(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070091
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】安全管理方法及び安全管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240515BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240515BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180471
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】津山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】宮山 善行
(72)【発明者】
【氏名】横倉 豪
(72)【発明者】
【氏名】宮原 範行
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC03
5L049CC15
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】生産ラインに対して非定常処理を行う際の安全管理における、照合作業の信頼度や作業効率をより向上させる。
【解決手段】生産ラインに対する補修工事や改造工事を行う際に、選択した複数の設備を非定常状態に設定する際に、非定常状態とする設備に条件設定札1を掛けて条件設定の状態とし、非定常処理が終了すると、設備に掛けた条件設定札1を回収して設定解除を行う安全管理方法であって、条件設定札1にRFIDタグ2を付し、設定解除の際に、各設備に掛けた複数の条件設定札1を回収し、回収後の複数の条件設定札1について、各条件設定札1に設けたRFIDタグ2をリーダーで読むことで、照合部4A及び設定更新部4Bの処理を実行させ、実行後の条件設定リスト7Aのデータによって、対象とした設備の設定解除が完了しているかを確認する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ラインに対する補修工事や改造工事等の非定常処理を行う際に、上記生産ラインの有する設備のうちから選択した複数の設備を非定常状態に設定すると共に、当該非定常状態とする設備に条件設定札を掛けて条件設定の状態とし、非定常処理が終了すると、上記設備に掛けた条件設定札を回収して設定解除の状態とする安全管理方法であって、
上記条件設定札に付され、当該付された条件設定札に対応する設備に関する情報が記憶されたRFIDタグと、
上記RFIDタグ内の情報を近接触通信で読み取り可能なリーダーと、
少なくとも非定常状態とする設備の条件設定及び設定解除の状態に関する情報を有する条件設定リストを格納した記憶部と、
上記リーダーが読み取ったRFIDタグの情報と上記条件設定リストとの照合を行い、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応する、上記条件設定リスト内のデータを、コンピュータ処理で検出する照合部と、
上記照合部の処理で検出された、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応するデータにおける設備の設定解除の状態を、コンピュータ処理で、上記条件設定札の回収済みの状態に設定変更する設定更新部と、
を備え、
上記各設備に掛けた複数の条件設定札を回収し、回収後の複数の条件設定札について、各条件設定札に設けたRFIDタグを上記リーダーで読むことで上記照合部及び上記設定更新部の処理を実行させ、上記実行後の条件設定リストのデータによって、対象とした設備の設定解除が完了しているかを確認する、
ことを特徴とする安全管理方法。
【請求項2】
上記条件設定される複数の設備の位置を表示するための地図情報と、
上記地図情報を参照して、設備の位置情報を表示するコンピュータ処理を行う地図アプリ、及び、上記RFIDタグの情報を読み取るリーダー機能を有する移動端末と、を備え、
上記地図アプリは、上記RFIDタグの情報を読み取る又は設備の選択処理によって、読み取ったRFIDタグに対応する設備又は選択された設備を含む、上記条件設定される複数の設備のうちから選択された1又は2以上の設備の位置情報を地図表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載した安全管理方法。
