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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070213
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】耐火物の築造方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/16 20060101AFI20240515BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20240515BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240515BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F27D1/16 Q
G01B21/20 101
F27D21/00 Q
F27D1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140289
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022180507
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 善幸
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳
(72)【発明者】
【氏名】日野 雄太
【テーマコード(参考)】
2F069
4K051
4K056
【Fターム(参考)】
2F069AA61
2F069AA66
2F069DD19
4K051AA02
4K051AA06
4K051AB03
4K051BH00
4K051LF01
4K051LF06
4K056AA02
4K056AA06
4K056CA02
4K056FA11
(57)【要約】
【課題】高精度な加工が可能な耐火物の築造方法が提供される。
【解決手段】耐火物の築造方法は、定型耐火物(101)を1つの方向に複数段に積んで定型耐火物及び不定型耐火物(14)を含む耐火物を容器内に築造する耐火物の築造方法であって、容器内の3次元形状を計測した3次元計測データを利用する。耐火物の築造方法は、3次元計測データに基づいて、1つの段に生じる隙間の形状を算出してよい。耐火物の築造方法は、定型耐火物の施工開始前、定型耐火物の施工開始から施工終了までの間、定型耐火物の施工終了後のうち少なくとも1つにおいて、容器内の3次元形状の計測である容器内計測を実行してよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定型耐火物を1つの方向に複数段に積んで前記定型耐火物及び不定型耐火物を含む耐火物を容器内に築造する耐火物の築造方法であって、
前記容器内の3次元形状を計測した3次元計測データを利用する、耐火物の築造方法。
【請求項2】
前記3次元計測データに基づいて、1つの段に生じる隙間の形状を算出する、請求項1に記載の耐火物の築造方法。
【請求項3】
前記定型耐火物の施工開始前、前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間、前記定型耐火物の施工終了後のうち少なくとも1つにおいて、前記容器内の3次元形状の計測である容器内計測を実行する、請求項2に記載の耐火物の築造方法。
【請求項4】
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工終了後に実行され、
算出された前記隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物を加工する、請求項3に記載の耐火物の築造方法。
【請求項5】
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間に実行され、
算出された前記隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物を加工する、請求項3に記載の耐火物の築造方法。
【請求項6】
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始前に実行され、
算出された前記隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物を加工する、請求項3に記載の耐火物の築造方法。
【請求項7】
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始前及び前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間に実行され、
前記定型耐火物の施工開始前の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、最終調整用耐火物を加工し、
前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、微調整として前記最終調整用耐火物を加工する、請求項3に記載の耐火物の築造方法。
【請求項8】
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間及び前記定型耐火物の施工終了後に実行され、
前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、最終調整用耐火物を加工し、
