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  • 特開-耐火物の築造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070109
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】耐火物の築造方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/16 20060101AFI20240515BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F27D1/16 Q
F27D1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180506
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳
(72)【発明者】
【氏名】中村 善幸
(72)【発明者】
【氏名】阮 方
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】日野 雄太
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA02
4K051AA06
4K051AB03
4K051AB05
4K051BB02
4K051BB03
4K051LF01
4K051LF06
(57)【要約】
【課題】高い精度で、築造に要する時間を短縮できる耐火物の築造方法が提供される。
【解決手段】耐火物の築造方法は、定型耐火物の施工手段を備えるロボット(17)を用いて定型耐火物(101)及び不定型耐火物(14)を含む耐火物を築造する耐火物の築造方法であって、定型耐火物の高さ方向の厚みを計測し、不定型耐火物の高さ方向の厚みを調整する。耐火物の築造方法は、ロボットが、定型耐火物についての位置、速度、力の制御目標値を任意の割合で合成してモーターを制御する制御手段を備えており、定型耐火物と不定型耐火物との間の応力を調整してよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定型耐火物の施工手段を備えるロボットを用いて定型耐火物及び不定型耐火物を含む耐火物を築造する耐火物の築造方法であって、
前記定型耐火物の高さ方向の厚みを計測し、
前記不定型耐火物の高さ方向の厚みを調整する、耐火物の築造方法。
【請求項2】
前記ロボットが、
前記定型耐火物についての位置、速度、力の制御目標値を任意の割合で合成してモーターを制御する制御手段を備えており、
前記定型耐火物と前記不定型耐火物との間の応力を調整する、請求項1に記載の耐火物の築造方法。
【請求項3】
前記ロボットが、
操作者によって操られるマスターロボットと、作業対象物に対して所定の作業を行うスレーブロボットからなるマスタースレーブシステムの一部又は全部であって、
前記スレーブロボットが前記定型耐火物を施工する際に知覚した反力に応じて反力指令値を出力し、前記マスターロボットが前記反力指令値に基づいて前記操作者に知覚させる反力を生成し、
前記マスターロボットによって生成された反力に応じて前記操作者が前記不定型耐火物にかかる応力を調整できるように構成されている、請求項1又は2に記載の耐火物の築造方法。
【請求項4】
前記定型耐火物と施工済みの定型耐火物との間の応力を、設定された目標値にあわせて調整する、請求項3に記載の耐火物の築造方法。
【請求項5】
前記定型耐火物の重量が30kg/個以上である、請求項4に記載の耐火物の築造方法。
【請求項6】
前記不定型耐火物が2以上の異なる粘度を有する、請求項5に記載の耐火物の築造方法。
【請求項7】
定型耐火物の施工手段を備えるロボットを用いて定型耐火物及び不定型耐火物を含む耐火物を容器内に築造する耐火物の築造方法であって、
前記容器内及び前記定型耐火物の3次元形状を計測し、
前記容器内の高さ方向の前記不定型耐火物の厚みを調整しやすいように前記定型耐火物の施工順序を並び変える、耐火物の築造方法。
【請求項8】
前記容器内の3次元形状が、高さ方向の目標値を設定した上で計測される、請求項7に記載の耐火物の築造方法。
【請求項9】
前記定型耐火物の重量が30kg/個以上である、請求項8に記載の耐火物の築造方法。
【請求項10】
