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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070096
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】電動航空機
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20240101AFI20240515BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20240515BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240515BHJP
   B64D 45/02 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C27/04
B64C39/02
B64D45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180480
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山脇 一生
(72)【発明者】
【氏名】青井 辰史
(72)【発明者】
【氏名】宮原 弘臣
(72)【発明者】
【氏名】万戸 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 九史
(57)【要約】
【課題】さらに簡素で軽量な構成を有し、耐雷信頼性が向上した電動航空機を提供する。
【解決手段】電動航空機は、機体と、機体に設けられた複数の構造骨格部材と、構造骨格部材にそれぞれ設けられたファンモータと、構造骨格部材の端部に設けられた先端電界集中部と、を備え、構造骨格部材のインピーダンスは、ファンモータのインピーダンスよりも低い。構造骨格部材のインピーダンスがファンモータのインピーダンスよりも低いため、電動航空機に落雷が生じた時に、電流はファンモータではなく、構造骨格部材を流れる。これにより、雷撃によるファンモータの損壊を回避することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
該機体に設けられた複数の構造骨格部材と、
該構造骨格部材にそれぞれ設けられたファンモータと、
前記構造骨格部材の端部に設けられた先端電界集中部と、
を備え、
前記構造骨格部材のインピーダンスは、前記ファンモータのインピーダンスよりも低い電動航空機。
【請求項2】
前記先端電界集中部は、前記構造骨格部材の内部に収容された状態と展開された状態との間で進退動可能である請求項1に記載の電動航空機。
【請求項3】
前記ファンモータに設けられたファン電界集中部をさらに備え、
該ファン電界集中部は、
前記ファンモータを外周側から囲う筒状部と、
該筒状部から外側に向かって延びる複数の電界集中部本体と、
を有し、
前記ファン電界集中部のインピーダンスは、前記ファンモータのインピーダンスよりも低い請求項1又は2に記載の電動航空機。
【請求項4】
前記電界集中部本体は、前記筒状部に設けられたシース部の内部に収容された状態と展開された状態との間で進退動可能である請求項3に記載の電動航空機。
【請求項5】
前記電界集中部本体の先端部同士を接続するワイヤ部材をさらに有する請求項3に記載の電動航空機。
【請求項6】
前記ファンモータは、
軸線回りに回転可能なプロペラと、
該プロペラを回転駆動するモータ本体と、
を有し、
前記筒状部は、前記軸線を中心とする筒状をなし、前記ワイヤ部材は、前記軸線を中心とする環状をなしている請求項5に記載の電動航空機。
【請求項7】
前記電界集中部本体は、前記筒状部から径方向外側に向かって延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数の周方向部材と、
前記筒状部から前記軸線方向成分を含む方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数の軸線方向部材と、
を有し、
前記ワイヤ部材の一部は、前記周方向部材の先端部と前記軸線方向部材の先端部とを接続している請求項6に記載の電動航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動ファン(ファンモータ)を備えた電動航空機が種々実用化されている。電動航空機は、機体と、この機体に設けられた複数の構造骨格部材と、を備えている。ファンモータを駆動することで推力が生じて、機体の上昇下降や水平飛行が実現される。
【0003】
