(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007007
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】検出システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240111BHJP
H03K 17/955 20060101ALI20240111BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
G06F3/041 580
G06F3/041 512
H03K17/955 G
B60R16/02 630L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108102
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】西本 拓也
【テーマコード(参考)】
5J050
【Fターム(参考)】
5J050AA05
5J050BB22
5J050FF25
(57)【要約】
【課題】検出システムにおいて、検出対象に対する感度を向上させること。
【解決手段】検出システム1は、複数の電極14を有する静電容量式のセンサ12と、導電体20と、予め定められている所定周期で変動する駆動電圧Vgによって生成されている駆動信号Sgを複数の電極14に出力する第1信号出力回路31と、駆動電圧Vgの位相と逆位相の逆位相電圧Vrによって生成されている逆位相信号Srを導電体20に出力する第2信号出力回路32と、電極14の容量に応じた検出信号Sdを生成する検出信号生成回路33と、逆位相信号Srが供給されている導電体20によって操作者Mに生じている誘起電圧に応じた検出信号Sdの変化を検出する検出回路34と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を有する静電容量式のセンサと、
導電体と、
予め定められている所定周期で変動する駆動電圧によって生成されている駆動信号を前記複数の電極に出力する第1信号出力回路と、
前記駆動電圧の位相と逆位相の逆位相電圧によって生成されている逆位相信号を前記導電体に出力する第2信号出力回路と、
前記電極の容量に応じた検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記逆位相信号が供給されている前記導電体によって操作者に生じている誘起電圧に応じた前記検出信号の変化を検出する検出回路と、を備えている、
検出システム。
【請求項2】
前記逆位相電圧の振幅は、前記駆動電圧の振幅以上である、
請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記センサは、検出面をさらに備え、
前記検出信号は、前記検出面と前記操作者との距離に応じて変化する、
請求項1に記載の検出システム。
【請求項4】
前記第2信号出力回路は、前記駆動電圧の位相と同位相の同位相電圧によって生成されている同位相信号および前記逆位相信号の一方を選択して前記導電体に出力する、
請求項1に記載の検出システム。
【請求項5】
2つの前記導電体を備え、
前記第2信号出力回路は、
一方の前記導電体に前記逆位相信号を出力し、
他方の前記導電体に、前記駆動電圧の位相と同位相の同位相電圧によって生成されている同位相信号を出力する、
請求項1に記載の検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、静電容量式のタッチパネルが注目されている。例えば、特許文献1の入力システムにおいて、タッチパネルは、表示装置であるデュアルビュー液晶と重ね合わせられて、タッチパネルディスプレイを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量式の検出システムは、操作者の指など検出対象が検出面に接触した場合、検出対象を精度よく検出する。また、検出対象が検出面に接触せずに数cm離れている場合においても、検出電圧の調整および電極の大型化によって感度を向上させることで、静電容量式の検出システムは検出対象を検出することができる。しかしながら、検出対象が検出面から比較的離れている場合、静電容量式の検出システムは検出対象を検出することができない。このような場合においても、静電容量式の検出システムが検出対象を検出できるようにするために、検出対象に対する静電容量式の検出システムの感度をさらに向上したいとの要望がある。
【0005】
