(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007019
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】電磁アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
H01F7/16 E
H01F7/16 D
H01F7/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108139
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】抱石 良輔
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AA04
5E048AA08
5E048AB01
5E048AC08
5E048AD04
5E048AD07
5E048BA01
(57)【要約】
【課題】構造の簡素化、低コスト化、機能上の信頼性を向上させつつ、大きな推力を得られる電磁アクチュエータを提供する。
【解決手段】コイル82、コイルの通電により作動位置に移動しコイルの非通電により休止位置に戻る可動子30、可動子に固定されたシャフト40、可動子を移動自在に収容する円筒部11を含み磁路を形成する第1固定子10、コイルの通電により可動子を吸引するべく配置され磁路を形成する第2固定子20を備え、可動子30は、円筒部の内側において非接触に配置される基準外周面31、円筒部の外側でかつ第2固定子と対向する領域において基準外周面よりも大きい外径をなす大径端面32を含み、第2固定子20は、軸線方向において可動子を受け入れる環状凹部21b、大径端面が当接し得るストッパ部21f、シャフトを軸線方向にガイドするガイド部(21f
2、B)を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁用のコイルと、前記コイルの通電により作動位置に移動し前記コイルの非通電により休止位置に戻るべく所定の軸線方向に移動する可動子と、前記可動子に固定され外部に駆動力を及ぼすシャフトと、前記可動子を移動自在に収容する円筒部を含み磁路を形成する第1固定子と、前記コイルの通電により前記可動子を吸引するべく配置され磁路を形成する第2固定子を備え、
前記可動子は、前記円筒部の内側において非接触に配置される基準外周面と、前記円筒部の外側でかつ前記第2固定子と対向する領域において前記基準外周面よりも大きい外径をなす大径端面を含み、
前記第2固定子は、前記軸線方向において前記可動子を受け入れる環状凹部と、前記大径端面が当接し得るストッパ部と、前記シャフトを前記軸線方向にガイドするガイド部を含む、
ことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記可動子は、前記大径端面と同一外径をなす大径外周面と、前記大径外周面を前記基準外周面に接続する外周環状テーパ面を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記可動子は、前記大径端面と同一外径をなす大径外周面と、前記大径外周面を前記基準外周面に接続する外周環状テーパ面を含み、
前記第2固定子は、前記環状凹部の内側において前記大径外周面と非接触にて対向する内周面と、前記環状凹部の外側において前記円筒部に向けて先細る外周環状テーパ面を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記第2固定子は、前記シャフトを通すと共に前記シャフトの自由端部を露出させる貫通孔を含み、
前記ガイド部は、前記ストッパ部に形成されたガイド孔と、前記貫通孔に嵌合された軸受を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記可動子は、前記大径端面と同一外径をなす大径外周面と、前記大径外周面を前記基準外周面に接続する外周環状テーパ面を含み、
前記第2固定子は、前記シャフトを通すと共に前記シャフトの自由端部を露出させる貫通孔を含み、
前記ガイド部は、前記ストッパ部に形成されたガイド孔と、前記貫通孔に嵌合された軸受を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記可動子は、前記大径端面と同一外径をなす大径外周面と、前記大径外周面を前記基準外周面に接続する外周環状テーパ面を含み、
前記第2固定子は、前記シャフトを通すと共に前記シャフトの自由端部を露出させる貫通孔と、前記環状凹部の内側において前記大径外周面と非接触にて対向する内周面と、前記環状凹部の外側において前記円筒部に向けて先細る外周環状テーパ面を含み、
