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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070176
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/215 20060101AFI20240515BHJP
   C08L 27/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C08J3/215 CEV
C08L27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180639
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲佑
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA22
4F070AB26
4F070AC43
4F070AC55
4F070AE02
4F070DA55
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC03
4J002BD001
4J002BD002
4J002EH096
4J002EH146
4J002EW136
4J002FA001
4J002FA002
4J002FD026
(57)【要約】
【課題】硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造する。
【解決手段】樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。樹脂組成物の製造方法は、樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、粉砕材を液体の可塑剤に浸漬し、可塑剤を粉砕材に含浸させて含浸材を得る浸漬工程と、含浸材を加熱しつつ混練して、粉砕材と可塑剤が混合された樹脂組成物を製造する混合工程と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、
前記粉砕材を液体の可塑剤に浸漬し、前記可塑剤を前記粉砕材に含浸させて含浸材を得る浸漬工程と、
前記含浸材を加熱しつつ混練して、前記粉砕材と前記可塑剤が混合された前記樹脂組成物を製造する混合工程と、
を有する樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記浸漬工程では、前記粉砕材を60~80℃の前記可塑剤に浸漬する樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、前記粉砕材を添加した状態で前記含浸材を混練する樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記浸漬工程では、前記粉砕材の最大寸法が15mm以下である樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記浸漬工程では、前記粉砕材と前記可塑剤を攪拌しながら、前記粉砕材を前記可塑剤に浸漬する樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記粉砕工程では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする本体部に軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする付属部が付属する前記樹脂形材を粉砕する樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂窓等の建具では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材が使用されている。樹脂形材は、硬質ポリ塩化ビニルの樹脂材料を加熱して溶融し、溶融した樹脂材料を押出成形して製造される。このような樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する場合には、例えば、樹脂形材を粉砕した粉砕材と液体の可塑剤を混練し、粉砕材の硬質ポリ塩化ビニルを可塑剤により軟質化して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。
【0003】
ところが、製造後の樹脂形材では、樹脂の粒子が押出成形により潰れて、押出成形前に存在した樹脂の粒子内の空隙がほとんどなくなる。これに伴い、樹脂形材の粉砕材と可塑剤の混練中に、可塑剤が粉砕材に浸み込み難くなり、粉砕材同士が可塑剤によって滑り易くもなる。そのため、樹脂形材の粉砕材と可塑剤が混練され難くなり、粉砕材の硬質ポリ塩化ビニルを可塑剤により軟質化するのが困難となる。これに対し、従来、硬質塩化ビニル系樹脂成形品の粉砕物、可塑剤、及び、無機充填材を加熱混練機により混練して、塩化ビニル系樹脂組成物を製造する塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法も知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された従来の塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法では、無機充填材により可塑剤を吸収して、粉砕物に可塑剤を無機充填材とともに混練する。