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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070216
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】乗り物用表皮材及び乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
   B62J 1/12 20060101AFI20240515BHJP
   B62J 33/00 20060101ALI20240515BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240515BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20240515BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B62J1/12 A
B62J33/00 C
B60N2/90
A47C31/02 B
B68G7/05 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147639
(22)【出願日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】63/424,237
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/497,465
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 一泰
(72)【発明者】
【氏名】若尾 剣志郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓馬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】従来よりも防水性能を高めることが可能な乗り物用表皮材を提供する。
【解決手段】乗り物用表皮材20は、第1表皮材30と、第1表皮材に接続される第2表皮材40と、第1表皮材及び第2表皮材を接続する表皮接続部22に沿って延びて、表皮接続部を裏面側から覆うシート状の防水部材60と、を備えている。防水部材60は、第1表皮材30の裏面材30aに含浸する第1含浸部64と、第2表皮材40の裏面材40aに含浸する第2含浸部65と、を有している。防水部材60は、第1含浸部64によって第1表皮材に取り付けられ、第2含浸部65によって第2表皮材に取り付けられる。第1含浸部64及び第2含浸部65は、表皮接続部22を間に挟む位置に配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物に用いられる乗り物用表皮材であって、
第1の表皮材と、
前記第1の表皮材に接続される第2の表皮材と、
前記第1の表皮材及び前記第2の表皮材を接続する表皮接続部に沿って延びて、前記表皮接続部を前記乗り物用表皮材の裏面側から覆うシート状の防水部材と、を備え、
前記防水部材は、前記第1の表皮材の裏面材に含浸する第1含浸部と、前記第2の表皮材の裏面材に含浸する第2含浸部と、を有し、
前記防水部材は、前記第1含浸部によって前記第1の表皮材に取り付けられ、前記第2含浸部によって前記第2の表皮材に取り付けられ、
前記第1含浸部及び前記第2含浸部は、前記表皮接続部を間に挟む位置に配置されることを特徴とする乗り物用表皮材。
【請求項2】
前記防水部材は、
前記表皮接続部の裏面に当接する防水本体部と、
前記防水部材の幅方向の一端部に設けられ、前記第1の表皮材の裏面に当接する第1端部と、
前記防水部材の幅方向の他端部に設けられ、前記第2の表皮材の裏面に当接する第2端部と、を有し、
前記第1含浸部は、前記防水本体部と前記第1端部の境界部分に少なくとも形成され、
前記第2含浸部は、前記防水本体部と前記第2端部の境界部分に少なくとも形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗り物用表皮材。
【請求項3】
前記表皮接続部は、前記乗り物用表皮材の裏面側において前記第2の表皮材側に折り返されて配置され、折り返された状態で縫合部によって取り付けられ、
前記第2含浸部は、折り返された前記第2の表皮材の前記裏面材を通じて、前記防水本体部と前記第2端部の境界部分から前記縫合部に向かって延びていることを特徴とする請求項2に記載の乗り物用表皮材。
【請求項4】
前記表皮接続部は、前記乗り物用表皮材の裏面側において前記第2の表皮材側に折り返されて配置され、折り返された状態で縫合部によって取り付けられ、
前記縫合部は、前記表皮接続部に沿って延びており、
前記第1含浸部及び前記第2含浸部は、前記縫合部に沿って延びていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗り物用表皮材。
【請求項5】
前記防水部材は、前記第1含浸部と、前記第2含浸部と、前記表皮接続部の裏面材に含浸し、前記第1含浸部及び前記第2含浸部に連続して形成される第3含浸部と、を有し、
前記第1含浸部、前記第2含浸部及び前記第3含浸部は、前記縫合部に沿って連続して延びていることを特徴とする請求項4に記載の乗り物用表皮材。
【請求項6】
前記表皮接続部を構成する前記第1の表皮材の第1表皮接続部と、前記第2の表皮材の第2表皮接続部との間に取り付けられ、前記乗り物用表皮材の表面に露出する加飾部材を備え、