前記ガイド部は、前記ストッパ部に形成されたガイド孔と、前記貫通孔に嵌合された軸受を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項7】
前記ストッパ部は、硬化処理が施されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項8】
前記可動子に収容されると共に前記可動子が前記休止位置に戻る際に衝撃を吸収しつつ前記可動子を前記休止位置に位置付ける緩衝ユニットを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項9】
前記緩衝ユニットは、前記休止位置において前記第1固定子に当接するロッドと、前記ロッドを前記第1固定子に向けて付勢する付勢部材と、前記ロッドと前記シャフトの間に介在する緩衝部材を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項10】
前記第1固定子は、前記円筒部と、前記ロッドを当接させるべく前記円筒部に連続する底壁部と、前記円筒部から径方向に延在するフランジ部を含み、
前記第2固定子は、前記環状凹部及び前記貫通孔を画定する内側円筒部と、前記円筒部及び前記内側円筒部の周りに配置された前記コイルを囲繞すると共に前記フランジ部をカシメ処理により固定する外側円筒部を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の電磁アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドの電磁力を駆動力とする電磁アクチュエータに関し、特に、直線的に往復動すると共に通電時に外向きに移動する可動子に固定されたシャフトを備えた電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁アクチュエータとしては、第1固定子(固定部)及び第2固定子(プランジャーガイド部)、励磁用のコイル、軸線方向に往復動自在に配置された可動子(可動ヨーク)、可動子に固定されたシャフト(プランジャー)、可動子に収容されて可動子が固定子の固定部に衝突する際の衝撃を吸収する衝撃吸収手段を備えた、電磁ソレノイドが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
上記電磁ソレノイドにおいて、可動子及びシャフトを移動させるための推力を大きくするには、コイルの巻き数を増やす必要があり、それ故に大型化及び高コスト化を招く。そこで、コイルの巻き数を増やすことなく推力を大きくするべく、可動子と固定子の間で磁力線(磁束)を効率よく作用させる構造が望まれる。
また、推力を大きくすると、可動子が作動位置に前進して停止する際の衝撃も大きくなるため、耐衝撃性を考慮した構造も望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、低コスト化、機能上の信頼性の向上を図りつつ、大きい推力を得ることのできる電磁アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁アクチュエータは、励磁用のコイルと、コイルの通電により作動位置に移動しコイルの非通電により休止位置に戻るべく所定の軸線方向に移動する可動子と、可動子に固定され外部に駆動力を及ぼすシャフトと、可動子を移動自在に収容する円筒部を含み磁路を形成する第1固定子と、コイルの通電により可動子を吸引するべく配置され磁路を形成する第2固定子を備え、可動子は、円筒部の内側において非接触に配置される基準外周面と、円筒部の外側でかつ第2固定子と対向する領域において基準外周面よりも大きい外径をなす大径端面を含み、第2固定子は、軸線方向において可動子を受け入れる環状凹部と、大径端面が当接し得るストッパ部と、シャフトを軸線方向にガイドするガイド部を含む、構成となっている。
【0007】
上記電磁アクチュエータにおいて、可動子は、大径端面と同一外径をなす大径外周面と、大径外周面を基準外周面に接続する外周環状テーパ面を含む、構成を採用してもよい。
【0008】
上記電磁アクチュエータにおいて、可動子は、大径端面と同一外径をなす大径外周面と、大径外周面を基準外周面に接続する外周環状テーパ面を含み、第2固定子は、環状凹部の内側において大径外周面と非接触にて対向する内周面と、環状凹部の外側において円筒部に向けて先細る外周環状テーパ面を含む、構成を採用してもよい。
【0009】
