(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070232
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】トランジスタ回路を特徴付けるためのシステム
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20240515BHJP
H03M 3/02 20060101ALI20240515BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
G01R19/00 Q
H03M3/02
G01R19/00 L
G01N27/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183089
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】22206710
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】23168026
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】510214089
【氏名又は名称】メレキシス・テクノロジーズ・ナムローゼフェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MELEXIS TECHNOLOGIES NV
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ピエット,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】デ ロホト,クリフ
(72)【発明者】
【氏名】ファンジェ,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】オット,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ラウテ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フライターク
【テーマコード(参考)】
2G035
2G060
5J064
【Fターム(参考)】
2G035AA08
2G035AB01
2G035AC01
2G035AD03
2G035AD10
2G035AD22
2G035AD32
2G035AD51
2G035AD54
2G035AD59
2G035AD65
2G060AA01
2G060AA05
2G060AA15
2G060AD06
2G060BA07
2G060BB08
2G060DA12
2G060FA02
2G060FA07
2G060GA02
5J064BA03
5J064BC06
5J064BC07
5J064BC08
5J064BC10
5J064BC11
5J064BC16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】極小値を見つけることによって、伝達特性に極小値を有するトランジスタ回路を特徴付けるためのシステムを提供する。
【解決手段】システムは100、トグリング信号を生成するためのバイアス電圧生成器120と、トランジスタ回路110のドレインソース電流の関数である電気信号を、トグリング信号と同期して2つの事前定義された値の間で交番する波形と乗算するように構成された乗算器140と、乗算器からの電気信号を積分するように構成された第1の積分器130であって、より多くの積分器が存在する場合、積分器の出力信号の線形組み合わせが更なる積分器に提供される第1の積分器と、トグリング信号と積分信号とを加算するように構成され、その和をトランジスタ回路のゲートに出力するように構成された加算器150と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート、ソース、及びドレインを備えるトランジスタ回路(110)を特徴付けるためのシステム(100)であって、前記トランジスタ回路が、ドレインソース電流対ゲートソース電圧伝達関数が特定の電圧に対して極小値を有するように構成されており、前記システムが、前記特定の電圧を測定するように構成されており、前記システムが、
-前記トランジスタ回路(110)と、
-トグリング信号を生成し、所与のバイアス点の周りで事前定義されたバイアス電圧vGをプラスとマイナスとの間でトグルするように構成されたバイアス電圧生成器(120)と、
-1つ以上の積分器(130)と、
-前記トランジスタ回路(110)の前記ドレインソース電流の関数である電気信号を、前記トグリング信号と同期して交番する2つの事前定義された値プラス及びマイナスAの間で交番する波形と乗算することによって、電気信号を生成するように構成された乗算器(140)であって、
-前記1つ以上の積分器(130)のうちの第1の積分器(130)が、前記乗算器(140)からの前記電気信号を積分するように構成されており、より多くの積分器(130)が存在する場合、前記積分器の出力信号の線形組み合わせが、前記更なる積分器(130)に提供される、乗算器(140)と、
-前記トグリング信号及び積分信号、又はその処理されたバージョンを加算するように構成された加算器(150)であって、前記積分信号が、前記1つ以上の積分器(130)の出力を線形に組み合わせることによって得られ、その和を前記トランジスタ回路のゲートソース電圧として出力するように構成された、加算器(150)と、を備える、システム(100)。
【請求項2】
前記トランジスタ回路(110)が、
-第1のトランジスタ(111)及び第2のトランジスタ(112)と、
-前記トランジスタ回路(110)の前記ゲートにおける又は前記トランジスタ回路(110)の前記ソースにおける電圧を、第1の傾きを有する伝達関数に従って、前記第1のトランジスタ(111)の前記ゲートと前記ソースとの間のゲートソース電圧に変換するように構成された第1の電圧変換器(113)と、
-前記トランジスタ回路(110)の前記ゲートにおける又は前記トランジスタ回路(110)の前記ソースにおける電圧を、第2の傾きを有する伝達関数に従って、前記第2のトランジスタ(112)の前記ゲートと前記ソースとの間のゲートソース電圧に変換するように構成された第2の電圧変換器(114)と、を備え、
-前記第1の傾き及び前記第2の傾きが、反対の符号を有する、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記第1のトランジスタ(111)又は前記第2のトランジスタ(112)が、化学成分に曝露可能であり、化学成分に対して感受性がある、又は前記第1のトランジスタ(111)及び前記第2のトランジスタ(112)が、化学成分に曝露可能であり、かつ、ただ1つが前記化学成分に対して感受性がある、又は前記第1のトランジスタ(111)又は前記第2のトランジスタ(112)のいずれかが、化学成分に曝露可能であり、前記第1のトランジスタ(111)及び前記第2のトランジスタ(112)が、前記化学成分に対して感受性がある、請求項2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記第1のトランジスタ(111)及び前記第2のトランジスタ(112)が、金属酸化物半導体FET又はバイポーラトランジスタである、請求項2に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記トランジスタ回路(110)が、グラフェンFETである、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記システムが、前記積分信号の前記処理されたバージョンを得るために、前記積分信号をサンプリング及び保持するためのサンプルアンドホールド回路を備える、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記システムが、正確に1つの積分器(130)を備える、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記システムが、正確に2つの積分器(130a、130b)を備え、前記第2の積分器(130b)の入力信号が、前記第1の積分器(130a)の出力信号と、事前定義された定数a1で乗算された前記第2の積分器の出力信号との和である、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記事前定義されたバイアス電圧が、前記加算器によって得られた前記和が、前記トランジスタ回路特性の二次領域内にあるようなものである、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記事前定義されたバイアス電圧が、前記加算器によって得られた前記和が、前記トランジスタ回路特性の線形領域内にあるようなものである、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項11】
第1の段階では、前記事前定義されたバイアス電圧が、前記加算器によって得られた前記和が、前記トランジスタ回路特性の線形領域内にあるようなものであり、第2の段階では、前記事前定義されたバイアス電圧が、前記加算器によって得られた前記和が、前記トランジスタ回路特性の二次領域内にあるようなものである、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項12】
前記システム(100)が、事前定義されたサンプリング周波数で前記積分器信号を量子化するように構成された量子化器(160)と、前記量子化された信号を、前記加算器(150)で前記トグリング信号と加算するためのアナログ信号に変換するためのデジタル-アナログ変換器(170)と、を備える、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項13】
前記デジタル-アナログ変換器(170)が、デジタルゼロ入力用の第1の事前定義された基準電圧とデジタル1入力用の第2の事前定義された基準電圧との間でトグルし、前記第1及び第2の基準電圧並びに前記事前定義されたバイアス電圧が、前記事前定義されたバイアス電圧でトグルすることが、前記トランジスタ回路の前記左側線形領域における電圧及び前記右側線形領域における電圧をもたらすように選択される、請求項12に記載のシステム(100)。
【請求項14】
