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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070175
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/215 20060101AFI20240515BHJP
   C08L 27/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C08J3/215 CEV
C08L27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180638
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲佑
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA22
4F070AB26
4F070AC43
4F070AC55
4F070AE02
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC03
4J002BD001
4J002BD002
4J002EH096
4J002EH136
4J002EW136
4J002FA001
4J002FA002
4J002FD026
(57)【要約】
【課題】硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造する。
【解決手段】樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。樹脂組成物の製造方法は、樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、粉砕材、軟質ポリ塩化ビニル製のペレット、及び、可塑剤を加熱しつつ混練して、粉砕材、ペレット、及び、可塑剤が混合された樹脂組成物を製造する混合工程と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、
前記粉砕材、軟質ポリ塩化ビニル製のペレット、及び、可塑剤を加熱しつつ混練して、前記粉砕材、前記ペレット、及び、前記可塑剤が混合された前記樹脂組成物を製造する混合工程と、
を有する樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程は、前記粉砕材と前記ペレットを加熱しつつ混練する工程と、前記粉砕材と前記ペレットの混練物と前記可塑剤を加熱しつつ混練する工程と、を有する樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、前記粉砕材、前記ペレット、及び、前記可塑剤の混練物を加熱の温度を低下させながら混練する樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、100重量部の前記粉砕材に対し、1~30重量部の前記ペレットを添加する樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、前記粉砕材の最大寸法が15mm以下である樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記粉砕工程では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする本体部に軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする付属部が付属する前記樹脂形材を粉砕する樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂窓等の建具では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材が使用されている。樹脂形材は、硬質ポリ塩化ビニルの樹脂材料を加熱して溶融し、溶融した樹脂材料を押出成形して製造される。このような樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する場合には、例えば、樹脂形材を粉砕した粉砕材と液体の可塑剤を混練し、粉砕材の硬質ポリ塩化ビニルを可塑剤により軟質化して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。
【0003】
ところが、製造後の樹脂形材では、樹脂の粒子が押出成形により潰れて、押出成形前に存在した樹脂の粒子内の空隙がほとんどなくなる。これに伴い、樹脂形材の粉砕材と可塑剤の混練中に、可塑剤が粉砕材に浸み込み難くなり、粉砕材同士が可塑剤によって滑り易くもなる。そのため、樹脂形材の粉砕材と可塑剤が混練され難くなり、粉砕材の硬質ポリ塩化ビニルを可塑剤により軟質化するのが困難となる。これに対し、従来、硬質塩化ビニル系樹脂成形品の粉砕物、可塑剤、及び、無機充填材を加熱混練機により混練して、塩化ビニル系樹脂組成物を製造する塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法も知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された従来の塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法では、無機充填材により可塑剤を吸収して、粉砕物に可塑剤を無機充填材とともに混練する。