【請求項3】
上記条件設定リストを格納した記憶部は、サーバーが有し、
上記リーダーと上記サーバーとは、無線通信手段でデータの授受が可能となっている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した安全管理方法。
【請求項4】
生産ラインに対する補修工事や改造工事等の非定常処理を行う際に、上記生産ラインの有する設備のうちから選択した複数の設備を非定常状態に設定すると共に、当該非定常状態とする設備に条件設定札を掛けて条件設定の状態とし、非定常処理が終了すると、上記設備に掛けた条件設定札を回収して設定解除の状態とする安全管理のために用いられる安全管理システムであって、
上記条件設定札に付され、当該付された条件設定札に対応する設備に関する情報が記憶されたRFIDタグと、
上記RFIDタグ内の情報を近接触通信で読み取り可能なリーダーと、
少なくとも非定常状態とする設備の条件設定及び設定解除の状態に関する情報を有する条件設定リストを格納した記憶部と、
上記リーダーが読み取ったRFIDタグの情報と上記条件設定リストとの照合を行い、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応する、上記条件設定リスト内のデータを、コンピュータ処理で検出する照合部と、
上記照合部の処理で検出された、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応するデータにおける設備の設定解除の状態を、コンピュータ処理で、上記条件設定札の回収済みの状態に設定変更する設定更新部と、
を備え、
上記リーダーによる条件設定札に設けたRFIDタグの読み取りは、上記各設備に掛けた複数の条件設定札を回収し、回収後の複数の条件設定札について実行される、
ことを特徴とする安全管理システム。
【請求項5】
上記条件設定される複数の設備の位置を表示するための地図情報と、
上記地図情報を参照して、設備の位置情報を表示するコンピュータ処理を行う地図アプリ、及び、上記RFIDタグの情報を読み取るリーダー機能を有する移動端末と、を備え、
上記地図アプリは、上記RFIDタグの情報を読み取る又は設備の選択処理によって、読み取ったRFIDタグに対応する設備又は選択された設備を含む、上記条件設定される複数の設備のうちから選択された1又は2以上の設備の位置情報を地図表示する、
ことを特徴とする請求項4に記載した安全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ライン備に対する補修工事や改造工事等の非定常処理を行うにあたっての安全管理に関する技術である。本発明は、特に、非定常状態として設定した条件設定を設定解除する際の信頼度及び作業効率を向上することが可能な技術である。
【背景技術】
【0002】
生産ラインの設備に対して補修工事や改造工事を行う場合には、施工を開始するにあたって、安全確保のために、次のような処理が行われることが一般的である。
工事前に、まず、各設備を停止して非定常状態に設定し、各設備が安全な状態であることを、工場オペレーター、保全員、工事施工者といった各種関係者が確認する。このとき、生産ライン内に安全に立ち入ることができることを宣言するために、例えば、「OFF」状態となっているスイッチに条件設定札(操作禁止札)を掛けて、スイッチ操作の禁止を確実にするといった安全措置(条件設定と称する)を取っている。
また、工事が終わり設備を再び稼動させるときは、再稼働に先立って、各設備のスイッチに掛けられた全ての条件設定札を回収する。そして、スイッチに掛けた各条件設定札が外されたことを以って、生産ライン内に立入り者がいないものと判断して、ライン全体のスイッチを「ON」にするという安全措置(条件設定解除または設定解除と称する)を行っている。
【0003】
ここで、補修工事や改造工事を行う際に、スイッチをはじめ、バルブ、メカストッパーなど安全措置の対象となる設備が多数(例えば400カ所)あるような生産ラインも多い。この場合、全ての設備に対し条件設定札による安全確認を行い、また基準書通りに安全措置が行われていることを確認するために、従来、多くの時間と労力を要している。