前記防水部材は、前記第1含浸部と、前記第2含浸部と、前記表皮接続部の裏面材に含浸する第3含浸部と、を有し、
前記第3含浸部の一部は、前記加飾部材の端部に対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗り物用表皮材。
【請求項7】
請求項1に記載の乗り物用表皮材を備えた乗り物用シートであって、
前記乗り物用表皮材によって被覆されるパッド材を備え、
前記表皮接続部及び前記防水部材は、前記パッド材の表面に形成されたパッド凹部に収容されることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項8】
前記防水部材は、
前記表皮接続部の裏面に当接する防水本体部と、
前記防水部材の幅方向の一端部に設けられ、前記第1の表皮材の裏面に当接する第1端部と、
前記防水部材の幅方向の他端部に設けられ、前記第2の表皮材の裏面に当接する第2端部と、を有し、
前記第1端部、前記第2端部は、それぞれ前記パッド材の表面に当接することを特徴とする請求項7に記載の乗り物用シート。
【請求項9】
ボトムプレートと、
前記ボトムプレート上に配置される前記パッド材と、
前記ボトムプレート及び前記パッド材を被覆する前記乗り物用表皮材と、を備え、
前記ボトムプレートの表面には、複数の貫通孔が形成され、
前記表皮接続部の少なくとも一部は、前記乗り物用シートの上面視において前記ボトムプレートの前記貫通孔と重なる位置に配置されることを特徴とする請求項7又は8に記載の乗り物用シート。
【請求項10】
前記パッド材及び前記乗り物用表皮材の間に配置されるシートヒータを備え、
前記シートヒータは、前記乗り物用表皮材の表面において前記防水部材とは異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用表皮材及び乗り物用シートに係り、特に、乗り物に用いられる乗り物用表皮材及び乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボトムプレートと、ボトムプレート上に載置されたパッド材と、ボトムプレート及びパッド材を被覆する表皮材と、を備えた鞍乗り型の乗り物用シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の乗り物用シートは、風雨又は雪に晒される自動二輪車用のシートである。そのため、表皮材がポリ塩化ビニル等の耐水性を有する樹脂材料から形成されている。また、表皮材を構成する第1の表皮材及び第2の表皮材の表皮接続部から水漏れを防ぐために、表皮接続部の裏面にシート状の防水部材(防水テープ)が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60-55589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような乗り物用シートにおいて防水性能をより高めることが求められていた。
例えば、表皮材を構成する第1の表皮材及び第2の表皮材の表皮接続部に防水部材(防水テープ)を取り付けた場合であっても、表皮接続部の隙間から水が浸入し、表皮材の裏面材(基布)を通じて水が伝ってパッド材に漏れ出てしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、従来よりも防水性能を高めることが可能な乗り物用表皮材及び乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗り物用表皮材によれば、乗り物に用いられる乗り物用表皮材であって、第1の表皮材と、前記第1の表皮材に一部重ねられた状態で取り付けられる第2の表皮材と、前記第1の表皮材及び前記第2の表皮材が重なる表皮接続部に沿って延びて、前記表皮接続部を前記乗り物用表皮材の裏面側から覆うシート状の防水部材と、を備え、前記防水部材は、前記第1の表皮材の裏面材に含浸する第1含浸部と、前記第2の表皮材の裏面材に含浸する第2含浸部と、を有し、前記防水部材は、前記第1含浸部によって前記第1の表皮材に取り付けられ、前記第2含浸部によって前記第2の表皮材に取り付けられ、前記第1含浸部及び前記第2含浸部は、前記表皮接続部を間に挟む位置に配置されること、によって解決される。
【0007】
上記構成により、従来よりも防水性能を高めることが可能な乗り物用表皮材を実現できる。
詳しく述べると、上記乗り物用表皮材では、防水部材が、第1の表皮材の裏面材に含浸する第1含浸部と、第2の表皮材の裏面材に含浸する第2含浸部とを有し、第1含浸部によって第1の表皮材に取り付けられ、第2含浸部によって第2の表皮材に取り付けられている。そして、第1含浸部及び第2含浸部は、表皮接続部を間に挟む位置に配置されている。そのため、表皮接続部の隙間から水が浸入し、表皮材の裏面材(例えば基布)を通じて水が伝った場合であっても、第1含浸部、第2含浸部によって水の浸入を抑制することができる。すなわち、表皮接続部を挟む位置にある第1含浸部、第2含浸部によって、表皮接続部から浸入した水を封じ込めることができる。
【0008】
このとき、前記防水部材は、前記表皮接続部の裏面に当接する防水本体部と、前記防水部材の幅方向の一端部に設けられ、前記第1の表皮材の裏面に当接する第1端部と、前記防水部材の幅方向の他端部に設けられ、前記第2の表皮材の裏面に当接する第2端部と、を有し、前記第1含浸部は、前記防水本体部と前記第1端部の境界部分に少なくとも形成され、前記第2含浸部は、前記防水本体部と前記第2端部の境界部分に少なくとも形成されていると良い。
