(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070101
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置(蓄電池)の高効率制御を実現する制御装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20240515BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240515BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240515BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240515BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240515BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J7/35 K
H02J7/34 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180488
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】712006064
【氏名又は名称】株式会社Sassor
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】石橋 秀一
(72)【発明者】
【氏名】宮原 泰徳
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB10
5G064DA01
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA02
5G503BB01
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】電力アグリゲータが需給調整市場などの調整力電源として一般住宅、事業所、工場または系統蓄電池等の施設に散在するエネルギー貯蔵装置(蓄電池)の電力ロスを最小限となるように制御することが可能な情報処理方法等を提供すること。
【解決手段】一つの側面に係る情報処理方法は、需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置(蓄電池等)から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群を抽出生成し、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から制御可能な最大継続時間の電力を供給し、前記制御可能な最大継続時間に、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置から選択したエネルギー貯蔵装置と、前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる蓄電池から選択したエネルギー貯蔵装置との切り替えを行い、前記需給調整される調整総電力を供給することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエネルギー貯蔵装置によって需給調整される調整総電力に対する各エネルギー貯蔵装置を最大定格出力で出力する出力部と、
前記エネルギー貯蔵装置の各状態情報に基づいて、需給調整総電力と同じとなる複数エネルギー貯蔵装置の最大定格出力の総和電力量が同じとなる前記エネルギー貯蔵装置の制御台数と電力総容量とをそれぞれ算出する第1算出部と、
少なくとも一つの前記エネルギー貯蔵装置における制御可能な最大継続時間を算出する第2算出部と、
各エネルギー貯蔵装置に充放電すべき入出力電力量を、対応する前記エネルギー貯蔵装置に送信する送信部と
を備える制御装置。
【請求項2】
需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群を生成し、
第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から制御可能な最大継続時間の電力を供給し、
前記制御可能な最大継続時間に、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置から選択されたエネルギー貯蔵装置と、第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる蓄電池から選択されたエネルギー貯蔵装置との切り替えを行い、前記需給調整される調整総電力を供給する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項3】
需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群を生成し、
第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から制御可能な最大継続時間の電力を供給し、
前記制御可能な最大継続時間が経過する前から、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置から選択されたエネルギー貯蔵装置と、第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置のそれぞれから選択された一つまたは複数のエネルギー貯蔵装置とを時間軸に対する順番に、第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置の放電停止と前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置の放電との切り替えを段階的に行い、
前記制御可能な最大継続時間の経過時に、前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から前記需給調整される調整総電力を供給する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項4】
それぞれの前記エネルギー貯蔵装置は、最大出力で電力を供給する
請求項2又は3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記第1エネルギー貯蔵装置制御群の放電電力の総和電力または第2エネルギー貯蔵装置制御群の放電電力の総和電力が、調整力制御電力指示量に対して指定の電力供出量の制御範囲内であるか否かを判定し、
総和電力が調整力範囲の上限を超えた場合、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群または前記第2エネルギー貯蔵装置制御群におけるエネルギー貯蔵装置の台数を削減し、
総和電力が調整力範囲の下限を超えた場合、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群または前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に属していないエネルギー貯蔵装置から削減した電力量と同じ電力出力できるエネルギー貯蔵装置を一つまたは複数制御して電力出力させる
請求項2又は3に記載の情報処理方法。
【請求項6】
需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群を生成し、
第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から制御可能な最大継続時間の電力を供給し、
前記制御可能な最大継続時間に、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置から選択したエネルギー貯蔵装置と、第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる蓄電池から選択したエネルギー貯蔵装置との切り替えを行い、
前記需給調整される調整総電力を供給する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項7】
需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群を生成し、
第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から制御可能な最大継続時間の電力を供給し、
