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▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070099
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240515BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240515BHJP
   H02M 7/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M7/48 M
H02M7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180484
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 崇
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光顕
(72)【発明者】
【氏名】森川 実穂
(72)【発明者】
【氏名】岡部 和也
(72)【発明者】
【氏名】森川 真人
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H006CC02
5H006DA04
5H006DC02
5H730AS05
5H730AS11
5H730AS13
5H730AS17
5H730FD11
5H730XX03
5H730XX13
5H730XX15
5H730XX23
5H730XX33
5H730XX35
5H770CA06
5H770HA02Z
5H770JA06Z
5H770JA17W
5H770JA17Y
5H770JA17Z
(57)【要約】
【課題】負荷への安定した電力供給を可能とする。
【解決手段】電力変換システム1は、バッテリ15に接続される第1電力変換ユニット5と、第1電力変換ユニット5と並列に接続されるようにバッテリ15に接続される第2電力変換ユニット7と、電力伝達回路9とを備え、第1電力変換ユニット5はDC/DCコンバータ23を有し、第2電力変換ユニット7は、ACインバータ29と、ACインバータ29の出力端に接続されるACアウトレット43及びAC/DCコンバータ33と、を有し、DC/DCコンバータ23の出力端には車両が走行する際に使用可能とすることが必須となる第1の負荷が接続され、AC/DCコンバータ33の出力端には車内装備品である第2の負荷が接続され、電力伝達回路9は、DC/DCコンバータ23から第1の負荷への直流電力の供給が異常停止した場合に、AC/DCコンバータ33の出力端と第1の負荷との間を導通させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに接続される第1電力変換ユニットと、前記第1電力変換ユニットと並列に接続されるように前記バッテリに接続される第2電力変換ユニットと、
前記第2電力変換ユニットの出力端と接続される電力伝達回路とを備え、
前記第1電力変換ユニットは、前記バッテリから供給される直流電力を電圧変換して出力するDC/DCコンバータを有し、
前記第2電力変換ユニットは、前記バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換して出力するインバータと、前記インバータの出力端に接続されるACアウトレット及びAC/DCコンバータと、を有し、
前記DC/DCコンバータの出力端には、車両が走行する際に使用可能とすることが必須となる第1の負荷が接続され、
前記AC/DCコンバータの出力端には、車内装備品である第2の負荷が接続され、
前記電力伝達回路は、前記AC/DCコンバータの出力端と前記第1の負荷とを接続する配線と、前記配線上に設けられた半導体素子とを有し、前記半導体素子は、前記DC/DCコンバータから前記第1の負荷への前記直流電力の供給が異常停止した場合に、前記AC/DCコンバータの出力端と前記第1の負荷との間を導通させる、
電力変換システム。
【請求項2】