前記デジタル-アナログ変換器(170)が、デジタルゼロ入力用の第1の事前定義された基準電圧とデジタル1入力用の第2の事前定義された基準電圧との間でトグルし、前記第1の基準電圧及び前記事前定義されたバイアス電圧が、前記事前定義されたバイアス電圧でトグルすることが、二次領域の前記左側部分における電圧、及び前記二次領域の前記同じ左側部分における電圧をもたらすように選択され、前記第2の基準電圧及び前記事前定義されたバイアス電圧が、前記事前定義されたバイアス電圧でトグルすることが、前記トランジスタ回路の前記二次領域の前記右側部分における電圧及び前記二次領域の前記同じ右側部分における電圧をもたらすように選択される、請求項12に記載のシステム(100)。
【請求項15】
前記量子化器(160)が、事前定義された数のNqビットを有するマルチビット量子化器であり、前記デジタル-アナログ変換器(170)が、Nqビットを有する、請求項12に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極小値を有する伝達特性を有するトランジスタ回路の分野に関する。より具体的には、このようなトランジスタ回路の伝達特性の極小値を見つけるためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
極小値を有する伝達特性を有するトランジスタ回路の極小値を見つけることは、ゲートソース電圧を掃引し、トランジスタ回路を通るソースドレイン電流を測定することによって達成され得る。これにより、電流が最小となる特定のゲートソース電圧を見つけることが可能になる。この特定の電圧を見つけるための時間が低減され得る場合、有利であろう。
【0003】
そのようなトランジスタ回路の例は、ディラック電圧で極小値を有するグラフェンFETである。US8638163B2は、半導体デバイスがテスト電圧を生成するために使用されるデバイス及び方法を開示している。グラフェントランジスタは、テスト電圧に基づいてゲートソース電圧を受信するように構成され、検出器は、ゲートソース電圧がグラフェントランジスタのディラック電圧であるかどうかを検出するように構成される。したがって、検出器は、ドレインソース電圧及び/又はドレインソース電流に基づいて、グラフェントランジスタがオフになっているかどうかを検出する。また、この場合、特定の電圧(この場合はディラック電圧)を見つけるための時間が低減され得る場合、有利であろう。
【0004】
したがって、極小値を有する伝達特性を有するトランジスタ回路の極小値を判定するための代替的なシステムに対するニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
極小値を有する伝達特性を有するトランジスタ回路の極小値を判定するためのシステムを提供することが、本発明の実施形態の目的である。
【0006】
上記の目的は、本発明に従う方法及びデバイスによって達成される。
【0007】
本発明の実施形態は、トランジスタ回路を特徴付けるためのシステムに関する。
【0008】
トランジスタ回路は、ゲート、ソース、及びドレインを備え、ドレインソース電流対ゲートソース電圧伝達関数が、特定の電圧に対して極小値を有するように構成されている。
【0009】
システムは、この特定の電圧を測定するように構成されており、
-トランジスタ回路と、
-トグリング信号を生成し、所与のバイアス点の周りで事前定義されたバイアス電圧vGをプラスとマイナスとの間でトグルするように構成されたバイアス電圧生成器と、
-1つ以上の積分器と、
-トランジスタ回路のドレインソース電流の関数である電気信号を、トグリング信号と同期して交番する2つの事前定義された値プラス及びマイナスAの間で交番する波形と乗算することによって、電気信号を生成するように構成された乗算器と、備える。
【0010】
1つ以上の積分器のうちの第1の積分器が、乗算器からの電気信号を積分するように構成されており、より多くの積分器が存在する場合、積分器の出力信号の線形組み合わせが、更なる積分器に提供される。
【0011】
更に、システムは、トグリング信号及び積分信号、又はその処理されたバージョンを加算するように構成された加算器を備え、積分信号は、1つ以上の積分器の出力を線形に組み合わせることによって得られ、その和をトランジスタ回路のゲートに出力するように構成されている。
【0012】
本発明の実施形態では、トランジスタ回路は、
-第1のトランジスタ及び第2のトランジスタと、
-トランジスタ回路のゲートにおける又はトランジスタ回路のソースにおける電圧を、第1の傾きを有する伝達関数に従って、第1のトランジスタのゲートとソースとの間のゲートソース電圧に変換するように構成された第1の電圧変換器と、
-トランジスタ回路のゲートにおける又はトランジスタ回路のソースにおける電圧を、第2の傾きを有する伝達関数に従って、第2のトランジスタのゲートとソースとの間のゲートソース電圧に変換するように構成された第2の電圧変換器と、を備える。
【0013】
第1の傾き及び第2の傾きは、反対の符号を有する。
【0014】
第1の電圧変換器が、第1のトランジスタのソースにおける電圧を変換するように構成される場合、トランジスタ回路は更に、第3の電圧変換器を備え得る。この第3の電圧変換器は、第1のトランジスタについて安定したドレイン-ソース電圧が得られるように、第1のトランジスタのドレインに電圧を印加するように構成される。
【0015】
第2の電圧変換器が、第2のトランジスタのソースにおける電圧を変換するように構成される場合、トランジスタ回路は、更に、第4の電圧変換器を備え得る。第4の電圧変換器は、第2のトランジスタについて安定したドレイン-ソース電圧が得られるように、第2のトランジスタのドレインに電圧を印加するように構成される。
【0016】
本発明の実施形態では、第1のトランジスタ又は第2のトランジスタは、化学成分に曝露可能であり、化学成分に対して感受性がある。
【0017】
本発明の実施形態では、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは、金属酸化物半導体FET又はバイポーラトランジスタである。
【0018】
本発明の実施形態では、トランジスタ回路は、グラフェンFETである。
【0019】
本発明の実施形態では、システムは、積分信号の処理されたバージョンを得るために、積分信号をサンプリング及び保持するためのサンプルアンドホールド回路を備える。
【0020】
本発明の実施形態では、システムは、正確に1つの積分器を備える。
【0021】
本発明の実施形態では、システムは、正確に2つの積分器を備え、第2の積分器の入力信号は、第1の積分器の出力信号と、事前定義された定数a1で乗算された第2の積分器の出力信号との和である。
【0022】
本発明の実施形態では、事前定義されたバイアス電圧は、加算器によって得られた和が、トランジスタ回路特性の二次領域内にあるようなものである。
【0023】
本発明の実施形態では、事前定義されたバイアス電圧は、加算器によって得られた和が、トランジスタ回路特性の線形領域にあるようなものである。
【0024】
本発明の実施形態では、第1の段階では、事前定義されたバイアス電圧は、加算器によって得られた和が、トランジスタ回路特性の線形領域内にあるようなものであり得、第2の段階では、事前定義されたバイアス電圧は、加算器によって得られた和がトランジスタ回路特性の二次領域内にあるようなものであり得る。
【0025】
本発明の実施形態では、システムは、事前定義されたサンプリング周波数で積分器信号を量子化するように構成された量子化器と、量子化された信号を、加算器でトグリング信号と加算するためのアナログ信号に変換するためのデジタル-アナログ変換器と、を備える。
【0026】
本発明の実施形態では、デジタル-アナログ変換器は、デジタルゼロ入力用の第1の事前定義された基準電圧とデジタル1入力用の第2の事前定義された基準電圧との間でトグルし、第1及び第2の基準電圧並びに事前定義されたバイアス電圧は、事前定義されたバイアス電圧でトグルすることが、当該トランジスタ回路の左側線形領域における電圧及び右側線形領域における電圧をもたらすように選択される。
【0027】
本発明の実施形態では、デジタル-アナログ変換器は、デジタルゼロ入力用の第1の事前定義された基準電圧とデジタル1入力用の第2の事前定義された基準電圧との間でトグルする。第1の基準電圧及び事前定義されたバイアス電圧は、事前定義されたバイアス電圧でトグルすることが、二次領域の左側部分における電圧、及び当該二次領域の同じ左側部分における電圧をもたらすように選択される。第2の基準電圧及び事前定義されたバイアス電圧は、事前定義されたバイアス電圧でトグルすることが、当該トランジスタ回路の当該二次領域の右側部分における電圧、及び当該二次領域の同じ右側部分における電圧をもたらすように選択される。
【0028】
本発明の実施形態では、量子化器は、事前定義された数のNqビットを有するマルチビット量子化器であり、デジタル-アナログ変換器は、Nqビットを有する。
【0029】
本発明の特定の及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項からの特徴は、適切である際、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わせることができ、単に特許請求の範囲に明示的に記載されるものだけではない。
【0030】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかであり、それを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】トランジスタの概略図及びトランジスタのゲート電圧の関数としてのドレイン-ソース電流を示すグラフを示す。
【
図2A】トランジスタのゲートに電圧変換器を備える、本発明の実施形態によるトランジスタ回路を示す。
【
図2B】トランジスタのソースに、かつ任意選択的にトランジスタのドレインに電圧変換器を備える、本発明の実施形態によるトランジスタ回路を示す。
【
図3】ゲート電圧に対するGFETドレイン-ソース電流及びその近似を示す。
【
図4】本発明の実施形態による、システムのトランジスタ回路電流を積分するデバイスの概略図を示す。
【
図5】本発明の実施形態による、トランジスタ回路の特定の電圧を測定するためのシステムの基本的な一次測定ループを示す。
【
図6】本発明の実施形態による、一次線形システムのブロック図を示す。
【
図7】本発明の実施形態による、二次システムの概略図を示す。
【
図8】本発明の実施形態による、二次システムのブロック図を示す。
【