しかしながら、可塑剤の吸収に無機充填材を必要とするため、可塑剤の添加量が制限されて、柔らかい塩化ビニル系樹脂組成物を製造するのが困難になる虞がある。また、可塑剤の添加量を増加させるためには、無機充填材の添加量も増加させる必要があり、塩化ビニル系樹脂組成物の物性に影響が生じる虞もある。可塑剤の添加量が無機充填材の種類等に依存するため、塩化ビニル系樹脂組成物の設計が制限されることもある。従って、従来の塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法においては、塩化ビニル系樹脂組成物を容易に製造する観点から、改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5446104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、
前記粉砕材を液体の可塑剤に浸漬し、前記可塑剤を前記粉砕材に含浸させて含浸材を得る浸漬工程と、
前記含浸材を加熱しつつ混練して、前記粉砕材と前記可塑剤が混合された前記樹脂組成物を製造する混合工程と、
を有する樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造手順を示すフローチャートである。
図2】本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造過程の各段階の状態を模式的に示す図である。
図3】本実施形態の可塑剤に浸漬する粉砕材の例を示す図である。
図4】本実施形態の樹脂形材の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。これにより、一旦製造された樹脂形材を再利用して、樹脂形材を樹脂組成物にリサイクルし、新たに樹脂組成物を生成する。
【0011】
図1は、本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造手順(工程)を示すフローチャートである。図2は、本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造過程の各段階の状態を模式的に示す図である。
【0012】
図示のように、不用となった樹脂形材10(図2A参照)を回収する(図1のS101)。樹脂形材10は、樹脂の押出成形により成形された形材(押出形材)である。樹脂は、硬質ポリ塩化ビニルであり、樹脂形材10は、硬質ポリ塩化ビニルからなる硬質ポリ塩化ビニル形材である。硬質ポリ塩化ビニルは、可塑剤を混合していないポリ塩化ビニル(PVC)であり、ポリ塩化ビニルに他の成分(例えば、各種の安定剤、改良剤)が混合されていてもよい。なお、図2Aでは、樹脂形材10の長手方向に直交する断面を示している。
【0013】
ここでは、樹脂形材10は、建具である樹脂窓に使用される樹脂製の成形品(樹脂成形品)である。樹脂窓は、樹脂製の枠(樹脂枠)と、樹脂製の框(樹脂框)を含む障子と、を有しており、樹脂枠と樹脂框は、それぞれ樹脂形材10からなる。また、樹脂形材10として、樹脂窓の樹脂形材10の端材を回収する。樹脂形材10の端材は、例えば、樹脂窓の製造現場での端材、又は、市場屑として回収された端材である。これに対し、樹脂形材10は、廃棄される樹脂形材10であってもよい。
【0014】
次に、粉砕機により、回収された樹脂形材10を粉砕して、樹脂形材10の粉砕材20(図2B参照)を形成する(図1のS102)。粉砕機は、例えば、衝撃式粉砕機であるインパクトクラッシャーである。樹脂形材10が長い又は大きいときには、粉砕機による粉砕前に、樹脂形材10を切断する等して、樹脂形材10を粉砕機により粉砕可能な大きさに形成する。また、樹脂形材10は、2段階で粉砕してもよい。この場合には、第1段階の粗い粉砕用の粉砕機により、樹脂形材10を粗く粉砕した後に、第2段階の細かい粉砕用の粉砕機により、粗い粉砕材20を細かい粉砕材20に粉砕する。このようにして、樹脂形材10を粉砕した粉砕材20を生成する。
【0015】
樹脂形材10は、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の原料の一部である。軟質ポリ塩化ビニルは、可塑剤を混合したポリ塩化ビニルであり、可塑剤を含有する。また、樹脂組成物は、軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする組成物であり、軟質ポリ塩化ビニルの成形品の原料となる。可塑剤は、硬質ポリ塩化ビニルに柔軟性を与える添加剤であり、硬質ポリ塩化ビニルを軟質化する。
【0016】
可塑剤は、例えば、ジブチルフタレート(DBP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DOP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソノニルフタレート(DINP)等のフタル酸エステル系可塑剤、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテート(TOTM)、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジシソデシルアジペート(DIDA)、ジブチルセバケート(DBS)等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリフェニルホスフェート(TPP)等のリン酸エステル系可塑剤、又は、ポリエステル類、エポキシ化大豆油等の可塑剤である。
