(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070134
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムおよびろ過システム
(51)【国際特許分類】
B01D 25/12 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
B01D25/12 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180546
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】森 一也
(72)【発明者】
【氏名】梅田 尚哉
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA02
4D116AA30
4D116CC02
4D116CC05
4D116CC12
4D116CC22
4D116CC28
4D116CC29
4D116CC30
4D116CC31
4D116CC35
4D116DD06
4D116FF13B
4D116KK05
4D116QA04C
4D116QA04E
4D116QA04F
4D116QA13C
4D116QA13E
4D116QC02
4D116QC03A
4D116QC18C
4D116QC22A
4D116QC26C
(57)【要約】
【課題】圧搾完了の判断の正確性を低コストで向上させる。
【解決手段】情報処理装置(1)は、第1ろ板に設けられた伸縮可能なダイアフラムシートと、第1ろ板と対向するように配置された第2ろ板との間に形成されるろ室内に注入された原液がろ過された残余の固形物を圧搾するように、第1ろ板とダイアフラムシートとの間に形成される圧搾室へ加圧流体を連続的に流入させるフィルタープレス装置において圧搾を管理する。情報処理装置(1)は、圧搾室への加圧流体の流入速度に基づいて固形物の圧搾が進行する度合である圧搾進行度合を算出する算出部(101)を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ろ板に設けられた伸縮可能な伸縮部材と、前記第1ろ板と対向するように配置された第2ろ板との間に形成されるろ室内に注入された原液がろ過された残余の固形物を圧搾するように、前記第1ろ板と前記伸縮部材との間に形成される圧搾室へ加圧流体を連続的に流入させるフィルタープレス装置において圧搾を管理する情報処理装置であって、
前記圧搾室への前記加圧流体の流入速度に基づいて、前記固形物の圧搾が進行する度合である圧搾進行度合を算出する算出部を備えていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
算出された前記圧搾進行度合に基づいて圧搾の完了を判断する判断部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判断部は、算出された前記圧搾進行度合が規定範囲に達すると圧搾の完了を判断することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記流入速度に基づく前記加圧流体の積算流量の変化を直線近似し、近似した直線の傾きを前記圧搾進行度合として算出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記傾きを前記ろ室の容積で除算した値を前記圧搾進行度合として算出することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記ろ室の容積から前記圧搾室に流入した前記加圧流体の体積を減算することにより得られる前記固形物の体積から前記固形物の厚みを推定する厚み推定部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記圧搾進行度合が前記規定範囲外の値を所定時間維持している場合に、前記伸縮部材の破損を推定する破損推定部をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
原液をろ過するとともに、ろ過後の残余の固形物が圧搾されるろ室と、
前記ろ室に設けられ、前記固形物を圧搾するように加圧流体が流入する圧搾室と、
前記加圧流体を前記圧搾室へ連続的に流入させる流入源と、を備えていることを特徴とするろ過システム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための情報処理プログラムであって、各部としてコンピュータを機能させるための情報処理プログラム。
【請求項10】
第1ろ板に設けられた伸縮可能な伸縮部材と、前記第1ろ板と対向するように配置された第2ろ板との間に形成されるろ室内に注入された原液がろ過された残余の固形物を圧搾するように、前記第1ろ板と前記伸縮部材との間に形成される圧搾室へ加圧流体を連続的に流入させるフィルタープレス装置において圧搾を管理する情報処理方法であって、
