(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070240
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ビスマレイミドおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/452 20060101AFI20240515BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20240515BHJP
C08K 5/32 20060101ALI20240515BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C07D207/452 CSP
C08L101/02
C08K5/32
C08K5/3415
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187349
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022180422
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐己
(72)【発明者】
【氏名】杉本 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健太
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗紀
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CC031
4J002CD001
4J002CD031
4J002CD051
4J002CD061
4J002CM021
4J002CM041
4J002ER006
4J002EU026
4J002FD146
(57)【要約】
【課題】ダイマジアミンのアミノ基がマレイミド化されたビスマレイミドであって、硬化性樹脂等の他剤と配合した際に混合相溶性およびハンドリング性を充分に高められたビスマレイミドおよびその製造方法の提供。
【解決手段】ダイマジアミンのアミノ基がマレイミド化された以下の特徴を有するビスマレイミド。
1)前記ビスマレイミドの酸価が、2mg-KOH/g以下である。
2)前記ビスマレイミドの、25℃でのB型粘度計により測定した粘度が、3.0Pa・s以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイマジアミンのアミノ基がマレイミド化された以下の特徴を有するビスマレイミド。
1)前記ビスマレイミドの酸価が、2mg-KOH/g以下である。
2)前記ビスマレイミドの、25℃でのB型粘度計により測定した粘度が、3.0Pa・s以下である。
【請求項2】
1H-NMRにおいて、マレイミド基の窒素原子に直結するメチレン基のプロトンに対応するピークの積分値(A)およびマレイミド基のビニルプロトンに対応するピークの積分値(B)を用いて量的対比を行った場合に、B/Aが、0.80超である請求項1記載のビスマレイミド。
【請求項3】
以下の工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載のビスマレイミドの製造方法。
1)pKaが1未満の酸とpKaが1以上の酸とを触媒として、ダイマジアミンのモルに対し115モル%以上用い、酸価が2mg-KOH/g超の粗ビスマレイミド溶液を準備する工程。
2)前記溶液中の酸成分を、カルボジイミド化合物(CDI)と反応させることにより酸価を2mg-KOH/g以下とする工程。
【請求項4】
請求項1または2に記載のビスマレイミドと、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和結合含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種と、を含有する樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマレイミドおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、ノート型パソコン等の電子機器に用いられる電子部品は高密度集積化、高密度実装化等が進んでいる。これらの電子部品に用いられる接着剤、封止材等の樹脂材料には、吸水率が低く信頼性に優れた耐熱性の材料が求められる。これらの接着剤、封止材等に用いられる組成物の成分として、ダイマジアミン(炭素数24~48のダイマ酸から誘導される脂肪族ジアミンであり、以下、「DDA」と略記することがある)のアミノ基がマレイミド化されたビスマレイミドを用いる方法が知られている。例えば、特許文献1には、LED素子の実装用の接着剤組成物の成分としてマレイミドを用いる方法が開示されている。特許文献2には、プリント配線基板用の異方性導電性接着剤組成物の成分としてビスマレイミドを用いる方法が開示されている。
