(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070244
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20240515BHJP
H01S 5/42 20060101ALI20240515BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20240515BHJP
H01S 5/34 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/42
H01S5/343
H01S5/343 610
H01S5/34
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188085
(22)【出願日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】18/054186
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523416014
【氏名又は名称】ブライトレーザ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Brightlaser Limited
【住所又は居所原語表記】Rm 215, 16W, Phase III, Hong Kong Science Park, N.T., Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】ユフイ、ルオ
(72)【発明者】
【氏名】チューユエン、チャン
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC03
5F173AC13
5F173AC15
5F173AC26
5F173AC36
5F173AC42
5F173AC53
5F173AD10
5F173AF03
5F173AF04
5F173AF96
5F173AG03
5F173AG05
5F173AH02
5F173AH03
5F173AH22
5F173AP33
5F173AP67
5F173AR14
5F173AR23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザーを提供する。
【解決手段】多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)10は、電気的n接触層100と、電気的n接触層上に配置された半導体基板102と、半導体基板上に配置されたエッチ・ストップ層104と、エッチ・ストップ層上に配置された第1の複数の半導体材層を含むn型半導体分布ブラッグ反射器(nDBR)106と、nDBR上に配置された複数の活性領域108を含むレーザーキャビティと、レーザーキャビティ上に配置されたハイブリッド金属-半導体反射器110を含む。ハイブリッド金属-半導体反射器は、第2の複数の半導体材層を含むp型半導体分布ブラッグ反射器(pDBR)110aと、pDBR上に配置された位相整合層110bおよび位相整合層上に配置された金属反射器110cと、ハイブリッド金属-半導体反射器上に形成された電気的p接触層112を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的n接触層(100)と、
前記電気的n接触層(100)上に配置された半導体基板(102)と、
前記半導体基板(102)上に配置されたエッチ・ストップ層(104)と、
前記エッチ・ストップ層(104)上に配置された第1の複数の半導体材層を含むn型半導体分布ブラッグ反射器(nDBR)(106)と、
前記nDBR(106)上に配置された複数の活性領域(108)を含むレーザーキャビティと、
前記レーザーキャビティ上に配置されたハイブリッド金属-半導体反射器(110)と
を含む多接合底面発光垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)(10)であって、
前記ハイブリッド金属-半導体反射器(110)は、第2の複数の半導体材層を含むp型半導体分布ブラッグ反射器(pDBR)(110a)と、前記pDBR(110a)上に配置された位相整合層(110b)および前記位相整合層(110b)上に配置された金属反射器(110c)と、前記ハイブリッド金属-半導体反射器(110)上に形成された電気的p接触層(112)とを含む、多接合底面発光VCSEL。
【請求項2】
前記電気的n接触層(100)、前記半導体基板(102)、およびエッチ・ストップ層(104)は、発光レーザーに用いるための発光窓(114)を含む環形状として構成され、前記電気的p接触層(112)は、電流注入に用いられる、請求項1に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項3】
前記nDBR(106)、前記エッチ・ストップ層(104)、前記半導体基板(102)、および前記電気的n接触層(100)は、円形断面を有して延びているメサとして構成されている、請求項1に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項4】
前記ハイブリッド金属-半導体反射器(110)は、非出光鏡として構成され、前記nDBR(106)は、出光鏡として構成されている、請求項1に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項5】
