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特開2024-70046状態検知装置、状態検知方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070046
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】状態検知装置、状態検知方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
G05B23/02 R
G05B23/02 302R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180399
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】川里 浩之
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA17
3C223BA02
3C223BB17
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF05
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF33
3C223FF35
3C223FF42
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】異常などの状態を判定するための予測値を的確に特定することで、状態を的確に検知できる状態検知装置の提供。
【解決手段】一実施の形態に係る状態検知装置100は、連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値としての流量調節弁16の実際の開度及び目標の開度を取得する数値取得部101と、数値取得部101で取得される複数の具体的数値(実際の開度及び目標の開度)に基づき、複数の具体的数値の次の具体的数値である実際の開度の予測値を特定する予測値特定部102と、を備える。そして、予測値特定部102は、実際の開度に対応する予測値と当該予測値に対応する実際の開度との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する実際の開度と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値を取得する数値取得部と、前記数値取得部で取得された複数の具体的数値に基づき、前記複数の具体的数値の次の具体的数値の予測値を特定する予測値特定部と、を備え、前記数値取得部で取得される具体的数値と、前記予測値特定部が特定する予測値とを基に状態を検知する状態検知装置であって、
前記予測値特定部は、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行い、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えず当該具体的数値を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う、状態検知装置。
【請求項2】
前記予測値特定部が所定時間内に行う複数回の予測において、前記予測値特定部が特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が前記所定値未満となった回数の割合を特定する誤差評価部と、
前記誤差評価部が特定した前記割合が、所定の割合未満になったときに、異常を通知する異常通知部と、をさらに備える、請求項1に記載の状態検知装置。
【請求項3】
前記所定値と、前記所定の割合とを変更する設定変更部をさらに備え、
前記設定変更部は、前記所定値と前記所定の割合とを反比例の関係で自動で調節する、請求項2に記載の状態検知装置。
【請求項4】
前記数値取得部は、前記具体的数値として、機械要素を動作させるために前記機械要素に連続的に入力される指令値及び連続的に検出される前記機械要素の動作状態の評価値を取得し、
前記予測値特定部は、前記具体的数値としての最新の前記指令値を除く複数の前記指令値及び最新の前記評価値を除く複数の前記評価値に基づいて、前記予測値として、最新の前記評価値に対応する予測値を特定する、請求項1に記載の状態検知装置。
【請求項5】
前記予測値特定部は、
最新の前記評価値に対応する予測値と当該予測値に対応する具体的数値である最新の前記評価値との差分が前記所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する最新の前記評価値と置き換えて、次に最新の指令値および評価値として扱われる指令値及び評価値を前記数値取得部が取得した後、次の予測値の特定を行い、
最新の前記評価値に対応する予測値と当該予測値に対応する具体的数値である最新の前記評価値との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する最新の前記評価値と置き換えず当該評価値を用いて、次に最新の指令値および評価値として扱われる指令値及び評価値を前記数値取得部が取得した後、次の予測値の特定を行う、請求項4に記載の状態検知装置。
【請求項6】
前記予測値特定部は、正常な状態の前記機械要素を動作させるために前記機械要素に連続的に入力される訓練用指令値及び前記訓令用指令値に応じて動作する前記機械要素の動作状態に対応する訓練用評価値を正常な状態として学習済みのモデルであって、前記訓練用指令値に対応する複数の変数及び前記訓練用評価値に対応する複数の変数に基づいて、次の前記訓練用評価値に対応する正常な値を予測する学習済みモデルによって予測を行い、
前記予測値特定部は、前記学習済みモデルにおいて、前記具体的数値としての複数の前記指令値及び複数の前記評価値を変数とし、前記評価値に対応する予測値を特定する、請求項4又は5に記載の状態検知装置。
【請求項7】
連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値を取得する数値取得工程と、前記数値取得工程で取得された複数の具体的数値に基づき、前記複数の具体的数値の次の具体的数値の予測値を特定する予測値特定工程と、を備え、前記数値取得工程で取得する具体的数値と、前記予測値特定工程で特定する予測値とを基に状態を検知する状態検知方法であって、
前記予測値特定工程では、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行い、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えず当該具体的数値を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う、状態検知方法。
【請求項8】