前記不定型耐火物が2以上の異なる粘度を有する、請求項9に記載の耐火物の築造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐火物の築造方法に関する。本開示は、特に製鉄分野で用いられる転炉、トピードカーなどの精錬容器に耐火物を築造する耐火物の築造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶銑容器及び溶鋼容器に用いられる耐火物は、定型耐火物と不定型耐火物に分類することができる。定型耐火物の代表例は耐火レンガである。容器に耐火物を築造する際に、従来、熟練の職人(築炉工)が人手でレンガを施工する。耐火レンガの製造では、耐火性骨材を結合剤で粘結し、混合した坏土を金属製の枠内に充填し、プレス成型することが行われる。不焼成レンガは、プレス成型後に200℃程度で結合剤中の有機成分を揮発させて作られる。また焼成レンガは、プレス成型後に1000℃を超える高温で焼成されて作られる。不焼成レンガの代表例は、取鍋及び転炉でウェアレンガとして用いられるMgO-Cレンガである。また焼成レンガの代表例は、マグネシアレンガ又はハイアルミナレンガである。これら定型レンガは、1種類のレンガを製造する際に、複数のプレス成型用金属製枠を用いるため、金属製枠の大きさによって耐火レンガの大きさが異なる。また、成型後に生じるスプリングバック又は焼成による焼結収縮によってレンガごとの大きさが異なる。築造(築炉)時には、公差の範囲内の製品が使用される。ここで、公差は「JIS Z 8103:2000 計測用語」に示す意味を有する。
【0003】
レンガを複数段に積んで施工する転炉などの容器の場合に、積み上げられたレンガの公差の影響で、高さ方向の上端が揃わなくなることがあり得る。築炉工は、経験に基づいて高さ方向の上端が揃うようにレンガを積み上げる。ただし、人手でレンガを施工するため時間がかかる。また、築炉工の休憩などで作業が停止するロス時間が発生する。
【0004】
築造作業を機械化する方法として、例えば特許文献1は、築造後のウェアレンガの稼働面を基準にしてウェアレンガを築造する工程と、築造されたウェアレンガの背面と鉄皮との隙間にパーマキャスタブルを流し込む工程とを含む、耐火物築造方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-152427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、ロボットアームを用いて築造するため、築造時間については短縮できる。しかし、上記のように、レンガごとの大きさが異なるため、施工を進めていくと積み上げたレンガの高さが場所によって異なる。
【0007】
本開示の目的は、例えば熟練の築炉工のように高い精度で、築造に要する時間を短縮できる耐火物の築造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の一実施形態に係る耐火物の築造方法は、
定型耐火物の施工手段を備えるロボットを用いて定型耐火物及び不定型耐火物を含む耐火物を築造する耐火物の築造方法であって、
前記定型耐火物の高さ方向の厚みを計測し、
前記不定型耐火物の高さ方向の厚みを調整する。
【0009】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記ロボットが、
前記定型耐火物についての位置、速度、力の制御目標値を任意の割合で合成してモーターを制御する制御手段を備えており、
前記定型耐火物と前記不定型耐火物との間の応力を調整する。
【0010】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記ロボットが、
操作者によって操られるマスターロボットと、作業対象物に対して所定の作業を行うスレーブロボットからなるマスタースレーブシステムの一部又は全部であって、
前記スレーブロボットが前記定型耐火物を施工する際に知覚した反力に応じて反力指令値を出力し、前記マスターロボットが前記反力指令値に基づいて前記操作者に知覚させる反力を生成し、
前記マスターロボットによって生成された反力に応じて前記操作者が前記不定型耐火物にかかる応力を調整できるように構成されている。
【0011】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記定型耐火物と施工済みの定型耐火物との間の応力を、設定された目標値にあわせて調整する。
