(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070241
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】腐食抑制剤及びそれを含む工業用潤滑剤
(51)【国際特許分類】
C23F 11/16 20060101AFI20240515BHJP
C10M 135/36 20060101ALI20240515BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20240515BHJP
C10M 137/12 20060101ALI20240515BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240515BHJP
C10N 30/14 20060101ALN20240515BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240515BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240515BHJP
【FI】
C23F11/16
C10M135/36
C10M169/04
C10M137/12
C10N30:06
C10N30:14
C10N40:04
C10N40:02
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187361
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】63/424,383
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2217954.3
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デビッド エドワーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ボブ マコヴィック
【テーマコード(参考)】
4H104
4K062
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BG19C
4H104BH03A
4H104BH11C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104LA04
4H104LA07
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA03
4K062AA03
4K062BB22
4K062CA04
4K062FA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な摩耗性能、低い銅腐食、及び/又は低いローラベアリング重量損失を達成する、ヘビーデューティ又は工業用潤滑剤に好適な腐食抑制剤を提供する。
【解決手段】腐食抑制剤であって、
(a)1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩を、酸の存在下でアルキルメルカプタンと反応させて、第1の反応中間体を形成することと、
(b)前記第1の反応中間体を過酸化水素と反応させて、前記腐食抑制剤を形成することと、を含み、
(c)前記1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、前記アルキルメルカプタン、及び前記過酸化水素が、1:1.95~2.15:2.0超のモル比で提供される、プロセスによって作製される、腐食抑制剤とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食抑制剤であって、
(a)1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩を、酸の存在下でアルキルメルカプタンと反応させて、第1の反応中間体を形成することと、
(b)前記第1の反応中間体を過酸化水素と反応させて、前記腐食抑制剤を形成することと、を含み、
(c)前記1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、前記アルキルメルカプタン、及び前記過酸化水素が、1:1.95~2.15:2.0超のモル比で提供される、プロセスによって作製される、腐食抑制剤。
【請求項2】
前記酸が、前記1,3,4-ジメルカプトチアジアゾールに対してモル過剰で提供される強酸である、請求項1に記載の腐食抑制剤。
【請求項3】
前記腐食抑制剤が、約95重量パーセント以上の2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物及び約5重量パーセント以下のモノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物であり、かつ/又は前記腐食抑制剤が、10以下の全酸価を有し、かつ/又は前記アルキルメルカプタンの前記アルキル部分が、脂肪族若しくは芳香族ヒドロカルビル基であり、かつ/又は前記アルキルメルカプタンのアルキル部分が、線状若しくは分岐状C1~C30ヒドロカルビル基である、請求項1に記載の腐食抑制剤。
【請求項4】
前記プロセスが、任意の水層を分離するのに有効な温度に前記腐食抑制剤を加熱することと、任意選択で、前記加熱された腐食抑制剤を真空ストリップにかけることと、を更に含む、請求項1に記載の腐食抑制剤。
【請求項5】
前記2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Iaの構造を有し、
【化1】
前記モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Ibの構造を有し、
【化2】
式中、式Ia及び/又は式Ibの各R
1が、独立して、線状又は分岐状C4~C20ヒドロカルビル基である、請求項3に記載の腐食抑制剤。
【請求項6】
前記ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、前記アルキルメルカプタン、及び前記過酸化水素が、1:1.95~2.15:2.1~2.4のモル比で提供される、請求項1に記載の腐食抑制剤。
【請求項7】
潤滑剤であって
(a)主要量の基油と、
(b)腐食抑制剤であって、
(i)1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩を、酸の存在下でアルキルメルカプタンと反応させて、第1の反応中間体を形成することと、
(ii)前記第1の反応中間体を過酸化水素と反応させて、前記腐食抑制剤を形成することと、を含み、
(iii)前記1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、前記アルキルメルカプタン、及び前記過酸化水素が、1:1.95~2.15:2.0超のモル比で提供される、プロセスによって作製される、腐食抑制剤と、を含む、潤滑剤。
【請求項8】
前記酸が、前記1,3,4-ジメルカプトチアジアゾールに対してモル過剰で提供される強酸である、請求項7に記載の潤滑剤。
【請求項9】
1つ以上のホスホン酸エステル化合物であって、ホスホン酸エステル化合物の総重量パーセントに基づいて、約90重量パーセント以上のホスホン酸ジエステル及び約10重量パーセント以下のホスホン酸モノエステルを含む、1つ以上のホスホン酸エステル化合物を更に含み、かつ/又は前記腐食抑制剤が、約95重量パーセント以上の2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物及び約5重量パーセント以下のモノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物である、請求項7に記載の潤滑剤。
【請求項10】
前記2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Iaの構造を有し、
【化3】
前記モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Ibの構造を有し、
【化4】
式中、式Ia及び/又は式Ibの各R
1が、独立して、線状又は分岐状C4~C20ヒドロカルビル基である、請求項7に記載の潤滑剤。
【請求項11】
前記ホスホン酸ジエステルが、式IIの構造を有し、
【化5】
式中、R
2が、C
1~C
50ヒドロカルビル基であり、各R
3が、独立して、C
1~C
20アルキル基であり、かつ/又は前記ホスホン酸ジエステルが、オクタデシルホスホン酸ジメチルであり、かつ/又は前記ホスホン酸モノエステルが、式IIIの構造を有し、
【化6】
式中、R
4が、C
1~C
50ヒドロカルビル基であり、R
5が、C
1~C
20アルキル基であり、かつ/又は前記ホスホン酸モノエステルが、オクタデシルホスホン酸メチルである、請求項9に記載の潤滑剤。
【請求項12】
前記潤滑剤が、80℃、7.5rpm、及び100kNでの80時間の実行時間後に、DIN 51819-3に従って約12mg以下のFAG FE8ローラベアリング重量損失を示す、請求項9に記載の潤滑剤。
【請求項13】
腐食抑制剤添加剤であって、
(a)約95重量パーセント以上の2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物と、
(b)モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物であるが、約5重量パーセント以下の前記モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物と、を含み、
(c)前記腐食抑制剤添加剤の前記全酸価が、約10以下である、腐食抑制剤添加剤。
【請求項14】
前記2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Iaの構造を有し、
【化7】
前記モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Ibの構造を有し、
【化8】
式中、式Ia及び/又は式Ibの各R
1が、独立して、線状又は分岐状C4~C20ヒドロカルビル基である、請求項13に記載の腐食抑制剤。
【請求項15】
前記腐食抑制剤が、1:1.95~2.15:2.1~2.4のモル比で提供されるジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、アルキルメルカプタン、及び過酸化水素から得られる、請求項13に記載の腐食抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、良好な摩耗性能、低い銅腐食、及び/又は低いローラベアリング重量損失を達成する、ヘビーデューティ又は工業用潤滑剤に好適な腐食抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ギア、車軸などのドライブラインハードウェアは、一般的に、耐摩耗性又は極圧保護を提供する潤滑剤を必要とする。実際には、ギア及び車軸は、全負荷容量で、並びに/又はハードウェアに追加の応力及び負担をかける頻繁なストップ・アンド・ゴー作動で作動され得る。したがって、ヘビーデューティギア及び車軸用途のための潤滑剤は、全負荷及びストップ・アンド・ゴー作動条件の両方の下でギア及び車軸を確実に保護するための添加剤化学を必要とする。
【0003】
典型的には、そのようなヘビーデューティ用途のための潤滑剤は、例えば、極圧、耐摩耗性、摩擦、及び/又は銅腐食のうちの1つ以上の性能特性を満たす流体を必要とし、ドライブラインハードウェア流体の一般的な要件のうちのいくつかのみを示唆する。そのような性能を達成するために、多くの添加剤が潤滑剤に含まれ得る。例えば、潤滑剤は、しばしば、ギア及び他の構成要素を腐食及び摩耗から保護するために、チアジアゾール化合物などの硫化添加剤を含む。典型的には、これらの潤滑剤はまた、耐摩耗添加剤又は摩擦改変剤のいずれかとして作用するリン化合物を有する。ギア潤滑剤の耐摩耗性能力を決定する1つの手段は、DIN 51819-3(80時間、7.5rpm、100kN、及び80℃)に従ってFE8ベアリング試験を実行することである。ホスホン酸ジエステル、特にオクタデシルホスホン酸ジメチルは、FE8ベアリング試験においてベアリング保護を提供することが知られている。残念ながら、チアジアゾール腐食抑制剤は、ホスホン酸ジエステルと組み合わせて使用される場合、ジエステルと相互作用する傾向があり、ジエステルをモノエステル形態に分解し得る。しかしながら、ホスホネートのモノエステル変異体は、ローラベアリング摩耗に対する保護においてそれほど有効ではない。従って、チアジアゾール腐食抑制剤を、腐食抑制剤としてのその効果を維持しながら、ホスホン酸ジエステルが耐摩耗性添加剤又は摩擦改変剤としてのその役割を果たすことを可能にする方法で、改変する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