【0003】
脂肪族ビスマレイミドは、特許文献3~5等に開示された公知の方法により得ることができる。すなわち、例えば、溶媒中、酸触媒下、ジアミンと、無水マレイン酸とを反応させ、イミド化し、精製することにより製造することができる。またこれらビスマレイミドは、Designer Molecules Inc.(DMIと略称されることがある)から、BMI-689、BMI-1500、BMI-1700、BMI-3000等の商品名で市販もされている。これらの脂肪族ビスマレイミドには、未閉環であるマレアミック酸、フマルアミック酸、マイケル付加体(MAAにアミンがマイケル付加反応して生成する化合物にさらに無水マレイン酸が反応して生成する化合物)等の酸成分が微量残留しているため、酸価としては、2mg-KOH/gを大幅に超えるものであった。これらの酸成分は、電子部品に用いた際に、電気特性に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0004】
前記問題の解決策として、特許文献6には、酸成分の残留した比較的酸価の高いビスマレイミド(粗ビスマレイミド)を製造した後、カルボジイミド化合物(CDI)との反応により不純物であるマレアミック酸等を除去し、酸価を2mg-KOH/g以下とする製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-31227号公報
【特許文献2】特開2015-193725号公報
【特許文献3】米国法定発明登録H424号
【特許文献4】米国公開20080262191号公報
【特許文献5】特表平10-505599号公報
【特許文献6】特開2018-115156号公報
【特許文献7】特開2014-132066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マレアミック酸等の酸由来の不純物を低減し酸価を2mg-KOH/g以下としたビスマレイミドにおいても、依然として課題があった。すなわち、ビスマレイミドの粘度が充分に低減されていないことから、硬化性樹脂組成物等の他剤と配合する際に、混ざりづらく、ハンドリング性が損なわれる。
【0007】
一方、マレイミド化反応の際に、収率を向上させる目的で、脂肪族3級アミンのような塩基性化合物を共存させることがあるが(例えば特許文献7)、そのような場合においても、やはりビスマレイミドの粘度は充分に低減できない。
【0008】
そこで本発明は、上記課題を解決するものであって、副生物由来の酸成分を充分に低減させたうえで、さらに粘度が充分に低減されたビスマレイミドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の酸触媒を2種類併用して粗ビスマレイミドを製造し、これにカルボジイミド化合物を反応させることで、前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
本発明は下記を趣旨とするものである。ダイマジアミンのアミノ基がマレイミド化された以下の特徴を有するビスマレイミド。
1)前記ビスマレイミドの酸価が、2mg-KOH/g以下である。
2)前記ビスマレイミドの、25℃でのB型粘度計により測定した粘度が、3.0Pa・s以下である。
【0011】
本発明は更に、1H-NMRにおいて、マレイミド基の窒素原子に直結するメチレン基のプロトンに対応するピークの積分値(A)およびマレイミド基のビニルプロトンに対応するピークの積分値(B)を用いて量的対比を行った場合に、B/Aが、0.80超である前記ビスマレイミドに関する。
【0012】
本発明は更に、以下の工程を含むことを特徴とする前記ビスマレイミドの製造方法に関する。
1)pKaが1未満の酸とpKaが1以上の酸とを触媒として、ダイマジアミンのモルに対し15モル%以上用い、酸価が2mg-KOH/g超の粗ビスマレイミド溶液を準備する工程。
2)前記溶液中の酸成分を、カルボジイミド化合物(CDI)と反応させることにより酸価を2mg-KOH/g以下とする工程。
【発明の効果】
【0013】
本発明のビスマレイミドは、低い粘度であり、かつ酸価が充分に低減されているため、硬化性樹脂等の他剤と配合した際に、混合相溶性およびハンドリング性が良好である。また、本発明のビスマレイミドは、低粘度かつ低酸価であることで、理由は不明であるが、反応性が顕著に向上しており、このことは他剤と配合する際に工業的に有利である。従い、半導体等を用いた電子部品製造に用いられる、封止材組成物、接着剤組成物等の成分として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1のビスマレイミドの
1H-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のビスマレイミドは、酸価が2mg-KOH/g以下であり、25℃でのB型粘度計により測定した粘度が、3.0Pa・s以下である。
【0016】