上記電磁アクチュエータにおいて、第2固定子は、シャフトを通すと共にシャフトの自由端部を露出させる貫通孔を含み、第2固定子のガイド部は、ストッパ部に形成されたガイド孔と、貫通孔に嵌合された軸受を含む、構成を採用してもよい。
【0010】
上記電磁アクチュエータにおいて、可動子は、大径端面と同一外径をなす大径外周面と、大径外周面を基準外周面に接続する外周環状テーパ面を含み、第2固定子は、シャフトを通すと共にシャフトの自由端部を露出させる貫通孔を含み、第2固定子のガイド部は、ストッパ部に形成されたガイド孔と、貫通孔に嵌合された軸受を含む、構成を採用してもよい。
【0011】
上記電磁アクチュエータにおいて、可動子は、大径端面と同一外径をなす大径外周面と、大径外周面を基準外周面に接続する外周環状テーパ面を含み、第2固定子は、シャフトを通すと共にシャフトの自由端部を露出させる貫通孔と、環状凹部の内側において大径外周面と非接触にて対向する内周面と、環状凹部の外側において円筒部に向けて先細る外周環状テーパ面を含み、第2固定子のガイド部は、ストッパ部に形成されたガイド孔と、貫通孔に嵌合された軸受を含む、構成を採用してもよい。
【0012】
上記電磁アクチュエータにおいて、ストッパ部は、硬化処理が施されている、構成を採用してもよい。
【0013】
上記電磁アクチュエータにおいて、可動子に収容されると共に可動子が休止位置に戻る際に衝撃を吸収しつつ可動子を休止位置に位置付ける緩衝ユニットを含む、構成を採用してもよい。
【0014】
上記電磁アクチュエータにおいて、緩衝ユニットは、休止位置において第1固定子に当接するロッドと、ロッドを第1固定子に向けて付勢する付勢部材と、ロッドとシャフトの間に介在する緩衝部材を含む、構成を採用してもよい。
【0015】
上記電磁アクチュエータにおいて、第1固定子は、上記円筒部に加えて、ロッドを当接させるべく円筒部に連続する底壁部と、円筒部から径方向に延在するフランジ部を含み、第2固定子は、環状凹部及び貫通孔を画定する内側円筒部と、円筒部及び内側円筒部の周りに配置されたコイルを囲繞すると共にフランジ部をカシメ処理により固定する外側円筒部を含む、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成をなす電磁アクチュエータによれば、構造の簡素化、低コスト化、機能上の信頼性の向上を達成しつつ、大きい推力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電磁アクチュエータを示すものであり、一方向の斜めから視た外観斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る電磁アクチュエータを示すものであり、他方向(適用対象物に取り付ける側)から視た外観斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る電磁アクチュエータの分解斜視図である。
【
図4】一実施形態に係る電磁アクチュエータの断面図である。
【
図5】一実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、可動子及びシャフトを示す外観斜視図である。
【
図6】一実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、緩衝ユニットを収容した可動子及びシャフトの断面図である。
【
図7】一実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第1固定子、第2固定子、可動子及びシャフトの関係を示す部分拡大断面図である。
【
図8】一実施形態に係る電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、可動子が休止位置に位置する状態を示す部分断面図である。
【
図9】一実施形態に係る電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、可動子が作動位置に位置する状態を示す部分断面図である。
【
図10】一実施形態に係る電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、可動子が作動位置から休止位置に戻る状態を示す部分断面図である。
【
図11】一実施形態に係る電磁アクチュエータと従来の電磁アクチュエータとにおいて、ストロークに対する電磁力の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る電磁アクチュエータは、外部に駆動力を及ぼす適用対象物として、例えば内燃エンジンのカム切替機構、又は、油路切替弁あるいはその他のオン/オフの切替機構に適用されるものである。
