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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070052
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】飲料用缶および飲料用缶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/34 20060101AFI20240515BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20240515BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B65D25/34 B
B65D25/20 Q
B41J2/01 109
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180409
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】521469760
【氏名又は名称】アルテミラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 真一
(72)【発明者】
【氏名】松島 妃美
【テーマコード(参考)】
2C056
3E062
【Fターム(参考)】
2C056FB09
2C056HA44
3E062AA04
3E062AB02
3E062AC03
3E062DA09
3E062JC02
(57)【要約】
【課題】被覆層によって画像層の画像が不鮮明となることを抑制する。
【解決手段】飲料用缶10は、筒状に形成され且つ金属材料により形成された缶体11と、缶体11の外周面に設けられ、色材を含むインクにより形成された画像層20と、画像層20上に設けられ、画像層20を被覆し、可視光に対する透過性を有し、膜厚が画像層20の膜厚以下である被覆層30とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され且つ金属材料により形成された缶本体部と、
前記缶本体部の外周面に設けられ、色材を含むインクにより形成された画像層と、
前記画像層上に設けられ、当該画像層を被覆し、可視光に対する透過性を有し、膜厚が当該画像層の膜厚以下である被覆層と
を備える飲料用缶。
【請求項2】
前記画像層は、活性放射線の照射により硬化したインクにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の飲料用缶。
【請求項3】
前記被覆層の膜厚に対する前記画像層の膜厚の比率が、1.0以上2.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の飲料用缶。
【請求項4】
前記被覆層は、加熱により硬化した樹脂塗料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の飲料用缶。
【請求項5】
前記缶本体部は、一端に開口が形成されるとともに他端に底部が形成され、当該開口に向かうに従い外径が小さくなる縮径部と、当該縮径部よりも当該底部側に位置する缶胴部とを有し、
前記画像層および前記被覆層は、前記縮径部および前記缶胴部の外周面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の飲料用缶。
【請求項6】
筒状に形成され且つ金属材料により形成された筒状体の外周面に、色材を含むインクを用いて画像層を形成する画像層形成工程と、
前記画像層上に、当該画像層を被覆し、膜厚が当該画像層の膜厚以下の被覆層を形成する被覆層形成工程と
を含む飲料用缶の製造方法。
【請求項7】
前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記外周面に、インク吐出口を有するインクジェットヘッドを用いてインクを吐出して、前記画像層を形成することを特徴とする請求項6に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項8】
前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記外周面に、前記インクジェットヘッドを用いて活性放射線により硬化するインクを吐出した後、当該外周面に活性放射線を照射してインクを硬化させて、前記画像層を形成し、
前記被覆層形成工程は、インクが硬化した前記画像層上に樹脂塗料を塗布して、前記被覆層を形成することを特徴とする請求項7に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項9】
前記画像層形成工程および前記被覆層形成工程では、一端に開口を有し他端に底部を有する筒状体の外周面に、前記画像層および前記被覆層を形成し、