ここで、酸価は、前記したビスマレイミド中に残留している酸成分量を定量的に表したパラメータであり、JIS K0070(1992)に基づき、中和滴定法で測定した値を用いることができる。本発明のビスマレイミドの酸価は、2mg-OH/g以下が好ましく、1.7mg-KOH/g以下であることがより好ましく、1mg-KOH/g以下であることがさらに好ましく、0.5mg-KOH/g以下であることが特に好ましい。
【0017】
本発明のビスマレイミドの粘度は、25℃においてB型粘度計で測定した値が3.0Pa・s以下であることが必要であり、2.5Pa・s以下であることが好ましく、2.0Pa・s以下とすることがさらに好ましい。このようにすることによりビスマレイミドと他剤とを配合した際の混合相溶性が高く、良好なハンドリング性を確保することができる。
【0018】
本発明のビスマレイミドは、ダイマジアミン(DDA)とマレイン酸成分とが脱水縮合した化学構造を有する。ここでDDAとは、炭素数24~48のダイマ酸から誘導される脂肪族ジアミンである。DDAとしては、コグニスジャパン社製、商品名「バーサミン551」、クローダ社製、商品名「プリアミン1074」、「プリアミン1075」等の市販品を用いることができる。
【0019】
本発明のビスマレイミド製造法においては、先ず、溶媒中で、2種類の酸触媒存在下において、DDAと無水マレイン酸を反応させて、マレアミック酸を得、しかる後、マレアミック酸のアミック酸部分をイミド化してビスマレイミドとする。このとき、通常は、前述した酸由来の副生物が残留した、酸価が2mg-KOH/g超の粗ビスマレイミド溶液として得られる。反応基質である無水マレイン酸は、DDAのアミノ基に対し、等当量用いられる。イミド化は、用いた溶媒の還流温度で、イミド化により生成する水を共沸除去しながら行うことが好ましい。前記イミド化の際の反応温度としては、150℃以下とすることが好ましく、130℃以下とすることがより好ましい。イミド化の際の反応時間としては、2時間以上、12時間以下とすることが好ましく、4時間以上、10時間以下とすることがより好ましい。反応時間が12時間を超えると、ビニル重合体の生成等、副反応が起こりやすくなることがある。また、2時間未満では、イミド化反応が充分に進まず、洗浄が困難となり、収量が低下することがある。
【0020】
酸触媒としては、2種類の酸触媒を併用することが必要である。第一の酸触媒として、酸解離定数(pKa)が1未満のものを用い、第二の酸触媒として、pKaが1以上のものを用いる。なお、2価以上の酸については、第一酸解離定数(pKa1)をこの酸のpKaとして上記酸触媒の選択に用いるものとする。
【0021】
第一の酸触媒としては、具体的には、硫酸(pKa:-3)、硝酸(pKa:-1.4)などの無機酸、メタンスルホン酸(pKa:-2.6)、トルエンスルホン酸(pKa:-2.8)等の有機スルホン酸を用いることができる。中でも、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸が好ましい。
【0022】
第二の酸触媒としては、好ましくはpKa1~7のものが用いられ、脂肪族カルボン酸等の各種の有機カルボン酸類を例示することができる。第二の酸触媒としては、酢酸(pKa:4.6)、プロピオン酸(pKa:4.9)、マレイン酸(pKa:1.8)、コハク酸(pKa:4.2)、リンゴ酸(pKa:3.4)、フマル酸(pKa:3.0)等の脂肪族カルボン酸を例示することができる。また、脂肪族酸無水物は、脂肪族カルボン酸の化学的等価物として第二の酸触媒に用いることができる。脂肪族酸無水物としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸等の酸無水物が挙げられる。上記のカルボン酸または酸無水物の中で、マレイン酸、リンゴ酸、酢酸およびこれらの酸無水物が好ましい。
【0023】
2種類の酸触媒の合計使用量は、DDAモルに対し、115モル%以上とすることが必要であり、150モル%以上とすることが好ましい。酸触媒の合計使用量が115モル%未満の場合には、粘度低下の効果が不充分となる。また、酸触媒の使用量が多い場合には効果が飽和するので、経済性を考慮すると、650モル%以下とすることが好ましく、520モル%以下とすることがさらに好ましい。第一の酸触媒と第二の酸触媒の使用量は、上記合計量の範囲で適宜決定される。第一の酸触媒の使用量としては、DDAモルに対して、55モル%~285モル%の範囲が好ましく、85モル%~230モル%の範囲がさらに好ましい。第一の酸触媒は2種以上使用されてもよく、その場合、それらの合計使用量が上記した第一の酸触媒の使用量範囲内であればよい。第二の酸触媒の使用量は、DDAモルに対し、55モル%~365モル%の範囲が好ましく、65モル%~285モル%の範囲がさらに好ましい。第二の酸触媒は2種以上使用されてもよく、その場合、それらの合計使用量が上記した第二の酸触媒の使用量範囲内であればよい。第一の酸触媒と第二の酸触媒の使用比率は特に限定されないが、(第一の酸触媒)/(第二の酸触媒)=2/8~8/2(モル比)の範囲が好ましく、3/7~7/3の範囲がより好ましく、4/6~6/4の範囲がさらに好ましい。特に無水マレイン酸を、ビスマレイミドの原料としてだけでなく、第二の酸触媒としても、使用する場合、前記したDDAモルに対する第二の酸触媒の使用量は、無水マレイン酸の合計使用量(すなわち、ビスマレイミドの原料として使用される無水マレイン酸の使用量と第二の酸触媒として使用される無水マレイン酸の使用量との合計使用量)から、DDAモルに対する2倍モル量を減じた値のことである。当該値が前記したDDAモルに対する第二の酸触媒の使用量の範囲内であればよい。