図9】本発明の実施形態による、70Hzの帯域幅を有する二次システムの大きいゲイン変調を有するシステムの出力電圧を示す。
【
図11】
図9のシミュレーション結果を得るためにも使用された二次システムの周波数応答を示す。
【
図12】本発明の実施形態による、70Hzの帯域幅を有する二次システムの小さいゲイン変調を有するシステムの時間の関数としての出力電圧を示す。
【
図14】本発明の実施形態による、7Hzの帯域幅を有する二次システムの大きいゲイン変調を有するシステムの周波数応答を示す。
【
図17】本発明の実施形態による、トランジスタ回路の最小電流をもたらす特定のゲート電圧を測定するための例示的なシステムの概略図を示し、システムは、1ビット量子化器及びデジタル-アナログ変換器を備える。
【
図18】本発明の実施形態による、量子化器及びデジタル-アナログ変換器を備えるシステムによって使用されるGFET特性及びその線形近似を示す。
【
図19】本発明の実施形態によるシステムの、電圧に変換されたデシメーションフィルタの出力を示す。
【
図20】
図19のデシメーションフィルタの整定出力にズームしたプロットを示す。
【
図21】
図20のプロットを得るために使用される基準電圧と比較して、特定の電圧により近い基準電圧に対するデシメーションフィルタの整定出力にズームしたプロットを示す。
【
図22】本発明の実施形態による、トランジスタ回路の特定の電圧を測定するための例示的なシステムの概略図を示し、システムは、N
qビット量子化器及びN
qビットデジタル-アナログ変換器を備える。
【
図23】本発明の実施形態による、N
qビット量子化器及びN
qビットデジタル-アナログ変換器を備えるシステムの動作を例解するシミュレーションに対するサンプル数の関数におけるデシメーションフィルタ出力のプロットを示す。
【
図24】
図23と同じシミュレーションのデシメーションフィルタの整定出力にズームしたプロットを示す。
【
図25】
図23と同じシミュレーションのサンプル数の関数における5ビット量子化器出力を示す。
【0032】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。異なる図面において、同じ参照符号は、同じ又は類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、特定の実施形態に関して、及びある一定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。説明される図面は、概略のみであり、非限定的である。図面において、要素のうちのいくつかのサイズは、例解の目的のために誇張され、縮尺どおりに描かれていない場合がある。寸法及び相対寸法は、本発明の実施に対する実際の低減には対応しない。
【0034】
本明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、及び同様の用語は、類似の要素間で区別するために使用され、時間的、空間的、順位付け、又は任意の他の様態で、必ずしも順序を説明するためではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書において説明される本発明の実施形態は、本明細書において説明又は例解される以外の順序で動作可能であることを理解されたい。
【0035】
特許請求の範囲において使用される「備える(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきではなく、他の要素又はステップを除外しないことに留意されたい。したがって、述べられた特徴、整数、ステップ又は参照される構成要素の存在を指定するものと解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ若しくは構成要素、又はそれらのグループの存在若しくは追加を排除するものではない。したがって、「手段A及びBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。これは、本発明に関して、デバイスのただ関連する構成要素がA及びBであることを意味する。
【0036】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な場所での「一実施形態において」又は「実施形態において」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではないが、そうである場合もある。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、本開示から当業者に明らかであるように、1つ以上の実施形態において任意の好適な様態で組み合わせることができる。
【0037】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴が、本開示を合理化し、様々な発明態様のうちの1つ以上の理解を支援する目的で、単一の実施形態、図、又はそれらの説明にまとめられることもあることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、特許請求される発明が、各特許請求項に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、前述の単一の開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、この詳細な説明に明示的に組み込まれ、各特許請求項は、本発明の別個の実施形態として独立している。
【0038】
更に、本明細書において説明されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、他の特徴を含まない場合があるとしても、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内であることを意味し、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲では、特許請求される実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0039】
本明細書に提供される説明では、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることが理解される。他の事例では、周知の方法、構造、及び技法は、この説明の理解を曖昧にしないために詳細に示されていない。
【0040】
本発明の実施形態において、トランジスタ回路の二次領域を参照する場合、電流対ゲート特性を二次曲線によって近似することができる領域を参照する。
【0041】
本発明の実施形態において、トランジスタ回路の線形領域を参照する場合、電流対ゲート特性を2つの線形関数によって近似することができる領域を参照する。
【0042】
本発明の実施形態は、ゲート、ソース、及びドレインを備えるトランジスタ回路を特徴付けるためのシステム100に関する。トランジスタ回路は、ゲートソース電圧伝達関数の関数におけるドレインソース電流が特定の電圧に対して極小値を有するように構成されている。システム100は、特定の電圧を測定するように構成されている。
【0043】
【0044】
本発明の実施形態によるシステムは、
-トランジスタ回路110と、
-トグリング信号を生成し、所与のバイアス点の周りで事前定義されたバイアス電圧vGをプラスとマイナスとの間でトグルするように構成されたバイアス電圧生成器120と、
-1つ以上の積分器130と、
-トランジスタ回路110のドレインソース電流の関数である電気信号を、トグリング信号と同期して交番する2つの事前定義された値プラス及びマイナスAの間で交番する波形と乗算することによって電気信号を生成するように構成された乗算器140であって、1つ以上の積分器130のうちの第1の積分器130が、乗算器140からの電気信号を積分するように構成され、又はより多くの積分器130が存在する場合、積分器の出力信号の線形組み合わせが、更なる積分器130に提供される、乗算器140と、
-トグリング信号及び積分信号、又はその処理されたバージョンを加算するように構成された加算器150であって、積分信号が、1つ以上の積分器130の出力を線形に組み合わせることによって得られ、その和をトランジスタ回路のゲートソース電圧として出力するように構成されている、加算器150と、を備える。
【0045】
本発明の実施形態では、ゲート電圧又はソース電圧は、当該トグリング信号に対応するゲートソース電圧のトグリングを得るために、トグルされ得る。ソース電圧をトグルするとき、ドレイン電圧は、ドレインソース電圧が安定したままであるように、同時にトグルされ得る。ソース電圧をトグルすることは、共通ゲート動作にとって有利であり得る。そのような構成では、1つ以上のトランジスタ回路の共通ゲートは、固定電位に維持され得、フィードバック電圧(すなわち、トグリング信号及び積分信号の和又はその処理されたバージョン)がソースに印加され得る。次いで、当該フィードバック電圧のバージョンがまた、安定したドレインソース電圧が得られるように、同時にドレインに印加されるべきである。また、これは、共通ゲート動作のために有利である。ドレイン電圧をトグルすることなくソース電圧をトグルする場合、ドレインソース電圧の不安定性は、ドレインソース電圧の不安定性によるエラーを除去するために、後処理によって補償され得る。
【0046】
積分信号から、又は積分信号の処理されたバージョンから、トランジスタ回路の伝達関数の極小値に関連する特定の電圧を得ることができることが、本発明の実施形態の利点である。
【0047】
本発明の実施形態によるシステム100は、異なるタイプのトランジスタシステムを備え得る。本発明者らは、本発明の実施形態に従って、例えば生体分子又はイオンなどの化学成分を検出及び/又は定量化するために使用され得る特定のトランジスタ回路を見出した。トランジスタ回路は、異なる種類の化学成分(例えば、異なるタイプのバイオ分子又は異なる種類のイオン)に対して感受性であり得る。
【0048】
感知の分野では、電界効果トランジスタ(field effect transistor、FET)は、1つ以上の化学成分に感受性であるゲート電極とともに使用され得る。ゲート電極を1つ以上の化学成分を含む液体又はガスに曝露するとき、これらの1つ以上の化学成分は、特定の方法でゲート電極と相互作用し、そのためFETは、例えば、ゲートソース電圧VGS及びドレインソース電圧VDSの関数fであるドレインソース電流Idsとして、その電気特性を変化させる。IDS=f(VDS,VGS).
