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特開2024-70167光変調器、光送信器及び光変調器のバイアス電圧調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070167
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】光変調器、光送信器及び光変調器のバイアス電圧調整方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
G02F1/01 B
G02F1/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180613
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆徳
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA20
2K102DA04
2K102DB05
2K102DD03
2K102DD05
2K102EA02
2K102EA25
2K102EB20
2K102EB22
2K102EB29
(57)【要約】
【課題】簡易な信号測定によってバイアス電圧を調整可能な光変調器を提供する。
【解決手段】MZ光変調器101には、2本のアームの一方にMZ光変調器10が配置され、他方にMZ光変調器20が配置される。光検出器31は、MZ光変調器10からの変調光L1をモニタし、モニタ結果を示すモニタ信号M1を出力する。光検出器32は、MZ光変調器20からの変調光L2をモニタし、モニタ結果を示すモニタ信号M2を出力する。光検出器33は、MZ光変調器101からの光信号L3をモニタし、モニタ結果を示すモニタ信号M3を出力する。バイアス生成部1は、モニタ信号M1~M3に基づいて、前記第1~第3のMZ光変調器に与えるバイアス電圧V1~V3のそれぞれを独立して調整する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のアームの一方に第1のマッハツェンダ型光変調器が配置され、前記2本のアームの他方に第2のマッハツェンダ型光変調器が配置される、第3のマッハツェンダ型光変調器と、
前記第1のマッハツェンダ型光変調器からの第1の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第1のモニタ信号を出力する第1の光検出器と、
前記第2のマッハツェンダ型光変調器からの第2の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第2のモニタ信号を出力する第2の光検出器と、
前記第3のマッハツェンダ型光変調器からの第3の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第3のモニタ信号を出力する第3の光検出器と、
前記第1~第3のモニタ信号に基づいて、前記第1~第3のマッハツェンダ型光変調器に与える第1~第3のバイアス電圧のそれぞれを独立して調整するバイアス電圧生成部と、を備える、
光変調器。
【請求項2】
前記バイアス電圧生成部は、前記第1及び第2のバイアス電圧を調整した後に、前記第3のバイアス電圧を調整する、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記光変調器及び前記光検出器は、同じ半導体基板上に形成される半導体装置として構成される、
請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記第3のマッハツェンダ型光変調器に光を出力する光源は半導体装置として構成され、前記光変調器及び前記光検出器と、前記同じ半導体基板上に形成される、
請求項3に記載の光変調器。
【請求項5】
前記第1~第3のマッハツェンダ型光変調器のそれぞれの出力端に配置された2入力2出力の第1~第3のカプラをさらに備え、
前記第1の光検出器は、前記第1のカプラの一方の出力からの前記第1の出力光を検出し、
前記第2の光検出器は、前記第2のカプラの一方の出力からの前記第2の出力光を検出し、
前記第3の光検出器は、前記第3のカプラの一方の出力からの前記第3の出力光を検出し、
前記第1のカプラの他方の出力は前記第3のカプラの一方の入力と接続され、前記第2のカプラの他方の出力は前記第3のカプラの他方の入力と接続され、
前記第3のカプラの出力の他方からは、前記光変調器の出力光が出力される、