【0024】
このように2種類の酸触媒を特定量で併用することで、マレイミド化反応が促進され、粗ビスマレイミドの製造過程におけるマイケル付加体、ビニル重合体などの副生が抑制され、低い粘度の粗ビスマレイミド溶液が得られる。
【0025】
マレイミド化反応の際には、収率を向上させる目的で塩基性化合物(例えばトリエチルアミン等の脂肪族3級アミン)を共存させることがあるが、このような塩基性化合物は酸触媒との中和反応により塩を形成し、添加した酸触媒の一部を失活させるものと考えられる。したがって、本発明のマレイミド化反応においては、塩基性化合物は使用しないことが好ましい。塩基性化合物を共存させる場合、前記したDDAモルに対する2種類の酸触媒の合計使用量は、当該合計使用量から、DDAモルに対する塩基性化合物の使用量を減じた値のことである。当該値が前記したDDAモルに対する2種類の酸触媒の合計使用量の範囲内であればよい。
【0026】
反応の際用いる溶媒としては、生成物であるビスマレイミドを溶解する溶媒であれば、制限はないが、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド系溶媒、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒は、単独、または2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中で、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒とからなる混合溶媒が好ましく用いられる。混合比率は特に限定されないが、前記した好ましい反応温度である150℃以下とするには、(アミド系溶媒)/(炭化水素系溶媒)=5/5~1/9(質量比)の範囲が好ましく用いられる。
【0027】
反応の際の固形分濃度としては、20~70質量%とすることが好ましく、30~70質量%とすることがより好ましい。なお、固形分濃度とは、反応基質(DDAおよび無水マレイン酸)合計質量の、仕込溶液質量(反応基質、溶媒、酸触媒の合計質量)に対する質量%のことである。
【0028】
次に、前記のようにして得られた粗ビスマレイミド溶液を精製して、酸価が2mg-KOH/g以下のビスマレイミドを得る。すなわち、溶媒中、CDIを、ビスマレイミド中の酸成分と反応させて、ビスマレイミドの酸価を2mg-KOH/g以下にする。CDIの使用量は、粗ビスマレイミドの酸価に応じて、カルボジイミド基が酸価に対して1倍当量以上であれば特に限定されず、例えば、1~1.2倍当量の範囲で適宜選択することができる。反応温度は、30℃~100℃が好ましく、40℃~70℃がより好ましい。粗ビスマレイミドの固形分濃度は、溶液質量に対し、20~70質量%とすることが好ましく、30~70質量%とすることがより好ましい。この反応により、ビスマレイミド中の酸成分とCDIとが反応し、CDIの尿素誘導体が副生する。このCDIの尿素誘導体は、反応液を、水、アルコール(メタノール、エタノール等)等で洗浄する、すなわち溶媒抽出することにより除去することができる。その後、溶媒を留去し、酸価が2mg-KOH/g以下のビスマレイミドを得ることができる。精製されたビスマレイミドの酸価は1mg-KOH/g以下であることがより好ましく、0.5mg-KOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0029】
粗ビスマレイミド中の酸成分と反応させるCDIとしては、N,N′-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-β-ナフチルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t-ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジ-t-ブチルカルボジイミド、N,N′-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ポリ(1,6-ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′-メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4′-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3′-ジメチル-4,4′-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(メチル-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルベンゼンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルベンゼンおよび1,5-ジイソプロピルベンゼンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等を用いることができ、DICまたはEDCが好ましい。