(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070231
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】光信号増幅のための方法とシステム
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20240515BHJP
H01S 3/102 20060101ALI20240515BHJP
H01S 3/13 20060101ALI20240515BHJP
H04B 10/291 20130101ALI20240515BHJP
H04B 10/70 20130101ALI20240515BHJP
【FI】
H01S3/10 D
H01S3/102
H01S3/13
H04B10/291
H04B10/70
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023182903
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】22206735
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】23165719
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521124319
【氏名又は名称】テラ クアンタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】TERRA QUANTUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ヴャトキン・ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】ズダーノヴァ・エカチェリーナ
(72)【発明者】
【氏名】グトル・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】レソヴィク・ゴルデイ
(72)【発明者】
【氏名】キルサーノフ・ニキータ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロヴィコフ・ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ベズルチェンコ・アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
5F172
5K102
【Fターム(参考)】
5F172AF02
5F172AF03
5F172AF05
5F172AM08
5F172BB03
5F172BB35
5F172BB44
5F172BB60
5F172BB63
5K102AA53
5K102AB11
5K102PB11
5K102PH13
5K102PH48
5K102RD28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光信号を介してデータを送信するための改良された技術を提供する。
【解決手段】光信号増幅方法は、第1データ処理装置(11)と第2データ処理装置(12)との間で光信号を伝えるための伝送路(10)と、伝送路に配置された光増幅器(14)とを備え、光増幅器はアクティブファイバセクション(15)とポンピングデバイス(16)とを備えるシステムであり、この方法は、光増幅器の目標動作利得を決定することと、光増幅器の目標最大利得を決定することと、光信号が最大でも目標の最大利得で増幅されるようにアクティブファイバセクション長を決定することと、アクティブファイバセクションのコア断面積サイズを決定することと、光信号が目標動作利得で増幅されるように、最大ポンピングパワーよりも低いポンピングデバイスの動作ポンピングパワーを決定することとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号増幅方法であって、前記方法は次の構成を備えるシステムにおいて実現可能であって、
第1データ処理装置(11)と第2データ処理装置(12)との間で光信号を伝えるための伝送路(10)と、
前記伝送路(10)上に配置された光増幅器(14)、前記光増幅器(14)はアクティブファイバセクション(15)とポンピングデバイス(16)とを備える、とを備え、
前記方法は、
前記光増幅器(14)の目標動作利得を決定することと、
前記光増幅器(14)の目標最大利得を決定することと、
前記光信号が前記目標最大利得以下で増幅されるように、アクティブファイバセクション長を決定することと、
最大に許容されるパルス形状歪み及び、パルス当たりの目標最大エネルギーを有する高エネルギーパルスが最大でも最大に許容されるパルス形状歪みまで歪むような前記パルス当たりの目標最大エネルギーに基づいて、前記アクティブファイバセクション(15)のコア断面積サイズを決定することと、
前記光信号が、前記目標動作利得で増幅されるように、最大ポンピングパワーよりも低い前記ポンピングデバイス(16)の動作ポンピングパワーを決定することとを含む、
光信号増幅方法。
【請求項2】
さらに、
前記動作ポンピングパワーで前記ポンピングデバイス(16)を動作させて前記光増幅器(14)を介して前記光信号を増幅することを含む量子鍵配送によって、前記第1データ処理装置(10)と前記第2データ処理装置(11)との間の共有鍵を決定することを含む、
請求項1に記載の光信号増幅方法。
【請求項3】
前記目標最大利得は、前記目標動作利得と、光信号漏洩、好ましくは検出可能な最小光信号漏洩から決定される利得増加値とから決定される
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項4】
前記光信号漏洩は、前記伝送路(10)を介して決定される、
請求項3に記載の光信号増幅方法。
【請求項5】
前記アクティブファイバセクション(15)のコア断面積を決定することが、
前記アクティブファイバセクション(15)のコア直径、コア半径及びコア円周のうちの少なくとも1つを決定することを含む、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項6】
前記アクティブファイバセクション(15)の前記コア断面積サイズを決定することが、
前記アクティブファイバセクション(15)を介して、前記パルス当たりの目標最大エネルギーで前記高エネルギーパルスを伝送することと、
前記高エネルギーパルスのパルス形状の歪みを示すパルス形状メトリックを決定することと、
前記パルス形状メトリックの値と前記最大に許容されるパルス形状歪みとを比較することと、
前記比較の結果に基づいて、前記コア断面積のサイズを調整することとを含む、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項7】
前記パルス形状メトリックを決定することは、増幅前の光パルスの第1フォームアクタと増幅後の前記光パルスの第2フォームアクタとを決定することを含む、
請求項6に記載の光信号増幅方法。
【請求項8】
さらに、前記伝送路(10)に沿った光信号損失、好ましくは、前記伝送路(10)に沿った位置に応じた光信号損失を決定することを含む、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項9】
前記光信号は、前記光信号損失を決定するためのテストパルスと、前記共有鍵を決定するための鍵配送パルスとを含み、前記テストパルスは、前記鍵配送パルスよりも高いパルス当たりのエネルギーを含む、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項10】
さらに、前記伝送路(10)に物理的に複製不可能な構造を設けることを含む、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項11】
さらに、前記アクティブファイバセクション(15)に、エルビウム-ドープファイバセクション、ツリウム-ドープファイバセクション、ネオジム-ドープファイバセクション及びイッテルビウム-ドープファイバセクションのうちの少なくとも1つを設けることを含む、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項12】
さらに、光アイソレータ及びタップカプラを備えない前記伝送路(10)を設けることを含む、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項13】