【0012】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記定型耐火物の重量が30kg/個以上である。
【0013】
(6)本開示の一実施形態として、(1)から(5)のいずれかにおいて、
前記不定型耐火物が2以上の異なる粘度を有する。
【0014】
(7)本開示の一実施形態に係る耐火物の築造方法は、
定型耐火物の施工手段を備えるロボットを用いて定型耐火物及び不定型耐火物を含む耐火物を容器内に築造する耐火物の築造方法であって、
前記容器内及び前記定型耐火物の3次元形状を計測し、
前記容器内の高さ方向の前記不定型耐火物の厚みを調整しやすいように前記定型耐火物の施工順序を並び変える。
【0015】
(8)本開示の一実施形態として、(7)において、
前記容器内の3次元形状が、高さ方向の目標値を設定した上で計測される。
【0016】
(9)本開示の一実施形態として、(7)又は(8)において、
前記定型耐火物の重量が30kg/個以上である。
【0017】
(10)本開示の一実施形態として、(7)から(9)のいずれかにおいて、
前記不定型耐火物が2以上の異なる粘度を有する。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、高い精度で、築造に要する時間を短縮できる定型耐火物の築造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、精錬容器に施工した定型耐火物の断面を模式的に示す図である。
図2図2は、ウェアレンガの拡大図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る耐火物の築造方法による施工を説明するための模式図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る耐火物の築造方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る耐火物の築造方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0021】
図1は、精錬容器1に施工した定型耐火物101の断面を模式的に示す図である。精錬容器1は、鉄皮11及び定型耐火物101で構成される。定型耐火物101は、鉄皮11に対して精錬容器1の内側で、高さ方向に複数段に積んで施工される。定型耐火物101は、パーマレンガ12及びウェアレンガ13を含む。パーマレンガ12及びウェアレンガ13のそれぞれは1種類であってよいし、複数種類であってよい。パーマレンガ12及びウェアレンガ13は、不定型耐火物14によって接着される。ここで、高さ方向に垂直で、精錬容器1の内側から外側に向かう方向を奥行方向と称することがある。不定型耐火物14として例えばモルタルが使用されるが、不定型耐火物14はこれに限定されず、スタンプ材、乾粉などであってよい。また、定型耐火物101が不定型耐火物14によって高さ方向に複数段に積んで施工されていれば、精錬容器1の内部に定型耐火物101が施工される場合に限定されない。
【0022】
図2は、ウェアレンガ13の拡大図である。記載の数値(単位:mm)は一例であって、これら値に限定されない。図2の左図はウェアレンガ13の側面を示す。図2の右図はウェアレンガ13の上面を示す。幅の広い(図2の右図で162.5mm)側が、奥行方向で鉄皮11に近いように配置される。つまり、鉄皮11の側が大きく、炉内の側が小さくなるようなテーパがつけられている。ここで、炉内は、転炉などの容器内すなわち精錬容器1内を意味する。ウェアレンガ13は一般に-1%~+1%程度の公差を有している。つまり、ウェアレンガ13は設計値との-1%~+1%程度の違いが一般に許容されており、画一的に多段に積み上げた場合に、高さが場所によって異なる。
【0023】
再び図1を参照すると、本実施形態において定型耐火物101はロボット17を利用して施工される。また、本実施形態のように、さらに計測器16が用いられてよい。
【0024】
ロボット17は定型耐火物101の施工手段を備え、炉内の高さ方向の不定型耐火物14の厚みを調整できる。ロボット17は例えばロボットアームであるが、ロボットアームに限定されない。また施工手段は、特に限定されるものでなく、定型耐火物101を把持し、定型耐火物101を積み上げて、定型耐火物101に不定型耐火物14を塗布し、定型耐火物101に応力を加えることができる手段であればよい。
