(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070211
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20240515BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A61F13/49 311Z
A61F13/514 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120939
(22)【出願日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2022180131
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花生 裕之
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB09
3B200CA05
3B200CB03
3B200DA01
3B200DD07
(57)【要約】
【課題】胴開口部近傍に配置された外装体からの弾性部材の露出を防ぐ。
【解決手段】長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有する吸収性物品であって、吸収体と、吸収体の非肌面側を覆い、幅方向の両端部で接着されて着用者の胴回りを覆い、長手方向の端部において着用者の胴回りが挿通される胴開口部を形成する外装体と、を、備え、外装体は、少なくとも、外装体の非肌面側に配置された第1のシートと、外装体の肌面側に配置された第2のシートと、を、有し、外装体の胴開口部の近傍には、複数の弾性部材が幅方向に伸張状態で延在するように配置され、胴開口部において、第1のシートと第2のシートは肌面側に屈曲して折り返し部を形成しており、複数の弾性部材は、折り返し部における、第1のシートの非肌面側に配置されている、吸収性物品。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有する吸収性物品であって、
吸収体と、
前記吸収体の非肌面側を覆い、前記幅方向の両端部で接着されて着用者の胴回りを覆い、前記長手方向の端部において着用者の胴回りが挿通される胴開口部を形成する外装体と、
を、備え、
前記外装体は、少なくとも、
前記外装体の非肌面側に配置された第1のシートと、
前記外装体の肌面側に配置された第2のシートと、
を、有し、
前記外装体の前記胴開口部の近傍には、複数の弾性部材が前記幅方向に伸張状態で延在するように配置され、
前記胴開口部において、前記第1のシートと前記第2のシートは肌面側に屈曲して折り返し部を形成しており、前記複数の弾性部材は、前記折り返し部における、前記第1のシートの非肌面側に配置されている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記複数の弾性部材のうちの一部は、
前記折り返し部における、前記第2のシートの非肌面側に配置されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1のシートと前記第2のシートは、前記複数の弾性部材のうち最も前記胴開口部の側に配置されている弾性部材よりも更に前記胴開口部の側で肌面側に屈曲して前記折り返し部を形成しており、
前記複数の弾性部材は、前記第2のシートの前記折り返し部とは重畳していない、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記折り返し部において、前記第2のシートは、前記第2のシートと接着していない、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記折り返し部において、前記第1のシートと前記第2のシートは、接着されている、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記胴開口部において、前記第1のシートと前記第2のシートは胴回り方向に4層以上積層されている、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記外装体の肌面側に接合するエンドシートと、
を有し、
前記エンドシートと前記外装体は、前記幅方向に延在し、前記長手方向に所定の間隔を空けて平行に配置された複数の接合線によって接合され、前記複数の接合線のうち、前記複数の弾性部材と重畳しているものよりも、前記複数の弾性部材と重畳していないもののほうが多い、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記複数の接合線と、前記複数の弾性部材は、重畳していない、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記複数の弾性部材のうち最も股下側に配置されているものは、前記複数の接合線のうちの一本と重畳している、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項10】
着用状態において着用者の腹側に位置する前身頃領域、股下部に位置する股下領域、及び背側に位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられ、
前記前身頃領域と前記後身頃領域のそれぞれにおいて、前記胴開口部に沿うように、平行かつ前記長手方向において互いに離間して、複数の第1伸縮部材が伸長状態で配置されたギャザー部を備え、
前記ギャザー部が、
前記胴開口部から前記長手方向の前記股下領域の側へ30mmの範囲内にあり、複数の前記第1伸縮部材が、それぞれが第1の間隔で互いに離間している第1領域と、
前記胴開口部から前記長手方向の前記股下領域の側へ50mmの位置から、前記長手方向において前記股下領域の側へ延在する領域であって、複数の前記第1伸縮部材が、それぞれが第2の間隔で互いに離間している第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との間に設けられ、前記第1伸縮部材が存在しないか、あるいは前記第1の間隔及び前記第2の間隔よりも前記第1伸縮部材間の間隔が広くなるように複数の前記第1伸縮部材が配置される第3領域と、を含む、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記胴開口部が拡幅される際に複数の前記第1伸縮部材によって発生する前記第1領域全体の収縮力の方が、前記第2領域及び前記第3領域のそれぞれの全体の収縮力よりも強い、
請求項10に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の一例であるおむつについて、胴開口部近傍において、複数の幅方向に延在する弾性部材を設け、当該弾性部材により、胴開口部近傍を胴回り方向に付勢する部位、所謂ウェストギャザーを有するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
胴開口部は、おむつの他の部位と比較すると外圧を受けやすく摩耗しやすい。例えば、胴開口部の端縁部は着用者の肌に触れており、着用者の体に食い込むことがある。また、胴開口部は着用者の腹部の動きにより様々な摩擦力を受ける。例えば、胴開口部近傍のウェストギャザーは比較的締付が強く、締付により痒みが生じることがあるため、着用者の手が触れやすい部分である。そして、胴開口部はおむつ着用時に把持されやすく、着用者の衣類とも擦れやすい。胴開口部が摩耗して弾性部材が露出すると、当該おむつの着用感は低下する。
【0005】
本発明は、胴開口部近傍に配置された外装体からの弾性部材の露出を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
詳細には、本開示の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有する吸収性物品であって、吸収体と、前記吸収体の非肌面側を覆い、前記幅方向の両端部で接着されて着用者の胴回りを覆い、前記長手方向の端部において着用者の胴回りが挿通される胴開口部を形成する外装体と、を、備え、前記外装体は、少なくとも、前記外装体の非肌面側に配置された第1のシートと、前記外装体の肌面側に配置された第2のシートと、を、有し、前記外装体の前記胴開口部の近傍には、複数の弾性部材が前記幅方向に伸張状態で延在するように配置され、前記胴開口部において、前記第1のシートと前記第2のシートは肌面側に屈曲して折り返し部を形成しており、前記複数の弾性部材は、前記折り返し部における、前記第1のシートの非肌面側に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、胴開口部近傍に配置された外装体からの弾性部材の露出を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るおむつの斜視図の一例である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図の一例である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るおむつの展開図の一例である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るおむつの展開図の一部を拡大した一例である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るおむつの展開図の一部を拡大した一例である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るおむつの胴回り開口部を非肌面側へ一段階めくった際の一例である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るおむつの胴回り開口部を非肌面側へ二段階めくった際の一例である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るおむつの胴開口部を広げて胴開口部側から視た模式図である。
【
図9】
図9は、内装体と外装体の接着形態を示すおむつの平面図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係るおむつの外装体の胴開口部端部近傍部分を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係るおむつの外装体の胴開口部近傍部分を示す図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態に係るおむつの外装体の胴開口部近傍部分を示す図である。
【
図13】
図13は、エンドシートとカバーシートとの接合線と糸ゴムとの関係について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るおむつについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本開示はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0010】
<第1の実施形態>