本開示は、検出システムにおいて、検出対象に対する感度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の検出システムは、複数の電極を有する静電容量式のセンサと、導電体と、予め定められている所定周期で変動する駆動電圧によって生成されている駆動信号を前記複数の電極に出力する第1信号出力回路と、前記駆動電圧の位相と逆位相の逆位相電圧によって生成されている逆位相信号を前記導電体に出力する第2信号出力回路と、前記電極の容量に応じた検出信号を生成する検出信号生成回路と、前記逆位相信号が供給されている前記導電体によって操作者に生じている誘起電圧に応じた前記検出信号の変化を検出する検出回路と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る検出システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、表示パネルの構成を模式的に示す側断面図である。
【
図6】
図6は、検出対象を検出する回路の等価回路を示す図である。
【
図7】
図7は、検出システムの動作のタイムチャートを示す図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る検出システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0009】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る検出システムの構成を示す模式図である。検出システム1は、例えば、カーナビゲーションシステムであり、車両に搭載される。検出システム1は、表示パネル10、導電体20、および、制御装置30を備えている。
【0011】
図2は、表示パネルの構成を模式的に示す側断面図である。表示パネル10は、表示部11、および、センサ12を備えている。
【0012】
表示部11は、表示面11aを有する液晶ディスプレイである。表示部11は、表示素子として液晶表示素子を備えている。表示部11は、液晶表示素子を有する複数の画素を備える。表示部11は、制御装置30から出力される映像信号に基づいて複数の画素からなる画像を表示面11aの表示領域DAに表示する。なお、表示部11は、例えば、有機ELディスプレイおよび無機ELディスプレイでもよい。
【0013】
センサ12は、静電容量式のセンサである。具体的には、センサ12は、自己静電容量式のセンサである。センサ12は、板状であり、検出面12a側に位置する検出対象を検出する。検出対象は、例えば操作者Mの指である。なお、検出対象は、スタイラスペンおよび指以外の操作者Mの部位であってもよい。
【0014】
センサ12は、検出面12aと反対側の板面が表示部11の表示面11aに対向するようにエアギャップAGを介して配置される。また、検出面12aの検出領域AAは、表示領域DAと平面視で重畳している。
【0015】
センサ12は、センサ基板13、複数の電極14、および、カバーパネル15を有する。センサ基板13、電極14、および、カバーパネル15は、表示部11側から検出面12a側に向けてこの順に積層されている。
【0016】
センサ基板13は、透光性を有する基板であり、例えば、ガラス基板およびフレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)である。センサ基板13の表示部11に対向する板面には、シールド13aが配置されている。シールド13aは、検出面12aと反対側からの電極14の容量に対する影響を抑制する。
【0017】
図3は、センサの平面図である。複数の電極14は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電性材料が用いられる。複数の電極14は、平面視正方形状であり、センサ基板13における検出面12a側の板面に検出領域AAに平面視で行列状に配置されている。具体的には、検出面12aの垂線と直交する第1方向D1に複数(5個)配置され、検出面12aの垂線および第1方向D1と直交する第2方向D2に複数(4個)配置されている。なお、複数の電極14の形状、配置および個数が
図3に示す形状、配置および個数に限定されないことは言うまでもない。また、複数の電極14は、センサ基板13に配置される配線Lを介して制御装置30と電気的に接続される。
【0018】
図2に示すカバーパネル15は、透光性を有する保護パネルである。カバーパネル15は、例えばガラス製である。カバーパネル15における電極14と対向する板面と反対側の面は、検出面12aを構成する。カバーパネル15は、接着層OCを介してセンサ基板13に配置される。接着層OCは、透光性を有する接着剤が採用されることが望ましい。接着層OCは、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)のように両面粘着性を有する透光性フィルムによって形成されても良い。
