(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070149
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ガス還元装置、ガス還元方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240515BHJP
C25B 3/03 20210101ALI20240515BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20240515BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20240515BHJP
C25B 9/70 20210101ALI20240515BHJP
C25B 11/031 20210101ALI20240515BHJP
C25B 11/054 20210101ALI20240515BHJP
C25B 11/075 20210101ALI20240515BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20240515BHJP
【FI】
C25B9/00 G
C25B3/03
C25B3/26
C25B9/60
C25B9/70
C25B11/031
C25B11/054
C25B11/075
C25B11/081
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180584
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】小野 崇人
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA11
4K011AA68
4K011DA11
4K021AC02
4K021BA02
4K021BA07
4K021BA10
4K021BA17
4K021CA05
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA15
(57)【要約】
【課題】気体の還元を高効率で行うことができるガス還元装置、およびガス還元装置を用いたガス還元方法を提供する。
【解決手段】反応器本体10と、反応器本体10に形成されたマイクロ流路20と、反応器本体10に形成され、マイクロ流路20に連通し、マイクロ流路20内に気体を導入する気体導入口30と、反応器本体10に形成され、マイクロ流路20に連通し、マイクロ流路20内に液体を導入する液体導入口40と、マイクロ流路20の内側面に設けられた陰極50と、マイクロ流路20の内側面に設けられ、陰極50と対向する陽極60と、反応器本体10に形成され、マイクロ流路20に連通し、マイクロ流路20から反応気体を導出する気体導出口70と、を備え、マイクロ流路20は、前記気体と前記液体とからなる気液混合流を保持する、ガス還元装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器本体と、
前記反応器本体に形成されたマイクロ流路と、
前記反応器本体に形成され、前記マイクロ流路に連通し、前記マイクロ流路内に気体を導入する気体導入口と、
前記反応器本体に形成され、前記マイクロ流路に連通し、前記マイクロ流路内に液体を導入する液体導入口と、
前記マイクロ流路の内側面に設けられた陰極と、
前記マイクロ流路の内側面に設けられ、前記陰極と対向する陽極と、
前記反応器本体に形成され、前記マイクロ流路に連通し、前記マイクロ流路から反応気体を導出する気体導出口と、
を備え、
前記マイクロ流路は、前記気体と前記液体とからなる気液混合流を保持する、ガス還元装置。
【請求項2】
前記陰極は、前記マイクロ流路の内側面を細線化または多孔質化された部位と、前記部位に担持された還元触媒金属と、を有する、請求項1に記載のガス還元装置。
【請求項3】
前記還元触媒金属は、銅、銀、鉄、ニッケル、白金、ロジウム、金、銀、亜鉛、パラジウム、錫、鉛、インジウム、チタン、タングステンおよびモリブデンから選択される少なくとも1種の金属、あるいはこれら金属の合金または酸化物である、請求項2に記載のガス還元装置。
【請求項4】
前記マイクロ流路に接続され、前記マイクロ流路から反応液体を導出する液体導出口を備える、請求項1に記載のガス還元装置。
【請求項5】
前記気体導出口に設けられ、前記マイクロ流路から導出される反応気体を選択的に透過し、前記反応気体に含まれる不純物を除去する気体選択透過フィルタを備える、請求項1に記載のガス還元装置。
【請求項6】
前記マイクロ流路の幅および高さは、0.1mm~2.0mmである、請求項1に記載のガス還元装置。
【請求項7】
前記気体導入口からの前記気体の流入速度は、0.01sccm~100sccmである、請求項1に記載のガス還元装置。
【請求項8】
前記陰極と前記陽極に電圧を印加する電圧印加手段を備える、請求項1に記載のガス還元装置。
【請求項9】
前記反応器本体を2つ以上備える、請求項1に記載のガス還元装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のガス還元装置を用いたガス還元方法であって、
前記液体導入口から前記マイクロ流路内に前記液体を導入する工程と、
前記気体導入口から前記マイクロ流路内の前記液体に前記気体を導入し、前記マイクロ流路内で前記気液混合流を形成する工程と、
前記陰極と前記陽極に電圧を印加し、前記液体中で前記気体を還元する工程と、
前記気体導出口を介して前記マイクロ流路から前記気体の還元によって生成した反応気体を導出する工程と、
を有する、ガス還元方法。
【請求項11】
