(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070070
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】クロマトグラフ用ポンプユニット
(51)【国際特許分類】
G01N 30/32 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
G01N30/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180440
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 理悟
(72)【発明者】
【氏名】中村 恭章
(72)【発明者】
【氏名】飯嶋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 康佑
(57)【要約】
【課題】分析の再現性を向上させることが可能なクロマトグラフ用ポンプユニットを提供する。
【解決手段】クロマトグラフ用ポンプユニットは、プランジャポンプおよび上流逆止弁100を含む。プランジャポンプは、ポンプヘッドを有し、移動相を圧送する。上流逆止弁100は、ポンプヘッドの上流に設けられる。上流逆止弁100は、流路部50および温調部30を含む。流路部50は、プランジャポンプに移動相を導く。温調部30は、流路部50を通過する移動相の温度を調整する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプヘッドを有し、移動相を圧送するプランジャポンプと、
前記ポンプヘッドの上流に設けられる逆止弁とを備え、
前記逆止弁は、
前記プランジャポンプに移動相を導く流路部と、
前記流路部を通過する移動相の温度を調整する温調部とを含む、クロマトグラフ用ポンプユニット。
【請求項2】
前記流路部は、螺旋形状を有する、請求項1記載のクロマトグラフ用ポンプユニット。
【請求項3】
前記逆止弁は、内部空間を有しかつ当該内部空間に前記流路部を収容するハウジングをさらに含み、
前記温調部は、前記ハウジングの外面に取り付けられる、請求項1または2記載のクロマトグラフ用ポンプユニット。
【請求項4】
前記逆止弁は、前記流路部につながる貫通孔を有しかつ前記ハウジングの前記内部空間に充填されるプラグをさらに含む、請求項3記載のクロマトグラフ用ポンプユニット。
【請求項5】
前記流路部は、前記プラグに取り付けられる配管を含む、請求項4記載のクロマトグラフ用ポンプユニット。
【請求項6】
前記ハウジングの内面と前記プラグの外面とは接触し、
前記ハウジングの前記内面には、前記流路部として用いられる溝が形成される、請求項4記載のクロマトグラフ用ポンプユニット。
【請求項7】
前記ハウジングの内面と前記プラグの外面とは接触し、
前記プラグの前記外面には、前記流路部として用いられる溝が形成される、請求項4記載のクロマトグラフ用ポンプユニット。
【請求項8】
前記プラグは、前記ハウジングよりも熱伝導率が低い材質により形成される、請求項4記載のクロマトグラフ用ポンプユニット。
【請求項9】
前記プラグは、フッ素樹脂により形成される、請求項4記載のクロマトグラフ用ポンプユニット。
【請求項10】
前記逆止弁は、前記ハウジングと前記プラグとの間に設けられるシール部材をさらに含む、請求項4記載のクロマトグラフ用ポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ用ポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる物質を異なる成分ごとに分離する分析装置としてクロマトグラフが知られている。例えば、特許文献1に記載された液体クロマトグラフにおいては、リザーバに収容された移動相が送液ポンプにより圧送される。また、試料が試料注入器により移動相に注入され、カラムに導入される。カラムに導入された試料は、化学的性質または組成の違いにより成分ごとに溶離され、検出器により検出される。検出器による検出結果に基づいて、クロマトグラムがデータ処理ユニットにより生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周囲温度の変化によりリザーバ中の移動相の温度が変化すると、一定の速度でポンプのシリンジを駆動させた場合でも、移動相の密度が変化するため、送液される移動相の流量が変化し、試料の分析の再現性が低下する。そこで、特許文献1においては、リザーバと送液ポンプとの間に移動相を室温より低い一定温度に保つ温度制御機構が設けられる。しかしながら、特許文献1の構成では、近年求められている試料の分析の再現性を満たせないことがある。