前記nDBR(106)中の前記第1の複数の半導体材層のそれぞれは、ヒ化ガリウム(GaAs)ベース基板上のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaAs)と、窒化ガリウム(GaN)ベース基板上の窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)と、リン化インジウム(InP)ベース基板上のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaAs)とを含む、請求項1に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項6】
pDBR(110a)中の前記第2の複数の半導体材層のそれぞれは、ヒ化ガリウム(GaAs)ベース基板上のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaAs)と、窒化ガリウム(GaN)ベース基板上の窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)と、リン化インジウム(InP)ベース基板上のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaAs)とを含む、請求項1に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項7】
前記レーザーキャビティ中の前記複数の活性領域(108)の各層は、歪または無歪の多重量子井戸(108a)構造からなる、請求項1に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項8】
歪または無歪の多重量子井戸(108a)構造のそれぞれは、互いに間隔を空けており、トンネル接合(108c)により電気的におよび伝導的に接続され、電流狭窄層(108b)により狭窄されている、請求項7に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項9】
前記トンネル接合(108c)は、伝導型の異なる少なくとも2つのドープ半導体層を含む、請求項8に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項10】
ウェット酸化により前記電流狭窄層(108b)上に形成された電流狭窄開口(108d)をさらに含む、請求項8に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項11】
前記金属反射器(110c)は、少なくとも1層の金属または少なくとも1層の合金を含む、請求項1に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項12】
前記金属は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、または白金を含み、前記合金は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、または白金を含む、請求項10に記載の多接合底面発光VCSEL(10)。
【請求項13】
多接合底面発光垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)(10)の製造方法であって、
半導体基板(102)を供給すること、
前記半導体基板(102)上にエッチ・ストップ層(104)をエピタキシャルに配置すること、
前記エッチ・ストップ層(104)上に第1の複数の半導体材層を含むn型半導体分布ブラッグ反射器(nDBR)(106)をエピタキシャルに配置すること、
前記nDBR(106)上に多重量子井戸(108a)構造を含む複数の活性領域(108)をエピタキシャルに配置すること、
前記複数の活性領域(108)上に位置を揃え順序立てて、第2の複数の半導体材層を含むp型半導体分布ブラッグ(pDBR)(110a)反射器と位相整合層(110b)とをエピタキシャルに配置すること、
前記nDBR(106)上のメサ、前記エッチ・ストップ層(104)および前記半導体基板(102)を形成すること、
前記位相整合層(110b)上に前記金属反射器(110c)を配置すること、
電流注入のために前記金属反射器(110c)上に電気的p接触層(112)を形成すること、
前記半導体基板(102)および前記エッチ・ストップ層(104)を薄くして選択的に除去すること、ならびに
前記半導体基板(102)の裏側に電気的n接触層(100)を形成すること
を含む方法。
【請求項14】
発光レーザーに用いるために、前記電気的n接触層(100)、前記半導体基板(102)、および前記エッチ・ストップ層(104)中に発光窓(114)を形成することをさらに含む、請求項13に記載の多接合底面発光VCSEL(10)の製造方法。
【請求項15】
前記nDBR(106)上の前記メサ、前記エッチ・ストップ層(104)、および前記半導体基板(102)を前記形成することは、ドライまたはウェット・エッチングによって行われる、請求項13に記載の多接合底面発光VCSEL(10)の製造方法。
【請求項16】
前記複数の活性領域(108)のそれぞれを前記エピタキシャルに配置することは、前記多重量子井戸(108a)構造を接続するためのトンネル接合(108c)を形成すること、および前記電流注入を狭窄するための電流狭窄層(108b)を形成することをさらに含む、請求項13に記載の多接合底面発光VCSEL(10)の製造方法。
【請求項17】