さらに、双方向光増幅器として前記光増幅器(14)を提供することを含む、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項14】
さらに、複数の光増幅器(14)を前記伝送路(12)に配置することを含み、各光増幅器(14)は、さらなるポンピングデバイス(16)と前記アクティブファイバセクション長を有するさらなるアクティブファイバセクション(15)とを備え、
前記共有鍵を決定することは、前記動作ポンピングパワーでさらなるポンピングデバイス(16)それぞれを動作させることによって、前記複数の光増幅器(14)を介して前記光信号を増幅することを含む、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項15】
前記ポンピングデバイス(16)から放出されるポンピング放射線のポンピング波長が、前記アクティブファイバセクション(15)の前記吸収スペクトルのピーク波長からの距離が10nm未満となるように調整される、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法。
【請求項16】
前記ポンピングデバイス(16)から放出される前記ポンピング放射線の前記ポンピング波長が、前記ポンピングデバイス(16)の温度及び/又は電力供給を制御することで安定化される、
請求項15に記載の光信号増幅方法。
【請求項17】
光信号増幅のためのシステムであって、
第1データ処理装置(11)と第2データ処理装置(12)との間で光信号を伝えるための伝送路(10)を備え、
前記システムは、さらに、アクティブファイバセクション(15)及びポンピングデバイス(16)を備え、前記伝送路(10)上に配置された光増幅器(14)を備え、
請求項1又は2に記載の光信号増幅方法にしたがって構成されているシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光信号増幅(及び送信)、特に量子鍵配送のための、の方法に関する。さらに、光信号増幅(及び送信)、特に量子鍵配送のための、のシステムが開示される。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ回線内の光信号は徐々に減衰する。光信号を長距離伝送する光伝送システムでは、光増幅器を使用する必要がある。信号の迂回が知覚できない可能性があると、光信号によるデータ伝送が安全ではなくなる。
【0003】
標準的な増幅器は、通常、高いポンプ吸収係数を実装することにより、ポンプパワーを信号パワーへ変換する効率を最大化するように設定されている。このような状況では、増幅器はポンプの増加に対して高い利得感度を持つ。これは、侵入者が気づかれないまま追加のポンピングを行った後、過剰な信号を迂回させる可能性につながる。
【0004】
さらに、標準的な増幅器は、安定した動作を確保及び制御するために、メインチャネルから信号を迂回させる光アイソレータやカプラなどのコンポーネントを備えている。このようなコンポーネントを使用することは重大な信号損失につながりうり、安全なデータ送信には許容できない場合がある。量子信号伝送及び量子鍵配送では、セキュリティ要件がさらに重要になる。
【0005】
米国特許出願公開第2015/043056号明細書では、量子鍵配送のための通信システムと光を生成する方法が開示されている。この方法は、0℃を超える温度にある半導体光増幅器に光パルスを導くことを含む。光パルスは、半導体光増幅器においてラビ振動を誘発し少なくとも1THzの周波数で光を放射するように選択された半導体光増幅器の発光スペクトル内の波長及びパルス領域を含む。
【0006】
米国特許第11417998号明細書は、ファイバ増幅器及びファイバレーザなどの光ファイバ増幅システムのためのゲインファイバアセンブリに関する。ゲインファイバアセンブリは、外形80μm未満の単一ガラスクラッドを有するアクティブファイバを使用している。パッシブダブルクラッドインプットファイバは、外側のクラッドが剥がされ、むき出しのファイバの外形に一致するようにテーパされている。
【0007】
テーパに沿ったガラス-流体又はガラス-真空の界面は、むき出しのファイバのクラッド内への及びクラッドに沿ったポンプの誘導を提供し、真空又は気体の場合はNA>1、液体の場合はNA>0.8である。これにより、最大信号パワーに到達するためのファイバ長を大幅に短くし、ポンプ変換効率を高めることができうる。
【0008】
欧州特許出願公開第2535989号明細書では、中心コア町域に少なくとも0.1重量パーセントの濃度でNd3+がドープされ、1050nmと1120nmとの間の波長の光を増幅するために使用できる大面積のアクティブダブルクラッド光導波路が説明されている。特定の波長でポンプ光に対して少なくとも3dB/mの正味の光吸収を提供するのに十分なドーピング濃度では、Nd3+はYb3+よりもはるかに低い反転レベルで動作する。反転レベルが低いため、Nd3+ドープ導波路は、ポンプブリーチング又はフォトダークニングの軽減の対象となる。ポンプ光は、第2クラッドにより誘導され、増幅される光信号は少なくとも500平方マイクロメートルの非常に大きなモード領域を有する第1クラッドにより誘導される。
【0009】
中国特許出願公開第115189212号明細書は、コヒーレントアレイファイバレーザ構造を開示する。これは、複数のポンプ光源、ファイバ結合機、ハイインバースグレーティング、アクティブファイバ、ローインバースグレーティング、受動誘電体層、透過促進フィルム、モード選択層及び反射層を含み、これらは光路に沿って順番に配置される。ハイインバースグレーティング、アクティブファイバ及びローインバースグレーティングは、第1共振空洞を形成する。第1共振空洞、受動誘電体層、透過促進フィルム、モード選択層及び反射層は、第2共振空洞を形成する。アクティブファイバはポンプ光を吸収し、パッシブメディア層に入射するレーザ光を生成する。パッシブメディア層とモード選択層を通じて、出力レーザのモード選択と外部共振器フィードバックは効率的なインジェクションロックと均一モード出力を得るために実行され、これにより、インジェクションフィードバックとモードロック機能が向上し、均一モードコヒーレントアレイファイバレーザ出力が実現する。
【0010】
米国特許出願公開第2003/197921号明細書には、高濃度のイッテルビウム及びエルビウムと共ドープすることができ、単位長さ当たりで高い光学利得を示すリン酸塩ガラスファイバが開示されている。ガラス組成物中のアルカリ金属酸化物を回避し、BaOなどのネットワーク修飾剤の濃度を調整することによって、ゼロに近い屈折率温度係数を示すリン酸塩ガラス組成物が提供される。したがって、ポンピング放射線の高い吸収とポンピングレーザによって引き起こされる加熱硬化を回避できる。
【発明の概要】
【0011】
本開示の目的は、特に光信号の光増幅に関して、光信号を介してデータを送信するための改良された技術を提供することである。
【0012】
この問題を解決するために、独立請求項にしたがって光信号増幅のための方法及びシステムが提供される。さらなる実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0013】
一態様によれば、光信号増幅方法が提供される。この方法は、第1データ処理装置と第2データ処理装置との間で光信号(光パルス)を伝えるための伝送路と、伝送路に配置された光増幅器とを備えるシステムにおいて実装可能であり、光増幅器はアクティブファイバセクションとポンピングデバイスとを備える。この方法は、光増幅器の目標動作利得を決定することと、光増幅器の目標最大利得を決定することと、光信号が最大でも目標最大利得で増幅されるようにアクティブファイバセクション長を決定することと、最大に許容されるパルス形状歪み及び、パルス当たりの目標最大エネルギーを有する高エネルギーパルスが最大でも最大に許容されるパルス形状歪みまで歪むようなパルス当たりの目標最大エネルギーに基づいて、アクティブファイバセクションのコア断面積サイズを決定することと、光信号が目標動作利得で増幅されるように、最大ポンピングパワーよりも低いポンピングデバイスの動作ポンピングパワーを決定することとを含む。
【0014】
別の態様によれば、光信号増幅のためのシステムが提供され、このシステムは、第1データ処理装置と第2データ処理装置との間で光信号を伝えるための伝送路と、伝送路に配置され、アクティブファイバセクション及びポンピングデバイスとを備える光増幅器とを備える。このシステムは、光信号増幅方法に従って構成されている。
【0015】
