(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070066
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】解体建築材の処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/30 20220101AFI20240515BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20240515BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20240515BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B09B3/30 ZAB
B09B3/70
C09D201/02
C23C26/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180435
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】507142395
【氏名又は名称】株式会社ブリッジス
(71)【出願人】
【識別番号】522440773
【氏名又は名称】株式会社島村商会
(71)【出願人】
【識別番号】522440577
【氏名又は名称】株式会社MIRAIサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 智久
(72)【発明者】
【氏名】アパル パタル
(72)【発明者】
【氏名】森下 功
(72)【発明者】
【氏名】黒田 則夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博之
【テーマコード(参考)】
4D004
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4D004AA06
4D004AB06
4D004CA01
4D004CA34
4D004CC15
4J038GA01
4J038NA01
4J038NA12
4J038PC02
4J038PC04
4K044AA02
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC00
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】塗膜に破損が生じても有害物質による環境などへの汚染を抑制する
【解決手段】有害物質が付着した解体建築材の処理方法は、負圧の保持した第1所定空間内で前記解体建築材に対してブラスト処理を施すブラスト処理工程と、負圧を保持した第2所定空間内で前記ブラスト処理を施した前記解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布する塗料塗布工程と、を有する。解体建築材に対してブラスト処理を施すことにより、処理後の解体建築材の表面の有害物質の濃度を極めて低くすることができから、解体建築材に塗布した樹脂系塗料の塗膜に破損が生じても有害物質による環境などへの汚染を抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質が付着した解体建築材の処理方法であって、
負圧に調整した第1所定空間内で前記解体建築材に対してブラスト処理を施すブラスト処理工程と、
負圧に調整した第2所定空間内で前記ブラスト処理を施した前記解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布する塗料塗布工程と、
とを有することを特徴とする解体建築材の処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の解体建築材の処理方法であって、
前記ブラスト工程と前記塗料塗布工程との間に前記第2所定空間内で前記ブラスト処理を施した前記解体建築材の表面を洗浄する洗浄工程、
を有する解体建築材の処理方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の解体建築材の処理方法であって、
前記有害物質は、ポリ塩化ビフェニルであり、
前記樹脂系塗料は、水系ビニル樹脂塗料である、
解体建築材の処理方法。
【請求項4】
請求項3記載の解体建築材の処理方法であって、
前記解体建築材は、鋼材であり、
前記樹脂系塗料を塗布した前記解体建築材を溶融する溶融工程、
を有する解体建築材の処理方法。
【請求項5】
請求項4記載の解体建築材の処理方法であって、
前記ブラスト処理は、研削材としてスチールグリットを用いた循環式ブラスト工法を用いる処理である、
解体建築材の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解体建築材の処理方法に関し、詳しくは、有害物質が付着した解体建築材の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の解体建築材の処理方法としては、PCB汚染物の表面に2層以上の積層構造を有する塗膜を形成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この処理方法では、PCB汚染物に接する第1層を、塗布部材を汚染物表面に接触させる塗布方法で形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の処理方法では、解体建築材の表面に高濃度に有害物質が付着していると、塗膜に破損が生じたときには有害物質による環境などへの汚染が生じる場合がある。このことは3層以上の積層構造としても同様である。