上記のように、第1含浸部が、防水本体部と第1端部の境界部分に少なくとも形成され、第2含浸部が、防水本体部と第2端部の境界部分に少なくとも形成されるため、上記境界部分において表皮接続部から浸入した水を止めることができる。すなわち、表皮接続部から浸入した水がパッド材に漏れ出てしまうことを好適に抑制できる。
【0009】
このとき、前記表皮接続部は、前記乗り物用表皮材の裏面側において前記第2の表皮材側に折り返されて配置され、折り返された状態で縫合部によって取り付けられ、前記第2含浸部は、折り返された前記第2の表皮材の前記裏面材を通じて、前記防水本体部と前記第2端部の境界部分から前記縫合部に向かって延びていると良い。
上記構成により、表皮接続部から縫合部を通じて水が浸入し、裏面材を伝ってパッド材に漏れ出てしまうことを好適に抑制できる。
【0010】
このとき、前記表皮接続部は、前記乗り物用表皮材の裏面側において前記第2の表皮材側に折り返されて配置され、折り返された状態で縫合部によって取り付けられ、前記縫合部は、前記表皮接続部に沿って延びており、前記第1含浸部及び前記第2含浸部は、前記縫合部に沿って延びていると良い。
上記構成により、縫合部を通じて浸入した水を好適に止めることができる。
【0011】
このとき、前記防水部材は、前記第1含浸部と、前記第2含浸部と、前記表皮接続部の裏面材に含浸し、前記第1含浸部及び前記第2含浸部に連続して形成される第3含浸部と、を有し、前記第1含浸部、前記第2含浸部及び前記第3含浸部は、前記縫合部に沿って連続して延びていると良い。
上記構成により、防水部材による防水性能をより高めることができる。また、縫合部を通じて浸入した水を好適に止めることができる。
【0012】
このとき、前記表皮接続部を構成する前記第1の表皮材の第1表皮接続部と、前記第2の表皮材の第2表皮接続部との間に取り付けられ、前記乗り物用表皮材の表面に露出する加飾部材を備え、前記防水部材は、前記第1含浸部と、前記第2含浸部と、前記表皮接続部の裏面材に含浸する第3含浸部と、を有し、前記第3含浸部の一部は、前記加飾部材の端部に対向する位置に設けられていると良い。
上記構成により、加飾部材を好適に取り付けることができる。また、第3含浸部によって第1の表皮材(第2の表皮材)と加飾部材の間の隙間から浸入した水を好適に止めることができる。
【0013】
このとき、上記乗り物用表皮材を備えた乗り物用シートであって、前記乗り物用表皮材によって被覆されるパッド材を備え、前記表皮接続部及び前記防水部材は、前記パッド材の表面に形成されたパッド凹部に収容されると良い。
上記構成により、表皮材のうち表皮接続部が浮き上がることを抑制でき、表皮材の意匠性の低下を抑制できる。また、乗り物用シートの大型化を抑制することもできる。
また上記構成により、着座荷重によって表皮接続部に加わる圧力を緩和することができる。つまりは、縫合部や防水部材に対する圧力や摩耗等のストレスを緩和させ、材料の耐久性を向上できる。また防水性能を高めることもできる。
【0014】
このとき、前記防水部材は、前記表皮接続部の裏面に当接する防水本体部と、前記防水部材の幅方向の一端部に設けられ、前記第1の表皮材の裏面に当接する第1端部と、前記防水部材の幅方向の他端部に設けられ、前記第2の表皮材の裏面に当接する第2端部と、を有し、前記第1端部、前記第2端部は、それぞれ前記パッド材の表面に当接すると良い。
上記構成により、パッド材及び表皮材の間に挟まれた状態で防水部材を好適に取り付けることができる。また、防水部材の剥がれを抑制することができる。
【0015】
このとき、ボトムプレートと、前記ボトムプレート上に配置される前記パッド材と、前記ボトムプレート及び前記パッド材を被覆する前記乗り物用表皮材と、を備え、前記ボトムプレートの表面には、複数の貫通孔が形成され、前記表皮接続部の少なくとも一部は、前記乗り物用シートの上面視において前記ボトムプレートの前記貫通孔と重なる位置に配置されると良い。
上記構成により、着座者による荷重を貫通孔によって逃がすことができ(分散させることができ)、防水部材に加わる荷重を減らすことができる。そのため、防水部材の劣化を抑制することができる。
【0016】
このとき、前記パッド材及び前記乗り物用表皮材の間に配置されるシートヒータを備え、前記シートヒータは、前記乗り物用表皮材の表面において前記防水部材とは異なる位置に配置されていると良い。
上記構成により、シートヒータの熱によって防水部材の含浸部が影響を受けることを抑制できる。例えば、防水部材の接着力の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来よりも防水性能を高めることが可能な乗り物用表皮材を実現できる。具体的には、表皮接続部の隙間から水が浸入し、表皮材の裏面材を通じて水が伝った場合であっても、第1含浸部、第2含浸部によって水の浸入を抑制できる。
また本発明によれば、表皮接続部から浸入した水がパッド材に漏れ出てしまうことを好適に抑制できる。
また本発明によれば、表皮接続部から縫合部を通じて水が浸入し、裏面材を伝ってパッド材に漏れ出てしまうことを好適に抑制できる。
また本発明によれば、防水部材による防水性能をより高めることができる。また、縫合部を通じて浸入した水を好適に止めることができる。
また本発明によれば、加飾部材を好適に取り付けることができる。また、第3含浸部によって第1の表皮材(第2の表皮材)と加飾部材の間の隙間から浸入した水を好適に止めることができる。
