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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070102
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240515BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240515BHJP
   A61B 6/40 20240101ALI20240515BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20240515BHJP
   A61B 6/08 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 360B
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
A61B6/08 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180492
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】政橋 順史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】酒井 泰
(72)【発明者】
【氏名】菅原 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】石井 誠
(72)【発明者】
【氏名】小谷 篤司
(72)【発明者】
【氏名】宗塚 則夫
(72)【発明者】
【氏名】屋代 正二
(72)【発明者】
【氏名】小高 達昭
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093AA26
4C093CA16
4C093EC02
4C093EC03
4C093EC13
4C093EC15
4C093EC33
4C093EE16
4C093FA15
4C093FA32
4C093FF28
4C093FF35
4C093FF37
(57)【要約】
【課題】長尺撮影における複数の撮影範囲の設定を容易且つ適切に行なうこと。
【解決手段】実施形態に係るX線診断装置は、X線を照射するX線発生器と、第1方向に平行な検出面を有し、前記第1方向と、前記第1方向に直交し且つ前記検出面に平行な第2方向とに移動可能なX線検出器と、参照情報に基づいて、連続した複数の撮影範囲を設定する撮影条件設定部と、前記複数の撮影範囲に対して前記X線検出器を順次移動させつつ前記X線発生器からX線を照射させる撮影制御部と、前記X線検出器が前記X線を検出した検出信号に基づいて、前記複数の撮影範囲それぞれのX線画像を生成する画像生成部とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線発生器と、
第1方向に平行な検出面を有し、前記第1方向と、前記第1方向に直交し且つ前記検出面に平行な第2方向とに移動可能なX線検出器と、
参照情報に基づいて、連続した複数の撮影範囲を設定する撮影条件設定部と、
前記複数の撮影範囲に対して前記X線検出器を順次移動させつつ前記X線発生器からX線を照射させる撮影制御部と、
前記X線検出器が前記X線を検出した検出信号に基づいて、前記複数の撮影範囲それぞれのX線画像を生成する画像生成部と
を備える、X線診断装置。
【請求項2】
前記撮影条件設定部は、前記参照情報として、被検体の検査対象部位における前記第1方向の上端を前記第2方向における略中央に含む第1の撮影範囲と、前記検査対象部位における前記第1方向の下端を前記第2方向における略中央に含む第2の撮影範囲とを設定し、前記第1の撮影範囲と前記第2の撮影範囲とを接続する少なくとも1つの第3の撮影範囲を設定することにより、前記複数の撮影範囲を設定する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記撮影条件設定部は、前記第3の撮影範囲の候補を複数設定し、当該複数の候補の中からユーザが選択した候補を、前記第3の撮影範囲として設定する、請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記撮影条件設定部は、前記候補ごとに撮影範囲の数を設定する、請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記参照情報は、被検体を撮影した光学画像であり、
前記撮影条件設定部は、前記光学画像から推定される前記被検体の検査対象部位の位置に基づいて、前記複数の撮影範囲を設定する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記参照情報は、被検体の検査対象部位における前記第1方向の一端を含むように設けられた第1の撮影範囲を対象として収集された端部X線画像であり、
前記撮影条件設定部は、前記端部X線画像に基づいて、前記被検体の検査対象部位のうち当該端部X線画像に含まれない部分の位置を推定することにより、前記第1の撮影範囲に接続される少なくとも1つの撮影範囲を設定して、前記複数の撮影範囲を設定する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記複数の候補を表示部に表示させる出力部を備え、
