(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070174
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】車両用シートフレーム及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20240515BHJP
A47C 1/024 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C1/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180637
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大城 究人
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087DB02
3B087DB03
3B087DB07
3B099AA05
3B099BA04
3B099DA02
3B099DA03
(57)【要約】
【課題】シートフレーム本体の質量の増加を抑制しつつ、リクライナ周辺部における亀裂の発生を抑制することが可能な車両用シートフレーム及び車両用シートを得る。
【解決手段】リクライナ58及びクッションサイドフレーム24に結合された取付ブラケット66のシート幅方向の外側に隙間tが設けられた状態で補強ブラケット84が軸部54に固定される。これにより、取付ブラケット66がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに補強ブラケット84に当接し取付ブラケット66のさらなる変形が抑制されると共に取付ブラケット66に伝達された荷重が補強ブラケット84に伝達され、リクライナ58の下部側における歪みを緩和させ、取付ブラケット66とリクライナ58との溶接部の剥がれが抑制される。その結果、当該溶接部周辺の亀裂が抑制され、取付ブラケット66の板厚を厚くすることによるシートクッションフレーム18の質量の増加が抑制可能となる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションの骨格部材を成すシートクッションフレームと、
前記シートクッションに着座した着座乗員の上体を支持するシートバックの骨格部材を成すシートバックフレームと、
前記シートクッションフレームの側部を構成するクッションサイドフレームと前記シートバックフレームの側部を構成するバックサイドフレームとの間に設けられて両者に固定されると共に、ロックが解除されることによりシート幅方向に沿って配設され前記クッションサイドフレームが固定された軸部を中心に当該クッションサイドフレームに対して前記バックサイドフレームの回動を許容するリクライナと、
を備え、
前記リクライナに対してシート幅方向の外側から接合されると共に前記クッションサイドフレームの後端部に接合された取付ブラケットと、
前記取付ブラケットに対してシート幅方向の外側に隙間が設けられた状態で前記軸部に固定され、前記取付ブラケットにおける前記リクライナの下方側がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに当接して当該取付ブラケットのさらなる変形を抑制する補強ブラケットと、
を有する車両用シートフレーム。
【請求項2】
前記補強ブラケットは、
シート上下方向に沿って配置される本体部と
前記本体部の上方側に形成され、前記軸部が固定される軸孔が形成された軸孔部と、
前記軸孔及び前記本体部を間においてシート前後方向の前後に配置され、シート上下方向に沿って形成されると共にシート幅方向の外側へ向かって屈曲する一対の縦壁部と、
を含んで構成されている請求項1に記載の車両用シートフレーム。
【請求項3】
前記一対の縦壁部は、シート側面視でシート上下方向の略中央部において互いに近接する方向へ向かってそれぞれ略円弧状に突出する一対の円弧リブとされている請求項2に記載の車両用シートフレーム。
【請求項4】
前記リクライナに対して前記取付ブラケットが接合された接合部は、前記軸部よりもシート下方側かつシート前後方向の前方側に配置された第1接合部及び前記軸部よりもシート下方側かつシート前後方向の後方側に配置された第2接合部を含み、
シート側面視で前記第1接合部の下端部と前記第2接合部の下端部を結ぶ仮想上の第1直線上に前記円弧リブの頂部が配置されている請求項3に記載の車両用シートフレーム。
【請求項5】
前記補強ブラケットにおいて、前記第1直線に対して略直交し前記軸孔の中心を通る仮想上の第2直線と前記第1直線との交点が当該軸孔の中心とシート上下方向の下端との中間部に配置されるように設定されている請求項4に記載の車両用シートフレーム。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の車両用シートフレームを備え、前記リクライナを介して、前記シートクッションに対して前記シートバックがリクライニング可能とされている車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートフレーム及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シートバックフレームの側部を構成しリクライニング可能とされたバックサイドフレームに関する技術が開示されている。この先行技術では、リクライナのシート幅方向の外側に、バックサイドフレームに対して独立した状態でシート前後方向に回転可能とされたストッパプレートが設けられている。