【0025】
ロボット17は、例えば6軸の垂直多関節ロボットであってよい。ロボットハンド(施工手段の一例)として、2本掴み把持ハンド又は6点式吸着ハンドが用いられてよい。定型耐火物101を把持する場合に、定型耐火物101が損傷しないように、指部にゴム製のパッキン等が使用されてよい。ロボット17のサイズは、精錬容器1のサイズ及び把持する定型耐火物101の重量に合わせて選定すればよい。
【0026】
ロボット17は、例えば機側の操作者によってコントローラーで操作されるものであってよいし、遠隔操作システムの一部又は全部であってよい。例えばロボット17は、操作者によって操られるマスターロボットと、作業対象物に対して所定の作業を行うスレーブロボットからなるマスタースレーブシステムの一部又は全部であってよい。またスレーブロボットは、定型耐火物101を施工する際に生じる反力を知覚する機能があってよい。スレーブロボットが知覚した反力に応じて反力指令値を出力し、マスターロボットが反力指令値に基づいて操作者に知覚させる反力を生成してよい。ロボット17は、マスターロボットによって生成された反力に応じて操作者が不定型耐火物14にかかる応力を調整できるように構成されていてよい。不定型耐火物14にかかる応力の調整は、例えば定型耐火物101と不定型耐火物14との間の応力の調整を含んでよい。ここで、応力によって不定型耐火物14の厚みが変化する。これは、応力がかかることで、これから施工する定型耐火物101と施工済みの定型耐火物101の間にある不定型耐火物14が目地から押し出されることが主な要因である。一般に定型耐火物101を施工する場合に、これから施工する定型耐火物101に不定型耐火物14を予め塗布する「付けとろ作業」が行われる。ただし、これに限定されず、施工済みの定型耐火物101に不定型耐火物14を予め塗布する「敷とろ作業」が行われてよい。不定型耐火物14にかかる応力の調整は、例えば定型耐火物101に塗布する不定型耐火物14の厚みを調整することを含んでよい。また不定型耐火物14にかかる応力の調整は、施工済みの定型耐火物101又は鉄皮11に押し付ける力を調整することを含んでよい。不定型耐火物14の厚みを調整して施工することで、段差なく築造することができる。ここで、厚みとは長さであって、特に高さ方向の長さである。以下、高さ方向についての定型耐火物101、不定型耐火物14などの長さについて、高さ方向の明示を省略して、単に厚みと記載することがある。
【0027】
ロボット17は、定型耐火物101についての位置、速度、力の制御目標値を任意の割合で合成してモーターを制御する制御手段を備えていてよい。制御手段はプロセッサなどの演算装置で実現されてよい。このようにモーターを制御することで、レンガを施工する際のレンガ破損を防止することができる。また、熟練の築炉工のような細やかな動きを再現することができる。例えば、ロボット17は、施工手段の一部としてハンマーを備えてよい。ロボット17は、ハンマーを用いてレンガの上面及び側面をたたくことで、レンガの位置を微修正できる機能を有していてよい。
【0028】
ここで、定型耐火物101の1つの重量は、築炉工が施工しやすいように30kg未満であることが多い。しかし、本実施形態に係る耐火物の築造方法では、ロボット17が施工するため重量に制限がない。つまり、定型耐火物101の重量が30kg/個以上であってよい。ここで、定型耐火物101の大きさは、容器の損傷要因に合わせて決められてよい。例えば化学的な損傷が主要因で、熱応力を原因とする割れが生じない容器などでは、大型の定型耐火物101を使用することによって、目地部分の溶損による損耗を低減することができる。
【0029】
計測器16は、炉内及び定型耐火物101の炉内の高さ方向の厚みを計測する。また計測器16は、施工済みの定型耐火物101が水平になっているかを測定する。計測器16はレーザー式又は白色光干渉式の計測機器であってよい。また、操作者がロボット17を遠隔から操作する場合に、計測器16からの視覚情報(例えば画像)を参考に操作を行ってよい。例えば定型耐火物101の高さを設定された目標値にあわせるために、操作者は、ロボット17を用いて積み上げようとしている定型耐火物101と施工済みの定型耐火物101との間の応力を調整してよい。本実施形態において、計測器16はカメラを含んで構成される。カメラは、奥行き情報が得られる3Dカメラであり得る。計測器16の計測方式は、複数台のカメラを用いて撮影するステレオ方式、パルス光を利用し反射光が戻ってくる時間を計算するToF方式、光の干渉を利用した構造化照明による方式などから選ぶことができる。また、計測器16は3次元測定器又は2Dカメラを用いてよい。