1つのアプローチ又は実施形態では、腐食抑制剤であって、(a)1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩を、酸の存在下でアルキルメルカプタンと反応させて、第1の反応中間体を形成することと、(b)第1の反応中間体を過酸化水素と反応させて、腐食抑制剤を形成することと、を含み、(c)1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、アルキルメルカプタン、及び過酸化水素が、1:1.95~2.15:2.0超のモル比で提供される、プロセスによって作製される、腐食抑制剤が本明細書に記載される。
【0005】
他のアプローチ又は実施形態では、前の段落の腐食抑制剤は、任意選択の特徴又は実施形態と、任意の組み合わせで組み合わされ得る。これらの任意選択の特徴又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:酸が、1,3,4-ジメルカプトチアジアゾールに対してモル過剰で提供される強酸であり;かつ/又は腐食抑制剤が、約95重量パーセント以上の2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物及び約5重量パーセント以下のモノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物であり;かつ/又は腐食抑制剤が、10以下の全酸価を有し;かつ/又はプロセスが、任意の水層を分離するのに有効な温度に腐食抑制剤を加熱することと、任意選択で、加熱された腐食抑制剤を真空ストリップにかけることと、を更に含み;かつ/又は2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Iaの構造を有し、
【0006】
【化1】
モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Ibの構造を有し、
【0007】
【化2】
式中、式Ia及び/若しくは式Ibの各R
1が、独立して、線状若しくは分岐状C4~C20ヒドロカルビル基であり;かつ/又はアルキルメルカプタンのアルキル部分が、脂肪族若しくは芳香族ヒドロカルビル基であり;かつ/又はアルキルメルカプタンのアルキル部分が、線状若しくは分岐状C1~C30ヒドロカルビル基であり;かつ/又はジメルカプトチアジアゾール若しくはそのアルカリ金属塩、アルキルメルカプタン、及び過酸化水素が、1:1.95~2.15:2.1~2.4のモル比で提供される。
【0008】
別のアプローチ又は実施形態では、潤滑剤であって、(a)主要量の基油と、(b)腐食抑制剤であって、(i)1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩を、酸の存在下でアルキルメルカプタンと反応させて、第1の反応中間体を形成することと、(ii)第1の反応中間体を過酸化水素と反応させて、腐食抑制剤を形成することと、を含み、(iii)1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、アルキルメルカプタン、及び過酸化水素が、1:1.95~2.15:2.0超のモル比で提供される、プロセスによって作製される、腐食抑制剤と、を含む、潤滑剤が本明細書に記載される。
【0009】
他のアプローチ又は実施形態では、前の段落の潤滑剤は、任意選択の特徴又は実施形態と、任意の組み合わせで組み合わされ得る。これらの任意選択の特徴又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:酸が、1,3,4-ジメルカプトチアジアゾールに対してモル過剰で提供される強酸であり;かつ/又は1つ以上のホスホン酸エステル化合物であって、ホスホン酸エステル化合物の総重量パーセントに基づいて、約90重量パーセント以上のホスホン酸ジエステル及び約10重量パーセント以下のホスホン酸モノエステルを含む、1つ以上のホスホン酸エステル化合物を更に含み;かつ/又は腐食抑制剤が、約95重量パーセント以上の2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物及び約5重量パーセント以下のモノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物であり;かつ/又は2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Iaの構造を有し、
【0010】
【化3】
モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Ibの構造を有し、
【0011】
【化4】
式中、式Ia及び/若しくは式Ibの各R
1が、独立して、線状若しくは分岐状C4~C20ヒドロカルビル基であり;かつ/又はホスホン酸ジエステルが、式IIの構造を有し、
【0012】
【化5】
式中、R
2が、C1~C50ヒドロカルビル基であり、各R
3が、独立して、C1~C20アルキル基であり;かつ/又はホスホン酸ジエステルが、オクタデシルホスホン酸ジメチル(dimethyl octadecyl phosphonate、DMOP)であり;かつ/又はホスホン酸モノエステルが、式IIIの構造を有し、
【0013】
【化6】
式中、R
4が、C1~C50ヒドロカルビル基であり、R
5が、C1~C20アルキル基であり;かつ/又はホスホン酸モノエステルが、オクタデシルホスホン酸メチル(methyl octadecyl phosphonate、MOP)であり;かつ/又はプロセスが、任意の水層を分離するのに有効な温度に腐食抑制剤を加熱することと、任意選択で、加熱された腐食抑制剤を真空ストリップにかけることと、を更に含み;かつ/又は潤滑剤が、80℃、7.5rpm、及び100kNでの80時間の実行時間後に、DIN 51819-3に従って約12mg以下のFAG FE8ローラベアリング重量損失を示す。
【0014】
なお更なるアプローチ又は実施形態では、(a)約95重量パーセント以上の2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物と、(b)モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物であるが、約5重量パーセント以下のモノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物と、を含み、(c)腐食抑制剤添加剤の全酸価が、約10以下である、腐食抑制剤添加剤が本明細書に記載される。
【0015】
他のアプローチ又は実施形態では、前の段落の腐食抑制剤添加剤は、任意選択の特徴又は実施形態と、任意の組み合わせで組み合わされ得る。これらの任意選択の特徴又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Iaの構造を有し、
【0016】
【化7】
モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物が、式Ibの構造を有し、
【0017】
【化8】
式中、式Ia及び/若しくは式Ibの各R
1が、独立して、線状若しくは分岐状C4~C20ヒドロカルビル基であり;かつ/又は腐食抑制剤が、1:1.95~2.15:2.1~2.4のモル比で提供されるジメルカプトチアジアゾール若しくはそのアルカリ金属塩、アルキルメルカプタン、及び過酸化水素から得られる。
【0018】
なお更なるアプローチ又は実施形態では、80℃、7.5rpm、及び100kNでの80時間の実行時間後に、DIN 51819-3に従って約12mg以下の合格FAG FE8ローラベアリング重量損失を達成するための、本概要の腐食抑制剤又は潤滑剤の任意の実施形態の使用が記載される。
【0019】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示した発明の明細書及び発明の実施を考慮すれば、当業者には明らかであろう。以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供する。
【0020】
「ギア油」、「ギア流体」、「ギア潤滑剤」、「基ギア潤滑剤」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑剤」、及び「潤滑流体」という用語は、本明細書で考察されるような、主要量の基油と、少量の添加剤組成物と、を含む、最終潤滑生成物を指す。そのようなギア流体は、例えば、変速機(手動又は自動)及び/又はギア差動装置では、金属と金属との接触状態を有する変速機及びギア駆動構成要素などの極圧状態において使用するものである。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、その通常の意味で使用され、当業者には既知である。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基と、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有する置換炭化水素置換基と、から独立して選択され、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「重量によるパーセント」又は「重量%」又は「重量パーセント」という用語は、明示的に別段の記載がない限り、列挙した成分の組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味している。本明細書の全てのパーセント数は、別段の指定がない限り、重量パーセントである。
【0023】
本明細書で使用される用語「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」は、化合物又は添加剤が可溶性、溶解性、混和性、又は油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、約1~約200個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指している。本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、約3~約30個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指している。本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又はヘテロ原子、例えば、限定するものではないが窒素及び酸素を含み得る単環及び多環芳香族化合物を指している。
【0025】