図1は、実施形態に係るおむつの斜視図である。より具体的には、実施形態に係る大人用のパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)の斜視図である。おむつにおいて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に着用された状態において、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、肌面側の反対側を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0011】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、大人用のパンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、子供用のパンツ型使い捨ておむつが含まれる。また、着用者の股下(陰部)を前身頃から後身頃にかけて覆うシート状の部材の一端部付近に固定されたテープを、該シート状の部材の他端部付近に貼り付けることで筒状構造を形成するテープ型使い捨ておむつ等、腹囲と股下を包み得る各種形態の吸収性物品が含まれる。
【0012】
おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。本実施
形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴開口部2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢開口部2Rが形成されている。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように着用されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で自由に行動することができる。
【0013】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3R及びタミーギャザー12が、前身頃領域1F、後身頃領域1Rの端部から順番に設けられている。なお、本開示ではウェストギャザー3Rとタミーギャザー12とを合わせてギャザー部と表現することがある。また、着用者の脚の付け根を取り巻く位置には、レグギャザー3LL,3LRが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。また、レグギャザー3LL,3LRは、着用者の脚の付け根とおむつ1との間に隙間が生まれるのを防ぐ。よって、着用者の陰部から排出される排出物は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0014】
おむつ1は、図示しないインナーパッドと組み合わせて使用することができる。インナーパッドは、吸収体を備える略長方形の吸収性物品であり、排出液を吸収する。おむつ1とインナーパッドとを組み合わせて使用する場合、おむつ1の吸収体の更に肌面側に、着用者の排出孔と当接するようにインナーパッドを置く。排出液は、まずインナーパッドに吸収され、インナーパッドで吸収できなかった排出液のみがおむつ1の吸収体に到達し、更に吸収される。このため、排出液の量が多い場合でも、排出液がおむつ1から漏出するのを防ぐことができる。また、排出液の量が少なく、インナーパッドで全て吸収できる場合には、排出液が発生してもインナーパッドのみを交換すればよいので、介助コストを軽減できる。また、おむつ1を長時間使用できる。
【0015】
図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図である。おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5とを有する。カバーシート4とインナーカバーシート5は、貼り合わされておむつ1の外表面を形成する略砂時計形状(瓢箪形状)のシートであり、前身頃領域1F側の端部と後身頃領域1R側の端部以外は同形状である。着用者に着用された状態において、カバーシート4は着用者の非肌面側、インナーカバーシート5は肌面側に積層されている。カバーシート4とインナーカバーシート5の間には、ウェストギャザー3Rとレグギャザー3LL,3LRを形成するための糸ゴムが設けられている。なお、糸ゴムに代えて帯状のゴム等の伸縮部材を適宜選択できる。カバーシート4は、本開示における第1のシートの一例であり、インナーカバーシート5は、本開示における第2のシートの一例である。
【0016】
カバーシート4とインナーカバーシート5は、例えば、排出物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここ
で、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。以下、吸収体8および吸収体8にバックシート6、トップシート9、サイドシート10L,10Rを組み合わせたものを内装体(本開示の「内装体」の一例)といい、内装体に対応する概念として、糸ゴムが配置されたカバーシート4とインナーカバーシート5とを合わせて外装体(本開示の「外装体」の一例)という場合がある。
【0017】
おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5の着用者側の面において順に積層されるバックシート6と、吸収体8と、トップシート9とを有する。バックシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略直方体のシートである。吸収体8、トップシート9は、何れもバックシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がバックシート6の長手方向と一致する状態で、バックシート6に対して順に積層されている。バックシート6は、排出物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が着用された状態において、着用者から排出された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート9を通って吸収体8に浸入し、そこで吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート9は親水性を有していてもよい。
【0018】
吸収体8は、吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7(本開示の「透水性シート」の一例)とを有する。吸収コア8cは略砂時計型である。吸収コア8cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸収材)を保持させた構造を有する。吸収コア8cは、着用者から排出された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。本実施形態では、吸収コア8cは中央部付近が括れた略砂時計型である。吸収コア8cは、目的に応じた適宜の形状を採ることができる。吸収コア8cの形状としては、例えば、矩形状、楕円形状、その他各種の形状が挙げられる。
【0019】
なお、吸収コア8cを、複数の吸収マットから形成することも可能である。この場合、形の異なる吸収マットを重畳して吸収コア8cとしてもよい。一例としては、吸収コア8cを肌面側の上層吸収マットと非肌面側の下層吸収マットの2枚のマットから構成してよい。上層吸収マットの形状を上述の略砂時計型として、下層吸収マットを、上層吸収マットの広幅部よりも幅狭の矩形状とし、下層吸収マットの幅を、上層吸収マットのくびれ部の幅と略同一としてよい。
【0020】
コアラップシート7は、薄い液透過性のシートであり、吸収コア8cをコアラップシート7で包むことにより、上述の吸収コア8cのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア8cの型崩れが抑制される。コアラップシート7は、パルプ繊維で形成することができ、一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。コアラップシート7は、1枚のシートでもよいが、着用者の肌側に配置された上側シートと、着用者の非肌面側に配置され、吸収コアの側面と肌面側に回り込む下側シートの2枚のシートで構成されていてもよい。コアラップシート7が2枚のシートで構成されている場合、上側シートの幅方向端部が他のシート(例えば、後述するサイドシート10L,10R、バックシート6、トップシート9)に包まれる構造になっていてもよい。なお、吸収体8はバックシ
ート6とトップシート9に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート7を設けないこともできる。
【0021】
バックシート6、吸収体8、トップシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート6、吸収体8、トップシート9を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート6、吸収体8、トップシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0022】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って接着されている。よって、カバーシート4の、前身頃領域1Fの左側の縁となる縁4F7と、後身頃領域1Rの左側の縁となる縁4R7とが互いに接合され、且つ、カバーシート4の、前身頃領域1Fの右側の縁となる縁4F8と、後身頃領域1Rの右側の縁となる縁4R8とが互いに接合されることにより、
図1に示したような完成状態のおむつ1になると、サイドシート10L,10Rは、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってトップシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。サイドシート10L,10Rは、排出液の横漏れを防ぐ防漏シートとしての機能を有している。なお、縁4F7及び縁4R7、縁4F8及び縁4R8の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0023】
更に、おむつ1は、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rを挟んで、カバーシート4の前身頃領域1Fにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Fと、カバーシート4の後身頃領域1Rにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Rとを有する。エンドシート11F,11Rは、トップシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4に重ねられる短冊状のシートである。エンドシート11F,11Rは非透水性の不織布であり、主におむつ1の胴回り当接部分においてカバーシート4を補強する。また、エンドシート11F,11Rは、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L、10Rにより形成される積層体より肌面側に配置され、積層体の端が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐ。なお、エンドシート11F,11Rを設けない構成も考えられる。
【0024】
図3は、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図の一例である。