これらのCDIは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
粗ビスマレイミド中の酸成分とCDIとの反応に用いられる溶媒に制限はないが、トルエン、キシレン(o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)、エチルベンゼン、メシチレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒が好ましい。
【0031】
このようにして得られたビスマレイミドは、その1H-NMRにおけるNMR積分値比(B/A)が0.80超となっていることが好ましく、0.82以上となっていることがより好ましい。またさらにB/Aは0.85以上であることがさらに好ましく、0.87以上であることがよりいっそう好ましい。ここで、Aは、マレイミド基の窒素原子に直結するメチレン基のプロトンに対応するピークの積分値であり、Bは、マレイミド基のビニルプロトンに対応するピークの積分値である。この積分値比が高いほど、ビスマレイミド中のマレイミド基含有量が高いことを意味し、すなわち、DDAとマレイン酸が反応した際に、副生成物であるマイケル付加体やビニル重合体の生成が抑制され、結果として粘度上昇の一因となっている物質が低減されていることを意味する。
【0032】
ここで、NMR測定条件は以下の通りである。(
図1参照)
<
1H-NMR測定条件>
装置:核磁気共鳴装置(日本電子社製:型番ECA500)
周波数:500.16MHz
基準物質:テトラメチルシラン
溶媒:重クロロホルム
測定温度:25℃
上記測定条件においては、ビスマレイミドのマレイミド基の窒素原子に直結するメチレン基のプロトンのピークに対応するケミカルシフトは約3.5ppmである(
図1のピーク1)。また、ビスマレイミドのマレイミド基のビニルプロトンのピークに対応するケミカルシフトは約6.7ppmである(
図1のピーク2)。従い、これらのピークの積分値をNMRチャートから読み取ることにより、NMR積分値比を算出することができる。
【0033】
本発明のビスマレイミドの分子量としては、後述する、GPCによる重量平均分子量として1400~1800の範囲であることが好ましく、1450~1700の範囲であることがより好ましく、1450~1620の範囲であることがさらに好ましく、1450~1520の範囲であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明のビスマレイミドは、硬化反応性に優れているため、比較的短いゲルタイムを示す。詳しくは、ゲルタイムは、ビスマレイミド30gに対して、硬化剤としてジクミルペルオキシド0.6gを加えて攪拌することにより得られる均一組成物の180℃におけるゲルタイムであり、JIS K6910に準拠して測定された値を用いている。本発明のビスマレイミドのゲルタイムは通常、300秒以下であり、好ましくは280秒以下であり、より好ましくは220秒以下であり、さらに好ましくは180秒以下である。本発明のビスマレイミドのゲルタイムの下限値は特に限定されず、当該ゲルタイムは通常、50秒以上(特に100秒以上)であってもよい。
【0035】
本発明のビスマレイミドは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和結合含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等に配合することで樹脂組成物として使用することができる。その配合量は、使用目的に応じて決定され、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物100質量部中、5~50質量部の範囲である。
【0036】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、ブタジエンなどの二重結合をエポキシ化した化合物などが挙げられる。
【0037】
フェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、水酸基含有シリコーン樹脂類等が挙げられる。
【0038】
不飽和結合含有化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0039】