【0049】
通常のアプローチは、IDS=f1(VDS,VGS)の初期関数が既知であるか、又はトランジスタが媒体に曝露される前に測定されるかのいずれかである。
【0050】
媒体への曝露及び検出される分子とゲートとの相互作用の後、VDS、VGS及びIDS間の関係は、IDS=f2(VDS,VGS)に修正される。ほとんどの場合、f2はf1と比較してシフトしていることが発明者らによって観察された。
【0051】
古典的なアプローチでは、f1と比較したf2間のシフトが測定及び分析される。これは時間がかかり、いくつかの複雑なハードウェア/ソフトウェア作業を必要とする。
図1の左図は、ゲートG、ソースS、及びドレインD端子を有する古典的なnチャネル電界効果トランジスタを示す。右のグラフは、ゲートソース電圧V
GSの関数におけるドレインソース電流Ids(I
DS=f(V
GS))特性を示す。所与のバイアス点V
bにおいて、バイアス電圧の関数におけるドレインソース電流は、I
DS=f(V
b)を導出することができる。
【0052】
発明者らは、トランジスタ回路内でトランジスタを組み合わせることによって、ゲートソース電圧の関数におけるこのトランジスタ回路のドレインソース電流が極小値を有することを見出した。
【0053】
その例は、
図2Aに例解されている。トランジスタ回路110は、トランジスタ回路110のソースを形成する共有ソースを有し、トランジスタ回路110のドレインを形成する共有ドレインを有する第1のトランジスタ111及び第2のトランジスタ112を備える。第1の電圧変換器113は、第1の傾きを有する伝達関数に従って、トランジスタ回路110のゲートでの電圧を、第1のトランジスタ111のゲートでの電圧に変換し、第2の電圧変換器114は、第2の傾きを有する伝達関数に従って、トランジスタ回路110のゲートでの電圧を、第2のトランジスタ112のゲートでの電圧に変換する。第1の傾き及び第2の傾きは、反対の符号を有する。
【0054】
代替的に、第1の電圧変換器113及び第2の電圧変換器114は、ゲートソース電圧を生成するために、第1のトランジスタ111のソース及び第2のトランジスタ112のソースにそれぞれ接続され得る。その例が、
図2Bに例解されている。その場合、加えて、トランジスタ回路は、第1のトランジスタの一定のドレインソース電圧及び第2のトランジスタの一定のドレインソース電圧を達成するために、第1及び第2のトランジスタのソース上の信号のバージョンでドレインを駆動するための、第1のトランジスタ111のドレイン及び第2のトランジスタ112のドレインとそれぞれ接続された第3の電圧変換器113’及び第4の電圧変換器114’を備え得、その結果安定したドレインソース電流を得ることができる。また、これは、2つのトランジスタ回路を考慮した一定のゲート動作に有利である。
【0055】
ドレインソース電圧を一定に保つことは、厳密には必要ではない。本発明の実施形態に従うシステムはまた、ドレインソース電圧の何らかの変調を受け入れて動作し得る。これは、検出された最小伝導点にシフトを引き起こすが、異なる用途では、これは許容される。ユーザは、例えば、対象の化学物質に曝露する前後のドリフトに関心を持つ場合があり、ドレインソース電圧変調を受け入れて測定されたドリフトは、特定の電圧(例えば、ディラック電圧)の実際の電圧ドリフトと同じである場合がある。本発明の実施形態では、システムは、見つかった最小値の後処理のために構成されて、ドレインソース電圧の変化を補償し得る。
【0056】
図2のトランジスタ回路110は、任意のタイプの曝露に感受性があり得る。2つのトランジスタは、同じ種類のトランジスタであり得る。それらは、例えば、(概略図に示されるように)2つのnチャネルトランジスタであり得、それらはまた、例えば、2つのpチャネルトランジスタ、2つのデプレッショントランジスタ、又は2つのゼロ閾値電圧トランジスタであり得る。
【0057】
トランジスタは、例えば、正、負、又はゼロであり得る閾値電圧Vthによって特徴付けられ得る。
【0058】
本発明の実施形態では、トランジスタは、動作点Vbの近傍におけるそれらのI=f(V)特性の多項式展開における二次項を有する非線形電流対制御電圧特性を有する。任意のトランジスタが使用され得る。それらはまた、バイポーラトランジスタ又はMOSFETトランジスタであり得、それらはまた、それらの閾値未満(<Vth)の範囲で使用され得る。
【0059】
第1の電圧変換器113は、以下の式を使用して、トランジスタ回路のゲートにおける電圧VGSを第1のトランジスタ111のゲートにおける電圧に変換する。
VGS1=Vb+G(VGS-Vd)
【0060】
この関数は、制御電圧VGS=Vdで発生する最小伝導点(ゲート電圧Vb)における第1のトランジスタの動作点を定義する。第1のトランジスタのゲートとソースとの間に印加される電圧VGS1は、所与の傾き(G)に従って、制御電圧VGSとともに増加している。
【0061】
第2の電圧変換器114は、以下の式を使用して、トランジスタ回路のゲートにおける電圧VGSを第2のトランジスタ112のゲートにおける電圧に変換する。
VGS2=Vb+G(VGS-Vd)
【0062】
第2のトランジスタのゲートとソースとの間に印加される電圧VGS2は、反対の傾き又はゲイン係数(-G)に従って、制御電圧VGSとともに減少している。
【0063】
第1のトランジスタのドレインソース電流が
図2に示され、ゲートソース電圧の関数であり、I
ds=f(T1)として表されている。第1の電圧変換器のため、それは正の傾きを有する。第2のトランジスタのドレインソース電流が
図2に示され、ゲートソース電圧の関数であり、I
ds=f(T2)として表されている。第2の電圧変換器のため、それは負の傾きを有する。トレースは、初期状態であるため、非曝露トランジスタの垂直方向にミラーリングされている。
【0064】
両方のトランジスタを一緒にしたドレインソース電流は、各トランジスタのドレインソース電流の和であり、Ids=f(T1,T2)として表される。トランジスタ回路のこの最後のトレースは、電流が極小値を有し、電流がその最小値の周りで二次的な性質を有することを特徴とする。
【0065】
この極小値は、トランジスタのうちの1つの電圧電流特性がシフトされる場合、Vd以外の位置にシフトされる。これは、例えば、第1のトランジスタ又は第2のトランジスタが化学成分に曝露可能であり、化学成分に対して感受性があるときに発生し得る。感受性トランジスタを化学成分(例えば、生体分子、又はイオン)に曝露するとき、これは伝達関数のシフトを生じさせ、したがって極小値のシフトも生じさせる。この最小値の特定の電圧を、本発明の実施形態によるシステムを使用して測定することができることが利点である。
【0066】
図2のトランジスタのうちの一方は、他方のトランジスタが化学成分に曝露されていない間、化学成分に曝露可能であり、化学成分に感受性があり得る。化学成分は、液体、ゲル、又はガスなどの所与の媒体中に存在し得る。
【0067】
図2に例解されたトランジスタ回路では、トランジスタは、例えば、両方のトランジスタが媒体に曝露されるグラフェントランジスタであり得るが、一方のトランジスタだけが、例えば、所与の種類の化学成分(例えば、生体分子)に対してより感受性が高くなるように機能化され、他方はそうではない。
【0068】
本発明の実施形態ではまた、単一のグラフェン電界効果トランジスタ(graphene field effect transistor、GFET)をトランジスタ回路110として使用することもできる(
図3の挿入図を参照)。理由は、単一のGFETがその電流電圧特性において極小値を有するからである。その場合、ドレインソース電流が極小値となる特定のゲートソース電圧は、GFETのディラック電圧である。本発明の実施形態によるシステムを使用して、GFETは、GFETのディラック電圧に等しい出力電圧を送達するローパスフィルタとして機能する閉ループシステム内に統合される。ループは、ディラック電圧のデジタル値を送達するシグマデルタ変調器であり得る。本発明の実施形態では、ディラック電圧は、GFETが感受性のある化学成分へのGFETの曝露中にシフトされる。