結果として、例えば盗聴者によって、動作ポンピングパワーを超えてポンピングパワーを増加させる場合、漏洩する/転用される光信号/パルスの量が制限されることが保証されうる。したがって、盗聴者による潜在的な情報取得が制限されうる。同時に、低エネルギーパルス及び高エネルギーパルスが均等に増幅されえ、パルス形状の歪みが防止又は軽減されうるため、伝送路を監視するときのエラーが減少し制御が向上する。したがって、量子鍵配送のセキュリティが向上しうる。
【0016】
さらに、この方法は量子鍵配送にも関係しうる。特に、この方法は、動作ポンピングパワーでポンピングデバイスを動作させることによって光増幅器を介して光信号を増幅することを含む量子鍵配送によって第1データ処理装置と第2データ処理装置との間の共有鍵を決定することをさらに含んでもよい。
【0017】
目標最大利得は、目標動作利得と、光信号漏洩、好ましくは検出可能な最小光信号漏洩から決定される利得増加値とから決定されうる。この方法は、(検出可能な最小)光信号漏洩を決定することを含んでもよい。利得増加値は、(追加の)利得増加又は利得増加係数であってもよい。利得増加値は、ポンピングデバイスを動作ポンピングパワーで動作させる場合とポンピングデバイスを最大ポンピングパワーで動作させる場合とを比較した利得増加に対応してもよい。利得増加値もそれに応じて検証されてもよい。
【0018】
目標最大利得Gmaxと目標動作利得Gopとの間の比Gmax/Gopは、光信号漏洩から、好ましくは検出可能な最小光信号漏洩rE
minから決定されうる。目標最大利得Gmaxと目標動作利得Gopとの間の比Gmax/Gopは、1+10-7と1+10-1との間、好ましくは1+10-6と1+10-2との間、より好ましくは1+10-5と1+10-3との間でありうる。
【0019】
目標最大利得Gmaxと目標動作利得Gopとの間の差は、検出可能な最小光信号漏洩rE
min(目標動作利得Gopの倍数)に等しくてもよい。検出可能な最小光信号漏洩rE
minは、伝送路の長さに依存しうる。隣接する光増幅器間の距離(増幅器間隔)が50km、伝送路長が1000kmの場合、目標最大利得Gmaxと目標動作利得Gopとの間の差は、10-6に等しくなりうる。伝送路長が40,000kmの場合、10-5に等しくなりうる。したがって、ポンピングデバイスは、ポンピングデバイスに可能な最大利得に近い値で定期的に動作しうる。これにより、盗聴者がポンピングパワーを増加させて光信号を部分的に転用する可能性が制限されうる。
【0020】
目標動作利得は、3と100との間、好ましくは5と20との間、より好ましくは9と11との間でありうる。最大動作利得は、3+10-6と100+10-3との間、好ましくは5+10-6と20+10-3との間、より好ましくは9+10-6と11+10-3との間でありうる。
【0021】
動作ポンピングパワーは、アクティブファイバセクションの決定されたコア断面積サイズに依存しうる。例えば、同様の反転分布密度レベルを達成するために、コア断面積サイズの増加はポンピングパワーの増加に対応しうる。動作ポンピングパワーを決定することは、光増幅器による増幅の前後で光パルスを比較すること及び/又は比較結果に基づいて動作ポンピングパワーを調整することを含んでもよい。
【0022】
目標最大利得は、目標動作利得と利得増加との和として、及び/又は目標動作利得と利得増加係数との積として決定されうる。
【0023】
例えば、目標最大利得Gmaxは、目標動作利得Gop及び利得増加値(利得増加ΔG又は利得増加係数δG)から、Gmax=Gop+ΔG又はGmax=Gop・δGとして決定されうる。利得を線形単位から対数単位に、又はその逆に再スケーリングする場合、両方の式が一致しうることに注意する。目標最大利得は、例えば、目標動作利得に適用される利得増加指数を介して決定されてもよい。
【0024】
目標最大利得は、最大ポンピングパワーでポンピングデバイスを動作させるときの光増幅器の利得に相当しうる。最大ポンピングパワーは、ポンピングデバイスによって達成可能な最大ポンピングパワー、光増幅器のコンポーネントが劣化する(所定の閾値以上の)ポンピングパワー及び伝送路に非線形光学的効果が現れる(さらなる所定の閾値以上の)ポンピングパワーのうちの少なくとも1つに相当しうる。また、目標最大利得は、(計算及び/又は測定されうる)アクティブファイバセクションにおける総反転分布密度に相当しうる。本方法は、最大目標利得に対応する最大ポンピングパワーを決定することを含んでもよい。盗聴者は、別のポンピングデバイスをアクティブファイバセクションに結合させることを望みうるが、これは、盗聴者だけが既存のポンピングデバイスにアクセスし、そのポンピングパワーを増大させ、光パルスを部分的に転用させるよりも検出が容易でありうる。
【0025】
目標動作利得は、伝送路/光ファイバに沿った光パルスの信号減衰/信号減退及び/又は伝送路における光増幅器の位置から決定されうる。
【0026】
目標最大信号パワーは、光パルスの最大信号強度、光パルスの(パルス当たりの)最大光子数、光パルスの(最小)パルス持続時間及び光パルスの(最大)信号周波数(又は(最小)信号波長)のうちの少なくとも1つから決定されうる。信号パルスの持続時間tsは、例えば、0.1nsと1μsとの間であってもよい。信号波長λsは、例えば、300nmと2500nmとの間であってもよい。目標最大信号パワーは、最大平均信号パワーであってもよい。最大平均信号パワーは、(例えば、1つ又はそれ以上の光パルスについて)時間平均した信号パワーとして決定されうる。
【0027】
目標最大利得は、例えば、アクティブファイバセクションの長さ(アクティブファイバセクション長)を調整することによって達成されうる。アクティブファイバセクション長は、任意の目標信号パワーを有する光パルスが、追加のポンピングパワー(達成された反転分布密度レベルが1に近い)に対して最大でも目標最大利得で増幅されるように決定されうる。例えば、目標最大利得が達成されるまで繰り返し利得が決定されて、アクティブファイバセクション長が調整されてもよい。
【0028】
特に、アクティブファイバセクション長を決定することは、アクティブファイバセクションの初期長さを与えることと、最大ポンピングパワーでポンピングデバイスを動作させることと、繰り返し利得値を決定して利得値が目標最大利得に等しくなるまでアクティブファイバセクション長を調整することと、アクティブファイバセクション長を利得値が目標最大利得に等しいアクティブファイバセクション長として設定することとのうちの少なくとも1つを含んでもよい。初期長さは、アクティブファイバセクション長の初期推定値よりも、例えば1%と20%との間、好ましくは5%と15%との間、より好ましくは9%と11%との間の係数だけ長くてもよい。最大ポンピングパワーは、ポンピングデバイスによって達成可能な最大ポンピングパワーであってもよい。したがって、最大ポンピングパワーは、ポンピングデバイスに依存しうる。
【0029】
アクティブファイバセクション長を調整することは、アクティブファイバセクションを短縮及び/又は伸長することを含んでもよい。例えば、利得値は、光増幅器への入力信号強度(及び/又はパルス当たりの光子数及び/又は信号パワー)と、光増幅器からの出力信号高度(及び/又はパルス当たりの光子数及び/又は信号パワー)とから決定されうる。
【0030】
光信号漏洩は、伝送路を介して決定されうる。光信号漏洩は、伝送路に関連しうる。
【0031】
光信号漏洩は、例えば、量子鍵配送プロトコルによって決定される許容できる最大信号漏洩であってもよい。特に、光信号漏洩は、(パルス当たり及び/又は単位時間当たりで)転用可能な光子の最大(許容)数、すなわち、例えば盗聴者によって転用/漏洩されうる光子の最大数に対応しうる(一方、転用されなかった光パルスは緯線として目標動作利得を下回らないように増幅されうる)。また、最大信号漏洩は、最大信号強度、転用されうる(パルス当たりの)最大エネルギー、転用されうる最大信号パワー、転用可能な信号強度と転用されない信号強度との比及び転用可能な光子数と転用されない光子数との比のうちの少なくとも一つに対応してもよい。例えば、盗聴者は、例えば、動作ポンピングパワーを超えて最大ポンピングパワーまでのポンピングパワーでポンピングデバイスを動作させることによって、目標動作利得を超えて目標最大利得までの利得で光増幅器を動作させうる。しかしながら、光増幅器を目標最大利得で動作させる場合でも、光信号漏洩、特に転用可能な光子の最大数は制限されうる。
【0032】