本明細書で使用される場合、分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として約180~約18,000のMnを有する)を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって測定される。本明細書の任意の実施形態の分子量(Mn)は、Watersから入手されるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器又は類似の機器、及びWaters Empower Software又は類似のソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器には、Waters分離モジュール及びWaters屈折率検出器(又は同様の任意選択の機器)を設けることができる。GPCの作動条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒子サイズ5μ、及び細孔サイズの範囲100~10000Å)、約40℃のカラム温度を含み得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流量で溶媒として使用され得る。GPC機器は、500~380,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(polystyrene、PS)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/モル未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPS標準は、THFに溶解し、0.1~0.5重量パーセントの濃度で調製することができ、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC法は、更に分子量分布情報を提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0026】
本開示全体を通して、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」などは、オープンエンドであると考えられ、明示的に列挙されていない任意の要素、工程、又は配合成分を含むことを理解すべきである。「から本質的になる」という句は、任意の明示的に列挙された要素、工程、又は配合成分、及び本発明の基本的及び新規の態様に実質的に影響を及ぼさない任意の追加の要素、工程、又は配合成分を含むことを意味している。本開示はまた、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」を使用して記載される任意の組成物は、具体的に列挙されたその成分「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」同じ組成物の開示を含むものとして解釈されるべきであることも企図している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】約40℃でエージングにかけられた比較及び本発明の工業用潤滑剤中のMOPの重量パーセントのグラフである。
【
図2】約55℃でエージングされた比較及び本発明の工業用潤滑剤中のMOPの重量パーセントのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1つのアプローチ又は実施形態では、ヘビーデューティ及び/又は工業用潤滑剤に好適な腐食抑制剤、並びにそのような腐食抑制剤を含む工業用潤滑組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、本明細書の工業用潤滑組成物は、良好な銅腐食及びローラベアリング保護を同時に提供するために、1つ以上のホスホン酸ジエステルと組み合わされた独特の腐食抑制剤を含む。腐食抑制剤及びそのような腐食抑制剤を含む潤滑剤は、変速機流体(すなわち、手動変速機、自動変速機、又はデュアルクラッチ変速機)、ギア流体、車軸流体、差動装置流体、及び/又はタービン、風力タービンなどのヘビーデューティ使用のために構成された他のギアタイプの用途のための潤滑流体のための工業用ギア油としての使用に好適である。
【0029】
本開示の一態様では、腐食抑制剤は、選択モル比のジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、アルキルメルカプタン、及び過酸化水素を用いて、ジアルキル-ジチオチアジアゾール含有量を最大化する腐食抑制剤を形成する独特のプロセスによって作製される。他のアプローチ又は実施形態では、腐食抑制剤は、約95重量パーセント以上の2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物及び約5重量パーセント以下のモノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物を有する、最大量のジアルキルチアジアゾール化合物を有する。
【0030】
なお更なるアプローチ又は実施形態では、腐食抑制剤は、約95重量パーセント以上のジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物及び約5重量パーセント以下のモノアルキル-ジチオ-チアジアゾール化合物を有する、ジアルキルジチオチアジアゾール化合物とモノアルキルジチオチアジアゾール化合物との混合物を含む。そのような腐食抑制剤は、1つ以上のホスホン酸ジエステルを含み、高レベルのジエステルを維持するように構成された潤滑剤における使用に好適である。アプローチでは、ホスホン酸ジエステル及び独特の腐食抑制剤を有する本明細書の潤滑剤はまた、25℃、40℃、又は50℃で少なくとも約8週間、約90:10~98:2のホスホン酸ジエステル対ホスホン酸モノエステルの重量比を有する。
【0031】
腐食抑制剤
アプローチ又は実施形態では、腐食抑制剤は、チアジアゾール化合物又はその誘導体、特に、混合物中のジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物又はその誘導体の含有量を最大化し、混合物中の任意のモノアルキル-ジチオチアジアゾール及び/又は他のビス-チアジアゾール汚染物質の含有量を最小化するように構成された特定のプロセスによって作製されたチアジアゾール化合物及び/又はそのヒドロカルビル置換誘導体の混合物である。
【0032】
より詳細には、本明細書の方法は、腐食抑制剤混合物中の式Iaのジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物又はその誘導体の含有量を最大化し、混合物中の式Ibのモノアルキルジチオチアジアゾール化合物を最小化するように構成される。アプローチでは、ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物は、式1aの構造を有し、
【0033】
【化9】
モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物は、式Ibの構造を有し、
【0034】
【化10】
式中、式Ia及び/又は式Ibの各R
1が、独立して、線状又は分岐状C4~C20ヒドロカルビル基、好ましくは線状又は分岐状C10~C16ヒドロカルビル基である。
【0035】
本明細書の方法は、式Ia及びIbの構造を有する化合物のブレンドを含む、そのようなチアジアゾール化合物又はその誘導体の混合物を生成するように構成され、ブレンド中で式Iaの化合物が最大化されている。他のアプローチでは、腐食抑制剤は、約95重量パーセント以上の式Iaの化合物(好ましくは約95~約99.5重量パーセント)及び約5重量パーセント以下の式Ibの化合物(好ましくは約0.05~約5重量パーセント)を有する化合物IaとIbとのブレンドである。別のアプローチでは、腐食抑制剤は、2,5-ビス-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(約95重量パーセント以上又は約95重量パーセント~約99.5重量パーセントなど)と2,5-モノ-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(約5重量パーセント以下又は約0.05重量パーセント~約5重量パーセントなど)とのブレンドを含む2,5ジメルカプト1,3,4チアジアゾール化合物の混合物である。
【0036】
本発明の腐食抑制剤は、非常に厳密に制御されたモル比の(i)1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、(ii)アルキルメルカプタン、及び(iii)過酸化水素を有する特定の反応で調製される。アプローチ又は実施形態では、本明細書の新規の腐食抑制剤は、(a)1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩を、酸の存在下でアルキルメルカプタンと反応させて、第1の反応中間体を形成することと、(b)第1の反応中間体を過酸化水素と反応させて、腐食抑制剤を形成することと、を含み、(c)ジメルカプトチアジアゾール若しくはそのアルカリ金属塩、アルキルメルカプタン、及び過酸化水素が、チアジアゾールに対して1.95~2.15モル当量のアルキルメルカプタン、またチアジアゾールに対して2.0モル当量超の過酸化水素、好ましくはチアジアゾールに対して2.1~2.4モル当量の過酸化水素を含む特定のモル比で提供される、プロセスによって作製される。そのように厳密に制御された反応物のモル比は、得られる混合物中のジアルキル-ジチオチアジアゾール含有量を最大化するように構成される。全体として、1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、アルキルメルカプタン、及び過酸化水素は、1:1.95~2.15:2.0超のモル比、好ましくは1:1.95~2.15:2.1~2.4のモル比で提供される。
【0037】
アプローチでは、本明細書の方法は、最初に、1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩を、約0℃~約100℃、好ましくは約15℃~約85℃、より好ましくは約70℃~約85℃の温度で、任意選択の溶媒及び/又は酸の存在下でアルキルメルカプタンと反応させて、第1の反応中間体を形成する。ジメルカプトチアジアゾールのアルカリ金属塩(2,5-ジメルカプト-l,3,4-チアジアゾールのナトリウム塩、又は例えば、ナトリウム2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールなど)が使用される場合、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸、過塩素酸、ヨウ化水素酸、p-トルエンスルホン酸、及び/又はメタンスルホン酸などの十分な量の無機酸が使用され得る。好ましくは、酸は、1,3,4-ジメルカプトチアジアゾールに対してモル過剰で提供される強酸である。本明細書で使用される場合、水溶液中で完全に解離又はイオン化されるものを参照とする強酸。好ましくは、酸は、硫酸である。次に、第1の反応中間体を過酸化水素と更に反応させて、本明細書の腐食抑制剤を形成することができる。過酸化水素及び無機酸は、使用される場合、それぞれの工程においてゆっくりと添加され、過酸化水素を約3時間以上、好ましくは約3~約6時間、より好ましくは約3~約4時間の時間にわたって添加することが好ましい場合がある。過酸化水素の添加後、得られた反応混合物を上記範囲の温度に維持すること、及び/又は温度を85℃超、好ましくは約88℃~約100℃に短時間増加させて、第1の反応工程の反応生成物を仕上げることが有利となる場合がある。次いで、有機層を任意選択で水で洗浄し、かつ/又は任意選択で溶媒をストリップして、この第1の反応工程から第1の反応生成物混合物を生成することができる。
【0038】
好適なアルキルメルカプタンは、一般式R-SHを有し、式中、Rが、非環式、脂環式、アラルキル、アリール、及びアルカリールラジカル、又はそのようなラジカルの混合物を含むがこれらに限定されない脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基であり得る。ヒドロカルビル基は、1~30個の炭素を含むことができ、好ましくは、4~16個の炭素を含有する線状又は分岐状アルキル基である。好適なアルキルメルカプタンの例は、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、トリデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、フェニルメルカプタン、トリルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、ナフチルメルカプタン、スチリルメルカプタンなど、及びそれらの混合物であり得るが、これらに限定されない。1つのアプローチでは、好ましいアルキルメルカプタンは、tert-ノニルメルカプタンである。
【0039】