図3(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。
図3(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。カバーシート4は、
図2に示す折り返し線4FF、4RFにおいて一端側が折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4の前身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4F1,4F3,4F2,4F5,4F4が接着され、カバーシート4の後身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4R1,4R3,4R2,4R5,4R4が接着されることで形成される。糸ゴム4F1,4F3,4F2,4F5,4F4は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、糸ゴム4F3、糸ゴム4F2、糸ゴム4F5、糸ゴム4F4の順に設けられている。糸ゴム4R1,4R3,4R2,4R5,4R4も、糸ゴム4F1,4F3等と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、糸ゴム4R3、糸
ゴム4R2、糸ゴム4R5、糸ゴム4R4の順に設けられている。糸ゴム4F1,4R1,4F3,4R3,4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4は、幅方向に伸縮する弾性部材を、長手方向に平行に複数本設けることにより形成されている。
【0025】
図3に示されるように、レグギャザー3LFを形成する糸ゴム4F6(本開示の「第2伸縮部材」の一例)は、おむつ1が組み立てられた場合に着用者の脚が入る右下肢開口部2R及び左下肢開口部2Lの前身頃領域1F側の縁に沿うように設けられる。そして、糸ゴム4F6は、前身頃側の股下領域1Bにおいて、左右方向に横断するように設けられる。このように左右方向に横断するように糸ゴム4F6が設けられる場所では、おむつ1の厚み方向において糸ゴム4F6と吸収体8とは重なっている。また、このような横断領域の幅方向中央部は、おむつ1が着用された場合の着用者の尿道口に対応する領域となる。なお、厚み方向において吸収体8が重なっている領域において、糸ゴム4F6の配置形態は
図3に示されるように横断することに限定されない。糸ゴム4F6の延在方向が、幅方向の成分を有していればよく、好ましくは糸ゴム4F6の延在方向の幅方向成分が長手方向成分よりも大きければよい。
【0026】
一方、レグギャザー3LRを形成する糸ゴム4R6は、右下肢開口部2R及び左下肢開口部2Lの後身頃領域1R側の縁に沿うように設けられる。そして、後身頃側の股下領域1Bにおいて、糸ゴム4R6の先端部は幅方向を向いている。しかしながら、糸ゴム4R6は、幅方向の中央部において切断されており、左側の糸ゴム4R6と右側の糸ゴム4R6とは繋がっていない。
【0027】
また、インナーカバーシート5と吸収体8とは前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけてバックシート6を介して接着剤で適宜接着されている。しかしながら、
図3に示されるように前身頃領域1Fにおいて糸ゴム4F6が横断する領域では、インナーカバーシート5と吸収体8とは非接着とされる(非接着領域15とする)。実際には、非接着領域15においては、インナーカバーシート5とバックシート6が非接着とされている。本実施形態では、糸ゴム4F6,4R6と吸収体8とが重なる股下領域1Bの重なり領域の全域に非接着領域15が設けられている。
【0028】
また、吸収体8は、線状に圧搾されており、
図3ではライン14として表示される。ライン14は、股下領域1B側の端部では幅方向に設けられる。また、ライン14は、前身頃領域1F側の端部では、幅方向の外側に折れ曲がっている。なお、このような吸収体8の圧搾は、例えばローラによってエンボス加工されることで実現される。
【0029】
カバーシート4は、
図2に記載の折り返し線4FF、4RFにおいて一端側が折り返されており、上述した折り返し線4FF、4RFはそれぞれ、前身頃領域1Fの長手方向端部、後身頃領域1Rの長手方向端部を形成している。そのため、おむつ1の完成状態において、折り返し線4FFは前身頃領域1Fの上側の縁を形成し、折り返し線4RFは後身頃領域1Rの上側の縁を形成する。これにより、おむつ1の完成状態では、折り返し線4FF、4RFを開口縁とする胴開口部2Tが形成されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4の前身頃領域1Fに複数の糸ゴム(糸状のゴム)4F1が伸長された状態で接着され、カバーシート4の後身頃領域1Rに複数の糸ゴム4R1が伸長された状態で接着されることで形成される。また、タミーギャザー12は、カバーシート4の前身頃領域1Fに複数の糸ゴム4F2、4F3、4F4、4F5が伸長された状態で接着され、カバーシート4の後身頃領域1Rに複数の糸ゴム4R2、4R3、4R4、4R5が伸長された状態で接着されることで形成される。糸ゴム4F1、4F2、4F3、4F4、4F5(本開示の「第1伸縮部材」の一例)は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、4F3、4F2、4F5、4F4の順に設けられている。糸ゴム4R1、4R2、
4R3、4R4、4R5は、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、4R3、4R2、4R5、4R4の順に設けられている。
【0030】
このため、糸ゴム4F1、4F2、4F3、4F4、4F5は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。また、糸ゴム4R1、4R2、4R3、4R4、4R5は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。よって、縁4F7と縁4R7が互いに接合され、縁4F8と縁4R8が互いに接合されると、糸ゴム4F1、4F2、4F3、4F4、4F5と糸ゴム4R1、4R2、4R3、4R4、4R5は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F1、4F2、4F3、4F4、4F5と糸ゴム4R1、4R2、4R3、4R4、4R5は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0031】
糸ゴム4F1、4F2、4F3、4F4、4F5は、
図1に示した前身頃領域1Fの上側の縁となる部分に沿って、糸ゴム4R1、4R2、4R3、4R4、4R5は
図1に示した後身頃領域1Rの上側の縁となる部分に沿って左右方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F1、4F2、4F3、4F4、4F5及び糸ゴム4R1、4R2、4R3、4R4、4R5は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F6,4R6よりも上側で比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密着させて着用位置からずり落ちるのを防止し、更に腹部や背部から排出液が漏出するのを防ぐ機能を担う。
【0032】
図4は
図3における糸ゴムが配置されている部分の拡大図である。
図4に示すように、前身頃領域1Fには折り返し線4FFから股下領域1B側へ順に第1領域AF1、第3領域AF3、第2領域AF2、第5領域AF5、第4領域AF4、が設けられており、後身頃領域1Rには折り返し線4RFから股下領域1B側へ順に第1領域AR1、第3領域AR3、第2領域AR2、第5領域AR5、第4領域AR4、が設けられている。第1領域AF1、AR1には、糸ゴム4F1、4R1が第1の間隔で互いに離間して配置されている。第2領域AF2、AR2には、糸ゴム4F2、4R2が第2の間隔で互いに離間して配置されている。また、前身頃領域1Fにおける第1領域AF1と第2領域AF2の間に第3領域AF3が、後身頃領域1Rにおける第1領域AR1と第2領域AR2の間に第3領域AR3が、それぞれ設けられており、第3領域AF3、AR3には、糸ゴム4F3、4R3が第3の間隔で互いに離間して配置されている。更に、第2領域AF2、AR2よりも股下領域1B側では、第4領域AF4、AR4に、糸ゴム4F4、4R4が第4の間隔で互いに離間して配置されている。また、前身頃領域1Fにおける第2領域AF2と第4領域AF4の間に第5領域AF5が、後身頃領域1Rにおける第2領域AF2と第4領域AF4の間に第5領域AF5が、それぞれ設けられており、第5領域AF5、AR5には、糸ゴム4F5、4R5が第5の間隔で互いに離間して配置されている。本実施形態では、上述の各領域において、糸ゴムの収縮力や収縮度は、同等となっている。但し、各領域において、糸ゴムの収縮力や収縮度が異なっていてもよい。また、第3領域AF3、AR3において糸ゴム4F3、4R3が配置されない態様であってもよく、第5領域AF5、AR5において糸ゴム4F5、4R5が配置されない態様でもよく、第3領域AF3、AR3及び第5領域AF5、AR5において糸ゴムが配置されない態様であってもよい。また、おむつ1には、第4領域AF4、AR4や第5領域AF5、AR5が設けられていなくてもよい。
【0033】
図4に示すように、第1領域AF1、AR1は胴開口部2Tから股下領域1B側へ距離d1の範囲内にある。また、第2領域AF2、AR2よりも股下領域1B側に存在してい
る領域は距離d2よりも股下領域1B側に延在している。また、第3領域AF3、AR3では、上述の第1の間隔と、第2の間隔よりも間隔が広くなるように糸ゴムが配置されている。実施形態ではd1=30mm、d2=50mmである態様を示している。但し、d1及びd2の値は一例であり、後述する胴開口部2Tをめくりやすくする(折り返し易くする)効果を得るために適宜変更できる。
【0034】
図5では、第3領域AF3、AR3に、糸ゴム4F3、4R3が存在していない一例を示している。
図4では、第3領域AF3、AR3では、上述の第1の間隔と、第2の間隔よりも間隔が広くなるように糸ゴムが配置されているが、
図5のように糸ゴムが配置されていなくてもよい。第1領域AF1、AR1における糸ゴム4F1、4R1の間隔である第1の間隔や第2領域AF2、AR2における糸ゴム4F2,4R2の間隔である第2の間隔よりも広い間隔で第3領域AF3、AR3に糸ゴム4F3、4R3を配置するか、あるいは、第3領域AF3、AR3において糸ゴム4F3、4R3が存在しない状態にすることで、第1領域AF1、AR1の収縮力(収縮度)と、第2領域AF2,AR2との収縮力(収縮度)との差異を大きくすることができる。第1領域、第2領域、第3領域のそれぞれにおいて、糸ゴムの配置間隔を領域毎に変えることで、領域毎の収縮力(収縮度)を変え、胴開口部2Tを非肌面側へめくりやすくできる。領域毎の収縮力とは、糸ゴムを特定の領域において任意の間隔や任意の量等で配置することで発生する、各領域における収縮力のことである。
【0035】