光信号漏洩は、方法の精度及び/又は分解能を監視することによって決定されうる。特に、光信号漏洩は、光子数(パルス当たり及び/又は単位時間当たり)及び/又は信号パワー及び/又は信号強度の最小部分に相当しうる。これは、監視技術及び/又は機器によって検出できる。
【0033】
アクティブファイバセクションのコア断面積サイズ(コアプロファイルサイズ、ファイバコアの断面積のサイズ)を決定することは、アクティブファイバセクション(のファイバコア)のコア直径、コア半径及びコア円周のうちの少なくとも一つを決定することを含んでもよい。
【0034】
コア断面積(サイズ)は、特にコア直径は、アクティブファイバセクションに沿って一定であってもよい。あるいは、コア直径は、アクティブファイバセクションの平均コア直径又は最大コア直径であってもよい。
【0035】
アクティブファイバセクションのファイバコアは、一般に、円形の断面を備えうる。また、非円形の断面(例えば、楕円形)も提供されてもよい。
【0036】
コア断面積サイズは、パルス形状メトリック(高エネルギーパルスのパルス形状歪みを示す)によって決定されうる。特に、アクティブファイバセクションのコア断面積を決定することは、アクティブファイバセクションを介してパルス当たりの目標最大エネルギーを有する高エネルギーパルスを伝送することと、高エネルギーパルスのパルス形状歪みを示すパルス形状メトリックを決定することと、パルス形状メトリック値を最大に許容されるパルス形状歪みと比較することと、比較結果に基づいてコア断面積サイズを調整することとのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0037】
コア断面積サイズを決定することは、特に、パルス形状メトリックが最大に許容されるパルス形状歪みより小さくなり、好ましくは最大に許容されるパルス形状歪みから閾値を引いたものより大きくなるまで、上記のステップを繰り返し実行することを含んでもよい。
【0038】
パルス当たりの目標最大エネルギーは、例えば、1μJから10μJまで、好ましくは3μJから5μJまでであってもよい。高エネルギーパルスの持続時間は、例えば、0.1nsから20μsまで、好ましくは3nsから20μsまでであってもよい。高エネルギーパルスのピークパワーは、10mWから300mWまで、好ましくは100mWから200mWまでであってもよい。
【0039】
高エネルギーパルスは、例えば、光信号損失を決定するためのテストパルスであってもよい。光パルスは、パルス当たりの目標最大エネルギー以下のパルス当たりのエネルギーを含むと規定されてもよい。
【0040】
パルス形状メトリックを決定することは、増幅前の光パルスの第1フォームファクタsin(t)と増幅後の光パルス(増幅された光パルス)の第2フォームファクタsout(t)とを決定することを含んでもよい。第1フォームファクタsin(t)は、増幅前の光パルスのパルス形状Sin(t)を正規化することによって(例えば、パルスの始まりからパルスの終わりまでの時間積分が1になるように)決定されうる。第2フォームファクタsout(t)は、増幅された光パルスのパルス形状Sout(t)を正規化することによって(例えば、パルスの始まりからパルスの終わりまでの時間積分が1になるように)決定されうる。例えば、第1フォームファクタsin(t)及び/又は第2フォームファクタsout(t)は、それぞれ次のように決定されうる。
【0041】
【0042】
ここで、t1及びt2は、それぞれパルスの開始時間及びパルスの終了時間を示す。各光パルスは、1つ又は複数のパルスを含んでもよい。
【0043】
増幅前の光パルスのパルス形状Sin(t)及び/又は増幅された光パルスのパルス形状Sout(t)は、例えば、光検出器又はオシロスコープを使用して決定されうる。
【0044】
パルス形状メトリックは、第1フォームファクタsin(t)及び第2フォームファクタsout(t)の二乗平均平方根値として、特に次のように決定されうる。
【0045】
【0046】
ここで、t1及びt2は、それぞれパルスの開始時間及びパルスの終了時間を示す。
【0047】
あるいは、パルス形状メトリックは、パルス開始時及びパルス終了時における第1フォームファクタの比と、パルス開始時及びパルス終了時における第2フォームファクタの比との差として、特に次のように決定されてもよい。
【0048】
【0049】
コア断面積サイズを調整することは、パルス形状メトリックが最大に許容されるパルス形状歪みよりも大きいという決定に基づいて、コア断面積サイズを増加する(特に、コア直径、コア半径及びコア円周のいずれかを増加する)ことを含んでもよい。パルス形状メトリックが最大に許容されるパルス形状歪みよりも大きい場合、パルスを増幅するには不十分なエネルギーがアクティブファイバセクションに蓄積されていると決定してもよい。
【0050】
コアの断面を調整することによって、パルス形状歪みを防止又は軽減しうる。したがって、例えば伝送路を監視するときのエラーが減少しえ、伝送路の制御が改善されうる。
【0051】
この方法は、例えば、一定の時間間隔で、例えば、1μsから10sまでの間隔長で、パルス形状歪みを繰り返し監視することを含んでもよい。パルス形状歪みを監視することは、例えば、パルス形状メトリックを決定すること又は増幅前後のパルスのビットエラー率(BER)を決定することを含んでもよい。さらに、この方法は、増幅前後のビットエラー率の差が所定の閾値よりも大きいことに基づいて、パルス形状歪みが適切であるかどうかを決定することを含んでもよい。
【0052】
許容されるパルス形状歪みは、例えば、0から0.1、好ましくは0から0.01、又は0.9から1、好ましくは0.99から1であってもよい。
【0053】
さらに、この方法は、伝送路に沿った光信号損失(例えば、光パルスの強度損失及び/又は光子数損失)、好ましくは伝送路に沿った位置に応じた光信号損失を決定する(及び/又は監視する)ことを含んでもよい。言い換えれば、光信号損失は、伝送路に沿った位置の関数として決定されうる。特に、伝送路に沿った各位置について、対応する光信号損失が決定されうる。したがって、光信号損失は信号損失プロファイルに対応しうる。
【0054】
光信号損失は、光学的時間領域反射率測定によって決定されうる。光信号損失は、共有鍵の決定中及び/又は決定前及び/又は決定後に決定されてもよい。光信号損失は繰り返し決定されてもよい。例えば、光信号損失は、10nsから50sまで、好ましくは10nsから50sまで、特に、100nsから100msまで、500nsから500msまで、100msから1000msまで、0.5sから5sまで及び5sから10sまでのうちの一つの時間間隔ごとに繰り返し決定されてもよい。
【0055】
この方法は、光信号損失に基づいて侵入イベントを決定すること及び/又は光信号損失に基づいて共有鍵の決定を中止(終了)することを含んでもよい。この方法は、光信号損失に基づいて共有鍵を破棄することを含んでもよい。
【0056】
光信号(パルス)は、光信号損失を決定するためのテストパルスと共有鍵を決定するための鍵配送パルスとを含むことができ、ここで、テストパルスは、鍵配送パルスよりも高いパルス当たりのエネルギーを含む。特に、それぞれのテストパルスは、それぞれの鍵配送パルスよりも高いエネルギーを含んでもよい。あるいは、テストパルスと鍵配送パルスは、パルス当たり同じ範囲のエネルギーを含んでもよい。
【0057】
テストパルス及び鍵配送パルスは、時間的に分離(時間多重化)又は異なる周波数チャネル(波長分割多重、WDM)で分離されうる。
【0058】
試験パルス当たりの最大エネルギーは、例えば、1μJから10μJまで、好ましくは3μJから5μJでありうる。テストパルスの持続時間は、例えば、0.1nsから20μsまで、好ましくは3nsから20μsでありうる。テストパルスのピークパワーは、10mWから300mWまで、好ましくは100mWから200mWまででありうる。
【0059】
鍵配送パルス当たりの最大光子数は、例えば、2000光子から10000光子、好ましくは2500光子から3500光子でありうる。
【0060】
鍵配送パルス当たりの最大エネルギーは、例えば、2.56e-16Jから1.28e-15Jまで、好ましくは3.20e-16Jから4.5e-16Jまででありうる。鍵配送パルスの持続時間は、例えば、0.01nsから100nsまで、好ましくは0.1nsから10nsまででありうる。鍵配送パルスのピークパワーは、2.5nWから12.8μWまで、好ましくは60nWから500nWまででありうる。
【0061】