前記気体は二酸化炭素を含み、前記液体は水、エタノールおよびカルボン酸類から選択される少なくとも1種を含む液体であり、前記陰極は銅を含み、前記反応気体はメタンを含有する、請求項10に記載のガス還元方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス還元装置、およびガス還元装置を用いたガス還元方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光等の再生エネルギーを利用して、グリーンな燃料を作り出し、貯蔵・利用するコンセプトは、「Power-to-X(Xは、GasやFuel等)」と呼ばれ、近年注目を浴びている技術である。温暖化ガスである大気中の二酸化炭素の増加を和らげるための手法としては、例えば、二酸化炭素(CO2)を還元して、有用なエネルギー源に物質変換する技術が挙げられる。この技術は、「Power-to-X」の中でも有望な技術の1つである。一方、CO2の還元技術は、宇宙ステーションでのCO2除去や、火星(大気の95%がCO2)でのエネルギー確保等の要請も研究開発の動機となっている。
【0003】
ガスの還元手法としては、電気化学的手法、光化学的手法、生化学的手法、熱化学的手法等の、様々な還元アプローチが提案されている。
温暖化ガスである二酸化炭素からメタンを生成し、再利用する技術は、メタネーションと呼ばれている。メタネーションは、太陽光等の自然エネルギーを利用し、火力発電所等から排出される二酸化炭素を還元して、メタン等のガス資源に変換する技術である。一般的に、メタネーションは、水素と二酸化炭素を触媒で反応させてメタンにするサバティエ反応と呼ばれる化学反応を利用している。メタネーションでは、熱化学的なアプローチが用いられている。
【0004】
二酸化炭素を熱化学的に還元する方法に対して、二酸化炭素を電気化学的に還元する方法には、以下のような利点が挙げられる。
(1)燃料や有用な化学物質に変換し、利用した電解液を再利用できる。この際に消費される化学物質は、水と二酸化炭素のみである。
(2)電気化学的に還元する方法は、常圧・常温で実施できる。
(3)電気化学的還元に必要な電力は、再生可能な資源から得られる。
【0005】
二酸化炭素を電気化学的に還元する方法には、上記のような利点があるにもかかわらず、現在までに実用可能な、電気化学的還元のための触媒電極やメタネーション・システムが開発されていない。その理由としては、以下の(1)、(2)の2つの理由が挙げられる。
(1)二酸化炭素の電気化学的還元反応は、複雑な多電子移動プロセスである。
例えば、以下の(A)、(B)の電気化学的還元反応が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
CO2+8H++8e-→CH4+2H2O
電気化学ポテンシャルE0=-0.24V・・・(A)
CO2+2H++2e-→CO+H2O
電気化学ポテンシャルE0=-0.52V・・・(B)
(2)反応の選択性が低く、様々な生成物を生成する。金、銀、亜鉛、パラジウムを電気化学電極として用いた場合、一酸化炭素が反応生成物として生成する。一方、銅を電気化学電極として用いた場合、メタン、エチレン、エタノール等の複数種の反応生成物として生成する。また、錫、鉛、インジウムを電気化学電極として用いた場合、ギ酸が発生する反応メカニズムも存在する(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
銅を触媒として用いた場合、一般的には様々な生成物が生成する(例えば、非特許文献2、3参照)。
二酸化炭素の電気化学的還元では、Cu(111)表面にてメタンが優勢的に生成し、Cu(100)表面にてエチレンが優勢的に生成する(例えば、非特許文献2参照)。また、二酸化炭素の電気化学的還元では、プロトンの遷移を伴わない還元反応が優勢になり、一酸化炭素が電極表面でC-C結合を形成することで、エチレンが形成しやすい。白金やニッケル等の表面においても、この反応が優勢となる。また、電解めっきやスパッタ堆積で形成した多結晶Cuを利用した二酸化炭素の電気化学的還元では、エチレンの形成が優位となることが知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0007】
Cuナノ粒子が表面に存在する電極、電解研磨されたCu電極、スパッタ体積で形成されたCu電極それぞれの表面の影響について検討したところ、粗面化されたCu電極表面は炭化水素に対して高い生成種の選択性があることが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。
一方、その報告には、以下の2つの競合する反応が、電気化学電流に寄与するとしている。
*CO2+2H++2e-→*CO+H2O
(*は表面に吸着した分子を示す)
2*H++2e-→H2
つまり、中間生成物である一酸化炭素の生成を促進するためには、水素イオンが必要であるが、水素分子が生成してしまい、一酸化炭素の生成効率が低下するのが一般的である。
以上のように、二酸化炭素の電気化学的還元は有望な技術ではあるが、技術的な困難さのため、実用化に至っていない。
【0008】
二酸化炭素の電気化学的還元に用いられるH型セルが知られている(例えば、非特許文献5、6参照)。このセルでは、陰極の電解液に溶解した二酸化炭素しか反応物質として利用できないため、二酸化炭素の還元の反応速度は、二酸化炭素の物質移動(溶解速度)の制限によって決まる。水溶液系の電解質への二酸化炭素の溶解度は極めて小さいという事実が、二酸化炭素の還元速度を事実上決めている。また、固体電解質が陰極と陽極の間に存在すると、大きな還元電流が流せないという課題がある。
【0009】
二酸化炭素と湿気を帯びた蒸気と混合させて利用する反応器が知られている(例えば、非特許文献7参照)。この反応器では、イオン交換膜等の固体電解質膜を用いているため、固体電解質中の水素イオンの拡散が二酸化炭素の還元反応を律速する要因となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Zhu,D.D.;Liu,J.L.;Qiao,S.Z.Recent advances in inorganic heterogeneous electrocatalysts for reduction of carbon dioxide.Adv.Mater.2016,28,3423-3452.