【0030】
図3は、本実施形態に係る定型耐火物101及び不定型耐火物14を含む耐火物の築造方法による施工を説明するための模式図である。例えば特許文献1のような従来技術では、画一的な不定型耐火物14の厚みでウェアレンガ13(定型耐火物101の一具体例)を積み上げる。そのため、図3の左図のように、ウェアレンガ13を多段に積み上げた場合に、高さが場所によって異なっていた。詳細については後述するが、本実施形態に係る定型耐火物101及び不定型耐火物14を含む耐火物の築造方法では、上記のように計測器16によって水平になっているかを測定する処理を実行する。また本実施形態に係る定型耐火物101及び不定型耐火物14を含む耐火物の築造方法では、目標値にあわせるように、定型耐火物101と施工済みの定型耐火物101との間の応力を調整する処理を実行する。このような処理によって、図3の右図のように、ウェアレンガ13の高さを揃えることができる。ここで、本実施形態に係る定型耐火物101及び不定型耐火物14を含む耐火物の築造方法では、少なくとも最上段において定型耐火物101の高さを揃える。また、積み上げられた定型耐火物101の各段において定型耐火物101の高さが揃うことがさらに好ましい。
【0031】
図4は、本実施形態に係る定型耐火物101及び不定型耐火物14を含む耐火物の築造方法の処理を示すフローチャートである。
【0032】
まず計測器16によって炉内計測が実行される(ステップS1)。計測器16は、炉内及び定型耐火物101の炉内の高さ方向の厚みを計測する。定型耐火物101の炉内への運搬は、ホイストクレーン、天井クレーン、手動クレーン、手渡しなど、様々な手法を用いることができる。また、別の例として定型耐火物101は、ロボット17を用いて炉外から炉内へ搬入されて、そのまま施工が実行されてよい。
【0033】
また計測器16によって、炉内及び定型耐火物101の3次元形状が計測されてよい。例えば、公差の範囲内で大きさにばらつきを有する定型耐火物101を大きさによってグループに分け、施工において高さ方向の調整がしやすいように、定型耐火物101の順番を並び替えてよい。つまり、3次元形状の計測結果に基づいて、炉内の高さ方向の不定型耐火物14の厚みを調整しやすいように定型耐火物101の施工順序が並び変えられてよい。
【0034】
ここで、高さガイダンスが作成されてよい(ステップS2)。高さガイダンスは、高さ方向の目標値のガイダンスである。例えばレーザー墨出し器が精錬容器1の内部に設けられていてよい。レーザー墨出し器が、高さガイダンスである水平位置を可視化してよい。ここで、レーザー墨出し器がロボット17に取り付けられており、ロボット17の制御手段が計測器16からの測定データに基づいて高さガイダンスを作成して、レーザー墨出し器に高さガイダンスを表示させてよい。高さガイダンスが作成されない場合に、ステップS2は実行されなくてよい。
【0035】
ロボット17は、操作者によって又は自動で、定型耐火物101を把持する(ステップS3)。
【0036】
ロボット17は、把持した定型耐火物101に不定型耐火物14を塗布する(ステップS4)。
【0037】
ロボット17は、不定型耐火物14を塗布した定型耐火物101を設置する(ステップS5)。つまり、ロボット17は、把持した定型耐火物101を施工済みの定型耐火物101に積み上げる。
【0038】
そして、計測器16によって、炉内及び定型耐火物101の3次元形状が計測される。本実施形態においては、高さガイダンスとして高さ方向の目標値が設定された上で、炉内及び定型耐火物101の3次元形状が計測される。計測器16からの測定データに基づいて、高さガイダンスと定型耐火物101との高さの差が算出されて、高さが許容範囲であるかが判定される(ステップS6)。判定は、例えばロボット17の制御手段によって実行される。また、別の例として、計測器16からの測定データに基づいて操作者が判定を行って、操作者の判定を示す信号が入力手段(例えばキーボード又はマウス)によってロボット17などに出力されてよい。
【0039】