前記画像層および前記被覆層が形成された筒状体の前記一端に対し、前記開口に向かうに従い外径が小さくなる縮径部を形成する縮径部形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の飲料用缶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用缶および飲料用缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1には、筒状の金属材料により形成された缶本体部と、缶本体部の外周面にインクにより形成された画像層と、画像層上に形成され画像層を被覆する被覆層とを備える飲料用缶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-36072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
缶本体部の外周面にインクにより形成された画像層と、画像層上に画像層を被覆するように形成された被覆層とを備える飲料用缶では、例えば、画像層の膜厚に比べて被覆層の膜厚が厚いと、被覆層を介して視認される画像層の画像が不鮮明になる場合がある。
本発明は、被覆層によって画像層の画像が不鮮明となることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される飲料用缶は、筒状に形成され且つ金属材料により形成された缶本体部と、前記缶本体部の外周面に設けられ、色材を含むインクにより形成された画像層と、前記画像層上に設けられ、当該画像層を被覆し、可視光に対する透過性を有し、膜厚が当該画像層の膜厚以下である被覆層とを備える。
ここで、前記画像層は、活性放射線の照射により硬化したインクにより形成されていることを特徴とすることができる。
また、前記被覆層の膜厚に対する前記画像層の膜厚の比率が、1.0以上2.0以下であることを特徴とすることができる。
また、前記被覆層は、加熱により硬化した樹脂塗料により形成されていることを特徴とすることができる。
また、前記缶本体部は、一端に開口が形成されるとともに他端に底部が形成され、当該開口に向かうに従い外径が小さくなる縮径部と、当該縮径部よりも当該底部側に位置する缶胴部とを有し、前記画像層および前記被覆層は、前記縮径部および前記缶胴部の外周面に形成されていることを特徴とすることができる。
【0006】
他の観点から捉えると、本発明が適用される飲料用缶の製造方法は、筒状に形成され且つ金属材料により形成された筒状体の外周面に、色材を含むインクを用いて画像層を形成する画像層形成工程と、前記画像層上に、当該画像層を被覆し、膜厚が当該画像層の膜厚以下の被覆層を形成する被覆層形成工程とを含む。
ここで、前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記外周面に、インク吐出口を有するインクジェットヘッドを用いてインクを吐出して、前記画像層を形成することを特徴とすることができる。
また、前記画像層形成工程は、前記筒状体の前記外周面に、前記インクジェットヘッドを用いて活性放射線により硬化するインクを吐出した後、当該外周面に活性放射線を照射してインクを硬化させて、前記画像層を形成し、前記被覆層形成工程は、インクが硬化した前記画像層上に樹脂塗料を塗布して、前記被覆層を形成することを特徴とすることができる。
また、前記画像層形成工程および前記被覆層形成工程では、一端に開口を有し他端に底部を有する筒状体の外周面に、前記画像層および前記被覆層を形成し、前記画像層および前記被覆層が形成された筒状体の前記一端に対し、前記開口に向かうに従い外径が小さくなる縮径部を形成する縮径部形成工程をさらに備えることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被覆層によって画像層の画像が不鮮明となることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態が適用される飲料用缶の構成の一例を示した図である。
図2】飲料用缶の断面図を示す図である。
図3】本実施形態が適用される飲料用缶の製造方法の一例を示した図である。
図4】画像層および被覆層を形成する印刷システム一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態が適用される飲料用缶10の構成の一例を示した図である。図1は、飲料用缶10の正面図である。以下の説明では、図1の飲料用缶10における上方を、飲料用缶10の一端、図1の飲料用缶10における下方を、飲料用缶10の他端と表記する場合がある。また、一端と他端とを結ぶ方向を、飲料用缶10の軸方向と表記する場合がある。
【0010】
本実施形態の飲料用缶10は、缶本体部の一例としての缶体11を備えている。缶体11は、一端に円形の開口部12を有する。また、缶体11は、他端が円形の底部13により塞がれている。さらに、缶体11には、縮径部(ネック部)14と、缶胴部15とが設けられている。
缶体11は、金属製であり、金属材料により形成される。具体的には、缶体11は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等により形成される。
【0011】
縮径部14は、缶体11の開口部12側に位置している。付言すると、縮径部14は、缶体11の一端側に設けられている。縮径部14は、開口部12に近づくに従い外径が次第に小さくなるように形成されている。
【0012】