また本発明によれば、表皮材のうち表皮接続部が浮き上がることを抑制でき、表皮材の意匠性の低下を抑制できる。また、乗り物用シートの大型化を抑制できる。また着座荷重によって表皮接続部に加わる圧力を緩和できる。
また本発明によれば、パッド材及び表皮材の間に挟まれた状態で防水部材を好適に取り付けることができる。また、防水部材の剥がれを抑制できる。
また本発明によれば、着座者による荷重を貫通孔によって逃がすことができる。そのため、防水部材に加わる荷重を減らし、防水部材の劣化を抑制できる。
また本発明によれば、シートヒータの熱によって防水部材の含浸部が影響を受けることを抑制できる(防水部材の接着力の低下を抑制できる)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の乗り物用シートの斜視図である。
図2図1のII-II断面図であって、ボトムプレート、パッド材、表皮材及び防水部材を示す図である。
図3図2の要部拡大図であって、表皮接続部、防水部材を示す図である。
図4図2の要部拡大図であって、表皮接続部、防水部材及びボトムプレートの位置関係を示す図である。
図5】第2実施形態の乗り物用シートであって、表皮接続部、防水部材の要部拡大図である。
図6】第3実施形態の乗り物用シートであって、表皮接続部、防水部材、加飾部材の要部拡大図である。
図7】第4実施形態の乗り物用シートの斜視図である。
図8】第5実施形態の乗り物用シートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図1図8を参照して説明する。
本実施形態は、従来よりも防水性能を高めることが可能な「乗り物用表皮材」に関するものである。また、乗り物用表皮材を備えた「乗り物用シート」に関するものである。
なお、乗り物用シートに対して乗り物のハンドルが配置される側がシート前方側(前方側)となる。
【0020】
第1実施形態の乗り物用シートS1は、図1図4に示すように、自動二輪車の着座部を構成するシートであって、日光に直接曝されたり、風雨又は雪に直接曝されたりする鞍乗り型のシートである。以下、乗り物用シートS1を単にシートS1とも称する。
乗り物用シートS1は、車体上に取り付けられ、ベース基板となるボトムプレート1と、ボトムプレート1上に載置されるパッド材10と、ボトムプレート1及びパッド材10を被覆する表皮材20(第1表皮材30、第2表皮材40)と、第1表皮材30及び第2表皮材40を一部重ねた状態で取り付ける縫合部50と、表皮材20の裏面に取り付けられるシート状の防水部材60と、を備えている。
なお、乗り物用シートS1では、図2に示すように、表皮材20の端末部をボトムプレート1の裏面に取り付けることで表皮端末処理が行われている。当該表皮端末処理として、具体的にはタッカー針等の取り付け部材4が用いられる。
【0021】
ボトムプレート1は、図2に示すように、シート前後方向に長尺なプレートであって、車体の外形に合わせて湾曲形状に形成されたシートS1のベース基板である。
具体的には、ボトムプレート1は、その本体部分となるプレート本体部2と、プレート本体部2の外周部分を斜め下方に屈曲させたフランジ部分となるプレート外周部3と、から主に構成されている。
【0022】
ボトムプレート1は、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂材料を原材料とする合成樹脂成形品として形成されている。
なお、ボトムプレート1は、上記樹脂材料に限定されるものではなく、種々の材料から形成されても良い。例えば、ガラス繊維強化ポリプロピレン(GFPP)等の曲げ弾性率が比較的高い樹脂材料を原材料としても良い。
ボトムプレート1の表面には、図2図4に示すように、上下方向に貫通した複数の貫通孔5が形成されている。貫通孔5は、シートS1の通気性を確保するための通気孔であって、空気逃がし孔とも称される。
【0023】
パッド材10は、図1図4に示すように、発泡ウレタン等を用いた弾性部材からなり、シート前後方向に長尺なクッションパッドであって、ボトムプレート1の外形よりもやや大きく形成されている。
具体的には、パッド材10は、その本体部分となるパッド本体部11と、パッド本体部11の外周部分から張り出して、ボトムプレート1のプレート外周部3の表面に沿わせて延びているパッド張り出し部12と、を有している。
パッド張り出し部12は、図2に示すように、ボトムプレート1を略全周にわたって外側から囲むように設けられている。
【0024】
パッド材10の表面のうち、第1表皮材30及び第2表皮材40を接続する表皮接続部22に対向する部分には、パッド材10の裏面側に窪むパッド凹部13が形成されている。パッド凹部13には、表皮接続部22が収容される。
パッド凹部13を有することで、表皮材20のうち表皮接続部22が浮き上がることを抑制でき、表皮材20の意匠性の低下を抑制できる。
またパッド凹部13を有することで、着座荷重によって表皮接続部22に加わる圧力を緩和することができる。つまりは、縫合部50や防水部材60に対する圧力や摩耗等のストレスを緩和させ、材料の耐久性を向上できる。防水性能を高めることもできる。
乗り物用シートS1のうち、乗員が着座する着座部に相当する部分については、凹部形状を大きく設定すると良い。他方で、着座部に相当しない部分については、凹部形状をやや小さく設定すると良い。そうすることで、表皮接続部22に対する着座時の違和感を低下させることができる。
なお、パッド材10にパッド凹部13を必ずしも形成しなくても良い。その場合には、パッド材10の生産性を向上できる。
【0025】