前記圧搾室への前記加圧流体の流入速度に基づいて、前記固形物の圧搾が進行する度合である圧搾進行度合を算出する算出工程を含んでいることを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレス装置における圧搾を管理する情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタープレスは、固形物と液体とを含有する原液の固液分離を行う装置であり、原液をろ過し、脱水した後、固形物を排出する。装置の運転管理上、脱水の完了をいかにして見極めるかが重要な要素となっている。例えば、特許文献1には、原液濃度とろ液量の計測値とから算出したケーキ厚みおよび含水率がそれぞれの基準値に達した場合、脱水の完了を判断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実験室などでの小規模の装置で行われる少量のろ液量の計測については、比較的正確に行うことができる。しかしながら、生産現場における大規模の装置では、大量のろ液量を安定かつ連続した値として計測、数値化することが困難である。
【0005】
このため、脱水の完了をろ液量に基づいて判断することはやや正確性に欠ける。また、大規模の装置から排出される大量のろ液量を安定かつ連続した値として計測するには、大量のろ液を計量するための大掛かりな装置が必要となり、コストが嵩むという不都合がある。
【0006】
本発明の一態様は、圧搾完了の判断の正確性を低コストで向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、第1ろ板に設けられた伸縮可能な伸縮部材と、前記第1ろ板と対向するように配置された第2ろ板との間に形成されるろ室内に注入された原液がろ過された残余の固形物を圧搾するように、前記第1ろ板と前記伸縮部材との間に形成される圧搾室へ加圧流体を連続的に流入させるフィルタープレス装置において圧搾を管理する情報処理装置であって、前記圧搾室への前記加圧流体の流入速度に基づいて、前記固形物の圧搾が進行する度合である圧搾進行度合を算出する算出部を備えている。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理方法は、第1ろ板に設けられた伸縮可能な伸縮部材と、前記第1ろ板と対向するように配置された第2ろ板との間に形成されるろ室内に注入された原液がろ過された残余の固形物を圧搾するように、前記第1ろ板と前記伸縮部材との間に形成される圧搾室へ加圧流体を連続的に流入させるフィルタープレス装置において圧搾を管理する情報処理方法であって、前記圧搾室への前記加圧流体の流入速度に基づいて、前記固形物の圧搾が進行する度合である圧搾進行度合を算出する算出工程を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、圧搾完了の判断の正確性を低コストで向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態1に係る情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】上記情報処理装置を含むろ過システムの概要を示す図である。
【
図3】上記ろ過システムに含まれるフィルタープレス装置の主要部の構成の一例を示す図である。
【
図4】上記フィルタープレス装置におけるダイアフラムシートが加圧空気によって変形することにより、ろ室内の固形物を圧搾する状態の上記主要部を示す図である。
【
図5】圧搾時間に対する、上記ろ室内に形成される圧搾室に流入する加圧空気の積算流量の変化を示すグラフである。
【
図6】上記フィルタープレス装置の圧搾工程において、上記情報処理装置の制御部により行われる処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔システム概要〕
本発明の一実施形態に係るろ過システム100の概要を
図2に基づいて説明する。
図2は、ろ過システム100の概要を示す図である。
【0012】
図2に示すように、ろ過システム100は、ろ過対象の原液をろ過するシステムであり、情報処理装置1と、端末装置2と、フィルタープレス装置3と、タンク4と、ポンプ5と、圧縮機6(流入源)と、流量計7とを備えている。
【0013】
情報処理装置1は、フィルタープレス装置3が行う圧搾を管理する装置であり、圧搾工程において、圧搾に用いられる加圧流体の後述する圧搾室37(
図3参照)への流入速度に基づいて、圧搾の完了を判断する。また、情報処理装置1は、圧搾の完了を判断する指標となる、圧搾が進行する度合である圧搾進行度合を算出する。情報処理装置1は、算出した圧搾進行度合を圧搾の実施日時ごとに時系列に蓄積していくことにより、圧搾進行度合のデータベースを構築する。
【0014】
加圧流体の流量は、加圧流体の流入速度と、加圧流体が流通する配管の断面積との積で表される。それゆえ、情報処理装置1は、流入速度に代えて流量の時系列データを流量計7から取得できるように構成されていればよく、その配置は特に限定されない。例えば、情報処理装置1は、クラウド上に設置されたクラウドサーバであってもよい。クラウドサーバとして構成される情報処理装置1は、任意の通信ネットワークを介して流量の時系列データを取得する。また、情報処理装置1は、フィルタープレス装置3が設置されている施設内に設置されたエッジコンピュータであってもよい。この場合、流入速度の時系列データが施設外に出ることがないので、情報漏えいを防ぎやすい。
【0015】
端末装置2は、情報処理装置1が蓄積したデータを取得して、閲覧可能に表示する。また、端末装置2は、当該データに基づいて、グラフの作成、統計データの作成などの処理を行う。
【0016】