缶胴部15は、円筒状に形成され、縮径部14よりも底部13側に位置している。ここで、缶胴部15とは、飲料用缶10の軸方向における長さが縮径部14よりも大きく、且つ、縮径していないかあるいは縮径割合が縮径部14における縮径割合よりも小さい部分を指す。なお、縮径とは、缶体11の外径を縮めることを意味する。缶体11に施す縮径処理については、後段にて詳細に説明する。
本実施形態の缶胴部15は、接続箇所19にて、縮径部14に連続している。また、缶胴部15は、縮径部14に接続されている箇所の外径(接続箇所19における外径)と、底部13側における外径とが略等しくなるように形成されている。すなわち、本実施形態の缶胴部15は、飲料用缶10の軸方向において、外形が略一定となっている。なお、本実施形態は、缶胴部15の縮径を排除するものではなく、缶胴部15は、縮径部14の縮径割合よりも小さい縮径割合で縮径させてもよい。
【0013】
本実施形態では、缶体11の一端に形成された開口部12を通じて、飲料用缶10の内部に飲料が充填される。
その後、この開口部12は、不図示の缶蓋により塞がれる。これにより、飲料が充填された飲料缶が完成する。
【0014】
充填される飲料としては、例えば、ビール等のアルコール系飲料や、清涼飲料等の非アルコール系飲料が挙げられる。
ここで、本実施形態において、飲料用缶10とは、飲料が充填される前の空缶をいい、飲料缶とは、内容物である飲料が充填された後の缶をいう。
【0015】
図2は、飲料用缶10の断面図を示す図であり、図1の飲料用缶10におけるIIで示す部分の断面構造を示している。
本実施形態の飲料用缶10には、図2に示すように、縮径部14の外周面141上、および、缶胴部15の外周面151上に、画像層20が設けられている。さらに、飲料用缶10には、画像層20の上に、画像層20を被覆する被覆層30が設けられている。画像層20および被覆層30は、縮径部14の外周面141と、缶胴部15の外周面151とに跨って、連続して形成されている。
【0016】
なお、図示は省略するが、飲料用缶10には、縮径部14の外周面141および缶胴部15の外周面151と、画像層20との間に、有色(例えば白色)の下地層が設けられていてもよい。有色の下地層を設けることで、有色の下地層によって缶体11の金属の地の影響が小さくなり、画像層20による画像の発色性が向上する。また、缶体11の金属の色を生かした画像を形成する場合には、縮径部14の外周面141および缶胴部15の外周面151と、画像層20との間に、無色の下地層が設けられていてもよい。
また、本実施形態では、飲料用缶10の缶体11において、縮径部14の外周面141および缶胴部15の外周面151の双方に画像層20および被覆層30を形成している。しかしながら、例えば、画像層20および被覆層30を、縮径部14の外周面141には設けずに缶胴部15の外周面151のみに設けてもよい。
【0017】
画像層20は、インクによって形成された画像である。ここで、「画像を形成する」とは、単なる着色なども含む概念であり、縮径部14の外周面141や、缶胴部15の外周面151に対して、インクを載せることをいう。ここで、画像(画像層20)を形成するにあたっては、縮径部14の外周面141や、缶胴部15の外周面151の全域にインクを付着させてもよく、縮径部14の外周面141や、缶胴部15の外周面151の一部にインクを付着させてもよい。
【0018】
本実施形態の画像層20は、活性放射線の照射により硬化するインクにより形成されている。活性放射線とは、インクに含まれる重合性の樹脂等に作用してインクを硬化させることが可能な放射線を意味し、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等である。画像層20の形成に用いるインクとしては、例えば、活性放射線の一例である紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクが挙げられる。
また、本実施形態の画像層20は、インクジェット印刷方式を用いて形成されている。
【0019】
被覆層30は、画像層20を被覆することで画像層20を保護する。被覆層30は、可視光に対する透過性を有し、被覆層30を介して画像層20による画像が飲料用缶10の外側から視認できるようになっている。
被覆層30は、熱硬化型の樹脂塗料により形成されている。また、被覆層30は、コーター等を用いて樹脂塗料を塗布する方法により形成されている。
【0020】
続いて、画像層20を形成するインクについて説明する。本実施形態の画像層20は、活性放射線の照射により硬化するインク、より好ましくは紫外線硬化型インクにより形成されている。
紫外線硬化型インクは、紫外線重合性のビヒクル成分、重合開始剤および着色剤を含み、さらに必要に応じて樹脂粒子、有機溶剤およびその他の添加剤等を含む。
【0021】
紫外線重合性のビヒクル成分としては、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。
このような化合物としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、不飽和アクリル系樹脂、不飽和ウレタン系樹脂、不飽和エポキシ系樹脂、不飽和ポリアミド系樹脂、あるいはこれらの樹脂とエチレン系不飽和基を有する反応性希釈剤との混合物等が挙げられる。これらの中でも、耐候性、密着性等に優れたアクリルウレタンオリゴマーを用いることが好ましい。
【0022】