【0017】
樹脂形材10の粉砕後に、樹脂形材10の粉砕材20を液体の可塑剤30(図2C参照)に浸漬して、可塑剤30を粉砕材20に吸収させる(図1のS103)。これにより、可塑剤30を粉砕材20に含浸させて、粉砕材20に可塑剤30が含浸した含浸材21(図2D参照)を得る。可塑剤30は、粉砕材20の表面から粉砕材20に吸収されて、粉砕材20の内部に浸透する。可塑剤30を粉砕材20に次第に吸収させて、含浸材21を生成する。含浸材21は、可塑剤30を含浸させた樹脂形材10の粉砕材20であり、粉砕材20の硬質ポリ塩化ビニルに加えて、可塑剤30を含有する。
【0018】
図3は、本実施形態の可塑剤30に浸漬する粉砕材20の例を示す図である。
図示のように、樹脂形材10の粉砕により、様々な形状及び最大寸法Rの粉砕材20が形成される。粉砕材20の最大寸法Rは、それぞれの粉砕材20の外形のうち最も寸法が大きい部分の寸法である。可塑剤30に浸漬する粉砕材20の最大寸法Rは、15mm以下である。そのため、樹脂形材10の粉砕時に、粉砕材20の最大寸法Rが15mm以下になるように、樹脂形材10を粉砕する。或いは、樹脂形材10の粉砕後に、分離装置等を用いて、最大寸法Rが15mmよりも大きい粉砕材20を分離して除去し、最大寸法Rが15mm以下の粉砕材20を選別する。最大寸法Rが15mm以下の粉砕材20に可塑剤30を含浸させて、含浸材21を生成する。
【0019】
可塑剤30を粉砕材20に含浸させる際には、粉砕材20と可塑剤30を攪拌しながら、粉砕材20を可塑剤30に浸漬する。また、可塑剤30を所定温度に加熱した状態で、粉砕材20の可塑剤30への浸漬を所定時間にわたって継続する。ここでは、粉砕材20を60~80℃の可塑剤30に浸漬する。その状態で、粉砕材20を可塑剤30に24~72時間浸漬する。恒温装置により、可塑剤30の温度を60~80℃の範囲内の温度に維持した状態で、24~72時間の範囲内の時間にわたって、粉砕材20を可塑剤30に浸漬して、可塑剤30を粉砕材20に含浸させる。
【0020】
軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の硬さは、含浸材21に含浸された可塑剤30の濃度(可塑剤30の含浸濃度)によって変化し、可塑剤30の含浸濃度に対応した硬さになる。また、粉砕材20を浸漬する可塑剤30の温度(粉砕材20の浸漬温度)と粉砕材20を可塑剤30に浸漬する時間(粉砕材20の浸漬時間)のそれぞれによって、可塑剤30の含浸濃度及び樹脂組成物の硬さが変化する。そのため、粉砕材20の浸漬温度と粉砕材20の浸漬時間のそれぞれを調整して、可塑剤30の含浸濃度及び樹脂組成物の硬さを調整する。ここでは、可塑剤30の含浸濃度の目標濃度は、含浸材21における可塑剤30の質量パーセント濃度(wt%)で25~50wt%である。
【0021】
粉砕材20の浸漬温度として、60~80℃の範囲内の温度を選択し、粉砕材20の浸漬時間として、24~72時間の範囲内の時間を選択する。粉砕材20を選択した温度の可塑剤30に選択した時間にわたって浸漬する。その際、可塑剤30の含浸濃度が目標濃度になるように、粉砕材20の浸漬温度と浸漬時間を選択して決定する。これにより、可塑剤30の含浸濃度を目標濃度に調整して、樹脂組成物の硬さを目標硬さに調整する。また、例えば、粉砕材20の浸漬温度と浸漬時間を種々変化させて、それぞれ樹脂組成物の硬さを測定し、粉砕材20の浸漬温度、粉砕材20の浸漬時間、及び、樹脂組成物の硬さの相関関係を示すデータを予め取得する。相関関係を示すデータと製造する樹脂組成物の硬さに基づいて、粉砕材20の浸漬温度と浸漬時間を選択して決定する。
【0022】
可塑剤30を粉砕材20に含浸させた後に、含浸材21を可塑剤30から分離する。次に、加熱混練機により、含浸材21を加熱しつつ混練して、含浸材21に含まれる樹脂形材10の粉砕材20と可塑剤30が混合された軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する(図1のS104)。樹脂組成物は、含浸材21の硬質ポリ塩化ビニルからなる粉砕材20と可塑剤30が混合された混合物であり、軟質ポリ塩化ビニルからなる。粉砕材20の硬質ポリ塩化ビニルと可塑剤30を混合することで、粉砕材20の硬質ポリ塩化ビニルが可塑剤30により軟質化して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物が生成される。
【0023】
加熱混練機は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーであり、混練中の混練物にせん断力を加える。加熱混練機により、含浸材21は、所定の温度で加熱されて、所定の温度で混練される。また、含浸材21の混練により、粉砕材20に含まれる硬質ポリ塩化ビニルと可塑剤30が混練される。含浸材21(含浸材21を混練した含浸材21の混練物)を150~170℃の範囲内の温度で加熱しつつ混練して、含浸材21の混練を終了させる。ここでは、混練中の含浸材21の加熱の温度は、160℃である。
【0024】