前記定型耐火物の施工終了後の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、微調整として前記最終調整用耐火物を加工する、請求項3に記載の耐火物の築造方法。
【請求項9】
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始前及び前記定型耐火物の施工終了後に実行され、
前記定型耐火物の施工開始前の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、最終調整用耐火物を加工し、
前記定型耐火物の施工終了後の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、微調整として前記最終調整用耐火物を加工する、請求項3に記載の耐火物の築造方法。
【請求項10】
前記定型耐火物の施工手段を備えるロボットを用いて前記定型耐火物及び不定型耐火物を含む耐火物を前記容器内に築造する、請求項1から9のいずれか一項に記載の耐火物の築造方法。
【請求項11】
前記ロボットが、
操作者によって操られるマスターロボットと、作業対象物に対して所定の作業を行うスレーブロボットからなるマスタースレーブシステムの一部又は全部であって、
前記スレーブロボットが前記定型耐火物を施工する際に知覚した反力に応じて反力指令値を出力し、前記マスターロボットが前記反力指令値に基づいて前記操作者に知覚させる反力を生成するように構成されている、請求項10に記載の耐火物の築造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐火物の築造方法に関する。本開示は、特に製鉄分野で用いられる転炉、トピードカーなどの精錬容器に定型耐火物及び不定型耐火物を含む耐火物を築造する耐火物の築造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶銑容器及び溶鋼容器に用いられる耐火物は、定型耐火物と不定型耐火物に分類することができる。定型耐火物の代表例は耐火レンガである。耐火レンガの製造では、耐火性骨材を結合剤で粘結し、混合した坏土を金属製の枠内に充填し、プレス成型することが行われる。不焼成レンガは、プレス成型後に200℃程度で結合剤中の有機成分を揮発させて作られる。また焼成レンガは、プレス成型後に1000℃を超える高温で焼成されて作られる。不焼成レンガの代表例は、取鍋及び転炉でウェアレンガとして用いられるMgO-Cレンガである。また焼成レンガの代表例は、マグネシアレンガ又はハイアルミナレンガである。これら定型レンガは、1種類のレンガを製造する際に、複数のプレス成型用金属製枠を用いるため、金属製枠の大きさによって耐火レンガの大きさが異なる。また、成型後に生じるスプリングバック又は焼成による焼結収縮によってレンガごとの大きさが異なる。築造(築炉)時には、公差の範囲内の製品が使用される。ここで、公差は「JIS Z 8103:2000 計測用語」に示す意味を有する。
【0003】
ここで、転炉、取鍋など、高温の溶融物を取り扱う設備は略円筒形状であることが多い。これらに施工される定型耐火物は、略円筒形の容器の内側に配置されるため、稼働面側より背面側の幅が広い形状となっている。また、このような定型耐火物は、1つの方向(例えば高さ方向)に複数段に積み上げられて施工される。テーパがつけられた形状及び使用中の熱膨張力が円周方向(奥行方向)に作用することなどによって、定型耐火物の抜け出しが抑制される。例えば特許文献1は、互いに形状が異なる2種以上の複数の煉瓦を組み合わせて隙間が無いよう配置する方法を開示する。
【0004】
ただし、実際には使用に伴う変形又は溶接補修に伴う残存ビードといった容器外殻の形状変化があり得る。また、個々の定型耐火物にも微小な形状差がある。容器外殻の変形、個々の耐火物の寸法公差などによって、耐火物施工計画で計画された枚数で配置を完了させることは難しい。そのため、段ごとに最終的な隙間を測定し、耐火物を加工して、隙間に埋め込んで仕上げることが行われる。このような耐火物を最終調整用耐火物と称することがある。また、例えば特許文献2は、段ごとの隙間が生じないように、レンガをスパイラル状に順次炉頂まで配設する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-9707号公報
【特許文献2】特開平10-204518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特に転炉について、高稼働率が求められており、耐火物の施工時間の短縮が要求されている。また、施工時間の短縮は、修理にかかる人件費の削減、設備稼働率の向上による設備基数の最小化、運用の柔軟化などのメリットを生じる。
【0007】
耐火物をスパイラル状に配設する施工は、最終調整用耐火物を用意する必要がない。しかし、積み始めと積み終わり付近で特殊形状の高価な耐火物が必要となり、稼動中に耐火物が部分的に脱落した場合に影響が同一段内で収まらず、広範囲の耐火物が緩んでしまう。
【0008】
耐火物を複数段に積み上げる従来の施工方法では、最終的な隙間を測定する必要がある。従来、最終的な隙間の測定は、巻き尺、直尺、角度直尺などを用いて人手で行われており、作業者の熟練度によっては大きな測定誤差が生じたり、伝達時の聞き間違いがあったりする。その結果、最終調整用耐火物の再加工が必要となり、施工時間のさらなる延長を引き起こすことがあった。さらに、上記の容器外殻の形状変化により、定型耐火物の施工面形状との不一致が生じ、施工時間が延長するという課題があった。
【0009】
本開示の目的は、高精度な加工が可能な耐火物の築造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本開示の一実施形態に係る耐火物の築造方法は、