前記電流狭窄層(108b)を前記形成することは、前記電流狭窄層(108b)を酸化すること、および前記電流狭窄層(108b)上に電流狭窄開口(108d)を形成することをさらに含む、請求項16に記載の多接合底面発光VCSEL(10)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面発光型垂直キャビティ面発光レーザー、具体的にはハイブリッド金属-半導体反射器を備える多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザーと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)は、基板の平面に対し垂直な方向を持つ成分のための光学的共鳴キャビティの構造を有し、それゆえに出力レーザービームは、鏡の上面および底面から出射される。出光鏡は、典型的には、反対側の非出光鏡よりも僅かに反射性が低い。一般に、複層の薄膜の分布ブラッグ反射器(DBR)を用いるVCSELの典型的な共鳴キャビティは、半導体層から構成される。この典型的なVCSELでは、出光鏡が98%~99%の反射率を有するのに対し、非出光鏡が法線入射での所定波長で99.9%超の反射性を達成することが求められるように、鏡が設計される。別のタイプの設計では、底部鏡が出光鏡の役割を果たし、ゆえに上部鏡はそれよりも高い反射率を有し、非出光鏡の役割を果たす。層の屈折率の差異を推計して高率の反射率を得るには、鏡のみを有するDBRの数は、780nmから980nmまでの範囲の波長では、1つの積層あたり36対から最大で44対までに及ぶ。それゆえに、材質を向上するため、DBR対の数を低減するための単純な方法を有する必要がある。
【0003】
したがって、金属鏡は、VCSELにおいて反射器として使用することができる。金属鏡は透明ではないことから、出光鏡よりも反射性の高い非出光鏡の役割を果たすものとなる。金属鏡で99.9%超の反射性を達成することは、DBR対の数と金属材料の選択とに主に依存するものとなる。金属の選択は、目的とする波長に依存する。Ag、Au、またはAlなどの典型的な金属は、目的とするある波長範囲で99.0%未満の反射率を有する。可視スペクトル(380nm~740nm)では、Agの反射率は、波長380nmで約95%に過ぎない。そのため、非出光鏡の反射性が反射率99.9%に達しない場合には、レーザーキャビティの閾値利得の増加に繋がるものとなる。さらに、閾値利得を得るのに必要な活性領域によってもたらされる利得は、光学的吸収およびDBR反射を特徴付ける往復キャビティ損失によって、追加的に決定される。ゆえに、閾値電流密度を低減するために高い反射率の非出光鏡VCSELを有する必要がある。
【0004】
中国特許第110829178A号は、環構造下、輪状構造の低分布ブラッグ反射器型の垂直キャビティ面発光半導体レーザーを開示している。本発明の環構造下の分布ブラッグ反射器を有する垂直キャビティ面発光半導体レーザーは、上部電極、オーム接触層、上部分布ブラッグ反射器、酸化物狭窄層、活性利得領域、および下部分布ブラッグ反射器、基板、下部電極を有し、上部電極、酸化物狭窄層の形状は、同じ内径を有する環であり、この環の幅は3μm~5μmであり、環の外径は115μm~125μmである。下部分布ブラッグ反射器、基板および下部電極中央部には、円柱状の中空の領域が存在する。しかし、前記構造は、高い反射率を垂直キャビティ面発光半導体レーザーに付与することができず、このことは、レーザーキャビティの閾値利得の増加に繋がるものとなる。ゆえに、嵩的に半分以上のサイズの分布ブラッグ反射器において光学的吸収損失を低減すると同時に閾値電流密度を減少させることができるように、高い反射率を有する垂直キャビティ面発光半導体レーザーの構造を提供する必要がある。
【0005】
米国特許第2013034117A1号は、垂直キャビティ面発光レーザーの改善された方法および装置を開示している。前記装置は、半導体基板、基板上の垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)、VCSEL上に形成された第1の電気的接触、基板上に形成された第2の電気的接触を含み、上記VCSELは、第1の鏡および第2の鏡を有する第1の共鳴キャビティを含み、それらの鏡のうち少なくとも1つは、その鏡へ入射した光を部分的に伝送し、上記第1の鏡および第2の鏡は、電気的に伝導性である。第1の層が、第1の鏡と第2の鏡との間にあり、電流路を制限する第1の開口を有する。第2の層が、第1の層と第2の鏡との間にあり、やはり電流路を制限する。多重量子井戸(MQW)構造が、第1の鏡と第2の鏡との間にあり、そこでは、第1の開口および第2の開口が共に、MQW構造を通る電流の幾何学的配置を画定する役割を果たす。しかし、方法および装置の本発明には、反射性を増加させる開示がない。しかし、前記構造は、高い反射率をVCSELに付与することができず、このことは、レーザーキャビティの閾値利得の増加に繋がるものとなる。そのため、嵩的に半分以上のサイズの分布ブラッグ反射器において光学的吸収損失を低減すると同時に閾値電流密度を減少させることができるように、高い反射率を有するVCSELの構造を提供する必要がある。
【0006】