含浸材21を混練する際には、含浸材21のみを混練して、含浸材21のみから軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。又は、含浸材21の混練を開始する前に、可塑剤30を含浸させていない樹脂形材10の粉砕材20を含浸材21に添加する(図2D参照)。この場合には、粉砕材20を添加した状態で、含浸材21を加熱しつつ混練する。含浸材21に添加する粉砕材20の最大寸法Rは、15mm以下である。加熱混練機により、含浸材21を粉砕材20とともに混練して、含浸材21と粉砕材20が混合された樹脂組成物を製造する。その際、含浸材21に含まれる粉砕材20と可塑剤30、及び、添加した粉砕材20を混合して、含浸材21と粉砕材20から樹脂組成物を製造する。
【0025】
含浸材21と粉砕材20は、任意の割合で混練及び混合可能である。また、含浸材21に対する粉砕材20の割合を調整することで、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物が含有する可塑剤の濃度及び樹脂組成物の硬さが調整される。含浸材21における可塑剤30の含浸濃度に対応して、含浸材21に対する粉砕材20の割合を調整して、樹脂組成物が含有する可塑剤の濃度を目標濃度に調整する。これにより、樹脂組成物の硬さを目標硬さに調整する。
【0026】
軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造が完了した後に、溶けた状態の樹脂組成物を加熱混練機から排出させて、樹脂組成物を並列したロール同士の間を通す(図1のS105)。その際、樹脂組成物を相対する2つ又は複数のロールの外周面の間を通して圧縮する。続いて、押出成形機により、樹脂組成物を押出成形し、押出成形された樹脂組成物を順次切断して、軟質ポリ塩化ビニルのペレットを成形する(図1のS106)。その後、軟質ポリ塩化ビニルのペレットを用いて、軟質ポリ塩化ビニルの成形品を成形する(図1のS107)。軟質ポリ塩化ビニルの成形品は、例えば、建具に使用されるエアタイト材、ガスケットである。
【0027】
以上説明した樹脂組成物の製造方法では、樹脂形材10の粉砕材20を可塑剤30に浸漬させることで、粉砕材20に可塑剤30を含浸させて、粉砕材20の硬質ポリ塩化ビニルを軟質化させることができる。そのため、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材10をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することができる。また、樹脂組成物の原料の樹脂形材10が樹脂形材10(ここでは、樹脂窓の樹脂形材10)の端材であるときには、樹脂形材10の端材をリサイクルに活用して、樹脂組成物のコストを削減することができる。
【0028】
粉砕材20の可塑剤30への浸漬中に、粉砕材20と可塑剤30を攪拌することで、可塑剤30を粉砕材20の表面に均等に接触させて、可塑剤30を粉砕材20に円滑に含浸させることができる。また、可塑剤30を含浸させていない粉砕材20を含浸材21とともに混練することで、樹脂形材10を効率よくリサイクルすることができる。粉砕材20の添加により、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の硬さを調整することもできる。
【0029】
粉砕材20の浸漬温度が60℃よりも低い温度であると、可塑剤30が粉砕材20に吸収される速度が遅くなる虞があり、粉砕材20の浸漬温度が80℃よりも高い温度であると、可塑剤30への浸漬中に、粉砕材20の硬質ポリ塩化ビニルが熱により劣化する虞がある。これに対し、粉砕材20の浸漬温度が60~80℃の範囲内(60℃以上80℃以下)の温度であると、可塑剤30を粉砕材20に円滑に吸収させつつ、粉砕材20の硬質ポリ塩化ビニルの熱による劣化を抑制することができる。
【0030】
粉砕材20の浸漬時間が24時間よりも短い時間であると、可塑剤30が粉砕材20に充分に吸収されない虞があり、粉砕材20の浸漬時間が72時間よりも長い時間であると、粉砕材20の浸漬時間が長くなるのに伴い、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造効率に影響が生じる虞がある。これに対し、粉砕材20の浸漬時間が24~72時間の範囲内(24時間以上72時間以内)の時間であると、可塑剤30を粉砕材20に充分に吸収させることができ、樹脂組成物の製造効率の低下を抑制することもできる。
【0031】
可塑剤30に浸漬する粉砕材20の最大寸法Rが15mmよりも大きいときには、粉砕材20が大きくなることで、可塑剤30が粉砕材20に含浸され難くなる虞がある。これに対し、粉砕材20の最大寸法Rが15mm以下のときには、可塑剤30を粉砕材20に効率よく含浸させることができる。可塑剤30を粉砕材20に含浸させるのに要する時間を短縮させることもできる。可塑剤30に浸漬する粉砕材20の最大寸法Rは、8mm以下であるのがより好ましい。これにより、可塑剤30を粉砕材20に含浸させ易くすることができる。
【0032】
含浸材21に添加する粉砕材20の最大寸法Rが15mmよりも大きいときには、粉砕材20が大きくなることで、含浸材21と粉砕材20を混練し難くなる虞がある。これに対し、最大寸法Rが15mm以下の粉砕材20を含浸材21に添加して、含浸材21を粉砕材20とともに混練することで、含浸材21と粉砕材20を分散させて、含浸材21と粉砕材20を円滑に混練することができる。含浸材21に添加する粉砕材20の最大寸法Rは、8mm以下であるのがより好ましい。これにより、含浸材21と粉砕材20をより円滑に混練することができる。