定型耐火物101の高さが許容範囲でない場合に(ステップS6のNo)、ステップS4の処理に戻る。また、定型耐火物101の高さが許容範囲である場合に(ステップS6のYes)、ステップS7の処理に進む。ここで、判定結果に関係なく、可視化された高さガイダンスである水平位置と定型耐火物101の高さとの差分に基づいて、不定型耐火物14の厚みの目標値が算出されて操作者に伝達されてよい。不定型耐火物14の厚みの目標値の伝達機能によって、熟練の築炉工ではない操作者の技能向上と、築造時間の短縮効果が期待できる。
【0040】
定型耐火物101の高さが許容範囲である場合に、ロボット17は、操作者によって又は自動で、定型耐火物101の位置の微調整を行う(ステップS7)。ロボット17は、ステップS5で設置した定型耐火物101に対して力を加えて、定型耐火物101と不定型耐火物14との間の応力を調整することによって、可視化された高さガイダンスに合わせるように微調整を行う。ここで、ステップS6の許容範囲は、ステップS7の微調整で調整可能な厚みに基づいて定められてよい。
【0041】
また、操作者によってロボット17が操作される場合に、設置対象の定型耐火物101を施工済みの定型耐火物101に積み上げる工程及び調整する工程(ステップS5及びステップS7)において、押し付ける力のガイダンスが示されてよい。押し付ける力のガイダンスは、例えば熟練の築炉工の押し付け力、押し付け方向、押し付け時間を記録したデータを学習用データとして、機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて算出されてよい。押し付ける力のガイダンスを示す処理は、ロボット17の制御手段によって実行されてよい。
【0042】
また、設置対象の定型耐火物101に不定型耐火物14を塗布する工程(ステップS4)において、目地の厚みに応じて、2以上の異なる粘度を有する1種類以上の不定型耐火物14が用いられてよい。例えば1種類の不定型耐火物14で水分添加量を変えることで、水分含有量が多く粘度が低い不定型耐火物14と、水分含有量が少なく粘度が高い不定型耐火物14を用意する手法、設計粘度が異なる複数種類の不定型耐火物14を用意する手法などがある。目地の厚みが厚くなる場合には、高い粘度の不定型耐火物14の用いることで、不定型耐火物14が流れずに、その場に留まるようにできる。
【0043】
以下、本開示の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例では、直径が5m、高さが4.5mで、内面形状が概ね軸対象である精錬容器1(取鍋)を対象に、15kg/個の定型耐火物101(レンガ)をロボット17で築造した。築造時間を計測し、施工状況を確認するため、レンガを8段積んだ後に段差があるかが計測された。施工精度(誤差)として、8段目の定型耐火物101の平均高さを基準として、それぞれの定型耐火物101の高さ方向の基準との差の絶対値の平均値が求められた。目標通りの築造が行われた場合に誤差が0mmになる。目標から外れるにつれて正の値の誤差が大きくなる。ここで、操作者は、資格を有する1級築炉工若しくは2級築炉工又は築造作業(築炉作業)の助勢である手許工である。築造(築炉)の熟練度が高い順に並べると、1級築炉工、2級築炉工、手許工となる。
【0045】
表1は実施例の試験条件及び結果を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1では、1級築炉工が炉内に設置されたロボット17の機側で、コントローラーでロボット17を操作する。この際、ロボット17の位置が目視で監視される。ロボット17は、位置を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。施工時間は6hを要した。施工精度(高さの誤差)は2mmである。重量物である定型耐火物101を持ち上げる必要がないため、筋力の疲労を大幅に低減することができる。上部をクレーンが通過する際に、荷物が落下することでケガすることを防ぐために作業を中断し退避したため、作業ができないロス時間が1hあった。
【0048】