前記制御可能な最大継続時間が経過する前から、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置から選択されたエネルギー貯蔵装置と、第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置のそれぞれから選択された一つまたは複数のエネルギー貯蔵装置を時間軸に対する順番に、第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置の放電停止と前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置の放電との切り替えを段階的に行い、
前記制御可能な最大継続時間の経過時に、前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から前記需給調整される調整総電力を供給する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵装置の高効率制御を実現する情報処理方法、プログラム及び情報処理装置に関する。用途としては、需給調整電力量に応じて、充放電電力量を制御するべく、1つ以上のエネルギー貯蔵装置をアグリゲートとして制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力量の需給バランスをとるために、発電側が一方的に電力量の需給調整をするだけでなく、需要家側のエネルギー貯蔵装置を遠隔制御によってその電力を充放電させる技術がある。
図1によれば、アグリゲータ制御装置(電力仲介事業者)10は、需要家の各エネルギー貯蔵装置における電力利用情報を予め取得しているとする。
【0003】
電力会社の管理制御装置70は、アグリゲータ制御装置10(以下、制御装置10と読み替える)へ、需給調整電力量に基づく需給調整要求を送信する。これに対し、制御装置10は、需給調整電力量に基づいて、各需要家のエネルギー貯蔵装置における充放電電力量を計算し、その充放電電力量を各エネルギー貯蔵装置へ送信する。エネルギー貯蔵装置は、受信した充放電電力指示量に応じて、電力を充放電する。
【0004】
また、所定地域で必要となる充放電電力量に対して、管理サーバ(アグリゲータ機能)が、需要家設備(エネルギー貯蔵装置)の各エネルギー貯蔵装置の残量等から、当該エネルギー貯蔵装置が充放電すべき分担比率を計算する技術もある(例えば特許文献1照)。この技術によれば、需要家側設備は、管理サーバから需給調整市場において入札・約定した電力量に基づいて当該エネルギー貯蔵装置が充放電すべき分担電力量を計算する。そして、エネルギー貯蔵装置は、その分担電力量に応じて充放電を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
ここで、制御装置10としては、一般送配電事業者から約定した電力を上限として逐次指示された電力となるように、接続される各エネルギー貯蔵装置に対して充放電の電力指示量の制御を実施する。
【0007】
この時の各エネルギー貯蔵装置の電力指示量は、例えば接続されるエネルギー貯蔵装置が同一機種である場合には、一般送配電事業から指示された電力量を接続されたエネルギー貯蔵装置の台数で按分された電力値で制御する。これは、需給調整市場に入札・約定する電力量は制御する電力値を正確に応動制御しなければ、ペナルティとなり市場からの利益を得ることができないため余力をもって接続するエネルギー貯蔵装置の合計出力より低い値で入札する。
【0008】
そのため、一般送配電事業者からの電力指示値は、約定した電力量よりも必ず低い電力値が制御量となって指示が来る。このため、各エネルギー貯蔵装置に同一の充放電電力量の指示を出した場合、エネルギー貯蔵装置の最大充放電量とはならない。
【0009】
同様に、異なるエネルギー貯蔵装置を複数台接続した場合でも、そのエネルギー貯蔵装置の最大充放電量よりも低い電力量を利用して入札量を決定するため、エネルギー貯蔵装置が同一の場合と同じく最大充放電電力値よりも低い充放電電力指示が制御装置10から制御される。
【0010】
一方、エネルギー貯蔵装置の一部であるPCS(Power Conditioning System;直流・交流変換装置)は、放電時にはエネルギー貯蔵装置セルに用いる直流電力を需要家宅内または系統電力に接続するために交流電力として変換されて電力として用いられる。充電時には上記と逆となる。
【0011】
この時、PCSの特性として交流・直流の電力変換時に一定割合で電力損失が生じる。この電力損失は、PCSの最大入出力電力時に最小となり入出力させる電力が最大充放電電力より低く充放電する場合には、入出力電力が定格最大入出力より低くなるとともに電力損失が徐々に大きくなるという特性を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1にかかわる発明は、エネルギー貯蔵装置の充放電入出力電力はエネルギー貯蔵装置が多数接続されている場合、一般送配電事業からの電力指示量は接続されている蓄電地の台数に按分されることによって個々のエネルギー貯蔵装置の充放電入出力電力はエネルギー貯蔵装置の最大定格入出力電力とならない(特許文献1
図12参照)。特に出力電力が最大定格出力電力よりも大幅に低い場合には、エネルギー貯蔵装置のPCSにおいて大幅な電力損失が発生してしまう。
【0013】
このために、制御装置10から需給調整電力量に基づいて、各需要家のエネルギー貯蔵装置における充放電電力量を計算し、その充放電電力量を各エネルギー貯蔵装置へ制御する出力電力が最大定格出力より低い場合には、各充電した電力量(kWh)に対して、利用する出力電力量(kWh)が極端に少なくなり、ひいては購入した電力料金に対して出力される電力料金が相対的に高い電力料金で利用することになり経済合理性が大幅に失うことになるという問題がある。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の多くのエネルギー貯蔵装置などのエネルギー貯蔵装置の性能を最大限に引き出すように電力損失が最小になるように制御処理を最適化できる制御装置、情報処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の各側面では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0016】
一つの側面に係る制御装置は、前記エネルギー貯蔵装置の状態情報に基づいて、複数のエネルギー貯蔵装置によって需給調整される調整総電力に対する各エネルギー貯蔵装置を最大定格出力で出力する出力部と、前記エネルギー貯蔵装置の各状態情報に基づいて、需給調整総電力と同じとなる複数エネルギー貯蔵装置の最大定格出力の総和電力量が同じとなる前記エネルギー貯蔵装置の制御台数と電力総容量とをそれぞれ算出する第1算出部と、少なくとも一つの前記エネルギー貯蔵装置における制御可能な最大継続時間を算出する第2算出部と、各エネルギー貯蔵装置に充放電すべき入出力電力量を、対応する前記エネルギー貯蔵装置に送信する送信部とを有する。
【0017】
一つの側面に係る情報処理方法は、需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群を生成し、第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から制御可能な最大継続時間の電力を供給し、前記制御可能な最大継続時間に、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置から選択されたエネルギー貯蔵装置と、第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる蓄電池から選択されたエネルギー貯蔵装置との切り替えを行い、前記需給調整される調整総電力を供給する処理をコンピュータが実行する。
【0018】
一つの側面に係る情報処理方法は、需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群を生成し、第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から制御可能な最大継続時間の電力を供給し、前記制御可能な最大継続時間が経過する前から、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置から選択されたエネルギー貯蔵装置と、第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置のそれぞれから選択された一つまたは複数のエネルギー貯蔵装置とを時間軸に対する順番に、第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置の放電停止と前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置の放電との切り替えを段階的に行い、前記制御可能な最大継続時間の経過時に、前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から前記需給調整される調整総電力を供給する処理をコンピュータが実行する。