しかしながら、可塑剤の吸収に無機充填材を必要とするため、可塑剤の添加量が制限されて、柔らかい塩化ビニル系樹脂組成物を製造するのが困難になる虞がある。また、可塑剤の添加量を増加させるためには、無機充填材の添加量も増加させる必要があり、塩化ビニル系樹脂組成物の物性に影響が生じる虞もある。可塑剤の添加量が無機充填材の種類等に依存するため、塩化ビニル系樹脂組成物の設計が制限されることもある。従って、従来の塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法においては、塩化ビニル系樹脂組成物を容易に製造する観点から、改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5446104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、
前記粉砕材、軟質ポリ塩化ビニル製のペレット、及び、可塑剤を加熱しつつ混練して、前記粉砕材、前記ペレット、及び、前記可塑剤が混合された前記樹脂組成物を製造する混合工程と、
を有する樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造手順を示すフローチャートである。
図2】本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造過程の各段階の状態を模式的に示す図である。
図3】本実施形態の加熱混練機により混練する粉砕材の例を示す図である。
図4】本実施形態の樹脂形材の他の例を示す図である。
図5】比較例と実施例の応力-ひずみ曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。これにより、一旦製造された樹脂形材を再利用して、樹脂形材を樹脂組成物にリサイクルし、新たに樹脂組成物を生成する。
【0011】
図1は、本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造手順(工程)を示すフローチャートである。図2は、本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造過程の各段階の状態を模式的に示す図である。
【0012】
図示のように、不用となった樹脂形材10(図2A参照)を回収する(図1のS101)。樹脂形材10は、樹脂の押出成形により成形された形材(押出形材)である。樹脂は、硬質ポリ塩化ビニルであり、樹脂形材10は、硬質ポリ塩化ビニルからなる硬質ポリ塩化ビニル形材である。硬質ポリ塩化ビニルは、可塑剤を混合していないポリ塩化ビニル(PVC)であり、ポリ塩化ビニルに他の成分(例えば、各種の安定剤、改良剤)が混合されていてもよい。なお、図2Aでは、樹脂形材10の長手方向に直交する断面を示している。
【0013】
ここでは、樹脂形材10は、建具である樹脂窓に使用される樹脂製の成形品(樹脂成形品)である。樹脂窓は、樹脂製の枠(樹脂枠)と、樹脂製の框(樹脂框)を含む障子と、を有しており、樹脂枠と樹脂框は、それぞれ樹脂形材10からなる。また、樹脂形材10として、樹脂窓の樹脂形材10の端材を回収する。樹脂形材10の端材は、例えば、樹脂窓の製造現場での端材、又は、市場屑として回収された端材である。これに対し、樹脂形材10は、廃棄される樹脂形材10であってもよい。
【0014】
次に、粉砕機により、回収された樹脂形材10を粉砕して、樹脂形材10の粉砕材20(図2B参照)を形成する(図1のS102)。粉砕機は、例えば、衝撃式粉砕機であるインパクトクラッシャーである。樹脂形材10が長い又は大きいときには、粉砕機による粉砕前に、樹脂形材10を切断する等して、樹脂形材10を粉砕機により粉砕可能な大きさに形成する。また、樹脂形材10は、2段階で粉砕してもよい。この場合には、第1段階の粗い粉砕用の粉砕機により、樹脂形材10を粗く粉砕した後に、第2段階の細かい粉砕用の粉砕機により、粗い粉砕材20を細かい粉砕材20に粉砕する。このようにして、樹脂形材10を粉砕した粉砕材20を生成する。
【0015】
樹脂形材10は、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の原料の一部である。軟質ポリ塩化ビニルは、可塑剤を混合したポリ塩化ビニルであり、可塑剤を含有する。また、樹脂組成物は、軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする組成物であり、軟質ポリ塩化ビニルの成形品の原料となる。可塑剤は、硬質ポリ塩化ビニルに柔軟性を与える添加剤であり、硬質ポリ塩化ビニルを軟質化する。
【0016】