定型耐火物を1つの方向に複数段に積んで前記定型耐火物及び不定型耐火物を含む耐火物を容器内に築造する耐火物の築造方法であって、
前記容器内の3次元形状を計測した3次元計測データを利用する。
【0011】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記3次元計測データに基づいて、1つの段に生じる隙間の形状を算出する。
【0012】
(3)本開示の一実施形態として、(2)において、
前記定型耐火物の施工開始前、前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間、前記定型耐火物の施工終了後のうち少なくとも1つにおいて、前記容器内の3次元形状の計測である容器内計測を実行する。
【0013】
(4)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工終了後に実行され、
算出された前記隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物を加工する。
【0014】
(5)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間に実行され、
算出された前記隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物を加工する。
【0015】
(6)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始前に実行され、
算出された前記隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物を加工する。
【0016】
(7)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始前及び前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間に実行され、
前記定型耐火物の施工開始前の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、最終調整用耐火物を加工し、
前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、微調整として前記最終調整用耐火物を加工する。
【0017】
(8)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間及び前記定型耐火物の施工終了後に実行され、
前記定型耐火物の施工開始から施工終了までの間の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、最終調整用耐火物を加工し、
前記定型耐火物の施工終了後の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、微調整として前記最終調整用耐火物を加工する。
【0018】
(9)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記容器内計測は、前記定型耐火物の施工開始前及び前記定型耐火物の施工終了後に実行され、
前記定型耐火物の施工開始前の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、最終調整用耐火物を加工し、
前記定型耐火物の施工終了後の前記容器内計測で得られた前記3次元計測データに基づく前記隙間の形状に基づいて、微調整として前記最終調整用耐火物を加工する。
【0019】
(10)本開示の一実施形態として、(1)から(9)のいずれかにおいて、
前記定型耐火物の施工手段を備えるロボットを用いて前記定型耐火物及び不定型耐火物を含む耐火物を前記容器内に築造する。
【0020】
(11)本開示の一実施形態として、(10)において、
前記ロボットが、
操作者によって操られるマスターロボットと、作業対象物に対して所定の作業を行うスレーブロボットからなるマスタースレーブシステムの一部又は全部であって、
前記スレーブロボットが前記定型耐火物を施工する際に知覚した反力に応じて反力指令値を出力し、前記マスターロボットが前記反力指令値に基づいて前記操作者に知覚させる反力を生成するように構成されている。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、高精度な加工が可能な耐火物の築造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、精錬容器に施工した耐火物の断面を模式的に示す図である。
図2図2は、ウェアレンガの拡大図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る耐火物の築造方法による施工を説明するための模式図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る耐火物の築造方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る耐火物の築造方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0024】
