(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070197
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】車両用シャッタ式物入れ
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
B60R7/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018547
(22)【出願日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2022180353
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悠青
(72)【発明者】
【氏名】野々川 貴志
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022CA07
3D022CB01
3D022CC19
3D022CD19
3D022CD29
(57)【要約】
【課題】シャッタの意匠面の自由度の向上と耐熱性の向上との両立を図ることができる。
【解決手段】車両用シャッタ式物入れは、開口部11を有する物入れ本体10と、開口部11の開口面11Aに沿って移動することで開口部11を開閉可能に構成されたシャッタ20と、物入れ本体10と隣り合って設けられ、シャッタ20を湾曲した状態で格納可能に構成されたシャッタ格納部30と、シャッタ20の幅方向の両側に位置し、シャッタ20の移動を案内する一対のガイド溝部40とを備える。シャッタ20は、湾曲可能に構成されたシャッタ本体21と、シャッタ本体21の表面に設けられるクッション層と、クッション層の表面に設けられる表皮層とを有する。クッション層は、立体編物である。表皮層は、樹脂製のフィルムを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する物入れ本体と、
前記開口部の開口面に沿って移動することで前記開口部を開閉可能に構成されたシャッタと、
前記物入れ本体と隣り合って設けられ、前記シャッタを湾曲した状態で格納可能に構成されたシャッタ格納部と、
前記シャッタの幅方向の両側に位置し、前記シャッタの移動を案内する一対のガイド溝部と、を備えるシャッタ式物入れにおいて、
前記シャッタは、湾曲可能に構成されたシャッタ本体と、前記シャッタ本体の表面に設けられるクッション層と、前記クッション層の表面に設けられる表皮層と、を有し、
前記クッション層は、立体編物であり、
前記表皮層は、樹脂製のフィルムを含む、
車両用シャッタ式物入れ。
【請求項2】
前記立体編物は、前記シャッタ本体の表面に貼着される裏編地層、前記表皮層の裏面に貼着される表編地層、及び前記裏編地層と前記表編地層とを連結する連結糸を有するダブルラッセル編物である、
請求項1に記載の車両用シャッタ式物入れ。
【請求項3】
前記シャッタの移動方向における前記連結糸の密度が、前記幅方向における前記連結糸の密度よりも小さい、
請求項2に記載の車両用シャッタ式物入れ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シャッタ式物入れに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シャッタ式物入れとしては、特許文献1に開示の車両用アームレスト装置(以下、アームレスト装置という)がある。
特許文献1に開示のアームレスト装置は、固定部材と、スライドドアとを有している。固定部材には、直線部と曲線部を有するガイドレールが設けられている。スライドドアは、クッションと、クッションに取り付けられる複数のピンとを有している。クッションは、弾性変形可能なクッション本体と、クッション本体と別体に形成されてクッション本体に取付けられる表皮とを備えている。クッションは、スライドドアのスライド方向に弾性変形するように構成されている。ピンは、ガイドレールにスライド可能に支持されている。これにより、スライドドアは、固定部材に対してガイドレールに沿ってスライド可能に構成されている。
【0003】
従来の車両用シャッタ式物入れでは、発泡ウレタン樹脂などによりクッション本体が形成されている。また、表皮は、伸縮性を有する樹脂により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうしたシャッタ式物入れにおいては、表皮として樹脂製のフィルムを用いることが考えられる。この場合、フィルムの表面に印刷を行うことができるため、意匠面の自由度を向上させることができる。