一実施形態に係る電磁アクチュエータは、
図1ないし
図7に示すように、第1固定子10、第2固定子20、可動子30、可動子30に固定されたシャフト40、緩衝ユニットU、コイルモジュール80、フランジ部材90、シール部材Sr
1,Sr
2,Sr
3を備えている。
【0019】
ここで、可動子30、緩衝ユニットU、及びシャフト40により、軸線S方向に一体的に移動する可動子モジュールMが構成されている。
緩衝ユニットUは、可動子30に収容されて、可動子30が休止位置に戻る際に衝撃を吸収しつつ可動子30を休止位置に位置付けるものであり、ロッド50、付勢部材60、緩衝部材70を備えている。
コイルモジュール80は、ボビン81、励磁用のコイル82、ボビン81及びコイル82を埋設した成形部83を備えている。
【0020】
第1固定子10は、軟鉄等を用いて機械加工又は鍛造により形成され磁力線を通す磁路として機能するものであり、
図1、
図3、
図4に示すように、円筒部11、底壁部12、フランジ部13を備えている。
円筒部11は、可動子30を非接触にて軸線S方向に移動自在に収容するべく軸線Sを中心とする内周面11a、及び外周面11bを備えている。
内周面11aは、
図7に示すように、軸線Sに垂直な径方向において所定の隙間ΔC(例えば、0.5mm~0.6mm)をおいて、可動子30の外周面31と対向する。
外周面11bは、ボビン81の円筒部81aの内壁面に密接する。
底壁部12は、円筒部11に連続して軸線Sに垂直な円板状に形成され、円筒部11と協働して可動子30を覆うと共に、可動子30が休止位置に位置するとき緩衝ユニットUのロッド50が当接する内壁面12aを画定する。
フランジ部13は、円筒部11の外周から軸線Sに垂直な径方向に延在する円環板状に形成され、第2固定子20と協働してコイルモジュール80を覆うと共に、第2固定子20の外側円筒部23(環状凹部23b)に嵌合されてカシメ処理により第2固定子20に連結固定される。
【0021】
第2固定子20は、軟鉄等を用いて機械加工又は鍛造により形成され、磁力線を通す磁路として機能すると共にコイル82の通電時に可動子30を吸引する固定鉄心として機能するものであり、
図1、
図3、
図4に示すように、内側円筒部21、底壁部22、外側円筒部23、適用対象物に嵌合される嵌合部24を備えている。
【0022】
内側円筒部21は、軸線Sを中心とする外周面21a、環状凹部21b、外周環状テーパ面21c、貫通孔21d、環状凹部21bに隣接する凹部21e、凹部21eに嵌合されたストッパ部21fを備えている。
外周面21aは、第1固定子10の外周面11aと同一の外径をなし、ボビン81の円筒部81aの内壁面に密接して嵌め込まれる。
【0023】
環状凹部21bは、作動位置に移動する可動子30を非接触にて受け入れるべく、可動子30の大径外周面33よりも大きい内径でかつ軸線Sを中心とする円筒状の内周面21b1を画定し、可動子30の大径外周面33と非接触にて対向して可動子30の大径端面32を含む領域を受け入れる。
外周環状テーパ面21cは、軸線Sを中心として第1固定子10の円筒部11に向けて先細る円錐面状に形成されている。そして、外周環状テーパ面21cは、コイル82の通電時に生じる磁力線を、円筒部11から可動子30を経由した後に、内側円筒部21内の軸線S方向に流線的に導く役割をなす。
ここで、外周環状テーパ面21cと内周面21d1により画定される筒状壁部は、コイル82が通電された起動時において、可動子30を円滑に起動させるための磁力線を導く領域である。
【0024】
凹部21eは、別部材として形成されたストッパ部21fを嵌合して固定する領域である。
貫通孔21dは、軸線Sを中心として形成され、シャフト40を非接触にて通すと共にシャフト40の自由端部42を露出させるように形成されている。また、貫通孔21dには、
図4に示すように、シャフト40を軸線S方向に摺動自在にガイドするガイド部としての軸受Bが嵌合されている。
軸受Bは、硬質の金属材料により円筒状に形成されたブッシュであり、第2固定子20の貫通孔21dにおいて、シャフト40の自由端部42a側寄りを支持する領域に配置されている。
【0025】
ストッパ部21fは、浸炭等の硬化処理を施した別部材として形成された後に凹部21eに嵌合固定されたものであり、可動子30の大径端面32が当接するストッパ面21f1、シャフト40を軸線S方向に摺動自在にガイドするガイド部としてのガイド孔21f2を画定する。すなわち、環状凹部21bの底領域に、ストッパ部21fのストッパ面21f1が配置される。