フィルタープレス装置3は、タンク4からポンプ5によって注入される原液を、複数のろ板32の間に形成される後述のろ室36(
図3参照)においてろ過する装置である。原液は、タンク4に貯留されており、液体と分離される対象の固形物を含んでいる。また、フィルタープレス装置3は、原液がろ過された残余の固形物を圧搾するように、ろ室36において形成される圧搾室37(
図3参照)へ、圧縮機6によって圧縮された加圧流体を連続的に流入させる。
【0017】
流量計7は、圧縮機6によって圧縮されてフィルタープレス装置3に供給される加圧流体の流量を計測する機器であり、例えば超音波流量計によって構成されている。流量計7は、加圧流体を流通させる配管の径と、原液が当該配管を流通する流速とから流量(体積流量)[L/sec.]を算出する。
【0018】
〔フィルタープレス装置の構成〕
フィルタープレス装置3のより詳細な構成を
図2~
図4に基づいて説明する。
図3は、フィルタープレス装置3の主要部の構成の一例を示す図である。
図4は、フィルタープレス装置3におけるダイアフラムシート35が加圧空気によって変形することにより、ろ室36内の固形物を圧搾する状態の主要部を示す図である。
【0019】
図2において、X方向は水平方向の1つであり、Y方向はX方向に直交する水平方向の1つであり、Z方向にX方向およびY方向に直交する鉛直方向の1つである。
【0020】
図2に示すように、フィルタープレス装置3は、原液を加圧下でろ過する装置である。フィルタープレス装置3は、支持フレーム31と、複数のろ板32と、ろ板開閉機構33とを有している。
【0021】
支持フレーム31は、フィルタープレス装置3の全体を支持しており、その一部として一対のサイドバー31aを含んでいる。一対のサイドバー31aは、ろ板32を移動可能に支持するために、ろ板32の移動方向に長く形成されている。
【0022】
ろ板32は、板状の部材であり、両側部に水平方向に張り出すように設けられた突出部(図示せず)により、Y方向に複数重なるようにサイドバー31a上にY方向およびその逆方向に移動可能となるように支持されている。
図3に示すように、ろ板32は、第1ろ板321と、第2ろ板322との2種類が設けられており、それぞれがサイドバー31a上に交互に並ぶように配置されている。
【0023】
第1ろ板321の第2ろ板322と対向する面は、ろ布34により覆われるとともに、凹部321aを有している。また、ろ布34と凹部321aとの間には、ダイアフラムシート(伸縮部材)が設けられている。
【0024】
ダイアフラムシート35は、ほぼ矩形状に形成されており、少なくともその外周端部の複数箇所で凹部321aの外周端部に嵌め込まれるなどの構造により固定されている。ダイアフラムシート35は、天然ゴムを含むゴムなどの弾性材料により形成され、伸縮性を有している。
【0025】
凹部321aとダイアフラムシート35との間に形成される空間は、圧搾室37を構成している。一方、第2ろ板322の第1ろ板321と対向する面は、ろ布34により覆われるとともに、凹部321aと同様な凹部322aを有している。
【0026】
図3に示すように、第1ろ板321および第2ろ板322がそれぞれ対向する面同士で2つのろ布34を介して密着する密着状態では、凹部321a,322bによってろ室36が形成されとともに、上部に原液が注入される注入口38が形成される。また、密着状態では、ろ室36において、2つのろ布34によるろ過空間が形成される。このろ過空間に注入口38を介して高圧で原液が注入されることにより、原液がろ布34によりろ過される。
【0027】
ろ布を通過したろ液は、第1ろ板321の下部に設けられた排出口321bと、第2ろ板322の下部に設けられた排出口322bとを介して外部に排出される。また、原液に含まれる固形物は、ろ布34で濾し取られ、ろ布34の内面に徐々に堆積することによりケーキ層を形成する。
【0028】
排出口321bは、
図3において右側に第1ろ板321と隣接する図示しない第2ろ板322の排出口322bとつながる。また、排出口322bは、
図3において左側に第2ろ板322と隣接する図示しない第1ろ板321の排出口321bとつながる。このようにして、隣接する排出口321b,322b同士がつながることにより、複数のろ板32の全体で連続する排出口が形成される。
【0029】
また、第1ろ板321の上部には、凹部321aから外部に通じる流入路321cが設けられている。圧搾室37には、流入路321cを介して上述した圧縮機6からの加圧流体が流入する。これにより、
図4に示すように、伸縮可能なダイアフラムシート35が第2ろ板322の側に変形することで、ろ室36において圧搾室37の容積が増大する。この結果、2つのろ布34の内面にケーキ層を形成するろ過後の固形物がダイアフラムシート35によって凹部322a側に押し込まれることにより、固形物に含有されるろ液がさらに絞り出される。
【0030】
なお、
図3および
図4には示されていないが、第1ろ板321においては、凹部321aが設けられた面と反対側の面(反対面)にも凹部321aが設けられ、第2ろ板322においては、凹部322aが設けられた面と反対側の面(反対面)にも凹部322aが設けられている。これにより、第1ろ板321が、第1ろ板321の上記反対面側に配置された他の第2ろ板322とでろ室36を形成し、第2ろ板322が、第2ろ板322の上記反対面側に配置された他の第1ろ板321とでろ室36を形成する。
