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  • 特開-ワイヤハーネス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070069
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180439
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】広辻 政紀
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087JJ04
5E087LL04
5E087LL13
5E087QQ04
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】止水性能の向上を可能としたワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス10は、コネクタ14と、コネクタ14から延びる電線11と、コネクタ14に取り付けられるシールドシェル15と、シールドシェル15及び電線11の長さ方向の一部を覆う止水部材13と、を備える。コネクタ14は、止水面23aを有している。そして、止水部材13は、電線11の長さ方向に沿って止水面23aに当接するリップ部44を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタと、
前記コネクタから延びる電線と、
前記コネクタに取り付けられるシールドシェルと、
前記シールドシェル及び前記電線の長さ方向の一部を覆う止水部材と、
を備えたワイヤハーネスであって、
前記コネクタは、止水面を有し、
前記止水部材は、前記電線の長さ方向に沿って前記止水面に当接するリップ部を有している、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記リップ部は、前記電線の長さ方向において、前記シールドシェルと前記止水面との間に挟まれている、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記リップ部は、前記電線の長さ方向から見て連続的な環状をなし、
前記リップ部の全周が、前記シールドシェルと前記止水面とによって挟まれている、
請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記コネクタは、前記止水面から前記電線の長さ方向に沿って延びる筒状部を有し、
前記シールドシェルは、内側に前記筒状部が嵌合される筒状の嵌合部と、前記嵌合部から外周側に延びるフランジ部と、を有し、
前記リップ部は、前記電線の長さ方向において、前記フランジ部と前記止水面との間に挟まれている、
請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記電線の外周を覆うシールド部材をさらに備え、
前記シールドシェルは、前記シールド部材が接続される接続部を有し、
前記接続部と前記嵌合部とは、前記電線の長さ方向に並んで設けられている、
請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記筒状部は、第1係止部を有し、
前記嵌合部は、前記電線の長さ方向において前記第1係止部に引っ掛かる第2係止部を有し、
前記フランジ部と前記止水面とは、前記リップ部を挟んだ状態で、前記第1係止部と前記第2係止部との引っ掛かりによって互いに離間しないように構成されている、
請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記第1係止部は、前記筒状部の周方向において等角度間隔に複数設けられ、
前記第2係止部は、前記複数の第1係止部にそれぞれ対応して複数設けられている、
請求項6に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記第1係止部と前記第2係止部とは、前記コネクタと前記シールドシェルとの電気的導通を図るべく、直接的に接触している、
請求項6に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のワイヤハーネスは、コネクタから延びる電線と、コネクタに取り付けられた筒状のシールドシェルと、シールドシェル及び電線の外周を被覆する筒状の止水部材とを備える。止水部材は、例えば、弾性を有する合成樹脂にて形成されている。止水部材の内周面には、シールドシェルの外周面に接するリップ部が形成されている。止水部材は、リップ部を含む部位が外周側から結束バンドにて締め付けられることで、シールドシェルに固定されている。結束バンドは、バンド部と、そのバンド部の基端に設けられたヘッド部とを備える。バンド部は、止水部材の外周に巻かれるとともに、バンド部の先端からヘッド部に通される。