可塑剤は、例えば、ジブチルフタレート(DBP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DOP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソノニルフタレート(DINP)等のフタル酸エステル系可塑剤、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテート(TOTM)、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジシソデシルアジペート(DIDA)、ジブチルセバケート(DBS)等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリフェニルホスフェート(TPP)等のリン酸エステル系可塑剤、又は、ポリエステル類、エポキシ化大豆油等の可塑剤である。
【0017】
樹脂形材10の粉砕後に、加熱混練機により、樹脂形材10の粉砕材20、軟質ポリ塩化ビニル製のペレット30、及び、液体の可塑剤40(図2C参照)を加熱しつつ混練して、粉砕材20、ペレット30、及び、可塑剤40が混合された軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する(図1のS103)。加熱混練機は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーであり、混練中の混練物にせん断力を加える。加熱混練機により、粉砕材20、ペレット30、及び、可塑剤40は、所定の温度で加熱されて、所定の温度で混練される。
【0018】
ペレット30は、粒状に成形された軟質ポリ塩化ビニルの粒材であり、軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする。樹脂組成物は、硬質ポリ塩化ビニルからなる粉砕材20、軟質ポリ塩化ビニルからなるペレット30、及び、可塑剤40が混合された混合物であり、軟質ポリ塩化ビニルからなる。軟質ポリ塩化ビニルは、粉砕材20に含まれる硬質ポリ塩化ビニル、ペレット30に含まれる軟質ポリ塩化ビニル、及び、可塑剤40を混合することで生成される。
【0019】
樹脂形材10の粉砕材20を100重量部(phr)としたとき、ペレット30は、1~30重量部であり、可塑剤40は、10~60重量部である。このように、100重量部の粉砕材20に対し、1~30重量部のペレット30を添加して混練し、10~60重量部の可塑剤40を添加して混練する。
【0020】
粉砕材20に添加するペレット30と可塑剤40のそれぞれの重量部を調整して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物が含有する可塑剤の濃度(例えば、質量パーセント濃度)及び樹脂組成物の硬さを調整する。軟質ポリ塩化ビニル製のペレット30が含有する可塑剤の濃度は様々である。そのため、ペレット30が含有する可塑剤の濃度に対応して、粉砕材20に対するペレット30と可塑剤40のそれぞれの重量部を調整して、樹脂組成物が含有する可塑剤の濃度を目標濃度に調整する。これにより、樹脂組成物の硬さを目標硬さに調整する。
【0021】
図3は、本実施形態の加熱混練機により混練する粉砕材20の例を示す図である。
図示のように、樹脂形材10の粉砕により、様々な形状及び最大寸法Rの粉砕材20が形成される。粉砕材20の最大寸法Rは、それぞれの粉砕材20の外形のうち最も寸法が大きい部分の寸法である。混練に用いる粉砕材20の最大寸法Rは、15mm以下である。そのため、樹脂形材10の粉砕時に、粉砕材20の最大寸法Rが15mm以下になるように、樹脂形材10を粉砕する。或いは、樹脂形材10の粉砕後に、分離装置等を用いて、最大寸法Rが15mmよりも大きい粉砕材20を分離して除去し、最大寸法Rが15mm以下の粉砕材20を選別する。最大寸法Rが15mm以下の粉砕材20をペレット30及び可塑剤40と混練する。
【0022】
樹脂形材10の粉砕材20、軟質ポリ塩化ビニル製のペレット30、及び、可塑剤40を混練及び混合する際には、まず、加熱混練機により、粉砕材20とペレット30を加熱しつつ混練して、粉砕材20とペレット30の混練物を生成する(図1のS103-1)。粉砕材20とペレット30の混練物は、粉砕材20とペレット30を混合した中間混合物であり、最終混合物である軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する中間段階で生じる。粉砕材20とペレット30を完全に混合して、粉砕材20とペレット30の混練物を生成する。硬質ポリ塩化ビニルからなる粉砕材20と軟質ポリ塩化ビニルからなるペレット30は、ポリ塩化ビニル同士であるため、互いに混ざり易く、容易に混練可能である。
【0023】
続いて、粉砕材20とペレット30が混練された混練物に可塑剤40を添加する。その状態で、加熱混練機により、粉砕材20とペレット30の混練物と可塑剤40を加熱しつつ混練して、粉砕材20とペレット30の混練物と可塑剤40が混合された軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する(図1のS103-2)。
【0024】
粉砕材20とペレット30の混練物は、軟質ポリ塩化ビニル製のペレット30に含まれていた可塑剤を含有する。粉砕材20とペレット30の混練物に含有された可塑剤と添加した可塑剤40は、可塑剤同士であるため、互いに馴染み易い。そのため、可塑剤40は、粉砕材20とペレット30の混練物に可塑剤を介して混ざり易く、混練物に容易に混練可能である。可塑剤40が入り込むことで、粉砕材20、ペレット30、及び、可塑剤40が混練された混練物が軟質化して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物が生成される。