【0031】
絞り出されたろ液は、ろ過時のろ液と同じく、排出口321b,322bを介して排出される。また、圧搾室37に流入した加圧流体は、すべてが圧搾室37に滞留する。なお、ダイアフラムシート35に破損により孔や亀裂が生じた場合、当該破損個所より加圧流体が外部に流出する。
【0032】
ろ板開閉機構33は、移動ヘッド33aと、固定ヘッド33bと、進退機構33cと有している。固定ヘッド33bは、支持体31bに固定されている。移動ヘッド33aは、固定ヘッド33bと間隔をおいて、サイドバー31a上を動くチェーンブロック(図示せず)によって移動可能となるように配置されている。ろ板開閉機構33は、移動ヘッド33aおよび固定ヘッド33bの間には、複数のろ板32が挟まれるように配置されている。進退機構33cは、例えば油圧シリンダによって構成されており、移動ヘッド33aをY方向およびその逆方向に移動させる。
【0033】
移動ヘッド33aをY方向に移動させることにより、複数のろ板32は、固定ヘッド33bに向かって押し込まれ、Y方向に互いに密着する。また、移動ヘッド33aをY方向とは逆の方向に移動させることにより、ろ板32の密着状態が解除される。
【0034】
〔情報処理装置の構成〕
情報処理装置1のより詳細な構成を
図1および
図5に基づいて説明する。
図1は、情報処理装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。
図5は、圧搾時間に対する、圧搾室37に流入する加圧空気の積算流量の変化を示すグラフである。
【0035】
図1に示すように、情報処理装置1は、制御部10と、記憶部11と、出力部12とを有している。
【0036】
制御部10は、圧搾の完了およびダイアフラムシート35の破損の有無の判断の処理と、ケーキ層の厚みの推定に関する処理とを行う。制御部10は、これらの処理を行うために、算出部101と、判断部102と、破損推定部103と、厚み推定部104とを有している。また、記憶部11には、流量データと、圧搾進行度合データと、ケーキ厚みデータとが記憶される。流量データは、フィルタープレス装置3による圧搾工程において、流量計7によって連続的に計測されて出力される加圧流体の流量の計測値がデジタル化されたデータである。
【0037】
以降の説明では、加圧流体として加圧空気を用いる例について説明する。ただし、加圧流体は空気に限らず水であってもよいことは勿論である。
【0038】
圧搾が進行するに連れて、加圧空気が圧搾室37に滞留する量が増大していくので、流入する流入速度が低下していく。このため、算出部101は、流入速度に基づいて、固形物の圧搾が進行する度合である圧搾進行度合を算出する。算出部101は、端末装置2による上述した処理に用いるために、算出した圧搾進行度合を圧搾進行度合データとして、算出するごとに記憶部11に書き込む。
【0039】
流入速度は、瞬時値であるため、加圧流体の発生源、すなわち圧縮機6における圧力変動の影響を受けやすく、瞬時的に大きな変動を生じる可能性が高い。そこで、算出部101は、流入速度に基づく加圧流体の積算流量の変化を直線近似し、近似した直線の傾きを圧搾進行度合として算出する。
【0040】
ここで、流量は、加圧流体の流入速度と、加圧流体が流通する配管の断面積との積で表される。また、積算流量は、流量計7によって計測された体積流量(L/sec.)に圧搾開始からの時間(sec.)を乗じた値である。
【0041】
具体的には、算出部101は、
図5に示すように、圧搾進行度合の算出点を起点とした所定時間(例えば120秒)前の積算流量から算出点での積算流量までの変化を直線近似する。
図5において、黒い点が算出点を表し、黒い点に続く太い直線が近似された直線を表している。
【0042】
また、算出部101は、近似直線の傾きをろ室36の容積で除算した値を圧搾進行度合として算出してもよい。フィルタープレス装置3の規模に応じて、ろ室36の容積が異なる。このため、ろ室36の容積の大小に応じて、近似曲線の傾きが異なる。そこで、算出部101は、近似直線の傾きをろ室36の容積で除算することにより、ろ室36の容積に関わらず、圧搾進行度合を単位容積当たりの値として求めることかできる。
【0043】
判断部102は、算出部101によって算出された圧搾進行度合が所定の閾値未満の規定範囲に達すると圧搾の完了を判断する。判断部102は、圧搾の完了を判断した結果を完了判断信号として出力することもできる。
【0044】
閾値は、例えば、実験データなどに基づいて0.1に設定されるが、この値には限定されない。例えば、フィルタープレス装置3の通常運転では、閾値を0.2に設定しておき、好ましい値として値を0.1に設定するというように、閾値を2段階に設定してもよい。
【0045】
破損推定部103は、圧搾進行度合が閾値以上の上記規定範囲外の値を所定時間維持している場合に、ダイアフラムシート35の破損を推定する。破損推定部103は、破損を推定した結果を破損推定信号として出力することもできる。
【0046】
厚み推定部104は、ろ室36の容積から圧搾室37に流入した加圧空気の体積を減算することにより得られる固形物の体積から、ろ布34に堆積した固形物の厚み、すなわちケーキ層の厚みを、所定の演算処理を行うことにより推定する。厚み推定部104は、端末装置2による上述した処理に用いるために、推定したケーキ層の厚みをケーキ厚みデータとして、推定するごとに記憶部11に書き込む。