表皮材20は、図1図4に示すように、シートS1の外観を構成する被覆材であって、ポリ塩化ビニル(PVC)系レザー等を用いた被覆材からなり、例えば布地の表面に軟質ポリ塩化ビニル層を貼り合わせて形成されている。
具体的には、表皮材20は、被覆材からなる表面材20aと、表面材20aの裏面に貼り合わされ、布地からなる裏面材20bと、を有している。
裏面材20bの一部(具体的には、裏面材20bのうち、防水部材60が取り付けられる部分)には、防水部材60の接着層60bが含浸することで含浸部64、65、66(含浸接着部)が形成される。
【0026】
表皮材20(表面材20a)の材料としてポリ塩化ビニル系レザー等を採用することで、直接風雨に曝される自動二輪車用の表皮材として好適な材料となる。
また、表面材20aを比較的伸び難い材料から形成することで、シート表面の意匠を確保しながら(皺や緩みを発生させないようにしながら)、表面材20aの取り付け強度を確保することができる。
【0027】
表皮材20は、シートS1の上面を構成する第1表皮材30と、シートS1の上面及び側面を構成する第2表皮材40と、シートS1の側面の下方部分及び底面を構成する第3表皮材45と、シートS1の前方の両側面を構成する第4表皮材46と、を備えている。
言い換えれば、表皮材20は、第1表皮片(第1表皮材30)と、第2表皮片(第2表皮材40)と、第3表皮片(第3表皮材45)と、第4表皮片(第4表皮材)と、から主に構成されているとも言える。
なお、表皮材20は、2枚の表皮材(第1表皮材30、第2表皮材40)から構成されても良いし、3枚以上の表皮材から構成されても良い。
【0028】
第1表皮材30は、その本体部分となる第1表皮本体31と、第1表皮本体31の端部に設けられ、第2表皮材40と重ねられる第1表皮接続部32と、を有している。
第1表皮接続部32は、第1表皮端末部と称されても良い。
【0029】
第2表皮材40は、その本体部分となる第2表皮本体41と、第2表皮本体41の端部に設けられ、第1表皮接続部32と重ねられる第2表皮接続部42と、を有している。
第2表皮接続部42は、第2表皮端末部と称されても良い。
第3表皮材45、第4表皮材46についても同様の構成となっている。具体的には、図1に示すように、第3表皮材45、第4表皮材46は、第2表皮材40と一部重ねられた状態で取り付けられている。
【0030】
第1表皮材30は、図2図3に示すように第2表皮材40と一部重ねられた状態で縫合部50によって取り付けられる。
具体的には、表皮接続部22(第1表皮接続部32及び第2表皮接続部42)は、表皮材20の裏面側において第2表皮材40側に折り返されている。そして、第1表皮接続部32と第2表皮接続部42が、縫合部50によって縫合されている。表皮接続部22は、表皮重なり部と称されても良い。
第1表皮接続部32は、表皮材20の厚さ方向において第2表皮接続部42よりも裏面側に配置されている。
【0031】
縫合部50は、図2図3に示すように、第1表皮接続部32及び第2表皮接続部42を縫合する第1縫合部51と、第1表皮接続部32、第2表皮接続部42及び第2表皮本体41を縫合する第2縫合部52と、を有している。
なお、図1に示すように、表皮材20の表面には、第1表皮材30、第2表皮材40を縫合することで縫合ライン53が形成されている。縫合ライン53は、表皮接続部22に沿って長尺に延びている。
【0032】
縫合部50は、図3に示すように、シングルステッチであると良いが、特に限定されず、種々の縫製仕様を採用することができる。
具体的には、合わせ縫い(地縫い)、ダブルステッチ、片側ダブルステッチ、ダミーダブルステッチ、刺繍等の縫製仕様であっても良い。
【0033】
防水部材60は、図2図4に示すように、例えば防水テープであって、表皮接続部22(第1表皮接続部32、第2表皮接続部42)に沿って長尺に延びて、表皮接続部22を裏面側から覆うように取り付けられる。
防水部材60は、ポリウレタン樹脂等から形成され、伸縮性を有する基材60a(耐水基材、防水基材)と、基材60a上に設けられ、接着性を有する接着層60bと、を有している。
【0034】
基材60aは、ポリウレタン樹脂から形成されると良い。ポリウレタン樹脂を採用することで、基材60aの伸縮性が高まり、表皮材20に対する追従性を高めることができる。例えば、ポリウレタン樹脂からなる基材60aの伸び率は、常温で500%以上となる。
基材60aは、ポリウレタン樹脂のほか、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)等であっても良い。すなわち、基材60aの伸び率が常温で500%以上となれば、種々の樹脂材料を採用することができる。このとき、基材60aの強度が、80℃のときに1.0N/mm以上であると好ましい。そうすることで、防水部材が破れにくいものとなる。
【0035】
接着層60bは、含浸タイプやフィルムタイプ等の接着層であって、含浸タイプの接着層であると良い。接着層60bの厚さは70~120μmであると良く、表皮材20の防水性能を良好に高めることができる。接着層60bの粘度は、130℃のときに0~149Pa・Sであると良く、好ましくは20~40Pa・Sであると良い。そうすることで、表皮材20の裏面材20b(基布)に接着層60bが含浸し易くなる。
なお、防水部材60(防水テープ)を取り付ける方法としては、例えば圧着装置を用いて行うと良い。具体的には、防水部材60に熱風を掛けて防水部材60の接着層60bを溶かし、表皮材20の裏面材20bに防水部材60を圧着させると良い。
【0036】