請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項6】
前記第1~第3の光検出器のそれぞれは、前記第1~第3のマッハツェンダ型光変調器ごとのモニタを行い、他のマッハツェンダ型光変調器のモニタ結果を含む信号を出力しない、
請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項7】
前記第1及び第2の出力光は、前記第1及び第2の出力光が前記第3のマッハツェンダ型光変調器によって合波されて前記第3の出力光となった後に、前記第3の光検出器が前記第1及び第2のマッハツェンダ型光変調器に与える前記第1及び第2のバイアス電圧を調整するために検出する信号を含まない、
請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項8】
光源と、
前記光源からの光を変調して光信号を出力する光変調器と、を備え、
前記光変調器は、
2本のアームの一方に第1のマッハツェンダ型光変調器が配置され、前記2本のアームの他方に第2のマッハツェンダ型光変調器が配置される、第3のマッハツェンダ型光変調器と、
前記第1のマッハツェンダ型光変調器からの第1の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第1のモニタ信号を出力する第1の光検出器と、
前記第2のマッハツェンダ型光変調器からの第2の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第2のモニタ信号を出力する第2の光検出器と、
前記第3のマッハツェンダ型光変調器からの第3の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第3のモニタ信号を出力する第3の光検出器と、
前記第1~第3のモニタ信号に基づいて、前記第1~第3のマッハツェンダ型光変調器に与える第1~第3のバイアス電圧のそれぞれを独立して調整するバイアス電圧生成部と、を備える、
光送信器。
【請求項9】
2本のアームの一方に第1のマッハツェンダ型光変調器が配置され、前記2本のアームの他方に第2のマッハツェンダ型光変調器が配置される、第3のマッハツェンダ型光変調器において、
前記第1のマッハツェンダ型光変調器からの第1の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第1のモニタ信号を出力し、
前記第2のマッハツェンダ型光変調器からの第2の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第2のモニタ信号を出力し、
前記第3のマッハツェンダ型光変調器からの第3の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第3のモニタ信号を出力し、
前記第1~第3のモニタ信号に基づいて、前記第1~第3のマッハツェンダ型光変調器に与える第1~第3のバイアス電圧のそれぞれを独立して調整する、
光変調器のバイアス電圧調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光変調器、光送信器及び光変調器のバイアス電圧調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を所定の変調方式で変調して光信号を送信するにあたり、各種に光変調器が用いられている。例えば、四位相偏移変調(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)信号を送信する場合には、Iチャネル(Inphase Channel)及びQチャネル(Quadrature Channel)のそれぞれに1つのマッハツェンダ(MZ:Mach-Zehnder)型光変調器(以下、MZ変調器)を設け、2つのMZ光変調器を合波して光信号を送信する構成が知られている(特許文献1及び2)。
【0003】
例えば、光変調器の出力に1つのモニタ用フォトダイオードを接続し、出力光の強度をモニタして、バイアス点変動による出力ずれが小さくなるようにバイアス電圧をフィードバック制御する構成が提案されている(特許文献1)。この構成では、ニオブ酸リチウム(LiNbO3、以下LN)光変調器が2つのMZ光変調器を有し、2つのMZ光変調器の出力光を合波した光を光信号として出力している。そのため、2つのMZ光変調器のそれぞれに与えるバイアス電圧に加え、2つのMZ光変調器の出力光を合波する前に一方の出力光の位相を調整するためのバイアス電圧を調整する必要がある。よって、この構成では、1つのモニタ用フォトダイオードのみで検出した情報に基づいて、これらのバイアス電圧を調整している。