【0019】
表示部11の表示面11aには、検出システム1を操作するための例えばボタンなどの画像が表示される。操作者Mが検出システム1を操作する際に、操作者Mの指などの検出対象がその画像に向かって検出面12aに近づくと、電極14の容量が変化する。この電極14の容量の変化に基づいて、検出システム1は、検出対象を検出する(詳細は後述する)。なお、表示部11とセンサ12とは一体に構成されてもよい。この場合、表示部11の電極や基板等の部材の一部が、センサ12の基板等に兼用されてもよい。
【0020】
図1に示す導電体20は、シート状であり、導電性を有する。導電体20は、例えば銅箔である。なお、導電体20がシート状に限定されないことは言うまでもない。導電体20は、後述する逆位相信号Srが供給されることで、センサ12を操作する操作者Mに誘起電圧が生じる位置に配置されている。導電体20は、例えば、車両のシート2に配置される。
【0021】
制御装置30は、検出システム1を統括制御する。制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、および、ROM(Read Only Memory)を有するコンピュータによって構成されている。CPUは、ROMに予め記憶されているプログラムを実行することにより、検出システム1を制御する機能部として機能する。
【0022】
制御装置30は、機能部として、第1信号出力回路31、第2信号出力回路32、検出信号生成回路33、および、検出回路34を備えている。
【0023】
第1信号出力回路31は、後述する
図7に示す駆動信号Sgを複数の電極14に出力する。駆動信号Sgは、センサ12を駆動させるための信号である。駆動信号Sgは、予め定められている第1所定周期T1で変動する駆動電圧Vgによって生成される。
【0024】
図4は、駆動電圧の波形を示す図である。駆動電圧Vgは、電位が第1所定周期T1で変動する交流電圧である。第1所定周期T1は、検出対象を検出可能に予め実験などによって導出されている。駆動電圧Vgは、振幅Hgを有する。このような駆動電圧Vgによって生成される駆動信号Sgは、交流矩形波である(
図7)。
【0025】
第1信号出力回路31は、駆動信号Sgを予め定められている第2所定周期T2で複数の電極14に出力する。第2所定周期T2は、検出対象を検出可能に予め実験などによって導出されており、周波数に換算すると、例えば数kHz~数百kHz程度である。
【0026】
第2信号出力回路32は、逆位相電圧Vrによって生成される逆位相信号Sr(後述する
図7に示す)を導電体20に出力する。
【0027】
図5は、逆位相電圧の波形を示す図である。逆位相電圧Vrの位相は、駆動電圧Vgの位相と逆位相である。逆位相電圧Vrの周期は、駆動電圧Vgの周期と同じく第1所定周期T1である。また、逆位相電圧Vrの振幅Hrは、
図4に示す駆動電圧Vgの振幅Hgと等しい。なお、逆位相電圧Vrの振幅Hrは、駆動電圧Vgの振幅Hgより大きくてもよい。このような逆位相電圧Vrによって生成される逆位相信号Srは、駆動信号Sgと同様に交流矩形波である(
図7)。
【0028】
第2信号出力回路32は、駆動信号Sgと同期させて、逆位相信号Srを導電体20に出力する。すなわち、逆位相信号Srの周期は、駆動信号Sgと等しい第2所定周期T2である。
【0029】
検出信号生成回路33は、電極14の容量に応じた検出信号Sdを生成する。検出信号生成回路33は、検出対象を検出する回路の等価回路Kを構成する。
【0030】
図6は、検出対象を検出する回路の等価回路を示す図である。等価回路Kは、電極14、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、検出信号生成回路33を備えている。等価回路Kは、複数の電極14毎に構成されている。制御装置30が第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を備えてもよいし、センサ12が備えてもよい。
【0031】
第1スイッチSW1がオンである場合、駆動信号Sgを出力する第1信号出力回路31と電極14とが電気的に接続され、駆動信号Sgが電極14に供給される。これにより、電極14の容量Ceが充電される。第1スイッチSW1がオフである場合、第1信号出力回路31と電極14とが電気的に遮断される。
【0032】
