(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070084
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】過酸化水素分解システム、過酸化水素分解装置および過酸化水素の分解方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/58 20230101AFI20240515BHJP
【FI】
C02F1/58 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180461
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】松村 叡
【テーマコード(参考)】
4D038
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB26
4D038BA04
4D038BA06
4D038BB16
(57)【要約】
【課題】装置のコストを抑えつつ、被処理液に含まれる過酸化水素を効率的に分解する。
【解決手段】実施形態の過酸化水素分解システムは、複数の過酸化水素分解装置1,2,3を備え、各過酸化水素分解装置は、被処理液に含まれる過酸化水素を分解するための活性炭11を貯蔵する分解槽10と、分解槽10の活性炭11を通過した被処理液を貯蔵する貯蔵槽20と、貯蔵槽20に貯蔵された被処理液を活性炭11に送液する循環送液部30と、を備え、複数の過酸化水素分解装置1,2,3のうち、最終段の過酸化水素分解装置3の被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になると、過酸化水素分解装置3の被処理液が排出され、最終段以外の各過酸化水素分解装置1,2の被処理液が次段の過酸化水素分解装置に送液されるように構成され、複数の過酸化水素分解装置1,2,3は、各過酸化水素分解装置の被処理液が規定温度以下で循環するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の過酸化水素分解装置を備える過酸化水素分解システムであって、
前記各過酸化水素分解装置は、
被処理液に含まれる過酸化水素を分解するための活性炭を貯蔵する分解槽と、
前記分解槽の前記活性炭を通過した前記被処理液を貯蔵する貯蔵槽と、
前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を前記活性炭に送液する循環送液部と、
を備え、
前記複数の過酸化水素分解装置のうち、最終段の過酸化水素分解装置の被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になると、前記最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液が排出され、最終段以外の各過酸化水素分解装置の被処理液が次段の過酸化水素分解装置に送液されるように構成され、
前記複数の過酸化水素分解装置は、前記各過酸化水素分解装置の被処理液が規定温度以下で循環するように構成されている、
過酸化水素分解システム。
【請求項2】
前記複数の過酸化水素分解装置の分解槽に貯蔵される活性炭の量は、少なくとも、最上段の第1の分解槽と、前記第1の分解槽よりも下流側の第2の分解槽について、前記第1の分解槽に貯蔵される活性炭の量が前記第2の分解槽に貯蔵される活性炭の量よりも少ない、請求項1に記載の過酸化水素分解システム。
【請求項3】
前記複数の過酸化水素分解装置の分解槽に貯蔵される活性炭の量は、上流の過酸化水素分解装置から下流の過酸化水素分解装置にいくにつれて単調増加する、請求項2に記載の過酸化水素分解システム。
【請求項4】
前記複数の過酸化水素分解装置の数は、3個以上であり、
前記複数の過酸化水素分解装置の分解槽に貯蔵される活性炭の量は、少なくとも2つ以上の過酸化水素分解装置のそれぞれの分解槽に貯蔵される活性炭の量が同じである、請求項2に記載の過酸化水素分解システム。
【請求項5】
前記複数の過酸化水素分解装置の循環送液部によって送液される被処理液の量は、少なくとも、最上段の第1の循環送液部と、前記第1の循環送液部よりも下流側の第2の循環送液部について、前記第1の循環送液部で送液される被処理液の量が前記第2の循環送液部で送液される被処理液の量よりも少ない、請求項1に記載の過酸化水素分解システム。
【請求項6】
前記複数の過酸化水素分解装置のうち少なくとも1つの過酸化水素分解装置は、前記被処理液を冷却する冷却器をさらに備える、請求項5に記載の過酸化水素分解システム。
【請求項7】
前記複数の過酸化水素分解装置の分解槽は耐熱樹脂からなる、請求項1に記載の過酸化水素分解システム。
【請求項8】
前記複数の過酸化水素分解装置の数は2~8個である、請求項1に記載の過酸化水素分解システム。
【請求項9】
前記複数の過酸化水素分解装置は、前記各過酸化水素分解装置の間に設けられた装置間送液部であって、第1の過酸化水素分解装置の排出口と、前記第1の過酸化水素分解装置の次段に位置する第2の過酸化水素分解装置の取入口とを接続する、装置間送液部により接続されている、請求項1~8のいずれかに記載の過酸化水素分解システム。
【請求項10】
前記装置間送液部は、
前記第1の過酸化水素分解装置の排出口と、前記第2の過酸化水素分解装置の取入口を接続する送液管と、
前記送液管に設けられ、前記被処理液を前記第1の過酸化水素分解装置から前記第2の過酸化水素分解装置に送液する装置間ポンプと、
を有する、請求項9に記載の過酸化水素分解システム。
【請求項11】
前記各過酸化水素分解装置の循環送液部は、
前記被処理液を、前記第1の過酸化水素分解装置の前記貯蔵槽に設けられた排出口から、前記第1の過酸化水素分解装置の前記活性炭または前記第2の過酸化水素分解装置に送液するための送液管と、
前記送液管に設けられた循環ポンプと、
前記送液管に設けられた切替部であって、前記循環ポンプから吐出された被処理液を、前記排出口から前記第1の過酸化水素分解装置の前記活性炭に送液するか、あるいは前記排出口から前記第2の過酸化水素分解装置に送液するかを切り替える、切替部と、
を有する、請求項9に記載の過酸化水素分解システム。
【請求項12】
被処理液に含まれる過酸化水素を分解するための活性炭を貯蔵する分解槽と、
前記分解槽の前記活性炭を通過した前記被処理液を貯蔵する貯蔵槽と、
前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を前記活性炭に送液する循環送液部と、
を備える過酸化水素分解装置。
【請求項13】
前記貯蔵槽は前記分解槽の下方に配置されており、前記分解槽の前記活性炭を通過した前記被処理液は前記貯蔵槽内に自由落下する、請求項12に記載の過酸化水素分解装置。
【請求項14】
前記循環送液部は、前記被処理液を前記活性炭に吹き付けるスプレーを有する、請求項12に記載の過酸化水素分解装置。
【請求項15】
前記循環送液部は、過酸化水素の濃度を測定する濃度測定器を有する、請求項12に記載の過酸化水素分解装置。
【請求項16】
過酸化水素の分解によって生じる酸素を排出するための排気口をさらに備える、請求項12に記載の過酸化水素分解装置。
【請求項17】
前記活性炭は、粒状である、請求項12に記載の過酸化水素分解装置。
【請求項18】
前記分解槽は、前記活性炭がその上に配置されるフィルタと、前記フィルタを支持する支持部と、をさらに有する、請求項12に記載の過酸化水素分解装置。
【請求項19】
前記被処理液の温度を測定する温度センサと、
前記循環送液部を制御する制御部であって、前記温度センサによって測定された温度が危険温度を超えた場合に、前記循環送液部の送液を停止する、制御部と、
をさらに備える、請求項12~18のいずれかに記載の過酸化水素分解装置。
【請求項20】
前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を冷却する冷却器をさらに備える、請求項12~18のいずれかに記載の過酸化水素分解装置。
【請求項21】
前記被処理液の温度を測定する温度センサと、
前記冷却器の動作を制御する制御部であって、前記温度センサによって測定された温度が危険温度を超えた場合に、前記冷却器の動作を開始させる、制御部と、
をさらに備える、請求項20に記載の過酸化水素分解装置。
【請求項22】
複数の過酸化水素分解装置を備える過酸化水素分解システムを用いる過酸化水素の分解方法であって、
前記過酸化水素分解システムの前記各過酸化水素分解装置は、被処理液に含まれる過酸化水素を分解するための活性炭を貯蔵する分解槽と、前記分解槽の前記活性炭を通過した前記被処理液を貯蔵する貯蔵槽と、前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を前記活性炭に送液する循環送液部と、を備え、
前記複数の過酸化水素分解装置は、前記各過酸化水素分解装置の被処理液が規定温度以下で循環するように構成されており、
前記複数の過酸化水素分解装置のうち、最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になると、前記最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液が排出され、最終段以外の各過酸化水素分解装置の被処理液が次段の過酸化水素分解装置に送液されるように構成され、