正常な状態の機械要素を動作させるために前記機械要素に連続的に入力される訓練用指令値及び前記訓練用指令値に応じて動作する前記機械要素の動作状態に対応する訓練用評価値を正常な状態として学習し、前記訓練用指令値に対応する複数の変数及び前記訓練用評価値に対応する複数の変数に基づいて、次の前記訓練用評価値に対応する正常な値を予測する学習済みモデルを作製する学習済みモデル作製工程をさらに備え、
前記数値取得工程では、前記具体的数値として、前記機械要素を動作させるために前記機械要素に連続的に入力される指令値及び連続的に検出される前記機械要素の動作状態の評価値を取得し、
前記予測値特定工程では、前記学習済みモデルにおいて、前記具体的数値としての複数の前記指令値及び複数の前記評価値を変数とし、前記評価値に対応する予測値を特定する、請求項7に記載の状態検知方法。
【請求項9】
入力される指令信号に応じて開度を変化させる弁の状態を検知する状態検知装置であって、
連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値として、前記弁の実際の開度の情報を取得する数値取得部と、
前記数値取得部で取得された複数の実際の開度の情報に基づき、前記複数の実際の開度の次の実際の開度の予測値を特定する予測値特定部と、を備え、
前記数値取得部が取得する前記弁の実際の開度の情報と、前記予測値特定部が特定する実際の開度の予測値とを基に状態を検知し、
前記予測値特定部は、
特定した予測値と当該予測値に対応する実際の開度との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する前記実際の開度と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行い、
特定した予測値と当該予測値に対応する実際の開度との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する前記実際の開度と置き換えず当該実際の開度を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う、状態検知装置。
【請求項10】
連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値を取得する数値取得ステップと、前記数値取得ステップで取得された複数の具体的数値に基づき、前記複数の具体的数値の次の具体的数値の予測値を特定する予測値特定ステップと、をコンピュータに実行させ、前記数値取得ステップで取得する具体的数値と、前記予測値特定ステップで特定する予測値とを基に状態を検知するためのコンピュータプログラムであって、
前記予測値特定ステップでは、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行い、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えず当該具体的数値を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、状態検知装置、状態検知方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
状態検知に関する技術は、これまでに種々提案されている。
【0003】
例えば、流体で温度制御対象を温度制御する冷凍装置や、チラー装置などの温度制御装置には、流体の流れを制御する電動の弁が設けられることがある。このような弁では、錆や摩耗の発生、異物の詰まりなどにより動作異常が生じることがある。
【0004】
上述のような弁で生じ得る動作異常の検知は、従来よりなされている。具体的には例えば、弁に供給する電流の値の異常上昇を基に、弁の動作異常を検知する手法を採用することがあった。この手法は、基本的に、弁に供給する電流の値と予め定められた閾値との比較で異常の発生を検出するため、簡易的な手法と言える。
【0005】
一方で、近年、特に機械学習に基づく予測モデル(学習済みモデル)により状態を検知する技術が普及しつつある。このような技術は、異常の予兆を検出するのに有効と言える。すなわち、このような予測モデルによれば、明らかな異常が実際に発生する前の予兆を検出することにより、重大な異常の発生の回避を期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-86571号公報
【特許文献2】特許第7015405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の予測モデルは、例えば実測値を入力値として、未来の実測値を予測するアルゴリズムである。このような予測モデルを用いて異常を判定する場合、予測値と実測値との乖離度合いに基づいて、異常の発生を推定してもよい。
【0008】
しかしながら、実測値を入力値として予測を行う予測モデルでは、例えば異常が発生しつつあるか又は異常が発生した場合の実測値を入力値として用いることで、異常の発生の推定のための実測値と予測値との乖離度合いの評価を的確に行えなくなる虞がある。
【0009】
具体的には、例えば異常が発生した場合の実測値を使って特定された予測値は、これに対応する次回の異常を示す実測値と近い値になることがある。この場合、推定されるはずの異常の発生を的確に推定できなくなる虞がある。一方で、予測値から予測値を特定する場合も、予測値が時間の経過とともに実測値から大きくかけ離れることがある。この場合には、推定されるべきではない異常の発生が推定される虞がある。
【0010】
本発明の課題は、上記事情を鑑みて、異常などの状態を判定するための予測値を的確に特定することで、状態を的確に検知できる状態検知装置、状態検知方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施の形態は、以下の態様「1」~「10」に関連する。
【0012】
[1] 連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値を取得する数値取得部と、前記数値取得部で取得された複数の具体的数値に基づき、前記複数の具体的数値の次の具体的数値の予測値を特定する予測値特定部と、を備え、前記数値取得部で取得される具体的数値と、前記予測値特定部が特定する予測値とを基に状態を検知する状態検知装置であって、
前記予測値特定部は、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行い、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えず当該具体的数値を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う、状態検知装置。
【0013】
[2] 前記予測値特定部が所定時間内に行う複数回の予測において、前記予測値特定部が特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が前記所定値未満となった回数の割合を特定する誤差評価部と、
前記誤差評価部が特定した前記割合が、所定の割合未満になったときに、異常を通知する異常通知部と、をさらに備える、[1]に記載の状態検知装置。