前記半導体素子は、トランジスタである、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記半導体素子は、アノードが前記AC/DCコンバータの出力端に接続され、カソードが前記DC/DCコンバータの出力端に接続されるダイオードである、請求項1に記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用として、バッテリの電力をDC/DCコンバータによって電圧変換して負荷に供給するシステムが用いられている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-249384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来のシステムでは、例えば、DC/DCコンバータに異常が生じて、DC/DCコンバータからの電力供給が異常停止すると、DC/DCコンバータの出力端に接続された負荷に対する電力の供給が途絶えてしまう場合があった。このような電源失陥時にも車両走行のために使用する負荷への安定した電力供給が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、車両走行のために使用する負荷への安定した電力供給が可能な電力変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電力変換システムは、バッテリに接続される第1電力変換ユニットと、第1電力変換ユニットと並列に接続されるようにバッテリに接続される第2電力変換ユニットと、第2電力変換ユニットの出力端と接続される電力伝達回路とを備え、第1電力変換ユニットは、バッテリから供給される直流電力を電圧変換して出力するDC/DCコンバータを有し、第2電力変換ユニットは、バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換して出力するインバータと、インバータの出力端に接続されるACアウトレット及びAC/DCコンバータと、を有し、DC/DCコンバータの出力端には、車両が走行する際に使用可能とすることが必須となる第1の負荷が接続され、AC/DCコンバータの出力端には、車内装備品である第2の負荷が接続され、電力伝達回路は、AC/DCコンバータの出力端と第1の負荷とを接続する配線と、配線上に設けられた半導体素子とを有し、半導体素子は、DC/DCコンバータから第1の負荷への直流電力の供給が異常停止した場合に、AC/DCコンバータの出力端と第1の負荷との間を導通させる。
【0007】
電力変換システムは、バッテリに接続される第1電力変換ユニット及び第2電力変換ユニットを備えており、第1電力変換ユニットにおいては、DC/DCコンバータの出力端に車両走行の際に使用が必須な第1の負荷が接続され、第2電力変換ユニットにおいては、インバータを介してバッテリに接続されたAC/DCコンバータの出力端に車内装備品の第2の負荷が接続されている。さらに、AC/DCコンバータの出力端と第1の負荷とを接続する配線と、配線上に設けられた半導体素子とを有する電力伝達回路が備えられており、第1の負荷への直流電力の供給が異常停止した場合に、半導体素子によって該出力端と第1の負荷との間を導通させる。その結果、DC/DCコンバータから第1の負荷への電力供給が停止した場合であっても、AC/DCコンバータから第1の負荷へ直流電力を供給することができ、車両が走行する際に使用可能とすることが必須となる第1の負荷への安定した電力供給が可能となる。
【0008】
電力変換システムにおいては、半導体素子は、トランジスタである、ことが好ましい。かかる構成を採れば、AC/DCコンバータの出力端から第1の負荷へ安定して直流電力を供給することができ、車両走行のために使用する負荷への電力供給が低損失で実現される。
【0009】
また、電力変換システムにおいては、半導体素子は、アノードがAC/DCコンバータの出力端に接続され、カソードがDC/DCコンバータの出力端に接続されるダイオードである、ことが好ましい。この場合、DC/DCコンバータの出力端側の電圧変化に応じてAC/DCコンバータの出力端から第1の負荷へ直流電力の供給を開始することができ、車両走行のために使用する負荷への電力供給の瞬断が生じない安定した電力供給が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両が走行する際に使用可能とすることが必須となる負荷への安定した電力供給が可能な電力変換システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換システム1の構成概略を示す回路図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る電力変換システム1における電力の供給経路を示す回路図である。