実施例2では、1級築炉工が炉内に設置されたロボット17の機側で、マスターアームでロボット17を操作する。この際、ロボット17の位置が目視で監視される。ロボット17は、位置、速度、力を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。その際、操作者である1級築炉工は、施工した際の反力を知覚する。反力を知覚することで、例えば定型耐火物101に不定型耐火物14を塗布する際に、多めに塗布し、水平目地から不定型耐火物14を排出することで高さの調整をすることができる。施工時間は3.5hを要した。施工精度は0.5mmである。上部をクレーンが通過する際に、荷物が落下することでケガすることを防ぐために作業を中断し退避したため、作業ができないロス時間が0.5hあった。
【0049】
実施例3では、1級築炉工が炉内に設置されたロボット17を離れた位置にある操作室から遠隔で、マスターアームでロボット17を操作する。この際、ロボット17の位置がカメラで撮影した画像で監視される。ロボット17は、位置、速度、力を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。その際、操作者である1級築炉工は、施工した際の反力を知覚する。カメラの2次元情報で位置を見誤る場合が生じることで、施工時間は3.5hを要した。施工精度は1mmである。粉塵がない操作室から遠隔で操作することで、築造作業に伴う負担を軽減することができる。
【0050】
実施例4では、1級築炉工が炉内に設置されたロボット17を離れた位置にある操作室から遠隔で、マスターアームでロボット17を操作する。この際、ロボット17の位置がカメラで撮影した画像で監視される。ロボット17は、位置、速度、力を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。その際、操作者である1級築炉工は、施工した際の反力を知覚する。予め炉内の築造状況を計測し高さを算出し、また定型耐火物101の高さを算出することで、その差分で決まる不定型耐火物14の厚みの設計値を操作者に伝えるガイダンス機能が備えられた。施工時間は3hを要した。施工精度は1mmである。ガイダンス機能によって、施工時間の短縮が得られる。
【0051】
実施例5では、1級築炉工が炉内に設置されたロボット17を離れた位置にある操作室から遠隔で、マスターアームでロボット17を操作する。この際、ロボット17の位置がToF方式の3Dカメラで撮影した画像で監視される。ロボット17は、位置、速度、力を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。その際、操作者である1級築炉工は、施工した際の反力を知覚する。施工時間は2.5hを要した。施工精度は0.5mmである。3Dカメラによる立体画像によって、遠隔からでも実際に築造する環境と同等の環境を得ることができる。
【0052】
実施例6では、2級築炉工が炉内に設置されたロボット17を離れた位置にある操作室から遠隔で、マスターアームでロボット17を操作する。この際、ロボット17の位置がToF方式の3Dカメラで撮影した画像で監視される。ロボット17は、位置、速度、力を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。その際、操作者である2級築炉工は、施工した際の反力を知覚する。予め炉内の築造状況を計測し高さを算出し、また定型耐火物101の高さを算出することで、その差分で決まる不定型耐火物14の厚みの設計値を操作者に伝えるガイダンス機能が備えられた。施工時間は2.5hを要した。施工精度は0.5mmである。経験が浅い2級築炉工でも、ガイダンス機能によって、1級築炉工と同等の施工時間、施工精度が得られる。
【0053】
実施例7では、手許工が炉内に設置されたロボット17を離れた位置にある操作室から遠隔で、マスターアームでロボット17を操作する。この際、ロボット17の位置がToF方式の3Dカメラで撮影した画像で監視される。ロボット17は、位置、速度、力を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。その際、操作者である手許工は、施工した際の反力を知覚する。予め炉内の築造状況を計測し高さを算出し、また定型耐火物101の高さを算出することで、その差分で決まる不定型耐火物14の厚みの設計値を操作者に伝えるガイダンス機能が備えられた。また、定型耐火物101を施工する際に押し付ける力(押付力)、位置、時間のガイダンス機能が備えられた。施工時間は2.5hを要した。施工精度は0.5mmである。経験がない手許工でもガイダンス機能によって、1級築炉工と同等の施工時間、施工精度が得られる。
【0054】