【0014】
[3] 前記所定値と、前記所定の割合とを変更する設定変更部をさらに備え、
前記設定変更部は、前記所定値と前記所定の割合とを反比例の関係で自動で調節する、[2]に記載の状態検知装置。
【0015】
[4] 前記数値取得部は、前記具体的数値として、機械要素を動作させるために前記機械要素に連続的に入力される指令値及び連続的に検出される前記機械要素の動作状態の評価値を取得し、
前記予測値特定部は、前記具体的数値としての最新の前記指令値を除く複数の前記指令値及び最新の前記評価値を除く複数の前記評価値に基づいて、前記予測値として、最新の前記評価値に対応する予測値を特定する、[1]乃至[3]のいずれかに記載の状態検知装置。
【0016】
[5] 前記予測値特定部は、
最新の前記評価値に対応する予測値と当該予測値に対応する具体的数値である最新の前記評価値との差分が前記所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する最新の前記評価値と置き換えて、次に最新の指令値および評価値として扱われる指令値及び評価値を前記数値取得部が取得した後、次の予測値の特定を行い、
最新の前記評価値に対応する予測値と当該予測値に対応する具体的数値である最新の前記評価値との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する最新の前記評価値と置き換えず当該評価値を用いて、次に最新の指令値および評価値として扱われる指令値及び評価値を前記数値取得部が取得した後、次の予測値の特定を行う、[4]に記載の状態検知装置。
【0017】
[6] 前記予測値特定部は、正常な状態の前記機械要素を動作させるために前記機械要素に連続的に入力される訓練用指令値及び前記訓令用指令値に応じて動作する前記機械要素の動作状態に対応する訓練用評価値を正常な状態として学習済みのモデルであって、前記訓練用指令値に対応する複数の変数及び前記訓練用評価値に対応する複数の変数に基づいて、次の前記訓練用評価値に対応する正常な値を予測する学習済みモデルによって予測を行い、
前記予測値特定部は、前記学習済みモデルにおいて、前記具体的数値としての複数の前記指令値及び複数の前記評価値を変数とし、前記評価値に対応する予測値を特定する、[4]又は[5]に記載の状態検知装置。
【0018】
[7] 連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値を取得する数値取得工程と、前記数値取得工程で取得された複数の具体的数値に基づき、前記複数の具体的数値の次の具体的数値の予測値を特定する予測値特定工程と、を備え、前記数値取得工程で取得する具体的数値と、前記予測値特定工程で特定する予測値とを基に状態を検知する状態検知方法であって、
前記予測値特定工程では、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行い、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えず当該具体的数値を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う、状態検知方法。
【0019】
[8] 正常な状態の機械要素を動作させるために前記機械要素に連続的に入力される訓練用指令値及び前記訓練用指令値に応じて動作する前記機械要素の動作状態に対応する訓練用評価値を正常な状態として学習し、前記訓練用指令値に対応する複数の変数及び前記訓練用評価値に対応する複数の変数に基づいて、次の前記訓練用評価値に対応する正常な値を予測する学習済みモデルを作製する学習済みモデル作製工程をさらに備え、
前記数値取得工程では、前記具体的数値として、前記機械要素を動作させるために前記機械要素に連続的に入力される指令値及び連続的に検出される前記機械要素の動作状態の評価値を取得し、
前記予測値特定工程では、前記学習済みモデルにおいて、前記具体的数値としての複数の前記指令値及び複数の前記評価値を変数とし、前記評価値に対応する予測値を特定する、[7]に記載の状態検知方法。
【0020】
[9] 入力される指令信号に応じて開度を変化させる弁の状態を検知する状態検知装置であって、
連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値として、前記弁の実際の開度の情報を取得する数値取得部と、
前記数値取得部で取得された複数の実際の開度の情報に基づき、前記複数の実際の開度の次の実際の開度の予測値を特定する予測値特定部と、を備え、
前記数値取得部が取得する前記弁の実際の開度の情報と、前記予測値特定部が特定する実際の開度の予測値とを基に状態を検知し、
前記予測値特定部は、
特定した予測値と当該予測値に対応する実際の開度との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する前記実際の開度と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行い、
特定した予測値と当該予測値に対応する実際の開度との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する前記実際の開度と置き換えず当該実際の開度を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う、状態検知装置。
【0021】
[10] 連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値を取得する数値取得ステップと、前記数値取得ステップで取得された複数の具体的数値に基づき、前記複数の具体的数値の次の具体的数値の予測値を特定する予測値特定ステップと、をコンピュータに実行させ、前記数値取得ステップで取得する具体的数値と、前記予測値特定ステップで特定する予測値とを基に状態を検知するためのコンピュータプログラムであって、
前記予測値特定ステップでは、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行い、
特定した予測値と当該予測値に対応する具体的数値との差分が前記所定値未満である場合に、当該予測値を、これに対応する前記具体的数値と置き換えず当該具体的数値を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う、コンピュータプログラム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、状態を判定するための予測値を的確に特定することで、状態を的確に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施の形態に係る状態検知装置と、当該状態検知装置が適用された温度制御装置とを概略的に示す図である。
図2図1の状態検知装置の機能構成を示すブロック図である。
図3図1の状態検知装置の予測動作の一例を説明するフローチャートである。