重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、α-アミノケトン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0023】
着色剤としては、例えば染料や顔料等が挙げられるが、耐候性の観点から、顔料を用いることが好ましい。また、着色剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
画像層20を形成する紫外線硬化型のインクにおける着色剤の含有量は、例えば、インクの全質量中、8質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0024】
着色剤として顔料を用いる場合、顔料としては、無機顔料または有機顔料を使用することができる。顔料は、1種を単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が挙げられる。
【0025】
また、着色剤として顔料を用いる場合、インクジェットヘッドにおけるインクの吐出安定性の観点から、インク中に存在する顔料粒子の体積平均粒子径が0.05μm以上0.4μm以下の範囲であり、且つ体積最大粒子径が0.2μm以上1μm以下の範囲であることが好ましい。顔料粒子の体積平均粒子径が0.4μmより大きいか、または体積最大粒子径が1μmよりも大きい場合、インク組成物を安定して吐出することが困難となる傾向がある。なお、顔料粒子の体積平均粒子径および体積最大粒子径は、動的光散乱法を用いた測定機器によって測定できる。
【0026】
樹脂粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂粒子は、インク中での分散性を良くするために、必要に応じて、シランカップリング剤で表面改質されたものが用いられる。
【0027】
有機溶剤は、インクの粘度を調整するために使用される。有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、セロソルブ、ブチルセルソルブ等のエーテル類等が挙げられる。
【0028】
本実施形態では、画像層20を形成する紫外線硬化型のインクの30℃における粘度が、2mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上20mPa・s以下であることがより好ましい。付言すると、本実施形態では、このような範囲となるように、有機溶剤等によってインクの粘度が調整される。
インクの30℃における粘度をこのような範囲とすることで、インクジェットヘッドにより紫外線硬化型インクを吐出する際に、良好な吐出安定性を実現することができる。紫外線硬化型インクの粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて測定することができる。
【0029】
続いて、被覆層30を形成する樹脂塗料について説明する。本実施形態の被覆層30は、熱硬化型の樹脂塗料により形成されている。
熱硬化型の樹脂塗料としては、特に限定されないが、例えば、アルキル樹脂系、アクリル樹脂系、ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、アミノ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系の塗料が挙げられる。これらの中でも、被覆層30の塗膜硬度および耐水性の観点から、アミノ樹脂系の塗料を用いることが最も好ましい。
【0030】
続いて、画像層20および被覆層30の膜厚について説明する。
本実施形態の飲料用缶10では、図2に示すように、画像層20の膜厚D1は、被覆層30の膜厚D2以下となっている(D1≧D2)。言い換えると、本実施形態の飲料用缶10では、画像層20の膜厚D1が、被覆層30の膜厚D2と等しいか、被覆層の膜厚D2と比べて厚い。
飲料用缶10では、縮径部14の外周面141および缶胴部15の外周面151のうち、少なくとも缶胴部15の外周面151において、画像層20の膜厚D1と比べて、被覆層30の膜厚D2が厚くなければよい。なお、この例では、缶胴部15の外周面151と同様に、縮径部14の外周面141においても、画像層20の膜厚D1と比べて被覆層30の膜厚D2が薄くなっている。
【0031】
画像層20の膜厚D1とは、缶体11の外周面(縮径部14の外周面141または缶胴部15の外周面151)に垂直な方向(法線方向)における画像層20の厚さを意味する。
ここで、画像層20は、画像層20による画像のデザインや画像層20を形成する際の印刷条件等によって、厚さにばらつきが生じる場合がある。画像層20の厚さにばらつきが存在する場合、画像層20の膜厚D1とは、画像層20のうち最も厚い部分の膜厚を意味する。付言すると、本実施形態では、画像層20のうち最も厚い部分の膜厚D1が、被覆層30の膜厚D2以上であればよい。
また、画像層20が、発泡性のインクにより形成される場合等のように、画像層20の内部に空気層が含まれることがある。このような場合、画像層20の膜厚D1とは、画像層20から空気層を除いたインク部分のみの厚さを意味する。
【0032】
被覆層30の膜厚D2とは、画像層20の膜厚D1と同様に、缶体11の外周面(縮径部14の外周面141または缶胴部15の外周面151)に垂直な方向(法線方向)における被覆層30の厚さを意味する。