【0004】
また、1つのモニタ用フォトダイオードの情報だけから、これらのバイアス電圧を調整するために、各MZ光変調器の出力光にディザ(dither)信号などのバイアス電圧調整用の信号を重畳して、バイアス点の変化を検知する手法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/117159号
【特許文献2】特開2013-168440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2にかかる構成では、光変調器としてLN光変調器を用いており、LN光変調器の外部にモニタ用フォトダイオードを接続しなければならないため、全体のサイズが大きくなってしまう。よって、これらを1つのパッケージ内に収めようとしても、パッケージサイズが大きくなってしまい、その結果、コストも高くなってしまう。
【0007】
また、各MZ光変調器の出力光にディザ信号などのバイアス電圧調整用の信号を重畳する場合には、高性能な検出器や測定機材、高度な波形信号処理技術が必要となり、さらなる高コスト化を招いてしまう。
【0008】
本開示は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、簡易な信号測定によってバイアス電圧を調整可能な光変調器を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様である光変調器は、2本のアームの一方に第1のマッハツェンダ型光変調器が配置され、前記2本のアームの他方に第2のマッハツェンダ型光変調器が配置される、第3のマッハツェンダ型光変調器と、前記第1のマッハツェンダ型光変調器からの第1の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第1のモニタ信号を出力する第1の光検出器と、前記第2のマッハツェンダ型光変調器からの第2の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第2のモニタ信号を出力する第2の光検出器と、前記第3のマッハツェンダ型光変調器からの第3の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第3のモニタ信号を出力する第3の光検出器と、前記第1~第3のモニタ信号に基づいて、前記第1~第3のマッハツェンダ型光変調器に与える第1~第3のバイアス電圧のそれぞれを独立して調整するバイアス電圧生成部と、を備えるものである。
【0010】
本開示の一態様である光送信器は、光源と、前記光源からの光を変調して光信号を出力する光変調器と、を備え、前記光変調器は、2本のアームの一方に第1のマッハツェンダ型光変調器が配置され、前記2本のアームの他方に第2のマッハツェンダ型光変調器が配置される、第3のマッハツェンダ型光変調器と、前記第1のマッハツェンダ型光変調器からの第1の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第1のモニタ信号を出力する第1の光検出器と、前記第2のマッハツェンダ型光変調器からの第2の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第2のモニタ信号を出力する第2の光検出器と、前記第3のマッハツェンダ型光変調器からの第3の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第3のモニタ信号を出力する第3の光検出器と、前記第1~第3のモニタ信号に基づいて、前記第1~第3のマッハツェンダ型光変調器に与える第1~第3のバイアス電圧のそれぞれを独立して調整するバイアス電圧生成部と、を備えるものである。
【0011】