前記過酸化水素の分解方法は、
前記最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になるまでは、
前記各過酸化水素分解装置は、前記被処理液を前記活性炭に通過させ、前記活性炭を通過した前記被処理液を前記貯蔵槽に貯蔵し、前記循環送液部によって前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を送液し、前記活性炭に再び通過させること、を繰り返し、
前記最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になったとき、
前記各過酸化水素分解装置は、前記循環送液部による送液を停止し、前記最終段の過酸化水素分解装置の被処理液を排出し、最終段以外の各過酸化水素分解装置の被処理液を次段の過酸化水素分解装置に送液する、過酸化水素の分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素分解システム、過酸化水素分解装置および過酸化水素の分解方法に関し、より詳しくは、被処理液に含まれる過酸化水素を分解し、より低濃度の過酸化水素を含む排液を排出する過酸化水素分解システム、過酸化水素分解装置および過酸化水素の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素は、様々な工業用途、たとえば紙パルプの漂白、半導体基板および医薬品の製造における洗浄工程、ならびに回路基板のエッチングなどにおいて用いられる。これらの用途で生じる排液は、高濃度の過酸化水素を含むことがある。高濃度の過酸化水素は、爆発の危険があり、かつ高い化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand:COD)を示すことから、排液を排出する前に過酸化水素の分解処理を行って濃度を低減することが必要となる。
【0003】
被処理液に含まれる過酸化水素の濃度を低減するために、活性炭を触媒とする過酸化水素の分解反応を利用した過酸化水素の分解方法および過酸化水素の分解装置が知られている。特許文献1には、粒状活性炭が貯蔵された分解槽を用いて、被処理液に含まれる過酸化水素を分解処理する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
過酸化水素の分解反応においては、反応熱が生じる。従来の方法では、高濃度の過酸化水素を含む被処理液を分解する場合に生じる反応熱に耐えるために、分解槽に高い耐熱温度を有する材料を用いる必要があり、分解装置が高価である。また、特許文献1に記載された方法を用いる場合、過酸化水素の分解効率が十分とは言えない。
【0006】
本発明は、上記技術的認識に基づいてなされたものであり、その目的は、装置のコストを抑えつつ、被処理液に含まれる過酸化水素を効率的に分解する過酸化水素分解システム、過酸化水素分解装置および過酸化水素の分解方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る過酸化水素分解システムは、
複数の過酸化水素分解装置を備える過酸化水素分解システムであって、
前記各過酸化水素分解装置は、
被処理液に含まれる過酸化水素を分解するための活性炭を貯蔵する分解槽と、
前記分解槽の前記活性炭を通過した前記被処理液を貯蔵する貯蔵槽と、
前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を前記活性炭に送液する循環送液部と、
を備え、
前記複数の過酸化水素分解装置のうち、最終段の過酸化水素分解装置の被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になると、前記最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液が排出され、最終段以外の各過酸化水素分解装置の被処理液が次段の過酸化水素分解装置に送液されるように構成され、
前記複数の過酸化水素分解装置は、前記各過酸化水素分解装置の被処理液が規定温度以下で循環するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記複数の過酸化水素分解装置の分解槽に貯蔵される活性炭の量は、少なくとも、最上段の第1の分解槽と、前記第1の分解槽よりも下流側の第2の分解槽について、前記第1の分解槽に貯蔵される活性炭の量が前記第2の分解槽に貯蔵される活性炭の量よりも少なくしてもよい。
【0009】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記複数の過酸化水素分解装置の分解槽に貯蔵される活性炭の量は、上流の過酸化水素分解装置から下流の過酸化水素分解装置にいくにつれて単調増加するようにしてもよい。
【0010】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記複数の過酸化水素分解装置の数は、3個以上であり、
前記複数の過酸化水素分解装置の分解槽に貯蔵される活性炭の量は、少なくとも2つ以上の過酸化水素分解装置のそれぞれの分解槽に貯蔵される活性炭の量が同じであるようにしてもよい。
【0011】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記複数の過酸化水素分解装置の循環送液部によって送液される被処理液の量は、少なくとも、最上段の第1の循環送液部と、前記第1の循環送液部よりも下流側の第2の循環送液部について、前記第1の循環送液部で送液される被処理液の量が前記第2の循環送液部で送液される被処理液の量よりも少なくしてもよい。
【0012】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記複数の過酸化水素分解装置のうち少なくとも1つの過酸化水素分解装置は、前記被処理液を冷却する冷却器をさらに備えてもよい。
【0013】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記複数の過酸化水素分解装置の分解槽は耐熱樹脂からなるようにしてもよい。
【0014】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記複数の過酸化水素分解装置の数は2~8個であるようにしてもよい。
【0015】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記複数の過酸化水素分解装置は、前記各過酸化水素分解装置の間に設けられた装置間送液部であって、第1の過酸化水素分解装置の排出口と、前記第1の過酸化水素分解装置の次段に位置する第2の過酸化水素分解装置の取入口とを接続する、装置間送液部により接続されているようにしてもよい。
【0016】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記装置間送液部は、
前記第1の過酸化水素分解装置の排出口と、前記第2の過酸化水素分解装置の取入口を接続する送液管と、
前記送液管に設けられ、前記被処理液を前記第1の過酸化水素分解装置から前記第2の過酸化水素分解装置に送液する装置間ポンプと、
を有するようにしてもよい。
【0017】
また、前記過酸化水素分解システムにおいて、
前記各過酸化水素分解装置の循環送液部は、
前記被処理液を、前記第1の過酸化水素分解装置の前記貯蔵槽に設けられた排出口から、前記第1の過酸化水素分解装置の前記活性炭または前記第2の過酸化水素分解装置に送液するための送液管と、
前記送液管に設けられた循環ポンプと、
前記送液管に設けられた切替部であって、前記循環ポンプから吐出された被処理液を、前記排出口から前記第1の過酸化水素分解装置の前記活性炭に送液するか、あるいは前記排出口から前記第2の過酸化水素分解装置に送液するかを切り替える、切替部と、
を有するようにしてもよい。
【0018】
本発明に係る過酸化水素分解装置は、
被処理液に含まれる過酸化水素を分解するための活性炭を貯蔵する分解槽と、
前記分解槽の前記活性炭を通過した前記被処理液を貯蔵する貯蔵槽と、
前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を前記活性炭に送液する循環送液部と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
また、前記過酸化水素分解装置において、
前記貯蔵槽は前記分解槽の下方に配置されており、前記分解槽の前記活性炭を通過した前記被処理液は前記貯蔵槽内に自由落下するようにしてもよい。
【0020】
また、前記過酸化水素分解装置において、
前記循環送液部は、前記被処理液を前記活性炭に吹き付けるスプレーを有するようにしてもよい。
【0021】
また、前記過酸化水素分解装置において、
前記循環送液部は、過酸化水素の濃度を測定する濃度測定器を有するようにしてもよい。
【0022】
また、前記過酸化水素分解装置において、
過酸化水素の分解によって生じる酸素を排出するための排気口をさらに備えるようにしてもよい。
【0023】
また、前記過酸化水素分解装置において、
前記活性炭は、粒状であるようにしてもよい。
【0024】
また、前記過酸化水素分解装置において、