第2スイッチSW2がオンである場合、検出信号生成回路33と電極14とが電気的に接続される。これにより、電極14の容量Ceの電荷が検出信号生成回路33に移動する。第2スイッチSW2がオフである場合、検出信号生成回路33と電極14とを電気的に遮断される。
【0033】
検出信号生成回路33は、積分回路およびリセット回路を含んで構成されており、検出信号Sdを生成する。検出信号生成回路33は、第3スイッチSW3およびコンデンサCdを備えている。
【0034】
第1スイッチSW1、第2スイッチSW2および第3スイッチSW3は、後述するように駆動信号Sgと同期して検出回路34によって制御される。これにより、検出信号生成回路33において、コンデンサCdの充放電が繰り返されることで、検出電位Vdが変動し、検出信号Sdが生成される(詳細は後述する)。
【0035】
検出対象がセンサ12に近づくと、電極14の容量が変化することで、検出信号Sdが変化する。この検出信号Sdの変化を、検出回路34が検出する。つまり、検出回路34は、検出信号の変化に基づいて、検出対象を検出する(詳細は後述する)。
【0036】
次に、検出システム1が検出対象を検出していない場合の検出システム1の動作について
図6および
図7を参照しながら説明する。また、検出対象を操作者Mの指を例に説明する。つまり、検出システム1が検出対象を検出していない場合とは、操作者Mの指がセンサ12に近づいていない場合である。
【0037】
図7は、検出システム1の動作のタイムチャートを示す図である。
図7において、各スイッチSW1、SW2、SW3のオンオフ、駆動信号Sgおよび逆位相信号Srの波形、検出システム1が検出対象を検出していないときの電極14の容量Ce(以下、電極容量Ceと称する)の電位、ならびに、検出信号Sdの波形を、それぞれ、太実線で示す。
【0038】
駆動信号Sgおよび逆位相信号Srは、上記のように互いに同期しており、第2所定周期T2でそれぞれ出力されている。
図7に示す時刻t1より前において、駆動信号Sgの電位および逆位相信号Srの電位が基準電位V0であり、第1スイッチSW1がオフであり、第2スイッチSW2がオンであり、かつ、第3スイッチSW3がオンである状態から説明する。このとき、検出信号生成回路33はリセットされており、検出信号生成回路33と電極14とが接続されている。これにより、電極容量Ceの電位、および、検出信号Sdの電位は、基準電位V0と等しい。
【0039】
この状態から駆動信号Sgの電位が基準電位V0から駆動電圧Vgに応じた駆動電位Vg1に上昇するタイミングで、検出回路34は、第1スイッチSW1をオン、第2スイッチSW2をオフおよび第3スイッチSW3をオフに切り換える(時刻t1)。これにより、電極14と検出信号生成回路33とが遮断され、第1信号出力回路31と電極14とが接続されると、駆動信号Sgが電極14に供給され、電極容量Ceが充電されることで、電極容量Ceの電位が駆動電位Vg1に対応する第1充電電位Ve1となる。
【0040】
続けて、検出回路34は、第1スイッチSW1をオフに切り換える(時刻t2)。これにより、第1信号出力回路31と電極14とが遮断され、駆動信号Sgの電極14への供給が停止する。このとき、電極14はフローティング状態となるが、第1充電電位Ve1は維持される。
【0041】
さらに、検出回路34は、第2スイッチSW2をオンに切り換える(時刻t3)。これにより、電極14と検出信号生成回路33とが接続されると、電極容量Ceの電荷がコンデンサCdの容量に移動することで、電極容量Ceの電位が低下するとともに、コンデンサCdの容量の増加に応じて検出信号Sdの電位が上昇する。このとき、検出信号Sdの電位は、第1充電電位Ve1に対応する第1検出電位Vd1となる(時刻t4)。
【0042】
続けて、検出回路34は、第3スイッチSW3をオンに切り換える(時刻t4)。これにより、検出信号生成回路33と電極14とが接続されている状態で、検出信号生成回路33がリセットされると、電極容量Ceの電位および検出信号Sdの電位それぞれが基準電位V0と等しくなる。なお、この時、駆動信号Sgおよび逆位相信号Srの電位は、低下しており、基準電位V0と等しい。
【0043】
このように、検出回路34は、駆動信号Sgと同期させて各スイッチSW1、SW2、SW3の制御を繰り返し実行する。これにより、検出システム1が検出対象を検出していない場合、上記のように、検出信号Sdの電位は、基準電位V0と第1検出電位Vd1との間を第2所定周期T2で繰り返し変動する。
【0044】
次に、検出システム1が検出対象を検出するときの検出システム1の動作について
図6および
図7を参照しながら説明する。また、本開示の特徴を明確にするために、まず、逆位相信号Srが出力されていない状態での検出システム1の動作について説明する。