さらに、この方法は、物理的に複製不可能な構造を伝送路に提供すること、したがって好ましくは再現不可能なプロファイルを提供することを含んでもよい。例えば、伝送路は、例えばAl、P、N及びGeのうちの少なくとも一つで、好ましくは0.5mol‐%から5.0mol‐%まで、より好ましくは1.0mol‐%から3.0mol‐%までのドーパント濃度でドープされた(アクティブ及び/又はノン‐アクティブ)ファイバコアセクションを含んでもよい。ドーパント濃度は伝送路の位置に応じて変化しうるため、固有のドーパントパターンを提供することが好ましい。このようなパターンにより、伝送路を認証し、信号漏洩をより正確に監視できるようになりうる。その結果、セキュリティが向上しうる。
【0062】
さらに、この方法は、エルビウム‐ドープファイバセクション、ツリウム‐ドープファイバセクション、ネオジム‐ドープファイバセクション及びイッテルビウム‐ドープファイバセクションのうちの少なくとも一つをアクティブファイバセクションに提供することを含んでもよい。
【0063】
さらに、この方法は、光アイソレータ及びタップカプラのない伝送路を提供することを含んでもよい。原則として、伝送路は最大許容閾値を超える損失を伴う光学部品を含まない。
【0064】
さらに、この方法は、光増幅器を双方向光増幅器として提供することをさらに含んでもよい。結果として、光パルスは、同じ光ファイバを介して、第1データ処理装置から第2データ処理装置へ及び第2データ処理装置から第1データ処理装置へ伝送されうる。
【0065】
さらに、この方法は、伝送路に複数の光増幅器を配置することを含んでもよく、各光増幅器は、(さらなる)ポンピングデバイスとアクティブファイバセクション長を有する(さらなる)アクティブファイバセクションとを備える。好ましくは、共有鍵を決定することは、動作ポンピングパワーでさらなるポンピングデバイスをそれぞれ動作させることによって、複数の光増幅器を介して光信号を増幅することを含んでもよい。さらに、この方法は、2つの隣接する光増幅器間の光増幅器距離が、30kmと200kmとの間、好ましくは30kmと60kmとの間であるように複数の光増幅器を配置することを含んでもよい。
【0066】
ポンピングデバイスから放出されるポンピング放射線のポンピング波長は、アクティブファイバセクションの吸収スペクトルのピーク波長から10nm未満、好ましくは1nm未満、より好ましくは0.1nm未満離れて調整されうる。このようにして、活性媒体反転を最大化しえ、目標最大利得と目標動作利得との間の達成可能な差を最小化しうる。
【0067】
さらに又は代わりに、ポンピングデバイスから放射されるポンピング放射線のポンピング波長は安定化されうる。好ましくはポンピングデバイスの温度及び/又は電力供給を制御することによって安定化されうる。温度は、0.1℃未満、好ましくは0.01℃未満変化するように制御されうる。電力供給は、1%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.01%未満変化するように制御されうる。したがって、安定した動作利得係数が達成されうる。
【0068】
アクティブファイバセクションは伝送路の一部であってもよい。アクティブファイバセクションは、例えばスプライス接続を介して、伝送路の光ファイバ(セクション)に接続されてもよい。ポンピングデバイスは、供給(光)ファイバ及び/又は結合素子を介して、伝送路、特に、アクティブファイバセクションに結合されてもよい。特に、ポンピングデバイスから放出されるポンピング放射線は、供給ファイバを通過してもよく、及び/又は(その後)結合素子を介して伝送路に供給されてもよい。結合素子は、異なる波長を有する放射線及び/又は異なる光ファイバからの放射線を単一の光ファイバに導くように構成されてもよい。例えば、結合素子は、波長分割多重(WDM)システム/素子であってもよい。供給ファイバはパッシブファイバであってもよい。
【0069】
ポンピングデバイスは、ダイオード及び/又はレーザを含む。ポンピングデバイスはアクティブファイバセクションのポンピング波長で放射線を放出するように構成されてもよい。このシステムは、第1及び第2データ処理装置及び又はさらなるデータ処理装置を備えてもよく、備えなくてもよい。この方法は、データ処理装置、例えば第1、第2、及び/又はさらなるデータ処理装置で実行されてもよい。目標最大利得を決定すること及び/又はアクティブファイバセクション長を決定すること及び/又はアクティブファイバセクションのコア断面積サイズを決定すること及び/又は動作ポンピングパワーを決定することは、第1、第2及び/又はさらなるデータ処理装置等のデータ処理装置で(少なくとも部分的に)実行されてもよいし、実行されなくてもよい。第1、第2及び/又はさらなるデータ処理装置は、光増幅器、特にポンピングデバイスに接続されてもよい。光パルスは第1及び/又は第2データ処理装置から放射されてもよい。
【0070】
共有鍵を決定することは、乱数発生器を使用して第1データ処理装置内のビットシーケンスを決定することと、ビットシーケンスを光パルス(特に、鍵配送パルス)にエンコードすることと、伝送路を介して光パルスを第2データ処理装置に送信することと、動作ポンピングパワーを有する光増幅器によって光パルスを増幅することと、第2データ処理装置で光パルスを受信し測定することと、第1及び第2データ処理装置における(受信された)ビットシーケンスから決定的ではない信号ビットを破棄することと、第1及び/又は第2データ処理装置によって、古典チャネルを介してビットシーケンス及び/又は受信されたビットシーケンスの一部を開示することと、ビットシーケンス及び受信ビットシーケンスに対してエラー訂正を行うことと、プライバシ増幅を使用してエラー訂正されたビットシーケンスから共有鍵に対応する増幅されたキーシーケンスを決定することとのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0071】
光増幅方法に関する上述の実施形態は、光増幅システムにも対応して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
以下では、一例として、図面を参照して実施形態を説明する。
【
図2】エルビウム-ドープファイバセクションにおける光増幅を示すエネルギー図
【
図4】量子鍵配送によって共有鍵を決定するための(サブ)ステップを示す図
【
図5】信号損失プロファイルに対応する光学的時間領域反射率測定から得られる例示的なリフレクトグラムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0073】
(a)量子鍵配送システム
図1では、量子鍵配送システムと追加の盗聴装置13(「イブ」)とを備えた配置図が示されている。このシステムは、第1データ処理装置11(「アリス」)と第2データ処理装置12(「ボブ」)との間で光パルス、特に古典信号及び/又は量子信号を伝送するための光ファイバを備えた伝送路10を備える。
【0074】
第1データ処理装置11は第1プロセッサ11aと第1メモリ11bとを備えてもよく、第2データ処理装置12は第2プロセッサ12aと第2メモリ12bとを備えてもよい。第1及び第2データ処理装置11、12は、システムの一部であってもなくてもよい。第1データ処理装置11及び第2データ処理装置12は、伝送路10に接続される。伝送路10は、量子信号を伝送するように構成された量子チャネルを備えてもよい。さらに、古典信号を伝達するように構成された古典チャネルが提供されてもよい。古典チャネルは伝送路内に設けられても、別個に設けられてもよい。
【0075】
このシステムは、複数のさらなるデータ処理装置、特に、第3プロセッサ及び第3メモリ(図示せず)を備えた第3データ処理装置を備えてもよい。第3データ処理装置は、伝送路10に接続されてもよい。第3データ処理装置は、さらなる通信チャネルを介して、古典信号及び/又は量子信号を第1データ処理装置11及び/又は第2データ処理装置12と交換することができる。システムがステップを実行するように構成される場合、そのようなステップは、例えば、第1データ処理装置11、第2データ処理装置12及び第3データ処理装置のうちの少なくとも1つで実行されうる。
【0076】
盗聴プロセッサ13a及び盗聴メモリ13bを備えた盗聴装置13は、伝送路10にアクセスする可能性のあるシステム外部の装置を表す。盗聴装置13は、伝送路10を介して送信される光パルスが盗聴器13によって少なくとも部分的に受信及び/又は再送信されるように伝送路10に配置されてもよい。また、盗聴装置13はさらなる通信チャネルにアクセスしてもよい。
【0077】
