(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007008
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】鉄道車両の袖仕切り及び袖仕切りシステム
(51)【国際特許分類】
B61D 33/00 20060101AFI20240111BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B61D33/00 Z
B61D37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108104
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩野 真寿美
(72)【発明者】
【氏名】中村 知隆
(72)【発明者】
【氏名】有田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓実
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の客室でのトラブル発生時に乗客が迅速に身を守れるようにする。
【解決手段】鉄道車両の袖仕切りは、ロングシートの端部に設けられる仕切り枠と、防護板及び持ち手を含む防護盾と、を備える。前記仕切り枠は、前記防護板の厚さ方向を車両長手方向に向けた状態で前記防護盾を格納する盾格納空間と、前記盾格納空間に格納された前記防護盾が外部に向けて通過可能な盾出口と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両のロングシートの端部に設けられる仕切り枠と、
防護板及び持ち手を含む防護盾と、を備え、
前記仕切り枠は、前記防護板の厚さ方向を車両長手方向に向けた状態で前記防護盾を格納する盾格納空間と、前記盾格納空間に格納された前記防護盾が外部に向けて通過可能な盾出口と、を含む、鉄道車両の袖仕切り。
【請求項2】
前記盾出口は、前記袖仕切りの厚さ方向に直交する盾取出方向に前記盾格納空間を開放する、請求項1に記載の鉄道車両の袖仕切り。
【請求項3】
前記仕切り枠は、前記盾格納空間から前記盾出口に前記防護板を案内するガイドを含む、請求項2に記載の鉄道車両の袖仕切り。
【請求項4】
前記仕切り枠は、前記袖仕切りの厚さ方向に前記盾格納空間を開放して且つ前記袖仕切りの厚さ方向から見て前記防護板よりも小さい開口を画定し、
前記防護盾は、前記盾格納空間に格納された状態で前記開口を介して外部に露出する、請求項2に記載の鉄道車両の袖仕切り。
【請求項5】
前記開口は、前記防護盾が前記盾格納空間に格納された状態で前記持ち手を外部に露出させ、
前記開口は、前記防護盾が前記盾出口を通って取り出されるときの前記持ち手の移動軌跡を含むように前記盾出口に連続している、請求項4に記載の鉄道車両の袖仕切り。
【請求項6】
前記盾出口を閉鎖する蓋を更に備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の鉄道車両の袖仕切り。
【請求項7】
前記蓋は、前記仕切り枠から離間自在に前記防護板に取り付けられている、請求項6に記載の鉄道車両の袖仕切り。
【請求項8】
前記蓋を閉鎖状態に保つロック位置と、前記蓋を開放状態にすることを許容する非ロック位置と、の間で動作可能なロック部材を含む蓋ロックを更に備える、請求項6に記載の鉄道車両の袖仕切り。
【請求項9】
前記蓋ロックは、前記ロック位置と前記非ロック位置との間で前記ロック部材を動作させるアクチュエータを更に含む、請求項8に記載の鉄道車両の袖仕切り。
【請求項10】
請求項9に記載の前記袖仕切りと、
前記アクチュエータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、所定の非常信号を受信すると、前記アクチュエータを制御して前記ロック部材を前記非ロック位置に動作させる、鉄道車両の袖仕切りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両の袖仕切り及び袖仕切りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、車両長手方向に沿って乗客が着座するように側構体に沿って延びるロングシートが用いられるものがある。特許文献1には、側扉に面する空間とロングシートとを区切るようにロングシートの端部に設けられる袖仕切りが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、鉄道車両の客室において、刃物等の凶器を所持した不審者によるトラブルが発生している。走行中の車両では乗客の逃げ場がなく、乗客にはトラブルからに身を守る手段が無い場合がある。乗務員室に防護盾を保管しておくことも考えられるが、トラブル発生地点が乗務員室から遠い場合には、防護盾を迅速に使用することができない。