おむつ1を着用者に装着する際には、足の挿通をしやすくしたり、おむつ1を掴みやすくした状態にすることになるため、先ず、両手で胴開口部2Tを広げ、胴開口部2Tをめくる動作(折り返す動作)をする。おむつ1では、d1=30mm、d2=50mmに設定されているので、胴開口部2Tに親指を入れる際、親指の先に第3領域AF3、AR3が位置し易い。また、胴開口部2Tの内側に親指を入れて胴開口部2Tを非肌面側にめくる際、非肌面側において第3領域AF3、AR3の部分に人差し指や中指を突き立てる様につまむことになるが、この際に本開示の技術を用いることで、第3領域AF3、AR3を起点として非肌面側にめくりやすくすることができる。これは、親指、人差し指、中指で挟持される第3領域AF3、AR3よりも親指の付け根側に位置する第1領域AF1、AR1を、非肌面側にめくる動作をした場合、各領域の収縮力の差により胴開口部2Tが縮まろうとするためである。そのため、非肌面側に位置する人差し指、中指などに非肌面側の第1領域AF1、AR1部分が引っかかることで、胴開口部2Tを容易かつ確実に広げやすくなる。また、非肌面側にめくる動作をすることで、胴開口部2Tから脚回り開口部を見やすくなるため、着用者の足の挿通を容易にすることができる。
【0036】
領域毎の全体の収縮力を比較したとき、上述した第1領域AF1、AR1、第2領域AF2、AR2、第3領域AF3、AR3の各収縮力の中で、第1領域AF1、AR1の収縮力を一番強くすることで、着用者に装着する場合に胴開口部2Tを拡幅する際に、腕を広げておむつを引っ張りやすくなるため、更にめくりやすくすることができる。
図6では、胴開口部2Tを一回非肌面側へめくった際の概略図を示している。この際第3領域AF3、AR3には第1の折り返し部F1が形成される。上述の通り、胴開口部2Tの内側に親指を入れて胴開口部2Tを非肌面側にめくる際には、親指の先に第3領域AF3、AR3が位置するが、めくった際には非肌面側にめくれた第1領域AF1、AR1と肌面側の第2領域AF2、AR2が第1の折り返し部F1を起点として折り返された第3領域AF3、AR3よりも着用者の下半身側へ位置することになる。着用者に装着する際には、腕を広げておむつ1を拡幅して装着することになり、第1領域AF1、AR1の収縮力を強くすることで、親指の先側の収縮力よりも親指の付け根側の収縮力が高くなることで、胴開口部2Tが非肌面側にめくれる際に、よりめくれやすくなる。更に、胴開口部2Tを拡幅する際に、第3領域AF3、AR3の非肌面側に位置する人差し指、中指などにめくれた第1領域AF1、AR1が掛かることで引っかかりを強くすることが可能である。脇を
広げずに、脇を締めたまま手だけの力で非肌面側にめくる動作はしにくいため、意図せずとも腕を広げさせることで、拡幅した際にめくれやすい構造とすることができる。
【0037】
一般的におむつの着用者は足腰が弱っている場合が多い。おむつではない通常の下着や肌着を履く場合とは異なり、着用者が自力でおむつ1を装着する時には、胴開口部2Tを非肌面側にめくって胴開口部2Tから脚回り開口部を確認しやすい状態を作り、着用者の足の挿通時に足が引っ掛からない様にすることが好ましい。また、一般的にパンツ型おむつの着用者は自力でおむつを着脱できる非要介護者や軽度の要介護者であることが多いことからも、下着と同様におむつ1における胴開口部2Tを広げるだけで装着しようとする人間も多いため、胴開口部2Tが非肌面側にめくれやすい構造とすることで理想的な状態で装着できるようになる。また、装着中におむつ1がずれ下がった場合に、おむつ1を元の位置に戻すことも容易となる。
【0038】
上述した第1領域AF1、AR1、第2領域AF2、AR2、第3領域AF3、AR3と同様に、第4領域AF4、AR4と第5領域AF5、AR5においても、糸ゴムの配置を領域毎に変えることで領域毎の領域全体の収縮力を変え、二段階に胴開口部2Tを非肌面側へめくりやすくできる。二段階にめくれるとは、
図7に示すように胴開口部2Tが第3領域AF3、AR3を起点に折り返された状態で、更に第1の折り返し部F1を開口部として第5領域AF5、AR5を起点に折り返すことである。第5領域AF5、AR5を起点に更にめくれる構造とすることで、
図7のように第5領域AF5、AR5には、第2の折り返し部F2が形成されている。この際、第4領域AF4、AR4では糸ゴム4F4、4R4が第4の間隔で配置されており、第5領域AF5、AR5では糸ゴム4F5、4R5が第5の間隔で配置されている。この際、第1の折り返し部F1から第2の折り返し部F2までの距離を、前身頃領域1Fにおいては第1領域AF1の長手方向の長さ以上、第1領域AF1と第3領域AF3を合わせた長手方向の長さ以下の範囲内、後身頃領域1Rにおいては第1領域AR1の長手方向の長さ以上、第1領域AR1と第3領域AR3を合わせた長手方向の長さ以下の範囲内とすることが好ましい。これは、第1の折り返し部F1の肌面側に親指を入れて、第2の折り返し部F2を起点に第1の折り返し部F1を非肌面側にめくる動作をした際、第5領域AF5、AR5部分に人差し指や中指を突き立てる様につまむことになり、親指、人差し指、中指で挟持される第5領域AF5、AR5部分よりも親指の付け根側に位置する第4領域AF4、AR4や、すでに第1の折り返し部F1によって折り返された第1領域AF1、AR1や第2領域AF2、AR2の収縮力によって胴開口部2Tを縮めようとする力が更に大きくなるために第2の折り返し部F2を起点に非肌面側に更にめくれやすくなる。二段階にめくれる構造とすることで、胴開口部2Tを更に容易かつ確実に広げやすくなり、着用者の足の挿通を更に容易にすることができる。また、通常の下着や肌着を装着する際と同様に胴開口部2Tを広げようとする際に、二段階にめくれやすい構造となっていることで、おむつ1を装着する際に胴開口部2Tを更にめくる動作を誘発することができるため、おむつ1を装着しやすい状況を提供できる。また、装着中におむつ1がずれ下がった場合に、元の位置に戻すのも容易となる。
【0039】
第5領域AF5、AR5では、第3領域AF3、AR3と同様に第1の間隔や第2の間隔よりも広い第5の間隔で糸ゴムが配置されていてもよく、また第5の間隔は第4の間隔よりも広い間隔でもよい。また、第5領域AF5、AR5に糸ゴムが存在しない状態でもよい。第1領域AF1、AR1と第2領域AF2、AR2と、第4領域AF4、AR4は糸ゴムの間隔が密となっており、第3領域AF3、AR3と、第5領域AF5、AR5は糸ゴムの間隔が疎となっている。つまり、おむつ1では、糸ゴムの間隔が密の領域と疎の領域とが交互に並んでいる。糸ゴムの間隔が密の領域と、疎の領域とが交互に並んでいる第1領域AF1、AR1、第2領域AF2、AR2、第3領域AF3、AR3、第4領域AF4、AR4、第5領域AF5、AR5に倣って、第4領域AF4、AR4よりも股下領域1B側に更に糸ゴムの間隔が疎密の領域を交互に設けることで更に多段階にめくれて
もよい。
【0040】
カバーシート4は、折り返し線4FF、4RFで折り返されて糸ゴム4F1,糸ゴム4R1の配置領域まで延在し、その折り返された部分で糸ゴム4F1、糸ゴム4R1の配置領域を補強している。エンドシート11F,11R(
図2参照)は、折り返し線4FF、4RFで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4F2,4F5,4F4,4R2,4R5,4R4の配置領域に設けられ糸ゴム4F2,4F5,4F4,4R2,4R5,4R4の配置領域を補強している。
【0041】
なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、エンドシート11Fは、バックシート6の長手方向における一端側の一部分が、カバーシート4の一部分に触れる状態で重ねられる。おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート6及びトップシート9の他、カバーシート4、エンドシート11F,11R、インナーカバーシート5、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0042】
上記のようなおむつ1によれば、
図3に示されるように前身頃側の股下領域1Bにおいて糸ゴム4F6が横断する非接着領域15では、インナーカバーシート5と吸収体8とは非接着とされる。よって、吸収体8が、カバーシート4とインナーカバーシート5との間に設けられる糸ゴム4F6の収縮によって幅方向に縮こまらずに肌に押し当てられる。また、このような非接着領域15は、着用者の尿道口に対応する。よって、おむつ1は、吸収体8の変形を抑制し、着用者の尿道口に対し、しわ等がない平らな状態の吸収体8の当接が容易となる。よって、着用者から排泄された尿を即座に吸収でき、着用者から排泄された尿がおむつ1の外部に漏出することを防止できる。なお、インナーパッドを組み合わせて使用する場合には、しわ等が生じていない吸収体8によってインナーパッドが尿道口に押し当てられることになるため、尿がおむつ1の外部に漏出することは同様に防止される。
【0043】
また、吸収体8にしわ等が生ずることが抑制されるため、着用者が男性である場合、吸収体8により男性器を保持することで肌側に押しつけ、排尿方向を一定に保つことができる。よって、尿がおむつ1の外部に漏出することは抑制される。
【0044】
また、上記のようなおむつ1によれば、糸ゴム4R6は、
図3に示されるように幅方向の中央部において切断されている。よって、糸ゴム4R6が切断された領域におけるカバーシート4及びインナーカバーシート5には糸ゴム4R6の弾性力が作用せず、当該領域におけるカバーシート4及びインナーカバーシート5は収縮しない。よって、収縮によるカバーシート4及びインナーカバーシート5の損傷は抑制される。また、おむつ1は、吸収体8の変形を抑制するため、吸収体8の変形によって生じる吸収性能を低下させることがない。
【0045】
また、上記のようなおむつ1によれば、幅方向に延在する糸ゴム4F6が収縮することで、カバーシート4及びインナーカバーシート5には幅方向に収縮力が作用する。また、このように幅方向に収縮力が作用したカバーシート4及びインナーカバーシート5と吸収体8とは非接着である。よって、吸収体8よりも幅方向外側に配置されたカバーシート4及びインナーカバーシート5の領域55L、55R(
図3参照)が吸収体8と厚み方向において重なるように収縮される。おむつ1は、胴開口部2Tを伸長した状態において、糸ゴム4F6,4R6は、吸収体8と重なる股下領域1Bの重なり領域よりも幅方向の外側の領域55L、55Rが当該重なり領域よりも幅方向の内側に収縮される収縮力を有する
。よって、胴開口部2Tが拡幅されておむつ1が着用される場合に、着用者がおむつ1を着用するために左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rに脚を入れる際、着用者の足の親指が領域55L、55Rに引っかかることは抑制される。よって、着用者がおむつ1に足を引っかけてバランスを崩し転倒する可能性が低減される。
【0046】
また、糸ゴム4R6は幅方向中央部において切断されており、幅方向に延在していない。また、後身頃側の股下領域1Bにおいては、カバーシート4及びインナーカバーシート5と吸収体8とはバックシート6を介して接着されている。よって、後身頃領域1Rにおいては、吸収体8よりも幅方向外側に存するカバーシート4及びインナーカバーシート5の領域56L、56R(
図3参照)は、吸収体8と厚み方向において重なるように収縮されることは抑制される。よって、前身頃側では、領域55L、55Rが吸収体8と厚み方向において重なり、後身頃側では、領域56L、56Rが左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rのそれぞれにはみ出したような状態となる。よって、おむつ1の前後見分けが容易となるため、着用者の利便性は向上する。