中国特許第113206446A号は、伝導性酸化物DBR(分布ブラッグ反射器)に基づく窒化物型垂直キャビティ面発光レーザーの製造方法を開示しており、ここでは、レーザーは、支持基板、第1の反射器、電流制限層、p型層、活性領域、n型層、第2の反射器、およびn電極を、連続的に積層して含み、第1の反射器および第2の反射器はそれぞれ、p型伝導性酸化物DBRおよびn型伝導性酸化物DBRから構成され、分布ブラッグ反射器は、伝導性を有する酸化物材からなり、窒化物型垂直キャビティ面発光レーザーの反射器として用いられる。しかし、本方法は、窒化物材型VCSEL構造に適用可能であるに過ぎない。そのため、ヒ化ガリウムやリン化インジウムなどのDBR材VCSEL構造の用途をさらに広げる必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、ハイブリッド金属-半導体鏡を有する多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザーを提供することであり、このハイブリッド金属-半導体鏡は、高い反射性を提供し、嵩的に半分以上のサイズのDBRにおいて光学的吸収損失を低減する非出光鏡の役割を果たす。
【0008】
また、本発明の目的は、往復利得を増加させることによって出力を上げ、ゆえに同時に閾値電流密度を減少させて微分量子効率を増加させることのできる、多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザーを提供することである。
【0009】
さらに、本発明の目的は、ハイブリッド金属-半導体鏡を有する多接合底面型垂直キャビティ面発光レーザーの様々なDBR材を提供することであり、のハイブリッド金属-半導体鏡は、ヒ化ガリウム、GaAsベース基板、窒化ガリウム、GaNベース基板、およびリン化インジウム、InPベース基板を含む。
【0010】
したがって、これらの目的は、下記の本発明の教示によって達成され得る。本発明は、電気的n接触層と、電気的n接触層上に配置された半導体基板と、半導体基板上に配置されたエッチ・ストップ層と、エッチ・ストップ層上に配置された第1の複数の半導体材層を含むn型半導体分布ブラッグ反射器(nDBR)と、nDBR上に配置された複数の活性領域を含むレーザーキャビティと、レーザーキャビティ上に配置されたハイブリッド金属-半導体反射器とを含む、多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)に関し、上記ハイブリッド金属-半導体反射器は、第2の複数の半導体材層を含むp型半導体分布ブラッグ反射器(pDBR)と、pDBR上に配置された位相整合層および位相整合層上に配置された金属反射器と、ハイブリッド金属-半導体反射器上に形成された電気的p接触層とを含む。
【0011】
本発明の特徴は、本発明の好適な実施形態の添付の図面と併せて読んだ際にさらに容易に理解し認識するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザーの構造の断面模式図である。
【
図2】
図1による多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザーの構造におけるメサの断面模式図である。
【
図3】
図1による電流狭窄層の酸化後の断面模式図である。
【
図4】
図1による金属反射器および金属電極の形成の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の原理の理解を促進する目的で、図面に例説され下記に記載の明細書に説明された実施形態を参照するものとする。本発明が、例説された実施形態に対する任意の変更および改変を含み、本発明の原理のさらに別の適用を含み、それらは本発明の関連する分野の当業者に通常生じるようなものであることを理解されよう。
【0014】
本発明は、電気的n接触層100と、電気的n接触層100上に配置された半導体基板102と、半導体基板102上に配置されたエッチ・ストップ層104と、エッチ・ストップ層104上に配置された第1の複数の半導体材層を含むn型半導体分布ブラッグ反射器(nDBR)106と、nDBR106上に配置された複数の活性領域108を含むレーザーキャビティと、レーザーキャビティ上に配置されたハイブリッド金属-半導体反射器110とを含む多接合底面発光垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)(10)を教示し、ここでは、ハイブリッド金属-半導体反射器110は、第2の複数の半導体材層を含むp型半導体分布ブラッグ反射器(pDBR)110aと、pDBR110a上に配置された位相整合層110bおよび位相整合層110b上に配置された金属反射器110cと、ハイブリッド金属-半導体反射器110上に形成された電気的p接触層112とを含む。
【0015】
本発明の好適な実施形態では、電気的n接触層100、半導体基板102、およびエッチ・ストップ層104は、発光レーザーに用いるための発光窓114を含む環形状として構成され、電気的p接触層112は、電流注入に用いられる。
【0016】
本発明の好適な実施形態では、nDBR106、エッチ・ストップ層104、半導体基板102、および電気的n接触層100は、円形断面を有して延びているメサとして構成されている
【0017】
本発明の好適な実施形態では、ハイブリッド金属-半導体反射器110は非出光鏡であり、nDBR106は出光鏡である。nDBR106およびpDBR110a層は、ヒ化ガリウム(GaAs)ベース基板上のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaAs)と、窒化ガリウム(GaN)ベース基板上の窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)と、リン化インジウム(InP)ベース基板上のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaAs)とを含む。
【0018】