【非特許文献2】Kortlever,R.;Shen,J.;Schouten,K.J.P.;Calle-Vallejo,F.;Koper,M.T.M.Catalysts and reaction pathways for the electrochemical reduction of carbon dioxide.J.Phys.Chem.Lett.2015,6,4073-4082.
【非特許文献3】Kuhl,K.P.;Cave,E.R.;Abram,D.N.;Jaramillo,T.F.New insights into the electrochemical reduction of carbon dioxide on metallic copper surfaces.Energy Environ.Sci. 2012,5,7050-7059.
【非特許文献4】Tang,W.;Peterson,A.A.;Varela,A.S.;Jovanov,Z.P.;Bech,L.;Durand,W.J.;Dahl,S.;Norskov,J.K.;Chorkendorff,I.The Importance of Surface Morphology in Controlling the Selectivity of Polycrystalline Copper for CO2 Electroreduction.Phys.Chem.Chem.Phys.2012,14,76-81.
【非特許文献5】Burdyny,T.;Smith,W.A.CO2 Reduction on Gas-Diffusion Electrodes and Why Catalytic Performance Must Be Assessed at Commercially-Relevant Conditions,Energy Environ.Sci.2019,12(5),1442-1453.
【非特許文献6】D.M.Weekes,D.A.Salvatore,A.Reyes,A.Huang andC.P.Berlinguette,Electrolytic CO2 Reduction in a Flow Cell,Acc.Chem.Res.,2018,51,910-918.
【非特許文献7】L.M.Aeshala et al.,Effect of solid polymer electrolyte on electrochemical reduction of CO2,Separation and Purification Technology 94(2012)131-137.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、固体電解質膜を用いずに、気体の還元を高効率で行うことができるガス還元装置、およびガス還元装置を用いたガス還元方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のガス還元装置は、以下の態様を有する。
反応器本体と、前記反応器本体に形成されたマイクロ流路と、前記反応器本体に形成され、前記マイクロ流路に連通し、前記マイクロ流路内に気体を導入する気体導入口と、前記反応器本体に形成され、前記マイクロ流路に連通し、前記マイクロ流路内に液体を導入する液体導入口と、前記マイクロ流路の内側面に設けられた陰極と、前記マイクロ流路の内側面に設けられ、前記陰極と対向する陽極と、前記反応器本体に形成され、前記マイクロ流路に連通し、前記マイクロ流路から反応気体を導出する気体導出口と、を備え、前記マイクロ流路は、前記気体と前記液体とからなる気液混合流を保持する、ガス還元装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固体電解質膜を用いずに、気体の還元を高効率で行うことができるガス還元装置、およびガス還元装置を用いたガス還元方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガス還元装置の概略構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るガス還元装置の概略構成を示し、
図1のA-A線に沿う断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るガス還元装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るガス還元装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るガス還元装置により二酸化炭素を還元し、排出されたガスをカスクロマトグラフィーで分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態によるガス還元装置およびガス還元方法について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、便宜上、特徴となる部分を拡大して示しており、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。