【0047】
また、上記のようなおむつ1によれば、股下領域1Bにおいてライン14が幅方向に延在している。ライン14は他の領域よりも剛性が高いため、吸収体8が幅方向に変形することは抑制される。よって、おむつ1は、吸収体8が着用者の臀部に食い込むことを防止し、着用感の低下を抑制できる。
【0048】
糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F2,4R2よりも上側で比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密着させて着用位置がずれるのを防止し、腹部や背部から排出物が漏出するのを防ぐ機能を担う。糸ゴム4F2,4R2は、糸ゴム4F1,4R1の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する。また、インナーパッドを用いる場合には、インナーパッドのずれを抑制する。糸ゴム4F1、4R1は、本開示における複数の弾性部材の一例である。
【0049】
なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、エンドシート11Fは、バックシート6の長手方向における一端側の一部分が、カバーシート4の一部分に触れる状態で重ねられる。おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート6及びトップシート9の他、カバーシート4、エンドシート11F,11R、インナーカバーシート5、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0050】
図3に示されるように、糸ゴム4F6は、着用者の腹側(前身頃領域1F側)において、左右の下肢開口部2L,2Rに沿って外装体に設けられている。また、糸ゴム4R6は、着用者の背側(後身頃領域1R側)において、左右の下肢開口部2L,2Rに沿って外装体に設けられている。なお、糸ゴム4F6と糸ゴム4R6は、ともにレグギャザー形成用の伸縮部材である。
【0051】
ここで、糸ゴム4F6は、外装体であるカバーシート4とインナーカバーシート5と異なる色を有している。本実施形態では、カバーシート4とインナーカバーシート5の全体が白色であり、糸ゴム4F6の全体が白色以外の有色(例えば、青色や赤色など)である。また、糸ゴム4R6の全体は、外装体と同じ色である。一般的に、おむつは、全体が同一色で形成されている場合が多い。例えば、パンツ型のおむつは、全体が白色で形成されている場合が多い。また、パンツ型のおむつは、前後の形状や構造が概ね同一であり、前後の見分けが困難である場合がある。一方で、本実施形態に係るおむつ1は、腹側に設け
られている糸ゴム4F6が外装体と異なる色を有し、背側に設けられている糸ゴム4R6が外装体と同じ色を有している。これにより、おむつ1は、前後の見分けを容易にすることができる。なお、糸ゴム4F6は、その一部のみが外装体と異なる色を有していればよい。例えば、糸ゴム4F6は、股下領域1Bにおいて幅方向に延在する部分のみ外装体と異なる色を有していてもよい。
【0052】
なお、おむつの前後の相違は、糸ゴム4F6,4R6の色の違い以外に、外装体に目印や文字列を印刷することによって実現してもよい。また、外装体に方向表示テープを貼付することによって実現してもよい。例えば、胴開口部2Tから外装体がめくれる部分の2倍よりも股下側に、前後方向を見分ける着色または文字列が付されていてよい。この位置に印や文字列が付されていれば、仮に着用者または介助者が胴開口部2Tに指を挿入することにより外装体がめくれている状態でも、目印や文字列がめくれた外装体によって隠れることはないため、印や文字列を外側から目視することにより、おむつ1の前後の区別を容易に行うことができる。
【0053】
図8は、実施形態に係るおむつの胴開口部2Tを広げて胴開口部2T側から視た模式図である。立体ギャザー3BR,3BLを形成するサイドシート10L,10Rは、おむつ1の幅方向の中心よりも外側に配置されており、トップシート9よりも肌面側に配置されている。そして、サイドシート10L,10Rは、ホットメルト接着剤によりトップシート9の幅方向の左右の各端部側に接着されている。サイドシート10L,10Rは、折り返し線10L2,10R2よりもおむつ1の幅方向の内側で外側に向かって折り畳まれ、先端に自由端3BL1,3BR1を有する。サイドシート10L,10Rは、自由端3BL1,3BR1側に配置された糸ゴム10L1,10R1を有し、糸ゴム10L1,10R1が収縮することによって、折り返し線10L2,10R2から着用者側に起立する防漏壁を形成する。
【0054】
ここで、3本の糸ゴム10L1,10R1のうちの少なくとも一本は、外装体と色が異なる。例えば、3本の糸ゴム10L1,10R1のうちの外側の1本が外装体と異なる色であればよい。おむつ1は、糸ゴム4F6の収縮によって糸ゴム4F6の横断部における外装体を収縮させ、左右の下肢開口部2L,2Rを前身頃領域1F側で広く開くことができる。これにより、前身頃領域1F側から左右の下肢開口部2L,2Rを視認すると立体ギャザー3BL,3BRが視認可能であり、さらに、糸ゴム10L1,10R1も視認可能である。この糸ゴム10L1が外装体と異なる色に付されていることで、おむつ1は、異なる色の糸ゴム10L1が左右の下肢開口部2L,2Rから視認可能な方が前側であると識別可能となることによって、前後の識別を容易にすることができる。
【0055】
ここで、前述の通り、糸ゴム4F6の全体が白色以外の有色(例えば、青色や赤色など)であり、糸ゴム4R6の全体は、外装体と同じ白色である。また、糸ゴム10L1,10R1も全体が白色以外の有色(例えば、青色や赤色など)であり、糸ゴム10L1,10R1と糸ゴム4F6が同じ色である。前後方向(長手方向)に延在する糸ゴム10L1,10R1と、前側のレグギャザー3LFを形成する糸ゴム4F6とが同じ色であり、この同じ色の糸ゴム10L1,10R1と糸ゴム4F6とは、おむつ1を胴開口部2Tから見ると、交差して見える。このため、着用者は、おむつ1の左右の下肢開口部2L,2Rに脚を挿入する際に、外装体と異なる色で交差する糸ゴム10L1,10R1と糸ゴム4F6が配置されている側が前側であると見た目で認識することができる。これにより、おむつ1は、前後の見分けが容易となる。
【0056】
また、前後方向に沿って延在する糸ゴム10L1、10R1と交差する方向(幅方向)に糸ゴム4F6は延在するため、糸ゴム10L1、10R1と糸ゴム4F6の境目を視認しやすく、着用者が脚を挿入する際に左右の下肢開口部2L,2Rの縁を把握しやすくな
り、着用者の脚が下肢開口部2L,2Rの縁に引っかかるのを抑制できる。
【0057】
また、後側のレグギャザー3LRを形成する糸ゴム4R6は、外装体および内装体の各シートと同色である。具体的には、糸ゴム4R6は、カバーシート4、インナーカバーシート5、トップシート9およびサイドシート10L,10Rと同色であって、白色である。これにより、おむつ1を胴開口部2Tから見た場合に、糸ゴム4R3は、糸ゴム4F6と比べて視認困難となり、着用者は、前側の糸ゴム4F6に注目する。一般的に、無色(例えば、白色)や薄い色よりも有色で濃い色の方が視認し易いため、白色よりも濃い色の糸ゴム4F3が配置された側を前側であると着用者や、着用者におむつを着用させる介護者が認識しやすくなる。これにより、おむつ1は、前後の見分けが容易となる。
【0058】
また、着用者の足のかかと側が左右の下肢開口部2L,2Rの縁に引っ掛かっても、下肢開口部2L,2Rへの脚の挿入は阻害されないが、着用者の親指が左右の下肢開口部2L,2Rの縁に引っ掛かると、着用者が転倒する虞がある。このため、着用者自身でおむつを着用する場合、または、介護者が着用者におむつを着用させる際には、親指が左右の下肢開口部2L,2Rの縁に引っ掛からないように注意することが一般的である。本実施形態に係るおむつ1では、左右の下肢開口部2L,2Rの幅方向内側に配置された立体ギャザー3BL,3BRに設けられた糸ゴム10L1,10R1と、糸ゴム10L1,10R1に交わる糸ゴム4F6を視認できた場合に、糸ゴム10L1,10R1と、糸ゴム4F6が交差する位置が、左右の下肢開口部2L,2Rの前側の縁と認識することができるため、当該縁に着用者の親指が引っ掛からないように着用者や介護者に意識させることができる。また、有色の糸ゴム4F6が配置された側がおむつ1の前側であるため、糸ゴム4F6が配置された側をおむつ1の前側を着用者や介護者に認識させることができ、これによって、おむつ1は、前後を正しい向きで着用させることができる。
【0059】
また、
図3に示すように、糸ゴム4F6が吸収体8の非肌面側で吸収体8を左右に横切る部分の外装体と内装体とを非接着とする非接着領域15が設けられている。おむつ1は、非接着領域15が内装体よりも非肌面側に配置されており、非接着領域15が設けれた部位の外装体は、外側(非肌面側)に膨らむので、おむつ1を外から見た場合に、外装体が膨らんでいる方が前側であると見分けやすくなる。これにより、おむつ1は、前後見分けが容易である。
【0060】
カバーシート4とインナーカバーシート5を有する外装体と、吸収体8とバックシート6とを有する内装体とは、インナーカバーシート5とバックシート6とが前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけて接着剤で適宜接着されている。しかしながら、本実施形態では、
図3に示されるように糸ゴム4F3が幅方向に横断する領域では、外装体と内装体とは非接着とされる。この非接着の領域を非接着領域15とする。実際には、非接着領域15においては、インナーカバーシート5とバックシート6が非接着とされている。本実施形態では、糸ゴム4F3と吸収体8とが重なる股下領域1Bの重なり領域の全域に非接着領域15が設けられている。なお、非接着領域15は、内装体の幅方向の全域に設けられており、後述する
図9では、非接着領域15を塗りつぶして図示している。なお、おむつ1を伸長させた状態では、外装体は、内装体よりもおむつ1の全域で幅広である。
【0061】
本実施形態では、非接着領域15は、おむつ1の長手方向の中央よりも前身頃領域1F側に配置されている。本実施形態に係るおむつ1は、パンツ型であるため、左右の下肢開口部2L,2Rに着用者の左右の下肢がそれぞれ挿通される。一般的に、パンツ型おむつでは、着用動作の際に、股下領域の外装体が着用者の内ももに引っかかってしまうという問題がある。パンツ型のおむつには、胴開口部を所定の着用位置まで引き上げても外装体が着用者の内ももに引っかかることが原因で、股下側の部位が所定の着用位置まで引き上げられないことがある。
【0062】
これに対し、本実施形態に係るおむつ1では、内装体と外装体との間に非接着領域15が設けられている。本実施形態に係るおむつ1では、着用動作時に外装体が着用者の内ももに引っかかった場合であっても、非接着領域15における内装体が外装体に引っ張られることがなく、内装体を上方の所定の着用位置に引き上げることができる。内装体は、吸収体8を有しているため、おむつ1は、着用動作時に内装体を所定の着用位置に引き上げることができれば、着用者が排出した尿を吸収体8で吸収することができるため、尿漏れの可能性を低減することができる。このようなおむつ1は、容易に着用可能である。
【0063】