【0047】
出力部12は、完了判断信号および破損判断信号を、任意の出力形態、例えば画像、印字、音声などの形態に変換し、これらを単独で出力し、またはこれらの組合せを出力する。また、出力部12は、記憶部11に記憶されている圧搾進行度合データおよびケーキ厚みデータを端末装置2が閲覧可能な形態で出力する。
【0048】
〔制御部による処理〕
情報処理装置1が、圧搾の完了およびダイアフラムシート35の破損の有無を判断する処理と、ケーキ厚みを推定する処理とを含む情報処理(情報処理方法)を
図6に基づいて説明する。
図6は、フィルタープレス装置3の圧搾工程において、情報処理装置1の制御部10により行われる処理の手順を示すフローチャートである。
【0049】
まず、情報処理装置1は、流量計7から出力される流量の値を連続して記憶部11に流量データとして書き込んでいく。
図6に示すように、制御部10の算出部101は、記憶部11に記憶されている流量データを所定の周期で読み出して取得し(ステップS1)、流量データに基づいて圧搾進行度合を算出する(ステップS2,算出工程)。
【0050】
算出部101は、圧搾進行度合の算出において、流量データ(瞬時値)から加圧空気の積算流量を算出し、その積算流量の変化を直線に近似し、その直線の傾きをろ室36の容積で除算する。なお、算出部101は、圧搾進行度合の算出において、算出した加圧空気の積算流量をろ室36の容積で除算した後に、その除算値の変化を直線に近似してもよい。
【0051】
次いで、判断部102は、算出部101によって算出された圧搾進行度合が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS3)。判断部102は、ステップS3において圧搾進行度合が閾値未満であると判定すると(YES)、圧搾の完了を判断する(ステップS4)。
【0052】
圧搾室37に流入する加圧空気のすべてが圧搾室37に滞留するので、圧搾進行度合は、閾値未満に低下して、やがて0に達する。
【0053】
圧搾の完了が判断されると、厚み推定部104は、記憶部11に記憶されている流量データのうち、圧搾の完了が判断されるために用いられた流量データを読み出し、当該流量データに基づいて、ケーキ厚みを推定して(ステップS5)、処理を終了する。厚み推定部104は、ケーキ厚みの推定において、
図5に示すように、圧搾室37に流入した加圧空気の体積(積算流量)を、単位時間について変化する前後の積算流量をそれぞれ上底および下底とする台形の面積と見なし、その台形の面積を算出する。厚み推定部104は、この算出により、圧搾室37に流入した加圧空気の体積(積算流量)を算出し、ろ室36の容積から当該積算流量を減算することにより得られる固形物の体積からケーキ層の厚みを推定する。
【0054】
また、破損推定部103は、ステップS3において圧搾進行度合が閾値未満でない、すなわち閾値以上であると判定すると(NO)、圧搾進行度合が閾値以上の値を所定時間維持しているか否かを判定する(ステップS6)。破損推定部103は、ステップS6において、圧搾進行度合が閾値以上の値を所定時間維持していると判定すると(YES)、ダイアフラムシート35の破損を推定して通知する(ステップS7)。この場合、圧搾処理を持続することができない可能性が高いので、情報処理装置1は処理を終える。
【0055】
また、破損推定部103は、ステップS6において、圧搾進行度合が閾値以上の値を所定時間維持していないと判定すると(NO)、処理をステップS1に戻す。この場合は、ダイアフラムシート35が破損していないことを判断できるので、圧搾処理が継続して行われる。
【0056】
ここで、ステップS5で行われるケーキ層の厚みの推定の原理について説明する。
【0057】
図5は、3つの領域A1~A3に区分することができる。領域A1は、圧搾室37に流入する加圧空気の積算流量が変化する曲線の下側の領域であり、圧搾室37に流入する加圧空気の体積の変化を表している。領域A2は、1500Lより上の領域であり、原液に含まれる固形物の体積を表している。領域A3は、領域A1と領域A2との間の領域であり、原液に含まれる水分の体積を表している。
【0058】
ろ室36の容積を2833Lとすると、圧搾が完了する圧搾時間が960秒に達した時点では、領域A3に示される水分の体積がほとんどない状態である。そこで、ろ室36の容積から圧搾時間が960秒に達した時点での加圧空気の積算流量を減算することにより、固形物の体積を概算することかできる。
【0059】
厚み推定部104は、上記のようにして減算して得た固形物の体積を2つのろ布34において固形物が堆積する部分の面積で除算することにより、全てのろ室36の固形物の厚みの総和を算出する。厚み推定部104は、さらに当該厚みを1つのろ室36当たりの値に換算することにより、1つのろ室36に堆積した固形物により形成されるケーキ層の厚みを算出して推定する。厚み推定部104は、全てのろ室36の固形物の厚みをろ室36の数で除算することにより上記の換算を行う。あるいは、厚み推定部104は、全てのろ室36の固形物の厚みを次式で表される値Aで除算することにより上記の換算を行う。
【0060】
A=T×{1-(D/C)}
ここで、上式において、Tは1つのろ室36の厚み(mm)であり、Dは加圧空気の積算流量であり、Cはフィルタープレス装置3におけるろ過の総処理容積(複数あるろ室36のすべての容積)である。
【0061】