図4図1の状態検知装置の状態検知動作の一例を説明するフローチャートである。
図5図3の予測動作を概念的に示す図である。
図6図3及び図4に示す動作中に演算される予測値と実測値である具体的数値との差を評価するための所定値を決定する手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、一実施の形態を説明する。
【0025】
<状態検知装置及び温度制御装置の構成>
図1は、一実施の形態に係る状態検知装置100と、状態検知装置100が適用された温度制御装置としての冷凍装置1とを概略的に示す図である。
【0026】
冷凍装置1は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13及び蒸発器14を有する冷凍回路10を備えている。冷凍回路10において、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13及び蒸発器14は、この順に冷媒を循環させるように配管部材(パイプ)によって接続されている。冷凍装置1は、蒸発器14を通流する冷媒を図示しない温度制御対象と熱交換させることで、温度制御対象を温度制御する。
【0027】
圧縮機11は、蒸発器14から流出した基本的には気体の状態の冷媒を圧縮して、昇温及び昇圧させた状態で凝縮器12に供給する。凝縮器12は、圧縮機11で圧縮された冷媒を冷却水によって冷却すると共に凝縮し、所定の温度の高圧の液体の状態にして、膨張弁13に供給する。膨張弁13は、凝縮器12からの冷媒を膨張させることで気液混相の状態にして、蒸発器14に流入させる。膨張弁13から蒸発器14に流入する冷媒は、膨張により降温する。これにより、蒸発器14は、冷媒を温度制御対象と熱交換させることで温度制御対象を例えば冷却できる。
【0028】
凝縮器12には、冷却水流路15が接続されている。冷却水流路15には流量調節弁16が設けられている。冷却水流路15は、凝縮器12に冷却水を流入させるとともに、凝縮器12から流出した冷却水を通流させる流路である。流量調節弁16は、冷却水流路15から凝縮器12に流入する冷却水の流量を調節する。流量調節弁16は、本実施の形態では冷却水流路15における凝縮器12よりも上流側の部分に設けられているが、凝縮器12の下流側に設けられてもよい。
【0029】
流量調節弁16は、凝縮器12に流入する冷却水の流量を開度調節により調節する比例弁である。本実施の形態における流量調節弁16はモータ16Mを有し、モータ16Mが弁体の位置を調節することで、流量調節弁16の開度が調節される。また、流量調節弁16は開度検出部16Sを有し、開度検出部16Sにより弁の開度を特定できる。開度検出部16Sは、モータ16Mの回転軸の基準位置からの回転変化量を認識可能なエンコーダを含むものでもよく、エンコーダが検出する回転変化量を基に弁の開度を特定するものでもよい。なお、流量調節弁16におけるモータ16Mは、本実施の形態ではステッピングモータであるが、直流サーボモータや、交流サーボモータでもよい。また、流量調節弁16は比例式の電磁弁でもよい。
【0030】
流量調節弁16は、詳しくは、モータ16Mは、電気的にコントローラ17に接続され、流量調節弁16の開度の制御は、コントローラ17によって行われる。本実施の形態では、冷凍回路10における凝縮器12の下流側であって、膨張弁13の上流側の部分を通流する冷媒の圧力を検出する圧力センサ18が設けられている。圧力センサ18が検出した圧力の情報は、コントローラ17に提供される。そして、本実施の形態におけるコントローラ17は、圧力センサ18が検出する圧力が予め定められた目標圧力に一致するように流量調節弁16を制御する。
【0031】
コントローラ17は、圧力センサ18が検出する圧力と目標圧力との差分に基づくフィードバック制御により、圧力センサ18が検出する圧力と目標圧力とが一致するように流量調節弁16を制御する。コントローラ17はPID制御により流量調節弁16を制御するが、PI制御、PD制御など、又はさらに他の手法で制御を行ってもよい。また、圧力センサ18に代えて温度センサを設けることにより、コントローラ17は、温度センサが検出する温度と目標温度とが一致するように流量調節弁16を制御してもよい。
【0032】
コントローラ17は、指令値としての目標の開度(0~100%の範囲の値)を演算し、流量調節弁16に出力する。本実施の形態ではコントローラ17がステッピングモータであるモータ16Mに電気的に接続されるため、実際は、コントローラ17が出力する目標の開度は、パルス信号のセットに換算されて出力される。そして、流量調節弁16には、目標の開度に対応するパルス信号のセットが指令信号として入力される。そして、モータ16Mは、出力されたパルス信号に応じて回転位置を変更し、流量調節弁16の開度を調節する。
【0033】
コントローラ17は、所定の周期で目標の開度を演算し、その後、目標の開度に対応するパルス信号のセットを生成する。コントローラ17は、圧力センサ18が検出する圧力と目標圧力との差分に応じて、指令値としての目標の開度を増減させて演算する。パルス信号のセットは、所定の周期に対応する時間幅において1つ又は複数のパルス信号を発生させる信号波形とも言える。生成されるパルス信号のセットに含まれるパルス信号の数は、圧力センサ18が検出する圧力と目標圧力との差分に応じて増減する。
【0034】
より詳しくは、上記差分が大きいほど、コントローラ17は、パルス信号のセットに多くのパルス信号を含める。この場合、モータ16Mが受け取るパルス信号のセットに含まれるパルス信号が多いほど、目標の開度に向けた流量調節弁16の開度の変化速度を高めることができる。本実施の形態では、流量調節弁16がコントローラ17からパルス信号のセットを受け取った際、当該セットに対応する時間幅において目標の開度まで動作しようとする。ただし、コントローラ17による流量調節弁16の制御態様は上述の例に限られるものではなく、他の手法であってもよい。
【0035】
コントローラ17は、CPU、ROM等を含むコンピュータや、マイコンなどで構成されてもよい。この場合、コントローラ17はROMに格納されたプログラムに従い、各種処理を行う。なお、コントローラ17は、その他のプロセッサや電気回路(例えばFPGA(Field Programmable Gate Alley)等)でもよい。
【0036】
状態検知装置100は、コントローラ17に電気的に接続されている。そして、状態検知装置100は、コントローラ17がモータ16Mに出力する指令値(本例では「目標の開度」)と、流量調節弁16の現在の開度の情報とを、コントローラ17から提供される。上述したように、本実施の形態では、コントローラ17が所定の周期で目標の開度を演算する。本実施の形態における状態検知装置100は、コントローラ17が目標の開度を演算する毎に目標の開度の情報を提供されるとともに、目標の開度の情報が提供される時点における流量調節弁16の実際の開度の情報を提供される。
【0037】