また、昨今、工場オペレーターや保全員も少ない人数で業務を行っている場合も多い。このため、施工者が保全員から条件設定札の掛け場所を指示される順番を待っている等の状態が発生することもあり、施工・保全の連携強化が望まれている。更に、熟練者の減少により熟練技能の伝承が必須となっている。このように、安全管理のために確実な条件設定及び設定解除という点では信頼性に乏しい場合もある。
【0004】
従来、作業の安全に関する技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術がある。この技術は、特定領域に特定者のみが入場できるようにするとともに、効率よく入退場の管理を行なう技術である。具体的には、その技術は、作業員がICタグを備えたヘルメットを被り、そのICタグの情報に現場のゲートでアクセスすることにより、現場への作業員の入退場を管理する入退場管理システムである。
また、特許文献2には、作業員に送受信機を所有させ、工事機械の危険範囲内にいる作業員の有無を把握することにより安全管理を行う技術が開示されている。
更に、生産ラインに関するものでないが、特許文献3に記載の技術もある。特許文献3には、雨量や風速や河川水位などを観測して現場の危険性の有無を判別し、作業員にとって直接危険となる原因の有無を監視する安全監視システムが開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1~特許文献3の技術は、いずれも生産ラインの設備に対して補修工事や改造工事における条件設定及び設定解除を対象にした技術でない。そして、特許文献1~特許文献3の技術は、条件設定や設定解除を信頼性が高く、容易かつ効率よく安全管理をすることに対応するものではない。
これに対し、特許文献4には、電力などの設備の誤操作を未然に防止するプラント等の設備誤操作防止システムが開示されている。
また、特許文献5に記載の技術は、各設備に固定タグを付加することを前提とする。そいて、特許文献5には、現場にて、固定タグの情報と、条件設定リスト等のリストと、条件設定札に設けたRFIDタグの情報との照合を実行することが記載されている。これによって、条件設定及び設定解除を信頼性が高く、容易かつ効率よく安全管理をすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-22524号公報
【特許文献2】特開2006-72719号公報
【特許文献3】特開2009-271628号公報
【特許文献4】特開2006-146749号公報
【特許文献5】特開2016-192206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献5に記載の技術は、設備に付加した固定タグと、札に付加したRFIDタグと、リスト情報との3つの情報をともに、現場にて読み取りを行う。このため、RFIDの特徴である同時に複数読み取り機能を使えず、特にある水準まで経験を積んだオペレーターからすれば効率面で物足りないものとなっていた。
【0008】
すなわち、特許文献5に記載の技術は、設備の固定タグと札のRFIDタグとリストデータを3つの読み取りを、個々の設備の前でそれぞれ行う必要がある。このため、例えば、経験の浅い作業員が、同じような機器が多数ある現場で実行しようとすると、対象機器を探すために時間が掛かるおそれがある。すなわち、機器の絞込みがなかなかできないという問題がある。また、対象となる設備の場所は、運転室や電気室のように機器やスイッチが整然と並んでいて、探しやすい場所だけではない。現場で入り組んだ配管の中から、条件設定や設定解除すべきバルブや、大型機械の背面に隠れた機器の操作盤の条件設定や設定解除すべきスイッチを見つける必要がある場合もある。そして、過去のミスで多くあるパターンとして、早く立ち上げたいという焦りによる確認不足があるが、場所が分かっていても3点照合を行うと逆に時間が掛かってしまうこともある。
【0009】
そして、対象箇所が例えば400カ所以上という多数の箇所ということもあり、各設備毎に上記の3点照合作業を行うことは、時間が掛かるという課題がある。
また、特許文献4においても、同様に、現場で、装置毎に照合を行う点で、時間が掛かるという課題がある。
また、立ち上げ準備時は設定解除の状況を問い合わせる連絡が保全から頻繁にあり、運転室オペレーターの負荷が高くなることがよくあることも課題である。