ところで、ろ布34が新しい状態と、ろ布34が目詰まりした状態とでは、
図5における圧搾時間が960秒に達した時点での積算流量の傾き、すなわち圧搾進行度合が異なる。具体的には、ろ布34が新しい状態では傾きが小さく(圧搾進行度合が小さい)、ろ布34が目詰まりした状態では傾きが大きい(圧搾進行度合が大きい)。このため、ろ布34が目詰まりした場合には、圧搾時間をさらに延長することにより、傾きを小さくすることができる。圧搾時間を延長しても傾きが変化しない場合は、積算流量が増大しているのに傾きが小さくならないので、ダイアフラムシート35が破損していると推定することができる。
【0062】
なお、ろ布34が目詰まりしていない新しい状態では、通常、圧搾時間が960秒に達した時点で傾きが小さくなるので、上記のように圧搾時間を延長しても傾きが変化しない場合、ダイアフラムシート35が破損していると推定することができる。
【0063】
続いて、ステップS7で行われるダイアフラムシート35の破損を推定する原理について説明する。
【0064】
ダイアフラムシート35が正常な状態では、上述したように、加圧空気のすべてが圧搾室37に滞留するため、圧搾進行度合は閾値まで低下して、やがて0に達する。これに対し、ダイアフラムシート35に孔、亀裂といった破損が生じることにより、加圧空気が破損箇所から排出口321bを通じて漏出する場合、加圧空気の流出速度が流入速度以上に高まると、圧搾進行度合が閾値まで低下しないことがある。また、破損が大きくなると加圧空気の流出速度がより高くなるため、圧搾進行度合が大きくなる。
【0065】
そこで、所定時間を経過しても圧搾進行度合が閾値未満の規定範囲に達していない場合には、特別な手段を用いることなく破損推定部103によってダイアフラムシート35が破損していると推定することができる。それゆえ、フィルタープレス装置3の外観上ではわからないダイアフラムシート35の破損を圧搾進行度合に基づいて推定することができる。したがって、その推定に基づいてダイアフラムシート35の状態を点検することにより、ダイアフラムシート35のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0066】
以上のように、情報処理装置1は、算出部101を備えることにより、加圧空気の流入速度と密接に関連する積算流量に基づく圧搾進行度合を算出する。判断部102は、算出された圧搾進行度合により、圧搾の完了を判断することができる。また、加圧空気は圧搾室37に流入し続けるので、加圧空気の流入速度は連続した値として計測される。これにより、圧搾進行度合を連続的な値として取得することができる。したがって、圧搾完了の判断の正確性を向上させることができる。
【0067】
算出部101は、加圧空気の積算流量の変化を直線近似し、近似した直線の傾きを圧搾進行度合として算出すること、すなわち、近似した直線の傾きから圧搾進行度合を推定することにより、流入速度の瞬時的な変動の影響を軽減することができる。これにより、判断部102による判断の正確性をより向上させることができる。さらに、算出部101は、近似した直線の傾きをろ室の容積で除算した値を圧搾進行度合として算出することにより、フィルタープレス装置3の規模に応じて異なるろ室36の容積に関わらず、圧搾進行度合を単位容積当たりの値として求めることができる。
【0068】
また、情報処理装置1は、判断部102を備えることにより、閾値を適宜設定することで、圧搾の完了を容易に判断することができる。また、破損推定部103は、圧搾進行度合が閾値以上の値を所定時間維持している場合に、ダイアフラムシート35の破損を推定することにより、上述したように、ダイアフラムシート35のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0069】
ところで、特許文献1に記載されているように、従来、圧搾後のケーキ層の厚みは、原液の濃度に基づいて算出される。原液濃度の計測には、高価な濃度計が用いられるため、費用対効果の観点から実用性が低い。
【0070】
これに対し、情報処理装置1は、厚み推定部104を備えることにより、加圧空気が圧搾室37に流入した体積に基づいてケーキ層の厚みが推定される。これにより、比較的安価に入手できる流量計7を用いてケーキ層の厚みを推定することができる。それゆえ、ケーキ層の厚みの推定についての費用対効果を向上させることができる。したがって、ケーキ層が、排出されるために必要な厚みを有しているか否かを安価に推定することができる。
【0071】
〔変形例〕
続いて、本実施形態の変形例について説明する。本変形例に係る情報処理装置は、次のように構成されていてもよい。
【0072】
制御部10は、図示はしないが、算出部101に代わる算出部と、判断部102に代わる圧搾進行度合推定部と、破損推定部103に代わる破損推定部と、厚み推定部104に代わる厚み推定部と、出力部12に代わる出力部とを備えている。圧搾進行度合推定部、破損推定部および厚み推定部は、新たに推定部を構成している。また、本情報処理装置は、記憶部11に代わる記憶部を備えている。記憶部は、流量計7から取得した流量データと、各種演算データとを記憶する。
【0073】
算出部は、積算流量算出部と、近似傾き算出部とを有している。積算流量算出部は、上述した算出部101と同じく、記憶部11に記憶されている流量データに基づいて加圧流体の積算流量を算出する。近似傾き算出部は、積算流量算出部により算出された加圧流体の積算流量に基づいて、上述した算出部101と同じく、積算流量の変化を直線近似する計算を行う。