【0005】
そこで本開示の一態様は、鉄道車両の客室でのトラブル発生時に乗客が迅速に身を守れるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る鉄道車両の袖仕切りは、鉄道車両のロングシートの端部に設けられる仕切り枠と、防護板及び持ち手を含む防護盾と、を備える。前記仕切り枠は、前記防護板の厚さ方向を車両長手方向に向けた状態で前記防護盾を格納する盾格納空間と、前記盾格納空間に格納された前記防護盾が外部に向けて通過可能な盾出口と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、客室でのトラブル発生時には、袖仕切りにおいて仕切り枠から盾出口を介して防護盾を取り外すことで、その防護盾を使って乗客が迅速に身を守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、鉄道車両の客室を車幅方向内側から見た側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の袖仕切りを車両長手方向から見た正面図である。
【
図5】
図5は、
図2の袖仕切りを用いた袖仕切りシステムのブロック図である。
【
図6】
図6は、
図2の袖仕切りにおける防護盾の取り出しを説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明では、車両が走行する方向を車両長手方向(前後方向)とし、それに直交する横方向を車幅方向(車両左右方向)として定義する。
【0010】
図1は、鉄道車両1の客室を車幅方向内側から見た側面図である。
図1に示すように、鉄道車両1の車体2を構成する側構体3は、ドア開口4及び窓開口5を有する。ドア開口4には、側扉6が設けられている。窓開口5には、透明板7が設けられている。側構体3の車内側には、窓開口5の下側にロングシート8が設置されている。ロングシート8は、乗客が車幅方向内側に向いて着座するように側構体3に沿って車両長手方向に延びている。ロングシート8の両端部には、それぞれ袖仕切り10が設けられている。袖仕切り10は、側扉6に車幅方向に面する空間とロングシート8とを仕切る。
【0011】
図2は、
図1の袖仕切り10を車両長手方向から見た正面図である。
図2に示すように、ロングシート8は、座サポート8a、座クッション8b、及び、背クッション8cを備える。座サポート8aは、客室を画定する床板9上に設置されている。なお、座サポート8aは、床板9から離れて側構体3に支持されていてもよい。座クッション8bは、座サポート8aに下方から支持されている。背クッション8cは、座クッション8bのうち側構体3寄りの端部から上方に延びている。側構体3は、車外に面する外板3aと、外板3aから車幅方向内側に間隔をあけて配置されて客室に面する内板3bと、を有する。背クッション8cは、内板3bに固定されている。
【0012】
袖仕切り10は、ロングシート8の長手方向の端部に設けられている。袖仕切り10は、車両長手方向に直交する方向に延びている。即ち、袖仕切り10の厚さ方向は、車両長手方向に向いている。座クッション8bに上方に隣接し且つ背クッション8cに車幅方向内側に隣接する着座空間に対し、袖仕切り10は、車両長手方向から見て重なっている。袖仕切り10は、座サポート8a及び内板3bに固定されている。袖仕切り10は、仕切り枠11、防護盾12、蓋13、及び、蓋ロック14を備える。
【0013】
仕切り枠11は、盾格納空間S及び盾出口Qを有する。盾格納空間Sは、防護盾12の厚さ方向を車両長手方向に向けた状態で防護盾12を格納する。盾出口Qは、防護盾12が通過可能な形状及び大きさを有する。盾出口Qは、袖仕切り10の厚さ方向に直交する盾取出方向に盾格納空間Sを開放する。例えば、盾出口Qは、盾格納空間Sを上方に開放する。
【0014】