そして、バンド部は、止水部材を締め付けつつ、ヘッド部に固定される。このような構成では、止水部材のリップ部が結束バンドによってシールドシェルの外周面に押さえつけられることで、シールドシェルと止水部材との間の止水がなされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-185008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような結束バンドを用いた止水部材の固定構造では、結束バンドのヘッド部付近において、結束バンドと止水部材との間に隙間が生じ易い。このため、上記の結束バンドを用いた構造では、止水部材の全周を均等に締め付けて止水することが難しい。つまり、結束バンドのヘッド部付近において、シールドシェルと止水部材との間を止水できないおそれがあった。
【0005】
本開示の目的は、止水性能の向上を可能としたワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、コネクタと、前記コネクタから延びる電線と、前記コネクタに取り付けられるシールドシェルと、前記シールドシェル及び前記電線の長さ方向の一部を覆う止水部材と、を備えたワイヤハーネスであって、前記コネクタは、止水面を有し、前記止水部材は、前記電線の長さ方向に沿って前記止水面に当接するリップ部を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示のワイヤハーネスによれば、止水性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のワイヤハーネスを示す斜視図である。
図2図2は、同形態のワイヤハーネスの断面図である。
図3図3は、同形態のワイヤハーネスの一部を示す分解斜視図である。
図4図4は、図2の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネスは、
[1]コネクタと、前記コネクタから延びる電線と、前記コネクタに取り付けられるシールドシェルと、前記シールドシェル及び前記電線の長さ方向の一部を覆う止水部材と、を備えたワイヤハーネスであって、前記コネクタは、止水面を有し、前記止水部材は、前記電線の長さ方向に沿って前記止水面に当接するリップ部を有している。
【0010】
この構成によれば、止水部材のリップ部は、電線の長さ方向に沿ってコネクタの止水面に当接する。これにより、止水部材に対する結束バンドの外周からの締め付けによってリップ部の止水性を確保しなくてもよい構成となる。したがって、止水部材の止水性能を向上させることが可能となる。
【0011】
[2]上記[1]において、前記リップ部は、前記電線の長さ方向において、前記シールドシェルと前記止水面との間に挟まれていてもよい。
この構成によれば、シールドシェルとコネクタの止水面とに挟まれて潰されたリップ部によって、止水部材の止水性能を好適に確保することが可能となる。
【0012】
[3]上記[2]において、前記リップ部は、前記電線の長さ方向から見て連続的な環状をなし、前記リップ部の全周が、前記シールドシェルと前記止水面とによって挟まれていてもよい。
【0013】
この構成によれば、シールドシェルとコネクタの止水面とによってリップ部の全周が挟まれるため、リップ部と止水面との間に隙間が生じることを抑制可能となる。
[4]上記[2]または[3]において、前記コネクタは、前記止水面から前記電線の長さ方向に沿って延びる筒状部を有し、前記シールドシェルは、内側に前記筒状部が嵌合される筒状の嵌合部と、前記嵌合部から外周側に延びるフランジ部と、を有し、前記リップ部は、前記電線の長さ方向において、前記フランジ部と前記止水面との間に挟まれていてもよい。
【0014】
この構成によれば、シールドシェルのフランジ部とコネクタの止水面とに挟まれて潰されたリップ部によって、止水部材の止水性能を好適に確保することが可能となる。
[5]上記[4]において、前記ワイヤハーネスは、前記電線の外周を覆うシールド部材をさらに備え、前記シールドシェルは、前記シールド部材が接続される接続部を有し、前記接続部と前記嵌合部とは、前記電線の長さ方向に並んで設けられていてもよい。
【0015】
この構成によれば、シールドシェルにおいて、シールド部材と接続される接続部と、コネクタの筒状部が嵌合される嵌合部とを好適に構成することが可能となる。
[6]上記[4]または[5]において、前記筒状部は、第1係止部を有し、前記嵌合部は、前記電線の長さ方向において前記第1係止部に引っ掛かる第2係止部を有し、前記フランジ部と前記止水面とは、前記リップ部を挟んだ状態で、前記第1係止部と前記第2係止部との引っ掛かりによって互いに離間しないように構成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、コネクタの筒状部とシールドシェルの嵌合部とは、リップ部がフランジ部と止水面とに挟まれた状態で、第1係止部と第2係止部との引っ掛かりによって互いに連結される。これにより、リップ部がフランジ部と止水面とに挟まれた止水構造を好適に構成可能となる。また、第1係止部及び第2係止部によってコネクタとシールドシェルとを互いに連結することができる。このため、コネクタとシールドシェルとの連結するための構造として、当該第1係止部及び第2係止部以外の例えばボルト締結を不要とすることが可能となる。