【0010】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、生産ラインに対して非定常処理を行う際の安全管理における、照合作業の信頼度や作業効率をより向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題解決のために、本発明の一態様は、生産ラインに対する補修工事や改造工事等の非定常処理を行う際に、上記生産ラインの有する設備のうちから選択した複数の設備を非定常状態に設定すると共に、当該非定常状態とする設備に条件設定札を掛けて条件設定の状態とし、非定常処理が終了すると、上記設備に掛けた条件設定札を回収して設定解除の状態とする安全管理方法であって、上記条件設定札に付され、当該付された条件設定札に対応する設備に関する情報が記憶されたRFIDタグと、上記RFIDタグ内の情報を近接触通信で読み取り可能なリーダーと、少なくとも非定常状態とする設備の条件設定及び設定解除の状態に関する情報を有する条件設定リストを格納した記憶部と、上記リーダーが読み取ったRFIDタグの情報と上記条件設定リストとの照合を行い、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応する、上記条件設定リスト内のデータを、コンピュータ処理で検出する照合部と、上記照合部の処理で検出された、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応するデータにおける設備の設定解除の状態を、コンピュータ処理で、上記条件設定札の回収済みの状態に設定変更する設定更新部と、を備え、上記各設備に掛けた複数の条件設定札を回収し、回収後の複数の条件設定札について、各条件設定札に設けたRFIDタグを上記リーダーで読むことで上記照合部及び上記設定更新部の処理を実行させ、上記実行後の条件設定リストのデータによって、対象とした設備の設定解除が完了しているかを確認する、安全管理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、設定解除の際に、回収した複数の条件設定札について、同じ場所で、各条件設定札に設けたRFIDタグを順番に読み取って照合作業を行う。この結果、読み取り作業が時間短縮となり、更に、読み取った情報も自動照合されていることで、照合の信頼度が担保される。特に、現場の各設備に移動する毎に照合作業を行う場合に比較して、本発明の一態様では纏めて実行することで、安定して照合作業が出来て、より照合作業の信頼度が向上する。また、以上のことから、本発明の態様によれば、作業効率も向上する。
【0013】
なお、照合した結果は、条件設定リストとして有する。このため、クラウド等(サーバー)を使用する場合、保全も含めて同時に設定解除の状態が閲覧可能になる。これによって、進捗の把握のための無線・電話のやり取りが減り、試運転時に運転室のオペレーターが作業に集中できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に基づく実施形態に係るシステム構成を説明する図である。
【
図2】RFIDタグに格納されている情報の例を示す図である。
【
図5】地図表示を示す図である。ただし、ライン設備の通路などを省略している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(安全管理システム)
本実施形態の安全管理方法で用いる安全管理システムについて説明する。
本実施形態の安全管理システムは、
図1に示すように、条件設定札1、移動端末3、PC5(パーソナルコンピュータ)、及びサーバー4を備える。
移動端末3、PC5、及びサーバー4は、インターネットその他の公知の通信手段を介して無線通信可能に構成されている。
【0016】
<条件設定札1>
各条件設定札1には、例えば、対象とする設備(スイッチやバルブなど)に振られた、IDや設備名などが記載されている。IDは、対象を識別する識別記号などの識別子を意味する。
また、条件設定札1にはRFIDタグ2が取り付けられている。RFIDタグ2は、テープなどで条件設定札1に固定されて付されている。RFIDタグ2は、札1に対し着脱可能に付されていてもよい。RFIDタグ2は、例えばICタグであり、CPUとアンテナと記憶部とを備える。