【0005】
本発明の目的は、分析の再現性を向上させることが可能なクロマトグラフ用ポンプユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ポンプヘッドを有し、移動相を圧送するプランジャポンプと、前記ポンプヘッドの上流に設けられる逆止弁とを備え、前記逆止弁は、前記プランジャポンプに移動相を導く流路部と、前記流路部を通過する移動相の温度を調整する温調部とを含む、クロマトグラフ用ポンプユニットに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分析の再現性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るポンプユニットを含む液体クロマトグラフの構成を示す図である。
【
図2】
図1の上流逆止弁の構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図1のプランジャポンプの吸入動作時における上流逆止弁の動作を説明するための図である。
【
図6】実施例において生成された液体クロマトグラムを示す図である。
【
図7】比較例において生成された液体クロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)クロマトグラフ
以下、本発明の実施の形態に係るクロマトグラフ用ポンプユニット(以下、単にポンプユニットと呼ぶ。)について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るポンプユニットを含む液体クロマトグラフ(LC)の構成を示す図である。
図1に示すように、LC300は、ポンプユニット200、移動相容器210、試料供給部220、分離カラム230、検出器240および処理装置250を備える。
【0010】
移動相容器210は、水溶液または有機溶媒等の溶媒を移動相として貯留する。移動相容器210においては、移動相が、周囲の温度が約23℃の状態で維持される。LC300は、異なる複数の溶媒をそれぞれ貯留する複数の移動相容器210を備えてもよい。この場合、LC300は、複数の移動相を混合して下流に供給するミキサをさらに備えてもよい。
【0011】
ポンプユニット200は、上流逆止弁100、下流逆止弁110およびプランジャポンプ120を含む。プランジャポンプ120は、ポンプヘッド121およびプランジャ122を含む。本例では、ポンプユニット200は、並列型ダブルプランジャ方式で構成される。そのため、ポンプユニット200は、2組の上流逆止弁100、下流逆止弁110およびプランジャポンプ120を含む。
【0012】
上流逆止弁100は、対応するプランジャポンプ120のポンプヘッド121の上流に設けられる。下流逆止弁110は、対応するプランジャポンプ120のポンプヘッド121の下流に設けられる。2つの上流逆止弁100は、互いに接続されるとともに、移動相容器210に接続される。また、2つの下流逆止弁110は、互いに接続されるとともに、試料供給部220に接続される。
【0013】
2つのプランジャポンプ120のプランジャ122は、図示しない駆動機構により互いに逆位相で往復運動する。これにより、2つのプランジャポンプ120が互いに相補的に駆動する。したがって、一方のプランジャポンプ120が吐出動作を行う期間に、他方のプランジャポンプ120が吸入動作を行う。また、一方のプランジャポンプ120が吸入動作を行う期間に、他方のプランジャポンプ120が吐出動作を行う。これにより、移動相容器210に貯留された移動相が安定的に下流に圧送される。
【0014】