ところで、輸送需要の高まりに伴って、あらゆる天候条件のもとで電動航空機を運航したいという要請が増えている。特に、雷の発生が予想される天候のもとでも安定的に電動航空機を飛行させる技術に注目が集まっている。このような技術の具体例として下記特許文献1に記載されたものが知られている。下記特許文献1に係る技術では、ファンモータにアレスタを設け、雷撃時の電流がモータ側に流れないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10882627号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにファンモータにアレスタを設けた場合、当該アレスタ自体の占有スペースが必要になることや重量増加につながることが問題となる。このため、より簡素な構成のもとで雷撃に対する信頼性を向上できる技術に対する要請が高まっていた。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに簡素で軽量な構成を有し、耐雷信頼性が向上した電動航空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る電動航空機は、機体と、該機体に設けられた複数の構造骨格部材と、該構造骨格部材にそれぞれ設けられたファンモータと、前記構造骨格部材の端部に設けられた先端電界集中部と、を備え、前記構造骨格部材のインピーダンスは、前記ファンモータのインピーダンスよりも低い。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、さらに簡素で軽量な構成を有し、耐雷信頼性が向上した電動航空機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第一実施形態に係る電動航空機の構成を示す正面図である。
図2】本開示の第二実施形態に係る電動航空機の構成を示す平面図である。
図3】本開示の第二実施形態に係る電動航空機の要部拡大図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る電動航空機の第一変形例を示す要部拡大図である。
図5】本開示の第二実施形態に係る電動航空機の第二変形例を示す要部拡大図である。
図6】本開示の第二実施形態に係る電動航空機の第三変形例を示す要部拡大図である。
図7】本開示の第三実施形態に係る電動航空機の構成を示す斜視図である。
図8】本開示の第三実施形態に係る電動航空機の変形例を示す正面図である。
図9】本開示の第四実施形態に係る電動航空機の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
(電動航空機の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る電動航空機1について、図1を参照して説明する。図1に示すように、電動航空機1は、機体10と、構造骨格部材20と、ファンモータ30と、先端電界集中部40と、を備える。
【0011】
機体10は、燃料やバッテリー、貨物等を搭載するための容器状をなしている。機体10が地上に載置された状態における当該機体10の上面には、一対の構造骨格部材20が設けられている。構造骨格部材20は、一例として機体10の上面で互いに交差することで、当該機体10から水平面に沿って放射状に突出するように延びている。なお、構造骨格部材20は必ずしも交差している必要はなく、設計や仕様に応じて形状や形態を適宜変更することが可能である。構造骨格部材20の延在中途位置には、それぞれファンモータ30が設けられている。なお、図1の例では、ファンモータ30が各構造骨格部材20に2つ設けられているが、ファンモータ30の数は一例であって、設計や仕様に応じて適宜変更することが可能である。
【0012】
ファンモータ30は、軸線O回りに回転可能なプロペラ31と、不図示の電動機と、を有する。電動機に電流を供給することによってプロペラ31が軸線O回りに回転駆動される。プロペラ31が周囲の空気を軸線O方向に圧送することによって推力が発生する。なお、プロペラ31の軸線O方向は、図1の例では上下方向であるが、プロペラ31の姿勢を可変とすることも可能である。また、水平方向を向く推進用のファンモータ30と、上下方向を向く上昇下降用のファンモータ30を併設することも可能である。
【0013】
構造骨格部材20の先端部には、それぞれ先端電界集中部40が設けられている。先端電界集中部40は、空中で落雷に遭遇した際に、雷撃電流を集中させて受け止めるための受雷部である。先端電界集中部40は、構造骨格部材20の表面から上下方向に突出している。先端電界集中部40の先端部は、先鋭形状をなしている。なお、先端電界集中部40の形状は一例であり、ワイヤ状の部材を先端電界集中部40として用いることも可能である。