【0019】
一つの側面に係るプログラムは、需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群を生成し、第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から制御可能な最大継続時間の電力を供給し、前記制御可能な最大継続時間に、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置から選択したエネルギー貯蔵装置と、第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる蓄電池から選択したエネルギー貯蔵装置との切り替えを行い、前記需給調整される調整総電力を供給する処理をコンピュータに実行させる。
【0020】
一つの側面に係るプログラムは、需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群を生成し、第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から制御可能な最大継続時間の電力を供給し、前記制御可能な最大継続時間が経過する前から、前記第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置から選択されたエネルギー貯蔵装置と、第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置のそれぞれから選択された一つまたは複数のエネルギー貯蔵装置を時間軸に対する順番に、第1エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置の放電停止と前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれるエネルギー貯蔵装置の放電との切り替えを段階的に行い、前記制御可能な最大継続時間の経過時に、前記第2エネルギー貯蔵装置制御群に含まれる前記エネルギー貯蔵装置から前記需給調整される調整総電力を供給する処理をコンピュータに実行させる。
【0021】
なお、本発明の他の側面としては、上記の側面の方法を少なくとも一つのコンピュータに実行させるプログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であってもよい。この記録媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。このコンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されたとき、コンピュータに、制御装置上で、その制御方法を実施させるコンピュータプログラムコードを含む。
【0022】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0023】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0024】
また、本発明の方法およびコンピュータプログラムには複数の手順を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の手順を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の方法およびコンピュータプログラムを実施するときには、その複数の手順の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0025】
さらに、本発明の方法およびコンピュータプログラムの複数の手順は個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある手順の実行中に他の手順が発生すること、ある手順の実行タイミングと他の手順の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0026】
上記各側面によれば、多数のエネルギー貯蔵装置に置いて各エネルギー貯蔵装置における電力損失を最小限にした制御演算処理を最適化できる制御装置、情報処理方法およびプログラムを提供するこが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態に係る需給調整制御の全体像および概要の一例を説明するための図である。
【
図2】エネルギー貯蔵装置のPCSの電力効率の例を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る需給調整制御装置の構成を概念的に示す図である。
【
図4】本発明の制御装置の一部の構成を論理的に示す機能ブロック図である。
【
図5】需給調整力市場の三次調整力2において落札した電力量によってアグリゲータが電力を供給する予定量を示すグラフの一例を示す説明図である。
【
図6】中央給電指令所または簡易指令所の管理装置から需給調整制御装置及び複数のエネルギー貯蔵装置までの制御信号の流れを示す説明図である。
【
図7】特許文献1によるエネルギー貯蔵装置の制御の一例を示す説明図である。
【
図8】エネルギー貯蔵装置の一例を示す説明図である。
【
図9】複数のエネルギー貯蔵装置制御群を用いて複数のエネルギー貯蔵装置を段階的に切り替えて制御する方法を説明する説明図である。
【
図10】制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】エネルギー貯蔵装置制御群を抽出する処理のサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】需給調整制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施の形態に係る需給調整制御の全体像および概要の一例を説明するための図である。
図2は、エネルギー貯蔵装置のPCS(直流・交流変換装置)の電力効率の例を示す説明図である。
図3は、本発明の実施の形態に係る需給調整制御装置20の構成を概念的に示す図である。以下の各図において、本発明の本質に関わらない部分の構成については省略してあり、図示されていない。
【0030】
電力系統の周波数(以下、「系統周波数」とも呼ぶ)は、電力系統内の発電設備(たとえば、
図1の火力発電所62、再生可能エネルギー発電所64)の出力または需要家負荷の電力消費に応じて変動する。また、電力系統内には、発電設備(火力発電所62)と、電力を消費する負荷以外に、電力を充放電するエネルギー貯蔵装置(
図1の系統用コンテナエネルギー貯蔵装置(系統用コンテナ蓄電池)32、アグリゲータエネルギー貯蔵装置(アグリゲータ蓄電池)34、大口需要家エネルギー貯蔵装置(大口需要家蓄電池)36、小口需要家エネルギー貯蔵装置(小口需要家蓄電池)38等)も存在する。エネルギー貯蔵装置は、様々な形態のものが存在し、これらを統合的に制御する手法が様々検討されている。
【0031】
電力系統も安定化維持または電力の需給バランスのために、需給調整力として様々な電力を活用して制御を行っている。
例えば、電力調整力市場の三次調整力では前日の太陽光発電の発電計画値がゲートクローズ後の実際の発電力予測と異なっていた場合、電力の需給バランスを維持するために、不足した電力を保管するための電力指示信号が、中央給電指令所の管理制御装置70からエネルギー貯蔵装置中の制御装置10に定期的(たとえば、数秒から数分間隔)に送信されている。
【0032】
本発明の需給調整制御システムにおいて、前記電力指示信号に従い、様々なエネルギー貯蔵装置30(
図3参照)の充放電の統合的な制御により、電力需給調整を効率よく行うことができる。
【0033】
本実施形態の制御装置10は、複数の需給調整制御装置20及びエネルギー貯蔵装置30と接続されている。なお、需給調整制御装置20及びエネルギー貯蔵装置30は、例えば、パワーコンディショニングシステム(PCS)を含むエネルギー貯蔵装置により、エネルギー貯蔵システム(例えば、蓄電装置)が構成されてもよい。そして、需給調整制御装置20は、当該エネルギー貯蔵システムを有してもよい。また、需給調整制御装置20は複数の発電装置60(
図3参照)を有してもよい。これらの装置は、インターネット等のネットワーク50(
図3参照)を介して互いに接続され、互いに情報の送受信を行う。
【0034】
本発明の実施の形態の需給調整システムは、たとえば、アグリゲータまたは電力小売りまたはエネルギーサービスプロバイダが、電力系統内の様々な主体(たとえば、大ロ需要家、小ロ需要家、およびアグリゲータ自身)が保有する複数のエネルギー貯蔵装置の充放電を統合的に制御することで、電力の需給調整サービスを提供するものである。
【0035】
提供される需給調整サービスの例として、以下に例示されるが、これらに限定されない。
(a1)電力系統の電力需給調整制御を行う。電力系統内の異なる仕様、性能、状態にある複数のエネルギー貯蔵装置に対し、各電池の性能を最大限に引き出すように充放電の割り当てを最適化する。