また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更できる。
【0016】
[ガス還元装置]
図1は、本発明の一実施形態に係るガス還元装置の概略構成を示す平面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るガス還元装置の概略構成を示し、
図1のA-A線に沿う断面図である。
図3および
図4は、本発明の一実施形態に係るガス還元装置の概略構成を示す斜視図である。
図1および
図2に示すように、ガス還元装置1は、反応器本体10と、マイクロ流路20と、気体導入口30と、液体導入口40と、陰極50と、陽極60と、気体導出口70と、を備える。
【0017】
反応器本体10は、第1基材11と、第2基材12と、陰極基材13と、陽極基材14と、絶縁部材15と、を有する。第1基材11と第2基材12は、陰極基材13、陽極基材14および絶縁部材15を介して、それぞれの厚さ方向に積層されている。陰極基材13と陽極基材14は、第1基材11と第2基材12の間において、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)の一部が対向するように配置されている。マイクロ流路20の高さ(マイクロ流路20における第1基材11および第2基材12の厚さ方向に沿う長さ)hは、陰極基材13、陽極基材14および絶縁部材15によって決まる。なお、陰極基材13、陽極基材14は、第1基材11または第2基材12と一枚の基材にマイクロ流路20、絶縁部材15を形成する形で、どちらかと一体に構成されてもよい。
【0018】
図1に示すように、マイクロ流路20は、反応器本体10に形成されている。反応器本体10には、マイクロ流路20と、気液混合器21と、気液導入路22とが形成されている。マイクロ流路20と気液混合器21と気液導入路22とは、この順に連通している。
マイクロ流路20、気液混合器21および気液導入路22は、陰極基材13と陽極基材14の間に形成されている。陰極基材13には、陽極基材14と対向する面から、陰極基材13の厚さ方向と垂直な方向に凹む第1凹部13Aと、第2凹部13Bと、第3凹部13Cとが、この順に形成されている。陽極基材14には、陰極基材13と対向する面から、陽極基材14の厚さ方向と垂直な方向に凹む第1凹部14Aと、第2凹部14Bと、第3凹部14Cとが、この順に形成されている。陰極基材13と陽極基材14を、第1基材11と第2基材12の間において、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)の一部が対向するように配置することにより、上記第1凹部13Aと上記第1凹部14Aによってマイクロ流路20が形成され、上記第2凹部13Bと第2凹部14Bによって気液混合器21が形成され、上記第3凹部13Cと上記第3凹部14Cによって気液導入路22が形成されている。なお、陰極基材13と陽極基材14は、絶縁部材15を介して、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)の一部が対向している。すなわち、陰極基材13と陽極基材14は直接、接していない。
なお、第2凹部13Bと第2凹部14Bとから形成される気液混合器21は後述の気液混合流を形成するために設けることが好ましいが、気液導入路22から気体を導入することで気液混合流となる場合は設けなくてもよい。
また、本実施形態では、気液混合器21は、マイクロ流路20から拡張した構造とすることで構成されているが、気液混合流を促進させる周知のいずれの構成も採用することができる。
【0019】
気体導入口30は、反応器本体10に形成されている。気体導入口30は、気液導入路22に対向する位置にて、第2基材12を厚さ方向に貫通するように形成されている。気体導入口30は、気液導入路22と気液混合器21を介して、マイクロ流路20と連通している。これにより、気体導入口30からマイクロ流路20内に気体を導入することができる。なお、気体導入口30は、第1基材11を厚さ方向に貫通するように形成しても、陰極基材13、陽極基材14の側面からマイクロ流路20に接続するように形成してもよい。
【0020】
液体導入口40は、反応器本体10に形成されている。液体導入口40は、気液導入路22に対向する位置にて、第2基材12を厚さ方向に貫通するように形成されている。液体導入口40は、気液導入路22と気液混合器21を介して、マイクロ流路20と連通している。これにより、液体導入口40からマイクロ流路20内に液体を導入することができる。なお、液体導入口40は、第1基材11を厚さ方向に貫通するように形成しても、陰極基材13、陽極基材14の側面からマイクロ流路20に接続するように形成してもよい。
【0021】
陰極50は、マイクロ流路20の内側面20aに設けられている。詳細には、陰極50は、陰極基材13の第1凹部13Aの内側面13aに設けられている。
【0022】
陽極60は、マイクロ流路20の内側面20aに設けられている。詳細には、陽極60は、陽極基材14の第1凹部14Aの内側面14aに設けられている。
【0023】