【0003】
ここで、バックサイドフレームにはストッパが溶接されている。ストッパには、シート幅方向の外側を開口とする平面視で略U字状を成す当接部が形成されており、当該当接部に対してストッパプレートに形成された被当接部が当接することによって、バックサイドフレームの回転が規制されるようになっている。
【0004】
一方、車両の後面衝突時(以下、「車両の後突時」と称する)に慣性により乗員を介してバックサイドフレームに対してシート後方側へ向かう大荷重が入力された場合、当該ストッパにより、バックサイドフレームに作用する応力が分散可能とされ、リクライナ周辺部における亀裂の発生を抑制することが可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術において、バックサイドフレームに対してシート後方側へ向かう大荷重が入力されたとき、ストッパとバックサイドフレームとの溶接部において剥がれが生じると、バックサイドフレームに作用する応力を分散させることは困難となり、リクライナ周辺部において亀裂が発生する可能性が生じる。
【0007】
一般に、溶接する溶接部材の剥がれを抑制するには、溶接部材の板厚を厚くする等、溶接部材の剛性を向上させることが考えられるが、溶接部材の板厚を厚くすると、その分シートフレーム本体の質量が増加してしまう。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、シートフレーム本体の質量の増加を抑制しつつ、リクライナ周辺部における亀裂の発生を抑制することが可能な車両用シートフレーム及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る車両用シートフレームは、乗員が着座するシートクッションの骨格部材を成すシートクッションフレームと、前記シートクッションに着座した着座乗員の上体を支持するシートバックの骨格部材を成すシートバックフレームと、前記シートクッションフレームの側部を構成するクッションサイドフレームと前記シートバックフレームの側部を構成するバックサイドフレームとの間に設けられて両者に固定されると共に、ロックが解除されることにより前記クッションサイドフレームが固定された軸部を中心に当該クッションサイドフレームに対して前記バックサイドフレームの回動を許容するリクライナと、を備え、前記リクライナに対してシート幅方向の外側から接合されると共に前記クッションサイドフレームの後端部に接合された取付ブラケットと、前記取付ブラケットに対してシート幅方向の外側に隙間が設けられた状態で前記軸部に固定され、前記取付ブラケットにおける前記リクライナの下方側がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに当接して当該取付ブラケットのさらなる変形を抑制する補強ブラケットと、を有している。
【0010】
第1の態様に係る車両用シートフレームでは、シートクッションフレームと、シートバックフレームと、リクライナと、を備えている。シートクッションフレームは、シートクッションの骨格部材を成しており、シートバックフレームは、シートバックの骨格部材を成している。リクライナは、シートクッションフレームの側部を構成するクッションサイドフレームとシートバックフレームの側部を構成するバックサイドフレームとの間に設けられて両者に固定されると共に、当該リクライナによってロックが解除されることにより、クッションサイドフレームが固定された軸部を中心に当該クッションサイドフレームに対してバックサイドフレームが回動可能とされる。
【0011】
ここで、本態様では、車両用シートフレームは、取付ブラケット及び補強ブラケットをさらに備えている。取付ブラケットは、リクライナに対してシート幅方向の外側から接合されると共にクッションサイドフレームの後端部に接合されている。つまり、取付ブラケットは、リクライナ及びクッションサイドフレームに対して固定されている。
【0012】
また、補強ブラケットは、取付ブラケットに対して、シート幅方向の外側に隙間が設けられた状態で当該軸部に固定されている。そして、取付ブラケットにおけるリクライナの下方側がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに、補強ブラケットに当接し、これにより、当該取付ブラケットのさらなる変形が抑制可能とされる。
【0013】
例えば、シートバックフレームに対してシート後方側へ向かう大荷重が入力されたとき、リクライナの周辺部は、リクライナの軸部を介して当該軸部の下方側へ荷重が伝達されると共に、車両フロア側からは反力を受けることになる。
【0014】
前述のように、取付ブラケットは、リクライナ及びクッションサイドフレームに固定されているため、シートバックフレームに対してシート後方側へ向かう大荷重が入力されたとき、取付ブラケットには座屈応力が作用し、当該取付ブラケットはシート幅方向の外側へ座屈しようとする。
【0015】
取付ブラケットは、リクライナ及びクッションサイドフレームに対して接合(例えば、溶接等)されている(接合部)ため、リクライナ及びクッションサイドフレームに対してシート幅方向の外側に接合された取付ブラケットにおいてシート幅方向の外側へ向かって変形すると、当該接合部において、剥がれが生じる可能性がある。
【0016】