【0069】
図2に例解されたトランジスタ回路において、2つのグラフェントランジスタが使用され、一方が曝露され、他方が曝露されていない、又は一方が機能化され、他方が機能化されていない場合、これは、両方がディラック点を有し、その組み合わせが共通のディラック点を有する2つの非線形関数のオーバーレイをもたらす。この共通のディラック点は、曝露が、曝露されたグラフェントランジスタの電気特性を変化させるときに、曝露中にシフトされる。これは、代わりに通常のMOSトランジスタの電流電圧特性を示す
図2の右側のグラフには例解されていない。
図2に例解されるようなトランジスタ回路を有する本発明の実施形態では、両方のトランジスタは、MOSトランジスタの場合、例えば、最小伝導点の近傍で二次で近似することができる伝達関数を生成し得る。
I
DS=I
1+a
1(V
GS-V
d)+b
1(V
GS-V
d)
2+I
2-a
2(V
GS-V
d)+b
2(V
GS-V
d)
2
I
DS=I
1+I
2+(a
1-a
2)(V
GS-V
d)+(b
1+b
2)(V
GS-V
d)
2
【0070】
トランジスタのうちの1つの電気特性が変更される場合、最小伝導点は、シフトされる。トランジスタT2が曝露されている場合、これは、I2、a2、及び/又はb2になる可能性がある。
【0071】
これらの式及び以下の式は、トランジスタがMOSトランジスタである場合に有効である。2つのGFETが使用される場合、同様の式が導出され得る。
【0072】
Vth1及びVth2がトランジスタの閾値電圧である、強い反転でバイアスされたMOSトランジスタの特定の場合において、以下のIds=f(VGS)特性が導出され得る。
Ids=a1(VGS1-Vth1)2+a2(VGS2-Vth2)2
Ids=a1(Vb+G(VGS-Vd)-Vth1)2+a2(Vb+G(VGS-Vd)-Vth2)2
【0073】
本発明の実施形態では、トランジスタ回路は、同一の整合トランジスタでの曝露前のシステムの最小伝導点が、ゲート電圧VGS=Vd=0に設定されるように構成され得る。次に、次の式を導出することができる。
Ids=a1(Vb+G VGS-Vth1)2+a2(Vb+G VGS-Vth2)2
【0074】
最小伝導点は、トランジスタT2が例えば化学成分に曝露される場合、ゲインa2又は閾値Vth2が修正されると、シフトされる。
【0075】
最小伝導点V
GSmcにおける特定の電圧は、上記式におけるI
dsの一次導関数を計算し、この導関数をゼロと等しくするよって得ることができ、その結果、次のようになる。
【数1】
【0076】
図2に示すようなトランジスタ回路は、特定の電圧で極小値(最小伝導点)を有する。トランジスタのうちの1つに感受性があり、化学成分に曝露されると、特定の電圧が変化する。
【0077】
この特定の電圧は、このトランジスタ回路を備える本発明の実施形態によるシステム100を使用して得ることができることが利点である。
【0078】
本発明の実施形態では、トランジスタ回路のトランジスタは、化学感受性トランジスタ(chemical sensitive transistor、CHEMFET)、又はイオン感受性トランジスタ(ion sensitive transistor、ISFET)であり得るが、差動アプローチではグラフェントランジスタ(GFET)であり得る。例えば、非常に高温又は過酷な媒体での測定など、グラフェントランジスタが例えば十分に感受性ではないものについて、新しい応用分野もサポートされ得る。
【0079】
本発明の実施形態では、第1のトランジスタ又は第2のトランジスタは、化学成分に曝露可能であり、化学成分に対して感受性がある。本発明の実施形態では、トランジスタのうちの1つだけが曝露可能であり、このトランジスタは、化学成分に感受性がある。
【0080】
本発明の実施形態では、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは、化学成分に曝露可能であり、1つだけが、化学成分に感受性がある。例えば、2つの(グラフェン)トランジスタの場合、両方が曝露されている間、一方のみが機能化され得、他方は機能化されない。
【0081】
本発明の実施形態では、第1のトランジスタ又は第2のトランジスタのうちの1つのみが化学成分に曝露可能であり、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは、化学成分に感受性がある。例えば、両方のトランジスタは同一であり得(例えば、2つの同一のchemFET)、1つだけが化学成分に曝露される。
【0082】
図3は、GFETのMITモデル10を示す。このモデルは、「Mackin,C.(2018) Graphene chemical and biological sensors:Modeling,systems,and applications.PhD thesis at the Massachusetts Institute of Technology」に提示されている。
図3は、単純な線形及び二次近似によるフィッティング11を示す。
【0083】
ディラック点(Vd)の周りでは、電流対ゲート電圧特性は、二次曲線によって近似することができる。
IDS(VG)=IDS0+α(VG-Vd)2
【0084】
ディラック点から離れると、特性はより線形になり、2本の線で近似することができる。
IDS(VG)=IDS1-2αV1(VG-(Vd-V1))VG≦Vd-V1
IDS(VG)=IDS1+2αV1(VG-(Vd+V1))VG≧Vd+V1
【0085】
3つの部分の間の接合部は、ゲート電圧Vd-V1及びVd+V1で作られる。これらの点において、IDS=IDS1=IDS0+α(V1)2であり、傾き(トランスコンダクタンス)は2αV1である。
IDS(VG)={IDS1-2αV1(VG-(Vd-V1))if VG≦Vd-V1;IDS0+α(VG-Vd)2 if Vd-V1<VG<Vd+V1;IDS1+2αV1(VG-(Vd+V1))if VG≧Vd+V1}
【0086】
トランジスタ回路110がGFETである、本発明の実施形態によるシステムにおいて、アナログローパスフィルタループは、ゲート電圧をディラック点に自動的に調整する。このアプローチの利点は、引用された先行技術のシステムがそれらのゲート電圧ランプの各単一のステップに要するのとほぼ同じ時間で、ディラック点の低ノイズ、高分解能の測定を得ることができることである。本発明の実施形態では、低エネルギー消費をもたらす単純なアナログ回路/デジタル回路を使用することができる。
【0087】
本発明の実施形態による、トランジスタ回路110(例えば、グラフェン電界効果トランジスタ又は
図2のようなトランジスタ回路)の特定の電圧(例えば、ディラック電圧)を測定するためのシステム100は、トランジスタ回路110と、所与のバイアス点の周りでプラス及びマイナスの事前定義されたバイアス電圧v
Gの間でトグルする、トグリング信号を生成するように構成されたバイアス電圧生成器120と、を備える。したがって、バイアス点は、バイアス電圧生成器によって生成されたトグリング信号の平均レベルである。所与のバイアス点は、例えば、ゼロボルトであり得る。しかしながら、本発明は、それに限定されない。所与のバイアス点はまた、ゼロとは異なり得る。
【0088】
更に、システム100は、トランジスタ回路のドレインソース電流(例えば、グラフェン電界効果トランジスタ110のチャネル電流I
DS、又は
図2の回路内のトランジスタT1及びT2を通る電流I