本開示の一態様である光変調器のバイアス電圧調整方法は、2本のアームの一方に第1のマッハツェンダ型光変調器が配置され、前記2本のアームの他方に第2のマッハツェンダ型光変調器が配置される、第3のマッハツェンダ型光変調器において、前記第1のマッハツェンダ型光変調器からの第1の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第1のモニタ信号を出力し、前記第2のマッハツェンダ型光変調器からの第2の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第2のモニタ信号を出力し、前記第3のマッハツェンダ型光変調器からの第3の出力光をモニタし、モニタ結果を示す第3のモニタ信号を出力し、前記第1~第3のモニタ信号に基づいて、前記第1~第3のマッハツェンダ型光変調器に与える第1~第3のバイアス電圧のそれぞれを独立して調整するものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、簡易な信号測定によってバイアス電圧を調整可能な光変調器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1にかかる光送信器の構成を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1にかかる光変調器の構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態1にかかる光変調器の構成をより詳細に示す図である。
図4】実施の形態1にかかる光変調器のバイアス電圧調整動作のフローチャートである。
図5】実施の形態1にかかる光変調器のバイアス電圧調整動作の変形例のフローチャートである。
図6】実施の形態2にかかる光送信器の上面図を模式的に示す図である。
図7】実施の形態2にかかる光送信器の側面図を模式的に示す図である。
図8】実施の形態2にかかる光送信器の上面図を模式的に示す図である。
図9】実施の形態2にかかる光送信器の側面図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0015】
実施の形態1
実施の形態1にかかる光送信器1000について説明する。光送信器1000は、外部の通信ホストである光伝送装置などから入力される制御信号やデータ信号に応じて、光信号を送信する。光送信器1000が送信する光信号は特に限定されるものではないが、本実施の形態では、光送信器1000は、例えば、QPSK信号などを送信可能なものとして構成することができる。また、振幅を多値化して直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)信号としてもよい。
【0016】
図1に、実施の形態1にかかる光送信器1000の構成を模式的に示す。光送信器1000は、光変調器100及び光源2を有する。光変調器100と光源2とは、光導波路WG0で接続される。
【0017】
光源2は、例えば、半導体光素子とリング共振器とで構成される波長可変光モジュールなどとして構成され、光導波路WG0を介して光変調器100へ、レーザ光である光L0を出力する。なお、光源2は、これに限られるものではなく、レーザ光を出力する半導体レーザなどの各種の発光素子及び光源モジュールを用いることができる。
【0018】
図2に、実施の形態1にかかる光変調器100の構成を模式的に示す。光変調器100は、MZ光変調器101、バイアス生成部1及び光検出器31~33を有する。MZ光変調器101は、2本のアームのそれぞれに、MZ光変調器10及び20が配置されたものとして構成される。なお、以下では、MZ光変調器10を第1のMZ光変調器、MZ光変調器20を第2のMZ光変調器、MZ光変調器101を第3のMZ光変調器とも称する。
【0019】
MZ光変調器101は、半導体光変調器や、LN基板上に作製されたLN光変調器などの、各種の光変調器を適用することができる。
【0020】
図3に、実施の形態1にかかる光変調器100の構成をより詳細に示す。MZ光変調器101は、MZ光変調器10及び20、光カプラC0~C3、C10及びC20、位相変調領域P3、及び、複数の光導波路を有するものとして構成される。なお、以下では、光カプラC1~C3を、それぞれ第1~第3の光カプラとも称する。
【0021】
バイアス生成部1は、光検出器31~33からそれぞれ出力されるモニタ信号M1~M3に基づいて、MZ光変調器10及び20と、位相変調領域P3とに、バイアス電圧を印加する。なお、以下では、光検出器31~33を、それぞれ第1~第3の光検出器とも称する。モニタ信号M1~M3を、それぞれ第1~第3のモニタ信号とも称する。バイアス電圧V1~V3を、それぞれ第1~第3のバイアス電圧とも称する。
【0022】
光源2からの光L0は、光導波路WG0を伝搬し、1入力2出力の光カプラC0によって、光導波路WG1及びWG2に分岐される。
【0023】
MZ光変調器10及び20は、光導波路からなる2本のアームに設けられた位相変調領域にデータ信号を印加することで、所定の変調方式で変調された変調光を出力する、同じ構成を有するマッハツェンダ型光変調器として構成される。
【0024】