これに対して、本態様では、取付ブラケットに対してシート幅方向の外側に補強ブラケットが設けられている。このため、取付ブラケットにおけるリクライナの下方側がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに、補強ブラケットに当接することによって当該取付ブラケットのさらなる変形を抑制することが可能となり、取付ブラケットの接合部における剥がれを抑制することが可能となる。
【0017】
このように、取付ブラケットのさらなる変形が抑制されることによって、リクライナの周辺部における歪みを緩和させ、取付ブラケットの接合部周辺の亀裂を抑制することが可能となる。つまり、本態様では、取付ブラケットの板厚を厚くすることなく、取付ブラケットの接合部周辺の亀裂を抑制することが可能となるため、取付ブラケットの板厚を厚くすることによるシートフレーム本体の質量の増加を抑制することが可能となる。
【0018】
また、取付ブラケットにおけるリクライナの下方側がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに補強ブラケットに当接することによって取付ブラケットに伝達された荷重が補強ブラケットに伝達され、当該補強ブラケットを介して取付ブラケットの接合部へ作用する応力を分散させることが可能となる。
【0019】
ここで、比較例として、取付ブラケットに対してシート幅方向の外側に隙間を設けない状態で補強ブラケットを配置した場合、取付ブラケットにおけるリクライナ側では補強ブラケットの板厚分、取付ブラケットの板厚が増加することになり当該取付ブラケットにおける剛性は向上する。その一方で、取付ブラケットにおけるリクライナの下方側は、リクライナ側と比較するとその分剛性は低減されることになる。
【0020】
このような剛性の変化も伴い、取付ブラケットにおけるリクライナの下方側がシート幅方向の外側へ向かって変形するとき、比較例では、補強ブラケットの下端を起点として取付ブラケットにおいて折れが生じる可能性がある。
【0021】
これに対して、本態様では、取付ブラケットに対してシート幅方向の外側に隙間が設けられた状態で補強ブラケットが配置されている。このため、本態様では、取付ブラケット自体の板厚が変わることなく、補強ブラケットに当接することで、取付ブラケットにおいて折れを抑制することができ、また、当該補強ブラケットを介して取付ブラケットに伝達された荷重をクッションサイドフレーム側へ伝達することが可能となる。
【0022】
第2の態様に係る車両用シートフレームは、第1の態様に係る車両用シートフレームにおいて、前記補強ブラケットは、前記軸部に固定されシート上下方向に沿って配置される本体部と、前記本体部の上方側に形成され、前記軸部が固定される軸孔が形成された軸孔部と、前記軸孔及び前記本体部を間においてシート前後方向の前後に配置され、シート上下方向に沿って形成されると共にシート幅方向の外側へ向かって屈曲する一対の縦壁部と、を含んで構成されている。
【0023】
第2の態様に係る車両用シートフレームでは、補強ブラケットは、本体部、軸孔部及び一対の縦壁部を含んで構成されている。本体部は、シート上下方向に沿って配置されており、軸孔部は、本体部の上方側に形成され、バックサイドフレームの回動中心となる軸部が固定される軸孔が形成されている。一対の縦壁部は、当該軸孔及び本体部を間においてシート前後方向の前後に配置されており、シート上下方向に沿って形成されると共にシート幅方向の外側へ向かって屈曲している。
【0024】
このように、補強ブラケットにおいて、軸孔及び本体部のシート前後方向の前後に当該縦壁部がそれぞれ形成されることによって、補強ブラケットにおいて剛性を向上させることができる。また、縦壁部がシート上下方向に沿って形成されることによって、リクライナの軸部及び軸孔を介して補強ブラケットに伝達された荷重をシート上下方向に沿って伝達することが可能となる。
【0025】
第3の態様に係る車両用シートフレームは、第1の態様又は第2の態様に係る車両用シートフレームにおいて、前記一対の縦壁部は、シート側面視でシート上下方向の略中央部において互いに近接する方向へ向かってそれぞれ略円弧状に突出する一対の円弧リブとされている。
【0026】
第3の態様に係る車両用シートフレームでは、一対の縦壁部は、一対の円弧リブとされており、シート側面視でシート上下方向の略中央部において互いに近接する方向へ向かってそれぞれ略円弧状に突出するように形成されている。これにより、本態様では、例えば、補強ブラケットにおいて、縦壁部が直線状に形成された場合(比較例)と比較して、本体部におけるシート幅方向の外側へ向かう変形を抑制することが可能となる。
【0027】
つまり、本態様では、比較例よりも補強ブラケットの剛性を向上させることが可能となり、取付ブラケットにおけるリクライナの下方側がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに、補強ブラケットによってさらに効果的に当該取付ブラケットの変形を抑制することが可能となる。
【0028】
第4の態様に係る車両用シートフレームは、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係る車両用シートフレームにおいて、前記リクライナに対して前記取付ブラケットが接合された接合部は、前記軸部よりもシート下方側かつシート前後方向の前方側に配置された第1接合部及び前記軸部よりもシート下方側かつシート前後方向の後方側に配置された第2接合部を含み、シート側面視で前記第1接合部の下端部と前記第2接合部の下端部を結ぶ仮想上の第1直線上に前記円弧リブの頂部が配置されている。