ベンゾオキサジン化合物としては、6,6-(1-メチルエチリデン)ビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)、6,6-(1-メチルエチリデン)ビス(3,4-ジヒドロ-3-メチル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)等が挙げられ、また、市販品としては例えば、四国化成工業(株)社製の「ベンゾオキサジンF-a型」や「ベンゾオキサジンP-d型」、エア・ウォ-タ-社製の「RLV-100」等が挙げられる。
【0040】
本発明のビスマレイミドを配合した樹脂組成物は、FPCのコア基板やカバーレイフィルム、銅張積層板、半導体装置の半導体素子表面のパッシベーション膜、保護膜、層間絶縁膜のほか、プリント基板のコンフォーマルコート、太陽電池の表面保護膜、液晶表面素子の配向膜、ガラスファイバーの保護膜、印刷用ペースト組成物、導電ペースト組成物など、広範な用途に利用することができる。
【実施例0041】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
【0042】
<酸価>
JIS K0070(1992)の規定に基づき、中和滴定法で測定した。ビスマレイミド約1.0gを精秤し、THFでビスマレイミド濃度がおよそ2質量%になるように希釈し、ブロモチモールブルー(BTB)を指示薬として用い、水酸化カリウム(KOH)で滴定をおこない、中和に消費されたKOHのmg数をビスマレイミド1gあたりに換算した値を用いた。
【0043】
<粘度>
トキメック社製DVL-BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、25±0.2℃に温度制御された恒温槽中で回転粘度を測定した。
【0044】
<重量平均分子量(Mw)>
GPCにより測定した。測定条件は以下の通りである。
カラム:昭和電工社製 Shodex(R) GPC KF‐803×1本, GPC KF-804×2本 (3本連結)
溶離液:THF
温度:40℃
流量:1.0mL/分
検出器:UV検出器
【0045】
<混合相溶性>
室温において、一般的なエポキシ樹脂プレポリマーである、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン5gを20mlのガラス製サンプル管に入れ、ビスマレイミド5gを加え、手で振るもしくは、必要に応じてマグネチックスターラーを用いて攪拌し、分離や濁り、気泡のない状態(均一状態)になる様子を確認した。
○:手で振ることで直ちに均一状態となった。
△:スターラーにより撹拌することで5分以内に均一状態となった。
×:スターラーにより10分撹拌しても均一状態にならなかった。
【0046】
<ゲルタイム>
硬化反応性の指標として、以下の手順によりゲルタイムを測定した。
ビスマレイミド30gに対して、硬化剤としてジクミルペルオキシド0.6gを加えて攪拌することにより均一な組成物を得た。得られた組成物の180℃におけるゲルタイムをJIS K6910に準拠して測定した。
具体的には、0.5gの組成物を180℃の熱板上に滴下し、ストップウォッチを始動した。組成物をスパチュラでかき混ぜ、粘度が上昇してスパチュラを上に持ち上げた際に糸を引かなくなった時点を終点とし、測定時間をゲルタイムとして記録した。
ゲルタイムは300秒以内のものを合格とした。
【0047】
<実施例1>
1)粗ビスマレイミド溶液の調製
水分離器付き還流冷却器、攪拌機、温度計を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、トルエンとNMPとからなる混合溶媒(質量比:トルエン/NMP=80/20)、ダイマジアミン(クローダジャパン株式会社製「プリアミン1074」、分子量:547):0.17モル、無水マレイン酸:0.34モル、第一の酸触媒としてp-トルエンスルホン酸:0.15モル、第二の酸触媒として無水マレイン酸:0.22モルを投入して攪拌した。得られた溶液を、攪拌しながら昇温して内容物を加熱還流させた。反応により生成する水を共沸分離しながら約125℃で6時間還流を続けた後、冷却して、2相化した橙黄色溶液を得た。その後、得られた溶液の上相を取り出し、水系溶媒で2回洗浄し、トルエンを溶媒とする固形分濃度が30質量%の粗ビスマレイミド溶液を得た。この粗ビスマレイミドの酸価は、8.2mg-KOH/gであった。
【0048】
2)CDIによる酸価の低減
攪拌機、温度計を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、前記粗ビスマレイミド溶液:200g、N,N′-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)1.2g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.05倍当量)、メチルアルコールを投入し、60℃で60分加熱した後、冷却して、橙黄色溶液を得た。得られた溶液を水系溶媒で2回洗浄することにより精製させ、溶媒を留去することでビスマレイミド(A-1)を得た。このビスマレイミドの酸価は0.97mg-KOH/gであり、粘度は、2.5Pa・sであった。このビスマレイミドを