気体導出口70は、反応器本体10に形成されている。気体導出口70は、マイクロ流路20に対向する位置にて、第2基材12を厚さ方向に貫通するように形成され、マイクロ流路20と連通している。これにより、気体導出口70を介してマイクロ流路20から気体の還元によって生成した反応気体を、マイクロ流路20の外部に導出することができる。なお、気体導出口70は、第1基材11を厚さ方向に貫通するように形成しても、陰極基材13、陽極基材14の側面からマイクロ流路20に接続するように形成してもよい。
【0024】
「第1基材、第2基材」
第1基材11と第2基材12の材質は、マイクロ流路20内に導入する液体や気体、または、気体の還元によって生成した反応気体によって劣化しないものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン、ガラス、サファイア、アクリル等のポリマー材料等が挙げられる。
【0025】
「陰極基材」
陰極基材13の材質は、マイクロ流路20内に導入する液体や気体、または、気体の還元によって生成した反応気体によって劣化しないものであり、かつ陰極50を形成することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウム、チタン等が挙げられる。
【0026】
陰極50は、マイクロ流路20の内側面20a、すなわち、陰極基材13の内側面13aを、電極の表面積を増やすために、ナノワイヤ形状の細線化または多孔質化した部位51と、その部位51に形成した金属膜、あるいは、担持した還元触媒金属52と、を有する。なお、陰極基材13の材質にシリコン等を用いた場合は、リン、ヒ素等をドープして電極を形成してもよい。
【0027】
マイクロ流路20の内側面20aを細線化または多孔質化した部位の構造は、特に限定されないが、例えば、陰極基材13がシリコンからなる基材である場合、ポーラスシリコン(多孔質シリコン)が挙げられる。ポーラスシリコンは、シリコンからなる基材をフッ化水素酸溶液中でAgNO3触媒を用いた金属支援エッチングすることにより形成することができる(N.V.Toan, T Ono etc. IEEE transaction on Nanotechnology, 2017.参照)。
【0028】
還元触媒金属は、二酸化炭素等のガスの還元に用いることができるものであり、かつ陰極基材13の内側面13aの細線化または多孔質化した部位に担持することができるものであれば、特に限定されず、また、生成しようとする炭化水素に応じて適宜選択されるものではあるが、例えば、銅、銀、鉄、ニッケル、白金、ロジウム、金、銀、亜鉛、パラジウム、錫、鉛、インジウム、チタン、タングステンおよびモリブデンから選択される少なくとも1種の金属、あるいはこれら金属の合金または酸化物が挙げられる。これらの中で、エネルギー物質としてメタンを生成する場合は、二酸化炭素の還元効率に優れる点においては、銅を用いる。
【0029】
陰極50が、陰極基材13の内側面13aを細線化または多孔質化した部位51と、その部位51に担持した還元触媒金属52と、を有するものであると、表面積が大きくなる。その結果、マイクロ流路20内において、気体と還元触媒金属52の接触効率が高くなり、気体の還元効率が高くなる。また、陰極50が上記の構成を有することにより、気体の体積に対する還元触媒金属52の表面積の比が大きくなるため、還元触媒金属52による気体の還元反応の効率が高くなる。
【0030】
「陽極基材」
陽極基材14の材質は、マイクロ流路20内に導入する液体や気体、または、気体の還元によって生成した反応気体によって劣化しないものであり、かつ陽極60を形成することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウム等が挙げられる。
【0031】
陽極60は、陽極基材14と、陽極基材14の内側面14aに形成された陽極膜61と、を有する。
【0032】
陽極膜61の材質は、特に限定されないが、例えば、ニッケル、鉄、白金等の金属、炭素等が挙げられる。陽極膜61の材質は、酸素の発生が少ない金属が好ましい。なお、陽極基材14の材質にシリコン等を用いた場合は、ホウ素、リン等をドープして電極を形成してもよい。
【0033】
「マイクロ流路」
マイクロ流路20の幅w、すなわち、マイクロ流路20を平面視した場合の陰極基材13と陽極基材14の距離wは、印加する電圧にもよるが、0.1mm~2.0mmであることが好ましく、0.1mm~1.0mmであることがより好ましい。マイクロ流路20の幅wが0.1mm未満であると、ガスが流れるコンダクタンスが小さくなり処理量が低下する。一方、マイクロ流路20の幅wが、2.0mmを超えると、還元効率が低下する可能性がある。
マイクロ流路20の幅wが2.0mm以下であると、気体の還元反応の効率を高めることができる。
【0034】
マイクロ流路20の高さhは、0.1mm~2.0mmであることが好ましく、0.1mm~1.0mmであることがより好ましい。マイクロ流路20の高さhが0.1mm未満であると、ガスが流れるコンダクタンスが小さくなり処理量が低下する。マイクロ流路20の高さhが2.0mm以下であると、気体の還元反応の効率を高めることができる。