DSの和)の関数である電気信号を、トグリング信号と同期して交番する2つの事前定義された値+A及び-Aの間で交番する波形と乗算することによって電気信号を生成するように構成された乗算器140を備える。トグリングゲート電圧の周波数及びトランジスタ回路の特性(周波数応答)に応じて、乗算器に印加される交番波形は、それによってゲート電圧トグリング信号に対して遅延(位相シフト)され得る。事前定義された値Aは、例えば、1に等しくあり得る。しかしながら、本発明は、それに限定されない。また、Aの他の値も可能である。係数Aは、積分される信号の乗算係数である。この信号は、トランジスタ回路のドレイン電流(例えば、GFETドレイン電流)、ドレイン電流の乗算、トランスインピーダンス増幅器の出力であり得、トランジスタ回路信号と称される。この信号は、ゲイン係数も有する積分器によって積分される。本発明の実施形態では、Aは、トランジスタ回路信号に適用される全ての乗算係数の積が、任意の時点で第1の積分器の飽和をもたらさないように選択される。この総ゲイン係数は、ループ帯域幅及び安定性に影響を与える。フィードバック又はフィードフォワード係数は、好ましくは、トランジスタ回路特性及びトランジスタ回路信号の積分に関与する全ての乗算係数を考慮して、所望の帯域幅及び安定性を達成するように選択される。本発明の例示的な実施形態では、Aは、例えば、0.001~1000の範囲であり得る。
【0089】
更に、システム100は、1つ以上の積分器130を備え、1つ以上の積分器130のうちの第1の積分器130は、乗算器140からの電気信号を積分するように構成され、より多くの積分器130が存在する場合、積分器の出力信号の線形組み合わせが更なる積分器130に提供される。
【0090】
更に、システム100は、バイアス電圧生成器120のトグリング信号と、積分信号、又はその処理されたバージョンとを加算するように構成された加算器150を備え、積分信号は、1つ以上の積分器130の出力を線形に組み合わせることによって得られる。
【0091】
本発明の実施形態では、システムは、積分信号の処理されたバージョンを得るために、積分信号をサンプリング及び保持するためのサンプルアンドホールド回路を備える。
【0092】
本発明の実施形態では、積分信号は、乗算器に印加されるトグリング信号の-Aから+A(又は+Aから-A)へのトグリングの前にサンプリングされ得、乗算器に印加されるトグリング信号(ゲートに印加されるトグリング電圧と同じ周波数であるが、遅延の可能性がある)の一全周期の間、したがって-Aから+A(又は+Aから-A)の次のトグリングまで保持される。しかしながら、本発明は、それに限定されない。サンプルアンドホールド回路は厳密に要求されておらず、サンプルアンドホールド回路が存在する場合、サンプルモーメントは、上記で指定されたように異なって選択され得る。
【0093】
本発明の実施形態では、ループ内の最後の積分器は、サンプルアンドホールド機能を提供するためにスイッチドキャパシタ回路を用いて実装され得る。
【0094】
このようなシステムでは、本発明の実施形態によれば、ループが形成される。ループが極小値の特定の電圧で安定したゲート電圧に収束するためには、ローパスフィルタループは、ゲート電圧が特定の電圧にあるときに0であり、特定の電圧の近傍でゲート電圧に線形依存性を有する量を積分しなければならない。
【0095】
特定の電圧の近くでは、電流対ゲート電圧特性は二次曲線であるため、その導関数は、電流の極小値でヌルであるゲート電圧の線形関数である。
【0096】
したがって、ループは、量ΔIDS(VG)=IDS(VG+vG)-IDS(VG-vG)を処理することができ、ここで、vGは、事前定義されたバイアス電圧であり、そのため、電流差は、VGでの電流の導関数を使用して表すことができる。
ΔIDS(VG)=2α(VG-Vd)(2vG)
【0097】
したがって、システムは、わずかに異なるゲート電圧で実行される2つの電流測定間の差を処理しなければならない。これらの電流測定は、順番に実行されなければならない。トランジスタ回路に印加されるゲート電圧(V
GS、V
ゲートとも称される)は、V
G+v
GとV
G-v
Gとの間で周期的にトグルすることができ、V
G-v
Gがゲートに印加されるときに積分電流を反転させることによって、積分器内で差を計算することができる。
【数2】
rect(t-nT)={0t<nT 1t≧nT}
【数3】
M(t)
2=1
M(t)は、周期T及び50%のデューティサイクルでA=+1と-A=-1との間で振動する方形波である。
【数4】
【0098】
トランジスタ回路のドレインソース電流のこの積分は、
図4に例解されている。本発明の実施形態による、極小値での特定の電圧(例えば、トランジスタ回路がGFETである場合のディラック電圧)を測定するためのシステムの基本的な一次測定ループが、
図5に例解されている。これは、トランジスタ回路110(電流電圧特性において極小値を有するその特性グラフによって表される)、バイアス電圧生成器120、第1の積分器130、乗算器140、及び加算器150を示す。この例では、バイアス電圧生成器のバイアス点は0であり、その結果、積分信号は、この例では、極小値に対応する特定の電圧となる。バイアス点がゼロと異なる場合、積分信号は、特定の電圧からバイアス点を差し引いたものとなる。
【0099】
積分器は、電流自体ではなく、電流対ゲート電圧特性の傾きを積分するために、2つの異なるゲート電圧に対応する2つのトランジスタ回路電流間の差を積分する。
【0100】
図5に例解された基本ループは、ブロック図が
図6に示される一次線形システムを形成する。
【0101】
ループは、任意の次数まで拡張することができる。本発明の実施形態では、システムは、正確に2つの積分器を備え、第2の積分器の入力信号は、第1の積分器の出力信号と、事前定義された定数a
1で乗算された第2の積分器の出力信号との和である。その例が、
図7に例解されている。これは、トランジスタ回路110(これは、例えば、GFET又は
図2に例解されるようなトランジスタ回路であり得る)、バイアス電圧生成器120、第1の積分器130a、第2の積分器130b、乗算器140、加算器150、第2の積分器130bの出力信号を事前定義された定数a
1で乗算するための乗算器191、及び第1の積分器130aの出力信号と第2の積分器130bの出力信号とを加算するための加算器192を示す。
【0102】
二次システムの対応するブロック図が、
図8に例解されている。このブロック図において、K1は、可能なトランスインピーダンス係数、乗算波形(A)の振幅、及び連続時間積分器の実装に使用されるコンデンサのような積乗算係数を保持する。K2は、第2の連続時間積分器の時定数を保持する。
【0103】
本発明の実施形態では、システムは、変調がトランジスタ回路特性(例えば、GFET特性)の二次領域内にあるように、十分に小さい事前定義されたバイアス電圧変調を有する。
【0104】
線形システムの説明は、事前定義されたバイアス電圧vG>2V1及び差IDS(VG+vG)-IDS(VG-vG)に関与するゲート電圧が、トランジスタ回路特性の両方の線形領域に位置する場合に有効である。VG-vG≦Vd-V1及びVG+vG≧Vd+V1。
【0105】
その場合、
IDS(VG+vG)-IDS(VG-vG)
=IDS1+2αV1(VG-(Vd+V1))-[IDS1-2αV1(VG-(Vd-V1))]
=4αV1(VG-Vd)
【0106】
前の場合との違いは、ゲインが4αvGではなく4αV1であることである。
【0107】
大きいゲート電圧変調を使用することは、大きいゲート電圧範囲にわたって特定の電圧を検索することを可能にする。
【0108】
本発明の実施形態では、ループは、連続時間積分器又は離散時間積分器で実装することができる。
【0109】
以下のMatlabシミュレーション結果は、トランジスタ回路がGFETである説明された二次システムの挙動を示す。GFETに使用されるMITモデル10は、V
d=0.61Vにおいてディラック点を有する。文書に説明される近似11は、以下のパラメータを有する:α=0.0016A/V
2、V
1=0.0457V、I
DS0=23μA。これらのパラメータは、
図3のモデルのパラメータである。
【0110】