また、非接着領域15における外装体に設けられた伸縮部材は、糸ゴム4F6である。糸ゴム4F6は、非接着領域15において、おむつ1の幅方向に伸長状態で外装体のカバーシート4およびインナーカバーシート5に接着されている。おむつ1は、糸ゴム4F6によって着用動作時に非接着領域15における外装体を引き上げることができる。これによって、バックシート6の肌面側に配置されている吸収体8も引き上げることができる。おむつ1は、着用動作時に内装体および外装体を所定の着用位置に引き上げることができる。
【0064】
本実施形態では、非接着領域15は、糸ゴム4F6が股下領域1Bを幅方向に横切る部位(以下、当該部位を「糸ゴム4F6の横断部」と称する場合がある)よりも前身頃領域1F側および後身頃領域1R側に延在している。また、
図3に示されるように、糸ゴム4F6は、吸収体8よりもおむつ1の幅方向外側において、おむつ1の長手方向の成分を有する。ここで、長手方向の成分とは、おむつ1の長手方向に沿って延在および伸縮する成分のことであり、糸ゴム4F6が当該長手方向に対して斜めに延在していても糸ゴム4F6は長手方向の成分を有する。
【0065】
非接着領域15が糸ゴム4F6の延在領域の前身頃領域1F側を含んで形成されており、さらに、糸ゴム4F6が吸収体8を横断する部位の幅方向外側ではおむつ1の長手方向に伸縮する成分を有する。このため、非接着領域15における外装体は、糸ゴム4F6によって前身頃領域1F側に引っ張られ、この外装体によって吸収体8を含む内装体も前身頃領域1F側に引き上げられる。この構成を備えるおむつ1は、非接着領域15の肌面側の吸収体8が前身頃領域1F側に引き上げられることによって、着用者の肌面から当該吸収体8が離れるのを抑制できる。なお、非接着領域15は、糸ゴム4F6の延在領域よりも前身頃領域1F側を含んで形成されていれば、糸ゴム4F6によって前身頃領域1F側に引っ張られ、吸収体8を含む内装体も前身頃領域1F側に引き上げることができる。
【0066】
また、本実施形態に係るおむつ1によれば、糸ゴム4F6の横断部において、吸収体8の変形を抑制し、着用者の尿道口に対し、しわ等がない平らな状態の吸収体8の当接が容易となり、尿漏れを抑制することができる。なお、おむつ1が、インナーパッドを組み合わせて使用する場合には、しわ等が生じていない吸収体8によってインナーパッドが尿道口に押し当てられることになるため、尿漏れを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態に係るおむつ1によれば、幅方向に延在する糸ゴム4F6が収縮することで、カバーシート4およびインナーカバーシート5には幅方向に収縮力が作用する。また、このように幅方向に収縮力が作用したカバーシート4およびインナーカバーシート5と吸収体8とは非接着領域15において非接着である。よって、吸収体8よりも幅方向外側に存在するカバーシート4およびインナーカバーシート5の領域55L、55R(
図3参照)が吸収体8と厚み方向において重なるように収縮される。おむつ1は、胴開口部2Tを伸長した状態において、糸ゴム4F6は、吸収体8と重なる股下領域1Bの重なり領域よりも幅方向の外側の領域55L、55Rが当該重なり領域よりも幅方向の内側に収縮される収縮力を有する。胴開口部2Tが伸長されておむつ1が着用される場合に、着用
者がおむつ1を着用するために左下肢開口部2Lおよび右下肢開口部2Rに脚を入れる際、着用者の親指が領域55L,55Rに引っかかることを防止することができる。このため、本実施形態に係るおむつ1は、着用が容易である。
【0068】
また、左右両側の糸ゴム4R6は幅方向中央部において切断されている。また、後身頃側の股下領域1Bにおいては、カバーシート4およびインナーカバーシート5と吸収体8とはバックシート6を介して接着されている。よって、後身頃領域1R側においては、吸収体8よりも幅方向外側に存するカバーシート4およびインナーカバーシート5の領域56L,56R(
図3参照)は、吸収体8と厚み方向において重なるように収縮されない。よって、前身頃領域1F側では、領域55L、55Rが吸収体8と厚み方向において重なり、後身頃領域1R側では、領域56L、56Rが内装体から左下肢開口部2Lおよび右下肢開口部2Rの夫々にはみ出したような状態となる。このため、おむつ1の前後見分けが容易となる。
【0069】
また、前述の通り、吸収体8は、股下領域1Bで括れた略砂時計型形状を有している。より具体的には、吸収コア8cは、股下領域1Bで括れ、且つ、糸ゴム4F3の横断部よりも前身頃領域1F側で股下領域1Bの括れよりも幅方向に広い形状を有する。非接着領域15における外装体が糸ゴム4F6によって前身頃領域1F側に持ち上げられ、糸ゴム4F3がおむつ1の幅方向内側に収縮することで、非接着領域15における吸収体8よりも幅方向外側の外装体(
図3に示す領域55L,55R)が吸収体8と重なる範囲に収まるか、少なくとも、糸ゴム4F6を設けなかった場合よりも吸収体8よりも幅方向外側への外装体のはみ出し量が少なくなる。例えば、糸ゴム4F3によって前身頃領域1F側に持ち上げられる非接着領域15上の吸収体8の幅が持ち上げられる前の位置よりも広ければ、より確実に外装体が吸収体8の幅内に収まりやすくなる。これにより、おむつ1の着用時に、左右の下肢開口部2L,2Rが外装体によって塞がれにくくなる。よって、着用者が自力でおむつ1を履く場合には胴開口部2Tから左右の下肢開口部2L,2Rが見やすくなり、介護者等が着用者におむつ1を履かせる場合には外部から左右の下肢開口部2L,2Rを見つけやすくなるため、おむつ1の着用が容易となる。また、着用者が左右の下肢開口部2L,2Rに足を入れる際に、親指が外装体に引っかかり難くなる。
【0070】
また、糸ゴム4R6は、
図3に示されるように幅方向の中央部において切断されている。よって、糸ゴム4R6が切断された領域におけるカバーシート4およびインナーカバーシート5には糸ゴム4R6の弾性力が作用せず、当該領域におけるカバーシート4およびインナーカバーシート5は収縮しない。また、おむつ1は、吸収体8の変形を抑制するため、吸収体8の変形によって生じる吸収性能を低下させることがない。
【0071】
また、おむつ1の長手方向における非接着領域15の長さは、30mm以上である。ここで、糸ゴム4F6は3本配置されており、糸ゴム4F6の横断部における糸ゴム4F6同士の間隔は、15mm以上、好ましくは、30mm以上とする。糸ゴム4F3をこの間隔3本配置することで、内装体と外装体との間の非接着領域15を十分な長さで確保でき、外装体の位置に関わらず内装体が着用者の身体に対して所定の着用位置に配置しやすい、また、内装体の吸収体8が肌に沿った所定の状態となりやすいため、身体の傾き(股下部を水平にした場合の腹部が垂直方向に延びる傾き)に対して糸ゴム4F6が種々の位置に存することとなり、いずれかの糸ゴム4F6が外装体の身体との引っかかりの解除する方向に引き上げるように機能する可能性が高まり、種々な体系の着用者に対しても適切に糸ゴム4F6を作用させることができる。
【0072】
次に、内装体と外装体の接着形態についてより詳細に説明する。
図9は、内装体と外装体の接着形態を示すおむつ1の平面図である。おむつ1は、内装体と外装体とを接着する第1接着部20、第2接着部21、第3接着部22を備える。
図9では、第1接着部20
、第2接着部21および第3接着部22を非接着領域15と別パターンに塗りつぶし図示している。第1接着部20、第2接着部21および第3接着部22は、ホットメルト接着剤が塗布されることによって形成されている。第1接着部20、第2接着部21および第3接着部22は、幅方向に延在し、長手方向に離間して配置された複数の接着線によりそれぞれ形成されている。
【0073】
第1接着部20は、非接着領域15よりも股下領域1B側に設けられ、内装体のバックシート6よりも幅狭に形成されている。第1接着部20は、非接着領域15に股下領域1B側で隣接し、股下領域1Bで幅方向に括れた吸収コア8cと同じ幅に形成されている。第1接着部20の幅方向端部側では、内装体と外装体とは非接着である。これにより、おむつ1は、糸ゴム4F3によって非接着領域15よりも股下領域1B側の幅方向端部の外装体を幅方向内側に収縮させ、股下領域1Bにおける外装体が着用動作時に着用者の内ももに引っかかるのを防ぐことができる。また、おむつ1は、着用者動作時に第1接着部20の幅方向端部および第1接着部20の最も前側の接着線の前側端部を起点に外装体を下側(非肌面側)に折り曲げ、外装体が内ももに引っかかるのを防ぐことができる。
【0074】
第2接着部21は、非接着領域15よりも前身頃領域1F側に設けられ、第1接着部20よりも幅広に形成されている。第2接着部21は、非接着領域15に前身頃領域1F側で隣接し、内装体のバックシート6よりも若干幅狭に形成されている。また、第3接着部22は、第1接着部20よりも後身頃領域1R側に設けられ、第1接着部20よりも幅広に形成されている。第3接着部22は、非接着領域15に後身頃領域1R側で隣接し、内装体のバックシート6よりも若干幅狭に形成されている。このように、第1接着部20は、第2接着部21および第3接着部22よりも幅狭に形成されている。これにより、おむつ1は、第2接着部21および第3接着部22が形成された外装体よりも剛性が小さくなる第1接着部20の幅方向外側の外装体に糸ゴム4F6の収縮力を作用させることができる。
【0075】
また、おむつ1は、非接着領域15を設けたことによって、糸ゴム4F6の横断部で吸収体8が収縮するのを抑制することができる。仮に、吸収体が収縮して着用者の肌に当たると、着用者に違和感与え着用感が低下する。本実施形態に係るおむつ1は、吸収体8が収縮するのを抑制することで着用感の低下を抑制できる。また、吸収体は、尿の吸収後に収縮するとパルプが崩れる虞がある。本実施形態に係るおむつ1は、吸収体8が収縮するのを抑制することで吸収体8の型崩れを抑制できる。
【0076】
なお、糸ゴム4F6が幅方向に横断する非接着領域15において、吸収体8とインナーカバーシート5とを非接着としているが、非接着領域15において吸収体8とインナーカバーシート5とが一部接着されていてもよい。このような場合、インナーカバーシート5に対して吸収体8のずれを防止できる。なお、一部接着される場所は、例えば幅方向の中央部でもよい。
【0077】
図10は、第1の実施形態に係るおむつの外装体の胴開口部端部近傍部分を示す図である。より具体的には、
図3(A)に示すおむつ1の内部構造を模式的に示した図の前身頃領域1F側の長手方向端部の拡大図である。
図10~
図12に示す各実施形態では、前身頃領域1F側の構成について例示するが、後身頃領域1R側も同様の構成を有しているため省略する。
図10~
図12に示す各実施形態では、おむつ1の構造を明瞭化するため、各構成の間に大きな隙間を設けて描写しているが、実際のおむつ1の各構成の間の隙間は非常に小さく、その長手方向端部はより肉薄である。
【0078】
第1の実施形態では、糸ゴム4F2,4F5は、外装体の非肌面側に設けられたカバーシート4と、外装体の肌面側に設けられたインナーカバーシート5とに覆われている。糸
ゴム4F2,4F5の延在領域において、カバーシート4とインナーカバーシート5は接着されている。そして、カバーシート4とインナーカバーシート5は、
図2に示す折り返し線4FFにおいて一端側が折り返されて肌面側に屈曲している。当該折り返し線4FFは、完成状態のおむつ1の胴開口部2Tの端縁となる。折り返されたカバーシート4は、外装体の肌面側において、長手方向内側に延在し、その端部との間に折り返し部30を形成している。
【0079】