図3図3は、比較例に係る電力変換システム901の構成概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換システム1の構成概略を示す回路図である。同図に示される電力変換システム1は、バッテリ(蓄電池)から供給される電力を各種の負荷に分配するシステムである。電力変換システム1は、車両に搭載される。電力変換システム1は、第1ジャンクションボックス3、第1電力変換ユニット5、第2電力変換ユニット7、電力伝達回路9、制御回路11A、及び制御回路11Bを備える。
【0014】
第1ジャンクションボックス3は、電気配線W1と2本の電気配線W2,W3とを接続するボックスである。すなわち、第1ジャンクションボックス3は、内部に引き込まれた電気配線W1の一方の端子T1iと、内部に引き込まれた2本の電気配線W2,W3の一方端T2i,T3iのそれぞれとを接続する2つの第1接続部J12,J13を有する。2つの第1接続部J12,J13のそれぞれは、例えば、ヒューズである。第1ジャンクションボックス3は、電気配線W1と複数本の電気配線とを接続するものであればよい。
【0015】
電気配線W1の他方の端子T1oは、第1ジャンクションボックス3の外部において、スイッチ13を介してバッテリ15の正極に接続される。バッテリ15の負極は基準電位(例えば、グラウンド電位)に接続されている。バッテリ15は、スイッチ13が導通された際に、電気配線W1に直流電力を供給する。スイッチ13は、導通/非導通を切り替えられる素子であり、例えば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)FETである。
【0016】
電気配線W2の他方端T2oは、第1ジャンクションボックス3の外部において、第1電力変換ユニット5と接続され、電気配線W3の他方端T3oは、第1ジャンクションボックス3の外部において、第2電力変換ユニット7と接続されている。本実施形態においては、第1電力変換ユニット5及び第2電力変換ユニット7は、電気配線W2,W3のそれぞれと、第1接続部J12,J13のそれぞれと、電気配線W1と、スイッチ13とを介して、バッテリ15にそれぞれ接続される。
【0017】
第1電力変換ユニット5は、DC/DCコンバータ23と、第2ジャンクションボックス25と、補機用バッテリ24と、を有している。DC/DCコンバータ23の入力端は、電気配線W2の他方端T2oと接続される。DC/DCコンバータ23は、バッテリ15からスイッチ13、電気配線W1、第1接続部J12及び電気配線W2を介して供給された直流電力を電圧変換して(例えば、12Vに降圧して)出力する。DC/DCコンバータ23の出力端は、電気配線W4の一方端T4oに接続され、電気配線W4に接続された補機用バッテリ24及び第2ジャンクションボックス25と電気配線W4を介して接続される。
【0018】
第2ジャンクションボックス25は、電気配線W4と複数の電気配線とを接続するボックスである。例えば、第2ジャンクションボックス25は、電気配線W4と負荷ごとに設けられる6本の電気配線W5,W6,W7,W8,W9,W10とを接続する。本実施形態においては、第2ジャンクションボックス25は、内部に引き込まれた電気配線W4の他方端T4iと、内部に引き込まれた6本の電気配線W5,W6,W7,W8,W9,W10の一方端T5i,T6i,T7i,T8i,T9i,T10iのそれぞれとを接続する6つの第2接続部J65,J66,J67,J68,J69,J610を有する。6つの第2接続部J65,J66,J67,J68,J69,J610のそれぞれは、例えば、ヒューズとスイッチとが直列に接続された回路である。第2ジャンクションボックス25は、電気配線W4と複数本の電気配線とを接続するものであればよい。
【0019】
電気配線W5,W6,W7,W8,W9,W10の他方端T5o,T6o,T7o,T8o,T9o,T10oのそれぞれは、負荷(第1の負荷)27A,27B,27C,27D,27E,27Fに接続されている。すなわち、負荷(第1の負荷)27A,27B,27C,27D,27E,27Fは、電気配線W5,W6,W7,W8,W9,W10、第2ジャンクションボックス25及び電気配線W4を介してDC/DCコンバータ23の出力端に接続されているといえる。負荷27A,27B,27C,27D,27E,27Fは、電力変換システム1が搭載される車両が走行する際に、使用可能とするように駆動することが必須となる負荷であり、例えば、車両に設けられるヘッドランプ、ワイパー、ECU(Electronic Control Unit)、各種メータ、各種センサ、アクチュエータ、ウィンカー、及びブレーキランプ等のいずれかである。