【0005】
本発明の解体建築材の処理方法は、塗膜に破損が生じても有害物質による環境などへの汚染を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解体建築材の処理方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の解体建築材の処理方法は、
有害物質が付着した解体建築材の処理方法であって、
負圧に調整した第1所定空間内で前記解体建築材に対してブラスト処理を施すブラスト処理工程と、
負圧に調整した第2所定空間内で前記ブラスト処理を施した前記解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布する塗料塗布工程と、
とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の解体建築材の処理方法では、負圧に調整した第1所定空間内で解体建築材に対してブラスト処理を施し、その後、負圧に調整した第2所定空間内でブラスト処理を施した解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布する。解体建築材に対してブラスト処理を施すことにより、処理後の解体建築材の表面における有害物質の濃度を極めて低くすることができる。この結果、解体建築材に塗布した樹脂系塗料の塗膜に破損が生じても、有害物質による環境などへの汚染を抑制することができる。なお、ブラスト処理を負圧に調整した第1所定空間内で行なうのは、ブラスト処理による有害物質が付着した粉塵等が第1所定空間外に飛散するのを抑止するためである。樹脂系塗料の塗布を負圧に調整した第2所定空間内で行なうのは、樹脂系塗料を塗布する際に解体建築材の表面に僅かに付着している粉塵などが第2所定空間外に飛散するのを抑止するためである。
【0009】
本発明の解体建築材の処理方法において、前記ブラスト工程と前記塗料塗布工程との間に前記第2所定空間内で前記ブラスト処理を施した前記解体建築材の表面を洗浄する洗浄工程を有するものとしてもよい。こうすれば、解体建築材の表面にブラスト処理の際に付着する粉塵(有害物質を含む)を洗い落とすことができる。
【0010】
本発明の解体建築材の処理方法において、前記有害物質はポリ塩化ビフェニルであり、前記樹脂系塗料は水系ビニル樹脂塗料であるものとしてもよい。
【0011】
本発明の解体建築材の処理方法および上述した態様(有害物質がポリ塩化ビフェニルである態様)の解体建築材の処理方法において、前記解体建築材は鋼材であり、前記樹脂系塗料を塗布した前記解体建築材を溶融する溶融工程を有するものとしてもよい。解体建築材の溶融の際に樹脂系塗料に閉じ込められた僅かな有害物質等も分解するから、溶融した鋼材をリユースすることができる。
【0012】
本発明の解体建築材の処理方法および上述の全ての態様(有害物質がポリ塩化ビフェニルである態様と解体建築材が鋼材である態様)において、前記ブラスト処理は、研削材としてスチールグリットを用いた循環式ブラスト工法を用いる処理であるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態としての解体建築材の処理方法の一例の工程をブロックとして示すブロック図である。
【
図2】実施形態の解体建築材の処理方法の一例の工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態としての解体建築材の処理方法の一例の工程をブロックを用いて模式的に示すブロック図であり、
図2は、実施形態の解体建築材の処理方法の一例の工程を示す工程図である。
【0015】
実施形態の解体建築材は、PCB処理施設や廃棄物焼却施設などの大規模施設の解体工事によって生じる有害物質等が付着した建築材であり、リユースが可能な鋼材や、廃棄されるコンクリート廃材などが相当する。以下では、解体建築材として主にリユースが可能な鋼材を例として説明する。
【0016】
実施形態の解体建築材の処理方法は、まず、解体建築材を負圧に調整した第1処理室に搬入する(工程S100)。第1処理室としては、粉塵や有害物質の飛散や雨水による地下水汚染を防止するために解体対象の建屋を完全に覆うように構築される外周構造物がある場合には、この外周構造物自体を用いるものとしたり、この外周構造物の内側に設置するものとしてもよい。外周構造物自体を第1処理室として用いる場合には、解体建築材の第1処理室への搬入は不要な工程となる。第1処理室は、
図1に示すように、集塵機により集塵されることにより負圧に調整されている。。
【0017】
続いて、第1処理室内でブラスト処理により解体建築材の表面を研削する(工程S110)。ブラスト処理は、小さな粒や粉状の物を噴射して対象物に衝突させることにより、対象物の表面を研削する処理である。本実施形態では、ブラスト処理として、例えば研削材としてスチールグリットを用いた循環式ブラスト工法を用いた。ブラスト処理を負圧に調整した第1処理室内で行なうのは、ブラスト処理による有害物質が付着した粉塵等が第1所定空間外に飛散するのを抑止するためである。