【0025】
ここでは、粉砕材20、ペレット30、及び、可塑剤40の混練物は、粉砕材20とペレット30の混練物に可塑剤を混練した混練物である。混練物中への可塑剤40の混練が進行するのに伴い、混練物が次第に柔らかくなり、混練物の粘度が徐々に低下して、混練物が練り難くなる。これにより、混練物の混練の進行が遅くなる。そこで、混練物の混練中には、混練物の加熱の温度を低下させながら、混練物を混練する。混練物の粘度の低下に対応して、混練物の加熱の温度を次第に低下させて、混練物の粘度を調整し、混練物の粘度の低下を抑制する。加熱の温度の低下により、混練物の粘度を混練に適した粘度に調整して、混練物の混練を進行させる。
【0026】
加熱混練機により、粉砕材20、ペレット30、及び、可塑剤40の混練物の加熱の温度を第1温度から第2温度に低下させながら、混練物を混練する。第1温度は、混練物の加熱の温度を低下させる前の温度であり、第2温度は、混練物の加熱の温度の低下を終了させる温度である。第1温度は、180~200℃である。第2温度は、第1温度よりも低い温度であり、150~170℃である。ここでは、第1温度は、190℃であり、第2温度は、160℃である。
【0027】
混練物を第1温度で加熱しつつ混練し、混練物の混練の途中段階で、混練物の加熱の温度を第1温度から低下させ始める。また、混練物の加熱の温度を第1温度から第2温度まで次第に低下させながら、混練物を混練し、混練物の加熱の温度が第2温度になったときに、混練物の加熱の温度の低下を終了させる。その後、混練物の加熱の温度を第2温度に維持し、混練物を第2温度で加熱しつつ混練して、混練物の混練を終了させる。
【0028】
混練物の混練により、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造が完了した後に、溶けた状態の樹脂組成物を加熱混練機から排出させて、樹脂組成物を並列したロール同士の間を通す(図1のS104)。その際、樹脂組成物を相対する2つ又は複数のロールの外周面の間を通して圧縮する。続いて、押出成形機により、樹脂組成物を押出成形し、押出成形された樹脂組成物を順次切断して、軟質ポリ塩化ビニルのペレットを成形する(図1のS105)。その後、軟質ポリ塩化ビニルのペレットを用いて、軟質ポリ塩化ビニルの成形品を成形する(図1のS106)。軟質ポリ塩化ビニルの成形品は、例えば、建具に使用されるエアタイト材、ガスケットである。
【0029】
以上説明した樹脂組成物の製造方法では、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の原料に、樹脂形材10の粉砕材20と可塑剤40だけでなく、軟質ポリ塩化ビニルのペレット30を加えることで、可塑剤40を混練物に馴染み易くして、混練物に可塑剤を円滑に混練することができる。そのため、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材10をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することができる。また、樹脂組成物中の可塑剤の濃度を増加させることができ、製造可能な樹脂組成物の硬さの幅を広げることもできる。
【0030】
可塑剤40を添加する前に、粉砕材20とペレット30を混練することで、粉砕材20とペレット30を容易に混合することができる。また、粉砕材20とペレット30の混練物に可塑剤40を円滑に混合して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造効率を向上させることができる。可塑剤40による滑りを抑制して、各段階の混練物を容易に混練できるとともに、混練物の混練に要する時間を短縮することもできる。
【0031】
粉砕材20、ペレット30、及び、可塑剤40の混練物を加熱の温度を低下させながら混練することで、混練物の粘度の低下を抑制して、粉砕材20、ペレット30、及び、可塑剤40を確実に混合することができる。また、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を効率よく製造することができる。樹脂組成物の原料の樹脂形材10が樹脂形材10(ここでは、樹脂窓の樹脂形材10)の端材であるときには、樹脂形材10の端材をリサイクルに活用して、樹脂組成物のコストを削減することができる。
【0032】
粉砕材20、ペレット30、及び、可塑剤40の混練物の加熱の温度は、第1温度から第2温度に低下させる。混練物を第1温度で加熱する段階で、第1温度が200℃よりも高い温度であると、混練物の粘度が低くなることで、混練物を練り難くなる虞があり、第1温度が180℃よりも低い温度であると、混練物の粘度が高くなることで、混練物が混ざり難くなる虞がある。これに対し、第1温度が180~200℃の範囲内(180℃以上200℃以下)の温度であると、混練物が混練し易い粘度になり、混練物の混練を円滑に進行させることができる。
【0033】