【0014】
構造骨格部材20、及び先端電界集中部40のインピーダンスは、ファンモータ30のインピーダンスよりも低く設定されている。このようなインピーダンスの調整は、構造骨格部材20、及び先端電界集中部40を形成する材料の種類を適宜選定することによって行われることが望ましい。具体的には、構造骨格部材20、及び先端電界集中部40をアルミニウムによって形成することが考えられる。また、この他、構造骨格部材20の表面に銅メッシュを貼付したり、ダイバータストリップを取り付けたりする構成を採ることも可能である。さらには、構造骨格部材20の延在中途位置に、雷撃電流を受け止めるためのキャパシタなどの電気回路素子を設けて、放電開始電圧を周囲よりも下げることで、受雷部として機能させることも可能である。
【0015】
さらに、図1に示す正面視の場合に、ファンモータ30や機体10は、先端電界集中部40によって形成される保護角度θの範囲内に収まっている。この場合の保護角度θは、一例として先端電界集中部40を中心として60°の範囲内であることが望ましい。
【0016】
(作用効果)
ここで、近年の輸送需要の高まりに伴って、あらゆる天候条件のもとで電動航空機1を運航したいという要請が増えている。特に、雷の発生が予想される天候のもとでも安定的に電動航空機1を飛行させる技術に注目が集まっている。このような技術の具体例として従来は、ファンモータ30にアレスタを設け、雷撃時の電流がモータ側に流れないように構成する例が実用化されていた。
【0017】
しかしながら、上記のようにファンモータ30にアレスタを設けた場合、当該アレスタ自体の占有スペースが必要になることや重量増加につながることが問題となる。このため、より簡素な構成のもとで雷撃に対する信頼性を向上できる技術に対する要請が高まっていた。そこで、本実施形態に係る電動航空機1は、上述の各構成を採っている。
【0018】
電動航空機1の運航中に落雷が発生した場合、雷撃は少なくとも一の先端電界集中部40に集中する。その後、雷撃による電流は、ファンモータ30よりもインピーダンスの低い構造骨格部材20を流れて、他の先端電界集中部40から空中に放電される。つまり、この時、雷撃電流は、構造骨格部材20よりもインピーダンスが高いファンモータ30に流れ込むことを抑制することができる。これにより、ファンモータ30が雷撃電流の高電圧によって損壊してしまう可能性を大きく低減することができる。特に、機体10から放射状に突出する構造骨格部材20の先端部に先端電界集中部40を設けていることから、雷撃箇所を恣意的にコントロールすることができる。したがって、雷の発生が予想される天候条件下でも、電動航空機1を安定的かつ円滑に飛行させることが可能となる。
【0019】
さらに、ファンモータ30と構造骨格部材20のインピーダンスを違えることのみによって上記のように雷撃電流の流れる経路を限定できることから、例えばアレスタをファンモータ30に取り付ける構成等に比べて、部品点数の増加を抑えることができる。これにより、電動航空機1の重量増加を回避することができる。また、部品点数の削減によって、製造コストやメンテナンスコストを大きく低減することも可能となる。
【0020】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第一実施形態における先端電界集中部40は、構造骨格部材20の先端部で固定されている。しかしながら、飛行性能を確保するため、発雷のリスクがない条件下では、先端電界集中部40を構造骨格部材20の内部に収納・展開できるように構成することも可能である。この場合、電動航空機1の空力性能低下が回避されるため、航続距離の増大や、燃費の向上を見込むことができる。
【0021】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、図2図3を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図2に示すように、本実施形態では、第一実施形態で説明した構成に加えて、ファンモータ30自体にファン電界集中部50が設けられている。
【0022】
ファン電界集中部50は、筒状部51と、複数の電界集中部本体52と、を有する。筒状部51は、軸線Oを中心とする円筒状をなすことで、ファンモータ30を外周側から囲っている。なお、筒状部51は必ずしも円筒状でなくてもよく、設計や仕様に応じて、角筒状や多角形筒状であってもよい。電界集中部本体52は、筒状部51の外面から外側に向かって延びている。より具体的には図3に示すように、電界集中部本体52は、筒状部51の軸線O方向を向く端面から、当該軸線O方向両側に向かって突出している。電界集中部本体52は例えば軸線O方向から見て円柱状や角柱状をなしている。電界集中部本体52の先端部を先鋭形状とすることも可能である。また、電界集中部本体52は、軸線Oの周方向に等間隔をあけて複数(一例として片面に4つずつ)設けられている。