試料供給部220は、例えばサンプルインジェクタであり、ポンプユニット200により圧送された移動相に分析対象の試料を供給する。試料供給部220により供給された試料は、移動相に混合され、分離カラム230に導入される。分離カラム230は、図示しないカラム恒温槽の内部に収容され、所定の一定温度に調整される。分離カラム230は、導入された試料を化学的性質または組成の違いにより成分ごとに分離する。
【0015】
検出器240は、例えばUV(紫外可視分光)検出器、吸光度検出器またはRI(示差屈折率)検出器である。検出器240は、分離カラム230により分離された試料の成分を検出し、検出強度を示す検出信号を処理装置250に与える。
【0016】
処理装置250は、例えばCPUおよびメモリを含み、ポンプユニット200、試料供給部220、分離カラム230(カラム恒温槽)および検出器240の動作を制御する。また、処理装置250は、検出器240により与えられた検出信号を処理することにより、分離カラム230による試料の各成分の保持時間と検出強度との関係を示す液体クロマトグラムを生成する。
【0017】
(2)上流逆止弁の構造
移動相容器210からの移動相は、上流逆止弁100の上流端部から上流逆止弁100内に導入され、上流逆止弁100の下流端部から対応するプランジャポンプ120のポンプヘッド121に導出される。以下、上流逆止弁100の構造について説明する。なお、下流逆止弁110の構造については、よく知られているので、ここでは説明を省略する。
【0018】
図2は、
図1の上流逆止弁100の構造を示す縦断面図である。
図2に示すように、上流逆止弁100は、上流から下流に向かって延びる形状を有する。以下、上流逆止弁100が延びる方向を軸方向と呼ぶ。上流逆止弁100は、プラグ10、ハウジング20、温調部30、シール部材40、流路部50および弁ユニット60を含む。
【0019】
プラグ10は、例えば低い熱伝導率を有しかつ高い耐腐食性を有する材料により形成される。本例では、プラグ10は、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)により形成される。プラグ10は、ねじ部11および突出部12を含む。
図2では、ねじ部11および突出部12の境界が便宜的に一点鎖線で示される。
【0020】
ねじ部11は、雄ねじであり、円柱形状を有する。ねじ部11の外周面には、ねじ11aが形成される。また、ねじ部11には、軸方向に延びる貫通孔11bが形成される。貫通孔11bには、例えばフェルールにより移動相容器210からの流路が取り付けられる。突出部12は、ねじ部11よりも径が小さい円柱形状を有し、ねじ部11の下流端面から軸方向に突出する。突出部12には、当該突出部12の上流端面と外周面との間につながる貫通孔12aが形成される。ねじ部11の貫通孔11bと、突出部12の貫通孔12aとは連通する。
【0021】
ハウジング20は、例えば高い熱伝導率を有しかつ高い耐腐食性を有する材料により形成される。本例では、ハウジング20は、例えばステンレスまたはアルミニウム等の金属により形成される。ハウジング20は、ねじ部21、流路収容部22および弁収容部23を含む。
図2では、ねじ部21、流路収容部22および弁収容部23の境界が便宜的に点線で示される。
【0022】
ねじ部21は、雌ねじであり、円環形状を有する。ねじ部21の内周面には、ねじ21aが形成される。流路収容部22は、ねじ部21よりも径が小さい円筒形状を有し、ねじ部21の下流端面から軸方向に突出する。流路収容部22の下流端部は底面部材22aにより閉塞される。また、本例では、底面部材22aの下流端面の中央部は、軸方向に突出する。底面部材22aには、軸方向に延びる貫通孔22bが形成される。
【0023】
弁収容部23は、流路収容部22よりも径が小さい円筒形状を有する。本例では、弁収容部23は、底面部材22aの突出部分と同程度の径を有し、底面部材22aの下流端面から軸方向に延びるように設けられる。流路収容部22の内部空間22cと弁収容部23の内部空間23aとは、底面部材22aの貫通孔22bにより連通する。
【0024】
温調部30は、例えば電熱線等の電気抵抗体であり、ハウジング20の流路収容部22の外周面に取り付けられる。温調部30は、ペルチェ素子等の温調素子であってもよい。シール部材40は、例えばOリングであり、プラグ10の突出部12を取り囲むようにねじ部11の下流端面に配置される。
【0025】