防水部材60は、図3に示すように、表皮接続部22の裏面に当接する防水本体部61と、防水部材60の幅方向の一端部に設けられ、第1表皮材30の裏面に当接する第1端部62と、防水部材60の幅方向の他端部に設けられ、第2表皮材40の裏面に当接する第2端部63と、を有している。
また、防水部材60は、第1表皮材30の裏面材30bに含浸する第1含浸部64と、第2表皮材40の裏面材40bに含浸する第2含浸部65と、表皮接続部22(第1表皮接続部32)の裏面材に含浸し、第1含浸部64及び第2含浸部65に連続して形成される第3含浸部66と、を有している。
含浸部64、65、66は、表皮材20(第1表皮材30、第2表皮材40)の裏面に防水部材60(接着層60b)を圧着させることで、裏面材20b(30b、40b)に含浸した状態となっている部分である。含浸部は、含浸接着部、含浸接着層とも称される。
含浸部64、65、66は、表皮材20(裏面材20b)の厚さ方向において裏面材20b全体に含浸し、さらに表面材20aの裏面まで到達するように含浸していると良い。あるいは、含浸部64、65、66の少なくとも一部が、表面材20aの裏面まで到達していると良い。含浸部64、65、66の一部が表面材20aまで到達し、表面材20aの一部に含浸していても良い。
【0037】
防水部材60は、第1含浸部64によって第1表皮材30に密着して取り付けられ、第2含浸部65によって第2表皮材40に密着して取り付けられている。
第1含浸部64及び第2含浸部65は、表皮接続部22を間に挟む位置に配置されている。第3含浸部66は、表皮接続部22の裏面全体を覆い、表皮接続部22に密着して取り付けられている。
つまりは、含浸部64、65、66が、表皮接続部22を囲むように配置されている。
【0038】
上記のように、第1表皮材30及び第2表皮材40の重なり部(継ぎ目)にシート状の防水部材60を貼り付けることで(溶着することで)、裏面材30b、40bの内部に接着層60bを含浸させることができ、パッド材10側に水が入り込むことを抑制できる。
詳しく述べると、裏面材30b、40bの内部に接着層60bが含浸することで、第1表皮材30及び第2表皮材40の隙間から水が浸入し、パッド材10に漏れ出てしまうことを抑制できる。また、毛細管現象により縫合部50を通じて水が浸入し、裏面材30b、40bを伝ってパッド材10に漏れ出てしまうことを抑制できる。
裏面材30b、40bに接着層60bが含浸すると、アンカー効果によって裏面材30b、40b及び接着層60bの結合度が高まる。また、表皮接続部22の結合度も高まる。そうすることで、シート状の防水部材60の幅や長さを極力小さくすることができる。また、縫合部50の径(糸の径)を小さくできる。
【0039】
上記構成において、図3に示すように、第1含浸部64は、防水本体部61と第1端部62の境界部分B1に少なくとも形成されると良い。また、第2含浸部65は、防水本体部61と第2端部63の境界部分B2に少なくとも形成されると良い。
そうすることで、上記境界部分B1、B2において表皮接続部22から浸入した水を止めることができる。すなわち、表皮接続部22から浸入した水がパッド材10に漏れ出てしまうことを好適に抑制できる。
【0040】
上記構成において、図3に示すように、第2含浸部65は、折り返された第2表皮材40の裏面材40bを通じて、防水本体部61と第2端部63の境界部分B2から縫合部50(第2縫合部52)に向かってさらに延びている。
そうすることで、表皮接続部22から縫合部50を通じて水が浸入し、裏面材40bを伝ってパッド材10に漏れ出てしまうことを好適に抑制できる。
【0041】
上記構成において、図3に示すように、第1含浸部64、第2含浸部65、第3含浸部66は、縫合部50(縫合ライン53)に沿って連続して延びている。すなわち、含浸部64、65、66は、直線的につながって延びている。
そうすることで、縫合部50を通じて浸入した水を好適に止めることができる。
【0042】
上記構成において、図3に示すように、防水部材60の第1端部62は、パッド材10の表面に当接する。第2端部63は、パッド材10の表面のうち、パッド凹部13に対して第1端部62側とは反対側の部分に当接する。
そうすることで、パッド材10及び表皮材20の間に挟まれた状態で防水部材60を好適に取り付けることができる。
【0043】
上記構成において、図4に示すように、表皮接続部22の少なくとも一部は、乗り物用シートS1の上面視においてボトムプレート1の貫通孔5と重なる位置に配置されている。
そうすることで、着座者による荷重を貫通孔5によって逃がすことができ(分散させることができ)、防水部材60に加わる荷重を減らすことができる。その結果、防水部材60の劣化を抑制できる。
【0044】
上記構成において、防水部材60は、例えば黒色の防水テープ、あるいは表皮材20と同じ色の防水テープであると良い。
そうすることで、従来は、表皮接続部22の隙間(継ぎ目)からパッド材10を露出させないようにバイアステープ(隙間を覆うテープ)を貼り付けていたところ、当該バイアステープを不要にすることができる。すなわち、上記色を有する防水部材60を採用することで、表皮材20の外観性を損なわずに、部品点数の削減(コストの削減)、乗り物用表皮材20の軽量化を果たすことができる。
【0045】
上記乗り物用シートS1、乗り物用表皮材20であれば、従来よりも防水性能を高めることができる。
具体的には、表皮材20(第1表皮材30及び第2表皮材40)の表皮接続部22に防水部材60(防水テープ)を取り付けた場合であっても、表皮接続部22の隙間から水が浸入し、裏面材20b(基布)を通じて水がパッド材10に漏れ出てしまうことを抑制できる。