【0023】
以上のように構成された筒状部51、及び電界集中部本体52は、ファンモータ30よりもインピーダンスが低い材料で形成されている。つまり、電界集中部本体52に雷撃が生じた時には、ファンモータ30自体には雷撃電流が流れ込むことを抑制することができる。電流は、筒状部51を通った後、雷撃を受けた電界集中部本体52以外の他の電界集中部本体52から空中に放電される。
【0024】
(作用効果)
上記構成によれば、ファンモータ30にファン電界集中部50が設けられている。これにより、当該ファンモータ30周辺に落雷が生じた場合には、インピーダンスが相対的に高いファンモータ30自体ではなく、インピーダンスが相対的に低いファン電界集中部50に電流が流れる。より詳細には、例えば一の電界集中部本体52に雷撃が集中した場合、雷撃電流は当該電界集中部本体52から筒状部51を経て、他の電界集中部本体52に流れる。その後、電流は空中に放電される。つまり、ファンモータ30には雷撃電流が流れない。これにより、雷撃電流の高電圧大電流が流れることによるファンモータ30の損壊を回避することができる。したがって、発雷が予想される天候条件下でも、電動航空機1をさらに安定的かつ円滑に飛行させることが可能となる。
【0025】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第二実施形態では、電界集中部本体52が軸線O方向にそれぞれ延びている例について説明した。しかしながら、電界集中部本体52の延びる方向はこれに限定されない。第一変形例として図4に示すように、電界集中部本体52が、軸線Oに対する径方向に延びていてもよい。この場合、複数の電界集中部本体52が、周方向に間隔をあけて配列されることが望ましい。
【0026】
さらに、第二変形例として図5に示すように、電界集中部本体52が、筒状部51から離間するに従って、径方向外側に向かうように延びていてもよい。つまり、電界集中部本体52が、軸線Oに対して傾斜した方向に延びている。この場合には、電界集中部本体52によってプロペラ31の風路が阻害されることがないため、ファンモータ30による推力を余すことなく発揮させることが可能となる。その結果、電動航空機1をさらに効率的に運用することができる。
【0027】
加えて、第三変形例として図6に示すように、電界集中部本体52をワイヤ状の部材によって形成することも可能である。この場合、耐雷性能を確保しつつ、上記の各構成に比べて、電界集中部本体52による空力性能の低下を最小限に抑えることが可能となる。これにより、電動航空機1をより一層効率的に飛行させることができる。また、この場合、電界集中部本体52に可撓性を持たせることも可能である。これにより、電界集中部本体52が飛行中の動圧によってわずかに撓むことで、空力性能の低下をさらに小さく抑えることができる。
【0028】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、図7を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図7に示すように、本実施形態では、上記第二実施形態の第二変形例と同様に、電界集中部本体52が軸線Oに対して傾斜した方向にそれぞれ延びている。さらに、これら電界集中部本体52の先端部同士が、ワイヤ部材53によって接続されている。より具体的には、ワイヤ部材53は、軸線Oを中心とする円環状をなしている。ワイヤ部材53が形成する円環の径寸法は、筒状部51、及びプロペラ31の径寸法よりも大きくなっている。このようなワイヤ部材53が、軸線O方向の両側にそれぞれ1つずつ、計一対設けられている。ワイヤ部材53は、ファン電界集中部50と同様に、ファンモータ30よりもインピーダンスが低い材料で形成されていることが望ましい。また、この場合、電界集中部本体52による保護角度θは、一例として25°程度であることが望ましい。
【0029】
(作用効果)
上記構成によれば、電界集中部本体52の先端部同士がワイヤ部材53によって接続されている。これにより、電界集中部本体52のみならず、ワイヤ部材53の延在長さの全域にわたって、さらに広い範囲で雷撃を受け止めることができる。つまり、ワイヤ部材53自体が受雷部としての機能を発揮する。例えばワイヤ部材53に雷撃が生じた場合には、当該ワイヤ部材53から電界集中部本体52を通じて筒状部51に電流が流れる。その後、電流は、筒状部51から他の電界集中部本体52を経て他方側のワイヤ部材53から空中に放電される。したがって、雷撃による高電圧大電流がファンモータ30に流れる可能性が低減される。その結果、雷撃電流によってファンモータ30が損壊するリスクを大きく低減することが可能となる。