仕切り枠11は、盾出口Qを通じて盾格納空間Sに出入りする防護板31を案内するガイド25を有する。仕切り枠11は、袖仕切り10の厚さ方向に盾格納空間Sを開放する開口Pを画定している。開口Pは、袖仕切り10の厚さ方向から見て防護板12よりも小さい。防護盾12が盾格納空間Sに格納された状態において、防護盾12は、袖仕切り10の厚さ方向から見て開口Pを包含している。防護盾12は、盾格納空間Sに格納された状態で開口Pを介して外部に露出している。即ち、盾格納空間Sに格納された防護盾12は、袖仕切り10の仕切りとしての機能を果たしている。
【0015】
防護盾12は、防護板31及び持ち手32を備える。持ち手32は、防護板31の片面のみに設けられている。持ち手32は、防護盾12が盾格納空間Sに格納された状態において、袖仕切り10の厚み方向から見て開口Pに配置されている。即ち、持ち手32は、防護盾12が盾格納空間Sに格納された状態において仕切り枠11の外部に露出している。
【0016】
蓋13は、盾出口Qを開閉可能なように盾出口を上方から閉鎖している。蓋13は、仕切り枠11から離間自在に防護板31に取り付けられている。即ち、防護盾12が盾出口Qを通って上方に取り出されるときに防護盾12と一体的に上方に移動する。
【0017】
開口Pは、防護盾12が盾出口Qを通って上方に取り出されるときの持ち手32の移動軌跡Tを含むように盾出口Qに連続している。即ち、仕切り枠11は、袖仕切り10の厚さ方向から見て開口Pを上方に開放している。仕切り枠11は、例えば、袖仕切り10の厚さ方向から見てU字形状を有する。
【0018】
蓋ロック14は、ロック部材41及びアクチュエータ42を備える。ロック部材41は、後述するように、蓋13を閉鎖状態に保つロック位置と、蓋13を開放状態にすることを許容する非ロック位置と、の間で動作可能である。アクチュエータ42は、内板3bと外板3aとの間の空間に配置されている。アクチュエータ42は、ロック部材41を、前記ロック位置と前記非ロック位置との間で動作させるようにロック部材41を駆動する。アクチュエータ42は、例えば、電気モータであるが、油圧アクチュエータでも空気圧アクチュエータでもよい。
【0019】
図3は、
図2のIII-III線断面図である。
図3に示すように、仕切り枠11は、第1側板21、第2側板22、外端板23、及び、内端板24を有する。第1側板21は、ロングシート8に面して袖仕切り10の厚み方向に向いている。第2側板22は、ロングシート8から離れる側に第1側板21と間隔をあけた状態で第1側板21と平行に配置されている。外端板23は、袖仕切り10の厚み方向に直交する方向に面し、第1側板21及び第2側板22の外縁を互いに連結している。外端板23は、第1側板21及び第2側板22の外縁に沿って延びている。
【0020】
第1側板21及び第2側板22の内縁は、開口Pを画定している。内端板24は、第1側板21及び第2側板22の内縁を互いに連結している。外端板23及び内端板24は、盾出口Qに対応する位置には存在しない。内端板24は、第1側板21及び第2側板22の内縁に沿って延びている。内端板24は、その延在方向に沿って延びて防護盾12が挿通されるスリット24aを有する。スリット24aは、互いに重ねられた2枚の防護板31が挿通可能な幅を有する。スリット24aは、後述するガイド25とともにガイドの役目も果たし得る。
【0021】
第1側板21、第2側板22、外端板23及び内端板24により画定される内部空間には、ガイド25、ガイド支持ブラケット26、レシーバ27(
図2参照)、固定ブラケット28(
図2参照)、及び、固定ブラケット29が配置されている。
【0022】
ガイド25は、盾格納空間Sに配置される防護盾12の側縁を案内する。ガイド25は、防護盾12の少なくとも車幅方向の変位を規制する。本実施形態では、ガイド25は、防護盾12の盾取出方向となる鉛直方向に延びたガイドレールである。ガイド25は、鉛直方向から見て盾格納空間Sに向けて開口した断面凹形状を有する。即ち、ガイド25は、防護盾12の車両長手方向の変位も規制する。本実施形態では、2枚の防護盾12が盾格納空間Sに格納されるため、ガイド25は、互いに重ねられた2枚の防護板31の側端部が嵌合可能な断面凹形状を有する。
【0023】
ガイド支持ブラケット26は、ガイド25を第1側板21又は第2側板22に接続している。ガイド支持ブラケット26は、第1側板21又は第2側板22に固定され且つガイド25に固定されている。固定ブラケット29は、第1側板21又は第2側板22に固定された状態で内板3bに対向し、ボルトBによって内板3bに固定されている。
【0024】
図2に戻って、レシーバ27は、仕切り枠11の下部に配置されている。レシーバ27は、盾格納空間Sに格納された防護盾12の下端縁を下方から支持する。レシーバ27は、固定ブラケット28を介して第1側板21又は第2側板22に固定されている。第1側板21(