【0017】
[7]上記[6]において、前記第1係止部は、前記筒状部の周方向において等角度間隔に複数設けられ、前記第2係止部は、前記複数の第1係止部にそれぞれ対応して複数設けられていてもよい。
【0018】
この構成によれば、フランジ部と止水面とに圧縮状態で挟まれたリップ部の弾性力を、第1係止部と第2係止部との引っ掛かり部分で受ける。したがって、第1係止部及び第2係止部が周方向において等角度間隔に設けられることで、リップ部の止水性能を周方向においてより均等にすることが可能となる。
【0019】
[8]上記[6]または[7]において、前記第1係止部と前記第2係止部とは、前記コネクタと前記シールドシェルとの電気的導通を図るべく、直接的に接触していてもよい。
【0020】
この構成によれば、第1係止部と第2係止部とを互いに引っ掛けるだけで、コネクタとシールドシェルとの電気的導通を図ることができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、本明細書における「垂直」は、厳密に垂直の場合のみでなく、本実施形態における作用ならびに効果を奏する範囲内で概ね垂直の場合も含まれる。
【0021】
なお、本明細書の説明で使用される「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。また、「筒状」の形状には、円形、楕円形、及び、尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれる。
【0022】
また、本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。
【0023】
図1に示すワイヤハーネス10は、例えばハイブリッド車や電気自動車等の車両に搭載される。ワイヤハーネス10は、2個以上の車載機器を電気的に接続する。ワイヤハーネス10によって電気的に接続される車載機器としては、例えば、高圧バッテリ、インバータ、モータ、電気接続箱などを挙げることができる。なお、電気接続箱は、車載機器に対して電力供給及び信号伝達の少なくとも一方を行う機器を収容するものである。電気接続箱としては、例えば、リレーボックス、ヒューズボックス、ジャンクションボックスなどを挙げることができる。
【0024】
(ワイヤハーネス10の構成)
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、例えば、電線11と、シールド部材12と、止水部材13と、コネクタ14とを備えている。また、図2に示すように、ワイヤハーネス10は、止水部材13の内側にシールドシェル15を備えている。図2は、図1における2-2線断面図であって、電線11の長さ方向Xに沿った断面を示している。なお、電線11の長さ方向Xは、ワイヤハーネス10の長さ方向に概ね一致する。
【0025】
ワイヤハーネス10は、例えば、1つまたは複数の電線11を備える。電線11は、例えば、導電性を有する芯線が絶縁体からなる絶縁被覆にて覆われた被覆電線である。
図1及び図2に示すように、シールド部材12は、例えば、複数の金属素線が例えば筒状に編み込まれた編組線である。なお、シールド部材12の形成材料としては、例えば、アルミ系や銅系の金属材料を用いることができる。シールド部材12の内側には、電線11が通っている。長さ方向Xにおけるシールド部材12の一端部は、シールドシェル15に接続されている。
【0026】
(コネクタ14の構成)
コネクタ14には、電線11の長さ方向Xの一端部が接続されている。すなわち、電線11は、コネクタ14から延びている。コネクタ14は、車載機器に設けられた相手コネクタと接続される。
【0027】
図2に示すように、コネクタ14は、コネクタハウジング21と、コネクタハウジング21の内側に設けられたコネクタ本体22とを備えている。コネクタハウジング21は、金属等の導体にて形成されている。各図面では、コネクタハウジング21の一部位を示している。なお、コネクタハウジング21の形成材料としては、例えば、アルミニウム系や鉄系の金属材料を用いることができる。
【0028】
コネクタ本体22は、例えば、樹脂製の筐体内部に図示しない端子を備える。コネクタ本体22には、電線11の長さ方向Xの一端が接続されている。電線11は、コネクタ本体22が備える前記端子に電気的に接続される。
【0029】