位相変調領域とは、光導波路上に形成された電極を有する領域である。この電極に電気信号、例えば電圧信号がデータ信号として印加すると、電極の下の光導波路の実効屈折率が変化する。これにより、光導波路の実質的な光路長が変化するので、光導波路を通過する光の位相が変化する。その結果、2本の光導波路の間を伝搬する光の間に位相差を与えることで、出力光を変調することができる。また、位相変調領域にバイアス電圧を印加することで、マッハツェンダ型光変調器の動作点を調整することが可能である。
【0025】
MZ光変調器10は、入力側に1入力2出力の光カプラC10が配置され、出力側に2入力2出力の光カプラC1が配置され、これらの間に、光導波路WG11及びWG12が並列に接続される。つまり、光導波路WG11によって光カプラC10の一方の出力と光カプラC1の一方の入力とが接続され、光導波路WG12によって光カプラC10の他方の出力と光カプラC1の他方の入力とが接続される。光導波路WG11には位相変調領域P11が設けられ、光導波路WG12には位相変調領域P12が設けられる。
【0026】
光変調器へのデータ信号及びバイアス電圧を印加する方法は様々であるが、本実施の形態では、位相変調領域P11にデータ信号D1が印加され、位相変調領域P12には、バイアス生成部1によって、バイアス電圧V1が印加されるものとする。なお、光変調器100が光信号L3としてQPSK信号を出力する場合、データ信号D1は、例えば、Iチャネルにかかる信号を変調するデータ信号としてもよい。
【0027】
光カプラC0の一方の出力と光カプラC10の入力との間は、光導波路WG1によって接続される。これにより、光カプラC10に入力された光L0は、光導波路WG11及びWG12に分岐される。光導波路WG11を伝搬する光L0は位相変調領域P11に印加されるデータ信号D1に応じて変調され、光カプラC1へ出力される。光導波路WG12を伝搬する光L0は位相変調領域P12に印加されるバイアス電圧V1に応じて位相が調整されて、光カプラC1へ出力される。
【0028】
光カプラC1は、光導波路WG11及びWG12から入力された光を合波し、合波した変調光L1を光導波路WG13及びWG14へ分岐する。なお、以下では、変調光L1を、第1の出力光とも称する。
【0029】
光検出器31は、光導波路WG13によって光カプラC1の出力の一方と接続され、変調光L1が入力される。これにより、光検出器31は、変調光L1の強度のモニタ結果を示すモニタ信号M1を、バイアス生成部1へ出力する。
【0030】
上述の通り、MZ光変調器20は、MZ光変調器10と同様の構成を有する。MZ光変調器20は、入力側に1入力2出力の光カプラC20が配置され、出力側に2入力2出力の光カプラC2が配置され、これらの間に、光導波路WG21及びWG22が並列に接続される。つまり、光導波路WG21によって光カプラC20の一方の出力と光カプラC2の一方の入力とが接続され、光導波路WG22によって光カプラC20の他方の出力と光カプラC2の他方の入力とが接続される。光導波路WG21には位相変調領域P21が設けられ、光導波路WG22には位相変調領域P22が設けられる。
【0031】
光変調器へのデータ信号及びバイアス電圧を印加する方法は様々であるが、本実施の形態では、位相変調領域P21にデータ信号D2が印加され、位相変調領域P22には、バイアス生成部1によって、バイアス電圧V2が印加されるものとする。なお、光変調器100が光信号L3としてQPSK信号を出力する場合、データ信号D2は、例えば、Qチャネルにかかる信号を変調するデータ信号としてもよい。
【0032】
光カプラC0の他方の出力と光カプラC20の入力との間は、光導波路WG2によって接続される。これにより、光カプラC20に入力された光L0は、光導波路WG21及びWG22に分岐される。光導波路WG21を伝搬する光L0は位相変調領域P21に印加されるデータ信号D2に応じて変調され、光カプラC2へ出力される。光導波路WG22を伝搬する光L0は位相変調領域P22に印加されるバイアス電圧V2に応じて位相が調整されて、光カプラC2へ出力される。
【0033】
光カプラC2は、光導波路WG21及びWG22から入力された光を合波し、合波した変調光L2を光導波路WG23及びWG24へ分岐する。なお、以下では、変調光L2を、第2の出力光とも称する。
【0034】
光検出器32は、光導波路WG24によって光カプラC2の出力の一方と接続され、変調光L2が入力される。これにより、光検出器32は、変調光L2の強度のモニタ結果を示すモニタ信号M2を、バイアス生成部1へ出力する。
【0035】