実施例8では、1級築炉工が炉内に設置されたロボット17を離れた位置にある操作室から遠隔で、マスターアームでロボット17を操作する。この際、ロボット17の位置がToF方式の3Dカメラで撮影した画像で監視される。ロボット17は、位置、速度、力を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。その際、操作者である1級築炉工は、施工した際の反力を知覚する。予め炉内の築造状況を計測し高さを算出し、また定型耐火物101の高さを算出することで、その差分で決まる不定型耐火物14の厚みの設計値を操作者に伝えるガイダンス機能が備えられた。また、定型耐火物101を施工する際に押し付ける力、位置、時間のガイダンス機能が備えられた。また不定型耐火物14の厚みを厚くすべき場合に不定型耐火物14の粘度を示すガイダンス機能を持たせ、予め準備した2種類の不定型耐火物14を厚みに応じて使い分けることができるようにした。施工時間は2hを要した。施工精度は0.5mmである。
【0055】
実施例9では、手許工が炉内に設置されたロボット17を離れた位置にある操作室から遠隔で、マスターアームでロボット17を操作する。この際、ロボット17の位置がToF方式の3Dカメラで撮影した画像で監視される。ロボット17は、位置、速度、力を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。その際、操作者である手許工は、施工した際の反力を知覚する。予め炉内の築造状況を計測し高さを算出し、また定型耐火物101の高さを算出することで、その差分で決まる不定型耐火物14の厚みの設計値を操作者に伝えるガイダンス機能が備えられた。また、定型耐火物101を施工する際に押し付ける力、位置、時間のガイダンス機能が備えられた。また不定型耐火物14の厚みを厚くすべき場合に不定型耐火物14の粘度を示すガイダンス機能を持たせ、予め準備した2種類の不定型耐火物14を厚みに応じて使い分けることができるようにした。施工時間は2hを要した。施工精度は0.5mmである。経験がない手許工でもガイダンス機能によって、1級築炉工と同等の施工時間、施工精度が得られる。
【0056】
実施例10では、操作者の代わりに学習済みデータを活用し、AIによって自動で操作する方式とする。学習データは、1級築炉工が炉内に設置されたロボット17を離れた位置にある操作室から遠隔で、マスターアームでロボット17を操作した実績データに基づいて作成された。ロボット17の位置はToF方式の3Dカメラで撮影した画像で監視される。ロボット17は、位置、速度、力を制御する機構を持ち、定型耐火物101を把持し、不定型耐火物14を塗布し、所定の位置に施工する。また、AIに対して、施工した際の反力が伝えられる。不定型耐火物14の厚みを厚くすべき場合に調整できるよう予め2種類の不定型耐火物14が準備されている。施工時間は2hを要した。施工精度は0.5mmである。AIでも1級築炉工と同等の施工時間、施工精度が得られる。
【0057】
表2は比較例の試験条件及び結果を示す。
【0058】
【表2】
【0059】
比較例1では、1級築炉工が4人で定型耐火物101の施工を行った。施工時間は12hだった。施工精度は0.5mmだった。比較例2では、2級築炉工が4人で定型耐火物101の施工を行った。施工時間は15hだった。施工精度は2mmだった。比較例3では、手許工が4人で定型耐火物101の施工を行った。施工時間は24hだった。施工精度は5mmだった。
【0060】
比較例1~3はいずれも人間による施工であるため、重筋作業によって連続的に作業できる時間に限りがあり、3hごとに休憩をとる。また、築造作業をする工場は、上部をクレーンが通過する際に、クレーンから荷物が落下し、人間が怪我をする懸念があるため、退避するために作業が中断になるロスが生じる場合もある。合計のロス時間は表2の通りである。
【0061】
以上、比較例との対比からも明らかなように、本実施形態に係る耐火物の築造方法は、高い精度で、築造に要する時間を短縮できる。
【0062】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0063】
1 精錬容器
11 鉄皮
12 パーマレンガ(permanent brick)
13 ウェアレンガ(wear brick)
14 不定型耐火物
16 計測器
17 ロボット
101 定型耐火物
図1
図2
図3
図4