RFIDタグ2には、対応する設備の情報が記憶されている。RFIDタグ2には、例えば
図2に示すように、対応する設備のIDや、位置No.の情報などが記憶されている。
【0017】
<サーバー4>
サーバー4は、記憶部7、照合部4A及び設定更新部4Bを備える。
記憶部7には、条件設定リスト7Aのデータ、地図情報7Bが格納されている。
【0018】
[条件設定リスト7A]
条件設定リスト7Aは、例えば
図3に示すように、生産ラインを構成する各設備毎にデータを有し、各データは、「位置No.」、「ID」、「条件設定の状態」、「設定解除の状態」等の情報が格納される項目を有するデータからなる。
位置No.は、地図上での設備位置に付された番号である。
IDは、設備に付されたID(識別子)である。
条件設定の状態としては、設定の情報と設定済みの情報とを有する。条件設定は、工事で非定常状態に設定する設備に対して設定される。非定常状態は、通常、停止の状態である。「設定」の状態は、条件設定札1を掛ける設備に対し、予め設定される情報である。
図3では、◎が設定された設備を示す。「済」の情報は、実際に、設備に対し条件設定札1を掛けたか否かの情報である。
図3では、「○」が条件設定札1を掛けたことを示すステーたる表示である。
設定解除の状態は、条件設定札1を回収したか否かの状態を表示する欄である。
【0019】
このように、条件設定チェックリストには、設備名、リストのステータス(札準備、条件設定、設定解除等)などの情報が入っている。条件設定のタイミングが違うものは形や色で識別し、特に注意が必要(順不同ではまずいものなど)は色や形で識別できるようにするとよい。
【0020】
[地図情報7B]
地図情報7Bは、生産ライン内の各設備の位置に関する地図表示のための情報である。
[照合部4A]
照合部4Aは、RFIDタグ2から読み取ったタグ情報が入力されると、作動する。
照合部4Aは、条件設定処理と、設定解除処理とを行う。
【0021】
まず、条件設定処理について説明する。
照合部4Aは、設定処理指令を入力すると、タグ情報のIDをキーとして、条件設定リスト7Aのデータのサーチを行い、そのIDのデータが有るか判定する。データがある場合、そのデータの条件設定の状態の設定欄に「◎」のステータスが設定されているか判定する。そして、条件を満足する場合には、設定情報の処理として設定更新部4Bに移行する。一方、条件を満足しない場合には、エラーメッセージを送信する。
【0022】
次に、設定解除処理について説明する。
照合部4Aは、設定解除指令を入力すると、タグ情報のIDをキーとして、条件設定リスト7Aのデータのサーチを行い、そのIDのデータが有るか判定する。データがある場合、そのデータの条件設定の状態の設定欄に「◎」のステータスが設定されているか判定する。そして、条件を満足する場合には、解除情報の処理として設定更新部4Bに移行する。一方、条件を満足しない場合には、エラーメッセージを送信する。
【0023】
[設定更新部4B]
設定更新部4Bは、照合部4Aから設定情報を取得すると、対応するIDのデータに対し、条件設定の状態の「済」の欄に「○」のステータス(札掛け済みのステータス)を設定する。
また、設定更新部4Bは、照合部4Aから解除情報を取得すると、対応するIDのデータに対し、「設定解除」の欄に「○」のステータス(札回収済みのステータス)を設定する。
ここで、照合部4Aと設定更新部4Bの処理は、端末3やPC5などに設けても良いが、端末3等が複数存在することも想定してサーバー4で共通に処理を実行するようにした。
また、同様の理由で、条件設定リスト7Aもサーバー4に設定した。
【0024】
<移動端末3>
端末3は、
図4に示すように、表示部3A、操作部3B、CPU3C、記憶部3D、通信部3E、及びリーダー処理部3Fを備える。
[リーダー処理部3F]
リーダー処理部3Fは、RFIDタグ2と近接触通信を行う処理部であり、公知の構成を採用すれば良い。通信は、例えば、デジタル機器用の近距離無線通信規格の1つであるBluetooth(登録商標)技術を用いて行う。リーダー処理部3Fは、RFIDタグ2への書き込み機能を有していてもよい。
【0025】
[記憶部3D]
記憶部3Dには、
図1に示すように、地図処理部3Daやリスト処理部3Dbなどのプログラムがアプリなどの形式で格納されている。
[通信部3E]
通信部3Eは、サーバー4などと無線通信を行う機能部である。