そして、状態検知装置100は、連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値としての複数の目標の開度の情報及び複数の実際の開度の情報に基づき、複数の実際の開度の情報の次の実際の開度を予測する。また、状態検知装置100は、予測した流量調節弁16の開度と対応する流量調節弁16の実際の開度とに基づき、流量調節弁16の状態、具体的には異常を検知するようになっている。
【0038】
状態検知装置100は、CPU、ROM等を含むコンピュータや、マイコンなどで構成されてもよい。この場合、状態検知装置100はROMに格納されたプログラムに従い、各種処理を行う。なお、コントローラ17は、その他のプロセッサや電気回路(例えばFPGA(Field Programmable Gate Alley)等)でもよい。本実施の形態ではコントローラ17と状態検知装置100とが別々の装置であるが、これらは一体化されてもよい。以下、状態検知装置100について説明する。
【0039】
<状態検知装置の機能構成>
図2は、状態検知装置100の機能構成を示すブロック図である。状態検知装置100は、数値取得部101と、予測値特定部102と、誤差評価部103と、異常通知部104と、設定変更部105と、記憶部106と、を備える。状態検知装置100が例えばコンピュータで構成される場合、数値取得部101、予測値特定部102、誤差評価部103、異常通知部104及び設定変更部105は、ROMに格納されたプログラムが実行されることにより実現され得る。一方で、記憶部106は、ROMの一部により構成されてもよい。
【0040】
数値取得部101は、連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値として、コントローラ17が演算する流量調節弁16の目標の開度の情報と、開度検出部16Sが検出する流量調節弁16の実際の開度の情報と、を取得する。
【0041】
ここで、上記目標の開度の情報は機械要素である流量調節弁16を動作させるために流量調節弁16に連続的に入力される指令値に対応する。上記の実際の開度の情報は、連続的に検出される流量調節弁16の動作状態の評価値に対応する。数値取得部101により取得される目標の開度の情報及び実際の開度の情報は、記憶部106に設定される後述の予測用変数ストレージ106Aに順次保持される。
【0042】
予測値特定部102は、数値取得部101により取得され、上述のように予測用変数ストレージ106Aに保持された複数の目標の開度の情報及び複数の実際の開度の情報に基づいて、複数の実際の開度の次の実際の開度の予測値を特定する部分である。詳しくは、本実施の形態における予測値特定部102は、予測用変数ストレージ106Aにおける最新の目標の開度の情報を除く複数の目標の開度の情報及び最新の実際の開度の情報を除く複数の実際の開度の情報に基づいて、最新の実際の開度の情報に対応する予測値を特定する。本実施の形態では、予測値特定部102が用いる複数の目標の開度の情報の数がnのとき、複数の実際の開度の情報の数も、nとなる。上記nは整数であり、4~10でもよい。
【0043】
また、本実施の形態における予測値特定部102は、上述のように予測値を特定した後、当該予測値とこれに対応する最新の実際の開度との差に基づき、次の予測に使用する実際の開度の情報を、必要に応じて予測値と置き換えるように構成されている。
【0044】
詳しくは、予測値特定部102は、最新の実際の開度に対応する予測値と当該予測値に対応する実測値である最新の実際の開度との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する最新の実際の開度と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う。一方で、予測値特定部102は、最新の実際の開度に対応する予測値と当該予測値に対応する実測値である最新の実施の開度との差分が所定値未満である場合には、当該予測値を、これに対応する最新の実際の開度と置き換えず当該実際の開度を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う。実際の開度に対して置き換えられた予測値は、その後の予測において維持される。
【0045】
後述するが、状態検知装置100は、開度の予測値と対応する開度の実測値との差が大きい状態を検知することに基づいて、異常を検知する。ここで、正常ではない実測値を基に予測値を特定すると、予測値が正常な挙動を示すものでなくなる場合があり、異常を的確に検知できなくなる虞がある。したがって、予測値は正常な挙動を示すものであることが望ましい。そこで、予測値特定部102は上述のように予測値を必要に応じてこれに対応する実測値と置き換えて、その後の予測を行うようになっている。
【0046】
以上のような予測値特定部102は、本実施の形態では一例として学習済みモデルを用いて予測を行うように構成されている。この学習済みモデルは、正常な状態の流量調節弁16を動作させるために流量調節弁16に連続的に入力される訓練用指令値(目標の開度)及び訓令用指令値に応じて動作する機械要素の動作状態に対応する訓練用評価値(実際の開度)を正常な状態(正常なデータセット)として学習済みである。
【0047】
詳しくは、上記の学習済みモデルは、訓令用指令値及び訓練用評価値を順次入力され、最新の訓練用指令値を除く複数の訓練用指令値と、複数の訓練用評価値のうちの最新の訓練用評価値を除く複数の訓練用評価値とを説明変数として、最新の訓練用評価値を正解ラベルとして機械学習を行う。そして、この学習済みモデルは、上記訓練用指令値に対応する複数の変数及び上記訓練用評価値に対応する複数の変数に基づいて、次の訓練用評価値に対応する正常な値を予測するように構築されている。
【0048】
これにより、本実施の形態で用いられる学習済みモデルは、数値取得部101が取得する複数の指令値としての複数の目標の開度及び複数の評価値としての複数の実際の開度を説明変数として、実際の開度に対応する予測値を、正解ラベルに該当する値として特定するように構築されている。
【0049】
以上のような予測値特定部102が用いる学習済みモデルは、一例として、LightGBM(Light Gradient Boosting Machine)に基づく機械学習により構築されている。ただし、予測値特定部102が用いる学習済みモデルは特に限られず、ニューラルネットワーク、SVMなどの他の機械学習により構築されるものでもよい。また、予測値特定部102は、回帰法などの手法により予測値を特定するものでもよい。
【0050】
本実施の形態では、予測値特定部102が特定する実際の開度の予測値、及び当該予測値とこれに対応する実際の開度との差分が記憶部106に設定される後述の保管用ストレージ106Bに順次保持される。このような情報は、その後に予測値特定部102が使用する学習済みモデルを改良する際に利用されてもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、予測値特定部102が特定した実際の開度の予測値と当該予測値とこれに対応する実際の開度との差分が保管用ストレージ106Bに保持される際又は保持された後に、差分が所定値未満の場合には、それ(言い換えると、正常)を示すフラグ(例えば「1」)が紐付けられて保持され、差分が所定値以上の場合には、それ(言い換えると、非正常)を示すフラグ(例えば「0」)が紐付けられて保持される。