【0006】
しかしながら、表皮としてフィルムを用いた場合、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、真夏などにおいて、シャッタが湾曲している状態で車室内の温度が高温になると、湾曲しているフィルムに作用する応力が熱によってフィルムに残留しやすくなる。その結果、フィルムの意匠面に凹凸が生じることで見栄えが悪くなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのシャッタ式物入れの各態様を記載する。
[態様1]
開口部を有する物入れ本体と、
前記開口部の開口面に沿って移動することで前記開口部を開閉可能に構成されたシャッタと、
前記物入れ本体と隣り合って設けられ、前記シャッタを湾曲した状態で格納可能に構成されたシャッタ格納部と、
前記シャッタの幅方向の両側に位置し、前記シャッタの移動を案内する一対のガイド溝部と、を備えるシャッタ式物入れにおいて、
前記シャッタは、湾曲可能に構成されたシャッタ本体と、前記シャッタ本体の表面に設けられるクッション層と、前記クッション層の表面に設けられる表皮層と、を有し、
前記クッション層は、立体編物であり、
前記表皮層は、樹脂製のフィルムを含む、
車両用シャッタ式物入れ。
【0008】
同構成によれば、表皮層が樹脂製のフィルムであるので、印刷によって意匠面を容易に形成することができる。
また、上記構成によれば、クッション層が立体編物であるので、シャッタが湾曲されることに起因して表皮層に対して作用する応力が、立体編物を構成する糸同士の間隔及び角度が変化することで吸収されやすくなる。これにより、例えば車室内が高温となるに起因して表皮層が加熱された場合であっても表皮層を構成する樹脂製のフィルムに上記応力が残留しにくくなるので、残留応力に起因した表皮層の変形を抑制できる。
【0009】
したがって、シャッタの意匠面の自由度の向上と耐熱性の向上との両立を図ることができる。
[態様2]
前記立体編物は、前記シャッタ本体の表面に貼着される裏編地層、前記表皮層の裏面に貼着される表編地層、及び前記裏編地層と前記表編地層とを連結する連結糸を有するダブルラッセル編物である、
態様1に記載の車両用シャッタ式物入れ。
【0010】
同構成によれば、シャッタが湾曲されることでクッション層に対して作用する応力が、ダブルラッセル編物を構成する連結糸同士の間隔及び角度が変化することで一層吸収されやすくなる。これにより、残留応力に起因した表皮層の変形を一層抑制できる。
【0011】
[態様3]
前記移動方向における前記連結糸の密度が、前記幅方向における前記連結糸の密度よりも小さい、
態様2に記載の車両用シャッタ式物入れ。
【0012】
同構成によれば、クッション層が幅方向に比べて移動方向に対して湾曲しやすくなるため、シャッタが湾曲されることに起因してクッション層に対して作用する応力の吸収性を高めることができる。また、クッション層が移動方向に比べて幅方向に対して変形しにくくなるので、クッション層が柔らかくなりすぎることを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シャッタの意匠の多様性と耐熱性との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、車両用シャッタ式物入れの一実施形態について、シャッタが開口部を閉塞している状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のシャッタ式物入れを構成するシャッタの斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4のシャッタを構成するクッション層及び表皮層の拡大断面図である。
【
図7】
図7は、変更例のクッション層及び表皮層の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1~
図6を参照して、一実施形態について説明する。なお、各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各構成の寸法比率は、実際とは異なる場合がある。なお、以降において、上下方向Zにおける上側及び下側をそれぞれ単に上側及び下側として説明する。
【0016】
<シャッタ式物入れの基本構成>
図1及び