第1のループは、約70Hzの帯域幅で構築された。事前定義されたバイアス電圧は、1kHzで+/-0.2V(すなわち、大きいゲート電圧変調)であった。ループパラメータは、ゲイン値4αV
1を考慮して計算された。
図9及び
図10のシミュレーション結果は、フィルタの出力が、50ms未満でディラック電圧に達することを示す(
図7参照)。1kHzで+/-1mVの残留振動がある(0.607~0.612Vの
図9の拡大版である
図10を参照)。
図11は、二次システムの周波数応答を示す。
【0111】
以下のシミュレーション結果は、70Hzの同じ帯域幅を有するが、0.2Vの代わりに0.01V(すなわち、小さいゲート電圧変調)の事前定義されたバイアス電圧v
Gを使用する第2のループ設計を示す。ループパラメータは、ゲイン値4αv
Gを考慮して計算された。したがって、積分器時定数は、より大きいバイアス電圧で使用されるものとは異なる。
図12のプロットは、小さいゲート電圧変調を用いた二次システムの出力での整定を示す。排出された積分器から開始して100ms以内に正しい値に到達している。ループは、電流差ΔI
DS(V
G)=-2αV
1がV
Gに比例する代わりに一定である二次GFET電流領域の外側で最初に動作する。ループは、VGが二次領域に入るときにのみ動作を開始する。これは、以下の段落で更に説明される。
【0112】
70Hzの帯域幅及び1kHzでの小さいゲート電圧変調を有する二次システムの残留振動は、2mVの振幅を有する。これは、0.598~0.618Vの
図12の拡大版を示す
図13に例解されている。
【0113】
振動は、より小さいフィルタ帯域幅で低減させることができる。
図14、15、及び16は、7Hz未満の帯域幅及び大きいゲート信号変調を有するループの結果を示す。フィルタは、15μVの残留振動で500ms以内に整定する。
図14は、7Hz帯域幅及び大きいゲート電圧変調を伴う二次システムの周波数応答を示す。
図15は、大きいゲート電圧変調を伴う7Hz帯域幅の二次システムの整定を例解するMatlabシミュレーション結果を示す。
図15は、大きいゲート電圧変調を伴う7Hz帯域幅の二次システムの出力での残留振動を例解するMatlabシミュレーション結果を示す。サンプルアンドホールド回路を導入することによって、残留振動を低減することができる。しかしながら、厳密に要求されているわけではない。
【0114】
本発明の実施形態では、システム100は、事前定義されたサンプリング周波数で積分器信号を量子化するように構成された量子化器160を備える。更に、システム100は、量子化された信号を加算器150でトグリング信号と加算するためのアナログ信号に変換するためのデジタル-アナログ変換器170を備える。
【0115】
このように、ローパスフィルタループは、シグマデルタ変調器に変換される。これは、電流差、ΔIDS、とゲート電圧との間の線形関係のために可能である。
【0116】
図17は、本発明の実施形態による、二次シグマデルタADCを備えるトランジスタ回路(これは、例えば、GFETであり得る)の電流の極小値に対応する特定の電圧を測定するための例示的なシステムの概略図を示す。
【0117】
図17のシステム100は、トランジスタ回路110、バイアス電圧生成器120、デジタル-アナログ変換器170、バイアス電圧生成器120からの信号及びデジタル-アナログ変換器170からの信号を加算するための加算器150を備える。加算器150の出力は、トランジスタ回路110のゲートに接続される。システム100は、+Aと-Aとの間で交番する波形を生成するように構成された波形生成器142と、波形生成器の波形を、例えば、GFETのチャネル電流又はトランジスタ回路110の両方のトランジスタの結果として生じる2つのチャネル電流の和の関数である電気信号と乗算するように構成された乗算器140とを更に備える。更に、システムは、乗算器140からの信号を積分するための第1の積分器130aと、加算器192を使用して得られる、第1の積分器130aからの信号と、乗算器191を使用して事前定義された係数a1と乗算された第2の積分器の量子化された出力との和を積分するための第2の積分器130bとを備える。更に、システムは、第2の積分器130bの出力信号を量子化するための1ビット量子化器を備える。更に、システムは、量子化器の出力にデシメーションフィルタ180を備える。
【0118】
図17に例解された例示的な実施形態では、ゲート電圧を特定の電圧(例えばGFETの場合は、例えばディラック点)にスムーズに調整する代わりに、シグマデルタループは、電流差とゲート電圧との間の線形関係の有効性の領域内で、2つの固定電圧、V
ref1及びV
ref2、の間でゲート電圧V
Gをトグルする。したがって、1ビット量子化器の出力は、V
ref1とV
ref2との間で切り替え、それらを加算器150に交互に接続するデジタル-アナログ変換器170のスイッチに接続される。
【0119】
次いで、トランジスタ回路110は、4つの可能な異なる電圧のみ:Vref1±vG及びVref2±vG、で動作され、ここでvGは、バイアス電圧生成器120の事前定義された電圧である。これらは、電流差について2つの異なる値のみを生成する。
ΔIDS1=ΔIDS(Vref1)=IDS(Vref1+vG)-IDS(Vref1-vG)
ΔIDS2=ΔIDS(Vref2)=IDS(Vref2+vG)-IDS(Vref2-vG)
【0120】
線形関係が有効であるためには、ゲート電圧は以下のように選択されなければならない。小さいゲート電圧変調(すなわち、トランジスタ回路の二次領域内で)、vG、を使用する場合、4つのゲート電圧全てが、トランジスタ回路特性の中央二次部分になければならない。本発明の実施形態では、小さいvG信号変調が二次領域で使用され、それにより、第1の事前定義された電圧では、ゲート電圧は特定の電圧の左側の両方で2つのレベルの間でトグルし(ゲート電圧は特定の電圧Vdよりも小さい)、第2の事前定義された電圧では、両方のレベルが特定の電圧の右側になる(ゲート電圧は特定の電圧Vdよりも大きい)。
【0121】
線形関係が有効であるためには、大きいゲート電圧変調(すなわち、トランジスタ回路の線形領域内で)、vG、を使用する場合、4つのゲート電圧全てがトランジスタ回路特性の中央二次部分の外側になければならない。
Vref1+vG>Vd (右線形領域)
Vref1-vG<Vd (左線形領域)
Vref2+vG>Vd (右線形領域)
Vref2-vG<Vd (左線形領域)
【0122】
本発明の実施形態では、シグマデルタループは、ゲート電圧変調周波数
【数5】
でサンプリングされている。これは、
図17のサンプリングトリガ信号162によって例解されている。シグマデルタループは、0と1との間で交番するビットストリームを送達する。Dは、ビットストリーム内の1の数とビットの総数との間の比率であるとする。
【0123】
シグマデルタループは、ΔIDSの平均が0になるようにDを調整する。したがって、ΔIDSは、トランジスタ回路IDS対VGs特性の傾きに比例し、特定の電圧で0となる。シグマデルタ変調器は、積分器によって積分される量が平均で0であるように、そのフィードバック信号を生成する。
I
DS
=DΔIDS2+(1-D)ΔIDS1
【0124】
大きいゲート電圧変調を仮定すると:
I
DS
=D4αV1(Vref2-Vd)+(1-D)4αV1(Vref1-Vd)
I
DS
=0、したがって:
D(Vref2-Vd)+(1-D)(Vref1-Vd)=0
D(Vref2-Vref1)+Vref1-Vd=0
Vd=D(Vref2-Vref1)+Vref1
【0125】
本発明は、二次のシグマデルタ変調器に限定されない。また、異なる次数のシグマデルタ変調器が使用され得る。
【0126】
本発明の実施形態では、積分器は、連続時間積分器又は離散時間積分器であり得る。
【0127】
本発明の実施形態による、かつ