(a2)不測の事態に備えた電力の予備を蓄えるように、各エネルギー貯蔵装置への充放電の管理および分配を行う。
(a3)再生可能エネルギー発電所等の発電量のランプ変動にも対応できるように、各エネルギー貯蔵装置の充放電を制御する。
(a4)エネルギー貯蔵装置の満充電または枯渇を回避するように、各エネルギー貯蔵装置の充放電を制御する。
(a5)電力の安い時間帯にエネルギー貯蔵装置に充電して、電力の高い時間帯に放電することで電力を販売するような充放電制御をする。
(a6)系統の周波数を一定の周波数変動に抑えるために、エネルギー貯蔵装置の充放電を制御する。
(a7)系統の電圧を一定の電圧変動に抑えるために、エネルギー貯蔵装置の充放電を制御する。
(a8)電力需給ひっ迫時に、エネルギー貯蔵装置の放電を制御する。
【0036】
制御装置10は、本発明の実施の形態の制御装置の一例であり、たとえば、アグリゲータまたは上記サービスを提供する電力小売りまたはプロバイダ等のクラウドサーバである。制御装置10の詳細については後述する。
【0037】
発電装置60は、特に限定されないが、
図1では火力発電所62、および、太陽光、風力、小水力、地熱等の自然エネルギーを用いて発電する再生可能エネルギー発電所64の装置である。発電装置60は、あらゆる構成を採用できる。発電装置60は、事業者により管理される大規模な発電装置(たとえば、メガソーラ等)であってもよいし、一般家庭により管理される小規模な発電装置であってもよい。
【0038】
エネルギー貯蔵装置30は、供給された電力を、所定のエネルギーとして蓄積するよう構成される。たとえば、供給された電力を電力として蓄積するエネルギー貯蔵装置または電気自動車(に搭載のエネルギー貯蔵装置)、供給された電力を熱エネルギーに変換して蓄積するヒートポンプ給湯機等が考えられるが、これらに限定されない。エネルギー貯蔵装置30は、あらゆる構成を採用できる。エネルギー貯蔵装置30は、事業者により管理される大規模なエネルギー貯蔵装置(たとえば、
図1の系統用コンテナエネルギー貯蔵装置32)であってもよいし、一般家庭により管理される多数の小規模なエネルギー貯蔵装置(たとえば、
図1の小口需要家エネルギー貯蔵装置38)であってもよい。
【0039】
需給調整制御装置20は、エネルギー貯蔵装置30による電力の充電、放電、および消費を制御する。
図1では、需給調整制御装置20は図示されていない。
図2では、需給調整制御装置20およびエネルギー貯蔵装置30を分けて記載しているが、これらは物理的または論理的に分かれて構成されてもよいし、物理的または論理的に一体となって構成されてもよい。
【0040】
需給調整制御装置20は、たとえば、EMS(Energy Management System)であり、制御対象となるエネルギー貯蔵装置30により、具備する機能またはその性能は様々である。さらに、需給調整制御装置20は、管理制御装置70とネットワーク50を介して通信を行う機能を有し、管理制御装置70からの指示に従い、エネルギー貯蔵装置30を制御することもできる。需給調整制御装置20と管理制御装置70との間の通信手段と対応プロトコルも、エネルギー貯蔵装置30により様々である。
【0041】
たとえば、
図1の大口需要家エネルギー貯蔵装置36、小口需要家エネルギー貯蔵装置38の場合は、管理制御装置70と対応する需給調整制御装置20の間は、所定の認証および暗号化処理によりセキュリティが確保された上で、インターネット52等のネットワーク50を用いて接続される。
【0042】
系統用コンテナエネルギー貯蔵装置32、アグリゲータエネルギー貯蔵装置34の場合は、管理制御装置70と対応する需給調整制御装置20の間は、VPN(Virtual Private Net work)等の専用回線54により接続される。
【0043】
エネルギー貯蔵装置30は、たとえばエネルギー貯蔵装置の一部であるPCS(直流・交流変換装置)は、放電時にはエネルギー貯蔵装置セルに用いる直流電力を需要家宅内または系統電力に接続するために交流電力として変換されて電力として用いられる。充電時には上記と逆となる。
【0044】
この時、PCSの特性として交流・直流の電力変換時に一定割合で電力損失が生じる。この電力損失は、
図2に示すようにPCSの最大入出力電力時に最小となり入出力させる電力が最大充放電電力より低く充放電する場合には、入出力電力が定格最大入出力より低くなるとともに電力損失が徐々に大きくなるという特性を持つ。
【0045】
図4は、本発明の制御装置10の一部の構成を論理的に示す機能ブロック図である。制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、読取部16及び時計部17を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0046】
制御装置10は、電力量を調整するアグリゲータ用の情報処理装置である。制御装置10は、例えばサーバ装置、コンピュータまたは汎用のタブレットPC(パソコン)等である。
【0047】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を含み、記憶部12に記憶された制御プログラム1P(プログラム製品)を読み出して実行することにより、制御装置10に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。なお、制御プログラム1Pは、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトにおいて配置されるか、もしくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。なお、
図4では制御部11を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。
【0048】
記憶部12はRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ素子を含み、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1P又はデータ等を記憶している。また、記憶部12は、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。通信部13は通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、ネットワークNを介して、エネルギー貯蔵装置制御群等との間で情報の送受信を行う。
【0049】
入力部14は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン等の入力デバイスであり、受け付けた操作情報を制御部11へ出力する。表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等であり、制御部11の指示に従い各種情報を表示する。
【0050】
読取部16は、CD(Compact Disc)-ROM又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROMを含む可搬型記憶媒体1aを読み取る。制御部11が読取部16を介して、制御プログラム1Pを可搬型記憶媒体1aより読み取り、記憶部12に記憶しても良い。また、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御部11が制御プログラム1Pをダウンロードし、記憶部12に記憶しても良い。さらにまた、半導体メモリ1bから、制御部11が制御プログラム1Pを読み込んでも良い。
【0051】
時計部17は、時刻又は経過時間等を計時しており、制御部11からの求めに応じて、計時結果を制御部11に与える回路である。また、時計部17はタイマ機能を提供する。タイマ機能は開始を指示されてから、予め設定した時間が経過した場合、その旨を制御部11に通知する機能である。又は、タイマ機能は開始を指示されてから、予め設定した時間が経過したか否かを、制御部11からの問い合わせに対して回答する機能である。
【0052】
制御装置10は、種々の情報処理及び制御処理等をコンピュータ単体で実行しても良いし、複数のコンピュータで分散して実行しても良いし、仮想マシンで分散して実行しても良い。なお、制御装置10に係る種々の情報処理及び制御処理等は、通信環境を有するサーバ装置等で実行されても良い。
【0053】
続いて、エネルギー貯蔵装置30を利用して調整力市場で入札し落札した電力が電力指示信号から管理制御装置70による電力制御処理を説明する。
【0054】
図5は、需給調整力市場の三次調整力2において落札した電力量によってアグリゲータが電力を供給する予定量を示すグラフの一例を示す説明図である。該グラフは、時間と電力供給予定量との関係を示すグラフであり、多数のエネルギー貯蔵装置30が接続されている需要家の制御前後の予測需要総量を示している。図示のように、横軸は入札し落札された対象時間(例えば、9:00~12:00)を示し、縦軸は需要家側からの電力供給総予定量(kW)を示す。