【0074】
圧搾進行度合推定部は、近似傾き算出部により近似された直線の傾きに基づいて、圧搾進行度合を推定する。破損推定部は、破損推定部103と同じく、圧搾進行度合が閾値以上の値を所定時間維持している場合に、ダイアフラムシート35の破損を推定する。厚み推定部は、厚み推定部104と同じく、ろ室36の容積から、積算流量算出部により算出された加圧流体の積算流量、すなわち圧搾室37に流入した加圧空気の体積を減算することにより得られる固形物の体積から、ケーキ層の厚みを推定する。
【0075】
出力部は、圧搾進行度合推定部、破損推定部および厚み推定部による推定結果を各種演算データとして記憶部11に書き込む。また、出力部は、記憶部の流量データおよび各種演算データを読み出して端末装置2に出力する。あるいは、端末装置2は、流量データおよび各種演算データを記憶部から直接取得してもよい。
【0076】
なお、
図1に示す情報処理装置1および本変形例に係る情報処理装置は、フィルタープレス装置3に比較的近い場所に設置されることを想定して設けられており、流量計7からの流量データを、信号線を介して直接取得する。これに対し、情報処理装置1および本変形例に係る情報処理装置は、フィルタープレス装置3から離れた場所、例えばクラウドサーバなどに設けられていてもよく、流量計7からの流量データを、インターネットなどを介して取得してもよい。
【0077】
〔SDGsへの貢献〕
上述の実施形態の構成によれば、ろ過システム100は、情報処理装置1を備えることにより、圧搾の完了の時期をより適正に判断することができる。これにより、圧搾の過不足をより少なくすることで、圧搾を効率的に行うことができる。したがって、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう(インフラ、システム整備等)」の達成に貢献できる。
【0078】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1の機能は、情報処理装置1としてコンピュータを機能させるための情報処理プログラムにより実現することができる。情報処理プログラムは、情報処理装置1の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0079】
情報処理装置1は、情報処理プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と、上述した記憶部11を構成する少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)とを有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記実施形態で説明した各機能が実現される。
【0080】
情報処理プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、情報処理装置1が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、情報処理プログラムは、クラウドなどの情報処理装置1と離れた場所に設けられており、有線または無線の任意の伝送媒体を介して情報処理装置1に供給されてもよい。また、情報処理装置1がフィルタープレス装置3の制御盤に組み込まれる場合、情報処理プログラムが情報処理装置1に格納されていてもよい。
【0081】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0082】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0083】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の態様1に係る情報処理装置は、第1ろ板に設けられた伸縮可能な伸縮部材と、前記第1ろ板と対向するように配置された第2ろ板との間に形成されるろ室内に注入された原液がろ過された残余の固形物を圧搾するように、前記第1ろ板と前記伸縮部材との間に形成される圧搾室へ加圧流体を連続的に流入させるフィルタープレス装置において圧搾を管理する情報処理装置であって、前記圧搾室への前記加圧流体の流入速度に基づいて前記固形物の圧搾が進行する度合である圧搾進行度合を算出する算出部を備えている。
【0084】
加圧流体が圧搾室に流入していくに連れて、圧搾室に流入した加圧流体の量が増大する。そして、固形物が加圧流体で圧搾されることにより絞り出される液体の量が少なくなると、固形物を圧搾しにくくなるため、加圧流体の流入速度が低下する。それゆえ、上記構成によれば、流入速度に基づく圧搾進行度合により、圧搾の完了を判断することができる。また、加圧流体は圧搾室に流入し続けるので、加圧流体の流入速度は連続した値として計測される。これにより、圧搾進行度合を連続的な値として取得することができる。したがって、圧搾完了の判断の正確性を向上させることができる。
【0085】
本発明の態様2に係る情報処理装置は、上記態様1において、算出された前記圧搾進行度合に基づいて圧搾の完了を判断する判断部をさらに備えてもよい。
【0086】
上記構成によれば、圧搾の完了を判断するための要素として圧搾進行度合を用いることにより、圧搾の完了を容易に判断することができる。