図17に例解された、MITモデルによって説明されるGFETに適用される例示的なシステムのMatlabシミュレーションが実行された。ディラック点は、0.61Vにあり、二次領域の限界は、V
1=0.045Vである。
【0128】
変換器が、Vref1からVref2までの全基準電圧範囲にわたって正確な変換を行うことができる場合、システムは、GFETのディラック電圧、又はトランジスタ回路110の両方のTの最小I
DS
の電圧(すなわち、トランジスタ回路の特定の電圧)をVref1からVref2までの範囲で測定することができる。
【0129】
システムが大きいゲート変調で動作する場合、以下の条件が満たされる必要がある。
Vref1+vGは、右の線形領域にあるべきであり、次のようになる。
Vref1+vG≧Vref2+V1⇒vG≧Vref2-Vref1+V1
Vref1-vGは、左の線形領域にあるべきであり、次のようになる。
Vref1-vG≦Vref1-V1⇒vG≧V1
Vref2+vGは、右の線形領域にあるべきであり、次のようになる。
Vref2+vG≧Vref2+V1⇒vG≧V1
Vref2-vGは、左の線形領域にあるべきであり、次のようになる。
Vref2-vG≦Vref1-V1⇒vG≧Vref2-Vref1+V1
【0130】
したがって、本発明のこの例示的な実施形態では、変調電圧とも称される、事前定義されたバイアス電圧vGは、以下の条件を満たさなければならない。
vG≧Vref2-Vref1+V1
【0131】
シミュレーションについては、次の値が使用されている。Vref1=0.55V、Vref2=0.65V、及びvG=0.145V。サンプル周波数FS=1kHz。本発明の実施形態では、システムは、デシメーションフィルタを備える。デシメーションフィルタは、例えば、256のオーバーサンプリングレートを有するsinc3フィルタであり得る。
【0132】
上記の値を考慮して、GFETは、以下のゲート電圧で動作する。
Vref1+vG=0.695V
Vref1-vG=0.405V
Vref2+vG=0.795V
Vref2-vG=0.505V
【0133】
図18のプロットから、これらの値が線形近似の限界にあることがわかる。プロットでは、ドレイン電流は、正確なモデル10及び近似11のドレイン電流の関数で示されている。デシメーションフィルタの出力は、0.6099Vでのディラック点測定を与える。
【0134】
図19は、電圧に変換されたデシメーションフィルタの出力を示す。フィルタの出力は、768msの整定時間に対応する3*256サンプル以内で整定する。
【0135】
図20は、デシメーションフィルタの整定出力にズームしたプロットを示す。
【0136】
本発明の代替的な実施形態では、基準電圧は、実際のディラック電圧により近く選択され得る。以下の値が、例えば、選択され得る。V
ref1=0.58V、V
ref2=0.63V、及びv
G=0.095V。この例では、GFETは、線形近似がよりよく保持され、ディラック点のよりよい推定をもたらす4つのゲート電圧で動作されている。これは、上記で引用した値に対するデシメーションフィルタの整定出力にズームしたプロットを示す
図21に例解されている。
【0137】
本発明の実施形態では、量子化器160は、事前定義された数のN
qビットを有するマルチビット量子化器であり、デジタル-アナログ変換器170は、N
qビットを有する。そのようなシステムの例示的な実施形態が、
図22に示されている。本概略図は、量子化器がN
qビット量子化器であり、デジタル-アナログ変換器170がN
qビットを有するという事実を除いて、
図17の概略図と同様である。
【0138】
マルチビットアプローチは、広い範囲で特定の電圧を検索することを可能にする。本発明の実施形態では、ループの初期整定は、特定の電圧の初期推測を処理し、最終的には、DACは、2又は3レベルのみの間でトグルする。
【0139】
本発明の実施形態では、シグマデルタループ内のマルチビット量子化器は、低分解能ADCである。本発明の実施形態では、電流積分器の出力を変換するだけでなく、いくつかの積分器の出力の線形組み合わせを変換する。この例では、第2の積分器の出力電圧が変換される。
【0140】
本発明の実施形態では、低分解能マルチビット量子化器の出力は、制御回路の制御電極に印加される電圧値を判定するように構成された制御回路によるいかなる処理もなしに、低分解能DACに直接接続される。
【0141】
先に説明したように、電流差ΔIDSと2つの基準電圧Vref1、Vref2との間の線形関係は、単一ビットのシグマデルタがディラック電圧の正しい値を送達するために有効でなければならない。
【0142】
マルチビット量子化器がシグマデルタループに使用される場合、基準電圧は、線形関係の有効性の領域を超えて拡張することができる。
【0143】
[Vref1;Vref2]範囲の極値にある2つの異なるゲート電圧のみをフィードバックする代わりに、ループは、範囲[Vref1;Vref2]にわたって均一に広がる2Nqの異なる可能なDAC電圧をフィードバックし、Nqは、ループ内で使用される量子化器のビット数である。いくらかの整定時間の後、ループは、フィードバックゲート電圧がそれらの可能なフィードバック電圧のうちのいくつかのみの間でトグルする状況に自動的に収束し、全てが特定の電圧の近傍に位置する。本発明の実施形態では、量子化器のビット数は、いくつかの連続したDAC電圧が、電流差とゲート電圧との間の線形関係の有効性の領域内にあるように選択される。
【0144】
以下のシミュレーションでは、トランジスタ回路はGFETである。以下のシミュレーションは、5ビット量子化器及び32レベルDACを使用して、0V~1Vの範囲のディラック電圧のデジタルコードを与えることができる、小さいゲート電圧変調(vG=5mV)を備えたマルチビットシグマデルタの動作を例解している。GFETモデルは、以前と同じである。小さいゲート変調の場合、電流差は、ゲート電圧範囲[Vd-0.045;Vd+0.045]のゲート電圧に対して線形である。DACステップは、2又は3DACレベルがそのゲート電圧範囲内にあるように、1V/32=30mVである。
【0145】
図23は、サンプル数の関数におけるデシメーションフィルタ出力のプロットを示す。
図24は、デシメーションフィルタの出力の拡大を示す。
図25は、サンプル数の関数における5ビット量子化器出力を示す。
【0146】
小さいvG変調信号では、傾き(積分された量)が印加されたゲート電圧に比例するように、GFETのIDS対VG特性の二次領域内にいくつかの連続したDAC電圧があることが好ましい。これは、線形フィードバックシステムを形成し、連続するDAC電圧としてディラック電圧の正確な測定を有するための条件である。実際、いくつかのDAC電圧出力Vdac+/-vGは、好ましくは二次領域内にある。
【0147】
システムは、傾きが一定である線形領域で開始する可能性が高いことに留意されたい。その時点では、実際のフィードバックはないが、積分器は、DAC電圧をディラック電圧の方向に移動させる。実際のフィードバック信号があり、ループが整定するのは、DAC電圧が特性の湾曲部分に入るときにのみである。二次特性に近いほど、ディラック点の測定はより正確になる。
【0148】
システム100は、ループが常に第1の段階で開始するように、システム100の基準電圧を選択するための上位システム(例えば、コントローラ)を備え得、ここで、事前定義されたバイアス電圧vGは、加算器によって得られた和がグラフェン電界効果トランジスタ特性の線形領域内にあり、好ましくは二次領域内にある第1のディラック電圧に整定するように選択される。第2の段階では、上位システムは、加算器によって得られる和がグラフェン電界効果トランジスタ特性の二次領域内にあるように、事前定義されたバイアス電圧を選択するように構成される。次いで、システムは、第1の得られたディラック電圧よりも大きい、又は少なくとも同等の精度であり得る第2のディラック電圧に整定する。こうして、2段階アプローチでディラック点測定を実行するシステムが得られる。
【外国語明細書】