このように、硬化処理したストッパ部21fを採用することにより、軟鉄等の材料にて形成する場合に比べて、可動子30の衝突に対する耐摩耗性及び機械的強度を高めることができる。また、第2可動子20の全体を硬化処理する場合に比べて、コストを低減することができる。
【0026】
特に、可動子30は第1固定子10の円筒部11と非接触に配置されて、シャフト40のみが第2固定子20に支持される構成であるため、
図7に示すように、ストッパ部21fのガイド孔21f
2は、軸線S方向における可動子30の長さ寸法Lに対して、約0.3×L~0.4×Lの長さに形成されており、可動子モジュールMを軸線S方向に高精度にガイドする重要なガイド部として機能する。
このように、ストッパ部21fのガイド孔21f
2は、軸受Bと協働して、可動モジュールMのシャフト40を軸線S方向に摺動自在にガイドする。
【0027】
底壁部22は、内側円筒部21に連続して軸線Sに垂直な円環板状に形成され、内側円筒部21と外側円筒部23を連結する。そして、底壁部22は、内側円筒部21及び外側円筒部23と協働してコイルモジュール80を覆うと共に、その外壁面においてフランジ部材90が溶接されるようになっている。
【0028】
外側円筒部23は、底壁部22の外縁部から軸線S方向に伸長すると共に軸線Sを中心として内側円筒部21と同心状に形成され、切欠き部23a、環状凹部23b、カシメ部23cを備えている。
切欠き部23aは、コイルモジュール80の一部(コネクタ83a)を露出させるべく矩形状に形成されている。
環状凹部23bは、第1固定子10のフランジ部23を軸線S方向において当接させると共に軸線Sに垂直な径方向において位置決めするべく形成されている。
カシメ部23cは、環状凹部23bに嵌め込まれたフランジ部23をカシメ処理により固定するべく形成されている。
嵌合部24は、適用対象物の嵌合凹部に嵌合されるように形成されており、その外周面においてシール部材Sr3を嵌め込む環状溝24a、その内側において貫通孔21dよりも大きい内径をなす凹部24bを備えている。
【0029】
可動子30は、磁力線を通す磁路として機能すると共にコイル82の通電時に軸線S方向に移動する可動鉄心として機能するものであり、快削鋼(SUM)等を用いて、機械加工又は鍛造により緩衝ユニットUを収容する収容部Cを画定する有底円筒状に形成され、
図5及び
図6に示すように、基準外周面31、大径端面32、大径外周面33、外周環状テーパ面34、嵌合孔35、内壁面36、規制部37、開口部38を備えている。
【0030】
基準外周面31は、軸線Sを中心とする円筒面をなし、第1固定子10の内周面11aと隙間ΔCをおいて非接触にて対向する。
大径端面32は、軸線S方向において第1固定子10の円筒部11の外側に位置付けられかつ第2固定子20と対向するべく軸線Sに垂直な円形状平面として形成され、作動位置において第2固定子20のストッパ部21f(ストッパ面21f1)に当接する。
このように、大径端面32が基準外周面31により画定される端面よりも大きい面積をなすように形成されているため、可動子30から第2固定子20に向かう磁束を増やすことができ、電磁力すなわち可動子30の推力を大きくすることができる。
【0031】
大径外周面33は、軸線S方向において第1固定子10の円筒部11の外側に位置付けられて大径端面32の外径と同一の外径をなす円筒面として形成されている。
外周環状テーパ面34は、大径外周面33を基準外周面31に接続するように円錐面状に形成されている。
このように、大径端面32に隣接して大径外周面33及び外周環状テーパ面34が設けられることにより、大径端面32の機械的強度を確保することができ、可動子30を鍛造等により製造する際の製造性を向上させることができる。
【0032】
嵌合孔35は、大径端面32の内側において軸線Sを中心とする円形断面をなし、シャフト40の大径固定部41が圧入される領域であり、シャフト40の外径寸法よりも僅かに小さい内径に形成されている。
内壁面36は、軸線S方向においてロッド50の本体部51を摺動自在にガイドするべく、嵌合孔35と同一の内径で軸線Sを中心とする円筒面として形成されている。
規制部37は、収容部Cに緩衝ユニットUを収容した状態でロッド50の本体部51を受け止めて抜け落ちを規制する。
開口部38は、ロッド50の突出部52を外部に突出させるべく、軸線Sを中心とする円形孔として形成されている。
【0033】
ここで、可動子30は、鍛造品とすることにより、機械加工品に比べて製造コストを低減することができる。また、可動子30が、第1固定子10の円筒部11の内周面11aに対して隙間ΔCをおいて非接触に配置されることにより、コイル82に通電した際の相互の吸引を抑制ないし防止して、第2固定子20との吸引により応答性に優れた円滑な移動を得ることができる。