図3参照)は、ボルトBによって座サポート8aに固定されている。
【0025】
図4は、
図2のIV-IV線断面図である。
図4に示すように、蓋13は、2枚の防護板31の上端部の全体に着脱自在に嵌合されている。蓋13は、互いに重ねられた2枚の防護板31の上端部が挿入される断面凹形状を有する。蓋13は、防護盾12が盾格納空間Sに格納された状態において、盾出口Qを閉鎖するように第1側板21及び第2側板22の上端に載せられる。
【0026】
ロック部材41は、蓋13を閉鎖状態に保つロック位置Xと、蓋13を開放状態にすることを許容する非ロック位置Yと、の間で動作可能となっている。ロック位置Xは、車幅方向から見て、蓋13の移動軌跡上に位置し、具体的には蓋13の真上に位置している。非ロック位置Yは、車幅方向から見て、蓋13の移動軌跡の外側に位置し、具体的にはロック位置Xに対して車両長手方向にずれた場所に位置している。
【0027】
アクチュエータ42が回転駆動力を発生させるものである場合には、アクチュエータ42の回転駆動力によって回転する部材の回転軌跡に沿ってロック位置X及び非ロック位置Yを位置させてもよいし、ラック・アンド・ピニオンのような回転運動を直線運動に変換する変換機構がアクチュエータ42に設けられていてもよい。アクチュエータ42が直線駆動力を発生させるものである場合には、アクチュエータ42の直動軌跡に沿ってロック位置X及び非ロック位置Yを位置させてもよい。
【0028】
図5は、
図2の袖仕切り10を用いた袖仕切りシステム50のブロック図である。
図5に示すように、袖仕切りシステム50は、コントローラ51、複数の客室操作インターフェース52、運転室操作インターフェース53、及び、袖仕切り10を備える。コントローラ51は、処理回路を備える。前記処理回路は、例えば、プロセッサ及びメモリを含む。前記プロセッサは、例えばCPU(中央演算処理装置)を含み得る。前記メモリは、システムメモリ及びストレージメモリを含み得る。前記システムメモリは、RAMを含み得る。前記ストレージメモリは、ハードディスク、フラッシュメモリ等を含み得る。前記ストレージメモリは、プログラムを記憶する。前記システムメモリに読み出された前記プログラムを前記プロセッサが実行する構成は、処理回路の一例である。
【0029】
本明細書で開示するコントローラの要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0030】
客室操作インターフェース52は、車体2(
図1参照)の客室において乗客が操作できるように配置されている。運転室操作インターフェース53は、鉄道車両1の運転室において乗務員が操作できるように配置されている。客室操作インターフェース52及び運転室操作インターフェース53は、例えば、非常ボタン又はロック操作スイッチである。
【0031】
鉄道車両1の客室において、刃物等の凶器を所持した不審者によるトラブルが発生したときには、乗客は、客室操作インターフェース52を操作する。乗務員が当該トラブルに気づいた場合には、乗務員が運転室操作インターフェース53を操作してもよい。客室操作インターフェース52及び運転室操作インターフェース53は、それが操作されると所定の非常信号をコントローラ51に送信する。
【0032】
コントローラ51は、運転室操作インターフェース53及び複数の客室操作インターフェース52のいずれか1つが操作されることで発生する非常信号を受信すると、全ての袖仕切り10のアクチュエータ42を制御し、ロック部材41(
図3参照)をロック位置Xから非ロック位置Yに移動させる。
【0033】
図6は、
図2の袖仕切り10における防護盾12の取り出しを説明する正面図である。
図6に示すように、蓋ロック14のロックが解除されると、乗客は防護盾12の持ち手32を把持して防護盾12を上方にスライドさせることで、盾出口Qを通じて盾格納空間Sから上方に防護盾12を取り出すことができる。その際、蓋13は防護板31と一体的に上方に移動する。防護盾12から蓋13を取り外すことで、互いに重ねられた2枚の防護盾12が互いに分離される。
【0034】
以上に説明した構成によれば、客室でのトラブル発生時には、乗客は、仕切り枠11の盾格納空間Sから盾出口Qを介して防護盾12を取り出すことで、その取り出した防護盾12を使って不審者から迅速に身を守ることができる。
【0035】