【0020】
第2電力変換ユニット7は、ACインバータ29、分電ユニット31、AC/DCコンバータ33を有している。ACインバータ29の入力端は、電気配線W3の他方端T3oと接続される。ACインバータ29は、バッテリ15からスイッチ13、電気配線W1、第1接続部J13及び電気配線W3を介して供給された直流電力を交流電力に変換して(例えば、100Vの交流電力に変換して)出力する。ACインバータ29の出力端は、電気配線W11の一方端T11oに接続され、電気配線W11を介して分電ユニット31に接続される。
【0021】
分電ユニット31は、電気配線W11とAC/DCコンバータ33及び電気配線とを接続する回路ユニットである。例えば、分電ユニット31は、電気配線W11と、AC/DCコンバータ33及び1本の電気配線W12とを接続する。本実施形態においては、分電ユニット31は、電気配線W11の他方端T11iと、AC/DCコンバータ33の入力端及び電気配線W12の一方端T12iとを接続する第3接続部J71,J72を含む。電気配線W12の他方端T12oには、ACアウトレット43が接続されている。第3接続部J71,J72のそれぞれは、少なくともスイッチを有し、本実施形態では、直列接続されたスイッチ37及び電流計39を有する。スイッチ37は、導通/非導通を切り替えられる素子であり、例えば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)FETである。電流計39は、電気配線W11から分岐してそれぞれの第3接続部J71,J72に流れ込む交流電流の大きさを測定する。なお、分電ユニット31は、電気配線W11と、少なくとも1つのAC/DCコンバータ及び少なくとも1つの電気配線とを接続するものであって、複数のスイッチを備えればよい。
【0022】
AC/DCコンバータ33は、電気配線W11及び第3接続部J71を介して、ACインバータ29から交流電力の入力を受け、その交流電力を直流電力(例えば、12Vの直流電力)に変換して出力する。AC/DCコンバータ33の出力端は、電気配線W13を介して負荷(第2の負荷)41Aに接続され、AC/DCコンバータ33によって出力された直流電力は負荷41Aに供給される。すなわち、負荷(第2の負荷)41Aは、電気配線W13を介してAC/DCコンバータ33の出力端に接続されているといえる。負荷41Aは、車両が走行する際に駆動が必須ではない車内装備品であり、例えば、ディスプレイ、オーディオ装置、車内灯等である。なお、AC/DCコンバータ33の出力端に接続される負荷の数は1以上であってもよい。
【0023】
上記の分電ユニット31の構成により、ACインバータ29の出力端に、ACアウトレット43及びAC/DCコンバータ33が並列に接続される。これにより、ACインバータ29から出力された電力は、負荷41A及びACアウトレット43に接続される負荷に分配される。
【0024】
電力伝達回路9は、AD/DCコンバータ33の出力端と第1の負荷(負荷27E)とを接続する電気配線W19と、電気配線W19上に設けられた半導体素子と、ダイオード45とを有する。半導体素子は、導通/非導通を切り替えられる素子であり、例えば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)FETやIGBTやダイオード等である。本実施形態の電気配線W19は、電気配線W13及び電気配線W9に接続されている。電気配線W9は、負荷27Eと接続されており、電気配線W13は、AD/DCコンバータ33の出力端に接続されている。すなわち、電気配線W19は、AD/DCコンバータ33の出力端と第1の負荷とを接続する配線であるといえる。また、本実施形態の半導体素子は、MOSFET47である。MOSFETには、ダイオード45が並列接続されている。ダイオード45は、カソード端子が、電気配線W19を介して第1電力変換ユニット5の出力端に接続された電気配線W9に接続され、ダイオード45のアノード端子が、電気配線W19を介して第2電力変換ユニット7の出力端である電気配線W13に接続される。なお、電力伝達回路9は、AD/DCコンバータ33の出力端とDC/DCコンバータ23の出力端とを接続する電気配線と、電気配線上に設けられた半導体素子とを備えればよい。
【0025】