【0052】
誤差評価部103は、予測値特定部102が所定時間内に行う複数回の予測において、予測値特定部102が特定した実際の開度の予測値と当該予測値に対応する実際の開度との差分が所定値未満となった回数の割合を特定する部分である。詳しくは、誤差評価部103は、上述のように保管用ストレージ106Bに保持された所定数(例えば3600)の上記差分の情報における、上記所定値未満を示すフラグ(例えば「1」)を紐付けられた差分の数の割合を特定する。これにより、誤差評価部103は、予測値特定部102が所定時間内に行う複数回の予測において、予測値と実測値との差分が所定値未満となった回数の割合を特定するようになっている。
【0053】
そして、誤差評価部103は、予測値特定部102が所定時間内に行う複数回の予測において予測値と実際の開度との差分が所定値未満となった回数の割合が、所定の割合未満になったときに、異常が発生している旨を判定する。
【0054】
誤差評価部103は、異常が発生している旨を判定した際、アラーム情報を異常通知部104に提供する。異常通知部104は、誤差評価部103からアラーム情報を受けた際に異常を通知する。異常の通知は、例えば図示しないディスプレイ上への警告表示により行われてもよいし、アラーム音の発生により行われてもよい。
【0055】
設定変更部105は、予測値特定部102が差分を評価するために用いる上記所定値と、予測値特定部102が異常を通知するか否かの判定に用いる上記所定の割合とを変更する部分である。本実施の形態における設定変更部105は、ユーザの操作に応じて所定値と所定の割合とを連動させて変更するようになっている。詳しくは、設定変更部105は、所定値と所定の割合とを反比例の関係で自動で調節する。
【0056】
本実施の形態では、予測値特定部102が特定した実際の開度の予測値及び当該予測値に対応する実際の開度が、全閉0%~全開100%の間のいずれかの値で特定される。ここで、上記所定値が流量調節弁16の開度の単位にて1%に設定され、異常を通知するか否かの判定のための上記所定の割合が60%に設定されていたとする。この状態から、設定変更部105を用いて例えば所定値が2%に上げられた場合には、上記所定の割合は、例えば40%などに自動で下げられる。
【0057】
設定変更部105が定める所定値・所定の割合の組合せは、実際に異常が発生した事例に基づいて高い信頼性で異常を検知できる最適値の組合せとして予め特定されている。このような設定変更部105によれば、状況に応じて望ましい状態検知を柔軟に行うことを可能とする。ただし、所定値及び所定の割合を任意に設定可能でもよい。
【0058】
記憶部106は、データ保持部分の一部に上述した予測用変数ストレージ106A及び保管用ストレージ106Bを設定し、各ストレージ情報を保持する。ここで、予測値特定部102が用いる複数の目標の開度の情報の数がnと設定され、複数の実際の開度の情報の数も、nと設定される場合、予測用変数ストレージ106Aは、目標の開度についてn+1個の記憶領域を有するとともに、複数の実際の開度についてn+1個の記憶領域を有するように構成されてもよい。
【0059】
以上のような予測用変数ストレージ106Aでは、数値取得部101が最初に取得した目標の開度の情報は、目標の開度についてのn+1番目の記憶領域に保持され、数値取得部101が最初に取得した実際の開度の情報は、実際の開度についてのn+1番目の記憶領域に保持される。そして、次に目標の開度の情報が取得される前に、n+1番目の記憶領域に保持されている目標の開度の情報はn番目の記憶領域に移動され、新しい目標の開度の情報はn+1番目の記憶領域に保持される。実際の開度の情報も、目標の開度の情報と同様に保持される。そして、目標の開度についての1~n+1番目の記憶領域に目標の開度の情報が満たされた以降に、次の情報が取得されると、1番目の記憶領域の情報は排出される。実際の開度についても、同様の排出処理が行われる。なお、予測用変数ストレージ106Aの構成は特に限られず、少なくとも予測値特定部102が予測に用いる情報を保持可能な記憶領域を有すればよい。
【0060】
以上のような記憶部106は、主記憶装置で構成されてもよいし、補助記憶装置で構成されてもよい。また、記憶部106は各種の動作用プログラムを保持している。
【0061】
<予測動作>
次に、図3に示すフローチャートを参照しつつ状態検知装置100の予測動作の一例を説明する。状態検知装置100の予測動作は、冷凍装置1の運転開始とともに開始する。
【0062】
まずステップS31において、状態検知装置100は、コントローラ17が演算する流量調節弁16の目標の開度の情報と開度検出部16Sが検出する流量調節弁16の実際の開度の情報とをコントローラ17から取得する。情報の取得は、数値取得部101によって行われる。そして、数値取得部101により取得される目標の開度の情報及び実際の開度の情報は、予測用変数ストレージ106Aに順次保持される。
【0063】
次いでステップS32において、状態検知装置100は、予測用変数ストレージ106Aが目標の開度の情報及び実際の開度の情報で満たされたか否かを判定する。詳しくは、状態検知装置100は、予測用変数ストレージ106Aにおいて、目標の開度についての1~n+1番目の記憶領域に目標の開度の情報が満たされ、且つ、実際の開度についての1~n+1番目の記憶領域に実際の開度の情報が満たされたか否かを判定する。
【0064】
そして、ステップS32で予測用変数ストレージ106Aが満たされたと判定されない場合、ステップS31での情報の取得が繰り返される。一方で、ステップS32で予測用変数ストレージ106Aが満たされたと判定された場合、ステップS33において、状態検知装置100は予測値特定部102により実際の開度の情報の予測値を特定する。
【0065】
ステップS33では、予測値特定部102が、最新の目標の開度の情報を除く複数の目標の開度の情報及び最新の実際の開度の情報を除く複数の実際の開度の情報に基づいて、最新の実際の開度の情報に対応する予測値を特定する。すなわち、予測値特定部102は、予測用変数ストレージ106Aにおける目標の開度についての1~n+1番目の記憶領域に保持された目標の開度の情報のうちの1~n番目の目標の開度の情報と、予測用変数ストレージ106Aにおける実際の開度についての1~n+1番目の記憶領域に保持された実際の開度の情報のうちの1~n番目の目標の開度の情報とに基づいて、n+1番に保持された実際の開度の予測値を特定し、保管用ストレージ106Bに保持する。
【0066】