盾出口Qは、袖仕切り10の厚さ方向に直交する盾取出方向に盾格納空間Sを開放する。よって、防護盾12は袖仕切り10の厚さ方向に直交する方向に取り出され、ロングシート8に他の乗客が着座していても防護盾12を円滑に取り出すことができる。
【0036】
仕切り枠11は、盾格納空間Sから盾出口Qに防護板31を案内するガイド25を含む。よって、乗客は、仕切り枠11の盾格納空間Sに格納された防護盾12を盾出口Qから円滑に取り出すことができる。
【0037】
仕切り枠11は、袖仕切り10の厚さ方向に盾格納空間Sを開放して且つ袖仕切り10の厚さ方向から見て防護板31よりも小さい開口Pを画定し、防護盾12は、盾格納空間Sに格納された状態で開口Pを介して外部に露出する。よって、乗客は、袖仕切り10における防護盾12の存在を視認できると共に、盾格納空間Sに格納された防護盾12に触れることができる。また、仕切り枠11に開口Pを設けて防護盾12に袖仕切り10の仕切りとしての役目も果たさせることで、仕切り枠11の軽量化を図ることもできる。
【0038】
開口Pは、防護盾12が盾格納空間Sに格納された状態で持ち手32を外部に露出させ、開口Pは、防護盾12が盾出口Qを通って取り出されるときの持ち手32の移動軌跡Tを含むように盾出口Qに連続している。よって、乗客は、盾格納空間Sに格納された防護盾12の持ち手32を把持して防護盾12を簡単に取り出すことができる。
【0039】
袖仕切り10は、盾出口Qを閉鎖する蓋を備える。よって、防護盾12が盾出口Qから露出することを防止できる。
【0040】
蓋13は、仕切り枠11から離間自在に防護板31に取り付けられている。よって、防護盾12を盾格納空間Sから取り出すことで蓋13も取り外すことができる。
【0041】
蓋ロック14は、蓋13を閉鎖状態に保つロック位置Xと、蓋13を開放状態にすることを許容する非ロック位置Yと、の間で動作可能なロック部材41を含む。よって、防護盾12が仕切り枠11から簡単に離脱することを蓋ロック14によって防止できる。
【0042】
蓋ロック14は、ロック位置Xと非ロック位置Yとの間でロック部材41を動作させるアクチュエータ42を含む。よって、蓋ロック14の解除を容易に行うことができる。
【0043】
袖仕切りシステム50では、コントローラ51は、非常信号を受信すると、アクチュエータ42を制御してロック部材41を非ロック位置Yに動作させる。よって、非常信号以外の悪戯によって蓋ロック14のロックが解除されることを防止できる。
【0044】
なお、盾出口Qは、仕切り枠11の車幅方向内側に配置されてもよく、防護盾12が盾格納空間Sから車幅方向内側に取り出されるようにしてもよい。袖仕切り10の厚さ方向に盾格納空間Sを開放する開口Pは、無くてもよい。即ち、仕切り枠11は、格納状態の防護盾12の全体を覆うように構成されてもよい。
【0045】
ガイド25は、1枚の防護板31の側端部のみが嵌合可能な断面凹形状を有してもよい。その場合、スリット24aは、1枚の防護板31のみが挿通可能な幅寸法を有してもよい。ガイド25は、断面凹形状でなく平板状でもよい。即ち、格納された防護盾12の車両長手方向の変位を規制することをスリット24aに任せ、ガイド25が防護盾12の車幅方向の変位のみを規制してもよい。
【0046】
蓋13は、ヒンジ等によって、盾出口Qを開閉可能に仕切り枠11に取り付けられていてもよい。1枚の防護盾12のみが盾格納空間Sに格納される場合には、蓋13は防護板31に固定されていてもよい。アクチュエータ42は、客室側に配置されてもよい。ロック部材41は、内板3bと外板3aとの間の空間(
図2参照)に退避することで非ロック状態になる構成としてもよい。
【0047】
客室操作インターフェース52は、RFIDリーダであってもよい。その場合、当該RFIDリーダは、乗客が所持するRFIDタグ付き定期券の個人データを非接触通信によって読み取ると、非常信号をコントローラ51に送信するとよい。コントローラ51は、RFIDリーダが読み取った個人データを記録するとともに、全ての袖仕切り10のアクチュエータ42を制御し、ロック部材41をロック位置Xから非ロック位置Yに移動させるとよい。
【0048】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 鉄道車両
8 ロングシート
10 袖仕切り
11 仕切り枠
12 防護盾
13 蓋
14 蓋ロック
25 ガイド
31 防護板
32 持ち手
41 ロック部材
42 アクチュエータ
50 袖仕切りシステム
51 コントローラ
P 開口
Q 盾出口
S 盾格納空間
X ロック位置
Y 非ロック位置