必要であれば、反応工程は、任意選択の溶媒の存在下で起き得る。溶媒は、過酸化水素に対して化学的に不活性な任意の好適な溶媒であり得る。溶媒は、反応中に還流されてもよく、必要であれば、反応温度の制御を補助し得る。好適な溶媒は、水、メタノール、アセトン、フェノール、イソプロパノール、エタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセロール、エリスリトールなど、又はそれらの混合物であり得る。
【0040】
無機酸もまた反応に使用することができ、好適な無機酸は、ナトリウム又は他のアルカリ金属置換基と容易に反応して、水溶性塩を形成する酸である。そのような酸としては、硫酸、リン酸、亜硫酸、亜リン酸、塩酸、フッ化水素酸など、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。1つのアプローチでは、硫酸が好ましい。
【0041】
いくつかのアプローチ又は実施形態では、任意の水層を分離するのに有効な温度にチアジアゾール腐食抑制剤を加熱することと、任意選択で、工程からの加熱されたチアジアゾール腐食抑制剤を真空ストリップにかけることと、を更に含む本明細書の方法。加熱することは、本明細書の最終腐食抑制剤を形成するために、必要に応じて、最大1~2時間、真空下で約100℃~約110℃の温度への加熱であり得る。
【0042】
いくつかのアプローチでは、形成された腐食抑制剤添加剤は、(a)約95重量パーセント以上の2,5-ジアルキル-ジチオチアジアゾール化合物と、(b)モノアルキル-ジチオチアジアゾール化合物であるが、約5重量パーセント以下のモノアルキル-ジチオチアジアゾールと、を含み、(c)腐食抑制の全酸価が、約10以下である。いくつかの実施形態では、腐食抑制剤は、1:1.95~2.15:2.1~2.4のモル比で提供される1,3,4-ジメルカプトチアジアゾール又はそのアルカリ金属塩、アルキルメルカプタン、及び過酸化水素から得られる。
【0043】
本開示の潤滑剤中の腐食抑制剤の好適な処理率は、約0.1~約1.0重量パーセント、好ましくは約0.2~約0.6重量パーセント、より好ましくは約0.2~約0.4重量パーセントであり得る。
【0044】
ホスホン酸ジエステル
本明細書の工業用又はヘビーデューティ潤滑油組成物は、他の特徴の中でも、改善されたローラベアリング摩耗保護を提供するために、少量のホスホン酸ジエステルを更に含み得る。含まれる場合、組成物は、約0.5重量パーセント未満、他のアプローチでは約0.4重量パーセント未満、更なるアプローチでは約0.3パーセント未満、なおも更なるアプローチでは約0.25パーセント以下のホスホン酸ジエステルを含み得る。他のアプローチでは、本明細書の組成物は、約0.05重量パーセント以上、又は約0.1重量パーセント以上、又は約0.15重量パーセント以上のホスホン酸ジエステルを含み得る。本明細書の実施形態では、上で考察される腐食抑制剤を含む潤滑油組成物は、エージング中に高レベルのホスホン酸ジエステルを維持し、以下の実施例に示されるように、約10重量パーセント以下のモノエステルホスホン酸を維持する。
【0045】
いくつかのアプローチでは、ホスホン酸ジエステルは、式IIの構造を有することができ、
【0046】
【化11】
式中、R
2が、C1~C50ヒドロカルビル鎖(好ましくはC1~C30、より好ましくはC10~C20ヒドロカルビル鎖)であり、各R
3が、独立して、C1~C20アルキル基、C1~C10アルキル基、又は好ましくはC1~C4アルキル基である。
【0047】
好適なホスホン酸ジエステルは、O,O-ジ-(一級アルキル)非環式ヒドロカルビルホスホン酸を含んでもよく、その中で一級アルキル基が、同一であるか又は異なり、かつ各々が、独立して、1~4個の炭素原子を含有し、リン原子に結合した非環式ヒドロカルビル基が、12~30個の炭素原子を含有してもよく、アセチレン性不飽和のない線状ヒドロカルビル基である。例示的な化合物としては、O,O-ジメチルヒドロカルビルホスホン酸、O,O-ジエチルヒドロカルビルホスホン酸、O,O-ジプロピルヒドロカルビルホスホン酸、O,O-ジブチルヒドロカルビルホスホン酸、O,O-ジイソブチルヒドロカルビルホスホン酸、及び類似の化合物が挙げられ、これらの化合物中の2種のアルキル基、例えばO-エチル-O-メチルヒドロカルビルホスホン酸、O-ブチル-O-プロピルヒドロカルビルホスホン酸及びO-ブチル-O-イソブチルヒドロカルビルホスホン酸は異なり、それぞれの場合にヒドロカルビル基は、直鎖状で飽和しているか又は各二重結合が好ましくは内部二重結合である1個以上のオレフィン性二重結合を含む。適切な化合物としては、双方のO,O-アルキル基が互いに同一である化合物が挙げられる。他の適切な化合物としては、リン原子に結合したヒドロカルビル基が16~20個の炭素原子を含有する化合物が挙げられる。特に適切なヒドロカルビルホスホン酸ジエステルは、オクタデシルホスホン酸ジメチルである。適切なホスホン酸ジエステルの他の例としては、ジメチルトリアコンチルホスホン酸、ジメチルトリアコテニルホスホン酸、ジメチルエイコシルホスホン酸、ジメチルヘキサデシルホスホン酸、ジメチルヘキサデセニルホスホン酸、ジメチルテトラコンテニルホスホン酸、ジメチルヘキサコンチルホスホン酸、ジメチルドデシルホスホン酸、ジメチルドデセニルホスホン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
基油
1つのアプローチでは、本明細書の潤滑組成物又はギア流体に使用するための好適な基油としては、鉱油、合成油が挙げられ、全ての一般的な鉱油ベースストックが挙げられる。鉱油は、ナフテン系又はパラフィン系であり得る。本明細書のヘビーデューティ又は工業用ギア油の粘度は、約5cSt~約50cSt、又は約10cSt~約40cSt、又は約20cSt~約40cStのKV100(ASTM 445)の範囲であり得る。鉱油は、酸、アルカリ、及び粘土又は塩化アルミニウムなどの他の薬剤を使用する従来の方法によって精製され得るか、又は、例えば、フェノール、二酸化硫黄、フルフラール、若しくはジクロロジエチルエーテルなどの溶媒を用いる溶媒抽出によって生成された抽出油であり得る。鉱油は、水素化処理若しくは水素化精製、冷却若しくは接触脱蝋プロセスによる脱蝋、又は水素化分解され得る(SK Innovation Co.,Ltd.(Seoul、Korea)からの水素化分解基油のYubase(登録商標)ファミリーなど)。鉱油は、天然原油源から生成され得るか、又は異性化ワックス材料若しくは他の精製プロセスの残留物から構成され得る。
【0049】
基油、又は本明細書の組成物中で使用される潤滑粘度の基油は、ドライブライン又はギア油用途に好適な任意の基油から選択され得る。例として、米国石油協会(American Petroleum Institute(API))Base Oil Interchangeability Guidelinesに指定される、グループI~Vの基油が挙げられる。これらの3つの基油のグループは、以下の通りである。
【0050】
【0051】
グループI、II、及びIIIは、鉱油プロセスストックであり、本出願のドライブライン又はギア流体に好ましい場合がある。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、産業において合成流体と称され得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。いくつかのアプローチでは、基油は、グループIとグループII油とのブレンドであり得、このブレンドは、約0%~約100%のグループI油、約0%~約100%のグループII油、約0%~約100%のグループIII油、又はグループIとII、グループIとIII、若しくはグループIIとIII油とのブレンドの様々なブレンドであり得る。
【0052】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源に由来するものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得るか、又は有用であり得ない。食用油は、ホワイト油とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0053】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって更に処理される。
【0054】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られる油を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理又は酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられ得るが、それらに限定されない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導された油もまた、有用であり得る。
【0055】
本明細書のギア流体中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改良剤の提供に起因する基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改良剤の提供に起因する基油以外のものである。
【0056】
基油はまた、合成基油のうちのいずれかであり得る。有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマー若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと呼ばれる)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0057】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製することができる。
【0058】
本明細書の組成物中の潤滑粘度の基油の量は、性能添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「主要量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、約90重量%超、又は95重量%超であり得る。
【0059】
いくつかのアプローチでは、好ましい基油又は潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、約120ppmを超える粘度指数、及び約100℃で約2~約8cStの動粘度を有する。他のアプローチでは、潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、120を超える粘度指数、及び100℃で約4cStの動粘度を有する。基油は、40%超、45%超、50%超、55%超、又は90%超のCP(パラフィン系炭素含有量)を有し得る。基油は、5%未満、3%未満、又は1%未満のCA(芳香族炭素含有量)を有し得る。基油は、60%未満、55%未満、50%未満、又は50%未満、及び30%超のCN(ナフテン系炭素含有量)を有し得る。基油は、2未満又は1.5未満又は1未満の、1環ナフテン対2環ナフテン~6環ナフテンの割合を有し得る。
【0060】
本明細書の好適なドライブライン、変速機、又はギア潤滑剤組成物は、以下の表2に列挙された範囲の添加剤成分を含み得る。
【0061】
【0062】
上記の各成分のパーセンテージは、最終的な添加剤又は潤滑油組成物の総重量に基づく、各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残部は、1つ以上の基油又は溶媒からなる。本明細書に記載される組成物の配合に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分組み合わせで基油又は溶媒にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。
【0063】
本明細書に記載される潤滑組成物は、様々な用途のための潤滑、向上した摩擦性能特性、及び改善された銅腐食を提供するように配合され得る。本明細書の潤滑組成物は、ギアなどの機械部品を潤滑するために使用され得る。本開示による潤滑流体は、工業用ギア用途、自動車用ギア用途、車軸、及び固定ギアボックスなどのギア用途において使用され得る。ギアタイプとしては、スパー、スパイラル、ウォーム、ラックアンドピニオン、インボリュート、ベベル、ヘリカル、プラネタリ、及びハイポイドギア、並びに限定スリップ用途、及びディファレンシャルが挙げられ得るが、これらに限定されない。本明細書に開示されるドライブライン潤滑組成物はまた、ステップ自動変速機、無段変速機、半自動変速機、自動手動変速機、トロイダル変速機、及びデュアルクラッチ変速機を含む、自動又は手動変速機にも好適である。本明細書のドライブライン潤滑組成物は、車軸、トランスファーケース、差動装置、例えば、直線差動装置、回転差動装置、制限スリップ差動装置、クラッチ型差動装置、及びロッキング差動装置などにおける使用に特に適している。
