(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007009
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】還元鉄製造補助装置と還元鉄の製造方法
(51)【国際特許分類】
C21B 13/00 20060101AFI20240111BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20240111BHJP
C21B 7/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C21B13/00
C01B3/04 R
C21B7/00 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108106
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】福田 達弥
(72)【発明者】
【氏名】田中 博和
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 洋志
【テーマコード(参考)】
4K012
4K015
【Fターム(参考)】
4K012DA03
4K012DA05
4K015AC03
(57)【要約】
【課題】還元鉄の製造に利用できる還元鉄製造補助装置の提供。
【解決手段】水分解反応により水素ガスと酸素ガスを含む第1混合ガスを発生させる混合ガス発生装置と、第1混合ガスを含む水から気液分離するための気液分離装置を有しており、混合ガス発生装置が水供給ラインで接続されており、気液分離装置が、頂部、底部およびそれらの間の側壁部を有するタンクが縦置きされたものであり、頂部側にガス排出口を有し、ガス排口とガス排出ラインが接続されており、底部側に水排出口を有し、水排出口と水返送ラインが接続され、水返送ラインが、水供給ラインに接続されており、側壁部において、第1混合ガスと水の混合物を供給する第1混合ガス供給ラインと、希釈ガスを外部から供給する希釈ガス供給ラインが接続されており、ガス排出ラインが第1混合ガスと希釈ガスからなる第2混合ガスを少なくとも高炉に供給できる還元鉄製造補助装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分解反応により水素ガスと酸素ガスを含む第1混合ガスを発生させる混合ガス発生装置と、
前記混合ガス発生装置から送られた前記第1混合ガスを含む水から前記第1混合ガスと水を分離するための気液分離装置を有しており、
前記混合ガス発生装置が水源と水供給ラインで接続されており、
前記気液分離装置が、
頂部、底部およびそれらの間の側壁部を有するタンクが縦置きされたものであり、
前記頂部側にガス排出口を有し、前記ガス排口とガス排出ラインが接続されており、
前記底部側に水排出口を有し、前記水排出口と水返送ラインが接続され、前記水返送ラインが、前記水供給ラインまたは前記混合ガス発生装置に接続されており、
前記頂部と前記底部の間の側壁部において、前記混合ガス発生装置から第1混合ガスを含む水を供給する第1混合ガス供給ラインと、製鉄副生ガスを含む希釈ガスを外部から供給する希釈ガス供給ラインが接続されており、
前記ガス排出ラインが、焼結炉、コークス炉、高炉、転炉を含む製鉄工程に接続されており、前記第1混合ガスと前記希釈ガスからなる第2混合ガスを少なくとも高炉に供給できるものである、還元鉄製造補助装置。
【請求項2】
前記混合ガス発生装置が、電気分解法を利用した装置または光触媒を利用した装置である、請求項1記載の還元鉄製造補助装置。
【請求項3】
前記希釈ガスが、焼結炉ガス、コークス炉ガス、改質コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス、空気、富化酸素から選ばれるものを含むものである、請求項1記載の還元鉄製造補助装置。
【請求項4】
前記第2混合ガスが、前記第2混合ガス中の水素、一酸化炭素を含む可燃性ガスおよび酸素が引火により爆発を起こす組成とならないよう調整されたものである、請求項1記載の還元鉄製造補助装置。
【請求項5】
水分解反応により水素ガスと酸素ガスを含む第1混合ガスを発生させる第1混合ガス発生工程と、
第1混合ガス発生工程で発生させた第1混合ガスを含む水を気液分離する気液分離工程を有しており、