【0055】
図5のライン11aは、多数のエネルギー貯蔵装置30がある需要家の制御前の予測需要総量(直前の予測需要電力量)を示す。制御前の予測需要量は、基準値と呼ばれ例えばHigh4of5などの需要家の需要電力により計算される。ライン11bは、エネルギー貯蔵装置30への制御後の予測需要量(電力供給量)を示す。制御後の予測需要量は、需給調整力市場で落札され電力指示信号によって制御される電力量の値である。
【0056】
図5の場合、例えば落札された電力量は1000kWで、電力指示信号によって制御される電力量も同じく1000kWの一定値となっている。この例では、電力指示値は3時間一定であるが三次調整力2の場合30分ごとに電力指示値は落札量を超えない範囲で変化する場合がある。
【0057】
例えば
図5の事例では、同時間の電力供給予定量(入札量)は、所定の時間(例えば、3時間)内に一定値である。電力指示値は、最大所定時間帯における制御前後の基準値から落札された電力値となる。例えば、所定時刻9:00における制御前の基準値が1500kWであり、落札された電力量が1000kWの場合、制御後の最大電力指示による予測需要量は500kWとなる。
【0058】
図6は、中央給電指令所または簡易指令所の管理装置70から需給調整制御装置20及び複数のエネルギー貯蔵装置30までの制御信号の流れを示す説明図である。需給調整市場で入札し落札された調整力電力は、
図6の需給調整制御装置20によって、需給調整制御装置20に接続されているエネルギー貯蔵装置30の充放電電力を制御する。この充放電電力量は管理装置より逐次制御量が送信され、その制御量に応じて各エネルギー貯蔵装置30の充放電電力量が需給調整制御装置20によって決定される。
【0059】
特許文献1によると、需給調整制御装置20は接続されるエネルギー貯蔵装置30(1~N)によって按分されるとある。
【0060】
図7は、特許文献1によるエネルギー貯蔵装置30の制御の一例を示す説明図である。
図5の調整力に示すように、制御に必要な制御量が1000kWの場合を例にして説明する。需給調整制御装置20に接続されているエネルギー貯蔵装置30の最大定格充放電電力(最大出力電力)は2kWであり、貯蔵される電力量は4kWhとする。需給調整制御装置20に接続されているエネルギー貯蔵装置30の数Nが2000台である場合、エネルギー貯蔵装置30の1台当たりの放電電力は0.5kWとなる。各エネルギー貯蔵装置30が満充電の場合、貯蔵されている電力量が4kWhであるため、3時間の放電は可能である。
【0061】
このエネルギー貯蔵装置30の最大定格充放電電力はすべて同じでなければならないという制約はない。同様に貯蔵される電力量も同じでなければならないという制約もない。また、この事例ではすべてのエネルギー貯蔵装置30の貯蔵されている電力量が満充電で仮定しているが、すべて満充電である制約もない。
【0062】
図7において、按分されたエネルギー貯蔵装置30の1台当たりの放電電力は0.5kWであるが、この放電出力はエネルギー貯蔵装置30の最大放電定格の2kWを大きく下回っており、
図2で示した、エネルギー貯蔵装置30の出力は最大定格時の25%となってしまう。結果、PCSの効率が最大定格の95%より大幅に低下してしまい大きな電力損失となってしまうという欠点がある。
【0063】
図8は、エネルギー貯蔵装置30の一例を示す説明図である。例えば
図5の調整力の場合、
図7と同一条件に於いて、制御に必要な制御量が1000kWの場合、例えば接続されているエネルギー貯蔵装置30の最大定格充放電電力を2kWで貯蔵される電力量を4kWhとし、接続されているエネルギー貯蔵装置30の数Nが2000台とする。
【0064】
エネルギー貯蔵装置制御群は、複数のエネルギー貯蔵装置を遠隔から群制御することにより構築される。需給調整される調整総電力に対応する複数のエネルギー貯蔵装置から電力供出可能な複数のエネルギー貯蔵装置制御群が予め生成される。エネルギー貯蔵装置制御群は、例えば一般住宅、事業所または工場等の施設で使用可能である。なお、複数の施設にエネルギー貯蔵装置制御群が設置される。
【0065】
本実施例では、需給調整制御装置20に接続されているエネルギー貯蔵装置30の数Nが2000台であり、1000kWの調整力が必要である場合を例にして説明する。需給調整制御装置20は、2000台のエネルギー貯蔵装置のうち、エネルギー貯蔵装置制御群1(第1エネルギー貯蔵装置制御群)を構成する500台に対して最大定格である2kWの放電出力指示を出し、残りの1500台に対しては待機もしくは放電出力0kWの指示を出す。
【0066】
エネルギー貯蔵装置制御群1を構成する各エネルギー貯蔵装置30に貯蔵される満充電状態における電力量が4kWhである場合、PCSなどの損失を考慮しない場合には約2時間で各エネルギー貯蔵装置30に貯蔵された電力量が0kWhになってしまう。
【0067】
そのため、需給調整制御装置20は、待機もしくは放電出力0kWの指示を出していた1500台のエネルギー貯蔵装置30のうち、エネルギー貯蔵装置制御群2(第2エネルギー貯蔵装置制御群)を構成する500台に対して放電指示を出すことにより、エネルギー貯蔵装置制御群1からエネルギー貯蔵装置制御群2に切り替える。これにより、需給調整制御装置20は例えば三次調整力2の3時間の制御が可能となり制御信号による制御を行うことができる。
【0068】
このエネルギー貯蔵装置30の最大定格充放電電力はすべて同じでなければならないという制約はない。同様に貯蔵される電力量も同じでなければならないという制約もない。また、この事例ではすべてのエネルギー貯蔵装置30の貯蔵されている電力量が満充電で仮定しているが、すべて満充電である制約もない。
【0069】
本実施形態では、予め生成された第1エネルギー貯蔵装置制御群及び第2エネルギー貯蔵装置制御群の例を説明したが、エネルギー貯蔵装置制御群は2つに限定されず、3つ以上にも適用できる。例えば、3つ以上のエネルギー貯蔵装置制御群についても、同様に、エネルギー貯蔵装置制御群を切り替えることができる。
【0070】
図8の例で、需給調整制御装置20に接続されているエネルギー貯蔵装置30の最大定格充放電電力が異なる場合には、すべてのエネルギー貯蔵装置30の放電出力が最大定格となるように制御する。この時、落札された調整力電力以内の電力が管理装置から指示値として送信されるため、エネルギー貯蔵装置制御群1または2の合計制御出力が上記指示値と同じになるように接続されているエネルギー貯蔵装置30の台数を制御する。
これにより、需給調整制御装置20は例えば三次調整力2の3時間の制御が可能となり制御信号による制御を行うことができる。
【0071】
また、
図8の例で、需給調整制御装置20に接続されているエネルギー貯蔵装置30の貯蔵される電力量kWhが異なる場合には、エネルギー貯蔵装置30の放電持続時間が異なる。そのため、接続されたエネルギー貯蔵装置30の貯蔵されている電力量が0kWhとなった場合、落札された調整力電力以内の電力が管理装置から指示値として送信されるため、エネルギー貯蔵装置制御群1または2の合計制御出力が上記指示値と同じにならなくなり低下する。
【0072】
その場合、接続されているエネルギー貯蔵装置30のエネルギー貯蔵装置制御群1または2以外の残りのエネルギー貯蔵装置30からの放電出力をすることにより、電力量が0kWhとなったエネルギー貯蔵装置30の最大定格の放電出力と同じになるように台数を制御する。
これにより、需給調整制御装置20は例えば三次調整力2の3時間の制御が可能となり制御信号による制御を行うことができる。
【0073】
同様に、
図8の例で、需給調整制御装置20に接続されているエネルギー貯蔵装置制御群1の貯蔵される電力量が満充電とは異なる場合にも、前述と同様の動作により、需給調整制御装置20は例えば三次調整力2の3時間の制御が可能となり制御信号による制御を行うことができる。
【0074】
図9は、複数のエネルギー貯蔵装置制御群を用いて複数のエネルギー貯蔵装置を段階的に切り替えて制御する方法を説明する説明図である。
図9での需給調整制御装置20は、エネルギー貯蔵装置制御群1から選択された複数のエネルギー貯蔵装置30と、エネルギー貯蔵装置制御群2から選択された複数のエネルギー貯蔵装置30のそれぞれから選択された一つまたは複数のエネルギー貯蔵装置30とを時間軸に対する順番に、エネルギー貯蔵装置制御群1に含まれるエネルギー貯蔵装置30の放電を停止し、エネルギー貯蔵装置制御群2に含まれるエネルギー貯蔵装置の放電を開始する切り替えを段階的に行う。
【0075】
なお、エネルギー貯蔵装置30の切り替えタイミングについては、特に限定されない。例えば需給調整制御装置20は、エネルギー貯蔵装置制御群1に含まれる電力を供給中の任意のエネルギー貯蔵装置30の放電出力電力が、管理装置から指示値として送信される制御電力量を下回ったと判定した場合、エネルギー貯蔵装置30の切り替え処理を行っても良い。