【0029】
第4の態様に係る車両用シートフレームでは、リクライナに対して取付ブラケットが接合された接合部は、軸部よりもシート下方側に配置された第1接合部及び第2接合部を含んでおり、第1接合部は、軸部よりもシート前後方向の前方側に配置され、第2接合部は、軸部よりもシート前後方向の後方側に配置されている。当該第1接合部の下端部と第2接合部の下端部を結ぶ仮想上の第1直線上に円弧リブの頂部が配置されている。
【0030】
シートバックフレームに対してシート後方側へ向かう大荷重が入力されたとき、リクライナの周辺部には、リクライナの軸部を介して、当該軸部の下方側へ荷重が伝達される。このため、取付ブラケットでは、軸部よりもシート下方側に配置された第1接合部及び第2接合部を介して荷重が伝達されることになる。
【0031】
本態様では、シート側面視で第1接合部の下端部と第2接合部の下端部を結ぶ仮想上の第1直線上に円弧リブの頂部が配置されるように設定されている。これにより、取付ブラケットにおけるリクライナの下方側がシート幅方向の外側へ向かって変形し補強ブラケットに当接したときに、荷重は円弧リブの頂部を介して円弧リブの上部側及び下部側へ伝達させることが可能となる。つまり、取付ブラケットの接合部へ作用する応力を補強ブラケットを介して確実に分散させることが可能となる。なお、ここでの「頂部」は、頂点以外にその周辺を含む意である。
【0032】
第5の態様に係る車両用シートフレームは、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係る車両用シートフレームにおいて、前記補強ブラケットは、前記第1直線に対して略直交し前記軸孔の中心を通る仮想上の第2直線と前記第1直線との交点が当該軸孔の中心とシート上下方向の下端との中間部に配置されるように設定されている。
【0033】
第5の態様に係る車両用シートフレームでは、補強ブラケットにおいて、第1直線に対して略直交し軸孔の中心を通る仮想上の第2直線と当該第1直線との交点が軸孔の中心と補強ブラケットの下端との中間部に配置されるように設定されることによって、本体部におけるシート上下方向の中央部に円弧リブの頂部が設けられることになる。したがって、当該頂部に伝達された荷重を円弧リブの上部側及び下部側へ効率よく分散させることが可能となる。
【0034】
言い換えると、補強ブラケット全体で荷重を受けることが可能となり、補強ブラケットによる反力もその分大きくなり、取付ブラケットにおけるリクライナの下方側がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに、補強ブラケットによってさらに効果的に当該取付ブラケットの変形を抑制することが可能となる。
【0035】
第6の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第5の態様の何れか1の態様に係る車両用シートフレームを備え、前記リクライナを介して、前記シートクッションに対して前記シートバックがリクライニング可能とされている。
【0036】
第6の態様に係る車両用シートでは、シートクッションに対してシートバックをリクライニング可能とするリクライナを備えており、第1の態様~第5の態様の何れか1の態様に係る車両用シートフレームによって得られる効果を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートフレーム及び車両用シートは、シートフレーム本体の質量の増加を抑制しつつ、リクライナ周辺部における亀裂の発生を抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本実施の形態に係る車両用シートを左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る車両用シートの骨格部材を構成する車両用シートフレームを左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図3】
図2の要部を拡大して示す要部拡大斜視図である。
【
図4】
図3の一部を分解して示す要部拡大分解斜視図である。
【
図5】本実施の形態に係る車両用シートフレームの作用を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図2の要部を拡大して示す要部拡大側面図である。
【
図7】本実施の形態に係る車両用シートフレームの要部における有限要素法解析による歪みの分布図である。
【
図8】本実施の形態に係る車両用シートフレームの変形例を示す
図6に対応する要部拡大側面図である。
【
図9】比較例としての車両用シートフレームにおける有限要素法解析による歪みの分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート左右方向は、シート幅方向と一致している。
【0040】
(車両用シートの構成)
まず、本実施の形態に係る車両用シートの構成について説明する。
【0041】
図1、
図2に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、着座する乗員(着座乗員)の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、を備えている。
【0042】