【0064】
任意選択の添加剤
他のアプローチでは、上記のこのような添加剤を含む潤滑剤はまた、このような成分及びその量が上記の段落に記載されるような性能特性に影響を及ぼさない限り、1つ以上の任意選択の成分も含み得る。これらの任意選択の成分は、以下の段落において記載される。
【0065】
リン含有化合物
本明細書の潤滑剤組成物は、流体に耐摩耗性の利点を付与し得る1つ以上のリン含有化合物を含み得る。1つ以上のリン含有化合物は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%の範囲の量で、潤滑油組成物中に存在し得る。リン含有化合物は、最大5000ppmのリン、又は約50~約5000ppmのリン、又は約300~約1500ppmのリン、又は最大600ppmのリン、又は最大900ppmのリンを潤滑剤組成物に提供し得る。
【0066】
1つ以上のリン含有化合物は、無灰リン含有化合物を含み得る。好適なリン含有化合物の例としては、チオホスフェート、ジチオホスフェート、ホスフェート、リン酸エステル、ホスフェートエステル、ホスファイト、ホスホネート、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はそれらのアミド塩、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第0612839号により完全に記載されている。
【0067】
ホスホネート及びホスファイトという用語は、潤滑剤業界ではしばしば互換的に使用されることに注意すべきである。例えば、ジブチル水素ホスホネートは、ジブチル水素ホスファイトと称されることがある。本発明の潤滑剤組成物が、ホスファイト又はホスホネートのいずれかと称されることがあるリン含有化合物を含むことは、本発明の範囲内である。
【0068】
上記のリン含有化合物のいずれかにおいて、化合物は、約5重量パーセン~約20重量パーセントのリン、又は約5重量パーセン~約15重量パーセントのリン、又は約8重量パーセン~約16重量パーセントのリン、又は約6重量パーセン~約9重量パーセントのリンを有し得る。
【0069】
上記の分散剤と組み合わせてリン含有化合物を潤滑剤組成物に含めると、予想外に、低い摩擦係数などの正の摩擦特性が潤滑剤組成物に付与される。本発明の効果は、リン含有化合物が単独で流体に負の摩擦特性を付与するいくつかの場合においてより更に顕著である。これらの摩擦低減が比較的不良なリン含有化合物を本明細書に記載のオレフィンコポリマー分散剤と組み合わせられると、潤滑剤組成物は、改善された、すなわち、より低い摩擦係数を有する。すなわち、本明細書の分散剤は、比較的不良な摩擦係数を有するリン含有化合物を含有する流体を、改善された摩擦特性を有する流体に変換する傾向がある。
【0070】
リン含有化合物と、本明細書に記載のオレフィンコポリマー分散剤と、を含む潤滑組成物の摩擦特性のこの改善は、驚くべきことである。なぜならば、流体の摩擦特性が、リン含有化合物と、上記のコポリマーの指定の特性を有していない、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤及びオレフィンコポリマースクシンイミド分散剤を含む他のタイプの分散剤と、の組み合わせよりも改善されているからである。
【0071】
本明細書のオレフィンコポリマー分散剤と組み合わせたときに、改善された摩擦特性を潤滑組成物に対して付与する別のタイプのリン含有化合物は、無灰(金属を含まない)リン含有化合物である。
【0072】
いくつかの実施形態では、無灰リン含有化合物は、ジアルキルジチオホスフェートエステル、アミル酸ホスフェート、ジアミル酸ホスフェート、ジブチル水素ホスフェート、ジメチルオクタデシルホスフェート、それらの塩、及びそれらの混合物であり得る。
【0073】
無灰リン含有化合物は、式:
【0074】
【化12】
を有し得、
式中、R1は、S又はOであり、R2は、-OR、-OH、又は-R”であり、R3は、-OR”、-OH、又はSR’’’C(O)OHであり、R4は、-OR”であり、R’’’は、C1~C3分岐又は直鎖アルキル鎖であり、R’’は、C1~C18ヒドロカルビル鎖である。リン含有化合物が式XIVに示した構造を有するとき、化合物は、約8重量パーセント~約16重量パーセントのリンを有し得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Sであり、R2は、-OR”であり、R3は、SR’’’COOHであり、R4は、-OR”であり、R’’’は、C3分岐アルキル鎖であり、R’’は、C4であり、リン含有化合物は、80~900ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0076】
別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、-OHであり、R3は、-OR’’又は-OHであり、R4は、-OR”であり、R’’は、C5であり、リン含有化合物は、80~1500ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0077】
なお別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、OR”であり、R3は、Hであり、R4は、-OR”であり、R’’は、C4であり、1つ以上のリン含有化合物は、80~1550ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0078】
他の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、-R”であり、R3は、-OCH3又は-OHであり、R4は、-OCH3であり、R’’は、C18であり、1つ以上のリン含有化合物は、80~850ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0079】
いくつかの実施形態では、リン含有化合物は、式XIVに示した構造を有し、約80~約4500ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する。他の実施形態では、リン含有化合物は、約150~約1500ppmのリン、又は約300~約900ppmのリン、又は約800~1600ppmのリン、又は約900~約1800ppmのリンを、潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0080】
耐摩耗剤
潤滑剤組成物はまた、リン不含化合物である他の耐摩耗剤も含み得る。かかる耐摩耗剤の例としては、ホウ酸エステル、ホウ酸エポキシド、チオカルバメート化合物(例えば、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、及びそれらの混合物)、硫化オレフィン、アジピン酸トリデシル、チタン化合物、及びヒドロキシルカルボン酸の長鎖誘導体、例えば、タルトレート誘導体、タルトラミド、タルトリミド、シトレート、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なチオカルバメート化合物は、モリブデンジチオカルバメートである。好適なタルトレート誘導体又はタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得る、アルキル-エステル基を含有し得る。タルトレート誘導体又はタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得る、アルキル-エステル基を含有し得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。追加の耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を含む範囲において存在し得る。
【0081】
極圧剤
本開示の潤滑剤組成物はまた、本明細書の潤滑組成物が本明細書に記載される記載の量及びプロファイルを含む限り、他の極圧剤を含有し得る。任意選択の極圧剤は、硫黄を含有し得、少なくとも12重量パーセントの硫黄を含有し得る。いくつかの実施形態では、潤滑油に添加される極圧剤は、潤滑剤組成物に対して、少なくとも350ppmの硫黄、500ppmの硫黄、760ppmの硫黄、約350~約2,000ppmの硫黄、約2,000~約30,000ppmの硫黄、又は約2,000~約4,800ppmの硫黄、若しくは約4,000~約25,000ppmの硫黄を提供するために十分である。
【0082】
多種多様な硫黄含有極圧剤が好適であり、硫化動物性又は植物性脂肪又は油、硫化動物性又は植物性脂肪酸エステル、リンの三価又は五価酸の完全又は部分エステル化エステル、硫化オレフィン(例えば、米国特許第2,995,569号、同第3,673,090号、同第3,703,504号、同第3,703,505号、同第3,796,661号、同第3,873,454号、同第4,119,549号、同第4,119,550号、同第4,147,640号、同第4,191,659号、同第4,240,958号、同第4,344,854号、同第4,472,306号、及び同第4,711,736号を参照されたい)、ジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第2,237,625号、同第2,237,627号、同第2,527,948号、同第2,695,316号、同第3,022,351号、同第3,308,166号、同第3,392,201号、同第4,564,709号、及び英国特許第1,162,334号を参照されたい)、官能基置換ジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第4,218,332号を参照されたい)、及びポリスルフィドオレフィン生成物(例えば、米国特許第4,795,576号を参照されたい)が挙げられる。他の好適な例としては、硫化オレフィン、硫黄含有アミノ複素環化合物、5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、S3及びS4スルフィドの大部分を有するポリスルフィド、硫化脂肪酸、硫化分岐鎖オレフィン、有機ポリスルフィド、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、極圧剤は、潤滑組成物において、最大約3.0重量%又は最大約5.0重量%の量で存在する。他の実施形態では、極圧剤は、総潤滑剤組成物に基づいて、約0.05重量%~約0.5重量%存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約3.0重量%存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.6重量%~約1重量%の量で存在する。なお他の実施形態では、洗浄剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約1.0重量%の量で存在する。
【0084】
極圧剤の1つの好適なクラスは、式:Ra-Sx-Rbによって表される1つ以上の化合物から構成されるポリスルフィドであり、式中、Ra及びRbは、ヒドロカルビル基であり、その各々は、1~18個、他のアプローチでは、3~18個の炭素原子を含有し得、xは、2~8の範囲、典型的には2~5の範囲、特に3であり得る。いくつかのアプローチでは、xは、3~5の整数であり、xの約30~約60パーセントは、3又は4の整数である。ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、又はアラルキルなどの多種多様なタイプであり得る。ジ-tert-ブチルトリスルフィドなどの三級アルキルポリスルフィド、及びジ-tert-ブチルトリスルフィドを含む混合物(例えば、主に又は完全にトリ-、テトラ-、及びペンタスルフィドから構成された混合物)を使用することができる。他の有用なジヒドロカルビルポリスルフィドの例としては、ジアミルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、及びジベンジルポリスルフィドが挙げられる。