【0076】
例えば、エネルギー貯蔵装置制御群1のある1台のエネルギー貯蔵装置30の放電出力を最大定格出力2kWから0kWにすると同時にエネルギー貯蔵装置制御群2のある1台の放電出力を0kWから最大定格出力2kWにする。
【0077】
この時にエネルギー貯蔵装置制御群1の切り替えるエネルギー貯蔵装置30のある1台の最大定格と同じ出力のエネルギー貯蔵装置制御群2のエネルギー貯蔵装置30の最大定格が一致することが望ましいが、異なる最大定格充放電出力でも構わない。また、エネルギー貯蔵装置制御群1及びエネルギー貯蔵装置制御群2の切り替える台数は1台でなく複数台でも構わない。
【0078】
この場合、エネルギー貯蔵装置制御群1の0kWへ変化する合計電力量とエネルギー貯蔵装置制御群2の放電出力電力量の合計が一致すればよく、その結果管理装置から指示値と一致するように制御量が一定となるように需給調整制御装置20は制御を行う。
このように、制御量順次にエネルギー貯蔵装置制御群1及びエネルギー貯蔵装置制御群2のエネルギー貯蔵装置30を切り替えることができる。
【0079】
このような処理によって、各エネルギー貯蔵装置制御群のエネルギー貯蔵装置30を一斉に切り替えることを避け、電力供給中のエネルギー貯蔵装置30と、電力供給終了のエネルギー貯蔵装置30との電力合計を一定とする。それぞれのエネルギー貯蔵装置30を切り替えた台数は、徐々に0%から100%までになる。従って、
図8に示すようなエネルギー貯蔵装置制御群の一斉切り替えに伴う、それぞれのエネルギー貯蔵装置30への制御指示の時間遅れによって発生する供給電力の出力にスパイク状の変動を防止することができる。
【0080】
本実施形態の制御プログラム1Pは、本実施形態の制御装置10に、複数のエネルギー貯蔵装置30によって需給調整される調整総電力に対して、最大定格放電出力で各エネルギー貯蔵装置30の台数を制御し、当該エネルギー貯蔵装置30の状態情報に基づいて、エネルギー貯蔵装置30の制御する台数を算出する手順、複数のエネルギー貯蔵装置30における調整総電力に関する需給調整情報と、少なくとも一つ以上のエネルギー貯蔵装置30の最大定格放電出力の総和電力を算出する手順、対応するエネルギー貯蔵装置30に送信する手順、を実行させるように記述されている。
【0081】
本実施形態の制御プログラム1Pは、制御装置10で読み取り可能な記録部に記録されてもよい。記録部は特に限定されず、様々な形態のものが考えられる。また、制御プログラム1Pは、可搬型記憶媒体1aまたは半導体メモリ1bから制御装置10の記憶部12にロードされてもよいし、通信部13のネットワークを通じて制御装置10にダウンロードされ、記憶部12にロードされてもよい。
【0082】
制御プログラム1Pを記録する記録部は、非一時的な有形の制御装置10が使用可能な媒体を含み、その媒体に、制御装置10が読み取り可能なプログラムコードが埋め込まれる。制御プログラム1Pが、制御装置10上で実行されたとき、制御装置10に、需給調整制御装置20を実現する以下の制御方法を実行させる。
【0083】
このように構成された本実施形態の需給調整制御装置20の制御方法について、以下説明する。
【0084】
本実施形態の制御方法は、制御装置10の制御方法であり、制御装置10により実行される制御方法である。制御装置10は、需給調整制御装置20に接続する複数の需給調整制御装置20に接続するエネルギー貯蔵装置30によって需給調整される調整総電力に対して、最大定格放電出力で各エネルギー貯蔵装置30の台数を制御する。制御装置10は、当該エネルギー貯蔵装置30の状態情報に基づいて、エネルギー貯蔵装置30の制御する台数を算出し、最大定格出力で放電指示を送信する。
【0085】
制御装置10は、エネルギー貯蔵装置30の最大定格放電出力の総和電力を測定算出し、調整総電力の制御範囲にあるかを判定する。制御装置10は、制御範囲の上限を超える場合、制御台数を再計算し台数を減らし再度エネルギー貯蔵装置に指示を送信する。制御装置10は、制御範囲の下限を超える場合、制御台数を再計算し台数を増加し再度エネルギー貯蔵装置に指示を送信する。
【0086】
図10及び
図11は、制御装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0087】
制御装置10の制御部11は、例えば記憶部12に記憶されている電力供給予定量テーブルから、管理装置からの落札した電力供給量(調整力総電力)を取得する(ステップS101)。制御部11は、取得した電力供給量に基づき、調整力総電力に対するエネルギー貯蔵装置台数、及び制御可能な最大持続時間を算出する(ステップS102)。
【0088】
例えば、電力供給量に対して制御する各エネルギー貯蔵装置30の最大定格出力の総和を計算し電力供給量に等しくなる台数を算出する。同様に制御する各エネルギー貯蔵装置30の電力容量の総和(電力総容量)を算出し、電力供給量に対する時間を算出し、落札した市場の制御計測時間に満たない場合、エネルギー貯蔵装置制御群1からエネルギー貯蔵装置制御群2への切り替え時間として持続時間を算出する。
【0089】
制御部11は、落札した電力供出量に応じて、エネルギー貯蔵装置制御群1におけるエネルギー貯蔵装置30の選択処理のサブルーチンを実行する(ステップS103)。制御部11は、落札した電力供出量の制御電力指示量に応じて、エネルギー貯蔵装置制御群2におけるエネルギー貯蔵装置30の選択処理のサブルーチンを実行する(ステップS104)。
【0090】
例えば制御部11は、落札した電力供出量を制御開始時間帯から担当するエネルギー貯蔵装置制御群1をエネルギー貯蔵装置から抽出する。同様にエネルギー貯蔵装置制御群1の後の時間帯を担当するエネルギー貯蔵装置制御群2をエネルギー貯蔵装置30から抽出する。
【0091】
なお、エネルギー貯蔵装置制御群1におけるエネルギー貯蔵装置30の選択処理とエネルギー貯蔵装置制御群2におけるエネルギー貯蔵装置30の選択処理とは、同一のサブルーチンにより実現される。なお、エネルギー貯蔵装置30の選択処理のサブルーチンに関しては後述する。
【0092】
制御部11は、時計部17を介して、落札した電力供出量の制御電力指示量を制御開始に達した場合、選択したエネルギー貯蔵装置制御群1の各エネルギー貯蔵装置30に電力供出量の指示を通信部13により送信する(ステップS105)。電力供出量の指示には、各エネルギー貯蔵装置30に電力を供出すべき電力量等が含まれる。
【0093】
選択されたエネルギー貯蔵装置30は、制御装置10から送信された電力供出量の指示を受信する(ステップS201)。エネルギー貯蔵装置30は、電力供出量の指示に応じて、需給調整制御装置20を経由して最大定格出力で電力を放電する(ステップS202)。各エネルギー貯蔵装置30が最大定格出力で電力を供給することにより、各エネルギー貯蔵装置30は電力損失を最小化し最大効率で制御することができる。
【0094】
このとき、落札した電力供出量に対して正しく制御範囲になっているように時間継続して制御する必要がある。例えば
図5の三次調整力2においては、制御電力指示が30分ごとに変化し、その制御電力指示量に対して±10%以内に制御し続ける必要がある。制御装置10の制御部11は、現時点での各エネルギー貯蔵装置30放電電力の総和電力(総電力)を計算し、計算した総電力が落札した電力供出量の制御範囲内であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0095】
制御部11は、総電力が制御範囲内であると判定した場合(ステップS106でYES)、後述するステップS111の処理に遷移する。制御部11は、総電力が制御範囲内でないと判定した場合(ステップS106でNO)、計算した総電力が調整力範囲の上限を超えたか否かを判定する(ステップS107)。制御部11は、総電力が調整力範囲の上限を超えたと判定した場合(ステップS107でYES)、エネルギー貯蔵装置制御群1の最大定格出力で電力を供給するエネルギー貯蔵装置30の台数を削減し(ステップS110)、後述するステップS111の処理に遷移する。
【0096】
制御部11は、総電力が調整力範囲の上限を超えていないと判定した場合(ステップS107でNO)、計算した総電力が調整力範囲の下限を超えたか否かを判定する(ステップS108)。制御部11は、総電力が調整力範囲の下限を超えたと判定した場合(ステップS108でYES)、エネルギー貯蔵装置制御群1に属していないエネルギー貯蔵装置30から、削減した電力量と同じ電力出力できるエネルギー貯蔵装置30の台数を増加し(ステップS109)、後述するステップS111の処理に遷移する。
【0097】
制御部11は、総電力が調整力範囲の下限を超えていないと判定した場合(ステップS108でNO)、後述するステップS111の処理に遷移する。なお、ステップS106~S110の制御により制御電力指示に対して正しく制御範囲になっているように繰り返し制御を行う。