上述したように、被覆層30は、樹脂塗料をコーター等により塗布することで形成される。詳細については後述するが、被覆層30を形成する際には、例えば、樹脂塗料を保持するローラー等の接触部材を缶体11のもととなる筒状体40(後述する図3参照)の外周面41(図3参照)に周方向に接触させることで、樹脂塗料を塗布する。この際、樹脂塗料の塗布を始める位置と、樹脂塗料の塗布を終了する位置とが周方向に重なるように、外周面41に接触部材を接触させる場合がある。このため、被覆層30には、外周面41に対し接触部材が1度だけ接触し1層の樹脂塗料が塗布された領域と、接触部材が2度接触し2層の樹脂塗料が重ねて塗布された領域とが存在する場合がある。このような場合において、被覆層30の膜厚D2とは、1層の樹脂塗料が塗布された領域の厚さを意味する。
同様に、外周面41の全面に被覆層30を重ねて形成する場合、被覆層30には、外周面41に対し接触部材が2度接触し2層の樹脂塗料が重ねて塗布された領域と、接触部材が3度接触し3層の樹脂塗料が重ねて塗布された領域とが存在する場合がある。このような場合において、被覆層30の膜厚D2とは、2層の樹脂塗料が塗布された領域の厚さを意味する。
【0033】
なお、樹脂塗料をコーター等により塗布することで形成される被覆層30は、画像層20とは異なり、厚さにばらつきは生じにくい。しかしながら、被覆層30の厚さにばらつきが存在する場合、被覆層30の膜厚D2とは、被覆層30のうち最も薄い部分の膜厚を意味する。付言すると、本実施形態では、被覆層30のうち最も薄い部分の膜厚D2が、画像層20の膜厚D1と比べて厚くなければよい。
【0034】
画像層20の膜厚D1および被覆層30の膜厚D2は、例えば飲料用缶10を切断し、その切断面を観察して測定することができる。また、画像層20の膜厚D1および被覆層30の膜厚D2は、分光エリプソメーター等の測定装置を用いて測定してもよい。
【0035】
上述したように、被覆層30は、可視光に対する透過性を有している。しかしながら、被覆層30の膜厚D2が厚いと、被覆層30の可視光に対する透過性が低下し、被覆層30が着色して見える場合がある。この場合、被覆層30を介して画像層20の画像が視認しにくくなったり、画像層20の本来の色とは異なる色に見えたりする場合がある。
これに対し、本実施形態では、被覆層30の膜厚D2が画像層20の膜厚D1以下であることで、被覆層30の膜厚D2が画像層20の膜厚D1よりも厚い場合と比べて、被覆層30の可視光に対する透過性の低下が抑制される。これにより、被覆層30を介して画像層20の画像が視認しにくくなったり、画像層20の本来の色とは異なる色に見えたりすることが抑制される。
【0036】
また、画像層20を、インクジェット印刷方式によりインクを塗布して形成する場合、画像層20の膜厚D1が薄いと、画像層20により形成される画像の色が薄くなる場合がある。
具体的に説明すると、画像層20の形成に用いる紫外線硬化型インクは、紫外線重合性のビヒクル成分、重合開始剤および着色剤を含み、さらに必要に応じて樹脂粒子、有機溶剤およびその他の添加剤等を含む。また、インクジェット印刷方式では、インクの流れ性を高くしてインクジェットヘッドの詰まりを抑制する観点から、版を用いた印刷方式と比べてインクの粘度を低くすることが好ましい。そして、画像層20をインクジェット印刷方式により形成する場合、インクの粘度を下げる観点から、版を用いた印刷方式と比べて、インクにおける着色剤の含有量が低い場合がある。この場合、画像層20の膜厚D1が薄いと、画像層20の単位面積あたりに含まれる着色剤の量が少ないため、画像層20により形成される画像の色が薄くなりやすい。
【0037】
これに対し、本実施形態では、画像層20の膜厚D1が被覆層30の膜厚D2以上であることで、画像層20の膜厚D1が被覆層30の膜厚D2よりも薄い場合と比べて、画像層20の単位面積当たりに含まれる着色剤の量が多くなる。これにより、画像層20により形成される画像の色が薄くなることが抑制される。
【0038】
また、画像層20の膜厚D1が被覆層30の膜厚D2以上である場合、画像層20を構成する各色のインクを塗布する比率や各色のインク同士の重なり等を調整することにより、画像層20の画像を高精細に表現しやすくなる。例えば、画像層20において、色の濃淡、明暗、色彩等が段階的に変化する所謂グラデーションの画像を高精細に表現しやすくなる。この結果、飲料用缶10の美感が向上する。
【0039】
さらにまた、飲料用缶10の製造工程では、被覆層30の膜厚D2が画像層20の膜厚D1より厚い場合、缶体11のもととなる筒状体40にネック加工を施して縮径部14を形成する際に、縮径部14にしわが生じやすくなる。具体的に説明すると、被覆層30の膜厚D2が厚いと、画像層20上に塗布された樹脂塗料を加熱して被覆層30を形成する際に、被覆層30の収縮力が大きくなりやすい。この場合、被覆層30の収縮に伴って画像層20が被覆層30に引っ張られる力が、画像層20と筒状体40の外周面41との密着力を超えてしまい、画像層20が筒状体40の外周面41から剥離する場合がある。そして、この筒状体40に対してネック加工を施すと、縮径部14に、画像層20および被覆層30が縮径部14の外周面141から剥離して弛んだしわが発生する場合がある。