前記分解槽は、前記活性炭がその上に配置されるフィルタと、前記フィルタを支持する支持部と、をさらに有するようにしてもよい。
【0025】
また、前記過酸化水素分解装置において、
前記被処理液の温度を測定する温度センサと、
前記循環送液部を制御する制御部であって、前記温度センサによって測定された温度が危険温度を超えた場合に、前記循環送液部の送液を停止する、制御部と、
をさらに備えるようにしてもよい。
【0026】
また、前記過酸化水素分解装置において、
前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を冷却する冷却器をさらに備えるようにしてもよい。
【0027】
また、前記過酸化水素分解装置において、
前記被処理液の温度を測定する温度センサと、
前記冷却器の動作を制御する制御部であって、前記温度センサによって測定された温度が危険温度を超えた場合に、前記冷却器の動作を開始させる、制御部と、
をさらに備えるようにしてもよい。
【0028】
本発明に係る過酸化水素の分解方法は、
複数の過酸化水素分解装置を備える過酸化水素分解システムを用いる過酸化水素の分解方法であって、
前記過酸化水素分解システムの前記各過酸化水素分解装置は、被処理液に含まれる過酸化水素を分解するための活性炭を貯蔵する分解槽と、前記分解槽の前記活性炭を通過した前記被処理液を貯蔵する貯蔵槽と、前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を前記活性炭に送液する循環送液部と、を備え、
前記複数の過酸化水素分解装置は、前記各過酸化水素分解装置の被処理液が規定温度以下で循環するように構成されており、
前記複数の過酸化水素分解装置のうち、最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になると、前記最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液が排出され、最終段以外の各過酸化水素分解装置の被処理液が次段の過酸化水素分解装置に送液されるように構成され、
前記過酸化水素の分解方法は、
前記最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になるまでは、
前記各過酸化水素分解装置は、前記被処理液を前記活性炭に通過させ、前記活性炭を通過した前記被処理液を前記貯蔵槽に貯蔵し、前記循環送液部によって前記貯蔵槽に貯蔵された前記被処理液を送液し、前記活性炭に再び通過させること、を繰り返し、
前記最終段の過酸化水素分解装置の前記被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になったとき、
前記各過酸化水素分解装置は、前記循環送液部による送液を停止し、前記最終段の過酸化水素分解装置の被処理液を排出し、最終段以外の各過酸化水素分解装置の被処理液を次段の過酸化水素分解装置に送液することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、装置のコストを抑えつつ、被処理液に含まれる過酸化水素を効率的に分解する過酸化水素分解システム、過酸化水素分解装置および過酸化水素の分解方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1の実施形態に係る過酸化水素分解システムの構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る過酸化水素分解装置の構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係る過酸化水素分解システムの動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】過酸化水素の濃度と温度上昇の関係を示すグラフである。
【
図5】活性炭の濃度と温度上昇の関係を示すグラフである。
【
図6】過酸化水素の濃度と分解速度の関係を示すグラフである。
【
図7】活性炭の濃度と分解速度の関係を示すグラフである。
【
図8】第2の実施形態に係る過酸化水素分解システムの構成を示す図である。
【
図9】第3の実施形態に係る過酸化水素分解システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図においては、同等の機能を有する構成要素に同一の符号を付している。また、各構成要素の縮尺比率は、図面上で認識可能な程度の大きさとするため、適宜に変えている。
【0032】
(第1の実施形態)
図1および
図2を参照して、第1の実施形態に係る過酸化水素分解システムおよび過酸化水素分解装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る過酸化水素分解システムの構成を示す図である。
図2は、本実施形態に係る過酸化水素分解装置の構成を示す図である。
【0033】
<過酸化水素分解システム>
過酸化水素分解システム100は、被処理液に含まれる過酸化水素を分解し、より低濃度の過酸化水素を含む排液を排出するシステムである。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100は、複数の過酸化水素分解装置1,2,3と、複数の装置間送液部40と、制御部50とを備える。また、過酸化水素分解システム100は、被処理液槽200および排液槽300に接続されている。
【0035】
過酸化水素分解装置1,2,3は、被処理液に含まれる過酸化水素を分解するように構成されている。過酸化水素分解装置1,2,3の詳細については後述する。
【0036】
本実施形態では、過酸化水素分解装置1,2,3は、装置間送液部40を介して、デイジーチェーン接続(いわゆる数珠つなぎ)されている。すなわち、過酸化水素分解装置1の次段には、装置間送液部40を介して、過酸化水素分解装置2が接続されている。また、過酸化水素分解装置2の次段には、装置間送液部40を介して、過酸化水素分解装置3が接続されている。
【0037】
装置間送液部40は、被処理液を、ある過酸化水素分解装置から、その次段に位置する過酸化水素分解装置に送液(装置間送液)するように構成されている。過酸化水素分解装置1と過酸化水素分解装置2の間の装置間送液部40は、過酸化水素分解装置1の被処理液を過酸化水素分解装置2に送液する。また、過酸化水素分解装置2と過酸化水素分解装置3の間の装置間送液部40は、過酸化水素分解装置2の被処理液を過酸化水素分解装置3に送液する。
【0038】
装置間送液部40は、送液管41と、装置間ポンプ42と、バルブ43とを有する。
【0039】
送液管41は、過酸化水素分解装置の排出口22(後述)と、その次段に位置する過酸化水素分解装置の取入口21(後述)を接続する。具体的には、過酸化水素分解装置1,2間の装置間送液部40の送液管41は、過酸化水素分解装置1の排出口22と、過酸化水素分解装置2の取入口21を接続する。また、過酸化水素分解装置2,3間の装置間送液部40の送液管41は、過酸化水素分解装置2の排出口22と、過酸化水素分解装置3の取入口21を接続する。
【0040】
装置間ポンプ42は、送液管41に設けられ、送液管41を通して被処理液を、ある過酸化水素分解装置から、その次段に位置する過酸化水素分解装置に送液する。本実施形態では、装置間ポンプ42は、後述の制御部50による制御の下で、装置間送液を開始する際にその動作を開始し、装置間送液を停止する際にその動作を停止する。装置間ポンプ42は、たとえば容積式ポンプまたは非容積式ポンプである。
【0041】
バルブ43は、送液管41において、装置間ポンプ42の上流に設けられる。本実施形態では、バルブ43は電磁弁であり、制御部50による制御の下で、装置間送液を開始する際に開弁し、装置間送液を停止する際に閉弁する。
【0042】
なお、装置間送液部40の構成は、
図1に示すものに限られない。たとえば、バルブ43は、装置間ポンプ42の下流に設けられてもよい。あるいは、送液管41には、バルブ43に代えて、またはバルブ43とともに、逆止弁が設けられてもよい。また、装置間送液部40は、複数の装置間ポンプ42および/または複数のバルブ43を有してもよい。さらに、2つの過酸化水素分解装置の間に、複数の装置間送液部40が設けられてもよい。
【0043】
本実施形態において、過酸化水素分解装置1,2,3は、それぞれ異なる量の活性炭11を有する。具体的には、活性炭11の量は、最上段の過酸化水素分解装置1が最も少なく、下流にいくにつれて増加し、最終段の過酸化水素分解装置3が最も多い。活性炭11の量についての詳細は後述する。
【0044】
被処理液槽200には、高濃度の過酸化水素(たとえば12~35%)を含む被処理液が貯蔵されている。
【0045】
被処理液槽200は、過酸化水素分解システム100の最上段の過酸化水素分解装置に接続される。本実施形態では、被処理液槽200は、送液管201を介して、過酸化水素分解装置1の取入口21に接続される。送液管201にはバルブ203が設けられている。バルブ203は電磁弁であり、制御部50による制御の下で、被処理液槽200からの送液を開始する際に開弁し、当該送液を停止する際に閉弁する。なお、送液管201には、ポンプが設けられてもよい。
【0046】
排液槽300には、過酸化水素分解システム100によって過酸化水素の濃度が決められた濃度以下となった被処理液が貯蔵される。ここで、「決められた濃度」とは、過酸化水素分解システム100について定められた過酸化水素の濃度であり、たとえば過酸化水素の排水基準によって定められる濃度(2%等)である。