第1メモリ11b、第2メモリ12b、第3メモリ及び盗聴メモリ13bはそれぞれ、量子信号を記憶する量子メモリと古典信号を記憶する古典メモリとを備えてもよい。量子メモリは、オプティカル・ディレイ・ライン、コントロールド・リバーシブル・インホモジーニアス・ブローデニング(CRIB)、デュアン-ルーキン-シラック-ゾラー(DLCZ)スキーム、リヴァイバル・オブ・サイレンスド・エコー(ROSE)、及び/又はハイブリッド・フォトン・エコー・リフェーズ(HYPER)を使用して提供されうる。
【0078】
第1データ処理装置11、第2データ処理装置12、第3データ処理装置及び盗聴処理装置13は、それぞれ、光パルスを介して量子状態を送信及び/又は受信する手段を備えてもよい。
【0079】
(b)光増幅
光パルスは、信号の減衰を補うために誘導放出による光増幅によって増幅/反復される。この目的のために、アクティブファイバセクション15及びポンピングデバイス16を備える光増幅器14が伝送路10に提供/配置/設置される。さらに、複数の光増幅器14が伝送路10に提供されてもよい。光増幅器14は、例えば、30kmと200kmとの間、好ましくは30kmと100kmとの間、より好ましくは30kmと60kmとの間の増幅器間隔で、伝送路10に沿って等距離に配置されうる。増幅器間隔を増加させることで、個々の光増幅器14間のクロストークが軽減又は防止されうる。光増幅器14のいずれかと、第1及び第2データ処理装置11、12のいずれかとの間の距離は、少なくとも30kmであってもよい。
【0080】
光増幅は、光増幅器14のアクティブファイバ(セクション)15内で行われる。例えば、アクティブファイバセクション15は、ポンピングデバイス16、供給ファイバ17及び結合素子18を介して980nmのポンピング波長でポンピングされ、約1530nmの信号波長での増幅を可能にするエルビウム(Er3+)-ドープファイバであってもよい。さらに又は代わりに、ツリウム-ドープファイバ(1450nmから1550nmでポンピングされる)、ネオジム-ドープファイバ(800nmから930nmでポンピングされる)又はイッテルビウム-ドープファイバ(915nmから980nmでポンピングされる)を使用してもよい。エルビウム-ドープファイバを使用することは、増幅された信号波長が標準的なシリカファイバの伝送窓に良く適合するという点で有益である。
【0081】
例えば、ポンピングデバイス16は、ダイオード又はレーザであってもよく、特にポンピング波長を有する放射線を放射するように構成されている。結合素子18は、異なる波長の放射を単一の光ファイバに誘導するためのビームスプリッタ状の装置であり、アクティブファイバセクション15及びポンピングデバイス16に接続される。例えば、結合素子18は、波長分割多重(WDM)素子であってもよい。不要なローカルファイバ接続損失を最小限に抑えるために、すべてのファイバ接続(たとえば、伝送路のアクティブファイバセクションとパッシブファイバセクションとの間)が接続されてもよい。
【0082】
標準的な光増幅器のセットアップとは異なり、このシステムは光アイソレータ又はカップタプラを含まない。アイソレータは、光を一方向にのみ通過させるように構成され、通常、光増幅器14が実質的にレーザになる可能性があるアクティブファイバセクション15内での多重反射のリスクを最小限に抑えるために使用される。タップカプラは、通常、光増幅器14(特に、入力及び出力パワー、動作モード並びに利得係数)を監視するために、光パルスの約1%を光検出器に向ける。この部分は盗聴者によって盗まれる可能性がありうる。伝送路の異なるセクション間の接続は、後方反射を軽減し、アクティブファイバセクション15でのレーザ発振を回避するために最適化されうる。
【0083】
図2には、エルビウム-ドープファイバセクション15における光の増幅を示すエネルギー図が示されている。ポンピングデバイス16から放出される、例えば、980nmのポンピング波長を有するポンピング放射線20は、エルビウム-ドープファイバセクション(ポンピング吸収率R
13)で吸収され、その結果、エルビウムイオンは第1(基底)準位21(
4I
15/2)から緩和時間τ
32≒20μsで(短寿命)第3準位23(
4I
11/2)に遷移する。エルビウムイオンは、第3準位23から、より長い緩和時間τ
21≒10msで(準安定)第2準位22(
4I
13/2)まで非放射的に緩和する。
【0084】
エルビウム-ドープファイバセクションを通過する光パルスは、光パルス(誘導信号放出率W21)の一部として追加された光子24のコヒーレントに同期した放出とともに、第2準位22から第1準位21への刺激された遷移を引き起こす。結果として生じる信号増幅の大きさは、エルビウムイオンの濃度、アクティブファイバセクション15の長さ及びポンピング放射線の強さに依存する。
【0085】
第2準位22の分布密度動態は次の方程式で説明できる。
【0086】
【0087】
ここで、n1は第1準位21の相対分布密度を示し、W12は誘導された信号の吸収率を示す。第2準位22から第1準位21への(A21)及び第3準位23から第2準位22への(A32)自発的遷移の割合は、活性媒体の特性に依存する。比率A32=1/τ32は、比率A21=1/τ21に比べて大きいため、第3準位の分布密度は特定の考慮事項では無視してもよい。次に、第2準位22の分布密度は、主にポンピング割合と信号割合との比によって決定される(他のパラメータが固定されている場合、ポンピングパワー及び信号パワーによって決定される)。信号パワーを増加すると、誘導放出率W21がポンピングによる高い準位R13へのイオン排出割合よりも大きくなりえ、反転準位は減少し始める。
【0088】
ポンプ吸収及び/又は放射率R13、R31は、ポンピングパワーに依存し、信号吸収大尾放射率W12、W21は信号パワーに依存する。特に、次の式で表される。
【0089】
【0090】
ここで、信号パワーをPs、吸収断面積をσa(νs)、σa(νp)、発光断面積をσe(νs)、σe(νp)、ポンピング周波数をνp、信号周波数をνs、モードスポットサイズをωs、ωp及びポンピング/信号モードのエンベロープをΨp、Ψsとする。
【0091】
利得はおおよそ次のようになりうる。
【0092】
【0093】
ここで、Γは信号モードと活性媒体との間の重複係数、σa(νs)は信号周波数νsにおける吸収断面積、ρは活性イオンの濃度、ηs=σe(νs)/σa(νs)、n2,iは光パルス前の第2準位22の分布密度(第2準位22内のイオンの割合)、Lはアクティブファイバセクションの長さである。この近似は、アクティブファイバセクション15の全体積にわたる第2準位22の分布密度の均一な分布に対して有効である。
【0094】
第2準位22の分布密度の径方向依存性及び信号モードと活性媒体との重なり(並びに自然発光)考慮すると、アクティブファイバセクション15を通過する際の信号パワーの変化は、次式で表すことができる。
【0095】
【0096】
ここで、N
2(r)=ρ(r)
2、N
1=ρ-N
2、P
0=hνは帯域δνにおける増幅器入力での架空のノイズ光子のパワーであり、
【数8】
は信号モードの正規化された包絡線である。利得は、光増幅器14の入力における信号パワーに対する出力における信号パワーに対する比、すなわち、G=P
out/P
inに対応する。
【0097】
ポンプ吸収係数は次のようになる。
【0098】
【0099】
ここで、σa(νp)はポンピング周波数νpにおける吸収断面積である。所定の断面、ファイバセクション長L及び濃度に関して、第2準位22の分布密度は、利得G及びポンプ吸収の値を決定しうる。
【0100】
(c)利得増加の制限
盗聴者は、ポンピングデバイス16にアクセスしてポンピングパワーを増大させ、これにより利得を増大させ、従って信号パワーを増大させることにより、光増幅器を介して攻撃を実行しうる。盗聴者は、おそらく気づかれることなく、結果として生じる過剰な光パルスを転用することができる。
【0101】
標準的な増幅器は通常、ポンピングパワーを信号パワーに変換する効率が最大となるように構成されている。しかしながら、様々な要因、特にアクティブファイバセクション15におけるポンプ吸収係数の値がこの効率を制限する。主に、活性イオンの濃度、活性媒体の長さ及びポンプモードと活性媒体との間の重複係数の値が、ポンプ吸収係数の値を決定する。したがって、アクティブファイバパラメータは、最大ポンピングパワー吸収のために決定されうる。
【0102】