図2に示すように、車両用シャッタ式物入れは、例えば自動車のセンタコンソールなどに設けられる。シャッタ式物入れは、上方に向かって開口する開口部11を有する物入れ本体10と、開口部11の開口面11Aに沿って移動することで開口部11を開閉可能に構成されたシャッタ20とを備えている。シャッタ式物入れは、物入れ本体10と隣り合って設けられ、シャッタ20を湾曲した状態で格納可能に構成されたシャッタ格納部30と、シャッタ20の幅方向Yの両側に位置し、シャッタ20の移動を案内する一対のガイド溝部40とを備えている。
【0017】
以下、各構成について詳細に説明する。
<物入れ本体10>
図1及び
図2に示すように、物入れ本体10は、開口部11を形成する周壁12と、周壁12の下端縁に連結され、開口部11の開口面11Aと対向する底壁15とを有している。
【0018】
開口部11は、車両の前後方向に延在する一対の長辺と、車幅方向に延在する一対の短辺とを有する平面視長方形状である。
周壁12は、開口部11の一対の長辺を構成する一対の第1壁部13(
図1参照)と、開口部11の一対の短辺を構成する一対の第2壁部14(
図2参照)とを有している。
【0019】
周壁12と底壁15とによって、例えば飲料容器や小物などの物品を収容する空間Sが形成される。
<シャッタ20>
図1~
図4に示すように、シャッタ20は、シャッタ本体21と、可撓性のシート部材24と、シャッタ20を操作するための操作部27とを有している。シャッタ20は、開口部11を閉塞している状態において長方形板状である。
【0020】
なお、以降において、開口部11を閉塞している状態におけるシャッタ20の長辺方向及び短辺方向をそれぞれ長さ方向X及び幅方向Yとして説明する。
(シャッタ本体21)
シャッタ本体21は、幅方向Yに延在するとともに長さ方向Xに互いに間隔をあけて並ぶ複数のスラット22と、複数のスラット22を連結するテープ部材23とを有している。
【0021】
図3に示すように、スラット22は、例えば硬質樹脂材料により形成されている。スラット22は、幅方向Yに延在する角柱状のスラット本体22aと、幅方向Yにおけるスラット本体22aの両端面22bからそれぞれ外側に向けて突出する一対の円柱状の軸部22cとを有している。
【0022】
テープ部材23は、例えば不織布テープである。テープ部材23は、複数のスラット22の上面に貼り付けられている。
図2及び
図4に示すように、シャッタ本体21は、複数のスラット22がテープ部材23を介して互いに連結されることにより長さ方向Xに対して湾曲可能に構成されている。
【0023】
(シート部材24)
図6に示すように、シート部材24は、シャッタ本体21の表面に設けられるクッション層25と、クッション層25の表面に設けられる表皮層26とを有している。
【0024】
クッション層25は、立体編物である。上記立体編物は、シャッタ本体21の表面に貼着される裏編地層25a、表皮層26の裏面に貼着される表編地層25b、及び裏編地層25aと表編地層25bとを連結する連結糸25cを有するダブルラッセル編物であることが好ましい。この場合、シャッタ20の移動方向における所定長さ当たりの連結糸25cの本数が、幅方向Yにおける所定長さ当たりの連結糸25cの本数よりも少ないことが好ましい。すなわち、シャッタ20の移動方向における連結糸25cの密度が、幅方向Yにおける連結糸25cの密度よりも小さいことが好ましい。なお、シャッタ20の移動方向は、シャッタ20が開口部11の上方に位置している状態においては長さ方向Xと一致する。
【0025】
クッション層25の厚みは、1mm以上、2mm以下であることが好ましい。
クッション層25は、図示しない接着剤あるいは両面テープを介してテープ部材23に貼着されている。
【0026】
表皮層26は、樹脂製のフィルムである。上記フィルムを形成する樹脂としては、例えばABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)が好ましい。表皮層26の意匠面は、平滑面である。
【0027】
表皮層26は、図示しない接着剤あるいは両面テープを介してクッション層25に貼着されている。
図3及び
図4に示すように、シート部材24は、シャッタ本体21の表面全体を覆っている。
【0028】
(操作部27)
図1及び
図2に示すように、操作部27は、長さ方向Xにおけるシャッタ20の一端に設けられている。操作部27の上面には、把手27aが突設されている。
【0029】
<シャッタ格納部30>
図1及び
図2に示すように、シャッタ格納部30は、長さ方向Xにおいて物入れ本体10と隣り合って設けられている。本実施形態では、シャッタ格納部30は、物入れ本体10に対して車両の前後方向における後側に設けられている。
【0030】
シャッタ格納部30は、湾曲した外周壁31と、外周壁31の内周側に位置し、外周壁31に沿って湾曲した部分を有する内周壁32と、幅方向Yにおける外周壁31及び内周壁32の両端同士を連結する一対の側壁部33とを有している。