【0018】
次に、ブラスト処理を施した解体建築材を負圧に調整した第2処理室に搬送する(工程S120)。第2処理室は、第1処理室とは個別に設置してもよいが第1処理室の一画に設置するものとしてもよい。第2処理室は、第1処理室と同様に集塵機により集塵されることにより負圧に調整されている。
【0019】
第2処理室では、まず、ブラスト処理を施した解体建築材の表面を洗浄する(工程S130)。洗浄は、水や周知の洗浄液などを用いることができる。こうした洗浄により、ブラスト処理によって解体建築材の表面に付着した粉塵(有害物質を含む)を洗い落とすことができる。
【0020】
第2処理室では、次に、表面を洗浄した解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布する(工程S140)。樹脂系塗料としては、フェノール樹脂やアルキド樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,ウレタン樹脂,シリコン樹脂,塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル樹脂,フッ素樹脂,セルロースなどを用いることができ、水系ビニル樹脂塗料が好適である。例えば、米国・カーボライン社が原子炉内の除染用に開発した水系ビニル樹脂塗料(ALARA 1146 CAVITY DECON)を用いることができる。この水系ビニル樹脂塗料は、放射性物質で汚染された表面に塗装すると、塗料が被塗面の微小な空間に染み込み、汚染物質と吸着・結合して塗膜中に汚染物質を閉じ込める。本実施形態では、樹脂系塗料として水系ビニル樹脂塗料(ALARA 1146 CAVITY DECON:以下「C剤」と称する。)を塗装ローラーを用いて塗布した。なお、解体建築材の洗浄や樹脂系塗料の塗布を負圧に調整した第2処理室で行なうのは、洗浄の際や樹脂系塗料を塗布する際に解体建築材の表面に僅かに付着している粉塵(有害物質を含む)などが第2処理室外に飛散するのを抑止するためである。
【0021】
樹脂系塗料が塗布された解体建築材は、第2処理室から搬出され(工程S150)、解体建築材が鋼材であるときには溶融処理により溶融されて鋼材としてリユースされ、廃棄しかできない材(コンクリート材など)は、産業廃棄物として埋め立て処理などにより廃棄される。解体建築材が溶融処理される場合は、樹脂系塗料やこの樹脂系塗料に閉じ込められた極僅かな有害物質は鋼材と共に溶融され、加熱分解等により無害化される。解体建築材が廃棄される場合、極僅かな有害物質は樹脂系塗料に閉じ込められているから、搬送の際や廃棄後でも環境を汚染するのを抑止することができる。
【0022】
以上説明した実施形態の解体建築材の処理方法では、PCB処理施設や廃棄物焼却施設などの大規模施設の解体工事によって生じる有害物質等が付着した建築材(解体建築材)をブラスト処理を施すと共に、その後、ブラスト処理後の解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布する。ブラスト処理を施すことにより、処理後の解体建築材の表面における有害物質の濃度を極めて低くすることができる。また、ブラスト処理後の解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布することにより、ブラスト処理後の解体建築材の表面に極僅かに付着する有害物質を閉じ込めることができる。これらの結果、解体建築材に塗布した樹脂系塗料の塗膜に破損が生じても、有害物質による環境などへの汚染を抑制することができる。
【0023】
実施形態の解体建築材の処理方法では、ブラスト処理された解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布する前にブラスト処理後の解体建築材を洗浄する。これにより、解体建築材の表面にブラスト処理の際に付着する粉塵(有害物質を含む)を洗い落とすことができる。
【0024】
実施形態の解体建築材の処理方法では、ブラスト処理された解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布する前にブラスト処理後の解体建築材を洗浄するものとした。しかし、こうした洗浄を行なうことなくブラスト処理された解体建築材の表面に樹脂系塗料を塗布するものとしても構わない。
【0025】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、第1処理室が「第1所定空間」に相当し、ブラスト処理を施す工程S110が「ブラスト処理工程」に相当し、第2処理室が「第2所定空間」に相当し、解体建築材に樹脂系塗料を塗布する工程S140が「塗料塗布工程」に相当する。
【0026】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0027】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、解体建築材のリユース産業や廃棄産業などに利用可能である。