図1は、精錬容器1に施工した定型耐火物101の断面を模式的に示す図である。精錬容器1は、鉄皮11及び定型耐火物101で構成される。定型耐火物101は、鉄皮11に対して精錬容器1の内側で、1つの方向に複数段に積んで施工される。以下、定型耐火物101を積む1つの方向は高さ方向と称される。定型耐火物101は、パーマレンガ12及びウェアレンガ13を含む。パーマレンガ12及びウェアレンガ13のそれぞれは1種類であってよいし、複数種類であってよい。パーマレンガ12及びウェアレンガ13は、不定型耐火物14によって接着される。ここで、高さ方向に垂直で、精錬容器1の内側から外側に向かう方向を奥行方向と称することがある。不定型耐火物14として例えばモルタルが使用されるが、不定型耐火物14はこれに限定されず、スタンプ材、カンプンなどであってよい。
【0025】
図2は、ウェアレンガ13の拡大図である。記載の数値(単位:mm)は一例であって、これら値に限定されない。図2の左図はウェアレンガ13の側面を示す。図2の右図はウェアレンガ13の上面を示す。幅の広い(図2の右図で162.5mm)側が、奥行方向で鉄皮11に近いように配置される。つまり、鉄皮11の側が大きく、炉内の側が小さくなるようなテーパがつけられている。ここで、炉内は、転炉などの容器内すなわち精錬容器1内を意味する。ウェアレンガ13は一般に-1%~+1%程度の公差を有している。つまり、ウェアレンガ13は設計値との-1%~+1%程度の違いが一般に許容されており、サイズに個体差がある。
【0026】
再び図1を参照すると、本実施形態において定型耐火物101は計測器16を利用して施工される。また、本実施形態のように、さらにロボット17が用いられてよい。
【0027】
計測器16は、炉内の3次元形状を計測する。例えば、鉄皮11の溶接ビードの位置と突起の大きさが計測されて、当該部位に施工する定型耐火物101が、鉄皮11の表面形状を基に加工される。これにより、定型耐火物101の加工待ち時間をなくすことができる。炉内の3次元形状の計測には、配置前の定型耐火物101の3次元形状の計測が含まれてよい。炉内の3次元形状の計測を、炉内計測と称することがある。炉内計測は、精錬容器1内の計測(容器内計測)の一例である。設定されたタイミングで炉内計測が実行され、炉内計測で得られた3次元計測データに基づいて1つの段に生じる隙間(図3のS参照)の形状が算出されるが、詳細については後述する。
【0028】
計測器16は光学式又は接触式などの3次元形状を計測できる機器で実現される。計測器16は一例としてレーザースキャナーであってよい。また、操作者がロボット17を遠隔から操作する場合に、計測器16からの視覚情報(例えば画像)を参考に操作できるように、カメラなどを含んで構成されてよい。計測器16の計測方式は、複数台のカメラを用いて撮影するステレオ方式、反射光が戻ってくる時間を計算するToF方式、光の干渉を利用した構造化照明による方式などから選ぶことができる。
【0029】
ロボット17は定型耐火物101の施工手段を備える。ロボット17は例えばロボットアームであるが、ロボットアームに限定されない。また施工手段は、特に限定されるものでなく、定型耐火物101を把持し、定型耐火物101を設置して、定型耐火物101に不定型耐火物14を塗布し、定型耐火物101に圧力を加えることができる手段であればよい。
【0030】
ロボット17は、例えば6軸の垂直多関節ロボットであってよい。ロボットハンド(施工手段の一例)として、2本掴み把持ハンド又は6点式吸着ハンドが用いられてよい。定型耐火物101を把持する場合に、定型耐火物101が損傷しないように、指部にゴム製のパッキン等が使用されてよい。ロボット17のサイズは、精錬容器1のサイズ及び把持する定型耐火物101の重量に合わせて選定すればよい。
【0031】
ロボット17は、例えば機側の操作者によってコントローラーで操作されるものであってよいし、遠隔操作システムの一部又は全部であってよい。例えばロボット17は、操作者によって操られるマスターロボットと、作業対象物に対して所定の作業を行うスレーブロボットからなるマスタースレーブシステムの一部又は全部であってよい。またスレーブロボットは、定型耐火物101を施工する際に生じる反力を知覚する機能があってよい。スレーブロボットが知覚した反力に応じて反力指令値を出力し、マスターロボットが反力指令値に基づいて操作者に知覚させる反力を生成してよい。
【0032】
ロボット17は、定型耐火物101についての位置、速度、力の制御目標値を任意の割合で合成してモーターを制御する制御手段を備えていてよい。制御手段はプロセッサなどの演算装置で実現されてよい。このようにモーターを制御することで、レンガを施工する際のレンガ破損を防止することができる。また、熟練の築炉工のような細やかな動きを再現することができる。例えば、ロボット17は、施工手段の一部としてハンマーを備えてよい。ロボット17は、ハンマーを用いてレンガの上面及び側面をたたくことで、レンガの位置を微調整できる機能を有していてよい。
【0033】
図3は、本実施形態に係る耐火物の築造方法による施工を説明するための模式図である。精錬容器1において定型耐火物101を1つの方向(高さ方向)に複数段に積んで築造するが、図3はそのうちの1つの段においてウェアレンガ13(定型耐火物101の一具体例)が並べられる様子を示す。耐火物を複数段に積み上げる施工方法では、従来、最終的な隙間(図3のS参照)を人手で巻き尺などによって測定していた。本実施形態に係る耐火物の築造方法では、炉内の3次元形状を計測した3次元計測データに基づいて、1つの段に生じる隙間の形状を算出する。そして、算出された隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物15(いわゆるセメレンガ)が加工されて、定型耐火物101の施工終了後に隙間に挿入される。最終調整用耐火物15の挿入によって、隙間を埋めると共に、円周方向で定型耐火物101がゆるまないようにできる。本実施形態に係る耐火物の築造方法では、計測器16によって計測された3次元計測データに基づいて最終調整用耐火物15が加工されるため、測定誤差が生じにくく、高精度な加工が可能である。また、測定誤差又は伝達時の聞き間違いによる最終調整用耐火物15の再加工なども生じないため、施工時間を短縮することができる。