【0030】
さらに、上記構成によれば、ワイヤ部材53がプロペラ31の軸線Oを中心とする環状をなしている。これにより、ワイヤ部材53によって軸線Oの周方向の全域にわたって、雷撃を受け止めることができる。また、ワイヤ部材53が形成する円環の径寸法がプロペラ31、及び筒状部51の径寸法よりも大きいことから、当該ワイヤ部材53がプロペラ31の風路を阻害しない。このため、当該プロペラ31の推力を余すことなく発揮させることができる。したがって、電動航空機1をさらに効率的かつ円滑に飛行させることが可能となる。
【0031】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば変形例として図8に示すように、電界集中部本体52が、複数の周方向部材61と、複数の軸線方向部材62と、を有し、ワイヤ部材53の一部が、これら周方向部材61の先端部と、軸線方向部材62の先端部とを接続していてもよい。具体的には、周方向部材61は、筒状部51の外周面から径方向に突出するとともに、周方向に間隔をあけて複数設けられている。軸線方向部材62は、第三実施形態と同様に、軸線O方向成分を伴って当該軸線Oに対して傾斜する方向に延びている。ワイヤ部材53の一部は、第三実施形態と同様に、複数の軸線方向部材62の先端部を接続する円環状をなしている。ワイヤ部材53の他の一部は、周方向部材61の先端部と、軸線方向部材62の先端部とを接続している。
【0032】
上記構成によれば、ワイヤ部材53の一部によって周方向部材61の先端部と軸線方向部材62の先端部とが接続されている。これにより、ワイヤ部材53によって保護される領域の面積が増加するため、より広い範囲で雷撃を受け止めることが可能となる。その結果、雷撃電流の負荷からファンモータ30を保護し、電動航空機1をさらに効率的かつ安定的に飛行させることができる。
【0033】
<第四実施形態>
次に、本開示の第四実施形態について、図9を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図9に示すように、本実施形態に係る電動航空機1では、ファン電界集中部50が、筒状部51と、電界集中部本体52とに加えて、シース部70をさらに有している。シース部70は、上記の各実施形態で説明したように、筒状部51から種々の方向に突出している。電界集中部本体52は、このシース部70の内部に収容された状態と、展開されて外部に突出した状態との間で進退動可能である。電界集中部本体52は、不図示のアクチュエータによってこのように進退動する。
【0034】
(作用効果)
上記構成によれば、落雷が予想される場合には電界集中部本体52を展開して雷撃を当該電界集中部本体52に優先的に集中させることができる。一方で、落雷の危険がない場合には、当該電界集中部本体52をシース部70内に収容することで、空力抵抗を最小限に抑えることができる。したがって、ファン電界集中部50を設けたことによる電動航空機1の飛行性能の低下を防ぐことができる。その結果、電動航空機1をさらに安定的かつ円滑に飛行させることができる。
【0035】
以上、本開示の第四実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、第三実施形態で説明したワイヤ部材53を、展開された状態の電界集中部本体52に着脱可能に取り付けることも可能である。つまり、電界集中部本体52がシース部70内に収容するに先立ってワイヤ部材53を取り外せるように構成することが可能である。この構成によれば、上記第三実施形態で説明したものと同様に、ワイヤ部材53による耐雷性の向上と空力性能の向上とを両立させることができる。したがって、電動航空機1の飛行安定性と効率性とを同時に高めることができる。
【0036】
<付記>
各実施形態に記載の電動航空機1は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)第1の態様に係る電動航空機1は、機体10と、該機体10に設けられた複数の構造骨格部材20と、該構造骨格部材20にそれぞれ設けられたファンモータ30と、前記構造骨格部材20の端部に設けられた先端電界集中部40と、を備え、前記構造骨格部材20のインピーダンスは、前記ファンモータ30のインピーダンスよりも低い。
【0038】