前記気液分離工程が、製鉄副生ガスを含む希釈ガスを供給しながら気液分離をして、前記第1混合ガスと前記希釈ガスを含む第2混合ガスと水に分離するとともに、前記第2混合ガス中の水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含む可燃性ガスの濃度を調整する工程であり、
前記気液分離工程の後、得られた第2混合ガスを焼結炉、コークス炉、高炉、転炉を含む製鉄工程の内の少なくとも高炉に還元ガスおよび送風ガスとして供給する工程を有している、還元鉄の製造方法。
【請求項6】
前記第1混合ガスが、水の電気分解法を利用した方法または光触媒を利用した方法から得られたものである、請求項5記載の還元鉄の製造方法。
【請求項7】
前記希釈ガスが、焼結炉ガス、コークス炉ガス、改質コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス、空気、富化酸素から選ばれるものを含むものである、請求項5記載の還元鉄の製造方法。
【請求項8】
前記第2混合ガスが、前記第2混合ガス中の水素、一酸化炭素を含む可燃性ガスおよび酸素が引火により爆発を起こす組成とならないよう調整されたものである、請求項5記載の還元鉄の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元鉄製造補助装置と還元鉄の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
還元鉄製造プロセスのCO2削減のために、還元ガスとして副生ガスを活用したH2やCOを還元ガスとして有効利用する技術や、外部で製造したグリーン水素(水を電気分解して得られる水素)を利用する技術が検討されている。
【0003】
特許文献1は、製鉄プロセスで発生する副生ガスを水蒸気や二酸化炭素で改質して、水素と一酸化炭素を主成分とする合成ガスを製造する発明であり、副生ガスとしてコークス炉ガスを使用する発明、還元鉄を製造する方法に前記合成ガスを使用する発明が記載されている。
【0004】
特許文献2は、光触媒を使用する水分解反応により水素と空気を混合して、希釈された水素を得る水素製造装置と水素製造方法の発明が記載されている。
図1に示されているとおり、水素・窒素分離機と酸素分離機が必要になる。
【0005】
特許文献3は、高圧蒸留塔、低圧蒸留塔、および前記高圧蒸留塔のコンデンサーと前記低圧蒸留塔のリボイラーを兼ねる自己熱交換器より構成される蒸留塔設備により、所定濃度以上とされた水素と、酸素と、窒素とを主成分とする混合気体から、水素と窒素からなる混合物を分離する水素分離方法の発明が記載されている。
図1に示されているとおり、水素分離装置が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-213545号公報
【特許文献2】特開2020-93950号公報
【特許文献3】特開2021-80125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水素ガスと一酸化炭素ガスを含む混合ガスの製造と、前記混合ガスの還元鉄の製鉄プロセスへの供給ができる還元鉄製造補助装置と、水素ガスと一酸化炭素ガスを含む混合ガスを使用する還元鉄の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水分解反応により水素ガスと酸素ガスを含む第1混合ガスを発生させる混合ガス発生装置と、
前記混合ガス発生装置から送られた前記第1混合ガスを含む水から前記第1混合ガスと水を分離するための気液分離装置を有しており、
前記混合ガス発生装置が水源と水供給ラインで接続されており、
前記気液分離装置が、
頂部、底部およびそれらの間の側壁部を有するタンクが縦置きされたものであり、
前記頂部側にガス排出口を有し、前記ガス排口とガス排出ラインが接続されており、
前記底部側に水排出口を有し、前記水排出口と水返送ラインが接続され、前記水返送ラインが、前記水供給ラインまたは前記混合ガス発生装置に接続されており、
前記頂部と前記底部の間の側壁部において、前記混合ガス発生装置から第1混合ガスを含む水を供給する第1混合ガス供給ラインと、製鉄副生ガスを含む希釈ガスを外部から供給する希釈ガス供給ラインが接続されており、
前記ガス排出ラインが、焼結炉、コークス炉、高炉、転炉を含む製鉄工程に接続されており、前記第1混合ガスと前記希釈ガスからなる第2混合ガスを少なくとも高炉に供給できるものである、還元鉄製造補助装置を提供する。
【0009】
また本発明は、水分解反応により水素ガスと酸素ガスを含む第1混合ガスを発生させる第1混合ガス発生工程と、
第1混合ガス発生工程で発生させた第1混合ガスを含む水を気液分離する気液分離工程を有しており、