本実施の形態では、流路部50は、例えば金属により形成された配管51である。配管51は、ハウジング20と同様の材料により形成されてもよいし、他の材料により形成されてもよい。配管51は、プラグ10の突出部12の外周面に巻回される。配管51の上流端部は、突出部12の外周面で開口する貫通孔12aに接続される。配管51の下流端部は、突出部12の下流端面の近傍に固定される。
【0026】
プラグ10は、上流からハウジング20に挿入された状態で、ハウジング20に対して回転される。この場合、プラグ10のねじ部11のねじ11aと、ハウジング20のねじ部21のねじ21aとが螺合する。これにより、プラグ10の突出部12がハウジング20の流路収容部22に位置する状態で、プラグ10とハウジング20とが固定される。したがって、突出部12の外周面に巻回された配管51は、流路収容部22に収容される。プラグ10とハウジング20との間は、シール部材40によりシールされる。
【0027】
弁ユニット60は、弁座61、弁体62および規制部材63を含み、ハウジング20の弁収容部23に収容される。本例では、弁ユニット60は、2組の弁座61、弁体62および規制部材63を含む。以下の説明では、一方の組の弁座61、弁体62および規制部材63を、それぞれ弁座61a、弁体62aおよび規制部材63aと呼ぶ。また、他方の組の弁座61、弁体62および規制部材63を、それぞれ弁座61b、弁体62bおよび規制部材63bと呼ぶ。
【0028】
弁座61aは、例えば略筒形状を有し、流路収容部22の底面部材22aの貫通孔22bを取り囲むように底面部材22aの下流端面に取り付けられる。弁体62aは、例えば球形状を有し、弁座61aの下流に配置される。弁体62aは、軸方向に移動することにより、弁座61aの下流端面に着座可能でかつ弁座61aの下流端面から離間可能に構成される。規制部材63aは、例えば略筒形状を有し、弁座61aおよび弁体62aを取り囲むように配置される。規制部材63aは、弁体62aの軸方向以外への移動および軸方向への移動量を規制する。
【0029】
弁座61bは、例えば略筒形状を有し、規制部材63aの下流端面に取り付けられる。弁体62bは、例えば球形状を有し、弁座61bの下流に配置される。弁体62bは、軸方向に移動することにより、弁座61bの下流端面に着座可能でかつ弁座61bの下流端面から離間可能に構成される。規制部材63bは、例えば略筒形状を有し、弁座61bおよび弁体62bを取り囲むように配置される。規制部材63bは、弁体62bの軸方向以外への移動および軸方向への移動量を規制する。
【0030】
(3)上流逆止弁の動作
図3は、
図1のプランジャポンプ120の吸入動作時における上流逆止弁100の動作を説明するための図である。
図3には、プランジャポンプ120の吸入動作時における移動相の流れが太い矢印で示される。
図3に示すように、プランジャポンプ120が吸入動作を行う期間、すなわちポンプヘッド121のポンプ室内が陰圧になる期間には、弁体62a,62bは、弁座61a,61bからそれぞれ離間する。この場合、弁座61aと弁体62aとの間、および弁座61bと弁体62bとの間が開放される。
【0031】
この期間においては、
図1の移動相容器210に収容された移動相は、所定の流路を通って、ねじ部11の貫通孔11bからプラグ10内に導入される。プラグ10内に導入された移動相は、突出部12の貫通孔12aを通して流路部50(本例では配管51)の上流端部から流路部50に導入される。流路部50内に導入された移動相は、螺旋状の流路部50を通って、流路部50の下流端部に導かれる。
【0032】
流路収容部22の外周面には、温調部30が設けられている。また、ハウジング20は、高い熱伝導率を有する。そのため、温調部30により発生する熱は、流路収容部22を通して流路部50に伝達される。流路収容部22の厚みは、流路部50に短時間で十分な熱を伝達可能でかつ十分な耐圧を有する範囲で小さくされてもよい。移動相は、流路収容部22から伝達される熱により、流路部50を流れる期間に所定の一定温度に調整される。本例では、流路部50を流れる移動相が温調部30により約30℃または約40℃に加熱される。
【0033】