アクティブファイバセクション15が、結果として得られる吸収係数が15dBとなるようなある一定の長さとエルビウムイオンの濃度を有する場合、アクティブファイバセクション15内のすべてのイオンは、ポンピングパワーのこの部分を吸収することができる(すべての活性イオンが基底状態にある場合)。「透明な」アクティブファイバセクション15の場合、基底状態/第1準位21のエルビウムイオンの数は約50%であり、これは吸収係数の半分に相当する。エルビウムイオンの90%がポンピング放射線20を吸収し、第3準位23に到達した(その後、第2準位22に緩和された)場合、エルビウムイオンの10%だけがポンピング放射線20を吸収できる。したがって、非反転ファイバの150dBの吸収係数が、90%反転媒体に対して同じ九州効率を得るために使用されうる。これは、過剰なアクティブファイバセクション長又はアクティブファイバセクション15における(エルビウム)イオンの過剰濃度を犠牲にして達成されえ、ここで、「過剰」は、非反転の場合と比較した追加の吸収に対応する。
【0103】
ポンピングパワーを効果的に吸収するために十分なイオンが存在する限り、光増幅器14は、利得がポンピングパワーの変化に鋭敏に反応する状態を保つ。このような状態でポンピングパワーが例えば10%増加すると、利得も同じ桁で増加する。対照的に、光増幅器14は、ポンピングパワーの増加に鈍感になるように構成されうる。これは、低いポンプ吸収係数、つまり、多量のポンピングパワーを有するポンピング放射線20をアクティブファイバセクションに供給する場合にそれでもほんの小さな部分しか吸収されない、によって達成されうる。この場合、反転分布密度は100%に近づく(たとえば99%)。したがって、過剰なポンピングパワーは、エネルギー効率を犠牲にして高レベルの反転分布密度をもたらす。ポンピングパワーレベルを任意に増加させた場合でも、反転分布密度は、たとえば1%を超えて、増加することはない。したがって、最大利得増加も1%を超えることはない。結果として、ポンピングパワーの増加に影響を受けない光増幅器14が提供されうる。
【0104】
それにもかかわらず、高強度パルス又は高エネルギーパルスは反転分布密度を減少し、光増幅器14をポンピングパワーの増加に対して感度が高い状態に戻しうるため、光増幅器14は、比較的強度の低い光パルスに対してのみポンピングパワーを増加させることによって、盗聴者の攻撃に抵抗しうる。
【0105】
(d)高エネルギーパルス
光パルスは、3nsから20μsの持続時間及び最大200mWのパルスピークパワーを含みうり、したがって、最大4μJの比較的高いエネルギーを含む(例えば、光学的時間領域反射率測定用のパルスの場合)。これらの光パルスは、第2準位22におけるエルビウムイオンの寿命/アクティブファイバセクション15における絵類有無イオンの第1準位21までの緩和時間τ21≒10ms(10ms)よりも期間が短い。これらの光パルスのエネルギーは、アクティブファイバセクション15を通るパルスの遷移中にエルビウム分布密度準位の分布密度に実質的に影響するほど十分に高い。光パルスは短すぎるため、第2準位22の分布密度に対して、連続又は準連続信号とは異なる作用をする。
【0106】
活性媒体を通過する高エネルギーパルスは、活性媒体が透明になるとき(つまり、利得が1に等しいとき)、反転分布密度の重要な部分をある程度まで除去できる。したがって、高エネルギーパルスが到着し、活性媒体に蓄積されたエネルギーが不十分である場合、活性媒体は低エネルギーパルスと同じ利得で高エネルギーパルスを増幅することができない。
【0107】
高エネルギーパルスは、活性媒体を通過するときにさらに歪みうる。特に、高エネルギーパルスの前端が活性媒体によって増幅される場合、第2準位22の局所的な分布密度数が減少し、高エネルギーパルスの中間部分の増幅が減少しうる。さらに、高エネルギーパルスの後部は、(当時は透明な)活性媒体を単に通過するだけで増幅されえない。結果として生じる歪みは、特に伝送路の監視や光学的時間領域反射率測定に関して、光パルスの処理中にエラーを引き起こしうる。
【0108】
パルス歪みは、
【数10】
のようなパルス形状メトリクスを使用して定量化することができる。ここで、s
in(t)は増幅前の光パルスの第1フォームファクタを示し、s
out(t)は増幅後の光パルスの第2フォームファクタを示し、t
1及びt
2はそれぞれパルスの終了と開始の時間を示す。
【0109】
反転した活性媒体に蓄えられるエネルギーは次のように近似できる。
【0110】
【0111】
ここで、νは増幅された信号の周波数を示し、ρは活性イオンの濃度(体積単位当たりの活性イオンの総量)を示し、aはアクティブファイバセクション15の半径を示し、Lはアクティブファイバセクション長を示し、n2,fは第2準位22の分布密度を示す。これは透明状態(利得が1に等しいとき並びに基本的に等しい量の活性原子が第1状態21及び第2準位22にあるとき)にあることに対応する。
【0112】
パルスの通過前の第2準位22の分布密度は次のように計算できる。
【0113】
【0114】
ここで、τは第2準位におけるエルビウムの寿命、R13はポンプ吸収率、R31は第3準位23から第1準位21への誘導発光の割合、A32は第3準位23から第2準位22への非放射遷移率、W12は強制信号吸収率、W21は誘導信号放射率である(E.Desurvire、エルビウム-ドープファイバ増幅器、原理と応用(2002)を参照)。
【0115】
活性媒体の透明状態に対応する第2準位22の分布密度は、次の式で近似できる。
【0116】
【0117】
光増幅器は、(表1)にしたがったパラメータを使用して構成されうる。
【0118】
【0119】
ここで、r=0かつΨp,s(r)=1の場合、対応する遷移レート値は、W21=446.6、R31=31337.8、W12361.7及びR13=154495.3[1/c]となる。活性媒体に蓄えられるエネルギーの対応する値はE=4.8μJである。最大ピークパワーが200mW、長さが20μsの光パルスでは、エネルギーは4μJである。したがって、このような光パルスは反転に強く影響する。長い伝送路10の場合、ピークパルス持続時間は、同様のピーク電量及びさらに高いパルスエネルギーで数百μ秒に達することができる。
【0120】
アクティブファイバセクション15に蓄えられるエネルギーは、一般に、アクティブファイバセクション長を長くすることによって増加されうる。しかしながら、提案された方法によれば、目標最大利得に対してアクティブファイバセクション長が既に決定されている。
【0121】
アクティブファイバセクション15に蓄えられるエネルギーは、アクティブファイバセクション15のファイバコア断面積サイズ、特にその直径を大きくすることによっても、増加させることができる。ポンピングパワーレベルを一定に保ちながらファイバコア断面積を増加させると、ポンピングパワー密度は比例して減少する。エルビウムイオンが高い準位に遷移する割合を決定するのはポンピングパワー密度である。ファイバコア断面積を増加させる前に反転レベルに到達するには、それに応じてポンピングパワーを増加する必要がある。この場合、活性媒体により多くのエネルギーが蓄えられているため、大きな入力パルスエネルギーを増幅する機会が自動的に得られる。
【0122】
(e)量子鍵配送のための光増幅
図3では、上記の考察に基づいた量子鍵配送方法のグラフが示されている。
【0123】
初期ステップ30では、第1データ処理装置11と第2データ処理装置との間で光パルスを伝送するための伝送路10が設けられ、伝送路10上に、アクティブファイバセクション15及びポンピングデバイス16を備えた光増幅器14が配置される。
【0124】
第1ステップ31では、光増幅器14の目標動作利得が決定される。目標動作利得は、伝送路10に沿った信号減衰に対応しうる。例えば、光パルスの光子数が、伝送路の50kmあとに10分の1に低下する場合(伝送係数T=0.1)、50kmでの光増幅器の目標動作利得はGop=10になりうる。
【0125】
第2ステップ32では、光増幅器14の目標最大利得が、光信号漏洩、例えば、検出可能な最小光信号漏洩に基づいて決定される。
【0126】
例えば、盗聴者によって転用/漏洩されうる光子の最大数が決定された場合、目標動作利得に対応する利得増加分が決定され、その後目標動作利得に加算することで、目標最大利得を得ることができる。特に、転用されうる光子の最大数から、対応する最大転用可能信号パワーが(例えば、Ps=Nhνs/tsを介して)決定されうる。この最大転用可能信号パワーは、光増幅器14の利得を利得増加分だけ目標動作利得を超えて増加させることによって得られるパワーに対応しうる。
【0127】
さらに、アクティブファイバセクション長は、ポンピングパワーの増加によって目標最大利得を超える増幅が不可能になるように調整される。利得とポンピングパワーの依存関係/対応関係は、例えば、ポンピングパワーを変化させ、対応する光パルスの増幅を測定することによって決定されうる。