1H-NMRを前記した条件で測定した結果を
図1に示した。
図1に示すように、この
1H-NMRチャートで認められたピーク1(δ:約3.5ppm 多重線)の積分値(A)とピーク2(δ:約6.7ppm 単線)との積分値(B)とを用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.86であった。
【0049】
<実施例2>
第二の酸触媒を、マレイン酸:0.12モルとし、DIC量を1.9g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.05倍当量)としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ビスマレイミド(A-2)を得た。
【0050】
<実施例3>
第一の酸触媒を、メタンスルホン酸:0.31モルとし、第二の酸触媒である無水マレイン酸:0.32モルとし、DIC量を0.6g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.1倍当量)としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ビスマレイミド(A-3)を得た。
【0051】
<実施例4>
第一の酸触媒を、メタンスルホン酸:0.31モルとし、第二の酸触媒をマレイン酸:0.26モルとし、DIC量を1.1g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.0倍当量)としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ビスマレイミド(A-4)を得た。
【0052】
<実施例5>
第一の酸触媒を、メタンスルホン酸:0.39モルとし、第二の酸触媒を無水マレイン酸:0.49モルとし、DIC量を1.2g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.03倍当量)としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ビスマレイミド(A-5)を得た。
【0053】
<比較例1>
第一の酸触媒を、メタンスルホン酸:0.31モルとし、第二の酸触媒を使用せず、DIC量を2.3g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.1倍当量)としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ビスマレイミド(B-1)を得た。
【0054】
<比較例2>
第一の酸触媒を使用せず、第二の酸触媒を第二の酸触媒である無水マレイン酸:0.32モルとし、DIC量を3.0g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.1倍当量)としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ビスマレイミド(B-2)を得た。
【0055】
<比較例3>
第一の酸触媒を、メタンスルホン酸:0.09モルとし、第二の酸触媒である無水マレイン酸:0.10モルとし、DIC量を2.2g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.1倍当量)としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ビスマレイミド(B-3)を得た。
【0056】
<比較例4>
特許文献6、実施例12の記載に準じて、粗ビスマレイミドを得て、これに対し実施例1と同様にしてCDIを反応させて、精製されたビスマレイミド(B-4)を得た。すなわち、0.058モルのバーサミン552をテトラヒドロフラン(THF)90mlに溶解した溶液を、0.127モルの無水マレイン酸をTHF60mlに溶解した溶液中にゆっくり加えた。添加1時間後に、無水酢酸125mLを加え、この反応混合物を24時間撹拌した。この反応混合物を還流させ、その還流温度に3時間保持した。この反応混合物にベンゾキノン0.1gを加えた後、真空下で溶媒を除去した。得られた残分にTHF75mLと1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を加え、室温で溶解し、24時間攪拌した。その後、その溶媒を30℃で除去し、その残分を500mLのペンタンで2回抽出した。これらのペンタン部分を合わせ、それをドライアイス/イソプロピルアルコール浴中で冷却すると、白色の固体が晶出したので、これを冷時濾過後、濃縮することにより、ペンタンを溶媒とするビスマレイミド濃度が50質量%の粗ビスマレイミド溶液を得た。この粗ビスマレイミドの酸価は、9.8mg-KOH/gであった。得られた粗ビスマレイミド溶液120gに、DIC1.5g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.1倍当量)を加え、メチルアルコールを投入し、60℃で60分加熱した後、冷却して、橙黄色溶液を得た。得られた溶液を水系溶媒で2回洗浄することにより精製し、溶媒を留去することでビスマレイミド(B-4)を得た。