温度が調整された移動相は、流路部50の下流端部から流路収容部22の内部空間22cに導出される。なお、シール部材40は、プラグ10とハウジング20との固定の際に、ねじ部11とねじ部21とにより所定の厚みだけ押し潰される。そのため、ねじ部11とねじ部21との間がシールされる。したがって、流路収容部22の内部空間22cに導出された移動相が、ねじ部11とねじ部21との間から漏出することが防止される。
【0034】
流路収容部22の内部空間22cに導出された移動相は、底面部材22aの貫通孔22bを通して弁収容部23の内部空間23aに導入される。弁収容部23の内部空間23aに導入された移動相は、弁座61aと弁体62aとの間、および弁座61bと弁体62bとの間を順次通過して、弁収容部23の下流端部から導出される。これにより、ポンプヘッド121のポンプ室に移動相が吸入される。
【0035】
一方、プランジャポンプ120が吐出動作を行う期間、すなわちポンプヘッド121のポンプ室内が陽圧になる期間には、弁体62a,62bは、弁座61a,61bにそれぞれ着座する。この場合、弁座61aと弁体62aとの間、および弁座61bと弁体62bとの間が閉止される。これにより、下流から上流への移動相の逆流が防止される。
【0036】
(4)効果
本実施の形態に係るポンプユニット200においては、プランジャポンプ120の吸入動作時に、上流逆止弁100の流路部50を通して移動相がプランジャポンプ120のポンプヘッド121に導入される。移動相は、流路部50を流れる期間に温調部30により温調される。このように、ポンプヘッド121の上流の直近で移動相が温調されるので、一定の密度の移動相がポンプヘッド121に導入される。これにより、吐出動作時にプランジャポンプ120により圧送される移動相の量が一定となる。その結果、分析の再現性を向上させることができる。
【0037】
本例では、流路部50は螺旋形状を有するので、上流逆止弁100を軸方向に大型化することなく、流路部50の流路長を大きくすることができる。そのため、流路部50を流れる移動相を温調部30により十分に温調することができる。また、流路部50はプラグ10に巻回された配管51を含む。この場合、流路部50を容易に実現することができる。
【0038】
流路部50はハウジング20の流路収容部22の内部空間22cに収容され、温調部30は流路収容部22の外面に取り付けられる。この場合、簡単な構成で流路部50を流れる移動相を温調部30により温調することができる。流路収容部22の内部空間22cにはプラグ10の突出部12が充填され、プラグ10のねじ部11および突出部12には、流路部50につながる貫通孔11b,12aがそれぞれ形成される。これにより、流路部50を流路収容部22に収容しつつ、ハウジング20内の流路部50に移動相を容易に供給することができる。
【0039】
プラグ10は、ハウジング20よりも熱伝導率が低い材質により形成されてもよい。例えば、プラグ10は、フッ素樹脂により形成されてもよい。この場合、温調部30により発生する熱が、プラグ10を通して放散されることが防止される。これにより、流路部50を流れる移動相をより効率よく温調することができる。
【0040】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、流路部50が配管51により構成されるが、実施の形態はこれに限定されない。
図4は、流路部50の他の例を示す図である。
図4に示すように、本例では、ハウジング20の流路収容部22の内周面と、プラグ10の突出部12の外周面とが接触する。また、流路収容部22の内周面には、周回しながら軸方向に延びる溝22dが形成される。溝22dは、ねじ溝であってもよい。この場合、流路収容部22の内周面と突出部12の外周面との間に形成された空間である溝22dが、流路部50として用いられる。
【0041】
図5は、流路部50のさらに他の例を示す図である。
図5に示すように、本例では、ハウジング20の流路収容部22の内周面と、プラグ10の突出部12の外周面とが接触する。また、突出部12の外周面には、周回しながら軸方向に延びる溝12bが形成される。溝12bは、ねじ溝であってもよい。この場合、流路収容部22の内周面と突出部12の外周面との間に形成された空間である溝12bが、流路部50として用いられる。
図4または
図5の例においては、上流逆止弁100の部品点数の増加を抑制しつつ流路部50を実現することができる。