【0085】
極圧剤の別の好適なクラスは、イソブテンなどのオレフィンを硫黄と反応させることによって作製された硫化イソブテンである。硫化イソブテン(SIB)、特に硫化されたポリイソブチレンは、典型的には、約10~約55重量%、望ましくは約30~約50重量%の硫黄含有量を有する。多種多様な他のオレフィン又は不飽和炭化水素、例えばイソブテンダイマー又はトライマーを使用して、硫化オレフィン極圧剤を形成することができる。硫化オレフィンを調製するための様々な方法が先行技術において開示されてきた。例えば、Myersの米国特許第3,471,404号、Papayらの米国特許第4,204,969号、Zaweskiらの米国特許第4,954,274号、DeGoniaらの米国特許第4,966,720号、及びHorodyskyらの米国特許第3,703,504号を参照されたい、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
前述の特許に開示されている方法を含む硫化オレフィンの調製するための方法は、「付加物」と典型的には称される材料の形成を含み、オレフィンをハロゲン化硫黄と、例えば一塩化硫黄と、反応させる。次いで、その付加物を硫黄源と反応させて、硫化オレフィンを提供する。硫化オレフィンの品質は、一般に、例えば、粘度、硫黄含有量、ハロゲン含有量、銅腐食試験重量損失などの様々な物理的特性によって測定される。米国特許第4,966,720号は、潤滑油における極圧添加剤として有用な硫化オレフィンと、それらの調製のための2段階反応と、に関する。
【0087】
酸化防止剤
本明細書における潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の酸化防止剤を含有し得る。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0088】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えばBASFから入手可能なIrganox(登録商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含み得、アルキル基は、約1個~約18個、又は約2個~約12個、又は約2個~約8個、又は約2個~約6個、又は約4個の炭素原子を含有し得る。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(登録商標)4716を含み得る。
【0089】
有用な酸化防止剤としては、ジアリールアミン及びフェノールが挙げられ得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンとフェノールとの混合物を含有し得、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態では、酸化防止剤は、潤滑剤組成物に基づいて、約0.3重量%~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4重量%~約2.5重量%のフェノールとの混合物であり得る。
【0090】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0091】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0092】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0093】
分散剤
潤滑剤組成物中に含有される分散剤としては、分散させる粒子と会合することができる官能基を有する油溶性ポリマー炭化水素主鎖が挙げられ得るが、これに限定されない。典型的には、分散剤は、多くの場合架橋基を介してポリマー主鎖に結合しているアミン、アルコール、アミド、又はエステル極性部分を含む。分散剤は、米国特許第3,634,515号、同第3,697,574号、及び同第3,736,357号に記載されているようなマンニッヒ分散剤、米国特許第4,234,435号及び同第4,636,322号に記載されているような無灰スクシンイミド分散剤、米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、及び同第5,633,326号に記載されているようなアミン分散剤、米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号、及び同第5,627,259号に記載されているようなコッホ分散剤、並びに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、及び同第5,792,729号に記載されているようなポリアルキレンスクシンイミド分散剤から選択され得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、追加の分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、追加の分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載され得る。別の実施形態では、追加の分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフトされる無水物から誘導され得る。別の追加の分散剤は、高分子量エステル又は半エステルアミドであり得る。
【0095】
分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に、灰分を形成する金属を含有せず、潤滑剤に添加するとき通常いかなる灰分にも寄与しないため、しばしば無灰タイプの分散剤として知られている。無灰型の分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びその調製は、例えば、米国特許第7,897,696号又は米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製されてもよい。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0096】
好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシアミンから選択される。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、及びペンタエチルアミンヘキサミン(PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。
【0097】
好適な重質ポリアミンは、TEPA及びPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7個以上の窒素を含有し、分子当たり2個以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%超(例えば、>32重量%)の総窒素と、当量当たり120~160グラムの当量の一級アミン基と、を含む。
【0098】
いくつかのアプローチでは、好適なポリアミンは、一般的にPAMとして知られており、TEPA及びペンタエチレンヘキサミン(PEHA)が、ポリアミンの主要部分であり、通常約80%未満である、エチレンアミンの混合物を含有する。
【0099】
典型的には、PAMは、1グラム当たり8.7~8.9ミリ当量の一級アミン(一級アミンの当量当たり115~112グラムの当量)及び約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAを含まず、ごく少量のPEHAを含むが、主に6個より多い窒素及びより広範な分岐を有するオリゴマーを含有するPAMオリゴマーのより重質なカットは、分散性が改善された分散剤を生成してもよい。
【0100】
ある実施形態では、本開示は、GPCにより決定される場合に、約350~約50,000、又は~約5000、又は~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を更に含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、又は他の分散剤と組み合わせて使用され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンは、含まれる場合、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、又は90モル%を超える末端二重結合の含有量を有していてもよい。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。GPCにより決定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0102】
GPCにより決定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であってもよい。このようなHR-PIBは、市販されているか、又はBoerzel,et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau,et al.の米国特許第5,739,355号に記載されているように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。上記熱エン反応で使用されるとき、HR-PIBは、反応性の向上により反応中のより高い転化率、及びより少ない沈殿物形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0103】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導された少なくとも1つの分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有していてもよい。
【0104】
アルケニル又はアルキル無水コハク酸の有効成分%は、クロマトグラフィー技術を使用して決定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄に記載されている。ポリオレフィンの転化率は米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄の式を用いて、有効成分%から算出される。
【0105】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導されてもよい。一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導されてもよい。一例として、分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載されてもよい。一実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物から誘導されてもよい。
【0106】
好適な種類の窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(olefin copolymer、OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤から誘導され得る。官能化OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、及び同第5,075,383号に記載されており、かつ/又は市販されている。
【0107】
好適な分散剤の1つのクラスはまた、マンニッヒ塩基であってもよい。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0108】
好適なクラスの分散剤はまた、高分子量エステル又は半エステルアミドであってもよい。好適な分散剤はまた、従来の方法によって様々な薬剤のいずれかと反応させて後処理されてもよい。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、及び米国特許第8,048,831号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