【0087】
本発明の態様3に係る情報処理装置は、上記態様2において、前記判断部が、算出された前記圧搾進行度合が規定範囲に達すると圧搾の完了を判断してもよい。
【0088】
上記構成によれば、規定範囲を適宜設定することにより、圧搾の完了を容易に判断することができる。
【0089】
本発明の態様4に係る情報処理装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記算出部が、前記流入速度に基づく前記加圧流体の積算流量の変化を直線近似し、近似した直線の傾きを前記圧搾進行度合として算出してもよい。
【0090】
流入速度は、瞬時値であるため、加圧流体の発生源における圧力変動の影響を受けやすく瞬時的に大きな変動を生じる可能性が高い。これに対し、上記構成によれば、圧搾進行度合が積算流量の変化を近似した直線の傾きで表されるので、流入速度の瞬時的な変動の影響を軽減することができる。これにより、判断部による判断の正確性をより向上させることができる。
【0091】
本発明の態様5に係る情報処理装置は、上記態様4において、前記算出部が、前記傾きを前記ろ室の容積で除算した値を前記圧搾進行度合として算出してもよい。
【0092】
上記構成によれば、フィルタープレス装置の規模に応じて異なるろ室の容積に関わらず、圧搾進行度合を単位容積当たりの値として求めることができる。
【0093】
本発明の態様6に係る情報処理装置は、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記ろ室の容積から前記圧搾室に流入した前記加圧流体の体積を減算することにより得られる前記固形物の体積から前記固形物の厚みを推定する厚み推定部をさらに備えていてもよい。
【0094】
従来、圧搾後の固形物の厚みは、原液の濃度に基づいて算出される。原液濃度の計測には、高価な濃度計が用いられるため、費用対効果の観点から実用性が低い。これに対し、上記構成によれば、加圧流体が圧搾室に流入した体積に基づいて固形物の厚みが推定される。加圧流体の体積を計測するために用いられる流量計は、比較的安価に入手できる。これにより、固形物の厚みの推定についての費用対効果を向上させることができる。したがって、固形物が、排出されるために必要な厚みを有しているか否かを安価に推定することができる。
【0095】
本発明の態様7に係る情報処理装置は、上記態様3おいて、前記圧搾進行度合が前記規定範囲外の値を所定時間維持している場合に、前記伸縮部材の破損を推定する破損推定部をさらに備えていてもよい。
【0096】
加圧流体が圧搾室に流入しているにも関わらず、所定時間を経過しても圧搾進行度合が規定範囲に達せずに規定範囲外の値を維持している場合は、加圧流体が伸縮部材から漏れ出ている可能性が高い。上記の構成によれば、所定時間を経過しても圧搾進行度合が規定範囲に達していない場合には、特別な手段を用いることなく判断部の判断によって伸縮部材が破損していると推定することができる。したがって、その推定に基づいて伸縮部材の状態を点検することにより、伸縮部材のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0097】
本発明の態様8に係るろ過システムは、上記態様1から7のいずれか1つの情報処理装置と、原液をろ過するとともに、ろ過後の残余の固形物が圧搾されるろ室と、前記ろ室に設けられ、前記固形物を圧搾するように加圧流体が流入する圧搾室と、前記加圧流体を前記圧搾室へ連続的に流入させる流入源と、を備えている。
【0098】
上記構成によれば、ろ過システムにおいて、圧搾の完了の時期をより適正に判断することができる。これにより、圧搾の過不足をより少なくすることができる。したがって、圧搾を効率的に行うことができる。
【0099】
本発明の態様9に係る情報処理装置は、コンピュータによって実現されてもよい。この場合には、コンピュータを前記情報処理装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させる。これにより、前記情報処理装置をコンピュータにて実現させる情報処理装置の情報処理プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0100】
本発明の態様10に係る情報処理方法は、第1ろ板に設けられた伸縮可能な伸縮部材と、前記第1ろ板と対向するように配置された第2ろ板との間に形成されるろ室内に注入された原液がろ過された残余の固形物を圧搾するように、前記第1ろ板と前記伸縮部材との間に形成される圧搾室へ加圧流体を連続的に流入させるフィルタープレス装置において圧搾を管理する情報処理方法であって、前記圧搾室への前記加圧流体の流入速度に基づいて前記固形物の圧搾が進行する度合である圧搾進行度合を算出する算出工程を含んでいる。
【0101】
これにより、態様1に係る情報処理装置と同じく、圧搾進行度合を連続的な値として取得することができる。したがって、圧搾完了の判断の正確性を向上させることができる。
【0102】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1 情報処理装置
6 圧縮機(流入源)
35 ダイアフラムシート(伸縮部材)
36 ろ室
37 圧搾室
100 ろ過システム
101 算出部
102 判断部
103 破損推定部
104 厚み推定部
321 第1ろ板
322 第2ろ板