【0046】
<第2実施形態、第3実施形態の乗り物用シート>
次に、第2実施形態、第3実施形態の乗り物用シートS2、S3について図5図6に基づいて説明する。
なお、上述した乗り物用シートS1と重複する内容は説明を省略する。
【0047】
乗り物用シートS2は、図5に示すように、パッド材110と、表皮材120(第1表皮材130、第2表皮材140)と、縫合部150と、防水部材160と、を備えている。
第1表皮材130は、第1表皮本体131と、第1表皮接続部132と、を有している。第2表皮材140は、第2表皮本体141と、第2表皮接続部142と、を有している。
第1表皮接続部132、第2表皮接続部142は、表皮材120の裏面側において第2表皮材140側に折り返されている。第1表皮接続部132は、表皮材120の厚さ方向において第2表皮接続部142よりも裏面側に配置されている。
【0048】
防水部材160は、表皮接続部122に沿って長尺に延びて、表皮接続部122を裏面側から覆うように取り付けられる。
防水部材160は、防水本体部161と、第1端部162と、第2端部163と、を有している。
また、防水部材160は、第1含浸部164と、第2含浸部165と、を有している。
第1含浸部164、第2含浸部165は、表皮接続部122を間に挟む位置に配置されている。
【0049】
第1含浸部164は、第1端部162と、防水本体部161及び第1端部162の境界部分B1とに形成されている。
第2含浸部165は、第2端部163と、防水本体部161及び第2端部163の境界部分B2とに形成されている。
なお、第1含浸部164は、第1端部162のみに形成されても良く、境界部分B1のみに形成されても良い。同様に、第2含浸部165は、第2端部163のみに形成されても良く、境界部分B2のみに形成されても良い。
【0050】
乗り物用シートS3は、図6に示すように、パッド材210と、表皮材220(第1表皮材230、第2表皮材240)と、縫合部250と、防水部材260と、加飾部材270と、を備えている。
【0051】
加飾部材270は、シートS3の表面に露出するようにして表皮材220に取り付けられる立体形状の部材であって、例えば玉縁である。
加飾部材270は、樹脂材料から形成されており、例えば耐水性及び弾性を有する樹脂材料(ゴム材料)から形成されている。
加飾部材270は、第1表皮材230の第1表皮接続部232と、第2表皮材240の第2表皮接続部242との間に取り付けられている。
上記構成により、加飾部材270を安定して取り付けることができる。
【0052】
防水部材260は、第1含浸部264と、第2含浸部265と、第3含浸部266と、を有している。第3含浸部266の一部は、図6に示すように、加飾部材270の端部に対向する位置に設けられている。
上記構成により、第3含浸部266によって第1表皮材230(第2表皮材240)と加飾部材270の間の隙間から浸入した水を好適に止めることができる。
【0053】
上記乗り物用シートS2、S3、乗り物用表皮材120、220であっても、従来よりも防水性能を高めることができる。
【0054】
<第4実施形態、第5実施形態の乗り物用シート>
次に、第4実施形態、第5実施形態の乗り物用シートS4、S5について図7図8に基づいて説明する。
なお、上述した乗り物用シートS1~S3と重複する内容は説明を省略する。
【0055】
乗り物用シートS4は、図7に示すように、自動二輪車用のシートであって、パッド材310と、表皮材320(第1表皮材330、第2表皮材340)と、縫合部350と、防水部材360と、シートヒータ370と、を備えている。
【0056】
シートヒータ370は、シートS4を暖める面状発熱体であって、シートS4の内部に取り付けられ、パッド材310及び表皮材320の間に配置されている。シートヒータ370は、表皮材320の裏面に取り付けられている。
シートヒータ370は、表皮材320の表面において表皮接続部322(縫合部350)とは異なる位置に配置されている。すなわち、シートヒータ370は、表皮接続部322の裏面に取り付けられる防水部材360とは異なる位置に配置されている。
上記構成により、シートヒータ370の熱によって防水部材360の含浸部が影響を受けることを抑制できる。例えば、防水部材360の接着力の低下を抑制できる。
【0057】
乗り物用シートS5は、図8に示すように、全地形対応車(バギー)等の屋外で使用されるシートである。
乗り物用シートS5は、パッド材410と、表皮材420(第1表皮材430、第2表皮材440)と、縫合部450と、防水部材460と、シートヒータ470と、を備えている。
シートヒータ470は、表皮材420の表面において表皮接続部422(縫合部450)とは異なる位置に配置されている。すなわち、シートヒータ470は、表皮接続部422の裏面に取り付けられる防水部材460とは異なる位置に配置されている。
【0058】
上記乗り物用シートS4、S5、乗り物用表皮材320、420であっても、従来よりも防水性能を高めることができる。
【0059】
<乗り物用シート、乗り物用表皮材の製造方法>
次に、乗り物用シートS1の製造方法について、図1図4に基づいて説明する。
なお、乗り物用シートS1の製造方法にあたって、下記以外の製造工程については説明を省略する。
【0060】
まずは、ボトムプレート1を準備し、ボトムプレート1上にパッド材10を配置する。そして、ボトムプレート1及びパッド材10を表皮材20によって被覆する。