【0047】
排液槽300は、過酸化水素分解システム100の最終段の過酸化水素分解装置に接続される。本実施形態では、排液槽300は、送液管301を介して、過酸化水素分解システム100の最終段の過酸化水素分解装置3の排出口22に接続される。送液管301には、ポンプ302と、バルブ303とが設けられている。ポンプ302は、制御部50による制御の下で、排液槽300への送液(排出)を開始する際にその動作を開始し、当該送液を停止する際にその動作を停止する。ポンプ302は、たとえば容積式ポンプまたは非容積式ポンプである。また、バルブ303は電磁弁であり、制御部50による制御の下で、被処理液槽200からの送液を開始する際に開弁し、当該送液を停止する際に閉弁する。なお、ポンプ302は設けられていなくてもよい。
【0048】
制御部50は、過酸化水素分解システム100の各ポンプおよび各バルブを制御する。本実施形態では、制御部50は、装置間送液部40が有する装置間ポンプ42およびバルブ43に加えて、バルブ203、ポンプ302、およびバルブ303を制御する。制御部50は、さらに、後述する循環送液部30が有する循環ポンプ32およびバルブ34も制御する。
【0049】
また、制御部50は、過酸化水素分解装置1~3の後述するフロートセンサ23および濃度測定器35から、各装置の被処理液の過酸化水素濃度を取得する。制御部50は、フロートセンサ23および濃度測定器35が出力する値に基づいて、各ポンプの動作の開始/停止、および各バルブの開/閉を制御する。
【0050】
なお、上記の説明では、過酸化水素分解システム100の各ポンプ、各バルブ、各センサ等は、共通の制御部50によって制御されることとしたが、これに限られず、各過酸化水素分解装置は、各過酸化水素分解装置のポンプ、バルブおよびセンサを制御する装置制御部をそれぞれ備えてもよい。この場合、制御部50は、各過酸化水素分解装置の装置制御部に接続され、各装置制御部を中央管理してもよい。
【0051】
また、制御部50は、各ポンプ、各バルブ、各センサ、および測定器等に有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。
【0052】
<過酸化水素分解装置>
次に、
図2を参照して、過酸化水素分解装置1,2,3の詳細について説明する。
【0053】
過酸化水素分解装置1,2,3は、被処理液に含まれる過酸化水素を分解する分解槽10と、被処理液を貯蔵する貯蔵槽20と、貯蔵槽20の被処理液を分解槽10に送液する循環送液部30とを備える。
【0054】
分解槽10は、活性炭11と、フィルタ12と、支持部13と、排気口14と、温度センサ15とを有する。分解槽10の容器の材料は、たとえばアクリル、塩化ビニル等からなる耐熱樹脂である。
【0055】
活性炭11は、分解槽10内に貯蔵され、被処理液に含まれる過酸化水素を分解する。より詳しくは、被処理液が活性炭11に接触すると、活性炭を触媒とする過酸化水素の分解反応が生じ、被処理液に含まれる過酸化水素が分解される。活性炭を触媒とした分解反応を利用することで、電気分解による方法や、白金などの金属触媒、重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの還元剤、二酸化マンガンなどの金属酸化物、およびカタラーゼなどの酵素を用いる方法と比べて、分解処理のコストを抑えることができる。
【0056】
活性炭11は、たとえば平均粒径が1mm程度の粒状活性炭である。粒状活性炭を用いることにより、活性炭の表面積が増加し、過酸化水素を分解する効率を上昇させることができる。なお、活性炭11は、ブロック状の活性炭に多数の貫通孔を有するもの(たとえば、活性炭ハニカム)であってもよい。
【0057】
フィルタ12は、細かい孔を有するフィルタ(たとえば、ビニロックフィルタ)である。活性炭11は、フィルタ12の上に配置される。分解槽10がフィルタ12を備えることにより、活性炭の微粒子が貯蔵槽20に落下して、貯蔵槽20の内部で分解反応が生じることを防ぐことができる。なお、たとえば活性炭11がブロック状の活性炭の場合、フィルタ12は設けられていなくてもよい。
【0058】
支持部13は、活性炭11およびフィルタ12を支持する。支持部13は、たとえばメッシュ状の板である。これにより、被処理液を通過させつつ、活性炭11を支持することができる。
【0059】
排気口14は、過酸化水素の分解によって生じる酸素ガスを排出する。分解槽10が排気口14を備えることにより、装置内の気圧が上昇して装置が破損することを防ぐことができる。なお、排気口14は、貯蔵槽20に設けられてもよいが、好ましくは
図2に示すように、分解槽10の上部に設けられる。あるいは、排気口14に代えて、または排気口14とともに、分解槽10および/または貯蔵槽20を非密閉構造としてもよい。
【0060】
温度センサ15は、分解槽10内の被処理液の温度を測定する。本実施形態では、温度センサ15は、分解槽10の底部に設けられる。温度センサ15は、測定した値を制御部50に出力する。温度センサ15を分解槽10の底部に設けることにより、活性炭11を通過した被処理液の多くが温度センサ15に接触するため、被処理液の温度を適切に測定することができる。このため、温度センサ15は、測定された温度について所定の時間ごとの平均値を制御部50に出力してもよい。なお、温度センサ15は、分解槽10の底部以外の部分に設けられてもよい。
【0061】
貯蔵槽20は、分解槽10の活性炭11を通過した被処理液を貯蔵する。貯蔵槽20の容器の材料は、たとえばアクリル、塩化ビニル等からなる耐熱樹脂である。本実施形態では、貯蔵槽20は分解槽10の下方に配置されており、分解槽10の活性炭11を通過した被処理液は、貯蔵槽20内に自由落下する。
【0062】
なお、本実施形態では分解槽10は貯蔵槽20の上部に接続されているが、これに限られない。たとえば、分解槽10が貯蔵槽20の上方に吊り下げられるなどして、分解槽10と貯蔵槽20の間に空間が設けられてもよい。あるいは、貯蔵槽20が分解槽10の下方以外に配置され、分解槽10および貯蔵槽20はパイプ等で接続されてもよい。
【0063】
貯蔵槽20は、取入口21と、排出口22と、フロートセンサ23と、冷却器24と、温度センサ25と、循環排出口26とを有する。
【0064】
取入口21は、被処理液を貯蔵槽20に流入させるための孔である。上述したように、取入口21は、装置間送液部40の送液管41、または送液管201に接続される。本実施形態では、取入口21は貯蔵槽20の上部に設けられている。なお、分解槽10と貯蔵槽20の間に空間が設けられている場合、取入口21は、分解槽10と貯蔵槽20の間に設けられてもよい。また、取入口21は、分解槽10に設けられ、被処理液を分解槽10に流入させてもよい。
【0065】
排出口22は、被処理液を貯蔵槽20から流出させるための孔である。上述したように、排出口22は、装置間送液部40の送液管41、または送液管301に接続される。本実施形態では、排出口22は貯蔵槽20の側面の下部に設けられている。なお、排出口22は、貯蔵槽20の底面に設けられてもよい。
【0066】
フロートセンサ23は、貯蔵槽20に貯蔵された被処理液の液量を測定するためのセンサ(液位センサ)である。本実施形態では、フロートセンサ23は、測定した値を制御部50に出力する。
【0067】
冷却器24は、貯蔵槽20に貯蔵された被処理液を冷却する。本実施形態では、冷却器24は、貯蔵槽20内において被処理液に浸かるように配置されたチラーである。過酸化水素分解装置が冷却器24を備えることにより、被処理液の温度を規定温度以下に保つことを容易にすることができる。
【0068】
温度センサ25は、貯蔵槽20内の被処理液の温度を測定する。本実施形態では、温度センサ25は、貯蔵槽20の底部に設けられる。また、温度センサ25は、測定した値を制御部50に出力する。温度センサ25を貯蔵槽20の底部に設けることにより、貯蔵槽20に貯蔵された被処理液の量が少ない場合であっても、被処理液の温度を適切に測定することができる。なお、温度センサ25は、貯蔵槽20の底部以外に設けられてもよい。
【0069】
循環排出口26は、循環送液部30によって被処理液を装置内で循環させるため、被処理液を流出させる孔である。本実施形態では、循環排出口26は、貯蔵槽20の側面の下部に設けられている。なお、循環排出口26は、貯蔵槽20の底面に設けられてもよい。
【0070】
循環送液部30は、貯蔵槽20に貯蔵された被処理液を活性炭11に送液(循環送液)するように構成されている。本実施形態では、循環送液部30は、被処理液を活性炭11の上方に送液する。なお、これに限られず、被処理液を活性炭11の下部や側部、貯蔵された粒状活性炭の中心部、またはブロック状の活性炭の貫通孔内などに送液してもよい。
【0071】
循環送液部30は、送液管31と、循環ポンプ32と、スプレー33と、バルブ34と、濃度測定器35とを有する。
【0072】
送液管31は、被処理液を、循環排出口26から活性炭11に送液するための配管である。より詳しくは、送液管31は、被処理液を貯蔵槽20に設けられた循環排出口26から、スプレー33を介して活性炭11に送液するための配管である。送液管31の一端部は循環排出口26に接続され、他端部は分解槽10の上部に配置されている。送液管31の他端部には複数のスプレー孔が設けられている。