その後、ステップ34において、予測値特定部102がステップS33で特定した予測値と、これに対応する実測値である実際の開度との差分が算出される。つまり、ステップS33で特定した予測値と、予測用変数ストレージ106Aにおけるn+1番目の記憶領域に保持されている最新の実際の開度との差分が算出される。そして、この差分は、保管用ストレージ106Bに保持される。
【0067】
次いでステップS35において、予測用変数ストレージ106Aにおける目標の開度及び実際の開度についての1番目の記憶領域に保持された情報が排出され、その他の情報は現在の記憶領域から1つ繰り下げられた記憶領域に移動され、n+1番目の記憶領域が空けられる。
【0068】
その後、ステップS36において、予測値特定部102は、ステップS34で算出した差分が所定値以上か否かを判定する。そして、ステップS36で差分が所定値以上である場合(S36でYES)、ステップS37において、予測値特定部102は、ステップS33で特定した最新の実際の開度に対応する予測値を、これに対応する予測用変数ストレージ106Aにおける現在n番目の記憶領域に保持されている最新の実際の開度と置き換えて保持する。そして、ステップS37の処理の後は、処理がステップS31に戻り、次の目標の開度の情報及び実際の開度の情報が取得される。
【0069】
一方で、ステップ36で差分が所定値未満である場合には(S36でNO)、予測値特定部102は、ステップS33で特定した最新の実際の開度に対応する予測値を、これに対応する予測用変数ストレージ106Aにおける現在n番目の記憶領域に保持されている最新の実際の開度と置き換えない。すなわち、予測用変数ストレージ106Aには、実測値である実際の開度の情報が保持されままとされる。その後、処理がステップS31に戻り、次の目標の開度の情報及び実際の開度の情報が取得される。
【0070】
<状態検知動作>
以下では、図4を参照しつつ状態検知装置100の状態検知動作の一例を説明する。状態検知装置100の状態検知動作は、冷凍装置1の運転開始とともに開始し、上述した予測動作と並行して行われる。
【0071】
上述したように予測動作においては、予測値特定部102がステップS33で特定した予測値と、これに対応する実測値である実際の開度との差分が算出され、保管用ストレージ106Bに保持される(ステップS34)。状態検知動作では、まずステップS41において、状態検知装置100が、ステップS34で算出された差分が保管用ストレージ106Bに保持されたか否かを監視する。そして、差分の保持が確認されるまで監視が継続される。
【0072】
そして、差分が保管用ストレージ106Bに保持された場合、ステップS42において、状態検知装置100は、差分が正常であるか否かの判定をステップS36の判定で用いた所定値以上か否かにより行う。
【0073】
そして、ステップS42の判定において上記差分が所定値未満の場合(S42でYES)、ステップS43において、上記差分に、本動作例では一例として1を示すフラグ(正常を示すフラグ)が紐付けられ、保管用ストレージ106Bに上記差分とともに1を示すフラグが保持される。一方で、テップS42の判定において上記差分が所定値以上の場合には(S42でNO)、ステップS44において、上記差分に、本動作例では一例として0を示すフラグ(非正常を示すフラグ)が紐付けられ、保管用ストレージ106Bに上記差分とともに0を示すフラグが保持される。
【0074】
そして、ステップS43及びS44の処理の後のステップS45において、誤差評価部103は、予測値特定部102が所定時間内に行う複数回の予測において、予測値特定部102が特定した実際の開度の予測値と当該予測値に対応する実際の開度との差分が所定値未満(正常)となった回数の割合を特定する。誤差評価部103は、詳しくは、保管用ストレージ106Bに保持された所定数(例えば3600)の上記差分の情報における、上記所定値未満を示すフラグ「1」を紐付けられた差分の数の割合を特定する。これにより、予測値特定部102が所定時間内に行う複数回の予測において、予測値と実際の開度との差分が所定値未満となった回数の割合を特定できる。
【0075】
そして、ステップS46において、誤差評価部103は、ステップS45で特定した割合が、所定の割合以上か否か、言い換えると所定の割合未満か否かを判定する。そして、ステップS45で特定した割合が所定の割合以上であるときには(S46でYES)、異常が発生していないものとして、ステップS41からの処理を繰り返す。一方で、ステップS45で特定した割合が所定の割合未満であるときには(S46でNO)、異常が発生しているものとして、ステップS47で異常通知部104によりアラームを通知する。その後、ステップS41からの処理を繰り返す。
【0076】
なお、本実施の形態では、正常を示す状態(1のフラグ)の割合が所定の割合未満になったときに、異常が発生したと判定されるが、非正常を示す状態(0のフラグ)の割合が所定の割合以上になったときに、異常が発生したと判定されてもよい。
【0077】
<予測動作の一例>
以下、上述の予測動作のイメージを図を参照しつつ説明する。図5は、図3で説明した予測動作を概念的に示す図である。上述したように、予測値特定部102は、最新の実際の開度に対応する予測値と当該予測値に対応する実測値である最新の実際の開度との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する最新の実際の開度と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う。
【0078】
図5(A)、(B)に示されるグラフでは、横軸が時間を示し、縦軸が流量調節弁16の開度(%)を示している。図5(A)は、本実施の形態とは異なり、実際の開度のみを用いて予測値を特定した場合の予測動作を示している。一方で、図5(B)は、本実施の形態による予測動作を示すものであり、状況に応じて予測値を用いて、その後の予測値を特定した場合の予測動作を示している。図5(A)及び図5(B)では、基準である0時点から2時間後以降に異常が発生している。そして、図5(A)及び図5(B)では、目標の開度(MV)と実際の開度(PV)とは共通の値になるが、それぞれの予測値となる開度(P_PV)の状態は互いに異なる状態で遷移している。
【0079】
具体的には、本実施の形態とは異なる実測値のみを用いた予測値の特定が行われる場合には、図5(A)に示すように、予測値(P_PV)は、目標の開度(MV)とは大きく離れた値で遷移することがある。流量調節弁16が正常である場合、実際の開度(PV)と目標の開度(MV)とは近い値になる。したがって、図5(A)に示す2時間後以降に特定されている予測値は、正常な状態を示していない。本実施の形態では、予測値が正常な値として演算されることを予定されたものであり、これと実測値との乖離度合いが大きい場合に、異常を推定する。したがって、図5(A)において特定されている予測値は、異常の検知を判定するものとしては望ましくない。例えば、図5(A)では、異常が生じているにもかかわらず4時間後以降の予測値と実測値との差分ΔDが所定値Th未満と判定され、正常な状態と判定されるような状況が生じ得る。