【0034】
ここで、炉内計測は、定型耐火物101の施工開始前、定型耐火物101の施工開始から施工終了までの間、定型耐火物101の施工終了後のうち少なくとも1つにおいて実行される。定型耐火物101の施工開始とは、1つの段において1つ目の定型耐火物101が配置されることである。また、定型耐火物101の施工終了とは、1つの段において全ての定型耐火物101が配置されて、最終調整用耐火物15の配置を待つ状態になることである。本実施形態に係る耐火物の築造方法において、隙間の形状の算出は、定型耐火物101の施工終了まで待ってよいが、その前に測定された3次元計測データに基づいて計算されてよい。隙間の形状の算出が早まることによって、最終調整用耐火物15の加工を早くに開始することができ、施工時間を短縮する効果を高めることができる。ここで、隙間の形状の算出において、施工される前の(配置前の)定型耐火物101のサイズについては、設計値が用いられてよいし、炉内に運び込まれている場合には炉内計測で得られた個々の定型耐火物101の実測値が用いられてよい。また、図3のPで示すように、鉄皮11側の変形などによって、定型耐火物101の配置がずれると隙間の形状に影響する。炉内計測によって、このような変形が把握されて、隙間の形状の算出に反映することができる。また、炉内計測は、複数回実行されてよい。この場合に、2回目以降の3次元計測データに基づいて算出された隙間の形状に合うように、加工された最終調整用耐火物15が微調整として再度加工されてよい。ここで、定型耐火物101の施工に関するデータの取得及び計算は、例えば計測器16と通信可能なコンピュータ又はロボット17の制御手段で実行されてよい。コンピュータで実行される場合に、計算結果がロボット17に出力されたり、ロボット17の操作者又は最終調整用耐火物15の加工者に示されたりしてよい。
【0035】
図4は、本実施形態に係る耐火物の築造方法の処理を示すフローチャートである。本実施形態において、定型耐火物101の施工に関するデータの取得及び計算は、施工で用いられる設備を管理するコンピュータで実行される。
【0036】
まず、炉内計測が実行されるタイミングを含む定型耐火物101の施工に関する設定が行われる(ステップS1)。設定は、例えば操作者が入力手段(例えばキーボード又はマウス)によってコンピュータに指示することで実行されてよい。また、施工が自動化されている場合に、設定は、コンピュータが設定済みのファイルを読み込むことで実行されてよい。
【0037】
炉内計測が、定型耐火物101の施工開始前に実行される必要がない場合に(ステップS2のNo)、ステップS6の処理に進む。炉内計測が、定型耐火物101の施工開始前に実行される設定である場合に(ステップS2のYes)、計測器16によって炉内の3次元形状が計測される(ステップS3)。コンピュータは3次元計測データに基づいて、1つの段に生じる隙間の形状を算出する(ステップS4)。算出された隙間に合うように、最終調整用耐火物15が加工される(ステップS5)。
【0038】
定型耐火物101の施工が開始される(ステップS6)。本実施形態において、ロボット17を用いて築造が行われる。
【0039】
炉内計測が、定型耐火物101の施工開始から施工終了までの間に実行される必要がない場合に(ステップS7のNo)、ステップS11の処理に進む。炉内計測が、定型耐火物101の施工開始から施工終了までの間に実行される設定である場合に(ステップS7のYes)、計測器16によって炉内の3次元形状が計測される(ステップS8)。コンピュータは3次元計測データに基づいて、1つの段に生じる隙間の形状を算出する(ステップS9)。算出された隙間に合うように、最終調整用耐火物15が加工される(ステップS10)。ここで、既に最終調整用耐火物15の加工が行われている場合に、ステップS10は微調整としての再加工であってよい。
【0040】
その後、定型耐火物101の施工が終了する(ステップS11)。すなわち、1つの段において、最終調整用耐火物15を除いて、定型耐火物101は施工済みの状態になる。
【0041】
炉内計測が、定型耐火物101の施工終了後に実行される必要がない場合に(ステップS12のNo)、ステップS16の処理に進む。炉内計測が、定型耐火物101の施工終了後に実行される設定である場合に(ステップS12のYes)、計測器16によって炉内の3次元形状が計測される(ステップS13)。コンピュータは3次元計測データに基づいて、1つの段に生じる隙間の形状を算出する(ステップS14)。算出された隙間に合うように、最終調整用耐火物15が加工される(ステップS15)。ここで、既に最終調整用耐火物15の加工が行われている場合に、ステップS15は微調整としての再加工であってよい。
【0042】
そして、最終調整用耐火物15が隙間に配置される(ステップS16)。このような一連の処理が、各段において実行される。
【0043】
以下、図4のフローチャートにおける分岐(すなわちステップS2、S7及びS12のYes又はNo)のいくつかの組み合わせを実施例として説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1では、炉内計測が、定型耐火物101の施工終了後に実行され、算出された隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物15が加工される。定型耐火物101の施工終了とは、上記のように、1つの段において全ての定型耐火物101が配置されて、最終調整用耐火物15の配置を待つ状態になることである。したがって、計測器16は、最終的に発生する隙間をより正確に計測できる。従来手法のように測定者の技量に頼ることがなく、高精度かつ短時間での測定が可能である。そのため、最終調整用耐火物15の加工精度が向上し、再加工のための追加所要時間の発生を回避することができる。