【0073】
循環ポンプ32は、送液管31に設けられ、送液管31を通して被処理液を送液する。本実施形態では、循環ポンプ32は、制御部50による制御の下で、循環送液を開始する際にその動作を開始し、循環送液を停止する際にその動作を停止する。循環ポンプ32は、たとえば容積式ポンプまたは非容積式ポンプである。
【0074】
スプレー33は、被処理液を活性炭11に吹き付けるためのものである。循環ポンプ32によって送液された被処理液は、スプレー33から噴射され、活性炭11に接触する。スプレー33は、送液管31に設けられた複数の貫通孔(スプレー孔)により構成されてもよいし、あるいは、送液管31に取り付けられたスプレーノズル(図示せず)により構成されてもよい。
【0075】
バルブ34は、送液管31における循環ポンプ32の上流に設けられる。本実施形態では、バルブ34は電磁弁であり、制御部50による制御の下で、循環送液を開始する際に開弁し、停止する際に閉弁する。
【0076】
濃度測定器35は、被処理液に含まれる過酸化水素の濃度を測定する。濃度測定器35は、
図2に示すように、インライン型の過酸化水素モニタなどを用いてもよい。本実施形態では、濃度測定器35は、測定した値を制御部50に出力する。
【0077】
なお、循環送液部30の構成は、
図1および
図2に示すものに限られない。たとえば、循環ポンプ32およびバルブ34を循環排出口26と同じ高さにしてもよい。バルブ34は、循環ポンプ32の下流に設けられてもよい。送液管31には、バルブ34の代わりに、またはバルブ34とともに、逆止弁が設けられてもよい。また、濃度測定器35が循環ポンプ32の上流に設けられてもよい。
【0078】
また、循環送液部30は、複数の循環ポンプ32および/または複数のバルブ34を有してもよい。さらに、1つの過酸化水素分解装置に複数の循環送液部30が設けられてもよい。
【0079】
次に、過酸化水素分解装置1~3の動作について説明する。
【0080】
まず、被処理液は、貯蔵槽20に設けられた取入口21から貯蔵槽20内に流入し、貯蔵される。貯蔵された被処理液は、循環送液部30によって、分解槽10に貯蔵された活性炭11に送液される。より詳しくは、被処理液は、循環送液部30の循環ポンプ32によって、循環排出口26からスプレー33に送液され、スプレー33から噴射される。スプレー33から噴射された被処理液は、活性炭11と接触する。被処理液が活性炭11と接触すると、活性炭を触媒とする過酸化水素の分解反応が生じる。この分解反応によって、被処理液に含まれる過酸化水素の少なくとも一部が水と酸素ガスに分解される。同時に、分解反応による反応熱(分解熱)が生じる。
【0081】
活性炭11を通過した被処理液(分解反応によって生じた水を含む。)は、貯蔵槽20に貯蔵される。貯蔵された被処理液は、循環送液部30によって、再び活性炭11に送液される。このように、被処理液が過酸化水素分解装置の分解槽10と貯蔵槽20を循環することで、被処理液は活性炭11に繰り返し接触し、被処理液に含まれる過酸化水素が分解され、被処理液の過酸化水素濃度が低下する。
【0082】
<過酸化水素分解システムを用いた過酸化水素の分解方法>
図1および
図3を参照して、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100を用いた過酸化水素の分解方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0083】
なお、以下の説明では、開始時において、過酸化水素分解装置1,2,3の各装置において被処理液が循環しているものとする。より詳しくは、過酸化水素分解装置1,2,3は、被処理液を活性炭11に通過させ、活性炭11を通過した被処理液を貯蔵槽20に貯蔵し、循環送液部30によって貯蔵槽20に貯蔵された被処理液を送液し、活性炭11に再び通過させることを繰り返しているものとする。
【0084】
まず、制御部50は、最終段の過酸化水素分解装置3の被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下であるかどうか判定する(ステップS1)。制御部50は、過酸化水素分解装置3の濃度測定器35が出力する値を読み取り、その値が目標濃度以下であるかどうか判定する。なお、本実施形態では、当該目標濃度は、上述の「決められた濃度」である。
【0085】
最終段の過酸化水素分解装置3の被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になっていないと判定されたとき(ステップS1:No)、所定の時間をあけてステップS1を再度実行する。その間、過酸化水素分解装置1,2,3は、被処理液の循環を継続する。
【0086】
一方、最終段の過酸化水素分解装置3の被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下になったと判定されたとき(ステップS1:Yes)、制御部50は、過酸化水素分解装置1,2,3の循環送液部30による送液を停止する(ステップS2)。より詳しくは、制御部50は、過酸化水素分解装置1,2,3の全ての循環ポンプ32の動作を停止し、全てのバルブ34を閉じる。
【0087】
次に、最終段の過酸化水素分解装置3の被処理液を排液槽300に排出し、最終段以外の過酸化水素分解装置1,2の被処理液を、下流側の過酸化水素分解装置から順に次段の過酸化水素分解装置に送液する(ステップS3)。ステップS3について以下に詳しく説明する。
【0088】
まず、最終段の過酸化水素分解装置3に含まれる被処理液の排出を開始する。より詳しくは、制御部50は、バルブ303を開け、ポンプ302の動作を開始する。これにより、過酸化水素分解装置3に含まれる被処理液が排出される。
【0089】
次に、制御部50は、被処理液の排出が完了したかどうかを判定する。具体的には、制御部50は、過酸化水素分解装置3のフロートセンサ23の値を読み取り、たとえば当該値が過酸化水素分解装置3の貯蔵槽20が空になったことを表す値以下である場合に、被処理液の排出が完了したと判定する。
【0090】
被処理液の排出が完了していないと判定された場合、所定の時間をあけて当該判定を再度実行する。その間、被処理液の排出が継続される。
【0091】
一方、被処理液の排出が完了したと判定された場合、過酸化水素分解装置3に含まれる被処理液の排出を停止する。より詳しくは、制御部50は、ポンプ302の動作を停止し、バルブ303を閉める。
【0092】
次に、最終段の過酸化水素分解装置3に被処理液を送液(装置間送液)する。より詳しくは、過酸化水素分解装置3の前段に位置する過酸化水素分解装置2から、装置間送液部40によって、過酸化水素分解装置3に被処理液を送液する。具体的には、制御部50は、過酸化水素分解装置2と過酸化水素分解装置3を接続する装置間送液部40のバルブ43を開け、装置間ポンプ42の動作を開始する。
【0093】
次に、制御部50は、当該送液が完了したかどうかを判定する。制御部50は、過酸化水素分解装置3の貯蔵槽20に設けられたフロートセンサ23の値(第1の値)、および過酸化水素分解装置2の貯蔵槽20に設けられたフロートセンサ23の値(第2の値)を読み取り、たとえば第1の値が過酸化水素分解装置3の貯蔵槽20が満水であることを表す値以上であるか、または、第2の値が、過酸化水素分解装置2の貯蔵槽20が空になったことを表す値以下である場合に、当該送液が完了したと判定する。
【0094】
当該送液が完了していないと判定された場合、所定の時間をあけて当該判定を再度実行する。その間、送液が継続される。
【0095】
一方、当該送液が完了したと判定された場合、送液を停止する。より詳しくは、制御部50は、過酸化水素分解装置2と過酸化水素分解装置3を接続する装置間送液部40の装置間ポンプ42の動作を停止し、バルブ43を閉じる。
【0096】
次に、同様の工程を行って、過酸化水素分解装置1から過酸化水素分解装置2に被処理液を送液する。制御部50は、過酸化水素分解装置2の貯蔵槽20に設けられたフロートセンサ23の値(第3の値)、および過酸化水素分解装置1の貯蔵槽20に設けられたフロートセンサ23の値(第4の値)を読み取り、たとえば第3の値が過酸化水素分解装置2の貯蔵槽20が満水であることを表す値以上であるか、または、第4の値が、過酸化水素分解装置1の貯蔵槽20が空になったことを表す値以下である場合に、当該送液が完了したと判定する。
【0097】
次に、同様の工程を行って、被処理液槽200から過酸化水素分解装置1に被処理液を流入させる。制御部50は、過酸化水素分解装置1の貯蔵槽20に設けられたフロートセンサ23の値を読み取り、たとえば当該値が過酸化水素分解装置1の貯蔵槽20が満水であることを表す値以上である場合に、被処理液槽200から過酸化水素分解装置1への送液が完了したと判定する。
【0098】
上記のようにして装置間送液を行った後、制御部50は、過酸化水素分解装置1,2,3の循環送液部30による送液(循環送液)を開始する(ステップS4)。より詳しくは、制御部50は、過酸化水素分解装置1,2,3の全てのバルブ34を開け、全ての循環ポンプ32の動作を開始する。ステップS4の後、ステップS1に戻る。
【0099】