【0034】
シャフト40は、適用対象物に駆動力を及ぼすものであり、ステンレス鋼等を用いて、軸線S方向に長尺で段付き円柱状に形成され、大径固定部41、自由端部42aを有する小径部42を備えている。
大径固定部41は、嵌合孔35に圧入されて可動子30に固定される。また、大径固定部41は、緩衝部材70を受ける端面41aと、軸線S方向において付勢部材60の一端部61を受ける環状受け部41bを備えている。
小径部42は、第2固定子20の貫通孔21dに通されると共に、ストッパ部21fのガイド孔21f2と軸受Bにより軸線S方向に摺動自在にガイドされる。また、小径部42の先端に位置する自由端部42aは、休止位置において、第2固定子20の貫通孔21dから外側に突出するように配置される。
【0035】
ロッド50は、ステンレス鋼等を用いて形成され、
図6に示すように、本体部51、突出部52、受け部53、位置決め部54、嵌合部55を備えている。
本体部51は、可動子30の内壁面36に摺動自在に接触するべく、軸線Sを中心とする円柱状に形成されている。
突出部52は、可動子30の開口部38から突出するように配置されて第1固定子10の内壁面12aに離脱可能に当接し得るべく、軸線Sを中心としかつ本体部51よりも小径の円柱状に形成されている。
【0036】
受け部53は、付勢部材60の他端部62を受けるべく、軸線Sを中心とする円環状端面として形成されている。
位置決め部54は、付勢部材60の内側に嵌合されて付勢部材60を軸線Sに垂直な方向において位置決めするべく、軸線Sを中心としかつ本体部51よりも小径の円柱状に形成されている。
嵌合部55は、緩衝部材70の嵌合凹部71に嵌合されて緩衝部材70を軸線Sに垂直な方向において位置決めするべく、軸線Sを中心としかつ位置決め部54よりも小径の円柱状に形成されている。
【0037】
付勢部材60は、圧縮型のコイルバネであり、一端部61がシャフト40の環状受け部41bに当接し、他端部62がロッド50の受け部53に当接した状態で、軸線S方向に圧縮して配置される。そして、付勢部材60は、ロッド50を軸線S方向において規制部37に当接するように付勢する。すなわち、組付けが完了した電磁アクチュエータにおいて、付勢部材60は、ロッド50を第1固定子10に向けて付勢する。
ここで、付勢部材60の付勢力は、適用対象物が及ぼす戻し力Fよりも大きくなるように設定されている。これにより、付勢部材60は、適用対象物の戻し力に打ち勝て、可動子30を所定の休止位置に位置付ける。
【0038】
緩衝部材70は、衝撃を吸収し得る材料を用いて、例えばゴム材料等により、シャフト40の小径部42と同等の外径をなす円柱状に形成されており、
図6に示すように、嵌合凹部71、端面72を備えている。
嵌合凹部71は、ロッド50の嵌合部55が嵌合されると共に、嵌合部55の端面55aが底面71aに当接するように形成されている。このように、嵌合凹部71に嵌合部55が嵌合されることにより、緩衝部材70を予めロッド50に組み付けた状態で、ロッド50と一緒に、可動子30の収容部Cに挿入することで、組付け作業を容易に行うことができる。また、緩衝部材70を軸線Sに垂直な方向において位置決めすることができ、付勢部材60との干渉を防止することができる。
端面72は、軸線Sに垂直な平面として形成され、シャフト40の端面41aと対向するように配置される。
【0039】
そして、緩衝部材70は、組付け状態において、可動子30が休止位置に位置する休止状態において、端面72と端面41aの間に僅かな隙間が形成されるように配置される。この隙間は、緩衝部材70やその他の部材の製造上の寸法誤差を吸収するためであり、休止状態で緩衝部材70が圧縮されないようにすることで、所望する緩衝作用を得ることができる。すなわち、緩衝部材70は、軸線S方向において、ロッド50とシャフト40の間に介在するように配置される。
【0040】
コイルモジュール80は、前述の通り、ボビン81、励磁用のコイル82、成形部83を備えている。
ボビン81は、樹脂材料を用いて形成され、
図4に示すように、軸線Sを中心とする円筒部81a、フランジ部81b、フランジ部81cを備えている。
円筒部81aは、その内側において第1固定子10の円筒部11及び第2固定子20の内側円筒部21が嵌合され、その外側においてコイル82が巻回されている。
フランジ部81bは、軸線Sを中心とする円環板状に形成され、第2固定子20の底壁部22と対向するように配置される。
フランジ部81cは、軸線Sを中心とする円環板状に形成され、第1固定子10のフランジ部13と対向するように配置される。