これに対し、本実施形態では、被覆層30の膜厚D2が画像層20の膜厚D1以下であることで、樹脂塗料を加熱して被覆層30を形成する際に、被覆層30の収縮力が過度に大きくなることが抑制される。これにより、画像層20が筒状体40の外周面41から剥離しにくくなり、筒状体40に対してネック加工を施して縮径部14を形成する際に、縮径部14にしわが生じることが抑制される。
なお、飲料用缶10の製造工程については、後段にて詳細に説明する。
【0040】
被覆層30の膜厚D2に対する画像層20の膜厚D1の比率(D1/D2)は、1.0以上2.0以下であることが好ましく、1.2以上1.75以下であることがより好ましい。
被覆層30の膜厚D2に対する画像層20の膜厚D1の比率(D1/D2)が1.0未満である場合、すなわち、画像層20の膜厚D1が上記範囲よりも薄い場合、画像層20により形成される画像の色が薄くなりやすい。また、被覆層30の膜厚D2に対する画像層20の膜厚D1の比率(D1/D2)が1.0未満である場合、すなわち、被覆層30の膜厚D2が上記範囲よりも厚い場合、被覆層30の可視光に対する透過性が低下して、被覆層30を介した画像層20の視認性が低下しやすい。さらには、被覆層30を形成する際に被覆層30の収縮力が大きくなって、筒状体40に対してネック加工を施して縮径部14を形成する際に、縮径部14にしわが生じやすくなる。
【0041】
一方、被覆層30の膜厚D2に対する画像層20の膜厚D1の比率(D1/D2)が2.0を超える場合、すなわち、被覆層30の膜厚D2が上記範囲よりも薄い場合、被覆層30を設けることによる飲料用缶10の表面の艶が不十分となる場合がある。また、筒状体40に対してネック加工を施して縮径部14を形成する際に、加工に用いるネック成形金型が傷つく場合がある。
【0042】
画像層20の膜厚D1は、被覆層30の膜厚D2以上であり、且つ、1μm以上20μm以下の範囲から選択することができ、3μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。
また、被覆層30の膜厚D2は、画像層20の膜厚D1以下であり、且つ、1μm以上20μm以下の範囲から選択することができ、1μm以上8μm以下の範囲であることが好ましい。
【0043】
ここで、詳細については後述するが、本実施形態の飲料用缶10の製造工程では、缶体11のもととなる筒状体40の外周面に画像層20および被覆層30を形成した後、筒状体40にネック加工を施して縮径部14を形成する。縮径部14では、ネック加工に伴って、画像層20および被覆層30が径方向に縮められることで、画像層20および被覆層30の膜厚が増加する場合がある。このため、縮径部14に形成された画像層20および被覆層30は、缶胴部15に形成された画像層20および被覆層30と比べて膜厚が厚くなる場合がある。なお、縮径部14では、ネック加工に伴って、画像層20と被覆層30とで、同じ比率で膜厚が厚くなる。したがって、縮径部14と缶胴部15とでは、画像層20の膜厚D1と被覆層30の膜厚D2との大小関係(D1≧D2)、および被覆層30の膜厚D2に対する画像層20の膜厚D1の比率(D1/D2)は、互いに等しい。
【0044】
続いて、本実施形態の飲料用缶10の製造方法について説明する。
図3は、本実施形態が適用される飲料用缶10の製造方法(製造工程)の一例を示した図である。
飲料用缶10の製造に当たっては、まず、金属板(例えば、アルミニウム板)に対し、潤滑油を塗布した後、カッピングプレスによって打ち抜き加工、絞り加工を行い、カップを成形する(カップ成形)。
そして、ボディメーカーによって、このカップに対して、絞り、しごき(Drawing and Ironing)加工が行われ(DI成形)、さらに、パンチが底部成形金型に突き当てられる。これにより、下部にドーム形状を有するDI缶が形成される。
その後、DI缶の上端部を切り揃えるトリミング加工がトリマによって行われる(トリミング)。
【0045】
次いで、トリミング加工が施されたDI缶に残存している潤滑油をウォッシャによって洗い落とす(脱脂洗浄)。次いで、その後の印刷で用いるインクや塗料の密着性を高めるための化成処理が施される(化成処理)。
これらの処理により、開口42を一端に有し、他端に底部43を有する有底円筒状の筒状体40であって、飲料用缶10の缶体11となる筒状体40が形成される。筒状体40は、缶本体部の一例である。
【0046】
次いで、筒状体40の外周面41に対して、インクジェット印刷方式によりインクを塗布し硬化することで、画像層20が形成される(画像層形成工程)。
次いで、筒状体40の外周面41に形成された画像層20上に、コーターを用いて樹脂塗料を塗布し硬化することで、被覆層30が形成される(被覆層形成工程)。
なお、画像層形成工程および被覆層形成工程は、画像層20の膜厚D1が被覆層30の膜厚D2以上になるように(D1≧D2)、画像層20を形成するインク、および被覆層30を形成する樹脂塗料が塗布される。画像層形成工程および被覆層形成工程については、後段にて詳細に説明する。
【0047】
次いで、飲料用缶10に充填する内容物である飲料を安定的に保つための樹脂塗料が筒状体40の内周面に塗布される(内面塗装)。