前記撮影条件設定部は、前記表示部に表示された前記複数の候補の中から、当該表示部を参照したユーザにより選択された候補を、前記第3の撮影範囲として設定する、請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記複数の候補を、前記被検体を撮影した光学画像に重畳表示させる、請求項7に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記撮影条件設定部は、前記複数の候補を、前記被検体に対して投影し、当該投影を参照したユーザにより選択された候補を、前記第3の撮影範囲として設定する、請求項3に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置が備えるX線検出器の大きさは有限であり、1回のX線照射で撮影することのできる撮影範囲の大きさも有限である。このため、検査対象部位によっては一回のX線照射でその全体を撮影できない場合がある。例えば、背骨や下肢などが検査対象部位となる場合、検査対象部位が撮影範囲のサイズを超えてしまう場合がある。
【0003】
検査対象部位が大きいケースでもその全体を観察することを可能にする技術として、長尺撮影が知られている。長尺撮影では、連続した複数の撮影範囲を設定して複数のX線画像を撮影し、これらX線画像を合成することで、検査対象部位が大きいケースでもその全体が現れたX線画像を提供することを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-198375号公報
【特許文献2】特開2015-47194号公報
【特許文献3】特開平7-136148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、長尺撮影における複数の撮影範囲の設定を容易且つ適切に行なうことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線診断装置は、X線を照射するX線発生器と、第1方向に平行な検出面を有し、前記第1方向と、前記第1方向に直交し且つ前記検出面に平行な第2方向とに移動可能なX線検出器と、参照情報に基づいて、連続した複数の撮影範囲を設定する撮影条件設定部と、前記複数の撮影範囲に対して前記X線検出器を順次移動させつつ前記X線発生器からX線を照射させる撮影制御部と、前記X線検出器が前記X線を検出した検出信号に基づいて、前記複数の撮影範囲それぞれのX線画像を生成する画像生成部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るX線発生器及びX線検出器の移動可能方向を示す図である。
図3A図3Aは、第1の実施形態に係る背骨の一例を示す図である。
図3B図3Bは、第1の実施形態に係る複数の撮影範囲を示す図である。
図3C図3Cは、第1の実施形態に係る複数の撮影範囲の設定方法について説明するための図である。
図3D図3Dは、第1の実施形態に係る長尺撮影画像の一例を示す図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態に係る背骨の一例を示す図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態に係る複数の撮影範囲を示す図である。
図4C図4Cは、第1の実施形態に係る複数の撮影範囲の設定方法について説明するための図である。
図4D図4Dは、第1の実施形態に係る長尺撮影画像の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る複数の撮影範囲の設定方法について説明するための図である。
図6A図6Aは、第2の実施形態に係る第3の撮影範囲の候補の一例である。
図6B図6Bは、第2の実施形態に係る第3の撮影範囲の候補の一例である。
図7A図7Aは、第3の実施形態に係る複数の撮影範囲の設定方法について説明するための図である。
図7B図7Bは、第3の実施形態に係る複数の撮影範囲の設定方法について説明するための図である。
図8図8は、第4の実施形態に係る複数の撮影範囲の設定方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、X線診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
本実施形態では、図1のX線診断装置1を例として説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。X線診断装置1は、レール101、保持装置102、X線発生器103、保持装置104、X線検出器105、X線高電圧装置106、入力インタフェース107、ディスプレイ108、メモリ109及び処理回路110を備える。ディスプレイ108は、表示部の一例である。
【0010】
図1では、床面等を基準とし、鉛直方向をZ方向とする。鉛直方向及びZ方向は、第1方向の一例である。図1に示す通り、X線検出器105は、その検出面がZ方向に平行となるように配置される。また、X方向は、Z方向に直交し、且つ、X線検出器105の検出面に平行な方向である。X方向については、左右方向とも記載する。左右方向及びX方向は、第2方向の一例である。Y方向は、X方向及びZ方向に直交する方向である。X線発生器103からX線検出器105に対するX線の照射は、Y方向と概ね平行な方向に沿って行なわれる。