表皮材20で被覆する工程では、第1表皮材30に第2表皮材40を一部重ねた状態で取り付ける(縫合部50によって縫合する)。そして、表皮材20の裏面において表皮接続部22(第1表皮接続部32、第2表皮接続部42)を第2表皮材40側に折り返す。そして、表皮接続部22を裏面側から覆うように防水部材60を取り付ける。
このとき、防水部材60は、第1表皮接続部32及び第2表皮接続部42を覆うように設けられる。
また、防水部材60の第1端部62が第1表皮材30の裏面に取り付けられ、第2端部63が第2表皮材40の裏面に取り付けられる。
具体的には、防水部材60の接着層60bが第1表皮材30の裏面材30bに含浸することで第1含浸部64が形成される。また、接着層60bが第2表皮材40の裏面材40bに含浸することで第2含浸部65が形成される。そして含浸部64、65によって、防水部材60が第1表皮材30及び第2表皮材40に取り付けられる。
第1含浸部64、第2含浸部65は、表皮接続部22を間に挟む位置に配置される。
【0061】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、図2に示すように、乗り物用シートS1が、ベース基板となるボトムプレート1を備えているが、特に限定されるものではない。
例えば、乗り物用シートS1が、ボトムプレート1の代わりにシートの骨格となるシートフレームを備えていても良い。あるいは、ボトムプレート1を備えていなくても良い。
【0062】
上記実施形態では、図1に示すように、乗り物用表皮材20が乗り物用シートS1に用いられているが、特に限定されるものではない。
例えば、乗り物用表皮材20が、乗り物用内装品等に用いられても良い。好ましくは、風雨又は雪に直接曝される乗り物用内装品等に用いられると良い。
また例えば、表皮材20が、二輪車用ハンドルカバー、登山用グローブ、二輪車のサイドバッグ、ジャケット、靴等に用いられても良いし、表皮一体発泡で成形されるヘッドレストのウレタン目止め材に用いられても良い。なお、表皮材にウレタンを注入する際に、表皮材の縫製穴からウレタン材が染み出すことを防ぐために防水部材が用いられると良い。
【0063】
上記実施形態では、図3に示すように、第1表皮材30と第2表皮材40が一部重ねられた状態で接続されているが、表皮材同士が重ねられてなくても良い。
例えば、第1表皮材30の表皮端末と、第2表皮材40の表皮端末とが、互いに反対側に折り返された状態で縫合部により縫合されても良い(表皮同士が重なっていなくても良い)。
【0064】
上記実施形態では、図3に示すように、シート状の防水部材60が、表皮接続部22を裏面側から覆うように取り付けられているが、防水部材60の取り付け位置について特に限定されなくても良い。
例えば、表皮材の一部に加飾用の縫合部(縫合ライン)が施されたものにおいて、当該縫合部に対して防水性能を確保すべく、防水部材60が取り付けられても良い。
その場合であっても、少なくとも防水部材の両端部が含浸部を有していると良い。
【0065】
上記実施形態では、具体例として日光に直接曝されたり、風雨又は雪に直接曝されたりする自動二輪車用のシートについて説明したが、特に限定されることなく、例えば、雪上バイク、水上の水上バイク、全地形対応車(バギー)等の屋外で使用される鞍乗り型の乗り物用シートに対して利用することができる。
また、鞍乗り型の乗り物用シートのほか、自動車、電車、バス等の車両用シート、飛行機、船等の乗り物用シートとしても利用することができる。
【0066】
本実施形態では、主として本発明に係る乗り物用表皮材、乗り物用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
<第1実施形態>
S1 乗り物用シート(シート)
1 ボトムプレート
2 プレート本体部
3 プレート外周部
4 取り付け部材(タッカー針)
5 貫通孔
10 パッド材
11 パッド本体部
12 パッド張り出し部
13 パッド凹部
20 表皮材(乗り物用表皮材)
20a 表面材
20b 裏面材
22 表皮接続部
30 第1表皮材(第1の表皮材)
30b 裏面材
31 第1表皮本体
32 第1表皮接続部(第1表皮端末部)
40 第2表皮材(第2の表皮材)
40b 裏面材
41 第2表皮本体
42 第2表皮接続部(第2表皮端末部)
45 第3表皮材
46 第4表皮材
50 縫合部
51 第1縫合部
52 第2縫合部
53 縫合ライン
60 防水部材(防水テープ)
60a 基材
60b 接着層
61 防水本体部
62 第1端部
63 第2端部
64 第1含浸部
65 第2含浸部
66 第3含浸部
B1、B2 境界部分
<第2~第5実施形態>
S2、S3、S4、S5 乗り物用シート(シート)
110、210、310、410 パッド材
120、220、320、420 表皮材
122、322、422 表皮接続部
130、230、330、430 第1表皮材
131 第1表皮本体
132、232 第1表皮接続部
140、240、340、440 第2表皮材(第2の表皮材)
141 第2表皮本体
142、242 第2表皮接続部
150、250、350、450 縫合部
160、260、360、460 防水部材(防水テープ)
161 防水本体部
162 第1端部
163 第2端部
164、264 第1含浸部
165、265 第2含浸部
266 第3含浸部
270 加飾部材
370、470 シートヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8