制御回路11Aは、電力伝達回路9のMOSFET47の導通/非導通を切り替える制御信号を生成して制御信号をMOSFET47に出力する回路である。また、制御回路11Aは、電力伝達回路9が接続される電気配線W9の電圧値をモニタする機能を有する。制御回路11Aは、電気配線W9の電圧値の低下を検出して、DC/DCコンバータ23から負荷27Eへの直流電力の供給が異常停止したと判定した場合に、MOSFET47を非導通から導通に切り替えるように制御信号を生成および出力する。これにより、AC/DCコンバータ33の出力端と負荷27Eとが接続され、AC/DCコンバータ33から電気配線W13に出力される直流電力が負荷27Eに供給される。すなわち、MOSFET47は、DC/DCコンバータ23から負荷27Eへの直流電力の供給が異常停止した場合に、AC/DCコンバータ33の出力端と負荷27Eとの間を導通させるといえる。なお、本発明における直流電力の供給の異常停止とは、第1の負荷に直流電力を供給させたい状況下において、何かしらの理由により、第1の負荷に直流電力が供給されなくなる状態を指す。また、ダイオード45は、DC/DCコンバータ23の出力電圧が低下すると、AC/DCコンバータ33の出力端と負荷27Eとの間を導通させるため、MOSFET47が導通に切り替わるまでに、AC/DCコンバータ33から負荷27Eに直流電力が供給され、負荷27Eに供給される直流電力の連続性が保たれる。なお、制御回路11Aは、DC/DCコンバータ23の出力電圧を、電気配線W4上の電圧、あるいは、第2ジャンクションボックス25内の第2接続部J69における電圧を検出することでモニタしてもよいし、DC/DCコンバータ23の出力電流をモニタしてDC/DCコンバータ23から負荷27Eへの直流電力の供給停止を判定してもよい。
【0026】
制御回路11Bは、分電ユニット31の2つのスイッチ37の導通/非導通を切り替える制御信号を生成して制御信号をそれぞれのスイッチ37に出力する回路である。制御回路11Bは、第3接続部J71の電流計39によって測定された交流電流の大きさが所定の閾値を超えた場合に第3接続部J71のスイッチ37を導通から非導通に切り替える制御信号を生成および出力する。また、制御回路11Bは、第3接続部J72の電流計39によって測定された交流電流の大きさが所定の閾値を超えた場合に第3接続部J72のスイッチ37を導通から非導通に切り替える制御信号を生成および出力する。制御回路11Bは、第2電力変換ユニット7から過電流が出力されることを防止して、負荷における電源喪失を回避する役割を有する。
【0027】
さらに、制御回路11Bは、車両走行に際して重要度の比較的高い負荷27Eへの電力供給を安定化させるための機能も有する。すなわち、制御回路11Bは、制御回路11AによってDC/DCコンバータ23から負荷27Eへの直流電力の供給が異常停止したと判定された場合に、第3接続部J72を遮断する基準である交流電流の閾値を低下させるように、閾値を可変に設定する機能を有する。
【0028】
以上説明した電力変換システム1によれば、バッテリ15に接続される第1電力変換ユニット5及び第2電力変換ユニット7を備えており、第1電力変換ユニット5においては、DC/DCコンバータ23の出力端に車両走行の際に使用が必須な負荷27Eが接続され、第2電力変換ユニット7においては、ACインバータ29を介してバッテリ15に接続されたAC/DCコンバータ33の出力端に車内装備品である負荷41Aが接続されている。さらに、電力変換システム1においては、AC/DCコンバータ33の出力端と第1の負荷との間には電力伝達回路9が備えられており、電力伝達回路9の働きにより、負荷27Eへの直流電力の供給が異常停止した場合に、AC/DCコンバータ33の出力端と負荷27Eとの間が導通される。その結果、DC/DCコンバータ23から負荷27Eへの電力供給が停止した場合であっても、AC/DCコンバータ33から負荷27Eへ直流電力を供給することができ、車両が走行する際に使用可能とすることが必須となる第1の負荷への安定した電力供給が可能となる。
【0029】
本実施形態においては、電力伝達回路9内の半導体素子として、電気配線W19上に設けられたダイオード45を有している。かかる構成により、DC/DCコンバータ23の出力端側の電圧低下に応じて、MOSFET47が導通に切り替わるまで、AC/DCコンバータ33の出力端から負荷27Eへ直流電力の供給を開始することができ、車両走行のために使用する負荷への電力供給の瞬断が生じない安定した電力供給が可能となる。