【0098】
制御部11は、ステップS102で算出されたエネルギー貯蔵装置制御群1の持続時間が経過する前(例えば、1時間前)であるか否かを判定する(ステップS111)。制御部11は、持続時間が経過する前でないと判定した場合(ステップS111でNO)、待機する。制御部11は、持続時間が経過する前であると判定した場合(ステップS111でYES)、エネルギー貯蔵装置制御群1のすべてのエネルギー貯蔵装置30に放電停止指示を通信部13により送信する(ステップS112)。
【0099】
エネルギー貯蔵装置制御群1の各エネルギー貯蔵装置30は、制御装置10から送信されたエネルギー貯蔵装置制御群1の放電停止指示を受信する(ステップS203)。各エネルギー貯蔵装置30は、電力放電出力を停止する(ステップS204)。
【0100】
制御装置10の制御部11は、通信部13を介して、エネルギー貯蔵装置制御群1から選択された複数のエネルギー貯蔵装置30と、エネルギー貯蔵装置制御群2から選択された複数のエネルギー貯蔵装置30とを切り替える指示を、選択されたエネルギー貯蔵装置制御群2のエネルギー貯蔵装置30に送信する(ステップS113)。
【0101】
エネルギー貯蔵装置制御群1から選択された複数のエネルギー貯蔵装置30と、エネルギー貯蔵装置制御群2から選択されたエネルギー貯蔵装置30はすべての全台数を一斉に切り替えるのではなく、ステップS102で算出された持続時間までに、1台ずつもしくは複数台一定時間間隔で、エネルギー貯蔵装置制御群1のエネルギー貯蔵装置30の放電を停止し、エネルギー貯蔵装置制御群2のエネルギー貯蔵装置30を待機または停止から放電に段階的に切り替えても良い。
【0102】
選択されたエネルギー貯蔵装置制御群2のエネルギー貯蔵装置30は、制御装置10から送信されたエネルギー貯蔵装置制御群2への切替指示を受信する(ステップS301)。切替指示には、各エネルギー貯蔵装置30に充放電すべき出力電力量等が含まれる。エネルギー貯蔵装置30は、電力放電指示に応じて、需給調整制御装置20を経由して最大定格出力で電力を放電する(ステップS302)。各エネルギー貯蔵装置30が最大定格出力で電力を供給することにより、各エネルギー貯蔵装置30は電力損失を最小化し最大効率で制御することができる。
【0103】
エネルギー貯蔵装置制御群2の制御電力量は、落札した電力供出量に対して制御電力指示が出され、その指示量に対して正しく制御範囲になっているように時間継続して制御する必要がある。例えば
図5の三次調整力2においては、制御電力指示が30分ごとに変化し電力制御指示量に対して±10%以内に制御し続ける必要がある。制御装置10の制御部11は、現時点での各エネルギー貯蔵装置30放電電力の総和電力を計算し、計算した総電力が落札した電力供出量の制御範囲内であるか否かを判定する(ステップS114)。
【0104】
制御部11は、総電力が制御範囲内であると判定した場合(ステップS114でYES)、後述するステップS119の処理に遷移する。制御部11は、総電力が制御範囲内でないと判定した場合(ステップS114でNO)、計算した総電力が調整力範囲の上限を超えたか否かを判定する(ステップS115)。制御部11は、総電力が調整力範囲の上限を超えたと判定した場合(ステップS115でYES)、エネルギー貯蔵装置制御群2の最大定格出力で電力を供給するエネルギー貯蔵装置30の台数を削減し(ステップS118)、後述するステップS119の処理に遷移する。
【0105】
制御部11は、総電力が調整力範囲の上限を超えていないと判定した場合(ステップS115でNO)、計算した総電力が調整力範囲の下限を超えたか否かを判定する(ステップS116)。制御部11は、総電力が調整力範囲の下限を超えたと判定した場合(ステップS116でYES)、エネルギー貯蔵装置制御群2に属していないエネルギー貯蔵装置30から、削減した電力量と同じ電力出力できるエネルギー貯蔵装置30の台数を増加し(ステップS117)、後述するステップS119の処理に遷移する。
【0106】
制御部11は、総電力が調整力範囲の下限を超えていないと判定した場合(ステップS116でNO)、後述するステップS119の処理に遷移する。なお、ステップS114~S118の制御により制御電力指示に対して正しく制御範囲になっているように繰り返し制御を行う。
【0107】
制御装置10の制御部11は、調整力市場の電力供給継続時間(制御可能な最大継続時間)が経過する前(例えば、三次調整力2では3時間)であるか否かを判定する(ステプS119)。例えば、調整力市場の三次調整力2は制御継続時間が3時間となっており、管理制御装置70から制御装置10の通信部13により電力供給開始および終了時刻を記憶部12に格納し、制御プログラム1Pによって制御部11に制御信号が送られる。この管理制御装置70から終了時刻になったどうかを判定する。
【0108】
制御部11は、継続時間が経過する前と判定した場合(ステップS119でNO)、待機する。制御部11は、継続時間が経過した判定した場合(ステップS119でYES)、エネルギー貯蔵装置制御群2に接続している複数のエネルギー貯蔵装置30に当該エネルギー貯蔵装置制御群2の電力停止指示を通信部13により送信する(ステップS120)。
【0109】
エネルギー貯蔵装置制御群2に接続されている各エネルギー貯蔵装置30は、制御装置10から送信された当該エネルギー貯蔵装置制御群2の電力停止指示を受信する(ステップS303)。各エネルギー貯蔵装置30は、受信した電力停止指示に応じて、電力放電出力を停止する(ステップS304)。
【0110】
図12は、エネルギー貯蔵装置制御群を抽出する処理のサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
図12は、エネルギー貯蔵装置制御群1及びエネルギー貯蔵装置制御群2のエネルギー貯蔵装置30を選択するステップS103およびステップS104の処理のサブルーチンの処理手順を示す。
【0111】
制御装置10の制御部11は、エネルギー貯蔵装置30の需給調整制御装置20を経由して、複数のエネルギー貯蔵装置30から、1つのエネルギー貯蔵装置30を取得する(ステップS11)。制御部11は、取得したエネルギー貯蔵装置30の最大出力定格電力と残電力容量を取得する(ステップS12)。制御部11は、取得したエネルギー貯蔵装置30の出力電力及び電力容量を累積する(ステップS13)。
【0112】
制御部11は、エネルギー貯蔵装置30の最大出力定格電力を累積した出力電力の累積値が落札した電力供出量以上であるか否かを判定する(ステップS14)。制御部11は、累積値が落札した電力供出量未満であると判定した場合(ステップS14でNO)、ステップS11の処理に戻る。制御部11は、累積値が落札した電力供出量以上であると判定した場合(ステップS14でYES)、対象となるすべてのエネルギー貯蔵装置30を取得する(ステップS15)。制御部11は、取得したエネルギー貯蔵装置30の蓄電容量の累積総量を算出する(ステップS16)。制御部11は、エネルギー貯蔵装置30の選択処理のサブルーチンを終了してリターンする。
【0113】
本実施形態によると、エネルギー貯蔵装置制御群1およびエネルギー貯蔵装置制御群2に含まれるエネルギー貯蔵装置30が最大定格出力で調整力電力として供給する。エネルギー貯蔵装置30を落札した電力供出量に対して管理制御装置70より制御電力指示量に対応した電力を必要な台数のエネルギー貯蔵装置30だけを最大効率の最大定格出力で出力させて台数切り替え制御することにより、エネルギー貯蔵装置30の電力損失は最小となる。従って、エネルギー貯蔵装置30を利用した電力ロスが最も少ないアグリゲータ制御システムを提供できる。
【0114】
本実施形態によると、エネルギー貯蔵装置制御群1に含まれるエネルギー貯蔵装置30と、エネルギー貯蔵装置制御群2に含まれるエネルギー貯蔵装置30との切り替えを段階的に行うことにより、供給する電力の出力にスパイク状の変動を防止することが可能となる。
【0115】
(実施形態2)
実施形態2は、エネルギー貯蔵装置制御群1だけを用いて複数の最大定格出力で放電するエネルギー貯蔵装置30の台数を切り替えて制御することで需給調整される調整総電力に対応する制御を実現する形態に関する。なお、実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
【0116】
実施形態2に係る制御方法は、需給調整制御装置20の制御方法であり、需給調整制御装置20を実現する制御装置10により実行される制御方法である。
【0117】
本実施形態2の制御方法において、制御装置10は、複数のエネルギー貯蔵装置30によって需給調整される調整総電力に対して、最大定格放電出力で各エネルギー貯蔵装置30の台数を制御する。制御装置10は、当該エネルギー貯蔵装置30の状態情報に基づいて、最大定格放電出力の制御する台数を算出し、最大定格出力で放電指示を送信する。状態情報は、例えばエネルギー貯蔵装置30の定格容量、残電力容量、温度、電圧、設置環境、または、エネルギー貯蔵装置30に異常が起きているか否かを示す異常情報等を含む。