以上のステップS1~S4を繰り返すことによって、過酸化水素分解システム100は、被処理液に含まれる過酸化水素を分解し、目標濃度以下の被処理液を排出することができる。
【0100】
なお、ステップS1における判定は、被処理液の過酸化水素の濃度が、過酸化水素分解装置1,2,3の各装置について、目標濃度以下になったかどうかを判定してもよい。この場合、過酸化水素分解装置1、過酸化水素分解装置2および過酸化水素分解装置3にそれぞれ第1の目標濃度、第2の目標濃度および第3の目標濃度が予め設定されている。そして、ステップS1では、過酸化水素分解装置1の過酸化水素濃度が第1の目標濃度以下であり、過酸化水素分解装置2の過酸化水素濃度が第2の目標濃度以下であり、かつ過酸化水素分解装置3の過酸化水素濃度が第3の目標濃度以下である場合に、ステップS2に進む。ここで、第2の目標濃度は第1の目標濃度以下であり、第3の目標濃度は第2の目標濃度以下である。
【0101】
また、ステップS1における判定は、過酸化水素分解装置内の温度に基づいて行ってもよい。この場合、濃度測定器35が出力する値の代わりに、過酸化水素分解装置3の分解槽10に設けられた温度センサ15が出力する値を用いる。過酸化水素濃度が低下し、過酸化水素の分解反応が進まなくなると、分解反応が進んでいる場合と比べて過酸化水素分解装置内の温度が低下する。そこで、たとえば温度センサ15が出力する値が閾値を下回った場合に、制御部50は、過酸化水素分解装置3の被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下となったと判定してもよい。なお、貯蔵槽20に設けられた温度センサ25の出力値を用いて上記判定を行ってもよい。また、温度センサ15と温度センサ25の両方の出力値を用いて上記判定を行ってもよい。
【0102】
また、ステップS1における判定は、分解槽10内の酸素量に基づいて行ってもよい。この場合、たとえば、過酸化水素分解装置3に設けられた排気口14に、流量センサを設け、当該流量センサが出力する値を利用する。過酸化水素濃度が低下し、過酸化水素の分解反応が進まなくなると、発生する酸素ガスの量が減少する。そこで、制御部50は、流量センサが出力する値が閾値を下回った場合、最終段の過酸化水素分解装置の被処理液の過酸化水素濃度が目標濃度以下となったと判定してもよい。また、過酸化水素分解装置3の分解槽10に気圧センサ、または酸素濃度センサ等を設け、これらのセンサが出力する値を利用してもよい。
【0103】
なお、上記の説明においては、ステップS2において、全ての循環送液部30の送液を一斉に停止することとしたが、これに限られず、都度必要な循環送液部30のみを停止させてもよい。すなわち、最終段の過酸化水素分解装置3の循環送液部30の送液のみを停止してもよい。この場合、ステップS3において、過酸化水素分解装置2から過酸化水素分解装置3に被処理液を送液する前に、過酸化水素分解装置2の循環送液部30の送液を停止する。また、過酸化水素分解装置1から過酸化水素分解装置2に被処理液を送液する前に、過酸化水素分解装置1の循環送液部30の送液を停止する。
【0104】
また、ステップS3において、装置間送液が完了した過酸化水素分解装置から、循環送液部30による被処理液の循環を順次開始してもよい。より詳しくは、過酸化水素分解装置2から過酸化水素分解装置3に被処理液を送液した後に、制御部50は、過酸化水素分解装置3の循環送液部30の送液を開始してもよい。また、過酸化水素分解装置1から過酸化水素分解装置2に被処理液を送液した後に、制御部50は、過酸化水素分解装置1の循環送液部30の送液を開始してもよい。
【0105】
なお、上記の各ステップにおいて、送液を停止する際、ポンプを停止するタイミングとバルブを閉めるタイミングは、いずれが先でもよいし、同時でもよい。好ましくは、ポンプの締切運転を避けるため、バルブを閉める前にポンプの動作を停止する。
【0106】
同様に、送液を開始する際、バルブを開けるタイミングとポンプの動作を開始するタイミングは、いずれが先でもよいし、同時でもよい。好ましくは、ポンプの締切運転を避けるため、ポンプの動作を開始する前にバルブを開ける。
【0107】
<活性炭の量について>
以上説明したように、被処理液に含まれる過酸化水素を分解するために、各過酸化水素分解装置において被処理液を活性炭に繰り返し接触させる。このとき、上流側の過酸化水素分解装置においては、より高濃度の過酸化水素を含む被処理液が活性炭11に接触することとなり、そのため、過酸化水素の分解反応による反応熱が、より多く生じることとなる。そして、当該反応熱によって、さらに分解反応の速度が上昇する関係にある。よって、上流側の過酸化水素分解装置では、過酸化水素の分解反応に伴う温度上昇が急激に生じるおそれがある。
【0108】
そこで、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100では、
図1に示すように、上流側の過酸化水素分解装置における活性炭11の量を少なくすることで、被処理液が規定温度以下で循環するように構成されている。これにより、上記の問題に対処することができる。ここで、規定温度とは、過酸化水素分解装置の分解槽10および貯蔵槽20の耐熱温度以下の温度である。
【0109】
以下、
図4および
図5を用いて、上流側の過酸化水素分解装置における発熱量の抑制について説明する。
図4は、過酸化水素の濃度と温度上昇の関係を示すグラフである。
図5は、活性炭の濃度と温度上昇の関係を示すグラフである。
【0110】
図4に示すように、過酸化水素の分解反応においては、過酸化水素の濃度が高いほど、10分後の温度上昇が大きい。このことから、過酸化水素分解装置1、2,3が同量の活性炭11を有する場合、過酸化水素分解装置1に含まれる被処理液の温度は、過酸化水素分解装置2,3に比べてより上昇しやすいといえる。一方、
図5に示すように、過酸化水素の分解反応においては、活性炭の濃度が低いほど、1時間後の温度上昇が小さい。
【0111】
そこで、本実施形態では、最上段の過酸化水素分解装置1の活性炭11の量を下流側の過酸化水素分解装置2,3よりも少なくする。これにより、上流側の過酸化水素分解装置1における温度上昇を抑制することができ、被処理液が規定温度以下で循環するように構成することができる。
【0112】
なお、過酸化水素分解装置2,3では、過酸化水素分解装置1に比べて、装置内を循環する被処理液に含まれる過酸化水素の濃度が低いため、活性炭11の量を減らすことなく、被処理液が規定温度以下で循環するように構成することができる。
【0113】
このように、過酸化水素分解システム100において、上流側の過酸化水素分解装置の温度上昇を抑制するために、複数の過酸化水素分解装置の分解槽10に貯蔵される活性炭11の量は、少なくとも、最上段の第1の分解槽と、第1の分解槽よりも下流側の第2の分解槽について、第1の分解槽に貯蔵される活性炭の量が第2の分解槽に貯蔵される活性炭の量よりも少なくする。これにより、各過酸化水素分解装置の被処理液が規定温度以下で各過酸化水素分解装置の装置内を循環することが可能となる。
【0114】
なお、第1の分解槽と第2の分解槽の間に第3の分解槽があってもよい。たとえば、
図1に示すように、過酸化水素分解装置1,2,3を備える過酸化水素分解システム100について、各過酸化水素分解装置の分解槽10に貯蔵される活性炭11の量を、上流側からA、B、Cとするとき、A<BおよびA<Cのいずれかが成立すればよい。
【0115】
次に、
図6および
図7を用いて、下流側の過酸化水素分解装置における分解反応の促進について説明する。
図6は、過酸化水素の濃度と分解速度の関係を示すグラフである。
図7は、活性炭の濃度と分解速度の関係を示すグラフである。
【0116】
図6に示すように、過酸化水素の分解反応においては、過酸化水素の濃度が低いほど分解速度が低下する。このことから、特に最終段の過酸化水素分解装置3において、過酸化水素の分解反応が低下する。一方、
図7に示すように、過酸化水素の分解反応においては、活性炭11の量が多いほど分解速度が上昇する。
【0117】
よって、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100において、最終段の過酸化水素分解装置3の分解槽10に貯蔵される活性炭11の量を増やすことで、分解速度を維持することができる。なお、過酸化水素分解装置3においては、被処理液に含まれる過酸化水素の濃度が低いため、活性炭11の量を増加させても、被処理液を規定温度以下で循環させることができる。
【0118】
発熱量および分解速度を考慮して、過酸化水素分解システム100では、
図1に示すように、複数の過酸化水素分解装置の分解槽10に貯蔵される活性炭11の量は、上流の過酸化水素分解装置から下流の過酸化水素分解装置にいくにつれて単調増加する。たとえば、3つの過酸化水素分解装置1,2,3を備える過酸化水素分解システム100について、過酸化水素分解装置1,2,3の分解槽10に貯蔵される活性炭11の量を、上流側からA、B、Cとするとき、A<B<Cという関係が成立する。
【0119】
なお、被処理液槽200に貯蔵された被処理液に含まれる過酸化水素の濃度と、排液槽300に排出される被処理液に含まれる過酸化水素の濃度(すなわち、決められた濃度)に応じて、過酸化水素分解システム100が備える過酸化水素分解装置の個数を変更してもよい。
【0120】