【0011】
レール101は、Y方向に沿って、検査室の天井に設けられる。保持装置102は、レール101に沿って、Y方向に移動可能である。保持装置102は、X線発生器103を、X方向及びZ方向に移動可能に保持する。
【0012】
X線発生器103は、X線を発生させる装置である。例えば、X線発生器103は、X線管とX線絞りとを備える。X線管は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。具体的には、X線管は、X線高電圧装置106から供給される高電圧を用いて、陰極から放出された熱電子を陽極に向けて加速させて衝突させることにより、X線を発生する。また、X線絞りは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根により照射口を形成する。なお、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材である。X線絞りは、絞り羽根をスライドさせることで、照射口の形状及びサイズを制御し、X線管が発生したX線の照射範囲を絞り込む。
【0013】
保持装置104は、X線検出器105を、X方向及びZ方向に移動可能に保持する。或いは、保持装置104は、X方向に移動可能に構成されるとともに、X線検出器105をZ方向に移動可能に保持してもよい。X線検出器105は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器105は、X線発生器103から照射されて被検体を透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路110へと出力する。X線検出器105は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0014】
即ち、X線発生器103及びX線検出器105は、図2の矢印に示すように、少なくともZ方向及びX方向に移動可能に構成される。X線発生器103及びX線検出器105を移動させるための機構として、図1及び図2ではレール101、保持装置102及び保持装置104を示した。しかしながら、具体的な移動機構について特に限定されるものではなく、X線発生器103及びX線検出器105をZ方向及びX方向に移動させることが可能である限り、任意の変形が可能である。
【0015】
X線高電圧装置106は、処理回路110による制御の下、X線発生器103に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置106は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、高電圧を発生する高電圧発生装置と、管電圧及び管電流及び照射時間の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0016】
入力インタフェース107は、ユーザから各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路110に出力する。例えば、入力インタフェース107は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース107は、処理回路110と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース107は、モーションキャプチャによりユーザからの入力操作を受け付ける回路であっても構わない。一例を挙げると、入力インタフェース107は、トラッカーを介して取得した信号やユーザについて収集された画像を処理することにより、ユーザの体動や視線等を入力操作として受け付けることができる。また、入力インタフェース107は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路110へ出力する電気信号の処理回路も、入力インタフェース107の例に含まれる。
【0017】
ディスプレイ108は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ108は、入力インタフェース107を介してユーザから各種の指示や設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。また、ディスプレイ108は、撮影されたX線画像を表示させる。例えば、ディスプレイ108は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ108は、デスクトップ型でもよいし、処理回路110と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0018】
メモリ109は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ109は、撮影されたX線画像のデータを記憶する。また、メモリ109は、X線診断装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。メモリ109は、X線診断装置1とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0019】