インナーカバーシート5は、折り返し線4FFにおいて屈曲し、その長手方向端部は長手方向内側を向いている。また、折り返されたインナーカバーシート5は相互に接着されておらず、胴開口部2T側の端縁近傍において、折り返し部30の曲げ応力に起因する空間31を形成している。
【0080】
カバーシート4の折り返し部30とインナーカバーシート5の間には、糸ゴム4F1,4F3が延在している。換言すれば、カバーシート4と、インナーカバーシート5は、複数の弾性部材である糸ゴム4F1,4F3のうち最も胴開口部2T側に配置されているものよりも更に胴開口部2T側で肌面側に屈曲して折り返し部30を形成している。糸ゴム4F1,4F3は、カバーシート4の折り返し部30と、インナーカバーシート5との間に接着されている。一方、折り返されたインナーカバーシート5は、折り返し部30の胴開口部2T側の一部において、カバーシート4の非肌面側に延在しているものの、糸ゴム4F1の延在領域にまでは達していない。
【0081】
一般的に、おむつの胴開口部の端縁は、衣類や着用者の手との摩擦により破れる虞がある。より具体的には、おむつの胴開口部の端縁は、着用者の肌に直接触れており、着用者の身体に食い込んで、肌との強い摩擦によって摩耗することがある。また、胴開口部近傍におけるウェストギャザーの締付力は比較的強く、締付により着用者の胴部に痒みを生じることがある。痒みを感じた着用者は、胴開口部の端縁を指で強くこすることがあり、この面でも胴開口部の端縁は摩耗しやすい。
【0082】
そして、胴開口部の端縁が破れると、内部のウェストギャザーを構成するための糸ゴムが外部に露出することがある。露出した糸ゴムは、着用者の肌面に食い込んで着用感を大きく損なう虞がある。また、糸ゴムが外部に露出すると、糸ゴムは前述の摩耗に直接晒されるため、その一部が破断してしまう虞もある。ウェストギャザーの締め付け力は、糸ゴムによって規定されている。ウェストギャザーを構成するための糸ゴムの一部が破断すると、ウェストギャザーが適切な締め付け力を発揮できなくなり、ずれ落ちが発生することがある。ずれ落ちにより着用感は低下する。また、ずれ落ちにより吸収体が着用者の肌面と正しく当接しなくなるため、おむつが排出液を適切に受け止めることができなくなる虞もある。
【0083】
第1の実施形態では、本開示に係るおむつ1は、胴開口部2Tの端縁において、カバーシート4に加えてインナーカバーシート5を折り返している。このため、おむつ1の胴開口部の端縁に配置されているシートは、カバーシート4とインナーカバーシート5の2重になっている。例えカバーシート4が摩耗したり破断したりして内部構造が露出したとしても、糸ゴム4F1との間には更にインナーカバーシート5が存在しているため、カバーシート4の摩耗や破断は、即座に糸ゴム4F1,4F3の露出に繋がることはない。このため、本実施形態に係るおむつ1は、長時間に渡って着用感を維持し、その機能を保つことができる。
【0084】
また、本実施形態では、インナーカバーシート5は、糸ゴム4F1,4F3の肌面側を覆ってはいないものの肌面側に折り返されている。このため、折り返し部30の糸ゴム4F1,4F3の延在領域では、おむつ1の外装体はシートが3層重ねられているが、糸ゴ
ム4F1,4F3の延在領域の更に胴開口部2Tの端縁側では、インナーカバーシート5が折り返されていることによりシートが胴回り方向に4層以上積層された状態となる。
【0085】
また、折り返されたインナーカバーシート5は、逆U字型または略コの字型に屈曲しているもののその内側では相互に接着されておらず、胴開口部2Tの端縁近傍において空間31を形成しているため、厚み方向に膨らんでいる。これらの構成により、おむつ1は、その長手方向端部を厚み方向に見た場合、糸ゴム4F1,4F3が存在しない胴開口部2Tの端縁においてより肉厚であり、更に具体的には、肌面側においてより肉厚である。
【0086】
伸張状態の糸ゴム4F1,4F3は、一定の付勢力を有している。このため、おむつ1の着用状態において、糸ゴム4F1,4F3の延在領域は、外装体を肌面側に屈曲させつつ着用者の肌面と当接する。一方、糸ゴム4F1,4F3の延在領域よりも更に胴開口部2Tの端縁側において、外装体は、外装体を肌面側と当接させる付勢力を有していない。
【0087】
胴開口部の端縁に付勢力を有していない一般的なおむつは、胴開口部の端縁側が非肌面側に反って、肌面との間に隙間を形成することがある。着用者の指が当該隙間に挿入されてしまった場合、意図しないおむつの引き上げ、引き下ろしに繋がることがある。更に、着衣の一部が当該隙間に入った場合、ウェストギャザーの糸ゴムの付勢力が不足し、ずれ落ちを発生させることがある。このように、当該隙間はおむつの機能と着用感の低下要因となる。
【0088】
第1の実施形態では、長手方向端部における糸ゴム4F1,4F3の延在領域の更に胴開口部2Tの端縁側は、肌面側に肉厚である。このため、着用中に胴開口部2Tの端縁側が非肌面側に屈曲した場合でも、胴開口部2Tの端縁側と着用者の肌面との間には、指や衣類などが入り込むことができる大きさの隙間が形成されない。よって、おむつ1の胴開口部2Tの端縁と着用者の肌面との間には指や衣類などが入り込むことはなく、おむつ1の機能は保持される。また、おむつ1の胴開口部2Tの端縁と着用者の肌面との間に隙間が形成されないことで、おむつ1の着用感も向上する。
【0089】
また、当該肉厚部分が肌面に当接して応力を発揮することで、特に、最も胴開口部2Tの側に配置された糸ゴム4F1,4F3が着用者の肌面に伝える付勢力を緩和することができる。このため、糸ゴム4F1,4F3が着用者の肌面に食い込むのを抑制可能である。
【0090】
一方で、着用者や介助者が意図して指を挿入する場合、空間31は容易に屈曲するため、指入れが容易となる。そして、本実施形態に係るおむつ1は、胴開口部2Tに指を挿入して拡幅すると、非肌面側に容易にめくれやすい構造となっている。このため、おむつ1の位置調整や、履き替え、そして一端ずり下げてのインナーパッドの交換などが容易である。
【0091】
なお、おむつ1は、着用中にインナーパッドを交換するため、何度もずり下げられることがあり、胴開口部2Tの近傍部分は都度拡縮する。おむつを構成する各不織布シートの繊維は、微小なエンボス溶着により固定されているが、拡縮を繰り返すに従って、溶着部から外れて伸びてしまうことがある。不織布シートが伸びてしまうと、おむつ1の着用状態を維持するのが困難になる。
【0092】
本実施形態に係るおむつ1では、胴開口部2Tの端縁側では、インナーカバーシート5が折り返されていることによりシートが4層重ねられた状態となっている。シートが4層となることにより、おむつの胴開口部2Tは補強され、不織布は伸びにくくなっている。このため、ずり下げに何度も耐え、長期間履き続けることができるおむつ1を実現できる
。
【0093】
<第2の実施形態>
図11は、第2の実施形態に係るおむつの外装体の胴開口部近傍部分を示す図である。以下の実施形態では、各図中、第1の実施形態と実質的に同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。第2の実施形態では、屈曲して折り返し部30の一部に延在するインナーカバーシート5は、糸ゴム4F1,4F3のうちの胴開口部2T側の一部、より具体的には、少なくとも最も胴開口部2T側の一本または胴開口部2T側の複数本と重畳している。
図11では空間31を図示していないが、この構成でも、インナーカバーシート5は、胴開口部2T側の端部において逆U字型または略コの字型に屈曲しているもののその内側では相互に接着されておらず、その内側には空間31が形成され得る。
【0094】
糸ゴム4F1,4F3は、そのそれぞれの配置位置において、外装体を肌面側に屈曲させるように付勢する。おむつ1の長手方向内側には比較的剛性の高い吸収体8が存在するため、外装体は、糸ゴム4F1,4F3の付勢力を受けても、着用者の肌面側にそれほど強く屈曲しない。一方、胴開口部2T側には剛性の高い構造が存在しないため、糸ゴム4F1,4F3は、外装体を、着用者の肌面側により強く屈曲させる。一般的なおむつにおいても、胴開口部側に剛性の高い構造が存在していないことから、外装体の胴開口部近傍の肌面側において、ウェストギャザーを構成する糸ゴムの付勢力に起因する凹凸が長手方向に形成されることがある。そして、当該凹凸の凸部は、着用者の肌面に強く当接し、着用感の低下をもたらす。また、凹部が着用者の肌面に当接しないことで、おむつの胴開口部近傍と着用者の肌面との間に適切な摩擦力が働かず、ずれ落ちの原因となることもある。
【0095】
そこで、第2の実施形態では、折り返し部30の一部に延在するインナーカバーシート5を、糸ゴム4F1,4F3の胴開口部2T側の一部と重畳させる。本実施形態に係るおむつ1は、胴開口部2T側に設けられた糸ゴム4F1,4F3の肌面側に、カバーシート4に加えてインナーカバーシート5が重畳するようにすることで、肌面側において、糸ゴム4F1,4F3の付勢力を長手方向に分散させて凹凸の形成を防ぎ、着用感を向上させることができる。また、ずれ落ちを防止することもできるため、おむつ1の機能も保たれやすくなる。
【0096】
<第3の実施形態>
図12は、第3の実施形態に係るおむつの外装体の胴開口部近傍部分を示す図である。第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、インナーカバーシート5が折り返し部30の一部に延在しており、糸ゴム4F1,4F3のうちの胴開口部2T側の一部と重畳している。そして、折り返し部30において、カバーシート4とインナーカバーシート5は、ホットメルト接着剤HM等の接着剤によって、接着されている。
【0097】
胴開口部2T側に設けられた糸ゴム4F1,4F3の肌面側にカバーシート4とインナーカバーシート5とを重畳させることで、胴開口部2T近傍において、肌面側に凹凸が形成されるのを防ぐことができる。更に、第3の実施形態では、折り返し部30の胴開口部2T側において、カバーシート4とインナーカバーシート5は接着されている。このため、胴開口部2T近傍の肌面側において、外装体の剛性は強化される。外装体の剛性が強化されることにより、胴開口部2T近傍において、外装体の肌面側には糸ゴム4F1,4F3の付勢力に起因する凹凸が形成されず、平面状となる。外装体の肌面側が平面状になっていることで、外装体は、着用者の胴部と、広面積で面として当接する。
【0098】
本実施形態に係るおむつ1は、肌側が平面状となっていることにより、外装体と着用者
の肌面との密着性は向上する。このため、本実施形態に係るおむつ1は、第2の実施形態よりも更にずれ落ちを抑制することができ、装着感も高くなる。また、着用者が高齢者であって排出液の速度が遅い場合には、排出液がトップシート9に達して吸収体8に流入せず、着用者の肌面をそのまま流れておむつの長手方向端部に達することがある。本実施形態に係るおむつ1では、胴開口部2Tの近傍において、外装体と着用者の肌面との密着性が高いため、着用者の肌面を伝って移動してきた排出液の移動を抑制することができる。このように、本実施形態に係るおむつ1は、ずれ落ちを抑制可能であって装着感が高く、速度が遅い排出液が胴開口部2Tから漏出するのを防ぐことができるため、好適である。
【0099】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明をする。
図13は、エンドシートとカバーシートとの接合線と糸ゴムとの関係について示す図である。本図は、おむつ1の前身頃領域1Fにおけるエンドシート11Fの延在領域の片側を肌面側から見た場合を例示した拡大図である。本実施形態に係るおむつ1は左右対称の構成を有しており、その構成は逆側においても同様である。また、