【0042】
(b)上記実施の形態において、流路部50は螺旋形状を有するが、実施の形態はこれに限定されない。流路部50の流路長を大きくする必要がない場合、または上流逆止弁100が軸方向に大型化してもよい場合には、流路部50は直線形状等の他の形状を有してもよい。したがって、流路部50は、プラグ10のねじ部11および突出部12を軸方向に貫通するように設けられてもよい。
【0043】
(c)上記実施の形態において、プラグ10はハウジング20よりも熱伝導率が低い材質により形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。流路部50を流れる移動相の温度が温調部30により十分に調整可能である場合には、プラグ10はハウジング20よりも熱伝導率が低い材質により形成されなくてもよい。例えば、プラグ10は、ハウジング20と同程度の熱伝導率を有する材質により形成されてもよい。あるいは、プラグ10は、ハウジング20と同じ材質で形成されてもよい。この場合、プラグ10とハウジング20とは、一体的に形成されてもよい。
【0044】
(d)上記実施の形態において、プラグ10とハウジング20との間にシール部材40が設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。プラグ10とハウジング20との密着性が高い場合には、プラグ10とハウジング20との間にシール部材40が設けられなくてもよい。
【0045】
(e)上記実施の形態において、ポンプユニット200は並列型ダブルプランジャ方式で構成されるが、実施の形態はこれに限定されない。ポンプユニット200は、直列型ダブルプランジャ方式で構成されてもよい。あるいは、ポンプユニット200は、シングルプランジャ方式で構成されてもよい。この場合、ポンプユニット200は、1組の上流逆止弁100、下流逆止弁110およびプランジャポンプ120を含む。
【0046】
(f)上記実施の形態において、弁ユニット60は2組の弁座61、弁体62および規制部材63を含むが、実施の形態はこれに限定されない。移動相の逆流を十分に防止可能である場合には、弁ユニット60は、1組の弁座61、弁体62および規制部材63を含んでもよい。一方で、開状態と閉状態とを高い精度で切り換え可能に上流逆止弁100を構成する場合には、弁ユニット60は、3組以上の弁座61、弁体62および規制部材63を含んでもよい。
【0047】
(6)実施例および比較例
以下の実施例においては、
図2の上流逆止弁100を含むポンプユニット200を用いて、試料の液体クロマトグラムを生成した。また、比較例においては、温調部を有さない上流逆止弁を含むポンプユニットを用いて、実施例と同一の試料の液体クロマトグラムを生成した。
【0048】
図6は、実施例において生成された液体クロマトグラムを示す図である。
図7は、比較例において生成された液体クロマトグラムを示す図である。
図6および
図7において、横軸は保持時間を示し、縦軸は試料の検出強度を示す。また、室温28℃の環境で、所定の試料の成分に対して検出された検出強度のピークが実線で示される。室温32℃の環境で、同一の成分に対して検出された検出強度のピークが点線で示される。
【0049】
実施例においては、
図6に示すように、室温が28℃から32℃に変化したことにより、ピークが0.004分変動した。一方、比較例においては、
図7に示すように、室温が28℃から32℃に変化したことにより、ピークが0.014分変動した。これらの結果、上流逆止弁100において、流路部50を流れる移動相を温調部30により温調することにより、ピークの変動が約1/3に抑制されることが確認された。
【0050】
(7)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0051】
(第1項)一態様に係るクロマトグラフ用ポンプユニットは、
ポンプヘッドを有し、移動相を圧送するプランジャポンプと、
前記ポンプヘッドの上流に設けられる逆止弁とを備え、
前記逆止弁は、
前記プランジャポンプに移動相を導く流路部と、
前記流路部を通過する移動相の温度を調整する温調部とを含んでもよい。
【0052】