【0026】
[地図処理部3Da]
地図処理部3Daは、リーダー処理部3Fを介してRFIDタグ2からタグ情報を入力すると、サーバー4から地図情報7Bを取得して、RFIDタグ2に対応する設備位置を含む、条件設定対象の各設備位置を表示部3Aに地図として表示する処理を行う。全ての条件設定対象の各設備位置を表示する必要は無く、少なくとも選択された設備とその近傍の設備の位置が表示されていればよい。この地図表示の処理は、公知の処理方法を採用すれば良い。例えば、対象とする生産ラインの設備位置を含む地図情報7Bに対し、条件設定リスト7Aの情報を読み込んで、
図4のような、条件設定リスト7Aで特定される設備に対する位置No.のレイアを重ねて表示する。なお、
図4では、分かり易くするため、生産ラインの設備地図自体(通路など)の図示を省略している。
また、
図4の例では、タグ情報に対応する設備の位置No.を光らせて表示した例を示している。また、
図4の例では、条件設定リスト7Aの条件設定の状態のうち「設定」のステータスが設定されている設備の位置No.を二重丸で囲んで表示するようにしている。また、
図4の例では、次の番号の、条件設定対象の設備までのナビゲーション情報も表示する場合を例示している。
【0027】
また、地図処理部3Daは、条件設定リスト7Aに表示されている、設備の位置No.を選択することでも、上記処理を実行可能に構成されている。例えば、表示部3Aに条件設定リスト7Aを表示している状態で、位置No.の項目を選択することで、地図処理部3Daが起動するように構成する。
【0028】
[リスト処理部3Db]
リスト処理部3Dbは、条件設定リスト7Aに関する処理を実行する。
リスト処理部3Dbは、例えば以下の処理を実行する。
リスト処理部3Dbは、リスト表示が選択されると、サーバー4から条件設定リスト7Aのデータを取得して、
図3のような、条件設定リスト7Aの表示を行う。
また、条件設定としてRFIDタグ2からタグ情報を入力すると、その情報をサーバー4に送信し、更新されたリストの更新情報を入力して、表示する条件設定リスト7Aの更新処理を行う。これによって、「済」のステータスが変更表示される。
また、設定解除としてRFIDタグ2からタグ情報を入力すると、その情報をサーバー4に送信し、更新されたリストの更新情報を入力して、表示する条件設定リスト7Aの更新処理を行う。これによって、「設定解除」の状態が変更表示される。
【0029】
<PC5>
PC5は、例えば運転室等の集中管理室に配置されている。PC5には、RFIDタグ2の情報を入出力可能なリーダー装置6が接続されている。このPC5は、上記構成の端末3で構成されていてもよい。
PC5は、条件設定リスト7Aのうちの、条件設定の状態の「設定」ステータスの設定処理を行う条件設定部5Aを備える。すなわち、PC5の処理によって、条件設定リスト7Aの基礎データの作成を実行する。
ここで、本実施形態では、各設備に対し固定タグの付与は必須ではない。
【0030】
(安全管理方法)
本実施形態の安全管理方法は、上記の安全管理システムを利用して実行する。
<条件設定の際>
まず、条件設定にあたっての、安全管理の処理の主要な処理を、次に説明する。
(1)条件設定を行う箇所(設備の操作部分)に掛けるための、RFIDタグ2が付された条件設定札1を用意する。場合によっては、用意する札が400枚以上となる。
【0031】
(2)用意したRFIDタグ2付きの条件設定札1を、運転室にて、リーダー装置で読み取り、PC5にて、条件設定表を作成すると共に、条件設定リスト7Aのうちの、条件設定の状態の「設定」ステータスの設定処理を行う。その後、条件設定リスト7Aを参照することで、条件設定する設備が明確になる。
(3)実際の各設備まで移動して、各設備の条件(非定常状態)の設定を実施し、更に、RFIDタグ2付きの条件設定札1を対応する設備に掛ける。
この処理の際に、札掛けの場所がわからなくなった場合は、次に掛ける条件設定札1に設けたRFIDタグ2を、端末3のリーダー処理部3Fにて読み取ることで、端末3に地図表示がなされ、その地図表示で場所を確認する。ここで、各設備の条件設定の操作を一人で行うため、その作業員は、一般に、地図で設備と照合しなくても、設備の位置を特定できる技能を有する。また、若手や配転者でも上記の地図表示があれば特定が容易となる。
【0032】