処理回路110は、撮影条件設定機能110a、撮影制御機能110b、画像生成機能110c及び出力機能110dとして機能することにより、X線診断装置1全体の動作を制御する。撮影条件設定機能110aは、撮影条件設定部の一例である。撮影制御機能110bは、撮影制御部の一例である。出力機能110dは、出力部の一例である。例えば、処理回路110は、撮影条件設定機能110aに対応するプログラムをメモリ109から読み出して実行することにより、撮影条件設定機能110aとして機能する。同様にして、処理回路110は、撮影制御機能110b、画像生成機能110c及び出力機能110dとして機能する。
【0020】
例えば、撮影条件設定機能110aは、長尺撮影のための複数の撮影範囲を設定する。
また、撮影制御機能110bは、設定された複数の撮影範囲に対してX線検出器105を順次移動させつつ、X線発生器103からX線を照射させ、検出信号を収集する。また、画像生成機能110cは、収集された検出信号に基づいて複数の撮影範囲それぞれのX線画像を生成し、生成したX線画像をメモリ109に格納する。また、出力機能110dは、各種情報の出力を制御する。例えば、出力機能110dは、ディスプレイ108における表示を制御する。また、出力機能110dは、ネットワークNWを介してX線画像を外部装置に送信し、保存させてもよい。このような外部装置の例としては、PACS(Picture Archiving and Communication System)のサーバを挙げることができる。
【0021】
図1に示すX線診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ109へ記憶されている。処理回路110は、メモリ109からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路110は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0022】
なお、図1においては単一の処理回路110にて、撮影条件設定機能110a、撮影制御機能110b、画像生成機能110c及び出力機能110dが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路110を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路110が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0023】
また、処理回路110は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路110は、メモリ109から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線診断装置1とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図1に示す各機能を実現する。
【0024】
以上、X線診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、X線診断装置1は長尺撮影を実行する。以下では一例として、検査対象部位が背骨であるケースについて説明する。
【0025】
図3Aは、被検体の背骨を横から示した図である。より具体的には、背骨を矢状面で示した図である。図3Aに示す通り、背骨は、多くの場合、緩やかなS字カーブを描く形状となる。なお、矢状面の画像を撮影する場合、被検体は、X線発生器103とX線検出器105との間の位置に、X線発生器103から見て被検体が右又は左を向くように配置される。図3Aは、X線発生器103から見て被検体が左(即ち、+X方向)を向いた状態で撮影されるケースを示す。
【0026】
図3Aの背骨を長尺撮影する場合、例えば図3Bに示すように、3つの撮影範囲(撮影範囲R11、撮影範囲R12及び撮影範囲R13)が設定される。なお、図3Bでは、説明のため、背骨に撮影範囲を重ねて示すが、撮影範囲を設定する段階では背骨のX線画像は未だ得られていない。例えば、X線診断装置1は、被検体の体表面又は衣服の上に、撮影範囲を示す可視光をレーザ照射することで、設定した撮影範囲を医師等のユーザに対して示すことができる。
【0027】
より具体的には、まず、図3Cの左図に示すように、背骨におけるZ方向の上端を含むように撮影範囲R11が設定される。例えば、X線診断装置1は、撮影範囲を示す可視光を被検体に対してレーザ照射する。例えば、X線発生器103に光源が設けられ、当該光源から撮影範囲を示す可視光をレーザ照射する。この場合、X線発生器103の位置を動かすことで、撮影範囲の位置を調整することができる。たとえば、医師等のユーザは、被検体を目視して背骨の位置を推定しつつ、入力インタフェース107を介してX線発生器103の位置を動かすことにより、背骨の上端を含むように撮影範囲R11の位置を決定する。
【0028】