また、マイクロ流路20の長さは、任意であり、長いほど、多くの液体を処理できる。
マイクロ流路20は、直線形状に限らず、折り返し流路としてもよい。
また、マイクロ流路20を循環させる形状とすることもできる。例えば、液体導入口40あるいはマイクロ流路20の始点上流に、マイクロ流路20の終点或いは液体導出口90を接続して、液体を循環させてもよい。
【0035】
「気体導入口」
気体導入口30の内径は、特に限定されず、気液導入路22の幅や高さに応じて適宜調整される。
気体導入口30には、気体導入口30と気体の供給源であるガスボンベ等を接続する気体導入管31が接続されている。
【0036】
「液体導入口」
液体導入口40の内径は、特に限定されず、気液導入路22の幅や高さに応じて適宜調整される。
液体導入口40には、液体導入口40と液体の供給源を接続する液体導入管41が接続されている。
【0037】
「気体導出口」
気体導出口70の内径は、特に限定されず、マイクロ流路20の幅や高さに応じて適宜調整される。
気体導出口70には、気体導出口70と、マイクロ流路20内にて気体の還元によって生成した反応気体を収容する気体回収部とを接続する気体導出管71が接続されている。
【0038】
「気体選択透過フィルタ」
本実施形態のガス還元装置1は、気体導出口70に設けられ、マイクロ流路20から導出される反応気体に含まれる不純物を除去する80を備えることが好ましい。気体選択透過フィルタ80は、反応気体のみを選択的に透過し、水分を透過しないものであれば、特に限定されない。気体選択透過フィルタ80としては、例えば、疎水性の材料からなる多孔質体が挙げられる。疎水性の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。気体選択透過フィルタ80を設けることにより、マイクロ流路20から目的とする反応気体のみを回収することができる。すなわち、反応気体に含まれる不純物は、気体選択透過フィルタ80によって除去される。排出された気体はガス分離膜を通して、有用なガス成分のみを取り出して利用してもよい。例えば、メタンを分離するためのメタン分離膜を利用して、メタンを分離できる。
【0039】
「液体導出口」
本実施形態のガス還元装置1は、マイクロ流路20に接続され、マイクロ流路20から反応液体を導出する液体導出口90を備えていることが好ましい。液体導出口90は、反応器本体10に形成されている。液体導出口90は、マイクロ流路20に対向する位置にて、第2基材12を厚さ方向に貫通するように形成され、マイクロ流路20と連通している。これにより、液体導出口90を介してマイクロ流路20から反応液体を、マイクロ流路20の外部に導出することができる。液体導出口90には、液体導出口90と、マイクロ流路20から導出した反応液体を収容する液体回収部とを接続する液体導出管91が接続されている。
【0040】
「電圧印加手段」
本実施形態のガス還元装置1は、陰極50と陽極60に電圧を印加する電圧印加手段100を備えることが好ましい。電圧印加手段100により、陰極50と陽極60に電圧を印加することにより、マイクロ流路20の気体を還元することができる。
電圧印加手段100により印加する電圧には特に制限はないが、例えば、-10V~-1V、好ましくは-5V程度印加すればよい。
【0041】
本実施形態のガス還元装置1は、反応器本体10を2つ以上備えていてもよい。その場合、反応器本体10を2つ以上並列に備えていることがより好ましい。反応器本体10に形成されたマイクロ流路20は小さいため、1つのマイクロ流路20で1度に処理できる気体の量(処理量)は少ない。そこで、反応器本体10を2つ以上備えることにより、単位時間当たりの処理量を向上することができる。本反応器は、半導体プロセスにより集積化、大量生産することが可能であり、例えば、1000個以上の反応器を並列に集積化、あるいは配列することで、1つの反応器本体10に対して1000倍以上の処理速度を得る反応器を構成することも可能である。
【0042】
本実施形態のガス還元装置1は、陰極50と陽極60以外に、参照電極を備えていてもよい。
本実施形態のガス還元装置1が参照電極を備えていることにより、反応器本体10の構造に伴う電圧の変動を抑え、還元反応が生じる電圧を安定して印加することができる。
【0043】
「気液混合流」
本実施形態のガス還元装置1は、気体導入口30から気体を、液体導入口40から液体を導入することにより、気液混合流を形成する。
本実施形態における気液混合流は、気泡流、スラグ流、フロス流、環状流、波状流、噴霧流のいずれでもよい。好ましくは、マイクロ流路20内に気体と液体が交互に形成されるスラグ流であることが好ましい。
本実施形態のガス還元装置1では、気相と、液相がマイクロ流路20内の電極間で形成されることで、効率よく、気体が還元される特徴がある。
【0044】
「液体、気体の導入」
本実施形態のガス還元装置1は、液体導入口40から液体を導入した状態で、気体導入口30から気体を導入することにより、気液混合流を形成することができる。
気体の気体導入口30からの流入速度は、0.01sccm~100sccmであればよく、0.1sccm~10sccmが好ましい。