光カプラC1の他方の入力と、2入力2出力の光カプラC3の一方の入力と、の間は、光導波路WG14により接続される。光カプラC2の他方の入力と、光カプラC3の他方の入力と、の間は、光導波路WG23により接続される。また、光導波路WG23には、位相変調領域P3が設けられる。位相変調領域P3には、バイアス生成部1によってバイアス電圧V3が印加される。これにより、光導波路WG23を伝搬する変調光L2は位相変調領域P3に印加されるバイアス電圧V3に応じて位相が調整されて、光カプラC3へ出力される。
【0036】
光カプラC3は、光導波路WG14から入力される変調光L1と光導波路WG23から入力される変調光L2とを合波し、合波した光信号L3を光導波路WG15及びWG25へ分岐する。光導波路WG15に分岐された光信号L3は、光変調器100の外部へ送信される。なお、以下では、光信号L3を、第3の出力光とも称する。
【0037】
光検出器33は、光導波路WG25によって光カプラC3の出力の一方と接続され、光信号L3が入力される。これにより、光検出器33は、光信号L3の強度のモニタ結果を示すモニタ信号M3を、バイアス生成部1へ出力する。
【0038】
光検出器31~33は、例えば、半導体光検出器として構成される。半導体光検出器は、例えば、入力される光をフォトダイオードで電流信号に変換し、電流信号をトランスインピーダンスアンプなどで電圧信号に変換する半導体回路として構成されてもよい。この場合、出力される電圧信号が、上述のモニタ信号M1~M3に対応する。
【0039】
以上より、バイアス生成部1は、モニタ信号M1を参照してバイアス電圧V1を調整することで、MZ光変調器10が出力する変調光L1の強度を、独立してフィードバック制御することができる。同様に、バイアス生成部1は、モニタ信号M2を参照してバイアス電圧V2を調整することで、MZ光変調器20が出力する変調光L2の強度を、独立してフィードバック制御することができる。
【0040】
また、バイアス生成部1は、モニタ信号M3を参照してバイアス電圧V3を調整することで、光カプラC3から出力される光信号L3の強度を、独立してフィードバック制御することができる。
【0041】
上述した光カプラC1~C3は、本実施の形態では、2入力2出力のMMI(Multimode Interferometer)カプラ、又は、方向性結合器カプラとして構成することができる。
【0042】
次いで、光変調器100のバイアス電圧調整動作について説明する。図4に、実施の形態1にかかる光変調器100のバイアス電圧調整動作のフローチャートを示す。
【0043】
ステップS1
バイアス生成部1は、モニタ信号M1によって、変調光L1の強度が所定の範囲R1内に収まっているかをモニタする。
【0044】
ステップS2
変調光L1の強度が所定の範囲R1内に収まっていない場合、バイアス生成部1は、変調光L1の強度が所定の範囲R1内に収まるようにバイアス電圧V1を調整する。つまり、バイアス生成部1は、MZ光変調器10から出力される変調光L1の強度のモニタ結果に基づいて、バイアス電圧V1を独立的にフィードバック制御できる。
【0045】
ステップS3
バイアス生成部1は、モニタ信号M2によって、変調光L2の強度が所定の範囲R2内に収まっているかをモニタする。
【0046】
ステップS4
変調光L2の強度が所定の範囲R2内に収まっていない場合、バイアス生成部1は、変調光L2の強度が所定の範囲R2内に収まるようにバイアス電圧V2を調整する。つまり、バイアス生成部1は、MZ光変調器20から出力される変調光L2の強度のモニタ結果に基づいて、バイアス電圧V2を独立的にフィードバック制御できる。
【0047】
ステップS5
バイアス電圧V1及びV2が所定の範囲に収まっていることを確認した後、バイアス生成部1は、モニタ信号M3によって、光信号L3の強度が所定の範囲R3内に収まっているかをモニタする。
【0048】
ステップS6
光信号L3の強度が所定の範囲R3内に収まっていない場合、バイアス生成部1は、光信号L3の強度が所定の範囲R3内に収まるようにバイアス電圧V3を調整する。ここでは、変調光L1及びL2は、既に、強度が所定の範囲に収まるように調整された後であるので、バイアス生成部1は、光信号L3の強度のモニタ結果に基づいて、バイアス電圧V3を独立的にフィードバック制御できる。
【0049】