その後、筒状体40に対して、筒状体40の上部に、ネック成形金型に押しつけられながら口絞りするネック加工が、ネッカフランジャによって施される(ネック加工)。本実施形態では、このネック加工により、筒状体40の一端側の縮径が行われ、缶体11の縮径部14(図1参照)が形成される。上述したように、本実施形態では、画像層20の膜厚D1が被覆層30の膜厚D2以上になるように、画像層20および被覆層30が形成されている。これにより、筒状体40に対してネック加工を施して縮径部14を形成する際に、縮径部14にしわが生じることが抑制される。
【0048】
その後、縮径部14の一端側に対してスピニング加工が施され、開口部12の縁に近づくに従い径が次第に大きくなるフランジ部(不図示)が形成される(フランジ加工)。以上により、図1に示した飲料用缶10が得られる。
【0049】
本実施形態では、この飲料用缶10が、飲料メーカ等に出荷される。そして、飲料メーカ等では、この飲料用缶10の内部に内容物である飲料が充填される。
次いで、飲料が充填された飲料用缶10の開口部12に対して缶蓋が取り付けられ、飲料缶が得られる。
【0050】
図4は、画像層20および被覆層30を形成する印刷システム100の一例を示した図である。本実施形態では、この印刷システム100により、画像層形成工程における画像層20の形成、および被覆層形成工程における被覆層30の形成を行う。
印刷システム100は、筒状体40に対しての印刷を行う印刷装置200と、印刷装置200にて筒状体40に塗布された樹脂塗料を硬化させる加熱装置300とを備えている。
【0051】
印刷装置200には、筒状体40が供給される缶体供給部510が設けられている。この缶体供給部510では、筒状体40を支持する支持部材560に対する筒状体40の取り付けが行われる。
具体的には、支持部材560は円筒状に形成され、円筒状の筒状体40に対してこの支持部材560が挿入されることで、支持部材560に対する筒状体40の取り付けが行われる。
【0052】
印刷装置200には、筒状体40を支持しながら移動する複数の移動ユニット550が設けられている。
本実施形態では、この移動ユニット550に、筒状体40を支持する上記の支持部材560が取り付けられ、筒状体40は、この移動ユニット550とともに移動する。
【0053】
缶体供給部510の下流側には、印刷部700が設けられている。
印刷部700は、インクジェット印刷方式を用い、上流側から移動してきた筒状体40の外周面41にインクを塗布する。本実施形態では、印刷部700は、筒状体40の外周面41に、活性放射線の照射により硬化するインク、より具体的には、紫外線硬化型インクを塗布する。
また、本実施形態では、インクを硬化することにより形成される画像層20(図2参照)の膜厚D1(図2参照)が、後述する塗料塗布部770よって塗布された樹脂塗料により形成される被覆層30(図2参照)の膜厚D2(図2参照)以上になるように、筒状体40の外周面41にインクを塗布する。
【0054】
インクジェット印刷方式による画像形成とは、インクジェットヘッドからインクを吐出させて、筒状体40にこのインクを付着させることにより行う印刷を指す。
より具体的には、インクジェットヘッドには、インクを吐出する吐出口が複数設けられ、インクジェット印刷方式による画像形成では、この複数の吐出口からインクを吐出することにより印刷を行う。
インクジェット印刷方式による画像形成では、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、ピエゾ方式、サーマル(バブル)方式、コンティニュアス方式等を用いることができる。
【0055】
本実施形態の印刷部700には、図中左右方向に並んで配置された複数のインクジェットヘッド71が設けられている。具体的には、印刷部700には、シアンのインクを吐出する第1インクジェットヘッド711、マゼンタのインクを吐出する第2インクジェットヘッド712、イエローのインクを吐出する第3インクジェットヘッド713、黒のインクを吐出する第4インクジェットヘッド714が設けられている。
以下の説明において、第1インクジェットヘッド711~第4インクジェットヘッド714を互いに区別しない場合には、単に、「インクジェットヘッド71」と表記する。
【0056】
ここで、第1インクジェットヘッド711~第4インクジェットヘッド714の4つのインクジェットヘッド71は、紫外線硬化型のインクを用いて、筒状体40の外周面41に画像を形成する。
また、本実施形態では、筒状体40は寝た状態(筒状体40の軸方向が水平となる状態)で移動し、筒状体40の外周面41の一部が鉛直方向における上方を向く。本実施形態のインクジェットヘッド71は、この外周面41の上方から、下方に向けてインクを吐出し、外周面41へインクを塗布する。
【0057】
さらに、本実施形態では、この4つのインクジェットヘッド71は、筒状体40の移動方向に並んだ状態で配置されている。また、4つのインクジェットヘッド71の各々は、筒状体40の移動方向と直交(交差)する方向に沿うように配置されている。
本実施形態では、この4つのインクジェットヘッド71の下方を筒状体40が通過していく過程で、筒状体40の外周面41に対して上方からインクが吐出される。これにより、筒状体40の外周面41に、インクが塗布され画像が形成される。
【0058】