【0030】
また、本実施形態においては、電力伝達回路9内の半導体素子として、電気配線W19上に設けられたMOSFET47が含まれている。かかる構成により、AC/DCコンバータ33の出力端から負荷27Eへ安定して直流電力を供給することができ、車両走行のために使用する負荷への電力供給が低損失で実現される。
【0031】
図2は、電力変換システム1における電力の供給経路を示す回路図である。このように、DC/DCコンバータ23の出力端において過電流あるいはDC/DCコンバータ23の故障等により電源失陥が生じて、電気配線W4、第2ジャンクションボックス25、及び電気配線W9を介した直流電力の供給が異常停止すると、電気配線W9の電圧が低下する。制御回路11Aの働きにより、電気配線W9の電圧の低下に応じて、電力伝達回路9内のMOSFET47が導通され、AC/DCコンバータ33、電気配線W13、電力伝達回路9、及び電気配線W9を介して、AC/DCコンバータ33から出力された直流電力が負荷27Eに供給される。
【0032】
図3は、比較例に係る電力変換システム901の構成概略を示す回路図である。電力変換システム901の構成における電力変換システム1との相違点は、分電ユニット31、AC/DCコンバータ33、電力伝達回路9、及び、制御回路11A,11Bを有しておらず、全ての負荷27A~27F,41Aが第2ジャンクションボックス925によってDC/DCコンバータ23の出力端に接続されていることである。このような構成の電力変換システム901においては、DC/DCコンバータ23の出力端から電気配線W9の間において電源失陥が生じた際に、負荷27Eへの直流電力の供給が停止してしまう。これに対して本実施形態に係る電力変換システム1によれば、そのような事態を回避できる。
【0033】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0034】
制御回路11Aは、第2ジャンクションボックス25と一体化されていてもよいし、第2ジャンクションボックス25と独立した回路部によって構成されていてもよい。また、制御回路11Aは、DC/DCコンバータ23と一体化されていてもよいし、DC/DCコンバータ23と独立した回路部によって構成されてもよい。また、制御回路11Bは、分電ユニット31と一体化されていてもよいし、分電ユニット31と独立した回路部によって構成されてもよい。また、制御回路11Aと制御回路11Bは、一体化されていてもよい。
【0035】
制御回路11Bは省かれていてもよい。また、制御回路11Bは、第3接続部J71,J72を遮断する基準となる閾値を可変に設定する機能を有していなくてもよい。
【0036】
電力伝達回路9は、電気配線W19とMOSFET47とダイオード45とを有しているが、これに限られず、電気配線W19とMOSFET47とで構成されていてもよいし、電気配線W19と、電気配線W19上に設けられ、アノードがAC/DCコンバータの出力端に接続され、カソードがDC/DCコンバータの出力端に接続されるダイオードとで構成されていてもよい。
【0037】
DC/DCコンバータ23から負荷27Eへの直流電力の供給が異常停止した場合に、AC/DCコンバータ33と負荷41Aとの接続を遮断していないが、遮断してもよいし、ACインバータ29からACアウトレット43への交流電力の供給を遮断してもよい。
【0038】
電気配線W19は、AC/DCコンバータ33の出力端とDC/DCコンバータ23の出力端との間に接続されていればよく、例えば、第1の負荷と直接接続されてもよいし、DC/DCコンバータ23の出力端に接続されていてもよい。DC/DCコンバータ23の出力端に接続される場合であっても、DC/DCコンバータ23の出力端は、電気配線W4、第2ジャンクションボックス25及び電気配線W9を介して負荷27Eに接続されるため、電気配線W19は、AC/DCコンバータ33の出力端と第1の負荷との間に接続されているといえる。
【符号の説明】
【0039】
1…電力変換システム、5…第1電力変換ユニット、7…第2電力変換ユニット、9…電力伝達回路、11A,11B…制御回路、15…バッテリ、23…DC/DCコンバータ、29…ACインバータ、27A,27B,27C,27D,27E,27F…負荷(第1の負荷)、33…AC/DCコンバータ、41A…負荷(第2の負荷)、43…ACアウトレット、45…ダイオード(半導体素子)、47…MOSFET(トランジスタ、半導体素子)。
図1
図2
図3