図2及び図3に示すように、コネクタハウジング21は、ベース部23と、ベース部23からコネクタハウジング21の外側に向かって延びる筒状部24とを有する。なお、図3では、説明の便宜上、電線11、シールド部材12及びコネクタ本体22の図示を省略している。
【0030】
ベース部23は、止水面23aを有している。止水面23aは、ベース部23の外表面に形成されている。止水面23aは、例えば、電線11の長さ方向Xに対して垂直な平面をなしている。筒状部24は、止水面23aから電線11の長さ方向Xに沿って延びている。すなわち、筒状部24は、例えば、止水面23aに対して垂直に延びている。筒状部24は、例えば、長さ方向Xから見て略楕円形状をなす。
【0031】
筒状部24は、複数の第1係止部25を有している。第1係止部25は、筒状部24に例えば4つ設けられている。各第1係止部25は、例えば、筒状部24の外周面から外方に突出する凸部である。複数の第1係止部25は、例えば、筒状部24の周方向において等角度間隔に設けられている。本実施形態では、4つの第1係止部25が筒状部24の周方向において90°間隔に設けられている。また、第1係止部25は、例えば、略楕円形状をなす筒状部24の長径方向の両端、及び筒状部24の短径方向の両端のそれぞれに設けられている。
【0032】
筒状部24は、例えば、複数のスリット26を有している。スリット26は、筒状部24の先端から基端側に向かって、電線11の長さ方向Xに沿って直線状に形成されている。スリット26は、筒状部24の周方向において、複数の第1係止部25の間にそれぞれ形成されている。各スリット26によって、筒状部24が径方向に撓みやすくなっている。
【0033】
(シールドシェル15の構成)
図2及び図3に示すように、シールドシェル15は、コネクタ14に取り付けられる。シールドシェル15は、長さ方向Xに沿う軸線を中心とする筒状をなす。シールドシェル15の内側には、例えば電線11が通される。シールドシェル15は、金属等の導体にて形成されている。シールドシェル15の形成材料としては、例えば、アルミニウム系や鉄系の金属材料を用いることができる。
【0034】
シールドシェル15は、内側に筒状部24が嵌合される筒状の嵌合部31と、嵌合部31から外周側に延びるフランジ部32と、を有している。嵌合部31は、電線11の長さ方向Xに沿って延びる筒状をなす。フランジ部32は、例えば、電線11の長さ方向Xにおける嵌合部31の一端部に設けられている。フランジ部32は、嵌合部31の周方向全体にわたって形成されている。フランジ部32は、コネクタハウジング21の止水面23aに対して電線11の長さ方向Xに対向する。
【0035】
シールドシェル15は、シールド部材12が接続される接続部33を有している。接続部33は、電線11の長さ方向Xに沿って延びる筒状をなす。接続部33は、筒状部24におけるフランジ部32が形成された側とは反対側の端部と繋がっている。すなわち、嵌合部31と接続部33とは、電線11の長さ方向Xに並んで設けられている。
【0036】
シールドシェル15において、嵌合部31と接続部33との間には、段差部34が設けられている。段差部34は、シールドシェル15の周方向全体にわたって形成されている。接続部33は、段差部34を経て嵌合部31よりも径が小さくなるように形成されている。
【0037】
電線11の長さ方向Xにおけるシールド部材12の一端部は、シールドシェル15の接続部33の外周側に被せられて固定されている。シールド部材12の当該一端部は、接続部33の外周面に対して例えばかしめリング35によって固定されている。かしめリング35は、接続部33の外周面とかしめリング35の内周面との間にシールド部材12を挟み込む。すなわち、シールド部材12の一端部は、かしめリング35の内側で接続部33の外周面に接触している。これにより、シールド部材12は、シールドシェル15に対して電気的に導通される。接続部33に対するシールド部材12の取り付け時には、段差部34を取付位置の目安に用いることが可能である。これにより、シールド部材12の取付時において、シールド部材12を嵌合部31の外周位置まで差し込みすぎることを抑制可能となる。
【0038】
シールドシェル15の嵌合部31は、電線11の長さ方向Xにおいて第1係止部25に引っ掛かる第2係止部36を有している。第2係止部36は、複数の第1係止部25にそれぞれ対応して複数設けられている。詳しくは、第2係止部36は、嵌合部31の周方向において等角度間隔に複数設けられている。本実施形態では、4つの第2係止部36が嵌合部31の周方向において90°間隔に設けられている。また、第2係止部36は、例えば、略楕円形状をなす嵌合部31の長径方向の両端、及び嵌合部31の短径方向の両端のそれぞれに設けられている。
【0039】