シートクッション12は、当該シートクッション12の骨格部材を成し平面視で略矩形枠状を成すシートクッションフレーム18と、シートクッションフレーム18を覆い着座乗員を弾性的に支持するシートクッションパッド20と、シートクッションパッド20を覆い意匠面を構成するシートクッション表皮22と、を含んで構成されている。
【0043】
当該シートクッションフレーム18は、シートクッション12の左右の側部に配設された左右一対のクッションサイドフレーム24、26と、左右のクッションサイドフレーム24、26の前端部同士をシート幅方向(シート左右方向)に架け渡すフロントフレーム28と、左右のクッションサイドフレーム24、26の後端部同士をシート幅方向に架け渡すリアフレーム30と、を含んで構成されており、左右のスライドレール32を介して車両フロア34に連結される。
【0044】
本実施形態では、例えば、左右のクッションサイドフレーム24、26及びフロントフレーム28は、金属製の板材がプレス成形されて製造されており、リアフレーム30は、金属製のパイプ材によって製造されているが、これに限るものではない。
【0045】
一方、シートバック14は、当該シートバック14の骨格部材を成し正面視で矩形枠状を成すシートバックフレーム36と、該シートバックフレーム36を覆い着座乗員を弾性的に支持するシートバックパッド38と、該シートバックパッド38を覆い意匠面を構成するシートバック表皮40と、を含んで構成されている。
【0046】
シートバックフレーム36は、シートバック14の左右の側部に配設された左右一対のバックサイドフレーム42、44と、左右のバックサイドフレーム42、44の上端部同士をシート幅方向に架け渡すアッパフレーム46と、左右のバックサイドフレーム42、44の下端部同士をシート幅方向に架け渡すロアフレーム48と、を含んで構成されている。
【0047】
本実施形態では、例えば、左右のバックサイドフレーム42、44及びロアフレーム48は、金属製の板材がプレス成形されて製造されており、アッパフレーム46は、金属製のパイプ材によって製造されているが、これに限るものではない。
【0048】
ここで、クッションサイドフレーム24、26の後端部には、上方側へ向かってヒンジ部50、52がそれぞれ突出しており、当該ヒンジ部50、52には軸部(リクライナピン)54が固定されている。この軸部54は、バックサイドフレーム42、44の下端部に形成された図示しない孔部に挿通されており、当該軸部54を中心にバックサイドフレーム42、44が回動可能とされている。その結果、当該バックサイドフレーム42、44を介して、シートバックフレーム36がシートクッションフレーム18に対して回動可能とされる。
【0049】
なお、本実施形態では、軸部54は、シート幅方向の両端部に設けられている。シート幅方向の中央部では、パイプ状の軸部56が設けられており、当該軸部56の両端部に軸部54がそれぞれ固定されている。当該軸部54は、中実状とされ、いわゆるダブルDカット形状を成している。つまり、本実施形態では、高い剛性が必要とされる部位においては中実状の軸部が用いられ、それ以外の部位においては中空状とされて必要最小限の剛性を担保すると共に軸部の軽量化を図っている。勿論、これに限るものではなく、中実状の1本の軸部で構成されてもよい。
【0050】
ここで、車両用シート10の左側に配置されたバックサイドフレーム42側には、円板状のリクライナ58が設けられている。リクライナ58は、軸部54、クッションサイドフレーム24及びバックサイドフレーム42に固定されると共にロックが解除されることによりシートクッションフレーム18に対するシートバックフレーム36の回動が許容され、シートバックフレーム36は、シートクッションフレーム18に対して角度調整可能となっている。
【0051】
つまり、当該リクライナ58を介してシートバックフレーム36がシートクッションフレーム18に対してリクライニング(傾動)可能とされる。なお、本実施形態では、リクライナ58は、車両用シート10の右側にも設けられている。但し、これに限らず、図示はしないが、右側又は左側のみにリクライナ58が設けられてもいてもよい。
【0052】
図3、
図4に示されるように、リクライナ58の外面58A(
図5参照)には、シート幅方向の外側へ向かって天面がフラットとなるように突設された突設部60、62、64が設けられている。
【0053】
本実施形態では、突設部60は、軸部54の上方側に配置されており、シート側面視で略矩形状を成している。また、突設部62は、軸部54のシート前後方向の前方側に配置されており、シート側面視でシート前後方向の前方側を頂部62Aとする略三角形状を成している。さらに、突設部64は、軸部54のシート前後方向の後方側に配置されており、シート側面視でシート前後方向の後方側において上方側へ向かって延出する延出部64Aが形成された略矩形状を成している。なお、突設部60、62、64の形状については一例であり、これらの形状に限るものではない。
【0054】
また、リクライナ58のシート幅方向の外側には、取付ブラケット66が固定されている。取付ブラケット66は、例えば金属製の板材がプレス成形されて形成されている。
図6に示されるように、取付ブラケット66は、円板状を成しリクライナ58の外面58Aに固定される上部座面68と、上部座面68からシート前後方向の前方側、シート上下方向の下方側及びシート前後方向の後方側へ向かって延出されクッションサイドフレーム24のヒンジ部50の外面50Aに固定される下部座面70と、を含んで構成されている。
【0055】
上部座面68には、軸部54が挿通可能な円形の挿通孔72(