(4)条件設定札1を掛け終わったら、端末3で条件設定完了を入力して、条件設定リスト7Aの内容更新を行う。すなわち、条件設定リスト7Aの「済」のステータスをオンにする。なお、この「済」のステータスをオンにする処理の入力タイミングは、札を掛ける度に行わなくても良い。本実施形態では、作業の区切り毎に、用意した札を掛けて使い終わったことを確認し、入力するものとする。
【0033】
(5)なお、PC5にて条件設定リスト7Aを参照して、リアルタイムに管理者が状況把握する。
ここで、追加や再度(1回解除後もう一度必要になった場合)の条件設定であれば、運転室のPC5での処理にて、条件設定の登録を行う。また、条件設定リスト7Aの作成及び登録が完了しているかどうかは、端末3でチェックすればよい。
【0034】
そして、条件設定リスト7Aの「設定」のステータスに対応する「済」のステータスが全部設定されていれば、条件設定が完了したことが分かる。また、条件設定リスト7Aの原本となるデータは、サーバー4に格納されているので、最新の状態を各所で確認することが出来て、運転室に問い合わせる必要が無い。このことは、設定解除時でも同じである。
また、チェック用である条件設定リスト以外に、基準書や関連図書など必要なものがあれば、リンクさせて、サーバー4に格納して閲覧が可能とする。
【0035】
<条件設定後>
条件設定が終わると、作業員による実際の補修工事や改造工事(非定常処理)が実行される。
<設定解除>
その工事が終了すると、条件設定を解除し設備を使える状態にしなければならない。
【0036】
まず、端末3に表示した条件設定リスト7Aを参照しながら、現場に行って、各設備に掛けた条件設定札1を回収する。回収する札が多数枚ある場合には、一度に全部の札を回収することは無い。
【0037】
本実施形態では、札の回収作業の区切りにおいて、運転室や現場付近の休憩所等の場所にて、リスト処理部3Dbの処理選択を設定解除の設定に操作し、回収した複数の条件設定札1に設けた各RFIDタグ2を、端末3にて順番に読み取る。すると、自動的に照合部4A及び設定更新部4Bが作動されて、条件設定リスト7A上の設定解除の欄のステータスが自動的に回収済みに更新される。また、端末3に表示されている条件設定リスト7Aの表示も自動更新される。
【0038】
その後、更新されたリスト表示によって、一区切りの範囲における、解除しに行った箇所の札を忘れず回収していることを確認出来る。また、各現場の設備位置で毎回毎回、RFIDの読み込みを行わないので、処理時間が短くなる。更に、纏めて情報を読み込むことで、安定して各RFIDタグ2を読み取ることが出来て、信頼性が向上する。
また、運転室や電気室にいるオペレーターも進捗の把握することが可能となる。すなわち、一度運転室に戻らなくてもリスト情報の共有ができ、動線もスムーズになる。また、他者も進捗が把握できるようになり、無駄な連絡を削減できることで、設定解除や試運転の準備に集中できる効果もある。
【0039】
また、RFIDタグ2の特徴を生かし、上述のように複数枚を同時に読み込むことで、大幅な時間短縮が可能となる。未解除リストの表示を用意すると、解除忘れに気づきやすいのであるとよい。
そして、条件設定札1の回収が完了したセクションから、電源投入や試運転を開始する。更に、リストの記載の札が全部戻ってきたことを確認した、運転室の主スイッチを入れて操業開始とする。
【0040】
以上説明したように、本実施形態を採用することで、生産ラインの設備に対して補修工事や改造工事を行う際に、条件設定時及び設定解除時の信頼度及び作業効率を向上することができるようになった。
【0041】
ここで、本実施形態を、実際の熱延ラインの定期メンテナンスに、適用した。そして、前日の札の準備時間が15%削減したことを確認した。また、条件設定の時間はほぼ同等であった。ただし、迷いがあった場合は、マップ確認でその分は短縮すると思われる。そして、設定解除後の札の確認時間が75%削減することができた。なお、比較対象は、先行文献5の管理方法を適用した場合との比較である。
【0042】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)生産ラインに対する補修工事や改造工事等の非定常処理を行う際に、上記生産ラインの有する設備のうちから選択した複数の設備を非定常状態に設定すると共に、当該非定常状態とする設備に条件設定札を掛けて条件設定の状態とし、非定常処理が終了すると、上記設備に掛けた条件設定札を回収して設定解除の状態とする安全管理方法であって、