【0045】
逆位相信号Srが出力されていない場合においても、上記と同様に、駆動信号Sgは、第2所定周期T2で出力され、検出回路34は、駆動信号Sgと同期させて第1スイッチSW1、第2スイッチSW2および第3スイッチSW3を制御する。
【0046】
逆位相信号Srが出力されていない場合、操作者Mが導電体20の近傍に位置していても、操作者Mに誘起電圧が生じない。この場合、操作者Mの電位は、基準電位V0とほぼ等しい。
【0047】
この状態において、
図6に示す操作者Mの指Fがセンサ12の検出面12aに接触すると、操作者Mの容量Cm(以下、人体容量Cmと称する)と電極容量Ceとが結合する。
【0048】
なお、本明細書において、「接触」とは、操作者Mが検出面12aに接触した状態、または、操作者Mが検出面12aに接触したと同視できるほど操作者Mと検出面12aとが近接している状態をいう。また、人体容量Cmと電極容量Ceとが結合した容量を、結合容量Ccと称する。
図7において、逆位相信号Srが出力されていない場合の結合容量Ccの電位は、基準電位V0に対応する横軸を電極容量Ceと共通にして、一点鎖線で示され、電極容量Ceの電位と重なる部分については実線で示される。
【0049】
操作者Mの指Fが検出面12aに接触した状態で電極14に駆動信号Sgが供給されると(時刻t1~t2)、結合容量Ccが充電される。このとき、充電された結合容量Ccの第2充電電位Ve2は、充電された人体容量Cmの分、第1充電電位Ve1より大きい(時刻t1~t3)。この充電された人体容量Cmは、操作者Mの電位である基準電位V0と駆動電圧Vgとの電位差に対応している。
【0050】
さらに、検出信号Sdの電位は、一点鎖線で示すように、第2充電電位Ve2に対応する第2検出電位Vd2となる(時刻t4)。第2検出電位Vd2は、第1充電電位Ve1と第2充電電位Ve2との電位差に対応する分、検出システム1が検出対象を検出していない場合の第1検出電位Vd1より大きい。
【0051】
検出回路34は、第1検出電位Vd1と第2検出電位Vd2との電位差に基づいて、操作者Mの指Fを検出する。例えば、検出回路34は、検出信号Sdの電位が閾値Vh以上となると、操作者Mの指Fを検出する。閾値Vhは、第1検出電位Vd1と第2検出電位Vd2との間の検出信号Sdの電位であり、予め実験等によって実測されて導出され、制御装置30に記憶されている。つまり、検出信号Sdの電位が第1検出電位Vd1から閾値Vhより大きい第2検出電位Vd2となると、検出回路34は、操作者Mの指Fを検出する。このように、検出回路34は、検出信号の変化を検出し、この検出信号の変化に基づいて、検出対象を検出する。
【0052】
次に、逆位相信号Srが出力されている状態において、検出システム1が検出対象を検出するときの検出システム1の動作について説明する。このとき、駆動信号Sgおよび逆位相信号Srは、
図7に示すように、上記と同様に互いに同期しており、第2所定周期T2でそれぞれ出力されている。また、検出回路34は、上記のように、駆動信号Sgと同期させて第1スイッチSW1、第2スイッチSW2および第3スイッチSW3を制御する。
【0053】
操作者Mは、例えば車両のシート2に座ること等により、逆位相信号Srが供給されている導電体20の近傍に位置している。これにより、操作者Mに逆位相電圧Vrに応じた誘起電圧が生じる。逆位相電圧Vrに応じた誘起電圧の位相は、逆位相電圧Vrと同位相であり、駆動電圧Vgと逆位相である。
【0054】
誘起電圧が操作者Mに生じている場合、誘起電圧に対応する電波が操作者Mから外部に放射される。これにより、操作者Mの指Fがセンサ12に近づくと、操作者Mの指Fが検出面12aに接触していない状態でも、操作者Mの指Fから放射される電波が電極14に到達することで、人体容量Cmと電極容量Ceとが結合する。
図7において、逆位相信号Srが出力されている場合の結合容量Ccの電位は、基準電位V0に対応する横軸を電極容量Ceと共通にして、破線で示され、電極容量Ceの電位と重なる部分については実線で示される。
【0055】
誘起電圧が操作者Mに生じている場合、充電された人体容量Cmは、誘起電圧と駆動電圧Vgとの電位差によって充電される。逆位相電圧Vrに応じた誘起電圧と駆動電圧Vgとは互いに逆位相であるため、この誘起電圧と駆動電圧Vgとの電位差は、基準電位V0と駆動電圧Vgとの電位差より大きい。よって、逆位相電圧Vrに応じた誘起電圧が操作者Mに生じている場合において充電された人体容量Cmは、上記のように誘起電圧が操作者Mに生じていない場合において基準電位V0と駆動電圧Vgの電位差によって充電された人体容量Cmよりも大きい。