図4参照)が形成されると共に、リクライナ58に形成された突設部60、62、64が挿入可能な孔部74、76、78がそれぞれ形成されている。リクライナ58に形成された突設部60、62、64をそれぞれ取付ブラケット66に形成された孔部74、76、78内に挿入された状態で、孔部74、76、78の内縁及び突設部60、62、64の外形に沿って溶接する(溶接部75、溶接部(第1接合部)77、溶接部(第2接合部)79)ことによって、リクライナ58に対して取付ブラケット66の上部座面68が固定される。
【0056】
一方、下部座面70の後端部には、当該下部座面70の裏面と対向するようにして屈曲された掛止部80が形成されており、当該掛止部80には、クッションサイドフレーム24の後端が挿入可能とされている。当該掛止部80に対してクッションサイドフレーム24の後端が挿入された状態で、下部座面70を介して取付ブラケット66は、シート前後方向の前方側への移動が規制される。
【0057】
また、下部座面70の前端部には、位置決め孔82が形成されている。この位置決め孔82により溶接治具が位置決めされ、掛止部80を介して下部座面70のシート前後方向の前方側への移動が規制された状態で、下部座面70がクッションサイドフレーム24に対して溶接される。なお、位置決め孔82を介して、図示しないボルト及びナット等の締結具によって下部座面70がクッションサイドフレーム24に対して締結されてもよい。
【0058】
以上のようにして、前述したように、取付ブラケット66は、上部座面68がリクライナ58に固定されると共に下部座面70がクッションサイドフレーム24に固定される。
【0059】
さらに、本実施形態では、
図5に示されるように、リクライナ58のシート幅方向の外側には、取付ブラケット66との間にシート幅方向に隙間tを空けて補強ブラケット84が軸部54に固定されている。なお、隙間tは、二点鎖線で示されるように、取付ブラケット66の下部座面70側がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに補強ブラケット84に当接するように設定されている。
【0060】
つまり、本実施形態では、リクライナ58のシート幅方向の外側に取付ブラケット66及び補強ブラケット84が設けられている。前述のように、本実施形態では、リクライナ58は、車両用シート10の右側及び左側に設けられている。このため、補強ブラケット84は、車両用シート10の右側及び左側に設けられてもよいが、軸部54周りの部品との関係で、本実施形態では、車両用シート10の左側のみに設けられている。
【0061】
当該補強ブラケット84は、例えば金属製の板材がプレス成形されて形成されている。また、補強ブラケット84は、
図4に示されるように、本体部86、軸孔部88を含んで構成されており、軸孔部88は、本体部86の上方側に設けられている。軸孔部88には、軸部54の形状に合わせて形成された軸孔90が形成されており、軸孔90に軸部54が挿入された状態で、当該軸孔90を介して補強ブラケット84は、軸部54に対して回り止めされ当該軸部54に対して固定される。
【0062】
ここで、本体部86におけるシート前後方向の前端部には、本体部86の前方側を中心として円弧状に形成された円弧リブ(縦壁部)92が本体部86の略全長に亘って形成されており、当該円弧リブ92は、シート幅方向の外側へ向かって屈曲されている。また、本体部86におけるシート前後方向の後端部には、本体部86の後方側を中心として円弧状に形成され円弧リブ92と対向する円弧リブ(縦壁部)94が本体部86の略全長に亘って形成されており、当該円弧リブ94は、がシート幅方向の外側へ向かって屈曲されている。なお、円弧リブ92、94は、図示はしないがリクライニング操作を行うリクライニングレバーと干渉しない高さに設定されている。
【0063】
また、本実施形態では、
図6に示されるように、円弧リブ92、94は、その頂部92A、94Aが、本体部86の高さ方向の略中央部において接近するように形成されている。なお、頂部92A、94Aには、頂点以外にその周辺部も含まれる。また、頂部92A、94Aは、リクライナ58に形成された突設部62、64の外形に沿って溶接された溶接部77、79の下端同士を結ぶ仮想上の直線(第1直線)P上に略配置されるように設定されている。本実施形態では、直線Pは、溶接部77、79の下端同士を結ぶ仮想上の直線であるが、溶接部77、79の下端部同士を結ぶ直線であればよいため、必ずしも溶接部77、79の下端である必要はない。
【0064】
さらに、本実施形態では、補強ブラケット84において、直線Pに対して略直交し軸孔90の中心を通る仮想上の直線(第2直線)Qと当該直線Pとの交点Oが軸孔90の中心と補強ブラケット84の下端との中間部(寸法a≒寸法b)に配置されるように設定されている。
【0065】
(車両用シートの作用及び効果)
次に、本実施の形態に係る車両用シートの作用及び効果について説明する。
【0066】
本実施形態では、
図3に示されるリクライナ58は、クッションサイドフレーム24とバックサイドフレーム42との間に設けられ両者に固定されると共に当該リクライナ58によってロックが解除されることにより、当該クッションサイドフレーム24が固定された軸部54を中心にクッションサイドフレーム24に対してバックサイドフレーム42が回動可能とされる。そして、本実施形態では、当該軸部54に対して、取付ブラケット66及び補強ブラケット84が固定されている。
【0067】