カーボネート及びホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも、異なる特性を改善又は付与するように設計された様々な後処理により後処理、又は更に後処理されてもよい。このような後処理は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の欄27~29に要約されたものを含む。そのような処理には、以下による処理が含まれる。無機リン酸又は無水物(例えば、米国特許第3,403,102号及び同第4,648,980号)、有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、五硫化リン、既に上記したようなホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663及び同第4,652,387号)、カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、及び/又は酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号及び同第4,948,386号)、エポキシドポリエポキシエート又はチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号及び同第5,026,495号)、アルデヒド又はケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、尿素、チオ尿素、又はグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、及び英国特許第1,065,595号)、有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号及び英国特許第2,140,811号)、シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号及び同第3,366,569号)、ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、アルコキシル化アルコール又はフェノールのスルフェート(例えば、米国特許第3,954,639号)、環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、及び同第4,971,711号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,140,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、及び同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,440,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カルバメート、環状チオカルバメート、又は環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号及び同第4,666,459号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号)、酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、五硫化リン及びポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、カルボン酸又はアルデヒド又はケトン及び硫黄又は塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号)、ヒドラジン及び二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、アルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号)、アルデヒド及びジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸及びホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、ホルムアルデヒド及びフェノール、並びにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸又はシュウ酸と、それに次ぐジイソシアネートとの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、リンの無機酸若しくは無水物又はその部分的若しくは全体的硫黄類似体及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、及びそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択でそれに続くホウ素化合物、並びにそれに次ぐグルコール化剤の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、アルデヒド及びトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、アルデヒド及びトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、環状ラクトン及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号及び同第4,971,711号)。ここで、先に言及した特許は、それらの全体が組み込まれる。
【0110】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに匹敵する、油を含まない基準で約10~約65mg KOH/gであり得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定される。
【0111】
更に他の実施形態では、任意選択の分散剤添加剤は、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤であってもよい。アプローチでは、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応させたヒドロカルビル置換アシル化剤から誘導されてもよく、スクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定した場合、約250~約5,000の数平均分子量を有する線状又は分岐ヒドロカルビル基である。
【0112】
いくつかのアプローチでは、分散剤を形成するために使用されるポリアルキレンポリアミンは、以下の式を有し、
【0113】
【化13】
式中、各R及びR’は、独立して、二価C1~C6アルキレンリンカーであり、各R
1及びR
2は、独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素原子と一緒に、1つ以上の芳香環若しくは非芳香環と任意選択で融合した5員環若しくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である。他のアプローチでは、ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0114】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用され得る分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、約0.1~8重量%、又は約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約6重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は混合分散剤系を利用する。単一の種類又は任意の所望の比の2つ以上の種類の分散剤の混合物を使用することができる。
【0115】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約10重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用することができる分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約3重量%~約8重量%、又は約1重量%~約6重量%であり得る。
【0116】
粘度指数改良剤
本明細書の潤滑剤組成物はまた、任意選択で、1つ以上の粘度指数改良剤も含有し得る。好適な粘度指数改善剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数改良剤は、星型ポリマーを含み得、好適な例は、米国特許出願公開第2012/0101017(A1)号に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択で、粘度指数改善剤に加えて、又は粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤も含有し得る。好適な粘度指数改善剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0118】
粘度指数改良剤及び/又は分散剤粘度指数改良剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、又は約0.5重量%~約10重量%、約3重量%~約20重量%、約3重量%~約15重量%、約5重量%~約15重量%、又は約5重量%~約10重量%であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、粘度指数改良剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、又は約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリオレフィン又はオレフィンコポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度指数改良剤は、約40,000~約500,000、約50,000~約200,000、又は約50,000~約150,000の数平均分子量を有する水素化スチレン/ブタジエンコポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度指数改良剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、又は約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリメタクリレートである。
【0120】
他の任意選択の添加剤
他の添加剤は、潤滑剤組成物に要求される1つ以上の機能を実行するように選択することができる。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。他の添加剤は、本開示に指定される添加剤に加えられ得、かつ/又は金属不活性化剤、粘度指数改良剤、無灰TBNブースタ、耐摩耗剤、腐食抑制剤、錆抑制剤、分散剤、分散剤粘度指数改良剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、完全に配合された潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0121】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択で酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0122】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0123】
好適な流動点降下剤としては、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物が挙げられ得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0124】