たとえば、被処理液槽200に貯蔵された被処理液に含まれる過酸化水素の濃度が高い場合、活性炭11の量が少ない過酸化水素分解装置の数を増やすことが好ましい。これにより、より高濃度の過酸化水素を含む被処理液が流入する場合であっても、過酸化水素分解システム100が備える全ての過酸化水素分解装置について、被処理液を規定温度以下で循環させることができる。
【0121】
また、決められた濃度が低い場合、すなわち、排液槽300に排出する際、被処理液に含まれる過酸化水素の濃度をより低くする必要がある場合、活性炭11の量が多い過酸化水素分解装置を増やすことが好ましい。これにより、より下流側の過酸化水素分解装置において、過酸化水素をより効率的に分解することができる。
【0122】
このように、過酸化水素分解システム100が備える過酸化水素分解装置の個数は、3個に限定されず、任意である。好ましくは、過酸化水素分解装置の個数は2~8個であってもよい。これにより、各過酸化水素分解装置における過酸化水素の分解量を適切な量とすることができ、過酸化水素分解システムのコストを抑えつつ、被処理液に含まれる過酸化水素を効率的に分解することができる。
【0123】
以上説明したように、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100は、被処理液に含まれる過酸化水素を分解し、決められた濃度以下の過酸化水素を含む排液を排出することができる。
【0124】
また、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100は、複数の過酸化水素分解装置を同時に動作させることで、過酸化水素を含む被処理液が大量に存在する場合であっても、過酸化水素の分解工程をより効率的に行うことができる。
【0125】
また、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100は、複数の過酸化水素分解装置の被処理液が規定温度以下で循環するように構成されている。これにより、分解槽10および貯蔵槽20の材料としてアクリル、塩化ビニル等の安価な樹脂を用いることができ、装置のコストを抑えることができる。
【0126】
また、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100において、複数の過酸化水素分解装置の分解槽10に貯蔵される活性炭11の量は、少なくとも、最上段の第1の分解槽と、第1の分解槽よりも下流側の第2の分解槽について、第1の分解槽に貯蔵される活性炭の量が第2の分解槽に貯蔵される活性炭の量よりも少ない。これにより、上流側の過酸化水素分解装置において、被処理液を規定温度以下で循環するように構成することができ、過酸化水素の分解工程を安全かつ効率的に行うことができる。
【0127】
また、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100において、過酸化水素分解装置の分解槽10に貯蔵される活性炭11の量を、上流の過酸化水素分解装置から下流の過酸化水素分解装置にいくにつれて単調増加する。これにより、下流側の過酸化水素分解装置における分解反応が促進される。また、各過酸化水素分解装置による過酸化水素の分解に掛かる時間のばらつきを抑えることができる。そのため、過酸化水素の分解工程をより効率的に行うことができる。
【0128】
なお、複数の過酸化水素分解装置の個数が3個以上の場合、少なくとも2つ以上の分解槽10で、活性炭11の量が同じであってもよい。詳しくは、複数の過酸化水素分解装置の分解槽10に貯蔵される活性炭11の量は、少なくとも2つ以上の過酸化水素分解装置のそれぞれの分解槽10に貯蔵される活性炭11の量が同じであってもよい。たとえば、3つの過酸化水素分解装置1,2,3を備える過酸化水素分解システム100について、各過酸化水素分解装置1の分解槽10が有する活性炭11の量を、上流側からA、B、Cとするとき、A<B=Cという関係が成立するようにしてもよい。これにより、活性炭量の種類の数が減るため、活性炭11の補充等のメンテナンスを簡易にすることができる。
【0129】
なお、本実施形態に係る過酸化水素分解システムにおいて、スプレー33は、取入口21を兼ねてもよい。たとえば、過酸化水素分解装置1,2間の装置間送液部40の送液管41の一端部は、過酸化水素分解装置1の排出口22に接続され、他端部は、過酸化水素分解装置2の送液管31のうち、循環ポンプ32の下流側の箇所に接続される。この場合、過酸化水素分解装置2の貯蔵槽20は、取入口21を備えなくてもよい。
【0130】
また、本実施形態に係る過酸化水素分解装置は、分解槽10と貯蔵槽20とを備え、分解槽10と貯蔵槽20を被処理液が循環する。これにより、過酸化水素の分解反応を安全に行うことができる。たとえば、循環送液部30による送液を停止するだけで、分解反応を停止させることができる。また、活性炭11の交換および清掃などのメンテナンスが容易となる。さらに、貯蔵槽20に一定程度の被処理液を貯蔵しておくことで、分解反応による温度上昇を緩やかにすることができ、分解反応を安定化することができる。
【0131】
また、本実施形態に係る過酸化水素分解装置において、貯蔵槽20は、分解槽10の下方に配置されており、分解槽10の活性炭11を通過した被処理液は、貯蔵槽20に自由落下する。これにより、活性炭11を通過した被処理液を送液する機構を単純にすることができ、装置のコストを抑えることができる。また、分解槽10と貯蔵槽20の間を非密閉構造にする場合、活性炭11を通過した被処理液が外気に触れることにより、被処理液を冷却することができる。
【0132】
また、本実施形態に係る過酸化水素分解装置において、循環送液部30はスプレー33を有する。スプレー33によって被処理液を細かい液滴にすることで、活性炭11に接触する被処理液の表面積が増加する。これにより、過酸化水素の分解反応の効率を上昇させることができる。また、被処理液の液滴が空気に触れることにより、空冷の効果を生じさせることができる。
【0133】
なお、スプレー33の個数は、
図2に示す2つに限られず、任意である。また、スプレー33は、たとえばスプレーノズルに設けられたバルブ(図示せず)を調整することで、噴射する液滴の大きさを変える機構が設けられてもよい。これにより、スプレー33から噴射する液量が少ない場合や、分解反応を促進したい場合などに、小さい液滴で噴射することができる。また、スプレー33から噴射する液量が多い場合や、分解反応によって活性炭11に生じる気泡が多い場合などに、大きい液滴で噴射することができる。
【0134】
また、本実施形態に係る過酸化水素分解装置において、循環送液部30は、過酸化水素の濃度を測定する濃度測定器35を有する。これにより、被処理液中の過酸化水素の濃度を継続的に測定することができ、適切なタイミングで循環の停止および装置間送液をすることができる。
【0135】
また、本実施形態に係る過酸化水素分解装置において、制御部50は、被処理液の温度が、装置を破損するおそれのある温度(危険温度)を超えた場合に緊急停止を行う制御をしてもよい。たとえば、温度センサによって測定された温度が危険温度を超えた場合に、制御部50は、循環送液部30による送液を停止する。これにより、装置の破損を防ぐとともに、過酸化水素の分解反応を安全に停止させることができる。なお、危険温度は、上述の規定温度と同じ温度として設定してもよいし、異なる温度として設定してもよい。
【0136】
また、制御部50は、循環送液部30の代わりに、または循環送液部30とともに、冷却器24の動作を制御してもよい。たとえば、温度センサによって測定された温度が危険温度を超えた場合に、制御部50は、冷却器24の動作を開始させる制御をする。これにより、装置の破損を防ぐとともに、過酸化水素の分解反応を安全に行うことができる。
【0137】
また、より緊急の場合に対応するため、本実施形態に係る過酸化水素分解装置は、温度センサによって測定された温度が危険温度を超えた場合に、貯蔵槽20内の被処理液を直接外部に排出する機構、および/または分解反応を停止させるための希釈水を取り入れる機構を備えてもよい。あるいは、過酸化水素分解システム100がこれらの機構を備えてもよい。
【0138】
なお、本実施形態に係る過酸化水素分解装置において、冷却器24は、貯蔵槽20の外側に設けられてもよい。また、冷却器24は、分解槽10または循環送液部30に設けられてもよい。あるいは、分解槽10と貯蔵槽20の間の被処理液が通過する部分に設けられてもよい。冷却器24の動作は、制御部50によって制御されてもよい。
【0139】
以上説明したように、第1の実施形態に係る過酸化水素分解システム100によれば、装置のコストを抑えつつ、被処理液に含まれる過酸化水素を効率的に分解することができる。
【0140】
(第2の実施形態)
図8を参照して、第2の実施形態に係る過酸化水素分解システムについて説明する。
図8は、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100Aの構成を示す図である。
【0141】
本実施形態と第1の実施形態との相違点の1つは、循環送液部および装置間送液部の構成である。本実施形態に係る循環送液部30Aは、第1の実施形態に係る循環送液部30の機能に加え、第1の実施形態に係る装置間送液部40の機能も有する。以降、本実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0142】