前記気液分離工程が、製鉄副生ガスを含む希釈ガスを供給しながら気液分離をして、前記第1混合ガスと前記希釈ガスを含む第2混合ガスと水に分離するとともに、前記第2混合ガス中の水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含む可燃性ガスの濃度を調整する工程であり、
前記気液分離工程の後、得られた第2混合ガスを焼結炉、コークス炉、高炉、転炉を含む製鉄工程の内の少なくとも高炉に還元ガスおよび送風ガスとして供給する工程を有している、還元鉄の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の還元鉄製造補助装置は、高純度の水素を分離する必要がなく、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含む可燃性ガスの濃度が調整された還元性混合ガスを還元鉄の製造工程に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の還元鉄製造補助装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(還元鉄製造補助装置)
本発明の還元鉄製造補助装置10の一実施形態を
図1により説明する。
混合ガス発生装置20は、水分解反応により水素ガスと酸素ガスを含む第1混合ガスを発生させるための装置である。
混合ガス発生装置20として、
図1では光触媒を利用した装置を使用しているが、その他、電気分解法を利用した装置を使用することができる。
【0013】
混合ガス発生装置(光触媒を利用した装置)20は、両端が開口された筒状容器(管路)21の内壁の一部21aに光触媒シート25が配置されている。
光触媒シート25が配置された内壁21aと半径方向に対抗する内壁21bには、外部の光を取り入れるための透明窓23が形成されている。
筒状容器(管路)21の第1端開口部側が入水口22aであり、軸方向反対側の第2端開口部が出水口22bである。
混合ガス発生装置(光触媒を利用した装置)20は公知のものであり、特開2020-93950号公報の
図1(但し、水素・窒素分離機と酸素分離機は含まない)、特開2021-80125号公報の
図1(但し、水素分離装置は含まない)に示された装置を使用することができる。
【0014】
混合ガス発生装置20は、図示していない水源とポンプP1を介して水供給ライン40と接続されている。
【0015】
気液分離装置30は、混合ガス発生装置20から送られた第1混合ガスを含む水から第1混合ガスと水を分離した上で、外部から供給される希釈ガスと混合した第2混合ガスを得るための装置である。
気液分離装置30は、頂部32、底部33およびそれらの間の側壁部34を有するタンク31が縦置きされたものである。タンク31の内径は、タンク31に接続されている各ラインの内径よりも大きい。
前記タンク31は、外形が円柱状または角柱状のものである。
【0016】
頂部32側にガス排出口32aを有し、ガス排口32aとガス排出ライン41が接続されている。
底部33側(底部33側の側壁部34)に水排出口33aを有し、水排出口33aと水返送ライン42が接続されている。水返送ライン42にはポンプP2が配置されている。
水返送ライン42は、水供給ライン40に接続されているが、直接、混合ガス発生装置20に接続されていてもよい。
頂部32と底部33の間の側壁部34において、混合ガス発生装置20から第1混合ガスを含む水を供給する第1混合ガス供給ライン43と、製鉄副生ガスを含む希釈ガスを外部から供給する希釈ガス供給ライン44が接続されている。希釈ガス供給ライン44には、ポンプP3が配置されている。
図1では、希釈ガス供給ライン44が、第1混合ガス供給ライン43よりも底部33側に接続されている。第1混合ガスと希釈ガスを混合して第2混合ガスを得るためには前記接続位置関係が好ましい。
【0017】
希釈ガス供給ライン44から供給される製鉄副生ガスを含む希釈ガスは、焼結炉ガス(CO約1モル%、CO2約6モル%、酸素約10モル%、水蒸気約10モル%、窒素などを含む)、コークス炉ガス(水素約55モル%、メタン30モル%、他の炭化水素約10モル%、COなどを含む)、改質コークス炉ガス、高炉ガス(窒素、CO約22モル%、CO2約22モル%、水素約4モル%などを含む)、転炉ガス(CO約65モル%、CO2約17モル%、窒素、水素約1モル%などを含む)、空気、富化酸素から選ばれるものを含むものが好ましい。使用する希釈ガスは、前記ガスの一部でもよいし、全てのガスを含むものでもよい。