上記条件設定札に付され、当該付された条件設定札に対応する設備に関する情報が記憶されたRFIDタグと、
上記RFIDタグ内の情報を近接触通信で読み取り可能なリーダーと、
少なくとも非定常状態とする設備の条件設定及び設定解除の状態に関する情報を有する条件設定リストを格納した記憶部と、
上記リーダーが読み取ったRFIDタグの情報と上記条件設定リストとの照合を行い、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応する、上記条件設定リスト内のデータを、コンピュータ処理で検出する照合部と、
上記照合部の処理で検出された、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応するデータにおける設備の設定解除の状態を、コンピュータ処理で、上記条件設定札の回収済みの状態に設定変更する設定更新部と、
を備え、
上記各設備に掛けた複数の条件設定札を回収し、回収後の複数の条件設定札について、各条件設定札に設けたRFIDタグを上記リーダーで読むことで上記照合部及び上記設定更新部の処理を実行させ、上記実行後の条件設定リストのデータによって、対象とした設備の設定解除が完了しているかを確認する。
【0043】
(2)上記条件設定される複数の設備の位置を表示するための地図情報と、
上記地図情報を参照して、設備の位置情報を表示するコンピュータ処理を行う地図アプリ、及び、上記RFIDタグの情報を読み取るリーダー機能を有する移動端末と、を備え、
上記地図アプリは、上記RFIDタグの情報を読み取る又は設備の選択処理によって、読み取ったRFIDタグに対応する設備又は選択された設備を含む、上記条件設定される複数の設備のうちから選択された1又は2以上の設備の位置情報を地図表示する。
(3)上記条件設定リストを格納した記憶部は、サーバーが有し、
上記リーダーと上記サーバーとは、無線通信手段でデータの授受が可能となっている。
【0044】
(4)生産ラインに対する補修工事や改造工事等の非定常処理を行う際に、上記生産ラインの有する設備のうちから選択した複数の設備を非定常状態に設定すると共に、当該非定常状態とする設備に条件設定札を掛けて条件設定の状態とし、非定常処理が終了すると、上記設備に掛けた条件設定札を回収して設定解除の状態とする安全管理のために用いられる安全管理システムであって、
上記条件設定札に付され、当該付された条件設定札に対応する設備に関する情報が記憶されたRFIDタグと、
上記RFIDタグ内の情報を近接触通信で読み取り可能なリーダーと、
少なくとも非定常状態とする設備の条件設定及び設定解除の状態に関する情報を有する条件設定リストを格納した記憶部と、
上記リーダーが読み取ったRFIDタグの情報と上記条件設定リストとの照合を行い、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応する、上記条件設定リスト内のデータを、コンピュータ処理で検出する照合部と、
上記照合部の処理で検出された、上記RFIDタグの情報で特定される設備に対応するデータにおける設備の設定解除の状態を、コンピュータ処理で、上記条件設定札の回収済みの状態に設定変更する設定更新部と、
を備え、
上記リーダーによる条件設定札に設けたRFIDタグの読み取りは、上記各設備に掛けた複数の条件設定札を回収し、回収後の複数の条件設定札について実行される。
【0045】
(5)上記条件設定される複数の設備の位置を表示するための地図情報と、
上記地図情報を参照して、設備の位置情報を表示するコンピュータ処理を行う地図アプリ、及び、上記RFIDタグの情報を読み取るリーダー機能を有する移動端末と、を備え、
上記地図アプリは、上記RFIDタグの情報を読み取る又は設備の選択処理によって、読み取ったRFIDタグに対応する設備又は選択された設備を含む、上記条件設定される複数の設備のうちから選択された1又は2以上の設備の位置情報を地図表示する。
【符号の説明】
【0046】
1 条件設定札
2 RFIDタグ
3 移動端末
3Da 地図処理部
3Db リスト処理部
3F リーダー処理部
4 サーバー
4A 照合部
4B 設定更新部
5 PC
5A 条件設定部
6 リーダー装置
7 記憶部
7A 条件設定リスト
7B 地図情報