図8に示すように、本実施形態に係る過酸化水素分解装置1A,2A,3Aの循環送液部30Aは、送液管31aと、送液管31bと、送液管41と、循環ポンプ32と、バルブ34と、バルブ43とを有する。このうち、送液管31a、送液管31b、循環ポンプ32およびバルブ34によって、循環送液が行われる。また、送液管31a、送液管41、循環ポンプ32およびバルブ43によって、装置間送液(最終段の過酸化水素分解装置3Aについては排液槽300への排出)が行われる。
【0143】
以下、過酸化水素分解装置1Aの循環送液部30Aを例に用いて説明する。
【0144】
送液管31a,31b,41は、被処理液を、過酸化水素分解装置1Aの活性炭11、または過酸化水素分解装置2Aに送液するための配管である。より詳しくは、送液管31a,31b,41は、被処理液を、過酸化水素分解装置1Aの貯蔵槽20に設けられた排出口22(循環排出口26でもある)から、過酸化水素分解装置1Aの活性炭11に送液するか、または過酸化水素分解装置2Aの貯蔵槽20に設けられた取入口21に送液する。送液管31aの一端部は過酸化水素分解装置1Aの排出口22に接続され、他端部は送液管31bの一端部および送液管41の一端部に接続される。送液管31bの他端部は過酸化水素分解装置1Aの分解槽10Aの上部に配置される。送液管41の他端部は過酸化水素分解装置2Aの取入口21に接続される。
【0145】
循環ポンプ32は、送液管31aに設けられ、送液管31a,31b,41を通して被処理液を送液する。
【0146】
バルブ34は送液管31bに設けられ、バルブ43は送液管41に設けられる。バルブ34およびバルブ43は、循環ポンプ32から吐出された被処理液を、過酸化水素分解装置1Aの排出口22から過酸化水素分解装置1Aの活性炭11に送液するか、あるいは過酸化水素分解装置1Aの排出口22から過酸化水素分解装置2Aに送液するかを切り替える。
【0147】
具体的には、バルブ34を開き、かつバルブ43を閉じることで、循環送液部30Aは循環送液部として機能する。一方、バルブ34を閉じ、かつバルブ43を開くことで、循環送液部30Aは装置間送液部として機能する。
【0148】
なお、バルブ34およびバルブ43は切替部の一例であり、切替部の構成は、上記のものに限られない。たとえば、バルブ34,43の代わりに、送液管31aが送液管31bおよび送液管41に分岐する部分に三方弁が設けられてもよい。
【0149】
過酸化水素分解装置2Aの循環送液部30Aについても同様である。また、過酸化水素分解装置3Aの循環送液部30Aについては、被処理液を次段の過酸化水素分解装置に送液する代わりに排液槽300に排出する点を除いて、過酸化水素分解装置1A,2Aの循環送液部30Aと同様である。
【0150】
以上説明したように、第2の実施形態に係る過酸化水素分解システム100Aおよび過酸化水素分解装置1A,2A,3Aによれば、第1の実施形態と比較して、ポンプの数を減らすことができ、装置のコストをより抑制することができる。
【0151】
なお、本実施形態においては、過酸化水素分解装置1Aの循環送液部30Aが過酸化水素分解装置1A,2Aの間の装置間送液部を兼ねる構成とした。これに限られず、過酸化水素分解装置2Aの循環送液部30Aが、過酸化水素分解装置1A,2Aの間の装置間送液部を兼ねる構成としてもよい。この場合、切替部は、被処理液を、過酸化水素分解装置2Aの循環排出口26から過酸化水素分解装置2Aの活性炭11に送液するか、あるいは過酸化水素分解装置1Aの排出口22から過酸化水素分解装置2Aの取入口21に送液するかを切り替えてもよい。
【0152】
(第3の実施形態)
図9を参照して、第3の実施形態に係る過酸化水素分解システムについて説明する。
図9は、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100Bの構成を示す図である。本実施形態と第1の実施形態との相違点の一つは、被処理液が規定温度以下で循環するための構成である。以降、本実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0153】
本実施形態では、循環送液部によって循環される被処理液の量(以下、「循環量」ともいう。)について、上流側の過酸化水素分解装置の循環量を下流側の過酸化水素分解装置の循環量よりも少なくすることで、被処理液が規定温度以下で循環するように構成されている。
【0154】
具体的には、
図9における過酸化水素分解装置1B,2B,3Bを備える過酸化水素分解システム100Bについて、各過酸化水素分解装置の循環送液部30によって送液される被処理液の量を、上流側からA、B、Cとするとき、A<BおよびA<Cのいずれかが成立する。より詳しくは、複数の過酸化水素分解装置は、複数の過酸化水素分解装置の循環送液部によって送液される被処理液の量は、少なくとも、最上段の第1の循環送液部と、第1の循環送液部よりも下流側の第2の循環送液部について、第1の循環送液部で送液される被処理液の量が第2の循環送液部で送液される被処理液の量よりも少ない。なお、第1と第2の循環送液部の間に第3の循環送液部があってもよい。また、本実施形態では、A<B<Cが成立する。
【0155】
このとき、循環量を少なくするための方法は任意である。たとえば、上流側の過酸化水素分解装置の循環送液部30は、被処理液を少なく送液してもよいし、断続的に送液してもよい。具体的には、循環ポンプ32の動作速度(吐出量)を変えてもよい。あるいは、
図9に示すように、循環ポンプ32の下流にバルブ36を設け、バルブ36の開度を調整することにより、循環送液部30によって送液される被処理液の量を調整してもよい。また、温度センサを設け、規定温度を超えた場合に送液を停止し、規定温度を下回った場合に送液を再開するようにしてもよい。
【0156】
なお、本実施形態に係る過酸化水素分解システム100Bにおいては、複数の過酸化水素分解装置1B,2B,3Bのうち少なくとも1つの過酸化水素分解装置が冷却器24を備えることが好ましい。さらに、より上流側の過酸化水素分解装置が冷却器24を備えることが好ましい。上流側の過酸化水素分解装置においては、高濃度の過酸化水素を含む被処理液が活性炭11を通過するため、より温度が上昇しやすいためである。
【0157】
なお、本実施形態において、複数の過酸化水素分解装置1B,2B,3Bの活性炭の量は全て同じでもよい。あるいは、下流側の過酸化水素分解装置の活性炭の量が、上流側の過酸化水素分解装置の活性炭の量より多くてもよい。
【0158】
本実施形態に係る過酸化水素分解システム100Bによれば、過酸化水素分解装置間で循環量を変えることで、被処理液を規定温度以下で循環させることができる。これにより、過酸化水素分解装置ごとに活性炭11の量を変える必要がないため、メンテナンスが簡易となる。
【0159】
以上説明した第1~第3の実施形態に係る過酸化水素分解システム100,100A,100Bによれば、装置のコストを抑えつつ、被処理液に含まれる過酸化水素を効率的に分解することができる。
【0160】
なお、上記の各実施形態において、過酸化水素分解システムの各過酸化水素分解装置は、
図1に示すデイジーチェーン接続に限られず、途中の過酸化水素分解装置において、二股以上に分岐していてもよい。たとえば、ある1つの過酸化水素分解装置について、その次段に位置する過酸化水素分解装置が2つ以上存在してもよい。
【0161】
なお、上記の各実施形態において、被処理液の循環は、各過酸化水素分解装置の装置内で行われるものに限られず、複数の過酸化水素分解装置に渡って行われてもよい。
【0162】
また、ある過酸化水素分解装置を高所に配置し、その次段に位置する過酸化水素分解装置を低所に配置することで、装置間送液部40の装置間ポンプ42の代わりとしてもよい。すなわち、装置間送液は、重力によって行われてもよい。
【0163】
また、上記の各実施形態において、各ポンプ、各バルブおよび各センサ等は、制御部50によって自動で制御されることとした。これに限られず、各ポンプ、各バルブおよび各センサ等のうち少なくとも1つを手動で制御してもよい。装置間送液を手動で制御する場合、濃度測定器35が設けられていなくてもよい。
【0164】
また、上記の各実施形態において、温度センサおよびフロートセンサは、制御部50に値を出力するとしたが、これに限られず、制御部50に接続されたカメラなどの撮像部によってセンサの目盛りを撮影し、制御部50は、撮影された画像を画像解析することによって、各センサの値を読み取ってもよい。あるいは、貯蔵槽20に貯蔵された被処理液の液面を撮影し、画像解析によって液面の高さを読み取ってもよい。
【0165】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0166】
1,2,3,1A,2A,3A,1B,2B,3B 過酸化水素分解装置
10 分解槽
11 活性炭
12 フィルタ
13 支持部
14 排気口
15,25 温度センサ
20 貯蔵槽
21 取入口
22 排出口
23 フロートセンサ
24 冷却器
26 循環排出口
30,30A 循環送液部
31,31a,31b 送液管
32 循環ポンプ
33 スプレー
34,36 バルブ
35 濃度測定器
40 装置間送液部
41 送液管
42 装置間ポンプ
43 バルブ
50 制御部
100,100A,100B 過酸化水素分解システム
200 被処理液槽
300 排液槽