【0018】
ガス排出口32aに接続されたガス排出ライン41は、焼結炉、コークス炉、高炉、転炉を含む製鉄工程50に接続されており、第1混合ガスと希釈ガスからなる第2混合ガスを少なくとも高炉に還元ガスおよび送風ガスとして供給できるようになっている。
このように希釈ガスとして製鉄副生ガスを使用するため、特許文献2、3の
図1に示されているような水素分離手段は必要ない。
焼結炉、コークス炉、高炉、転炉を含む製鉄工程に供給される第2混合ガスは、爆発防止と還元性付与から、希釈ガスを構成するガスの混合比、或いはそのガスの供給量を調整する。具体的には、可燃性ガスである水素、一酸化炭素および助燃性ガスである酸素の濃度を調整する。一例として、希釈ガスとして空気を用いた場合は、第2混合ガス中の水素濃度が4モル%以下になるようにすることが好ましい。
【0019】
(還元鉄の製造方法)
本発明の還元鉄の製造方法として、
図1に示す還元鉄製造補助装置10を使用した一実施形態を説明する。
混合ガス発生工程では、混合ガス発生装置20において水分解反応により水素ガスと酸素ガスを含む第1混合ガスを発生させる。
【0020】
次の気液分離工程では、混合ガス発生工程で発生させた第1混合ガスを含む水を気液分離する。
混合ガス発生装置20において発生させた第1混合ガスを含む水は、第1混合ガス供給ライン43から気液分離装置30に送る。
【0021】
気液分離装置30の内径は混合ガス供給ライン43の内径よりも大きいので、気液分離装置30に送られた第1混合ガスを含む水は、水流の速度が低下し、気泡(第1混合ガス)は頂部32側に上昇し、水は底部33側に溜まる。
気泡(第1混合ガス)は気液分離装置30の頂部32側の空間に集まろうとするが、希釈ガス供給ライン44から製鉄副生ガス(希釈ガス)が供給されているため、第1混合ガスと希釈ガスは混合されて、第2混合ガスになる。
希釈ガスは、焼結炉ガス(CO約1モル%、CO2約6モル%、酸素約10モル%、水蒸気約10モル%、窒素などを含む)、コークス炉ガス(水素約55モル%、メタン30モル%、他の炭化水素約10モル%、COなどを含む)、改質コークス炉ガス、高炉ガス(窒素、CO約22モル%、CO2約22モル%、水素約4モル%などを含む)、転炉ガス(CO約65モル%、CO2約17モル%、窒素、水素約1モル%などを含む)、空気、富化酸素から選ばれるものを含むものが好ましい。使用する希釈ガスは、前記ガスの一部でもよいし、全てのガスを含むものでもよい。
【0022】
タンク31の底部33に移動した水は、ポンプP2を作動させることで水返送ライン42と水供給ライン40から混合ガス発生装置20に返送されて、再び第1混合ガス発生工程に使用される。このとき、減少分の水は、ポンプP1を作動させて水供給ライン40から補充する。
【0023】
タンク31の頂部32に移動した第2混合ガスは、第1混合ガスと希釈ガスが混合され、その組成は、還元性を有し、かつ爆発が防止されるように調整されている。
【0024】
気液分離工程の後、得られた第2混合ガスをガス排出ライン41により焼結炉、コークス炉、高炉、転炉を含む製鉄工程50の内の少なくとも高炉に還元ガスおよび送風ガスとして供給して、還元鉄の製造に利用する。
このように第2混合ガスを高炉などに供給して鉄鉱石の主成分である酸化鉄(Fe2O3)と接触させることで、Fe3O4、FeOを経て、Feまで還元して還元鉄を得ることができる。
【実施例0025】
実施例1
図1に示す還元鉄製造補助装置10を使用して、還元鉄を製造した。
ポンプP1を作動させ、水源から水供給ライン40を使用して、水を混合ガス発生装置20に送って水素と酸素を含む第1混合ガスを含む水を得た。
第1混合ガスを含む水を第1混合ガスライン43から気液分離装置30に送って気液分離を実施した。このときポンプP3を作動させ、希釈ガスライン44から希釈ガスとして空気を供給して、第1混合ガスと希釈ガスからなる第2混合ガスを生じさせた。
気液分離された水は、ポンプP2を作動させ、水返送ライン42と水供給ライン40を使用して混合ガス発生装置20に供給した。気液分離により減少した量の水は、水供給ライン40から補った。
以上の循環工程を繰り返して実施して、継続的に第2混合ガスを得た。第2混合ガス1m
3中には、水素が約4モル%含まれるよう調整した。
第2混合ガスを継続して高炉に還元ガスおよび送風ガスとして供給することで、第2混合ガスに含まれる還元ガスおよび別途高炉に導入されるコークス,水素等の還元作用によって、Fe
2O
3→Fe
3O
4→FeO→Feの反応が生じて、還元鉄が得られることになる。