【0056】
よって、逆位相電圧Vrに応じた誘起電圧が操作者Mに生じている場合、充電された結合容量Ccの第3充電電位Ve3は、破線で示すように、充電された人体容量Cmが誘起電圧によって増加した分、第2充電電位Ve2よりも大きい(時刻t1~t3)。
【0057】
さらに、逆位相電圧Vrに応じた誘起電圧が操作者Mに生じている場合、検出信号Sdの電位は、破線で示すように、第3充電電位Ve3に対応する第3検出電位Vd3となる(時刻t4)。第3検出電位Vd3は、第2充電電位Ve2と第3充電電位Ve3との電位差に対応する分、誘起電圧が操作者Mに生じていない場合の第2検出電位Vd2よりも大きい。検出信号Sdの電位が第1検出電位Vd1から閾値Vhより大きい第3検出電位Vd3となると、検出回路34は、操作者Mの指Fを検出する。
【0058】
また、検出信号は、操作者Mの指Fと検出面12aとの距離に応じて変化する。具体的には、操作者Mの指Fと検出面12aとの距離が近いほど、第3検出電位Vd3が大きくなる。なぜなら、操作者Mの指Fから放射される電波の駆動信号Sgに対する影響が検出面12aに近づくほど大きくなり、誘起電圧と駆動電圧Vgとの電位差が大きくなるためである。よって、閾値Vhを調整することで、検出回路34が操作者Mの指Fなどの検出対象を検出するときの検出対象と検出面12aとの距離を調整することができる。
【0059】
このように、操作者Mの指Fと検出面12aとが接触せずに比較的離れていても、検出回路34は、逆位相信号Srが供給されている導電体によって操作者に生じている誘起電圧に応じた検出信号Sdの変化を検出し、ひいては、操作者Mの指Fを検出することができる。つまり、第2信号出力回路32が逆位相信号Srを導電体20に出力することで、検出対象に対する検出システム1の感度を向上させることができる。なお、本開示では、検出面12aに操作者Mの指Fが非接触状態において、操作者Mの指Fの位置や動作を検出できることをホバー検出という。
【0060】
また、操作者Mが操作を行ったときに生じる検出信号Sdの電位差は、導電体20に逆位相信号Srが供給されていない場合の電位差(=第2検出電位Vd2-第1検出電位Vd1)よりも、導電体20に逆位相信号Srが供給されている場合の電位差(=第3検出電位Vd3-第1検出電位Vd1)の方が大きい。すなわち、第2信号出力回路32が逆位相信号Srを導電体20に出力し、操作者Mに誘起電圧が生じることで、操作者Mの指Fなどの検出対象に対する検出システム1の感度が向上する。
【0061】
また、第3検出電位Vd3と閾値Vhとの電位差は、第2検出電位Vd2と閾値Vhとの電位差より大きくなる。よって、検出回路34は、操作者Mがセンサ12に接触しない場合においても、操作者Mの指Fなどの検出対象を容易に検出できる。さらに、検出回路34は、操作者Mの人体容量Cmが比較的小さい場合および操作者Mの人体容量Cmが外的要因によって変動する場合においても、操作者Mの指Fなどの検出対象を容易に検出できる。
【0062】
なお、駆動電圧Vgの振幅Hgに対して逆位相電圧Vrの振幅Hrひいては誘起電圧の振幅が大きくなるほど、第3充電電位Ve3ひいては第3検出電位Vd3は大きくなり、第1検出電位Vd1と第3検出電位Vd3との電位差は大きくなる。つまり、駆動電圧Vgの振幅Hgに対して逆位相電圧Vrの振幅Hrを大きくするほど、操作者Mの指Fなどの検出対象に対するセンサ12の感度を大きくすることができる。なお、逆位相電圧Vrの振幅は、駆動電圧Vgの振幅より小さくてもよい。
【0063】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る検出システム1について、主として上記の第1実施形態の検出システム1と異なる部分を説明する。
【0064】
第2実施形態の検出システム1において、制御装置30は、動作モードの選択をして、検出システム1を制御する。具体的には、制御装置30は、検出システム1が検出対象を検出する検出モード、および、検出システム1が検出対象を検出しない非検出モードの一方を選択して、検出システム1を制御する。制御装置30は、例えば検出システム1がさらに備えるスイッチ(不図示)が操作者Mによって操作されることで、検出モードおよび非検出モードの一方を選択する。
【0065】
制御装置30が検出モードで検出システム1を制御する場合、上記の第1実施形態と同様に、第2信号出力回路32は、逆位相信号Srを導電体20に出力する。これにより、上記の第1実施形態と同様に、検出対象に対する検出システム1の感度が向上し、検出回路34は、操作者Mの指Fなどの検出対象が検出面12aから比較的離れている場合においても、操作者Mの指Fを検出(すなわちホバー検出)する。