【0041】
コイル82は、通電により磁力を生じる励磁用のものであり、ボビン81の円筒部81aに巻回され、二つの端子82aに接続されている。
成形部83は、樹脂材料を用いてモールドされたものであり、ボビン81にコイル82を巻回しかつ端子82aを接続した状態で、全体を覆うと共に端子82aをコネクタ83a内に露出させるように成形されている。
【0042】
フランジ部材90は、適用対象物に取り付けるためのものであり、ステンレス鋼等の金属板を用いて略菱形の輪郭をなすように形成され、
図1ないし
図3に示すように、第2固定子20の嵌合部24を挿通させる中央孔91、締結ボルト(又はネジ)を通す二つの円孔92を備えている。
そして、フランジ部材90は、中央孔91に嵌合部24が通された状態で、
図2に示すように、第2固定子20の底壁部22の外壁面に(例えば四箇所の)スポット溶接Swを施して、第2固定子20に固定されている。
【0043】
次に、電磁アクチュエータが適用対象物に適用された状態での動作について、
図8ないし
図10を参照しつつ説明する。
先ず、コイル82が通電されない非通電の状態において、
図8に示すように、シャフト40及び可動子30は、適用対象物が及ぼす戻し力Fにより押し戻されて、ロッド50の突出部52が第1固定子10の内壁面12aに当接した休止位置に位置付けられる。
【0044】
この休止状態において、コイル82が通電されると、第1固定子10の円筒部11から可動子30を経由して第2固定子20の内側円筒部21に流れ込む磁力線(電磁力)MLが生じて、可動子30は第2固定子20に向けて引き寄せられる。
このとき、可動子30の大径端面32が基準外周面31の断面積よりも大きいため、大径端面32を経て第2固定子20に流れ込む磁束を増やすことができる。その結果、大きな電磁力(推力)が得られ、可動子30は迅速に前進移動して、
図9に示すように、大径端面32が第2固定子20のストッパ部(ストッパ面21f
1)に当接する作動位置に移動して停止すると共に、適用対象物に駆動力を及ぼして切替等の動作を行う。
【0045】
一方、この作動状態において、コイル82の通電が断たれると、シャフト40及び可動子30は適用対象物が及ぼす戻し力Fにより押し戻されて、可動子モジュールMは休位置に向けて後退する。この後退過程において、先ず、ロッド50の突出部52が内壁面12aに当接し、
図10に示すように、可動子30及びシャフト40は慣性力により所定の休止位置(
図10中の二点鎖線)を超えて過移動し、緩衝部材70がロッド50とシャフト40の間で弾性変形する。この移動過程で、シャフト40と一体的に移動する可動子30の衝撃力が吸収される。
【0046】
そして、付勢部材60の付勢力により、過移動した可動子30及びシャフト40は逆向きに押し戻されて、
図8に示すように、所定の休止位置に停止する。
このように、緩衝ユニットU(ロッド50、付勢部材60、緩衝部材70)の作用により、可動子30が休止位置に戻る際の衝撃力が吸収されると共に、可動子30は所定の休止位置に高精度に位置付けされる。
【0047】
上記実施形態に係る電磁アクチュエータによれば、可動子30が、第1固定子10の円筒部11の内側において非接触に配置される基準外周面31と、円筒部11の外側でかつ第2固定子20と対向する領域において基準外周面31よりも大きい外径をなす大径端面32を含み、第2固定子20が、軸線S方向において可動子30を受け入れる環状凹部21bと、大径端面32が当接し得るストッパ部21fと、シャフト40を軸線S方向にガイドするガイド部(ガイド孔21f2、軸受B)を含む。
したがって、可動モジュールMを軸線S方向に移動自在に支持することができ、コイル82の通電時に可動子30の大径端面32と第2固定子20との間を通過する磁束を増やすことができ、大きな推力を得ることができる。一方、推力が従来のままで良ければ、コイル82の巻き数を減らして、電磁アクチュエータの小型化を達成することもできる。
【0048】
また、可動子30が、大径端面32と同一外径をなす大径外周面33と、大径外周面33を基準外周面31に接続する外周環状テーパ面34を含むため、大径端面32の機械的強度を高めることができ、又、可動子30を鍛造により製造する際に破断や割れ等が生じ難くなり、製造性が向上する。
【0049】
また、第2固定子20が、環状凹部21bの内側において大径外周面33と非接触にて対向する内周面21b1と、環状凹部21bの外側において第1固定子10の円筒部11に向けて先細る外周環状テーパ面21cを含む。すなわち、外周環状テーパ面21cと内周面21d1により画定される筒状壁部を設けたことにより、コイル82が通電された起動時において可動子30を円滑に起動させるための磁力線を効率よく導くことができる。