取付ブラケット66は、リクライナ58に対してシート幅方向の外側から接合されると共にクッションサイドフレーム24のヒンジ部50に締結されている。つまり、取付ブラケット66は、リクライナ58及びクッションサイドフレーム24に対して固定されている。
【0068】
また、補強ブラケット84は、
図5に示されるように、取付ブラケット66に対して、シート幅方向の外側に隙間tが設けられた状態で軸部54に固定されている。そして、取付ブラケット66の下部座面70(取付ブラケット66におけるリクライナ58の下方側)は、シート幅方向の外側へ向かって変形したときに補強ブラケット84に当接し、これにより、当該取付ブラケット66のさらなる変形が抑制可能とされる。
【0069】
例えば、
図2に示されるように、シートバックフレーム36に対してシート後方側へ向かう大荷重(F)が入力されたとき、リクライナ58の周辺部には、
図5に示されるように、リクライナ58の軸部54を介して、当該軸部54の下方側へ荷重(F1)が伝達されると共に、車両フロア34(
図2参照)側からは反力(N)を受けることになる。
【0070】
ここで、取付ブラケット66は、リクライナ58及びクッションサイドフレーム24に固定されているため、シートバックフレーム36に対してシート後方側へ向かう大荷重(F;
図2参照))が入力されたとき、取付ブラケット66には座屈応力が作用し、当該取付ブラケット66はシート幅方向の外側へ座屈しようとする。
【0071】
比較例として、取付ブラケット66のシート幅方向の外側に補強ブラケット84が設けられていない場合について説明する。ここで、
図9は、比較例における有限要素法解析による歪みの分布図が示されており、ドットが濃くなるにつれて歪みの大きくなるように設定されている。なお、後述する
図7も
図9と同じである。
図9に示されるように、リクライナ100の下部側には、歪みが大きくなっており、取付ブラケット102とリクライナ100との溶接部104、106において、剥がれが生じる可能性がある。
【0072】
これに対して、本実施形態では、
図5に示されるように、取付ブラケット66のシート幅方向の外側に補強ブラケット84が設けられているため、取付ブラケット66の下部座面70がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに補強ブラケット84に当接することによって当該取付ブラケット66のさらなる変形が抑制されると共に、取付ブラケット66に伝達された荷重が補強ブラケット84に伝達される。
【0073】
これにより、本実施形態では、
図7に示されるように、リクライナ58の下部側における歪みを緩和させることができる。一例ではあるが、本実施形態の適用により、溶接部77、79への歪み値が比較例の21.7%から13.8%と大きく改善した。
【0074】
つまり、本実施形態では、取付ブラケット66の溶接部77、79における剥がれを抑制することが可能となり、当該溶接部77、79周辺の亀裂が抑制される。このように、本実施形態では、取付ブラケット66の板厚を厚くすることなく、取付ブラケット66の溶接部77、79周辺の亀裂が抑制されるため、取付ブラケット66の板厚を厚くすることによるシートクッションフレーム18の質量の増加を抑制することが可能となる。
【0075】
また、本実施形態では、
図5に示されるように、取付ブラケット66の下部座面70がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに補強ブラケット84に当接することによって、取付ブラケット66に伝達された荷重が補強ブラケット84にも伝達されるため、当該補強ブラケット84を介して取付ブラケット66の溶接部77、79(
図6参照)へ作用する応力を分散させることが可能となる。
【0076】
また、本実施形態では、取付ブラケット66に対してシート幅方向の外側に隙間tが設けられた状態で補強ブラケット84が当該軸部54に固定されている。
【0077】
ここで、比較例として、図示はしないが、取付ブラケット66に対してシート幅方向の外側に隙間tを設けない状態で補強ブラケット84を配置した場合、取付ブラケット66におけるリクライナ58側では補強ブラケット84の板厚分、取付ブラケット66の板厚が増加することになり当該取付ブラケット66における剛性は向上する。その一方で、取付ブラケット66の下部座面70は、リクライナ58側と比較するとその分剛性は低減されることになる。
【0078】
このような剛性の変化も伴い、取付ブラケット66の下部座面70がシート幅方向の外側へ向かって変形するとき、比較例では、補強ブラケット84の下端を起点として取付ブラケット66において折れが生じる可能性がある。
【0079】
これに対して、本実施形態では、前述のように、取付ブラケット66に対してシート幅方向の外側に隙間tが設けられた状態で補強ブラケット84が配置されている。このため、本実施形態では、取付ブラケット66自体の板厚が変わることなく、補強ブラケット84に当接することで、取付ブラケット66において折れを抑制することができ、また、当該補強ブラケット84を介して取付ブラケット66に伝達された荷重(F1)をクッションサイドフレーム24側へ伝達することが可能となる。
【0080】
ここで、
図4、
図6に示されるように、補強ブラケット84は、本体部86、軸孔部88及び一対の円弧リブ92、94を含んで構成されている。本体部86は、シート上下方向に沿って配置されており、軸孔部88は、本体部86の上方側に形成され、バックサイドフレーム42の回動中心となる軸部54が固定される軸孔90が形成されている。一対の円弧リブ92、94は、当該軸孔90及び本体部86を間においてシート前後方向の前後に配置されており、シート上下方向に沿って形成されると共にシート幅方向の外側へ向かって屈曲している。