本実施形態の各第2係止部36は、例えば、嵌合部31を形成する周壁を径方向に貫通する孔である。例えば、筒状部24の外周面から突出する凸部である第1係止部25は、孔である第2係止部36に挿入される。これにより、第1係止部25と第2係止部36とは、シールドシェル15のフランジ部32とコネクタハウジング21の止水面23aとが互いに離間しないように引っ掛かる。また、第1係止部25と第2係止部36とは、引っ掛かった状態において互いに直接的に接触している。そして、第1係止部25と第2係止部36との引っ掛かりによって、コネクタハウジング21とシールドシェル15とが互いに固定される。
【0040】
(止水部材13の構成)
止水部材13は、電線11の長さ方向Xに沿う軸線を中心とする筒状をなす。止水部材13は、例えば、ゴムまたはエラストマにて形成されている。止水部材13は、シールドシェル15の全体と、シールド部材12及び電線11の長さ方向Xの一部とを覆っている。
【0041】
止水部材13は、シールドシェル15の全体と、シールド部材12及び電線11の長さ方向Xの一部とを覆う筒状の本体部41を有している。本体部41は、シールドシェル15の嵌合部31の外周を覆っている。すなわち、本体部41は、第1係止部25と第2係止部36との引っ掛かり部分を覆っている。
【0042】
図1に示すように、本体部41は、長さ方向Xの一端部において導出口42を有している。電線11及びシールド部材12は、導出口42から止水部材13の外部に導出される。なお、電線11及びシールド部材12において、少なくとも止水部材13の外側に延びる部位については、例えば図示しない外装部材にて外周が覆われていてもよい。当該外装部材としては、コルゲートチューブ等を用いることができる。
【0043】
図2及び図3に示すように、本体部41の内周面には、シールドシェル15のフランジ部32が入り込む溝部43が設けられている。溝部43は、本体部41において導出口42とは反対側の端部付近に形成されている。溝部43は、本体部41の内周面の全周にわたって形成されている。
【0044】
(リップ部44の構成)
図4に示すように、止水部材13は、電線11の長さ方向Xにおける本体部41の一端面41aにリップ部44を有している。リップ部44は、本体部41の一端面41aから突出するように形成されている。リップ部44は、電線11の長さ方向Xから見て連続的な環状をなしている。すなわち、リップ部44は、本体部41の一端面41aの全周にわたって設けられている。リップ部44は、例えば複数設けられている。本実施形態では、リップ部44が2つ設けられている。
【0045】
各リップ部44は、それらの全周にわたって、電線11の長さ方向Xに沿ってコネクタハウジング21の止水面23aに当接する。また、各リップ部44は、電線11の長さ方向Xにおいて、シールドシェル15のフランジ部32とコネクタハウジング21の止水面23aとの間に挟まれて潰されている。ここで、フランジ部32と止水面23aとは、リップ部44を挟んだ状態で、第1係止部25と第2係止部36との引っ掛かりによって互いに離間しないように構成されている。これにより、各リップ部44は、フランジ部32と止水面23aとの間で圧縮状態で挟まれている。また、コネクタハウジング21の筒状部24とシールドシェル15の嵌合部31とは、リップ部44がフランジ部32と止水面23aとに挟まれた状態で、第1係止部25と第2係止部36との引っ掛かりによって互いに連結される。
【0046】
(ワイヤハーネス10の組付手順)
まず、シールドシェル15を止水部材13に組み付ける。このとき、シールドシェル15のフランジ部32を止水部材13の溝部43に嵌合させる。
【0047】
その後、止水部材13が取り付けられたシールドシェル15を、コネクタハウジング21の筒状部24に対して電線11の長さ方向Xに沿って組み付ける。このとき、止水部材13の各リップ部44を、コネクタハウジング21の止水面23aに対して電線11の長さ方向Xに押し当てつつ、各第1係止部25を各第2係止部36に引っ掛ける。これにより、フランジ部32と止水面23aとの間にリップ部44が圧縮状態で挟まれた状態で、シールドシェル15がコネクタハウジング21に組み付けられる。
【0048】
本実施形態の効果について説明する。
(1)止水部材13は、電線11の長さ方向Xに沿って止水面23aに当接するリップ部44を有している。この構成によれば、止水部材13のリップ部44は、電線11の長さ方向Xに沿ってコネクタ14の止水面23aに当接する。これにより、止水部材13に対する結束バンドの外周からの締め付けによってリップ部44の止水性を確保しなくてもよい構成となる。したがって、止水部材13の止水性能を向上させることが可能となる。
【0049】
(2)リップ部44は、電線11の長さ方向Xにおいて、シールドシェル15と止水面23aとの間に挟まれている。この構成によれば、シールドシェル15とコネクタ14の止水面23aとに挟まれて潰されたリップ部44によって、止水部材13の止水性能を好適に確保することが可能となる。
【0050】