【0066】
なお、制御装置30が検出モードで検出システム1を制御する場合、第2信号出力回路32は、導電体20に逆位相信号Srを出力しなくてもよい。この場合、上記のように、検出回路34は、操作者Mの指Fなどの検出対象が検出面12aに接触することで、操作者Mの指Fを検出する。つまり、検出モードにおいて、検出システム1に対する操作者Mの操作は許容される。
【0067】
一方、制御装置30が非検出モードで検出システム1を制御する場合、第2信号出力回路32は、同位相電圧Vsによって生成される同位相信号Ssを導電体20に出力する。
【0068】
図8は、同位相電圧の波形を示す図である。同位相電圧Vsの位相は、駆動電圧Vgの位相と同位相である。同位相電圧Vsの周期は、駆動電圧Vgの周期と同じく第1所定周期T1である。また、同位相電圧Vsの振幅は、
図4に示す駆動電圧Vgの振幅Hsと等しい。
【0069】
このような同位相電圧Vsによって生成される同位相信号Ssは、駆動信号Sgおよび逆位相信号Srと同様に交流矩形波である。また、第2信号出力回路32は、駆動信号Sgと同期させて、同位相信号Ssを導電体20に出力する。すなわち、同位相信号Ssの周期は、駆動信号Sgおよび逆位相信号Srと等しい第2所定周期T2である。
【0070】
このように、動作モードに応じて、第2信号出力回路32は、駆動電圧Vgの位相と同位相の同位相電圧Vsによって生成されている同位相信号Ssおよび逆位相信号Srの一方を選択して導電体20に出力する。
【0071】
次に、制御装置30が非検出モードで検出システム1を制御する場合における検出システム1の動作を、
図7を用いて説明する。
図7において、同位相信号Ssの波形は、逆位相信号Srの波形と一致しており、実線で示される。
【0072】
操作者Mは、検出システム1の操作を行う場合、同位相信号Ssが供給されている導電体20の近傍に位置しており、操作者Mに同位相電圧Vsに応じた誘起電圧が生じる。同位相電圧Vsに応じた誘起電圧の位相は、同位相電圧Vsと同位相であり、駆動電圧Vgと同位相である。
【0073】
誘起電圧が操作者Mに生じている場合、誘起電圧に対応する電波が操作者Mから外部に放射される。これにより、操作者Mの指Fが検出面12aに近づくと、操作者Mの指Fがセンサ12に接触していない状態でも、操作者Mから放射される電波が電極14に到達することで、人体容量Cmと電極容量Ceとが結合する。
【0074】
また、誘起電圧が操作者Mに生じている場合、充電された人体容量Cmは、誘起電圧と駆動電圧Vgとの電位差によって充電される。同位相電圧Vsに応じた誘起電圧と駆動電圧Vgとは互いに同位相であり、同位相電圧Vsの振幅Hsと駆動電圧Vgの振幅とが等しいため、この誘起電圧と駆動電圧Vgとの電位差は、ほぼゼロである。つまり、同位相電圧Vsに応じた誘起電圧が操作者Mに生じている場合において、人体容量Cmは充電されず、ほぼゼロである。
【0075】
よって、同位相電圧Vsに応じた誘起電圧が操作者Mに生じている場合、電極容量Ceのみが充電されるため、充電された結合容量Ccの電位は、第1充電電位Ve1とほぼ等しい(時刻t1~t3)。よって、充電された結合容量Ccの電位に対応する検出信号Sdの電位は、第1充電電位Ve1に対応する第1検出電位Vd1とほぼ等しい(時刻t4)。
【0076】
つまり、同位相信号Ssが導電体20に供給されている場合、操作者Mが検出システム1を操作しても、検出信号Sdの電位がほとんど変動せず、閾値Vh以上とならない。よって、検出回路34は、操作者Mの指Fを検出しない。すなわち、非検出モードにおいて、第2信号出力回路32が同位相信号Ssを出力することで、検出システム1に対する操作者Mの操作を禁止することができる。
【0077】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る検出システム1について、主として上記の第2実施形態の検出システム1と異なる部分を説明する。
【0078】
図9は、第3実施形態に係る検出システム1の構成を示す図である。第3実施形態の検出システム1は、2つの導電体120を備えている。具体的には、検出システム1は、第1導電体121および第2導電体122を備えている。
【0079】
第1導電体121および第2導電体122は、それぞれ互いに異なる複数の操作者Mが位置するように配置される。例えば、第1導電体121は車両の運転席3に配置され、第2導電体122はその車両の助手席4に配置される。
【0080】