このクロマトグラフ用ポンプユニットにおいては、プランジャポンプの吸入動作時に、逆止弁の流路部を通して移動相がプランジャポンプのポンプヘッドに導入される。移動相は、流路部を流れる期間に温調部により温調される。このように、ポンプヘッドの上流の直近で移動相が温調されるので、一定の密度の移動相がポンプヘッドに導入される。これにより、吐出動作時にプランジャポンプにより圧送される移動相の量が一定となる。その結果、分析の再現性を向上させることができる。
【0053】
(第2項)第1項に記載のクロマトグラフ用ポンプユニットにおいて、
前記流路部は、螺旋形状を有してもよい。
【0054】
この場合、流路部の流路長を大きくすることができる。これにより、流路部を流れる移動相を温調部により十分に温調することができる。
【0055】
(第3項)第1項または第2項に記載のクロマトグラフ用ポンプユニットにおいて、
前記逆止弁は、内部空間を有しかつ当該内部空間に前記流路部を収容するハウジングをさらに含み、
前記温調部は、前記ハウジングの外面に取り付けられてもよい。
【0056】
この場合、簡単な構成で流路部を流れる移動相を温調部により温調することができる。
【0057】
(第4項)第3項に記載のクロマトグラフ用ポンプユニットにおいて、
前記逆止弁は、前記流路部につながる貫通孔を有しかつ前記ハウジングの前記内部空間に充填されるプラグをさらに含んでもよい。
【0058】
この場合、流路部をハウジングに収容しつつ、ハウジング内の流路部に移動相を容易に供給することができる。
【0059】
(第5項)第4項に記載のクロマトグラフ用ポンプユニットにおいて、
前記流路部は、前記プラグに取り付けられる配管を含んでもよい。
【0060】
この場合、流路部を容易に実現することができる。
【0061】
(第6項)第4項に記載のクロマトグラフ用ポンプユニットにおいて、
前記ハウジングの内面と前記プラグの外面とは接触し、
前記ハウジングの前記内面には、前記流路部として用いられる溝が形成されてもよい。
【0062】
この場合、逆止弁の部品点数の増加を抑制しつつ流路部を実現することができる。
【0063】
(第7項)第4項に記載のクロマトグラフ用ポンプユニットにおいて、
前記ハウジングの内面と前記プラグの外面とは接触し、
前記プラグの前記外面には、前記流路部として用いられる溝が形成されてもよい。
【0064】
この場合、逆止弁の部品点数の増加を抑制しつつ流路部を実現することができる。
【0065】
(第8項)第4項~第7項のいずれか一項に記載のクロマトグラフ用ポンプユニットにおいて、
前記プラグは、前記ハウジングよりも熱伝導率が低い材質により形成されてもよい。
【0066】
この場合、温調部により発生する熱が、プラグを通して放散されることが防止される。これにより、流路部を流れる移動相をより効率よく温調することができる。
【0067】
(第9項)第4項~第8項のいずれか一項に記載のクロマトグラフ用ポンプユニットにおいて、
前記プラグは、フッ素樹脂により形成されてもよい。
【0068】
この場合、プラグの熱伝導率を低くすることができる。そのため、温調部により発生する熱が、プラグを通して放散されることが防止される。これにより、流路部を流れる移動相をより効率よく温調することができる。
【0069】
(第10項)第4項~第9項のいずれか一項に記載のクロマトグラフ用ポンプユニットにおいて、
前記逆止弁は、前記ハウジングと前記プラグとの間に設けられるシール部材をさらに含んでもよい。
【0070】
この場合、簡単な構成でハウジングとプラグとの間から移動相が漏出することを防止することができる。
【符号の説明】
【0071】
10…プラグ,11,21…ねじ部,11a,21a…ねじ,11b,12a,22b…貫通孔,12…突出部,12b,22d…溝,20…ハウジング,22…流路収容部,22a…底面部材,22c,23a…内部空間,23…弁収容部,30…温調部,40…シール部材,50…流路部,51…配管,60…弁ユニット,61,61a,61b…弁座,62,62a,62b…弁体,63,63a,63b…規制部材,100…上流逆止弁,110…下流逆止弁,120…プランジャポンプ,121…ポンプヘッド,122…プランジャ,200…ポンプユニット,210…移動相容器,220…試料供給部,230…分離カラム,240…検出器,250…処理装置,300…LC