【0033】
含浸材21の混練物、及び、粉砕材20を添加した状態の含浸材21の混練物を混練する際に、混練物の加熱の温度が170℃よりも高い温度であると、混練物の粘度が低くなることで、混練物を練り難くなる虞があり、混練物の加熱の温度が150℃よりも低い温度であると、混練物の粘度が高くなることで、混練物が混ざり難くなる虞がある。これに対し、混練物の加熱の温度が150~170℃の範囲内(150℃以上170℃以下)の温度であると、混練物が混練し易い粘度になり、混練物の混練を円滑に進行させることができる。混練物の加熱の温度は、155~165℃の範囲内の温度であるのがより好ましい。これにより、混練物の混練をより円滑に進行させることができる。
【0034】
図4は、本実施形態の樹脂形材10の他の例を示す図であり、樹脂形材10の長手方向に直交する断面を示している。
図示のように、ここでは、樹脂形材10は、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする本体部11と、軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする付属部12を有している。付属部12は、硬質部である本体部11に付属する軟質部であり、本体部11よりも小さく形成されて、本体部11から突出する。樹脂形材10を粉砕する際には(図1のS102)、本体部11から付属部12を除去せずに、本体部11に付属部12が付属する樹脂形材10を粉砕して、樹脂形材10の粉砕材20を形成する。
【0035】
形成される粉砕材20には、本体部11のみの粉砕材20、付属部12のみの粉砕材20、及び、本体部11と付属部12の両方を含む粉砕材20が含まれる。粉砕材20を可塑剤30に浸漬して、含浸材21を生成する。このように、樹脂形材10の硬質ポリ塩化ビニルからなる本体部11から軟質ポリ塩化ビニルからなる付属部12を分別せずに、樹脂形材10を容易にリサイクルすることができる。
【0036】
以上のとおり、本実施形態では、以下の(1)~(6)に記載された樹脂組成物の製造方法を開示している。
【0037】
(1) 硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、
前記粉砕材を液体の可塑剤に浸漬し、前記可塑剤を前記粉砕材に含浸させて含浸材を得る浸漬工程と、
前記含浸材を加熱しつつ混練して、前記粉砕材と前記可塑剤が混合された前記樹脂組成物を製造する混合工程と、
を有する樹脂組成物の製造方法。
(1)に記載された樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することができる。
【0038】
(2) (1)に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記浸漬工程では、前記粉砕材を60~80℃の前記可塑剤に浸漬する樹脂組成物の製造方法。
(2)に記載された樹脂組成物の製造方法では、可塑剤を粉砕材に円滑に吸収させつつ、粉砕材の硬質ポリ塩化ビニルの熱による劣化を抑制することができる。
【0039】
(3) (1)又は(2)に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、前記粉砕材を添加した状態で前記含浸材を混練する樹脂組成物の製造方法。
(3)に記載された樹脂組成物の製造方法では、可塑剤を含浸させていない粉砕材を含浸材とともに混練することで、樹脂形材を効率よくリサイクルすることができる。
【0040】
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記浸漬工程では、前記粉砕材の最大寸法が15mm以下である樹脂組成物の製造方法。
(4)に記載された樹脂組成物の製造方法では、可塑剤を粉砕材に効率よく含浸させることができる。
【0041】
(5) (1)ないし(4)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記浸漬工程では、前記粉砕材と前記可塑剤を攪拌しながら、前記粉砕材を前記可塑剤に浸漬する樹脂組成物の製造方法。
(5)に記載された樹脂組成物の製造方法では、攪拌により、可塑剤を粉砕材の表面に均等に接触させて、可塑剤を粉砕材に円滑に含浸させることができる。
【0042】
(6) (1)ないし(5)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記粉砕工程では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする本体部に軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする付属部が付属する前記樹脂形材を粉砕する樹脂組成物の製造方法。
(6)に記載された樹脂組成物の製造方法では、樹脂形材の本体部から付属部を分別せずに、樹脂形材を容易にリサイクルすることができる。
【符号の説明】
【0043】
10・・・樹脂形材、11・・・本体部、12・・・付属部、20・・・粉砕材、21・・・含浸材、30・・・可塑剤、R・・・最大寸法。
図1
図2
図3
図4