混練物を第2温度で加熱する段階で、第2温度が170℃よりも高い温度であると、混練物の粘度が低くなることで、混練物を練り難くなる虞があり、第2温度が150℃よりも低い温度であると、混練物の粘度が高くなることで、混練物が混ざり難くなる虞がある。これに対し、第2温度が150~170℃の範囲内(150℃以上170℃以下)の温度であると、混練物が混練し易い粘度になり、混練物の混練を円滑に進行させることができる。第1温度は、185~195℃の範囲内の温度であるのがより好ましく、第2温度は、155~165℃の範囲内の温度であるのがより好ましい。これにより、各段階で混練物の混練をより円滑に進行させることができる。
【0034】
樹脂形材10の粉砕材20の最大寸法Rが15mmよりも大きいときには、粉砕材20が大きくなることで、粉砕材20とペレット30を混練し難くなる虞がある。これに対し、粉砕材20の最大寸法Rが15mm以下のときには、粉砕材20とペレット30を分散させて、粉砕材20とペレット30を円滑に混練することができる。粉砕材20の最大寸法Rは、8mm以下であるのがより好ましい。これにより、粉砕材20とペレット30をより円滑に混練することができる。
【0035】
100重量部の粉砕材20に対し、ペレット30が1重量部よりも少ないときには、粉砕材20に添加されるペレット30に含まれる可塑剤の総量が少なくなることで、可塑剤40が混練物に混練され難くなる虞がある。また、100重量部の粉砕材20に対し、ペレット30が30重量部よりも多いときには、粉砕材20に対するペレット30の割合が増加することで、ペレット30が粉砕材20に混練され難くなる虞がある。これに対し、100重量部の粉砕材20に対し、ペレット30が1~30重量部の範囲内(1重量部以上30重量部以下)の重量部であるときには、粉砕材20に対するペレット30の混練、及び、混練物に対する可塑剤40の混練を行い易くすることができる。100重量部の粉砕材20に対し、ペレット30が5~10重量部であるのがより好ましい。これにより、粉砕材20に対するペレット30の混練、及び、混練物に対する可塑剤40の混練をより行い易くすることができる。
【0036】
100重量部の粉砕材20に対し、可塑剤40が10重量部よりも少ないときには、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を充分に軟質化できない虞がある。また、100重量部の粉砕材20に対し、可塑剤40が60重量部よりも多いときには、可塑剤40が混練物に混練され難くなり、可塑剤40が液体のまま残る虞がある。これに対し、100重量部の粉砕材20に対し、可塑剤40が10~60重量部の範囲内(10重量部以上60重量部以下)の重量部であるときには、可塑剤40を混練物に確実に混練できるとともに、樹脂組成物を充分に軟質化することができる。100重量部の粉砕材20に対し、可塑剤40が20~40重量部であるのがより好ましい。これにより、可塑剤40を混練物に一層確実に混練できるとともに、樹脂組成物を安定して軟質化することができる。
【0037】
図4は、本実施形態の樹脂形材10の他の例を示す図であり、樹脂形材10の長手方向に直交する断面を示している。
図示のように、ここでは、樹脂形材10は、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする本体部11と、軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする付属部12を有している。付属部12は、硬質部である本体部11に付属する軟質部であり、本体部11よりも小さく形成されて、本体部11から突出する。樹脂形材10を粉砕する際には(図1のS102)、本体部11から付属部12を除去せずに、本体部11に付属部12が付属する樹脂形材10を粉砕して、樹脂形材10の粉砕材20を形成する。
【0038】
形成される粉砕材20には、本体部11のみの粉砕材20、付属部12のみの粉砕材20、及び、本体部11と付属部12の両方を含む粉砕材20が含まれる。粉砕材20をペレット30及び可塑剤40と混練して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。このように、樹脂形材10の硬質ポリ塩化ビニルからなる本体部11から軟質ポリ塩化ビニルからなる付属部12を分別せずに、樹脂形材10を容易にリサイクルすることができる。
【0039】
次に、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造方法の実施例と比較例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されることはない。実施例では、図1に示すフローチャートに従って、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造した。また、実施例との比較のため、比較例では、ペレット30を添加せずに、粉砕材20と可塑剤40を混練して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1は、2つの比較例(比較例1、2)と4つの実施例(実施例1~4)における樹脂形材10の粉砕材20、軟質ポリ塩化ビニル製のペレット30、及び、可塑剤40のそれぞれの重量部を示している。