図13で説明する構成は、後身頃領域1R側においても同様である。おむつ1の前身頃領域1F,後身頃領域1Rには、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4が、長手方向に所定の間隔を開けて幅方向に延在するように配置されている。糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4は、カバーシート4とインナーカバーシート5との間に配置され、一例としては糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4に塗布されたホットメルト接着剤等の接着剤により、カバーシート4,インナーカバーシート5の両シートと接合している。
【0100】
エンドシート11F,11Rは、トップシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4に重ねられる短冊状で非透水性のシートである。エンドシート11F,11Rは非透水性の不織布であり、主におむつ1の胴周り当接部分においてカバーシート4を補強する。また、エンドシート11F,11Rは、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L、10Rにより形成される積層体より肌面側に配置され、積層体の端が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐ。
【0101】
折り返し線4FF,4RFで折り返されたカバーシートは、糸ゴム4F1,4R1,4F3,4R3の延在領域の肌面側を覆ってはいるものの、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の延在領域の肌面側は覆っていない。エンドシート11F,11Rは、折り返し線4FF、4RFで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4F2,糸ゴム4R2の配置領域に設けられて、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の配置領域を補強している。エンドシート11F,11Rは、吸収体8の延在領域では、吸収体8の肌面側を覆っている。
【0102】
エンドシート11F,11Rは、吸収体8が延在していない領域において、インナーカバーシート5と接合している。このため、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の付勢力を受けやすい。この領域では、エンドシート11F,11Rには、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の付勢力に起因する幅方向に小さな皺が並列して形成される。一方、エンドシート11F,11Rは、吸収体8の延在領域ではインナーカバーシート5と直接接合しておらず、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4から受ける付勢力の影響は低減される。
【0103】
吸収体8の延在領域では、エンドシート11F,11Rには皺は形成されないか、仮に形成されたとしてもインナーカバーシート5と接合している領域よりも幅方向に大きくなり、肌面との接触割合も大きくなる。当該部分では、エンドシート11F,11Rは、吸収体8を長手方向に向けて流動する排出液の動きを抑制する機能を有しており、腹漏れ、背漏れを抑制する。
【0104】
エンドシート11F,11Rは、ホットメルト接着剤等の接着剤HM2で形成された複数の接合線により、外装体、より具体的にはインナーカバーシート5と接合している。接合線は、長手方向に所定の間隔を開けて互いに離間し、幅方向に延在するように複数配置されている。ここで、エンドシート11F,11Rと外装体とを接合する接合線は、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4と重畳しているものよりも、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4と重畳していないものの方が多くなるように配置されている。
【0105】
エンドシート11F,11Rは、着用者の肌面と当接する。そして、エンドシート11F,11Rは、接合線でインナーカバーシート5と接着していない範囲において、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の収縮力を分散するクッションとしての役割を果たす。糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4は、おむつ1を着用者の肌面に押し当ててずれを抑制する。また、おむつ1とインナーパッドを併用する場合には、インナーパッドを適切な位置に保持する役割を有しており、一定の付勢力でおむつを着用者の肌面に押し当てることが望ましい。その一方、糸ゴムの付勢力が直接着用者の肌面に伝わると、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4が着用者の肌面に食い込むことになる。糸ゴムが着用者の肌面に食い込むと、おむつの着用感は低下し、肌面トラブルの原因にもなる。
【0106】
第4の実施形態に係るおむつ1では、エンドシート11F,11Rの接合線と糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の位置が重畳しないものの方が、重畳するものよりも少なくなっている。この結果、重畳しない部分ではエンドシート11F,11Rが肌面側でクッションとして機能し、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の付勢力が着用者の肌面に直接作用するのを防ぎ、肌当たりを向上させることができる。一方、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4のうちの一部とエンドシート11F,11Rの接合線の位置は重畳しており、重畳部13となる。糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の付勢力は重畳部13において着用者の肌面に直接伝わる。このため、おむつ1は、全体としては着用者の胴回りに対する付勢力を維持可能であり、ずれ落ちを適正に防止できる。
【0107】
重畳部13の配置の仕方の一例としては、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4のうち3本ないし4本に一本が重畳部13となるようにエンドシート11F,11Rの接合線を配置することができる。重畳部13を複数箇所設けることで、おむつ1のずれ落ちはより抑制される。また重畳部13が出現する位置を長手方向に十分に離すことで、着用感の低下を抑制可能であり、より好適である。
【0108】
なお、エンドシート11F,11Rの接合線が全て糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4と重畳しない、すなわち重畳部13を設けない構成も考えられる。この構成では、着用者の肌面側において、エンドシート11F,11Rは糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4に対するクッションとして機能し、糸ゴム4F2,4R2、4F5,4R5,4F4,4R4の付勢力を分散させて、肌面への食い込みを抑制する。このように構成することで、肌当たりが非常に良好なおむつを提供可能であり、着用感の低下を抑制可能である。糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4が肌面と当接しないことによるずれ落ち抑制性能の低下は、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の付勢力を一定程度強くする、または、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4の配置間隔を狭めることにより代替できる。
【0109】
図13では、重畳部13の配置として最も好適な形態を示している。すなわち、複数の糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4のうち、最も股下側に配置され
ているものと、エンドシート11F,11Rと外装体との接合線を重畳させて、重畳部13をこの位置にのみ設ける構成である。複数の弾性部材である糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4のうち最も股下側の一か所に重畳部13を設けることにより、おむつ1は着用者の腰骨付近に強く当接し、ずれ落ちを強力に抑制可能である。
【0110】
更に、
図13に示す形態では、重畳部13は、吸収体8と重畳している。吸収体8は、外装体の肌面側と重畳している。重畳部13を設けると、重畳部13において糸ゴム4F2,4R2が着用者の肌面に食い込む可能性がある。一方、吸収コア8cを短繊維とSAPから構成する場合、短繊維のみから構成する場合、またSAPのみから構成する場合のいずれにおいても、吸収コア8cの剛性は高い。外装体の肌面側に吸収コア8cが重畳している部分に重畳部13を設ければ、吸収体8の延在領域において、糸ゴム4F2,4R2,4F5,4R5,4F4,4R4が着用者の肌面に食い込むのを抑制可能である。
【0111】
このように、吸収体8と重畳する位置に重畳部13を設けることにより、ずれ落ちを防止しつつも、肌当たりがよいおむつを提供することができ、好適である。
【0112】
以上、各実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施形態に限られるものではない。例えば、おむつ1の前身頃領域1F側と後身頃領域1R側とで、採用する実施形態を分けてよい。一例としては、前身頃領域1F側には第1実施形態に示す構成を採用し、後身頃領域1R側には第3実施形態に示す構成を採用して良い。また、前身頃領域1Fまたは後身頃領域1Rについてのみ上記実施形態に示す構造を採用してもよい。着用者の腹部は、臀部と比べると比較的平坦である。また、着用者の手は前身頃領域1F側の胴開口部に接しやすいため、胴開口部近傍の外装体に求められる機能も異なっている。このため、おむつ1の胴開口部の前身頃領域1F側と後身頃領域1R側において求められる機能を考慮しつつ、最適な実施形態を選択してよい。
【0113】
以上で開示した実施形態は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0114】
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2L・・左下肢開口部
2R・・右下肢開口部
2T・・胴開口部
3BL,3BR・・立体ギャザー
3LL,3LR・・レグギャザー
3R・・ウェストギャザー
4・・カバーシート
4F1,4F2,4F3,4F4,4F5,4F6・・糸ゴム
4F7,4F8・・縁
4FF・・折り返し線
4R1,4R2,4R3,4R4,4R5,4R6・・糸ゴム
4R7,4R8・・縁
4RF・・折り返し線
5・・インナーカバーシート
6・・バックシート
7・・コアラップシート
8・・吸収体
9・・トップシート
10L,10R・・サイドシート
20,21,22・・接着部
30・・折り返し部
31・・空間
55L,55R・・領域
HM,HM2・・ホットメルト接着剤