上記構成によれば、構造骨格部材20のインピーダンスがファンモータ30のインピーダンスよりも低いため、電動航空機1に落雷が生じた時に、電流はファンモータ30ではなく、構造骨格部材20を流れる。これにより、雷撃によるファンモータ30の損壊を回避することができる。
【0039】
(2)第2の態様に係る電動航空機1は、(1)の電動航空機1であって、前記先端電界集中部40は、前記構造骨格部材20の内部に収容された状態と展開された状態との間で進退動可能である。
【0040】
上記構成によれば、落雷が予想される場合には先端電界集中部40を展開して雷撃を当該先端電界集中部40に優先的に集中させることができる。一方で、落雷の危険がない場合には、当該先端電界集中部40を収容することで、電動航空機1の飛行性能の低下を防ぐことができる。
【0041】
(3)第3の態様に係る電動航空機1は、(1)又は(2)の電動航空機1であって、前記ファンモータ30に設けられたファン電界集中部50をさらに備え、該ファン電界集中部50は、前記ファンモータ30を外周側から囲う筒状部51と、該筒状部51から外側に向かって延びる複数の電界集中部本体52と、を有し、前記ファン電界集中部50のインピーダンスは、前記ファンモータ30のインピーダンスよりも低い。
【0042】
上記構成によれば、ファンモータ30にファン電界集中部50が設けられている。これにより、当該ファンモータ30周辺に落雷が生じた場合には、ファンモータ30自体ではなく、ファン電界集中部50に電流が流れる。これにより、雷撃電流によるファンモータ30の損壊を回避することができる。
【0043】
(4)第4の態様に係る電動航空機1は、(3)の電動航空機1であって、前記電界集中部本体52は、前記筒状部51に設けられたシース部70の内部に収容された状態と展開された状態との間で進退動可能である。
【0044】
上記構成によれば、落雷が予想される場合には電界集中部本体52を展開して雷撃を当該電界集中部本体52に優先的に集中させることができる。一方で、落雷の危険がない場合には、当該電界集中部本体52を収容することで、電動航空機1の飛行性能の低下を防ぐことができる。
【0045】
(5)第5の態様に係る電動航空機1は、(3)又は(4)の電動航空機1であって、前記電界集中部本体52の先端部同士を接続するワイヤ部材53をさらに有する。
【0046】
上記構成によれば、電界集中部本体52の先端部同士がワイヤ部材53によって接続されている。これにより、電界集中部本体52のみならず、ワイヤ部材53によってさらに広い範囲で雷撃を受け止めることができる。したがって、ファンモータ30に雷撃電流が流れる可能性をさらに低減することができる。
【0047】
(6)第6の態様に係る電動航空機1は、(5)の電動航空機1であって、前記ファンモータ30は、軸線O回りに回転可能なプロペラ31と、該プロペラ31を回転駆動するモータ本体と、を有し、前記筒状部51は、前記軸線Oを中心とする筒状をなし、前記ワイヤ部材53は、前記軸線Oを中心とする環状をなしている。
【0048】
上記構成によれば、ワイヤ部材53がプロペラ31の軸線Oを中心とする環状をなしている。これにより、ワイヤ部材53によって軸線Oの周方向の全域にわたって、雷撃を受け止めることができる。また、ワイヤ部材53がプロペラ31の風路を阻害しないため、当該プロペラ31の推力を余すことなく発揮させることができる。
【0049】
(7)第7の態様に係る電動航空機1は、(6)の電動航空機1であって、前記電界集中部本体52は、前記筒状部51から径方向外側に向かって延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数の周方向部材61と、前記筒状部51から前記軸線O方向成分を含む方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数の軸線方向部材62と、を有し、前記ワイヤ部材53の一部は、前記周方向部材61の先端部と前記軸線方向部材62の先端部とを接続している。
【0050】
上記構成によれば、ワイヤ部材53の一部によって周方向部材61の先端部と軸線方向部材62の先端部とが接続されている。これにより、ワイヤ部材53によって保護される領域の面積が増加するため、より広い範囲で雷撃を受け止め、ファンモータ30を保護することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…電動航空機
10…機体
20…構造骨格部材
30…ファンモータ
31…プロペラ
40…先端電界集中部
50…ファン電界集中部
51…筒状部
52…電界集中部本体
53…ワイヤ部材
61…周方向部材
62…軸線方向部材
70…シース部
O…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9