同様にして、医師等のユーザは、背骨におけるZ方向の下端を含むように撮影範囲R12を設定する。その後、撮影範囲R11と撮影範囲R12とを接続するように、撮影範囲R13が設定される。撮影範囲R13は、医師等のユーザが設定してもよいし、装置側で自動設定してもよい。図3B及び図3Cに示したように、撮影範囲R11、撮影範囲R12及び撮影範囲R13は、連続した複数の撮影範囲である。
【0029】
撮影範囲の設定後、X線診断装置1は、撮影範囲R11、撮影範囲R12及び撮影範囲R13それぞれに対してX線検出器105を順次移動させつつX線発生器103からX線を照射させ、撮影範囲それぞれのX線画像を生成する。生成した複数のX線画像は合成され、図3Dに示すような長尺画像が生成される。長尺画像においては、背骨の全体が現れており、医師等のユーザは、背骨の状態を評価したり治療計画を立てたりすることができる。なお、図3Dでは、固定具D1を用いて背骨の治療が行われている。
【0030】
ここで、図3Aにも示した通り、特段の疾患を有さない被検体であっても、背骨は弯曲している。長尺画像に背骨の全体を含ませるためには、医師等のユーザは、弯曲の程度や方向に注意しながら撮影範囲を設定する必要がある。具体的には、ユーザは、撮影範囲R11を設定する段階から、後に設定する撮影範囲R12や撮影範囲R13から背骨がはみ出さないように注意しつつ、撮影範囲R11のX方向の位置を決める必要がある。
【0031】
更に、疾患を有する被検体においては、背骨の弯曲が大きくなる場合がある。一例として、図4Aに後弯症の被検体の背骨を示す。また、図4B及び図4Cに、図3B及び図3Cと同様にして3つの撮影範囲(撮影範囲R21、撮影範囲R22及び撮影範囲R23)を設定したケースを示す。後弯症の場合、X方向に背骨が幅を有するため、注意して撮影範囲の設定を行なっても、図4Dの長尺画像に示す楕円領域のように、背骨が長尺画像からはみ出してしまう場合がある。
【0032】
そこで、実施形態の撮影条件設定機能110aは、背骨におけるZ方向の上端をX方向における略中央に含む第1の撮影範囲と、背骨におけるZ方向の下端をX方向における略中央に含む第2の撮影範囲とを設定し、これら撮影範囲を接続する少なくとも1つの撮影範囲を設定することにより、背骨の弯曲が大きい場合でも、撮影範囲の設定を容易且つ適切に行なうことを可能とする。
【0033】
まず、撮影条件設定機能110aは、例えば図5の左図に示すように、被検体の背骨のZ方向の上端をX方向における略中央に含む撮影範囲R31を設定する。例えば、医師等のユーザは、X線発生器103に設けられた光源からレーザ照射される撮影範囲を示す可視光を参照しながら、入力インタフェース107を介してX線発生器103の位置を動かし、適切な位置で決定の入力操作を行なう。撮影条件設定機能110aは、このようなユーザの入力操作に基づいて、撮影範囲R31を設定することができる。
【0034】
なお、「X方向における略中央」については、図5の左図にも示すように、厳密に中央である必要はない。例えば、撮影条件設定機能110aは、背骨のZ方向の上端が、撮影範囲R31のX方向における両端の「5%」を除く範囲に位置するよう、撮影範囲R31を設定する。また、例えば、撮影条件設定機能110aは、背骨のZ方向の上端をX方向における略中央に含んでいるとユーザが判断した撮影範囲を、撮影範囲R31として設定する。
【0035】
撮影範囲R31の設定に当たってユーザの操作は必要とされるものの、その作業負担は軽減される。具体的には、撮影範囲R31の位置を設定する際、ユーザは、背骨の全体の形状を考慮する必要はなく、その上端の位置のみ考慮すればよい。即ち、撮影範囲R31の設定は、前述した撮影範囲R11や撮影範囲R21を設定する場合と比較して注意する事項が少なく、容易である。
【0036】
次に、撮影条件設定機能110aは、図5の中図に示すように、被検体の背骨のZ方向の下端をX方向における略中央に含む撮影範囲R32を設定する。ここで、撮影範囲R32は、X方向の位置が撮影範囲R31とずれていてもよい。即ち、X線診断装置1においては、X線検出器をZ方向とX方向とに移動可能に構成したことで、X方向にずれた複数の撮影位置を設定することが可能となる。例えば、医師等のユーザは、X線発生器103に設けられた光源からレーザ照射される撮影範囲を示す可視光を参照しながら、入力インタフェース107を介してX線発生器103の位置を動かし、適切な位置で決定の入力操作を行なう。撮影条件設定機能110aは、このようなユーザの入力操作に基づいて、撮影範囲R32を設定することができる。撮影範囲R31及び撮影範囲R32は、参照情報の一例である。
【0037】
次に、撮影条件設定機能110aは、図5の右図に示すように、撮影範囲R31と撮影範囲R32とを接続する撮影範囲R33を設定する。例えば、撮影条件設定機能110aは、矩形状の撮影範囲R31及び撮影範囲R32のそれぞれの対応する頂点を線分で結び、当該線分の中点が頂点となるように、矩形状の撮影範囲R33を設定する。撮影範囲R33は、第3の撮影範囲の一例である。
【0038】
そして、撮影制御機能110bは、複数の撮影範囲に対してX線検出器105を順次移動させつつX線発生器103からX線を照射させる。具体的には、撮影制御機能110bは、まず、撮影範囲R31に対してX線が照射されるように、X線発生器103のZ方向及びX方向の位置を調整する。また、撮影制御機能110bは、撮影範囲R31を透過したX線を検出できる位置に、X線検出器105のZ方向及びX方向の位置を調整する。そして、撮影制御機能110bは、X線発生器103からX線を照射させ、撮影範囲R31の撮影を実行する。同様にして、撮影制御機能110bは、撮影範囲R32及び撮影範囲R33の撮影を実行する。