なお、バイアス電圧V1及びV2を調整するにあたって、データ信号D1及びD2によって変調光L1及びL2を変調する場合、変調方式は限定されるものではなく、各種の変調方式を適用することができる。また、変調光L1及びL2に、バイアス電圧V1及びV2の調整に用いるためのディザ信号などの各種の信号を重畳してもよい。この場合、出力光L1及びL2がカプラC3で合波された光信号L3を光検出器33がモニタして出力するモニタ信号M3に含まれるディザ信号などの各種の信号の成分に基づいて、バイアス生成部1がバイアス電圧V1及びV2を調整できる。なお、上述したように、バイアス生成部1がモニタ信号M1~M3のそれぞれに基づいてバイアス電圧V1~V3を独立して調整する場合には、出力光L1及びL2にはディザ信号などの各種の信号が重畳されなくともよいことは、言うまでも無い。
【0050】
以上より、本構成によれば、初めに、2つのMZ光変調器から出力される変調光の強度をそれぞれ独立して調整する。その後、2つの変調光を合波した光信号の強度を調整できるので、光信号の強度を、2つの変調光の調整動作から切り離して、独立して調整することが可能となる。つまり、本構成によれば、2つの変調光及び光信号の調整のそれぞれを切り離すことで、2つの変調光及び光信号のそれぞれの強度を、独立して、かつ、容易に実行することができる。
【0051】
この調整動作は、ディザ信号などの各種の信号を重畳しなくとも、かつ、複雑な信号処理を要することなく、光の強度をモニタするだけで、簡易に実行することができる点で、有利である。また、この調整動作は、ディザ信号などの各種の信号を重畳したとしても、実行可能であることは、言うまでもない。
【0052】
なお、本構成では、光信号L3の調整に先立って、変調光L1及びL2の調整が完了していればよいので、変調光L1にかかるステップS1及びS2と、変調光L2にかかるステップS3及びS4とは、順番を入れ換えてもよい。すなわち、ステップS1及びS2を実行した後にステップS3及びS4を実行してもよいし、ステップS3及びS4を実行した後にステップS1及びS2を実行してもよい。
【0053】
また、変調光L1にかかるステップS1及びS2と、変調光L2にかかるステップS3及びS4とは、並行して実行してもよい。図5に、実施の形態1にかかる光変調器100のバイアス電圧調整動作の変形例のフローチャートを示す。図5においても、光信号L3の調整に先立って、変調光L1及びL2の調整を完了させることができるので、同様に、2つの変調光L1及びL2と光信号のL3との強度を、それぞれ独立して、かつ、容易に実行することができる。
【0054】
実施の形態2
実施の形態2にかかる光送信器について説明する。光送信器においては、光変調器を例えばLN光変調器として構成できる。しかし、この場合、半導体装置として構成される光検出器や光源と同一基板上に集積、換言すれば、基板材料の違いから、LN光変調器と、光検出器や光源などの半導体装置と、を同じ基板上に同一プロセスで作製することは、原理的に困難である。そのため、光検出器や光源などの半導体装置をLN光変調器とは別個に作製し、後の工程で組み立てる必要がある。
【0055】
さらに、同一基板上に集積できないために、その配置が制限され、光送信器が大型化してしまうという欠点がある。これに対し、近年の光モジュールの小型化要求や、規格によって制限された光モジュールの筐体内に光送信器を含む必要な部品を実装する上で、光送信器の小型化が望まれる。
【0056】
一方で、光変調器として、シリコンやリン化インジウム(InP)などの半導体材料からなる光導波路によって構成された半導体光変調器を用いることも可能である。この場合、光変調器、光検出器及び光源を、同じ半導体材料の基板上に同一プロセスにて容易に作製することが可能となる。図6に、実施の形態2にかかる光送信器2000の上面図を模式的に示す。図7に、実施の形態2にかかる光送信器2000の側面図を模式的に示す。光送信器2000においては、光変調器100と光源2とが、1つの半導体基板210上に形成されている。
【0057】
半導体基板210を覆う保護部材211上には、バイアス生成部1が搭載される。保護部材211は、例えば、光導波路コアに対する導波路クラッドとして構成される。バイアス生成部1は、MZ光変調器10及び20及び光検出器31~33とビア配線で接続される。図7では、簡略化のため、バイアス生成部1とMZ光変調器10とを接続するビア配線を符号212で、バイアス生成部1と光検出器31及び33のそれぞれとを接続するビア配線を符号213及び214で表示している。
【0058】
図7は、光送信器2000の模式的な側面図であり、簡略化のため、MZ光変調器20及び光検出器32の表示を省略し、かつ、各光導波路については符号WGにて表示している。なお、図7では省略しているが、MZ光変調器20及び光検出器32についても、バイアス生成部1とビア配線で接続されていることは、言うまでも無い。