より具体的には、本実施形態では、移動ユニット550が、複数設けられたインクジェットヘッド71の各々の設置個所にて停止する。そして、各インクジェットヘッド71によりインクの吐出が行われている間、移動ユニット550の各々に設けられたモータ等の駆動源によって、筒状体40が周方向に回転する。これにより、筒状体40の外周面41に対して周方向に亘ってインクが塗布され、外周面41に画像が形成される。
【0059】
印刷部700の下流側には、光照射部750が設けられている。
光照射部750は、光源を備え、印刷部700による画像形成が行われた後の筒状体40に光を照射する。本実施形態の光照射部750は、筒状体40に紫外線を照射する。これにより、筒状体40の外周面41に付着したインクが硬化し、画像層20が形成される。
【0060】
光照射部750の下流側には、塗料塗布部770が設けられている。
塗料塗布部770は、上流側から移動してきた筒状体40の外周面41に、画像層20を被覆する被覆層30を形成する樹脂塗料を塗布する。本実施形態では、塗料塗布部770は、加熱により硬化する熱硬化型の樹脂塗料を塗布する。
塗料塗布部770は、円筒または円柱状に形成され、筒状体40の外周面41に接触する接触部材771を備えている。
接触部材771は、接触部材771の対向位置に筒状体40が供給された後に、この筒状体40に向かって移動し、外周面41に接触する。
【0061】
また、塗料塗布部770は、樹脂塗料を収容する塗料収容部772を備えている。さらに、塗料塗布部770は、塗料収容部772内の樹脂塗料を接触部材771に供給する供給部材773を備えている。
塗料塗布部770では、筒状体40が周方向に回転する。また、接触部材771の外周面には、供給部材773によって樹脂塗料が供給されている。
【0062】
これにより、塗料塗布部770は、筒状体40の外周面41の全域に樹脂塗料を塗布する。
本実施形態では、樹脂塗料を硬化することにより形成される被覆層30の膜厚D2が、印刷部700および光照射部750により形成された画像層20の膜厚D1以下になるように、筒状体40の外周面41に樹脂塗料を塗布する。
【0063】
塗料塗布部770の下流側には、支持部材560からの筒状体40の取り外しが行われる取り外し部780が設けられている。
本実施形態では、この取り外し部780にて、支持部材560からの筒状体40の取り外しが行われ、印刷装置200の外部に排出される。
【0064】
印刷装置200から排出された筒状体40は、加熱装置300に搬送される。
加熱照射装置300では、筒状体40に対して熱風が吹き付けられる。これにより、筒状体40の外周面41に塗布された熱硬化型の樹脂塗料が加熱されて硬化し、被覆層30が形成される。ここで、上述したように、本実施形態では、被覆層30の膜厚D2が画像層20の膜厚D1以下となるように、画像層20上に樹脂塗料を塗布している。これにより、樹脂塗料を加熱して被覆層30を形成する際に、被覆層30の収縮力が過度に大きくなることが抑制され、被覆層30の収縮に伴って画像層20が筒状体40の外周面41から剥離することが抑制される。
【0065】
以上により、外周面41に画像層20および被覆層30が形成された筒状体40が得られる。
この後、上述したように、画像層20および被覆層30が形成された筒状体40に対し、ネック加工およびフランジ加工を施すことで、縮径部14(図1参照)および缶胴部15(図1参照)を有する缶体11(図1参照)の外周面に画像層20および被覆層30が形成された、図1の飲料用缶10が得られる。
【0066】
ここで、本実施形態の飲料用缶10の製造方法においては、筒状体40の外周面41に塗布されたインクを硬化して画像層20を形成した後、硬化したインク(画像層20)上に、被覆層30を形成する樹脂塗料を塗布している。
例えば、画像層20を形成するインクを硬化させる前に、インク上に被覆層30を形成する樹脂塗料を塗布する場合、樹脂塗料の一部がインクに吸収される場合がある。すると、被覆層30の厚さが薄くなって、缶体11に被覆層30を設けることにより飲料用缶10の艶がなくなってしまう場合がある。特に、本実施形態のように、被覆層30の膜厚D2が画像層20の膜厚D1以下である場合、画像層20を形成するインクに樹脂塗料が吸収されることに伴って、被覆層30による艶が失われやすい。
これに対し、本実施形態では、画像層20を形成するインクを硬化した後に、硬化したインク(画像層20)上に、被覆層30を形成する樹脂塗料を塗布することで、画像層20を形成するインクに樹脂塗料が吸収されることが抑制される。この結果、飲料用缶10において、被覆層30による艶が失われにくくなる。
【0067】
なお、本実施形態において、インクを硬化するとは、インクを完全に硬化させる場合(インクの硬化度を100%とする場合)に限らず、少なくともインクの硬化度が70%以上であればよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限りにおいては様々な変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0069】
10…飲料用缶、11…缶体、12…開口部、13…底部、14…縮径部、15…缶胴部、20…画像層、30…被覆層、40…筒状体、100…印刷システム、200…印刷装置、300…遠赤外線照射装置
図1
図2
図3
図4