【0039】
画像生成機能110cは、X線検出器105から出力された検出信号に基づいて、複数の撮影範囲それぞれのX線画像を生成する。また、画像生成機能110cは、複数の撮影範囲それぞれのX線画像を合成して長尺画像を生成する。
【0040】
撮影範囲それぞれの位置座標は既知であるところ、画像生成機能110cは、当該位置座標に基づいて、複数の撮影範囲それぞれのX線画像を合成することができる。但し、撮影中の被検体の体動も想定されるため、画像生成機能110cは、画像認識技術による位置合わせを行なってもよい。例えば、画像生成機能110cは、各X線画像から骨や軟組織等を解剖学的特徴点として抽出し、抽出した特徴点の位置が一致するように、X線画像を合成することができる。
【0041】
図5に示す通り、撮影範囲R31、撮影範囲R32及び撮影範囲R33は、後弯症の背骨を十分に含んだ適切な撮影範囲である。また、撮影範囲を設定するためにユーザの入力操作は必要になるとしても、その入力操作は容易なものである。即ち、撮影範囲R31や撮影範囲R32を設定する際に背骨の全体形状を考慮する必要はなく、背骨の上端又は下端という点のみを考慮して、撮影範囲を設定することが可能である。このように、実施形態のX線診断装置1によれば、長尺撮影における複数の撮影範囲の設定を容易且つ適切に行なうことができる。
【0042】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、撮影範囲R31と撮影範囲R32とを接続する領域(第3の撮影範囲)を設定する方法の変形例について説明する。具体的には、第2の実施形態の撮影条件設定機能110aは、第3の撮影範囲の候補を複数設定し、当該複数の候補の中からユーザが選択した候補を、第3の撮影範囲として設定する。
【0043】
第3の撮影範囲の候補の一例として、図6Aに撮影範囲R34を示し、図6Bに撮影範囲R35を示す。撮影範囲R34は、撮影範囲R33と比較して+X方向及び-Y方向にずれた領域である。また、撮影範囲R35は、撮影範囲R33と比較して-X方向及び+Y方向にずれた領域である。
【0044】
第3の撮影範囲の候補は、撮影範囲R31及び撮影範囲R32と少なくとも一部が重なるように設定される。例えば、撮影条件設定機能110aは、矩形状の撮影範囲R31及び撮影範囲R32のそれぞれの対応する頂点を線分で結び、当該線分の中点が頂点となるように、矩形状の撮影範囲R33を設定する。また、撮影条件設定機能110aは、撮影範囲R33を、所定の方向に所定の距離移動させることで、撮影範囲R34及び撮影範囲R35を設定する。
【0045】
例えば、出力機能110dは、第3の撮影範囲の候補として、撮影範囲R33、撮影範囲R34及び撮影範囲R35をディスプレイ108に表示させる。例えば、出力機能110dは、ディスプレイ108において、撮影範囲R33、撮影範囲R34及び撮影範囲R35を、被検体を撮影した光学画像に重畳表示させる。一例を挙げると、出力機能110dは、光学画像に対して撮影範囲R33、撮影範囲R34及び撮影範囲R35を重畳させた重畳画像を表示させる。別の例を挙げると、出力機能110dは、光学画像に対して撮影範囲R33を重畳させた重畳画像と、光学画像に対して撮影範囲R34を重畳させた重畳画像と、光学画像に対して撮影範囲R35を重畳させた重畳画像とをそれぞれ表示させる。ユーザは入力インタフェース107を介してこれら候補の中から適切な撮影範囲を選択し、撮影条件設定機能110aは、選択された撮影範囲を、第3の撮影範囲として設定する。例えば、ユーザは、被検体を目視して背骨の形状を推定し、図6Aの曲線に示すような形状であると考えれば撮影範囲R34を選択し、図6Bの曲線に示すような形状であると考えれば、撮影範囲R35を選択することができる。いずれかの撮影範囲を選択した後、選択した撮影範囲の位置をユーザが更に調整できることとしてもよい。
【0046】
別の例を挙げると、撮影条件設定機能110aは、第3の撮影範囲の候補として設定した撮影範囲R33、撮影範囲R34及び撮影範囲R35を、例えばプロジェクタを用いて、被検体に投影する。例えば、撮影条件設定機能110aは、撮影範囲R33、撮影範囲R34及び撮影範囲R35のうちいずれかを、ユーザからの入力操作に応じて適宜切り替えながら、被検体に投影する。そして、ユーザは、投影された撮影範囲R33、撮影範囲R34及び撮影範囲R35の中からいずれかを選択し、撮影条件設定機能110aは、選択された撮影範囲を、第3の撮影範囲として設定する。
【0047】
また、第3の撮影範囲の候補ごとに、含まれる撮影範囲の数を変化させることとしてもよい。例えば、図6Bに示すように、撮影範囲R33及び撮影範囲R34と比較して、撮影範囲R35が撮影範囲R31及び撮影範囲R32と重畳する面積は少ない。重畳する面積が少ないほど解剖学的特徴点に基づく位置合わせは難しくなり、長尺画像を合成する処理の精度が低下する場合がある。
【0048】