好適な錆抑制剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な錆抑制剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用な種類の酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な錆抑制剤は、高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態では、エンジン油は、錆抑制剤を含まない。
【0125】
錆抑制剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な任意選択の量で使用され得る。
【0126】
潤滑剤組成物は、腐食抑制剤も含み得る(他の言及した成分のいくつかは銅腐食抑制特性も有し得ることに留意すべきである)。好適な銅腐食抑制剤としては、エーテルアミン、ポリエトキシル化化合物、例えば、エトキシル化アミン及びエトキシル化アルコール、イミダゾリン、モノアルキル、並びにジアルキルチアジアゾールなどが挙げられる。
【0127】
チアゾール、トリアゾール、及びチアジアゾールも、潤滑剤に使用され得る。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、及び2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。一実施形態では、潤滑剤組成物は、1,3,4-チアジアゾール、例えば、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-ジチアジアゾールを含む。
【0128】
発泡防止剤/界面活性剤もまた、本発明による流体に含まれ得る。そのような用途のための様々な薬剤が知られている。エチルアクリレートとヘキシルエチルアクリレートとのコポリマー、例えば、Solutiaから入手可能なPC-1244を使用することができる。他の実施形態では、4%DCFなどのシリコーン流体が含まれ得る。発泡防止剤の混合物もまた、潤滑剤組成物に存在し得る。
【実施例0129】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を例解するものである。これらの実施例並びに本出願の他の箇所において、全ての比率、部、及び百分率は、別段の指示がない限り重量基準である。これらの実施例は、例解のみを目的として提示されており、本明細書で開示される発明の範囲を限定するは意図されないということが意図される。
【0130】
比較例1
ジアルキル-チアジアゾール化合物とモノアルキル-チアジアゾール化合物との混合物を含む比較腐食抑制剤を以下のように調製した:バッフル、コンデンサー、及び苛性/漂白スクラバーに接続されたガス出口を備えた2リットルのケトルに、43.3%のナトリウム2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール水溶液(sodium 2,5-dimercapto-1,3,4-thiadiazole、NaDMTD、504.0g、1.267モル)、98.7%のtert-ノニルメルカプタン(334.0g、2.059モル)、及び95%の硫酸(77.8g、0.75モル)を入れた。この混合物に、50%過酸化水素(144.4g、2.123モル)を3時間50分かけて約75℃~約85℃の温度で添加した。次いで、反応温度を約90℃に増加させ、水層を分離した後、約110℃以下の温度で真空ストリップした。
【0131】
この反応は、チアジアゾールに対して1.624モル当量のアルキルメルカプタン及びチアジアゾールに対して1.675モル当量の過酸化水素を有し、1:1.62:1.68のチアジアゾール対メルカプタン対過酸化物の全反応モル比を形成した。試料は、約30.6の全酸価(total acid number、TAN)を有し、最終生成物は、C NMRによって測定される場合、74.3:25.4のモル比のジアルキル-チアジアゾール対モノアルキル-チアジアゾールを含有していた。
【0132】
比較例2
比較腐食抑制剤を以下のように調製した:バッフル、コンデンサー、及び苛性/漂白スクラバーに接続されたガス出口を備えた2リットルのケトルに、43.3%のナトリウム2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(NaDMTD、447.6g、1.125モル)、98.7%のtert-ノニルメルカプタン(413.0g、2.546モル)、及び95%の硫酸(70.5g、0.68モル)を入れた。この混合物に50%過酸化水素(198.0g、2.912モル)を添加した。次いで、反応温度を約90℃に増加させ、水層を分離した後、約110℃以下の温度で真空ストリップした。
【0133】
この反応は、チアジアゾールに対して2.262モル当量のアルキルメルカプタン及びチアジアゾールに対して2.587モル当量の過酸化水素を有し、1:2.26:2.59のチアジアゾール対メルカプタン対過酸化物の全反応モル比を形成した。試料は、約22の全酸価(TAN)を有し、最終生成物は、C NMRによって測定される場合、91:9超のモル比のジアルキル-チアジアゾール対モノアルキル-チアジアゾールを有していた。
【0134】
実施例1
ジアルキル-チアジアゾール化合物を主に含む本発明の腐食抑制剤を以下のように調製した:バッフル、コンデンサー、及び苛性/漂白スクラバーに接続されたガス出口を備えた2リットルのケトルに、43.3%のナトリウム2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール水溶液(NaDMTD、447.6g、1.125モル)、98.7%のtert-ノニルメルカプタン(386.0g、2.379モル)、及び95%の硫酸(69.1g、0.70モル)を入れた。この混合物に、50%過酸化水素(167.3g、2.460モル)を3時間50分かけて約75℃~約85℃の温度で添加した。次いで、反応温度を約90℃に増加させ、水層を分離した後、約110℃以下の温度で真空ストリップした。
【0135】
この反応は、チアジアゾールに対して2.113モル当量のアルキルメルカプタン及びチアジアゾールに対して2.186モル当量の過酸化水素を有し、1:2.11:2.19のチアジアゾール対メルカプタン対過酸化物の全反応モル比を形成した。試料は、約8の全酸価(TAN)を有し、最終生成物は、検出できないレベルのモノアルキルチアジアゾール化合物を有し、C NMRによって測定される場合、99:1超のモル比のジアルキル-チアジアゾール対モノアルキル-チアジアゾールを有していた。
【0136】
実施例2
ジアルキル-チアジアゾール化合物を主に含む別の本発明の腐食抑制剤を以下のように調製した:バッフル、コンデンサー、及び苛性/漂白スクラバーに接続されたガス出口を備えた2リットルのケトルに、43.3%のナトリウム2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール水溶液(NaDMTD、500g、1.257モル)、98.7%のtert-ノニルメルカプタン(408.7g、2.519モル)、及び95%の硫酸(74.1g、0.72モル)を入れた。この混合物に、50%過酸化水素(188.5g、2.772モル)を3時間50分かけて約75℃~約85℃の温度で添加した。メルカプタン/過酸化物の添加後に試料を取り出し、約10未満の全酸価(TAN)が測定された。反応温度を90℃に増加させ、水層を分離した後、約110℃以下で真空ストリップした。
【0137】
この反応は、チアジアゾールに対して2.004モル当量のアルキルメルカプタン及びチアジアゾールに対して2.205モル当量の過酸化水素の過酸化因子を有し、1:2.00:2.21のチアジアゾール対メルカプタン対過酸化物の全反応モル比を形成した。試料は、約8の全酸価(TAN)を有し、最終生成物は、検出できないレベルのモノアルキルチアジアゾール化合物を有し、C NMRによって測定される場合、99:1超のモル比のジアルキル-チアジアゾール対モノアルキル-チアジアゾールを有していた。
【0138】
実施例3
ジアルキル-チアジアゾール化合物を主に含む別の本発明の腐食抑制剤を以下のように調製した:バッフル、コンデンサー、及び苛性/漂白スクラバーに接続されたガス出口を備えた2リットルのケトルに、43.3%のナトリウム2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール水溶液(NaDMTD、160g、0.402モル)、98.7%のtert-ノニルメルカプタン(127.2g、0.874モル)、及び95%の硫酸(23.5g、0.228モル)を入れた。この混合物に、50%過酸化水素(59.8g、0.879モル)を3時間50分かけて約75℃~約85℃の温度で添加した。メルカプタン/過酸化物の添加後に試料を取り出し、約10未満の全酸価(TAN)が測定された。反応温度を90℃に増加させ、水層を分離した後、約110℃以下で真空ストリップした。
【0139】
この反応は、チアジアゾールに対して1.949モル当量のアルキルメルカプタン及びチアジアゾールに対して2.186モル当量の過酸化水素を有し、1:1.95:2.19のチアジアゾール対メルカプタン対過酸化物の全反応モル比を形成した。試料は、約10の全酸価(TAN)を有し、最終生成物は、検出できないレベルのモノアルキルチアジアゾール化合物を有し、C NMRによって測定される場合、99:1超のモル比のジアルキル-チアジアゾール対モノアルキル-チアジアゾールを有していた。
【0140】
実施例4
比較例1及び実施例1の腐食抑制剤を各々、0.35重量パーセントの処理率で完成潤滑剤に配合した。完成潤滑剤はまた、39.2cStのKV100を有するグループ4の基油中に、0.25重量パーセントのオクタデシルホスホン酸ジメチル(DMOP)及び同じ基添加剤パッケージを含んでいた。
【0141】
完成潤滑剤を約40℃又は約55℃で熱エージングさせ、オクタデシルホスホン酸メチル(MOP)の存在について評価した。
図1及び2のグラフは、比較例1の比較チアジアゾール腐食抑制剤を含む完成潤滑剤と比較して、実施例1の本発明のチアジアゾール腐食抑制剤を含む完成潤滑剤についてのDMOP安定性の顕著な改善を示す。
【0142】
完成潤滑剤をまた、3時間後に121℃でASTM D130に従って銅腐食について評価し、室温(25℃)で8週間保管した後のMOPに対するDMOPの相対比、並びに80時間、7.5rpm、100kN、及び80℃の実行条件でDIN 51819-3に従ってFAG FE8ローラベアリング重量損失を測定した。結果を、以下の表3に提供する。
【0143】
【0144】
上記の表3に示されるように、実施例1の本発明の腐食抑制剤を含む完成潤滑剤は、比較例1の比較腐食抑制剤を含む完成潤滑剤と同じ銅腐食等級を有したが、本発明の潤滑剤及び添加剤は、ホスホン酸モノエステル(MOP)に対するホスホン酸ジエステル(DMOP)のより高いモル比を有し、結果として、劇的に改善されたローラベアリング重量損失を有した。同様の結果が、実施例2及び3、並びに比較例2の潤滑剤で予想される。
【0145】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を排除するものではないように、非限定的であることを意図する。
【0146】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0147】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0148】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0149】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0150】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0151】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは他の当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物を包含することを意図している。