【0080】
一方で、本実施の形態では、予測値が実測値と大きくずれる場合に、次の予測値の特定の際に実測値ではなく予測値を用いる。これにより、図6(B)に示すように、予測値(P_PV)は、目標の開度(MV)に近い値で遷移する。これにより、予測値が正常な状態を示す値に維持され、予測値と実測値との差分に基づく異常の推定を的確に行うことができる。
【0081】
<予測値特定部の生成手順>
次に、本実施の形態における予測値特定部102の生成手順の一例について説明しておく。上述したように予測値特定部102は学習済みモデルを用いる。この学習済みモデルは、複数の訓練用指令のうちの最新の訓練用指令値を除く複数の訓練用指令値と、複数の訓練用評価値のうちの最新の訓練用評価値を除く複数の訓練用評価値とを説明変数として、最新の訓練用評価値を正解ラベルとして機械学習を行い、上記訓練用指令値に対応する複数の変数及び上記訓練用評価値に対応する複数の変数に基づいて、次の訓練用評価値に対応する正常な値を予測するように構築されている。
【0082】
予測値特定部102は、上述の学習済みモデルをインストールするとともに、予測値と実測値との差分を所定値で評価し、評価に応じて実測値を予測値に置き換えて予測を行うアルゴリズムをさらに組み込まれる。ここで本実施の形態では、上記の設定値が学習済みモデルにおけるモデル精度と流量調節弁16の機械的な繰り返し精度とを考慮して定められている。
【0083】
詳しくは、上記の所定値を定める前に、学習済みモデルに正常な状態のテストデータセット(目標の開度及び実際の開度)を入力し、予測値と実際の開度との誤差を評価することにより、モデル精度として開度の誤差であるのMAE(平均絶対誤差)が特定される。また、正常な流量調節弁16に、同じ目標の開度の指令を複数回入力し、指令に対応する実際の開度と目標の開度との誤差を測定して、開度の繰り返し精度分布が特定される。そして、複数回の指令の入力による試行のうちの誤差が小さいものから数えて上位95%の試行における誤差の最大値を特定する。そして、MAEと、繰り返し精度分布における誤差が小さいものから数えて上位95%の試行における誤差の最大値とを加算した値を特定し、この値の0.9~1.1倍の範囲で、上記の所定値が定められている。このようにMAEと繰り返し精度とを考慮した値に基づき所定値を定めた場合には、異常の推定を的確に実施できる。
【0084】
ここで、図6(A)は学習済みモデルのモデル精度の分布の一例を示している。図6(A)の例では、107764回の予測を行い、目標の開度は、0~100(%)にわたり入力されている。図6(A)の例では、MAEが、0.83%として計算された。図6(B)は、正常な流量調節弁16の開度の繰り返し精度分布の一例を示している。図6(B)の例では、3000回の試行が行われている。そして、繰り返し精度分布における誤差が小さいものから数えて上位95%の試行における誤差の最大値は、0.2%であった。この場合、0.83+0.2に基づき、予測値と実測値との差分を評価するための上記所定値が、例えば1%に設定されてもよい。
【0085】
以上に説明した本実施の形態に係る状態検知装置100は、連続的に検出される及び/又は特定される具体的数値としての流量調節弁16の実際の開度及び目標の開度を取得する数値取得部101と、数値取得部101で取得された複数の実際の開度及び目標の開度に基づき、複数の実測値の次の実測値の予測値を特定する予測値特定部102と、を備える。そして、状態検知装置100は、数値取得部101で取得される実際の開度と、予測値特定部102が特定する実際の開度に対応する予測値とを基に状態を検知する。そして、予測値特定部102は、特定した実際の開度に対応する予測値と当該予測値に対応する実際の開度との差分が所定値以上である場合に、当該予測値を、これに対応する実際の開度と置き換えて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う。また、予測値特定部102は、特定した実際の開度に対応する予測値と当該予測値に対応する実際の開度との差分が所定値未満である場合には、当該予測値を、これに対応する実際の開度と置き換えず当該実際の開度を用いて、次の予測値及びその後の予測値の特定を行う。
【0086】
これにより、本実施の形態では、状態(異常)を判定するための予測値を的確に特定することが可能となり、状態を的確に検知できる。すなわち、本実施の形態では、予測値が実測値と大きくずれる場合に、次の予測値の特定の際に実測値ではなく予測値を用いる。これにより、予測値が正常な状態を示す値に維持され、予測値と実測値との差分に基づく異常の推定を的確に行うことができる。
【0087】
また、数値取得部101は、予測に使用する具体的数値として、流量調節弁16に連続的に入力される指令値としての目標の開度及び連続的に検出される流量調節弁16の動作状態の評価値としての実際の開度を取得する。そして、予測値特定部102は、最新の目標の開度を除く複数の目標の開度及び最新の実際の開度を除く複数の実際の開度に基づいて、予測値として、最新の実際の開度に対応する予測値を特定する。この場合、2つの変数としての目標の開度と実際の開度を使用するため、予測値の精度を向上できる。ただし、予測値特定部102は、例えば複数の実際の開度のみを用いて、言い換えると一種類の変数で実際の開度を予測してもよい。
【0088】
また、本実施の形態は、異常の判定を行うために予測値を特定するものであり、予測値に基づいて積極的に指令値を制御するものではない。この場合、上述のように予測値特定部102が、最新の目標の開度を除く複数の目標の開度及び最新の実際の開度を除く複数の実際の開度に基づいて、最新の実際の開度に対応する予測値を特定する構成を採用することにより、シンプルな情報の取り込みに基づき予測値を効率的に特定できる。すなわち、予測値の特定における演算速度を向上できるとともに、処理負荷を軽減できる。
【0089】
以上、本発明の一実施の形態を説明したが、本発明は以上に説明した実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態にはさらなる種々の変更を加えることができる。例えば上述の実施の形態では、状態検知装置100が冷凍装置1の流量調節弁16の状態検知に適用されたが、膨張弁13や、圧縮機11の状態検知に適用されてもよい。また、状態検知装置100は、チラー装置に設けられる弁に適用されてもよいし、その他の用途で用いられてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…冷凍装置、10…冷凍回路、12…凝縮器、15…冷却水流路、16…流量調節弁、16M…モータ、16S…開度検出部、17…コントローラ、100…状態検知装置、101…数値取得部、102…予測値特定部、103…誤差評価部、104…異常通知部、105…設定変更部、106…記憶部、106A…予測用変数ストレージ、106B…保管用ストレージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6