例えば、二酸化炭素を還元し、メタンを生成する場合は、マイクロ流路内に、液体導入口40から液体を導入した状態で、気体導入口30から気体を導入し続けることで、気液混合流を形成する。気液混合流がマイクロ流路内を満たし、形成、保持された状態で、電圧を印加して還元反応を起こす。
【0045】
本実施形態のガス還元装置1によれば、例えば、陰極、陰極触媒に銅を用いた場合、二酸化炭素を、ほとんど、メタンに還元することができるなど、気体の還元を高効率で行うことができる。本実施形態のガス還元装置1は、陰極50と陽極60とを備え、気体を分離するためのセパレータを備えていないため、陰極50と陽極60の間において、大きな還元電流密度が得られる。従って、気体の還元反応の効率が高くなる。
また、従来、炭化水素生成反応で用いられていた、イオン交換膜等の固体電解質膜を用いていないため、固体電解質中の水素イオンの拡散も二酸化炭素の還元反応を律速する要因となることがなく、高い還元効率が得られる。
【0046】
本実施形態のガス還元装置1において、気体の高い還元効率が得られる原因は現在検討中であるが、以下のような要因ではないかと推測される。
本実施形態のガス還元装置1は、マイクロ流路20内で陰極50と陽極60とが対向した状態で、電圧を印加して、気液混合流を還元する。
このとき、マイクロ流路という狭い空間で気体が導入され気液混合流が形成され続ける状況であるため、反応によって生じた反応種の高速拡散、並びに、気液混合流および反応に伴う気体発生に伴う絶え間ない圧力変動により、マイクロ反応場で各種反応が促進されるのではないかと考えられる。
これに加え、陰極表面の細線化、ポーラス化などの電極の表面効果、電極局所で生じる反応のホットスポット、および、反応に伴い生じた熱の揺らぎなどの温度揺らぎの効果も加わることで、より、反応が促進され、高い還元効率が生じているのではないかと考えられる。
【0047】
[ガス還元方法]
本発明の一実施形態に係るガス還元方法は、上述の実施形態のガス還元装置を用いたガス還元方法であって、前記液体導入口から前記マイクロ流路内に液体を導入する工程(以下、「第1の工程」と言う。)と、前記気体導入口から前記マイクロ流路内の液体に気体を導入し、気液混合流を形成する工程(以下、「第2の工程」と言う。)と、前記陰極と前記陽極に電圧を印加し、前記液体中で前記気体を還元する工程(以下、「第3の工程」と言う。)と、前記気体導出口を介して前記マイクロ流路から前記気体の還元によって生成した反応気体を導出する工程(以下、「第4の工程」と言う。)と、を有する。マイクロ流路内に導入した液体は液体導出口から連続的に排出してもよい。
【0048】
以下、
図1~
図4を参照して、本実施形態のガス還元方法を説明する。
【0049】
「第1の工程」
第1の工程では、反応器本体10の液体導入口40から、気液導入路22と気液混合器21を介して、マイクロ流路20内に液体を導入する。
【0050】
液体としては、マイクロ流路20内で還元する気体を溶解、または分散することができるものであれば特に限定されないが、例えば、水、エタノールおよびカルボン酸類から選択される少なくとも1種を含む液体が挙げられる。具体的には、液体としては、電解液が挙げられる。電解液としては、例えば、塩を溶かした水溶液、エタノールを含む液体、カルボン酸を含む液体等が挙げられる。なお、水やエタノール、カルボン酸類(R-COOH)は還元反応における水素の供給源として作用する。
【0051】
「第2の工程」
第2の工程では、反応器本体10の気体導入口30からマイクロ流路20内の液体に気体を導入する。マイクロ流路20内の液体に気体を導入することにより、マイクロ流路20内にて、気液混合流を発生させる。
【0052】
気体としては、マイクロ流路20内の液体に気液混合流を形成できるものであれば特に限定されないが、例えば、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、酸化窒素等が挙げられる。
【0053】
「第3の工程」
第3の工程では、電圧印加手段100により、陰極50と陽極60に電圧を印加し、マイクロ流路20内の液体中で気体を還元する。マイクロ流路20内に気液混合流を発生させると、気相と液相が陰極50の還元触媒金属52上で物質(主に気体)を還元し、その結果として、還元気体(反応気体)が生成する。
【0054】
本実施形態のガス還元方法では、陰極50に-1Vよりも低い還元電圧(例えば、-3V~-5V)を印加して、マイクロ流路20内に電気化学的な還元反応を誘起する。この際、マイクロ流路20内では、電気化学的な反応だけでなく、非ファラデー反応を起こすことも可能である。つまり、電気化学的な反応では、還元電流により律速されるよりも大きな反応速度が得られる。
【0055】
例えば、気体が二酸化炭素を含み、液体が水である場合、二酸化炭素を還元することにより、下記の反応式(1)に示すように、メタンが生成する。
8H++CO2→CH4+2H2O・・・(1)
【0056】
また、還元触媒金属52が鉄であり、気体が窒素を含み、液体が水溶液電解質を利用した場合、窒素を還元することにより、下記の反応式(2)に示すように、アンモニアが生成する。