【0045】
実施例2では、炉内計測が、定型耐火物101の施工開始から施工終了までの間に実行され、算出された隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物15が加工される。定型耐火物101の施工開始とは、上記のように、1つの段において1つ目の定型耐火物101が配置されることである。最終的に発生する隙間を待たずに、予測としての隙間の形状が算出される。算出される隙間の形状の精度は実施例1の場合に及ばないが、最終調整用耐火物15の加工の開始を早めることができる。すなわち、施工時間のさらなる短縮が可能である。炉内計測の実行が施工終了に近いほど、隙間の形状の推定精度が高くなる。一方で、炉内計測の実行が施工開始に近いほど、施工時間の短縮の効果が高くなる。そのため、求められる施工時間の短縮の程度に応じて、炉内計測を実行するタイミングが定められてよい。
【0046】
実施例3では、炉内計測が、定型耐火物101の施工開始前に実行され、算出された隙間の形状に基づいて最終調整用耐火物15が加工される。算出される隙間の形状の精度は低下するが、最終調整用耐火物15の加工の開始をさらに早めることができる。すなわち、施工時間を大きく短縮することが可能である。
【0047】
実施例4では、炉内計測が、定型耐火物101の施工開始前及び定型耐火物101の施工開始から施工終了までの間に実行される。定型耐火物101の施工開始前の炉内計測で得られた3次元計測データに基づく隙間の形状に基づいて、最終調整用耐火物15が加工される。そして、定型耐火物101の施工開始から施工終了までの間の炉内計測で得られた3次元計測データに基づく隙間の形状に基づいて、微調整として最終調整用耐火物15が加工される。より高い推定精度の隙間の形状を得てから最終調整用耐火物15を微調整することによって、最終的な最終調整用耐火物15の加工の精度をより高めることができる。また、最終調整用耐火物15の加工の開始を早めることができ、施工時間の短縮が可能である。
【0048】
実施例5では、炉内計測が、定型耐火物101の施工開始から施工終了までの間及び定型耐火物101の施工終了後に実行される。定型耐火物101の施工開始から施工終了までの間の炉内計測で得られた3次元計測データに基づく隙間の形状に基づいて、最終調整用耐火物15が加工される。そして、定型耐火物101の施工終了後の炉内計測で得られた3次元計測データに基づく隙間の形状に基づいて、微調整として最終調整用耐火物15が加工される。より高い推定精度の隙間の形状を得てから最終調整用耐火物15を微調整することによって、最終的な最終調整用耐火物15の加工の精度をより高めることができる。
【0049】
実施例6では、炉内計測が、定型耐火物101の施工開始前及び定型耐火物101の施工終了後に実行される。定型耐火物101の施工開始前の炉内計測で得られた3次元計測データに基づく隙間の形状に基づいて、最終調整用耐火物15が加工される。そして、定型耐火物101の施工終了後の炉内計測で得られた3次元計測データに基づく隙間の形状に基づいて、微調整として最終調整用耐火物15が加工される。より高い推定精度の隙間の形状を得てから最終調整用耐火物15を微調整することによって、最終的な最終調整用耐火物15の加工の精度をより高めることができる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る耐火物の築造方法は、炉内の3次元形状を計測した3次元計測データを用いるため、従来の直尺、角度直尺、巻き尺などによる手動の1次元計測データを用いた手法に比べて誤差が発生しにくい。そのため、最終調整用耐火物15の高精度な加工が可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る耐火物の築造方法はロボット17による連続自動施工などの自動化に適している。従来の手法では、炉内の隙間を手動で計測するため作業者の立ち入りが必要であった。本実施形態に係る耐火物の築造方法では、計測器16によって3次元形状データを自動的に測定することができる。また、自動化によって施工時間を短縮することができる。また、炉内への作業者の出入りが不要となるため、作業スペース及び移動スペースが不要となり、設備配置の自由度が向上する。
【0052】
また、上記のように、ロボット17が、操作者によって操られるマスターロボットと、作業対象物に対して所定の作業を行うスレーブロボットからなるマスタースレーブシステムの一部又は全部であって、操作者に反力を知覚させる構成であってよい。力情報が双方向に伝達されるため、操作者は、遠隔でありながら、炉内で築炉工として作業する場合と同等の力加減で施工が可能である。
【0053】
また、本実施形態に係る耐火物の築造方法において最終調整用耐火物15の加工が実施される場所は限定されないが、切断及び研削などが可能な最終調整用耐火物15の加工設備が炉内にあってよい。この場合に、加工の待ち時間がなく、加工後の最終調整用耐火物15の搬入が不要となり、施工時間の短縮効果が高まる。
【0054】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0055】
1 精錬容器
11 鉄皮
12 パーマレンガ(permanent brick)
13 ウェアレンガ(wear brick)
14 不定型耐火物
15 最終調整用耐火物
16 計測器
17 ロボット
101 定型耐火物
図1
図2
図3
図4