(3)リップ部44は、電線11の長さ方向Xから見て連続的な環状をなしている。そして、リップ部44の全周は、シールドシェル15と止水面23aとによって挟まれている。この構成によれば、シールドシェル15とコネクタ14の止水面23aとによってリップ部44の全周が挟まれるため、リップ部44と止水面23aとの間に隙間が生じることを抑制可能となる。
【0051】
(4)コネクタ14は、止水面23aから電線11の長さ方向Xに沿って延びる筒状部24を有している。シールドシェル15は、内側に筒状部24が嵌合される筒状の嵌合部31と、嵌合部31から外周側に延びるフランジ部32と、を有している。そして、リップ部44は、電線11の長さ方向Xにおいて、フランジ部32と止水面23aとの間に挟まれている。この構成によれば、シールドシェル15のフランジ部32とコネクタ14の止水面23aとに挟まれて潰されたリップ部44によって、止水部材13の止水性能を好適に確保することが可能となる。
【0052】
(5)ワイヤハーネス10は、電線11の外周を覆うシールド部材12を備えている。シールドシェル15は、シールド部材12が接続される接続部33を有している。接続部33と嵌合部31とは、電線11の長さ方向Xに並んで設けられている。この構成によれば、シールドシェル15において、シールド部材12と接続される接続部33と、コネクタ14の筒状部24が嵌合される嵌合部31とを好適に構成することが可能となる。
【0053】
(6)筒状部24は、第1係止部25を有している。嵌合部31は、電線11の長さ方向Xにおいて第1係止部25に引っ掛かる第2係止部36を有している。フランジ部32と止水面23aとは、リップ部44を挟んだ状態で、第1係止部25と第2係止部36との引っ掛かりによって互いに離間しないように構成されている。この構成によれば、コネクタ14の筒状部24とシールドシェル15の嵌合部31とは、リップ部44がフランジ部32と止水面23aとに挟まれた状態で、第1係止部25と第2係止部36との引っ掛かりによって互いに連結される。これにより、リップ部44がフランジ部32と止水面23aとに挟まれた止水構造を好適に構成可能となる。また、第1係止部25及び第2係止部36によってコネクタ14とシールドシェル15とを互いに連結することができる。このため、コネクタ14とシールドシェル15との連結するための構造として、当該第1係止部25及び第2係止部36以外の例えばボルト締結を不要とすることが可能となる。
【0054】
(7)第1係止部25は、筒状部24の周方向において等角度間隔に複数設けられている。第2係止部36は、複数の第1係止部25にそれぞれ対応して複数設けられている。この構成によれば、フランジ部32と止水面23aとに圧縮状態で挟まれたリップ部44の弾性力を、第1係止部25と第2係止部36との引っ掛かり部分で受ける。したがって、第1係止部25及び第2係止部36が周方向において等角度間隔に設けられることで、リップ部44の止水性能を周方向においてより均等にすることが可能となる。
【0055】
(8)第1係止部25と第2係止部36とは、コネクタハウジング21とシールドシェル15との電気的導通を図るべく、直接的に接触している。この構成によれば、第1係止部25と第2係止部36とを互いに引っ掛けるだけで、コネクタハウジング21とシールドシェル15との電気的導通を図ることができる。また、第1係止部25と第2係止部36との接触によりコネクタハウジング21とシールドシェル15との電気的導通を図ることで、コネクタハウジング21とシールドシェル15との接触面積を容易に増やすことが可能となる。その結果、シールド性能の向上に寄与できる。
【0056】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・第1係止部25及び第2係止部36とは別の箇所において、コネクタハウジング21とシールドシェル15との間の電気的導通を図る構成としてもよい。
・第1係止部25及び第2係止部36の個数は上記実施形態に限定されるものではなく、筒状部24及び嵌合部31の形状等の構成に応じて適宜変更してもよい。
【0058】
・第1係止部25及び第2係止部36の凹凸関係を、上記実施形態とは反対にしてもよい。すなわち、第1係止部25を孔とし、第2係止部36を第1係止部25に入り込む凸部としてもよい。
【0059】
・シールド部材12は、例えば、金属箔を筒状に形成したものであってもよい。
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
10 ワイヤハーネス
11 電線
12 シールド部材
13 止水部材
14 コネクタ
15 シールドシェル
21 コネクタハウジング
22 コネクタ本体
23 ベース部
23a 止水面
24 筒状部
25 第1係止部
26 スリット
31 嵌合部
32 フランジ部
33 接続部
34 段差部
35 かしめリング
36 第2係止部
41 本体部
41a 一端面
42 導出口
43 溝部
44 リップ部
X 電線の長さ方向
図1
図2
図3
図4