N2+6H+→2NH3・・・(2)
【0057】
「第4の工程」
第4の工程では、反応器本体10の気体導出口70を介してマイクロ流路20から気体の還元によって生成した反応気体を導出する。
なお、この工程では、生成物が液体である場合は、液体導出口90を介してマイクロ流路20から気体の還元によって生成した反応液体を導出する。
【0058】
本実施形態のガス還元方法では、小型の閉じた小さな空間であるマイクロ流路20内で気液混合流での気体の還元反応を起こすため、気体が高速で拡散し、大きな空間では起きない気体の還元反応が発生する。
【0059】
本実施形態のガス還元方法では、大きな還元電流により、局所的な加熱(温度の高い箇所が部分的に発生するホットスポット現象)や、ガス発生(圧力上昇)が起きて、気体の還元反応を促進することができる。なお、負のエンタルピーを持つ反応では、高い圧力で反応が促進される。また、高い圧力では、マイクロ流路20内において、液体へのガスの溶解度が増す。その結果、気体の還元反応の効率が高くなる。
【0060】
本実施形態のガス還元方法では、小型の閉じた小さな空間であるマイクロ流路20内で気体の還元反応を起こすため、電解質のイオン積(水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)の積)の増強も期待される。つまり、平衡状態にある水よりも大きな水素イオンが存在でき、還元に利用できる可能性がある。
【0061】
本実施形態のガス還元方法では、酸素によって還元触媒金属52が酸化されるのを防ぐために、マイクロ流路20内の液体に酸化膜を除去する溶剤を添加してもよい。例えば、0.1質量%以下の濃度となるように、電解液にフッ化水素を混合してもよい。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例]
(ガス還元装置の作製)
下記の通り、マイクロ流路(流路断面積1mm×0.4mm、流路長さ10mm)を有する反応器本体を作製した。
【0064】
シリコンからなる2つ基材(陰極基材と陽極基材)をそれぞれの側面で、絶縁部材を介して接合した。それぞれの基材には、互いに対向する面から、それぞれの基材の厚さ方向と垂直な方向に凹む凹部が形成されている。2つ基材を、それぞれの側面が対向するように配置することにより、それぞれの基材の凹部によってマイクロ流路を形成した。
【0065】
次に、フォトリソグラフィーにより、2つ基材の側面のうち、電極を形成しない部分をフォトレジストで保護した。
次に、0.5mol/Lの硝酸銀と0.14mol/Lのフッ化水素の混合溶液に、マイクロ流路が形成されたシリコン基板を11分~12分浸漬して、銀微粒子をマイクロ流路の内側面に形成した。
【0066】
次に、過酸化水素20mLと、フッ化水素(50%)50mLと、DI水10mLとからなる溶液に、銀微粒子を形成したシリコン基板を浸漬して、銀の局所的な電気化学反応により、マイクロ流路の内側面にポーラスシリコンを形成した。
次に、DI水、およびメタノールで、シリコン基板を洗浄した。
【0067】
次に、無電解めっきにより、ポーラスシリコンに銅を堆積して(担持させて)、陰極を形成した。キャタリスト処理を5分、活性化剤工程を8分、無電解銅めっき工程を15分~20分とし、最後にDI水でシリコン基板を洗浄した。
【0068】
次に、無電解めっきにより、マイクロ流路の内側面のうち、銅を堆積した面と対向する面の一部に、ニッケルを堆積して陽極を形成した。
【0069】
次に、2つのガラス基板のそれぞれの一面に薄膜ポリイミド(薄膜接着剤)を塗布し、2つのガラス基板で、上述のように陰極および陽極を形成したシリコン基板を挟持して、2つのガラス基板とシリコン基板が積層されてなる反応器本体を得た。なお、2つのガラス基板とシリコン基板は、薄膜ポリイミド(接着層)を介して積層されている。これにより反応器本体内に陰極と陽極が設けられたマイクロ流路を形成した。
【0070】
なお、ガラス基板の一方としては、気体導入口、液体導入口および気体導出口を形成したものを用いた。
【0071】
次に、気体導入口には気体導入管を接続し、液体導入口には液体導入管を接続し、気体導出口には気体導出管を接続した。また、気体導出口には、ポリテトラフルオロエチレンの多孔質体からなる気体選択透過フィルタを配置し、ガス還元装置を得た。
【0072】
(還元反応による二酸化炭素の還元)
DI水に、0.1mol/Lの炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)を添加した電解液を還元液体として用いた。
予め液体導入口からガス還元装置のマイクロ流路内に還元液体を導入した。
室温(25℃)で、流量制御装置により、気体導出口からマイクロ流路内の還元液体に二酸化炭素を、流量3sccmで流し、-5Vの電圧、平均で-12mAの電流を-300mA/cm
2の電流密度で陰極に流して、二酸化炭素の還元反応を促進した。
二酸化炭素の還元反応により生成したガスを抽出し、SIMAZU社製社製のGC-2014Aを用いたガスクロマトグラフィーで分析した。結果を
図5に示す。
図5に示す結果から、還元によって発生したガスは100%がメタンであった。