【0031】
<ガイド溝部40>
図1~
図3に示すように、ガイド溝部40は、幅方向Yにおける物入れ本体10及びシャッタ格納部30の両側に設けられている。
【0032】
ガイド溝部40は、長さ方向Xにおいて直線状に延びる直線部41と、直線部41から連続して延びるとともに湾曲した湾曲部42とを有している。
直線部41は、第1壁部13のうち開口部11を構成する部分の上方において第1壁部13と隣り合って設けられている(
図3参照)。
【0033】
湾曲部42は、シャッタ格納部30の側壁部33に設けられている。
図3に示すように、ガイド溝部40内には、シャッタ本体21の軸部22cと、幅方向Yにおけるシート部材24の端24cとの双方が位置している。
【0034】
シャッタ20は、ガイド溝部40に沿って案内されることで、開口部11を閉塞している閉位置(
図2参照)と、開位置(図示略)との間を移動可能に構成されている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0035】
表皮層26が樹脂製のフィルムであるので、印刷によって意匠面を容易に形成することができる。
また、クッション層25がダブルラッセル編物であるので、シャッタ20が湾曲されることに起因して表皮層26に対して作用する応力が、連結糸25c同士の間隔及び角度が変化することで吸収されやすくなる。これにより、例えば車室内が高温となるに起因して表皮層26が加熱された場合であっても表皮層26を構成する樹脂製のフィルムに上記応力が残留しにくくなるので、残留応力に起因した表皮層26の変形を抑制できる。
【0036】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)上記作用を奏するので、シャッタ20の意匠面の自由度の向上と耐熱性の向上との両立を図ることができる。
【0037】
(2)シャッタ20の移動方向における連結糸25cの密度が、幅方向Yにおける連結糸25cの密度よりも小さい。
こうした構成によれば、クッション層25が幅方向Yに比べて移動方向に対して湾曲しやすくなるため、シャッタ20を容易に開閉することができる。また、シャッタ20が湾曲されることに起因して表皮層26に対して作用する応力の吸収性を高めることができる。さらに、クッション層25が移動方向に比べて幅方向Yに対して変形しにくくなるので、クッション層25が柔らかくなりすぎることを抑制できる。
【0038】
(3)クッション層25の厚みが2mmよりも大きいと、シート部材24の触感が硬くなりすぎるおそれがある。一方、クッション層25の厚みが1mmよりも小さいと、シャッタ20が湾曲されることに起因して表皮層26に対して作用する応力の吸収性を確保することが難しくなるおそれがある。
【0039】
この点、本実施形態では、クッション層25の厚みが、1mm以上、2mm以下であるので、シート部材24の触感が硬くなりすぎることを抑制しつつ、表皮層26に対して作用する応力の吸収性を確保することができる。
【0040】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
・シャッタ20の移動方向における連結糸25cの密度を、幅方向Yにおける連結糸25cの密度以上に設定することもできる。
・上記実施形態では、表皮層26を樹脂製のフィルムのみにより構成したが、
図7に示すように、表皮層26が、樹脂製のフィルム26aと、フィルム26aの表面に設けられる加飾層26bとにより構成されていてもよい。すなわち、樹脂製のフィルム26aは、シャッタ20の意匠面を構成しなくてもよい。加飾層26bとしては、例えば織物などのファブクリックや、印刷層が好ましい。この場合であっても、上述した残留応力に起因したフィルム26aの変形を抑制できるので、フィルム26aの変形に追従して加飾層26bの意匠面が変形することを抑制できる。したがって、シャッタ20の意匠面の自由度の向上と耐熱性の向上との両立を図ることができる。
【符号の説明】
【0042】
10…物入れ本体
11…開口部
11A…開口面
12…周壁
13…第1壁部
14…第2壁部
15…底壁
20…シャッタ
21…シャッタ本体
22…スラット
22a…スラット本体
22b…端面
22c…軸部
23…テープ部材
24…シート部材
24c…端
25…クッション層
25a…裏編地層
25b…表編地層
25c…連結糸
26…表皮層
26a…フィルム
26b…加飾層
27…操作部
27a…把手
30…シャッタ格納部
31…外周壁
32…内周壁
33…側壁部
40…ガイド溝部
41…直線部
42…湾曲部
S…空間