【0128】
第3ステップ33では、最大に許容されるパルス形状歪み及びパルス当たりの目標最大エネルギーに基づいて、アクティブファイバセクション15のコア断面積サイズが(例えば、アクティブファイバセクション15のコア直径を介して)決定される。この目的のために、パルス当たりの目標最大エネルギーを有する高エネルギー光パルスがアクティブファイバセクションを介して伝送され、高エネルギー光パルスのパルス形状歪みを示すパルス形状メトリックが決定され、パルス形状メトリックは最大に許容されるパルス形状歪みと比較され、比較結果に基づいてコア断面積サイズが調整される。
【0129】
第4ステップ34では、光パルスが目標動作利得で増幅されるように、ポンピングデバイス16の動作ポンピングパワーが決定される。決定された目標動作利得、目標最大利得及びそれらに対応するポンピングパワーにより、ポンピングデバイス16にアクセスする盗聴者が動作ポンピングパワーを超えてどれだけポンピングパワーを増加させたとしても、転用されうる光パルスの割合は制限される。
【0130】
その後、共有鍵は、動作ポンピングパワーでポンピングデバイス16を動作させることにより光増幅器14を介して(第1又は第2データ処理装置11、12から放射された)光パルスが増幅される伝送路10に沿った量子鍵配送によって、第1データ処理装置11と第2データ処理装置12との間で決定されうる。
【0131】
(f)共有鍵決定
図4では、ステップ35に対応する量子鍵配送によって共有鍵を決定するためのさらなるステップのグラフ表示が示されている。第1データ処理装置11及び第2データ処理装置12は、認証された(パブリック)古典チャネルを介して接続され、伝送路10の光ファイバは量子チャネルとして機能する。
【0132】
初期ステップ40では、伝送路10(特にその光ファイバセグメント)の初期内部損失プロファイルが決定され、これは本質的に伝送路10における自然な信号損失を表す。この準備的なステップでは、伝送路10にアクセスしている盗聴者がいないことが保証されるべきである。初期損失プロファイルは、認証された古典通信チャネルを介して第1及び第2データ処理装置11、12の間で共有されうる。
【0133】
第1ステップ41では、伝送路10の物理的損失制御が(例えば、第1データ処理装置11及び第2データ処理装置12によって)実行される。特に、内部損失プロファイルが決定され、好ましくは、古典チャネルを介して第1データ処理装置11と第2データ処理装置12との間で共有される。
【0134】
このように更新された内部損失プロファイルを初期の内部損失プロファイルと比較することによって、盗聴者によって補足された可能性のある信号の割合rEが決定されうる。例えば、光増幅器14を含まない伝送路10のセクションにおける自然信号損失がr0で表され、盗聴者が信号の傍受された部分rEを傍受したとすると、傍受された部分rEは、関係(1-rt)=(1-rE)(1-r0)を介して、合計損失rtから導出できる。
【0135】
傍受された部分rEが大きくなりすぎて、正規のユーザが盗聴者に対する情報上の優位性を失った場合、プロトコルは終了する。プロトコルの終了は、伝送路10の長さと2つの光増幅器14の間の距離とに依存する。プロトコルは、特に、実効キーレートが目標キーレート値を下回る場合に、終了されうる。
【0136】
第2ステップ42では、乱数発生器を使用して、シーケンス長lのビットシーケンスが第1データ処理装置11で決定される。
【0137】
第3ステップ43では、ビットシーケンスは、一連のl鍵配送パルスを含む光信号にエンコードされ、伝送路10を介して第2データ処理装置12に伝えられる。信号ビット0及び1は、それぞれコヒーレント状態|γ0>及び|γ1>に対応する。0及び1の信号ビットをコヒーレント状態|γ0>及び|γ1>のパラメータにエンコードする特定の方法は異なってもよい。例えば、信号ビットは、異なる強度/光子数及び同じ位相を有するコヒーレント光パルスにエンコードされてもよく、あるいは、同じ強度及び異なる位相を有するコヒーレント光パルスにエンコードされてもよい。
【0138】
第4ステップ44では、光パルスは伝送路10に沿って設けられた1つ又は複数の光増幅器14によって増幅される。
【0139】
第5ステップ45では、光信号は第2データ処理装置12によって受信され、測定される。対応する受信ビットシーケンスが第2データ処理装置12で決定される。
【0140】
第6ステップ46では、第2データ処理装置12において決定的ではないと判定された量子測定に対応する決定的ではない信号ビットは、第1データ処理装置11におけるビットシーケンス及び第2データ処理装置12における受信ビットシーケンスから破棄される。この目的のために、決定的ではない信号ビットのビット位置は、古典チャネルを介して第2データ処理装置12から第1データ処理装置11に伝えられる。
【0141】
第7ステップ47では、古典チャネルを介してビットシーケンス及び/又は受信ビットシーケンスの一部を開示することで、第1データ処理装置11及び第2データ処理装置12によってそれぞれビットシーケンス及び受信ビットシーケンスに対してエラー率が決定でき、エラーの訂正を実行できる。エラーの訂正は、例えば、低密度パリティチェック(LDPC)コードを使用して実行されうる。その結果、第1及び第2データ処理装置11、12において、エラーが訂正されたビットシーケンスが決定される。
【0142】
第8ステップ48では、プライバシ増幅を使用して、エラーが訂正されたビットシーケンスから増幅されたキーシーケンスが決定される。増幅されたキーシーケンスはエラーが訂正されたビットシーケンスよりも短く、潜在的な盗聴者は増幅されたキーシーケンスに関する情報をまったく持っていないか、無視できるほど小さい情報を持っている。増幅されたキーシーケンスは、量子鍵配送の結果としての第1データ処理装置11と第2データ処理装置との間の共有鍵シーケンスを表す。
【0143】
第1ステップ41から第8ステップ48までのステップは繰り返され(矢印49)、共有鍵の全長が現在のアプリケーションで必要とされる長さになるまで、増幅されたキーシーケンスが(全体の)共有鍵に連結される。
【0144】
ステップ41から49までのすべての間、伝送路10は連続的に制御されうる(矢印40a)。したがって、信号損失プロファイルが決定され、好ましくは、古典チャネルを介して第1データ処理装置11と第2データ処理装置12との間で共有される。伝送路10の完全性が、盗聴者が散乱損失を解読するかなりの危険性の程度まで損なわれた場合、プロトコルは終了されうる。
【0145】
(g)伝送路制御
図5は、信号損失プロファイルに対応する光学的時間領域反射率測定から得られる例示的なリフレクトグラムを示す。リフレクトグラムは、後方散乱信号(特に高強度光テストパルス)パワーの対数を、反射率計と対応する不連続部との間の距離の関数として示す。反射率計は、第1データ処理装置11及び/又は第2データ処理装置12の内部又はその近くに配置できる。
【0146】
伝送路10に沿った自然な信号損失は均質な散乱によるもので、線形領域50に対応するパワーの指数関数的減衰をもたらす。リフレクトグラムの特徴51から54は、リフレクトグラム曲線の指数関数的減衰からの偏差を含み、特にリフレクトグラム曲線における鋭いピーク及び/又はドロップから、伝送路10の対応する位置での信号損失を分類することが可能になる。これは、共有鍵を決定するための初期ステップ40、鍵交換中に決定された損失と比較するために局所的な損失を特定して軽減することが重要である、において特に有用である。
【0147】
リフレクトグラムの特徴51から54は、一般に、伝送路10の不完全性に対応し、例えば、低品質の接続、曲がり又は異なるコネクタを表しうる。このような領域からの散乱損失は、伝送路10に関して局所化される。リフレクトグラムの特徴51から54のピークは、物理コネクタの場合フレネル反射を受けるテストパルスに起因する、過剰な散乱に起因しうる。反射図の右側にあるノイズの多い領域55は、後方散乱信号の終わりを表す。
【0148】
さらに又は代わりに、伝送路制御は、伝送路10のそれぞれの位置における信号損失を分類するために、第1データ処理装置11によって送信され、第2データ処理装置12によって受信されたテストパルスの強度を決定及び分析することを含んでもよい。
【0149】
本明細書、図面及び/又は特許請求の範囲に開示される特徴は、単独で又はそれらの様々な組み合わせとして、様々な実施形態を実現するための材料となりうる。
【外国語明細書】