【0081】
このように、補強ブラケット84において、軸孔90及び本体部86のシート前後方向の前後に当該円弧リブ92、94がそれぞれ形成されることによって、補強ブラケット84において剛性を向上させることができる。また、円弧リブ92、94がシート上下方向に沿って形成されることによって、リクライナ58の軸部54及び軸孔90を介して補強ブラケット84に伝達された荷重(F2;
図5参照)をシート上下方向に沿って伝達することが可能となる。
【0082】
また、一対の円弧リブ92、94は、シート上下方向の略中央部において互いに近接する方向へ向かってそれぞれ略円弧状に突出するように形成されることによって、例えば、補強ブラケット84において、図示はしないが、円弧リブ92、94が直線状に形成された場合(比較例)と比較して、本体部86におけるシート幅方向の外側へ向かう変形を抑制することが可能となる。
【0083】
つまり、本実施形態では、比較例よりも補強ブラケット84の剛性を向上させることが可能となり、取付ブラケット66の下部座面70がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに補強ブラケット84によってさらに効果的に当該取付ブラケット66の変形が抑制される。
【0084】
さらに、本実施形態では、リクライナ58に対して取付ブラケット66が接合された溶接部75、77、79のうち、軸部54よりもシート下方側に配置された溶接部77は、軸部54よりもシート前後方向の前方側に配置され、溶接部79は、軸部54よりもシート前後方向の後方側に配置されている。当該溶接部77の下端と溶接部79の下端を結ぶ仮想上の直線P上に円弧リブ92、94の頂部92A、94Aが配置されている。
【0085】
図2に示されるように、シートバックフレーム36に対してシート後方側へ向かう大荷重(F)が入力されたとき、
図5に示されるように、リクライナ58の周辺部には、リクライナ58の軸部54を介して、当該軸部54の下方側へ荷重(F1)が伝達される。このため、取付ブラケット66では、軸部54よりもシート下方側に配置された溶接部77及び溶接部79を介して荷重(F1)が伝達されることになる。
【0086】
本実施形態では、
図6に示されるように、直線P上に円弧リブ92、94の頂部92A、94Aが配置されることによって、取付ブラケット66の下部座面70がシート幅方向の外側へ向かって変形し補強ブラケット84に当接したときに、荷重(F2;
図5参照)は円弧リブ92、94の頂部92A、94Aを介して円弧リブ92の上部側及び下部側へ伝達させることが可能となる。つまり、取付ブラケット66の溶接部77、溶接部79へ作用する応力を補強ブラケット84を介して確実に分散させることが可能となる。
【0087】
また、本実施形態では、補強ブラケット84において、直線Qと直線Pとの交点Oが軸孔90の中心と補強ブラケット84の下端との中間部(寸法a≒寸法b)に配置されるように設定されている。これにより、本実施形態では、補強ブラケット84において、本体部86におけるシート上下方向の中央部に円弧リブ92、94の頂部92A、94Aが設けられることになる。したがって、当該頂部92A、94Aに伝達された荷重(F2)を円弧リブ92、94の上部側及び下部側へそれぞれ効率よく分散させることが可能となる。
【0088】
言い換えると、補強ブラケット84全体で荷重(F2;
図5参照)を受けることが可能となり、補強ブラケット84による反力もその分大きくなり、取付ブラケット66の下部座面70がシート幅方向の外側へ向かって変形したときに、補強ブラケット84によってさらに効果的に当該取付ブラケット66の変形を抑制することが可能となる。
【0089】
前述のように、本実施形態では、補強ブラケット84は、車両用シート10の左側のみに設けられているが、車両用シート10の片側に当該補強ブラケット84を設けるだけでも上記効果が得られる。このため、車両用シート10の両側に補強ブラケット84を設けることによって上記効果は倍増することになる。
【0090】
なお、本実施形態では、リクライナ58に対して取付ブラケット66が接合された溶接部75、77、79について、軸部54よりもシート下方側に溶接部77、79が設けられているが、リクライナ58の配置によって溶接部は異なる。
【0091】
例えば、
図8に示されるように、軸部54よりもシート下方側に設けられた溶接部96は1カ所であってもよい。この場合、当該溶接部96を基準として、仮想上の直線P、Qがそれぞれ形成されることになる。
【0092】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
18 シートクッションフレーム(車両用シートフレーム)
24 クッションサイドフレーム
36 シートバックフレーム(車両用シートフレーム)
42 バックサイドフレーム
54 軸部
56 軸部
58 リクライナ
66 取付ブラケット
75 溶接部(接合部)
77 溶接部(第1接合部、接合部)
79 溶接部(第2接合部、接合部)
84 補強ブラケット
86 本体部(補強ブラケット)
88 軸孔部(補強ブラケット)
90 軸孔
92 円弧リブ(縦壁部、補強ブラケット)
92A 頂部
94 円弧リブ(縦壁部、補強ブラケット)
94A 頂部
96 溶接部(接合部)
P 直線(第1直線)
Q 直線(第2直線)
O 交点