【0118】
制御装置10は、エネルギー貯蔵装置30の最大定格放電出力の総和電力を測定算出し、調整総電力の制御範囲にあるかを判定する。制御装置10は、制御範囲の上限を超える場合、最大定格放電出力のエネルギー貯蔵装置30の制御台数を再計算し台数を減らし再度エネルギー貯蔵装置に指示を送信する。制御装置10は、制御範囲の下限を超える場合、制御台数を再計算し最大定格放電出力のエネルギー貯蔵装置30の台数を増加し再度エネルギー貯蔵装置に指示を送信する。
【0119】
図13は、需給調整制御装置20の動作の一例を示すフローチャートである。制御装置10の制御部11は、例えば記憶部12に記憶されている電力供給予定量テーブルから、管理装置からの落札した電力供給量(調整力総電力)を取得する(ステップS131)。制御部11は、取得した電力供給量に基づき、調整力総電力に対するエネルギー貯蔵装置台数、及び制御可能な最大持続時間を算出する(ステップS132)。例えば、電力供給量に対して制御する各エネルギー貯蔵装置30の最大定格出力の総和を計算し電力供給量に等しくなる台数を算出する。
【0120】
制御部11は、複数のエネルギー貯蔵装置30からエネルギー貯蔵装置制御群1のエネルギー貯蔵装置を選択するサブルーチンを実行する(ステップS133)。例えば制御部11は、落札した電力供出量を制御開始時間帯から担当するエネルギー貯蔵装置制御群1をエネルギー貯蔵装置から抽出する。
【0121】
制御部11は、時計部17を介して、落札した電力供出量の制御電力指示量を制御開始に達した場合、選択したエネルギー貯蔵装置制御群1の各エネルギー貯蔵装置30に最大定格出力で電力供出量の指示を通信部13により送信する(ステップS134)。
【0122】
選択されたエネルギー貯蔵装置30は、制御装置10から送信された電力供出量の指示を受信する。エネルギー貯蔵装置30は、電力供出量の指示に応じて、需給調整制御装置20を経由して最大定格出力で電力を供給(放電)する。各エネルギー貯蔵装置30が最大定格出力で電力を供給することにより、各エネルギー貯蔵装置30は電力損失を最小化し最大効率で制御することができる。
【0123】
このとき、落札した電力供出量に対して正しく制御範囲になっているように時間継続して制御する必要がある。例えば
図5の三次調整力2においては、制御電力指示が30分ごとに変化し、その制御電力指示量に対して±10%以内に制御し続ける必要がある。コンピュータの制御部11は、現時点での各エネルギー貯蔵装置30放電電力の総和電力(総電力)を計算し、計算した総電力が落札した電力供出量の制御範囲内であるか否かを判定する(ステップS135)。
【0124】
制御部11は、総電力が制御範囲内であると判定した場合(ステップS135でYES)、後述するステップS140の処理に遷移する。制御部11は、総電力が制御範囲内でないと判定した場合(ステップS135でNO)、計算した総電力が調整力範囲の上限を超えたか否かを判定する(ステップS136)。制御部11は、総電力が調整力範囲の上限を超えたと判定した場合(ステップS136でYES)、エネルギー貯蔵装置制御群1の最大定格出力で電力を供給するエネルギー貯蔵装置30の台数を削減し(ステップS139)、後述するステップS140の処理に遷移する。
【0125】
制御部11は、総電力が調整力範囲の上限を超えていないと判定した場合(ステップS136でNO)、計算した総電力が調整力範囲の下限を超えたか否かを判定する(ステップS137)。制御部11は、総電力が調整力範囲の下限を超えたと判定した場合(ステップS137でYES)、エネルギー貯蔵装置制御群1に属していないエネルギー貯蔵装置30から、削減した電力量と同じ電力出力できるエネルギー貯蔵装置30の台数を増加し(ステップS138)、後述するステップS140の処理に遷移する。
【0126】
制御部11は、総電力が調整力範囲の下限を超えていないと判定した場合(ステップS137でNO)、後述するステップS140の処理に遷移する。なお、ステップS135~S139の制御により制御電力指示に対して正しく制御範囲になっているように繰り返し制御を行う。
【0127】
前記エネルギー貯蔵装置制御群1で抽出されたエネルギー貯蔵装置30は、すべて同じ最大定格出力または蓄電容量を持っていても良いし、異なる最大定格出力または蓄電容量を持っていてもよい。
【0128】
前記エネルギー貯蔵装置制御群1で抽出されたエネルギー貯蔵装置30は、例えば異なる最大定格出力または蓄電容量を持っている場合、最大定格出力で放電するエネルギー貯蔵装置30の継続放電時間は、そのエネルギー貯蔵装置30の個体の充電されている電力容量に依存し、一般的にはランダムな継続時間となる。
【0129】
このため、前記エネルギー貯蔵装置制御群1で抽出されたエネルギー貯蔵装置30は、需給調整力市場における継続時間の内、ランダムな時間でエネルギー貯蔵装置30の電力容量がゼロとなり、落札した電力供出量の制御範囲に入らなくなる。
【0130】
エネルギー貯蔵装置制御群1の制御電力量は、落札した電力供出量に対して制御電力指示が出され、その指示量に対して正しく制御範囲になっているように、調整力範囲の上限超える場合、エネルギー貯蔵装置制御群1の最大定格出力で電力を供給するエネルギー貯蔵装置30の台数を削減する。同様に調整力範囲の下限超える場合、エネルギー貯蔵装置制御群1に属さない最大定格出力で電力を供給するエネルギー貯蔵装置30の台数を追加する。これらの制御により制御電力指示に対して正しく制御範囲になっているように繰り返し制御を行う。
【0131】
前述のエネルギー貯蔵装置制御群1のエネルギー貯蔵装置30の削減または追加は前述したようにランダムな時間タイミングで行われるため、実施例1で説明したエネルギー貯蔵装置制御群1とエネルギー貯蔵装置制御群2とを同時に切り替えることによる時刻ずれにより発生する異常な電力パルスは発生しない。
【0132】
制御装置10の制御部11は、調整力市場の電力供給継続時間が経過する前(例えば、三次調整力2における3時間)であるか否かを判定する(ステップS140)。例えば、調整力市場の三次調整力2における制御継続時間が3時間である場合、管理制御装置70から制御装置10の通信部13により電力供給開始および終了時刻を記憶部12に格納し、制御プログラム1Pによって制御部11に制御信号が送られる。この管理制御装置70から終了時刻になったどうかを判定する。
【0133】
制御部11は、継続時間が経過していないと判定した場合(ステップS140でNO)、待機する。制御部11は、継続時間が経過した判定した場合(ステップS140でYES)、エネルギー貯蔵装置制御群1に接続している複数のエネルギー貯蔵装置30にエネルギー貯蔵装置制御群1の放電停止指示を通信部13により送信し(ステップS141)、処理を終了する。
【0134】
エネルギー貯蔵装置制御群1に接続されている複数のエネルギー貯蔵装置30は、制御装置10から送信された放電停止指示を受信し、電力放電出力を停止する。
【0135】
本実施形態2によると、エネルギー貯蔵装置制御群1に含まれるエネルギー貯蔵装置30が最大定格出力で調整力電力として供給する。エネルギー貯蔵装置30を落札した電力供出量に対して管理制御装置70より制御電力指示量に対応した電力を必要な台数のエネルギー貯蔵装置30だけを最大効率の最大定格出力で出力させて台数切り替え制御することにより、エネルギー貯蔵装置30の電力損失は最小となる。従って、エネルギー貯蔵装置30を利用した電力ロスが最も少ないアグリゲータ制御システムを提供できる。
【0136】
本実施形態2によると、エネルギー貯蔵装置制御群1に含まれるエネルギー貯蔵装置30の切り替えは時間軸に対してランダムに行われるため、供給する電力の出力に制御指示の時刻ずれによって生じるスパイク状の変動を防止することが可能となる。
【0137】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0138】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0139】
10 アグリゲータ制御装置(制御装置)
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 表示部
16 読取部
17 時計部
1P 制御プログラム
1a 可搬型記憶媒体
1b 半導体メモリ
20 需給調整制御装置
30 エネルギー貯蔵装置(蓄電池)
32 系統用コンテナエネルギー貯蔵装置
34 アグリゲータエネルギー貯蔵装置
36 大口需要家エネルギー貯蔵装置
38 小口需要家エネルギー貯蔵装置
50 ネットワーク
52 インターネット
54 専用回線
60 発電装置
62 火力発電所
64 再生可能エネルギー発電所
70 管理制御装置