【0059】
本構成によれば、光変調器、光検出器及び光源のレイアウトの自由度が増すため、LN光変調器の場合と比べて、これらをより稠密に集積することが可能となる。その結果、光送信器を小型化することが可能となる。
【0060】
また、MZ光変調器、光検出器及び光源を同一プロセスで一括して作製することができるので、LN光変調器を用いる場合と比べて、光送信器の製造に要する時間を短出することができる。本構成では、光変調器に3つの光検出器を追加して形成することになるが、同一の半導体プロセスで光源、MZ光検出器及び光検出器を一括形成できるので、光検出器を形成しない場合と比較して、大きなコスト増加を招くことなく実現することができる。
【0061】
さらに、上述のように、光送信器の小型化及び作製時間の削減により、製造コストの削減も実現することができる。
【0062】
なお、用途によっては、光源2と光変調器100とを分離して、所望の光源と光変調器とを柔軟に組み合わせたいニーズが有ることも考え得る。この場合、使用する波長に応じて光源を選択し、選択した光源2と、光変調器100と、をキャリア基板上に実装することで、光送信器を作製することができる。
【0063】
図8に、実施の形態2にかかる光送信器2001の上面図を模式的に示す。図9に、実施の形態2にかかる光送信器2001の側面図を模式的に示す。光送信器2001においては、キャリア基板230上に、光源2と及び半導体基板220が搭載される。光変調器100は、1つの半導体基板220上に形成されている。言うまでもないが、光源2と、光変調器100の光導波路WG0とは、光L0を伝送可能に調芯される。光送信器2001のその他の構成は、光送信器2000と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0064】
本構成によれば、同じ半導体基板上に光源を集積できないものの、光変調器100内のMZ変調器や光検出器のレイアウトの自由度は増すため、LN光変調器の場合と比べて、これらをより稠密に集積することが可能となる。その結果、光送信器を小型化することが可能となる。
【0065】
また、光送信器を小型化し、かつ、作製時間を削減することで、製造コストの削減も実現することができる。
【0066】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の光変調器は、単独で用いるだけでなく、複数個を並列配置したり、縦続配置したりしてもよい。この場合でも、各光変調器においては、上述のように、3つのバイアス電圧を独立して調整することが可能である。
【0067】
また、上述の半導体装置及び半導体基板は、特定の半導体材料に限られるものではなく、シリコンやInPなどの任意の半導体材料を用いることができる。
光検出器は、フォトダイオードとトランスインピーダンスアンプとを有するものとして説明したが、これは例示に過ぎず、光を検出できる限り任意の構成としてもよい。
【0068】
MZ光変調器10及び20に対するデータ信号及びバイアス電圧の印加は上述の実施の形態に限られるものではなく、同様の動作を実現できる限り、MZ光変調器10及び20は、他の構成としてもよい。例えば、特許文献1のように、MZ変調器10及び20の位相調整領域は、各アームにおいて、一方の電極をデータ信号用、他方をバイアス電圧用の2電極として、各アームのデータ信号用電極を対として差動のデータ信号を印加できるようにしてもよい。
【0069】
位相変調領域P3は、光導波路WG23上に設けられるものとして説明したが、これは例示に過ぎない。位相変調領域P3は、例えば、光導波路WG14上に設けられてもよいし、MZ光変調器101バイアス電圧を印加できる限り、適宜他の位置に配置してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 バイアス生成部
2 光源
10、20、101 MZ光変調器
31~33 光検出器
100 光変調器
210、220 半導体基板
211 保護部材
212~214 ビア配線
230 キャリア基板
1000、2000、2001 光送信器
C0~C4、C10、C20 光カプラ
D1、D2 データ信号
L0 光
L1、L2 変調光
L3 光信号
M1~M3 モニタ信号
P3、P11、P12、P21、P22 位相変調領域
V1~V3 バイアス信号
WG、WG0~WG2、WG11~WG15、WG21~WG25 光導波路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9