【0057】
<比較例5>
特許文献6、実施例13の記載に準じて、粗ビスマレイミドを得て、これに対し実施例1と同様にしてCDIを反応させて、精製されたビスマレイミド(B-5)を得た。すなわち、0.096モルのバーサミン552をTHF60mLに溶解した溶液を、0.206モルの無水マレイン酸を、300mLのTHFに溶解した溶液にゆっくり加えた。添加完了後に、この反応混合物を一時間撹拌し、次いでHOBtをその中に溶解させた。この撹拌された反応混合物を氷浴中で冷却し、その後、0.238モルのDCCを、少しずつ加えた。この添加の完了後に、反応混合物を氷浴中で更に1時間撹拌した。次いで、氷浴を取り外し、その撹拌された反応混合物を一晩かけて室温まで暖めた。この反応混合物を濾過し、得られた固体をTHFで洗浄した。これらのTHF部分を全部合わせ、これにメトキシフェノール0.2gを加え、その後、30℃でTHFを除去した。この残分をヘキサンで抽出した後、そのヘキサンを除去した。次に、これを再度ペンタンで抽出することにより、ペンタンを溶媒とするビスマレイミド濃度が50質量%の粗ビスマレイミド溶液を得た。この粗ビスマレイミドの酸価は6.7mg-KOH/gであった。得られた粗ビスマレイミド溶液120gに、DIC1.0g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.1倍当量)を加え、メチルアルコールを投入し、60℃で60分加熱した後、冷却して、橙黄色溶液を得た。得られた溶液を水系溶媒で2回洗浄することにより精製し、溶媒を留去することでビスマレイミド(B-5)を得た。
【0058】
<比較例6>
特許文献7、合成例1の記載に準じて、粗ビスマレイミドを得て、これに対し実施例1と同様にしてCDIを反応させて、精製されたビスマレイミド(B-6)を得た。すなわち、トルエン(200mL)にトリエチルアミン(38.45g、0.380モル)を投入し、攪拌しながらメタンスルホン酸(37.44g、0.390モル)を滴下した。室温で30分攪拌した後に、無水マレイン酸(25.90g、0.264モル)を投入し、次にプリアミン1074(56.98g、0.104モル)を滴下した。室温で30分攪拌した後、110℃で8時間還流し、系内の水の除去を行った。得られた反応液を食塩水で洗浄し、シリカゲルろ過をした後にトルエンを減圧留去することにより、粗ビスマレイミドを得た。この粗ビスマレイミドの酸価は26.0mg-KOH/gであった。得られた粗ビスマレイミドをトルエンに溶解してビスマレイミド濃度30質量%とした溶液200gにDIC3.9g(粗ビスマレイミドの酸価に対して1.1倍当量)を加え、メチルアルコールを投入し、60℃で60分加熱した後、冷却して、橙黄色溶液を得た。得られた溶液を水系溶媒で2回洗浄することにより精製し、溶媒を留去することでビスマレイミド(B-6)を得た。
【0059】
実施例、比較例の酸触媒の使用量、粗ビスマレイミドの酸価、CDIの使用量を表1に示し、得られたビスマレイミドの酸価、粘度、NMR量的対比、分子量、硬化物配合、および硬化反応性の評価結果を、表2に示した。
【0060】
【0061】
【0062】
実施例で示したように、本発明のビスマレイミドは、特定の2種類の触媒を併用したことで、酸価が低減されていることに加えて、粘度が充分に低減されている。また他剤を配合した際の混合相溶性が高く、ハンドリング性が大幅に向上しているのが判る。さらに、比較例と比べてゲルタイムが大幅に短縮されており、反応性が大幅に向上しているのが判る。pKaが1未満の酸触媒のみを使用した比較例1およびpKaが1以上の酸触媒のみを使用した比較例2においては、いずれも粘度が高く、混合相溶性が悪いことが判る。比較例3のようにpKaが1未満の酸触媒とpKaが1以上の酸触媒を併用した場合であっても、触媒量が少ないと、粘度が高くなる。さらに特許文献6に準じた比較例4、5においても、酸価は低減されているが、粘度が高く、混合相溶性が悪いことが判る。また、硬化時の反応性が不十分であった。比較例6のように、粗ビスマレイミド合成時に酸触媒とともに塩基性化合物であるトリエチルアミンを用いた場合には、酸触媒が中和されたために、触媒の併用効果が得られず、粘度の低減は充分ではなかった。また、硬化時の反応性が不十分であった。
本発明のビスマレイミドは、低い粘度であり、かつ酸価が充分に低減されているため、硬化性樹脂等の他剤と配合した際に、混合相溶性およびハンドリング性が良好である。また、硬化時の反応性が大幅に向上している。従い、半導体等を用いた電子部品製造に用いられる、封止材組成物、接着剤組成物等の成分として好適に用いることができる。