そこで、撮影条件設定機能110aは、撮影範囲R31及び撮影範囲R32と十分な面積をもって重畳する複数の撮影範囲を、第3の撮影範囲の候補としてもよい。例えば、撮影条件設定機能110aは、撮影範囲R31に十分な面積が重畳する撮影範囲と、当該撮影範囲及び撮影範囲R33に十分な面積が重畳する撮影範囲との2つの範囲を、第3の撮影範囲の候補として設定してもよい。
【0049】
第2の実施形態によれば、複数の候補の中から、第3の撮影範囲をより適切に選択することができる。このためにユーザが行なう操作は、背骨の中央部の大まかな位置を参考に候補の中からいずれかを選択するものであって、背骨の全体形状を考慮する必要はなく、比較的容易なものである。このように、第2の実施形態のX線診断装置1によれば、長尺撮影における複数の撮影範囲の設定を容易、且つ、より適切に行なうことができる。
【0050】
(第3の実施形態)
上述した第1~第2の実施形態では、撮影範囲R31及び撮影範囲R32を参照情報として、連続した複数の撮影範囲を設定する場合について説明した。第3の実施形態では、被検体を撮影した光学画像を参照情報として、連続した複数の撮影範囲を設定する場合について説明する。
【0051】
図7Aは、被検体を撮影した光学画像の一例である。例えば、X線発生器103にカメラが設けられ、当該カメラにより、X線発生器103とX線検出器105との間に位置する被検体の光学画像が撮影される。光学画像には、背中表面の曲線が描出される。
【0052】
ここで、背中表面の曲線と背骨とは、図7A及び図7Bに示すように、概ね平行に走行する。従って、撮影条件設定機能110aは、背中表面の曲線に基づいて、背骨の位置を推定することができる。例えば、撮影条件設定機能110aは、背中表面の曲線を円弧により近似し、中心を維持したまま当該円弧を縮小することで、背骨の位置を推定する。
【0053】
更に、撮影条件設定機能110aは、推定した背骨の位置に基づいて、長尺撮影のための連続した複数の撮影範囲を設定する。例えば、撮影条件設定機能110aは、推定した背骨のZ方向の上端を略中央に含むように図7Aの撮影範囲R41を設定し、推定した背骨のZ方向の下端を略中央に含むように撮影範囲R42を設定する。そして、撮影条件設定機能110aは、撮影範囲R41と撮影範囲R42とを接続するように、撮影範囲R43を設定する。
【0054】
例えば、撮影条件設定機能110aは、推定した背骨状の位置を略中央に含むように撮影範囲R43を設定する。例えば、撮影条件設定機能110aは、解剖学的な特徴点に基づく位置合わせが可能となるよう、撮影範囲R41及び撮影範囲R42と十分な面積が重畳するように撮影範囲R43を設定する。撮影条件設定機能110aは、設定した撮影範囲について、ユーザによる修正を受け付けてもよい。
【0055】
上述した第3の実施形態によれば、撮影範囲の設定を自動化することが可能である。また、背骨の弯曲が大きい場合でもはみ出すことの無いように、複数の撮影範囲を設定することができる。このように、第3の実施形態のX線診断装置1によれば、長尺撮影における複数の撮影範囲の設定を容易且つ適切に行なうことができる。
【0056】
(第4の実施形態)
上述した第1~第3の実施形態では、撮影の開始前に、全ての撮影範囲を設定する場合について説明した。第4の実施形態では、撮影の開始前には一部の撮影範囲のみ設定し、残りの撮影範囲は、当該一部の撮影範囲の撮影後に設定するケースについて説明する。
【0057】
まず、撮影条件設定機能110aは、図8の撮影範囲R51を設定する。具体的には、撮影条件設定機能110aは、被検体の背骨におけるZ方向の端部を含むように、撮影範囲R51を設定する。例えば、医師等のユーザは、X線発生器103に設けられた光源からレーザ照射される撮影範囲を示す可視光を参照しながら、入力インタフェース107を介してX線発生器103の位置を動かし、適切な位置で決定の入力操作を行なう。撮影条件設定機能110aは、このようなユーザの入力操作に基づいて、撮影範囲R51を設定することができる。
【0058】
次に、撮影制御機能110bは、撮影範囲R51の撮影を行なう。即ち、撮影制御機能110bは、撮影範囲R51に対してX線発生器103からX線を照射させるとともに、撮影範囲R51を透過したX線をX線検出器105により検出させる。また、画像生成機能110cは、X線検出器105から出力された検出信号に基づいて、撮影範囲R51のX線画像を生成する。撮影範囲R51のX線画像は、端部X線画像の一例である。
【0059】
次に、撮影条件設定機能110aは、撮影範囲R51のX線画像に現れた背骨の形状を抽出し、抽出した形状から、撮影範囲R51の外の背骨の形状を推定する。例えば、撮影条件設定機能110aは、撮影範囲R51のX線画像に現れた背骨の形状を円弧により近似して、図8の-Z方向に拡張する。また、例えば、撮影条件設定機能110aは、過去に撮影された他の患者の背骨全体の長尺画像の中から、撮影範囲R51のX線画像に現れた背骨の形状とマッチするものを選出することにより、撮影範囲R51の外の背骨の形状を推定する。
【0060】
そして、撮影条件設定機能110aは、推定した形状に従い、撮影範囲R51と一部が重複する撮影範囲R52を設定する。例えば、背骨が位置すると推定した位置が中央となるように、かつ、十分解剖学的な特徴点に基づく位置合わせが可能となるよう、撮影範囲R51と十分な面積が重畳するように、撮影範囲R52を設定する。
【0061】