【0050】
また、第2固定子20が、シャフト40を通すと共にシャフト40の自由端部42aを露出させる貫通孔21dを含み、シャフト40を軸線S方向に摺動自在にガイドするガイド部が、第2固定子20のストッパ部21fに形成されたガイド孔21f2と、貫通孔21dに嵌合された軸受Bを含むため、可動子30が第1固定子10の円筒部11と非接触に配置されても、可動子モジュールMを軸線S方向に確実にガイドすることができ、機能上の信頼性を向上させることができる。
特に、硬化処理したストッパ部21fを採用することにより、軟鉄等の材料にて形成する場合に比べて、可動子30の衝突に対する耐摩耗性及び機械的強度を高めることができ、又、第2可動子20の全体を硬化処理する場合に比べて、コストを低減することができる。
【0051】
また、可動子30に収容されると共に可動子30が休止位置に戻る際に衝撃を吸収しつつ可動子30を休止位置に位置付ける緩衝ユニットU(ロッド50、付勢部材60、緩衝部材70)を含むことにより、コイル82の通電が断たれて適用対象物が及ぼす戻し力により、可動子30及びシャフト40が休止位置に戻る際に、衝撃力を緩和することができると共に、可動子30を所定の休止位置に位置付けることができる。
【0052】
また、第1固定子10が、円筒部11と、ロッド50を当接させるべく円筒部11に連続する底壁部12と、円筒部11から径方向に延在するフランジ部13を含み、第2固定子20が、環状凹部21b及び貫通孔21dを画定する内側円筒部21と、円筒部11及び内側円筒部21の周りに配置されたコイル82を囲繞すると共にフランジ部13をカシメ処理により固定する外側円筒部23を含むため、第2固定子20に対して、コイル82を含むコイルモジュール80及び可動子モジュールMを組み込んで、第1固定子10を第2固定子20に組み付けた後にカシメ処理により第1固定子10を第2固定子20に固定することができる。これにより、電磁アクチュエータを容易に組み付けることができる。
【0053】
以上述べたように、一実施形態に係る電磁アクチュエータによれば、構造の簡素化、低コスト化、機能上の信頼性の向上を達成しつつ、大きな推力を得ることができる。
特に、
図11に示すように、コイルの巻き数(使用量)が同じ仕様において、本発明の電磁アクチュエータは、従来例の電磁アクチュエータよりも大きな電磁力(推力)を得ることができる。したがって、推力が従来と同様の要求であれば、コイル82の巻き数を減らして電磁アクチュエータの小型化及び低コスト化を達成することもできる。
【0054】
上記実施形態においては、緩衝ユニットUに含まれる付勢部材として、コイルバネをなす付勢部材60を採用したが、これに限定されるものではなく、複数の波形板バネが積層された多重型ウェーブバネ、その他の形態をなす付勢部材を採用してもよい。
上記実施形態においては、第1固定子及び第2固定子として、上記形態をなす第1固定子10及び第2固定子20を示したが、その他の形態をなす第1固定子及び第2固定子を採用してもよい。
上記実施形態においては、可動子30を休止位置に戻す戻し力として、適用対象物が及ぼす戻し力を適用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、戻し力を生じる付勢部材(例えば、コイルバネ)を電磁アクチュエータに内蔵してもよい。
【0055】
以上述べたように、本発明の電磁アクチュエータは、構造の簡素化、低コスト化、機能上の信頼性を向上させつつ、大きな推力を得ることができるため、エンジン又は車両に関する種々の切替機構の切替動作のために適用できるのは勿論のこと、その他の分野における切替機構等においても有用である。
【符号の説明】
【0056】
S 軸線
10 第1固定子
11 円筒部
12 底壁部
13 フランジ部
20 第2固定子
21 内側円筒部
21b 環状凹部
21b1 内周面
21c 外周環状テーパ面
21d 貫通孔
B 軸受(ガイド部)
21e 凹部
21f ストッパ部
21f1 ストッパ面
21f2 ガイド孔(ガイド部)
22 底壁部
23 外側円筒部
23c カシメ部
30 可動子
31 基準外周面
32 大径端面
33 大径外周面
34 外周環状テーパ面
35 嵌合孔
36 内壁面
37 規制部
38 開口部
40 シャフト
41 大径固定部
42 小径部
42a 自由端部
U 緩衝ユニット
50 ロッド
60付勢部材
70 緩衝部材
80 コイルモジュール
81 ボビン
82 励磁用のコイル
83 成形部
90 フランジ部材