電流と深紫外光の出力との関係を示すグラフである。
図37は、発光モジュール500における電流と深紫外光の取り出し効率との関係を示すグラフである。
図36では発光モジュール500に半導体発光素子100が用いられ、
図37では発光モジュール500に半導体発光素子300が用いられている。
図37では、液体82の屈折率が1.54とされ、幅W2が90μmとされ、厚さTが10μmとされ、角度θ2が高さHを幅W1で除した値が1.5とされている。
図36及び
図37には、電流と光出力又は外部量子効率との関係の実験値が示されている。
【0121】
図36に示されるように、発光モジュール500では、透明部材81の内部が液体82で充填されることにより、深紫外光の光出力が向上している。より具体的には、透明部材81の内部が液体82で充填されることにより、1000mAの電流が流れる際の光出力が2.15倍になり、2000mAの電流が流れる際の光出力が2.57倍になる。
【0122】
図37に示されるように、発光モジュール500では、透明部材81の内部が液体82で充填されることにより、深紫外光の取り出し効率が向上している。より具体的には、透明部材81の内部が液体82で充填されることにより、角度θ1が-10°である際の光取り出し効率が1.94倍になり、角度θ1が25°である際の光出力が1.72倍になり、角度θ1が60°である場合の光取り出し効率が2.21倍にある。この比較から、発光モジュール500では、透明部材81の内部が液体82で充填されることにより、深紫外光の取り出し効率を改善することが可能である。
【0123】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0124】
10 基板、10a 第1主面、10b 第2主面、10c,10f 突出部、10d 頂面、10da 第3端、10db 第4端、10e 側面、10ea 第1側面、10eb 第2側面、20 半導体層、21 n型半導体層、22 活性層、23 p型半導体層、23a 電子ブロック層、23b クラッド層、23c コンタクト層、24 メサ構造、24a 第1端、24b 第2端、31,32 電極、33,34 パッド電極、40 反射防止膜、50 マスク、51 パターン、52 開口部、60 基台、71 サブマウント、72 絶縁層、73,74 配線、73a,74a パッド、75,76 接続パッド、77,78 ボンディングワイヤ、79,80 接続材、81 透明部材、82 液体、100,100A,200,200A,300,400 半導体発光素子、500 発光モジュール、DR1 第1方向、DR2 第2方向、H 高さ、T 厚さ、W1,W2,W3 幅、S1 準備工程、S2 半導体層形成工程、S3 メサ構造形成工程、S4 第1電極形成工程、S5 第2電極形成工程、S6 基板裏面加工工程、S7 マスク形成工程、S8 突出部形成工程、S9 個片化工程、S10 ドライエッチング工程、S11 半導体発光素子準備工程、S12 半導体発光素子ボンディング工程、S13 ワイヤボンディング工程、S14 透明部材取り付け工程、S15 液体充填工程。