第3実施形態において、制御装置30は、運転席3および助手席4それぞれに対して動作モードの選択をして、検出システム1を制御する。第2信号出力回路32は、動作モードに応じて、第1導電体121および第2導電体122それぞれに、逆位相信号Srおよび同位相信号Ssの一方を選択して出力する。
【0081】
運転席3に検出モードが選択されている場合、第2信号出力回路32は、第1導電体121に逆位相信号Srを出力する。この場合、検出回路34は、運転席3に位置する操作者Mの指Fを上記のように検出する。よって、運転席3に位置する操作者Mは、検出システム1の操作を許容される。
【0082】
一方、運転席3に非検出モードが選択されている場合、第2信号出力回路32は、第1導電体121に同位相信号Ssを出力する。この場合、検出回路34は、運転席3に位置する操作者Mの指Fを上記のように検出しない。よって、運転席3に位置する操作者Mは、検出システム1の操作を禁止される。
【0083】
また、助手席4に検出モードが選択されている場合、第2信号出力回路32は、第2導電体122に逆位相信号Srを出力する。この場合、検出回路34は、助手席4に位置する操作者Mの指Fを上記のように検出する。よって、助手席4に位置する操作者Mは、検出システム1の操作を許容される。
【0084】
一方、助手席4に非検出モードが選択されている場合、第2信号出力回路32は、第2導電体122に同位相信号Ssを出力する。この場合、検出回路34は、助手席4に位置する操作者Mの指Fを上記のように検出しない。よって、助手席4に位置する操作者Mは、検出システム1の操作を禁止される。
【0085】
このように、第1導電体121および第2導電体122それぞれに、逆位相信号Srおよび同位相信号Ssの一方が選択して供給されることで、第1導電体121に対応する操作者Mおよび第2導電体122に対応する操作者Mに対して、検出システム1の操作を許容したり禁止したりすることができる。
【0086】
例えば、運転席3に位置する操作者Mの操作を許容し、助手席4に位置する操作者Mの操作を禁止する場合、第2信号出力回路32は、第1導電体121に逆位相信号Srを出力し、第2導電体122に同位相信号Ssを出力する。
【0087】
なお、検出システム1は、導電体120を2つ有しているが、導電体120の個数がこれに限定されないことは言うまでもない。例えば、検出システム1は、3つの導電体120を備え、3つの導電体120は、それぞれ、車両の運転席3、助手席4および後部座席に配置されてもよい。また、導電体120は、車両以外の乗り物、公共施設および娯楽施設などにおいて、座席などの操作者の近傍に位置するものに配置されてもよい。
【0088】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【0089】
例えば、上記のセンサ12は、自己静電容量式のセンサであるが、センサ基板13の周縁部に複数(例えば4つ)の電極が配置される表面型静電容量式、および、複数の電極が例えば平面視で格子状に配置されている投影型静電容量式などの他の静電容量式のセンサでもよい。
【0090】
また、同位相電圧Vsの振幅Hsは、駆動電圧Vgの振幅Hgと異なってもよい。この場合、同位相電圧Vsの振幅Hsと駆動電圧Vgの振幅Hgとの差が小さいほど、操作者Mの指Fが近づくことによる検出信号Sdの電位の変動が小さくなる。よって、同位相電圧Vsの振幅Hsと駆動電圧Vgの振幅Hgとの差が小さいほど、容易に、検出システム1が操作者Mの指Fなどの検出対象を検出できないようにすることができる。
【0091】
また、第2信号出力回路32は、導電体20、120の近傍に操作者Mが位置する場合に逆位相信号Srおよび同位相信号Ssの一方を出力し、導電体20、120の近傍に操作者Mが位置しない場合に逆位相信号Srおよび同位相信号Ssの一方を出力しなくてもよい。この場合、検出システム1は、操作者Mを検知する検知センサをさらに備え、この検知センサによって操作者Mが検知された場合に第2信号出力回路32は、逆位相信号Srおよび同位相信号Ssの一方を出力する。この検知センサは、例えば、操作者Mの体重によって作動するスイッチ、操作者Mの体重を検出する荷重センサ、および、操作者Mとの距離を検出する測距センサである。
【0092】
また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0093】
1 検出システム
12 センサ
12a 検出面
20、120 導電体
30 制御装置
31 第1信号出力回路
32 第2信号出力回路
33 検出信号生成回路
34 検出回路
Hg 振幅
Hr 振幅
Hs 振幅
M 操作者
Sd 検出信号
Sg 駆動信号
Sr 逆位相信号
Ss 同位相信号
T1 第1所定周期(所定周期)
Vg 駆動電圧
Vr 逆位相電圧
Vs 同位相電圧