撮影範囲R52を設定した後は、例えば背骨の全体が撮影されるまで、撮影と撮影範囲の設定とを繰り返すことができる。即ち、撮影範囲R52を設定した後、撮影制御機能110bは撮影範囲R52の撮影を行ない、画像生成機能110cは、撮影範囲R52のX線画像を生成する。撮影条件設定機能110aは、撮影範囲R52のX線画像に現れた背骨の形状に基づいて、撮影範囲R52と一部が重複する撮影範囲を更に設定する。
【0062】
上述した第4の実施形態によれば、撮影範囲R51の設定時にはユーザの操作を要するとしても、残りの撮影範囲については自動で設定することができる。また、撮影範囲R51の設定時には背骨の全体形状を考慮する必要はなく、背骨の一端という点のみを考慮すればよいため、撮影範囲R51の設定は容易である。更に、背骨の弯曲が大きい場合でもはみ出すことの無いように、複数の撮影範囲を設定することができる。このように、実施形態のX線診断装置1によれば、長尺撮影における複数の撮影範囲の設定を容易且つ適切に行なうことができる。
【0063】
(第5の実施形態)
上述した実施形態の他、種々の変形を加えて実施されてよいものである。
【0064】
例えば、上述した実施形態では、X線発生器103を、Z方向及びX方向に移動可能に構成するものとして説明したが、X線発生器103の位置は固定であってもよい。
【0065】
X線発生器103の位置を固定する場合、撮影制御機能110bは、例えば、設定された撮影範囲に対してX線が照射されるように、X線発生器103の角度を変化させてもよい。具体的には、撮影制御機能110bは、X線管におけるX線焦点の位置に対する照射口の位置を変化させることにより、照射角度を変化させ、設定された撮影範囲に対してX線を照射させてもよい。
【0066】
別の例を挙げると、撮影制御機能110bは、設定された撮影範囲に対してX線が照射されるように、X線発生器103におけるX線絞りを制御してもよい。例えば、撮影制御機能110bは、絞り羽根をスライド移動させ、絞り羽根により形成される照射口の位置を動かすことにより、設定された撮影範囲に対してX線を照射させてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、被検体を横から撮影し、矢状面のX線画像を収集する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば被検体を正面から撮影し、冠状面のX線画像を収集する場合についても同様に適用が可能である。この場合、例えば背骨の側弯症の診断に用いる長尺画像を収集することができる。
【0068】
また、上述した実施形態では、検査対象部位が背骨であるケースについて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、被検体の下肢を対象とする検査においても、同様に適用することが可能である。
【0069】
また、上述した実施形態では、図1に示したようにX線発生器103及びX線検出器105を配置し、立位又は座位の被検体を撮影するケースについて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、寝台の上に横たわった臥位の被検体を対象とする検査においても、同様に適用することが可能である。この場合、例えば寝台の長手方向(即ち、被検体の体軸方向)が第1方向となる。即ち、X線検出器105は、寝台の長手方向に平行な検出面を有し、当該長手方向と、当該長手方向に直交し且つ検出面に平行な方向とに移動可能に構成される。
【0070】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics PROCESSING Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0071】
また、これまで、単一のメモリが処理回路の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリを分散して配置し、処理回路は、個別のメモリから対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0072】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0073】
また、上述した実施形態で説明した方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0074】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、長尺撮影における複数の撮影範囲の設定を容易且つ適切に行なうことができる。
【0075】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
1:X線診断装置
101:レール
102:保持装置
103:X線発生器
104:保持装置
105:X線検出器
106:X線高電圧装置
107:入力インタフェース
108:ディスプレイ
109:メモリ
110:処理回路
110a:撮影条件設定機能
110b:撮影制御機能
110c:画像生成機能
110d:出力機能
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8