ペレット30と可塑剤40の重量部は、100重量部の粉砕材20に対するそれぞれの重量部である。また、実施例1~4で用いたペレット30は、同じペレット30であり、可塑剤40は、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DOP)のフタル酸エステル系可塑剤である。
【0042】
製造後の樹脂組成物で試験片を作製し、試験片の引張試験を行った。また、試験片の硬さを測定した。引張試験では、日本産業規格(JIS K 6251:2017)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠して、試験片の引張試験を行い、試験片における応力-ひずみ曲線(S-S曲線)を求めた。硬さ測定では、日本産業規格(JIS K 6253-3:2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に準拠して、試験片のデュロメータA硬さを測定した。
【0043】
図5は、比較例1、2と実施例1~4の応力-ひずみ曲線である。図5の6つの応力-ひずみ曲線に付した符号H1、H2、F1、F2、F3、F4は、表1に示す符号に対応しており、それぞれ比較例1、比較例2、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4の応力-ひずみ曲線であることを示す。
図示のように、実施例1~4の樹脂組成物は、比較例1、2の樹脂組成物よりも軟質化した。また、ペレット30の重量部と可塑剤40の重量部に対応して、引張特性及び軟質化の程度が変化した。
【0044】
【表2】
【0045】
表2は、比較例1、2と実施例1~4の硬さを示している。
実施例1~4の樹脂組成物の硬さは、比較例1、2の樹脂組成物の硬さよりも低い。また、ペレット30の重量部と可塑剤40の重量部に対応して、硬さが変化した。
【0046】
以上のとおり、本実施形態では、以下の(1)~(6)に記載された樹脂組成物の製造方法を開示している。
【0047】
(1) 硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、
前記粉砕材、軟質ポリ塩化ビニル製のペレット、及び、可塑剤を加熱しつつ混練して、前記粉砕材、前記ペレット、及び、前記可塑剤が混合された前記樹脂組成物を製造する混合工程と、
を有する樹脂組成物の製造方法。
(1)に記載された樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することができる。
【0048】
(2) (1)に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程は、前記粉砕材と前記ペレットを加熱しつつ混練する工程と、前記粉砕材と前記ペレットの混練物と前記可塑剤を加熱しつつ混練する工程と、を有する樹脂組成物の製造方法。
(2)に記載された樹脂組成物の製造方法では、粉砕材とペレットの混練により、粉砕材とペレットを容易に混合することができる。また、粉砕材とペレットの混練物に可塑剤を円滑に混合して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成の製造効率を向上させることができる。
【0049】
(3) (1)又は(2)に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、前記粉砕材、前記ペレット、及び、前記可塑剤の混練物を加熱の温度を低下させながら混練する樹脂組成物の製造方法。
(3)に記載された樹脂組成物の製造方法では、粉砕材、ペレット、及び、可塑剤を確実に混合して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を効率よく製造することができる。
【0050】
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、100重量部の前記粉砕材に対し、1~30重量部の前記ペレットを添加する樹脂組成物の製造方法。
(4)に記載された樹脂組成物の製造方法では、粉砕材に対するペレットの混練、及び、混練物に対する可塑剤の混練を行い易くすることができる。
【0051】
(5) (1)ないし(4)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、前記粉砕材の最大寸法が15mm以下である樹脂組成物の製造方法。
(5)に記載された樹脂組成物の製造方法では、粉砕材とペレットを分散させて、粉砕材とペレットを円滑に混練することができる。
【0052】
(6) (1)ないし(5)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記粉砕工程では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする本体部に軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする付属部が付属する前記樹脂形材を粉砕する樹脂組成物の製造方法。
(6)に記載された樹脂組成物の製造方法では、樹脂形材の本体部から付属部を分別せずに、樹脂形材を容易にリサイクルすることができる。
【符号の説明】
【0053】
10・・・樹脂形材、11・・・本体部、12・・・付属部、20・・・粉砕材、30・・・ペレット、40・・・可塑剤、R・・・最大寸法。
図1
図2
図3
図4
図5