本発明の好適な実施形態では、レーザーキャビティ中の複数の活性領域108の各層は、歪または無歪の多重量子井戸108aの構造からなる。歪または無歪の多重量子井戸108aの構造のそれぞれは、互いに間隔を空けており、トンネル接合108cにより電気的におよび伝導的に接続され、電流狭窄層108bにより狭窄されている。トンネル接合108cは、伝導型の異なる少なくとも2つのドープ半導体層を含む。また、電流狭窄開口108dが、ウェット酸化により電流狭窄層(108b)上に形成されている。
【0019】
本発明の好適な実施形態では、金属反射器110cは、少なくとも1層の金属または少なくとも1層の合金を含み、ここでは、金属は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、または白金を含み、合金は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、または白金を含む。
【0020】
本発明はまた、多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)10の製造方法を教示し、本方法は、半導体基板102を供給すること、半導体基板102上にエッチ・ストップ層104をエピタキシャルに配置すること、エッチ・ストップ層104上に第1の複数の半導体材層を含むn型半導体分布ブラッグ反射器(nDBR)106をエピタキシャルに配置すること、nDBR106上に多重量子井戸108a構造を含む複数の活性領域108をエピタキシャルに配置すること、複数の活性領域108上に位置を揃え順序立てて、第2の複数の半導体材層を含むp型半導体分布ブラッグ(pDBR)110a反射器と位相整合層110bとをエピタキシャルに配置すること、nDBR106上のメサ、エッチ・ストップ層104および前記半導体基板102を形成すること、位相整合層110b上に金属反射器110cを配置すること、電流注入のために金属反射器110c上に電気的p接触層112を形成すること、半導体基板102およびエッチ・ストップ層104を薄くして選択的に除去すること、ならびに半導体基板102の裏側に電気的n接触層100を形成することを含む。前記方法は、発光レーザーに用いるために、電気的n接触層100、半導体基板102、およびエッチ・ストップ層104中に発光窓114を形成することをさらに含む。nDBR106上のメサ、エッチ・ストップ層104、および半導体基板102を形成することは、ドライまたはウェット・エッチングによって行われる。
【0021】
本発明の好適な実施形態では、複数の活性領域108のそれぞれをエピタキシャルに配置することは、多重量子井戸108a構造を接続するためのトンネル接合108cを形成すること、および電流注入を狭窄するための電流狭窄層108bを形成することをさらに含む。電流狭窄層108bを形成する前記方法は、電流狭窄層108bを酸化すること、および電流狭窄層108b上に電流狭窄開口108dを形成することをさらに含む。
【0022】
多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザー10構造のエピタクシ構造設計の断面模式図を
図1に説明する。
図1に説明するように、エッチ・ストップ層104、n型半導体分布ブラッグ反射器(nDBR)106、複数の活性領域108、ハイブリッド金属-半導体反射器110が、半導体基板102上にエピタキシャルに形成されている。ハイブリッド金属-半導体反射器110は、以下に限定されないが、p型半導体分布ブラッグ反射器(pDBR)110a層と位相整合層110bとを含む。
【0023】
pDBR110a層とnDBR106層との両方は、屈折率の異なる半導体材によって形成される。使用する半導体DBRは、共鳴キャビティの厚さおよび対の数を設計するための適正かつ持続的な波長を有する屈折率の異なる材料からなる2つの層である。pDBR110aとnDBR106との両方の半導体材は、基板に格子整合している。基板は例えば、GaAs、InP、またはGaN基板とすることができる。ハイブリッド金属-半導体反射器110は非出光鏡であり、nDBR106は出光鏡である。
【0024】
図1にさらに説明するように、活性領域108は、以下に限定されないが、多重量子井戸108a、電流狭窄層108b、およびトンネル接合108cを含む。各活性領域108は、歪または無歪の多重量子井戸108aにより形成され、それらの井戸は、多接合底面発光VCSEL10の設計される適用に応じて、互いに障壁層により分かれている。歪または無歪の多重量子井戸108a構造のそれぞれは、互いに隔てられており、電気的におよび伝導的にトンネル接合108cによって接続され、電流狭窄層108bによって狭窄されている。そのため、複数の活性領域108では、様々な数の活性領域108を有して設計することができる。各活性領域108は、様々な数の多重量子井戸108aを有する。各量子井戸108aは、同じピーク利得を持つ利得スペクトルを有する。トンネル接合108cは、厚さ20~40nmを有する伝導型の異なる少なくとも2つのドープ半導体層を含む。
【0025】
高性能トンネル接合108cは、抵抗が低く吸収損失が低くp型およびn型ドーピングレベルが高い材料を要する。トンネル接合108cは、VCSEL10の動作中は逆バイアスされている。電流は、トンネル効果によりそのような接合にわたって移動するが、電位差が依然としてその接合にわたって要求される。そのため、VCSEL10にわたる電位を、トンネル接合108cを通じて必要な電流を供給するように増加させなければならない。十分なトンネル効果を供給するために、トンネル接合108cの層を極めて高度にドープしなければならない。すなわち、トンネル接合108cの反対側で、ドーパント濃度1×1019cm-3以上がn型およびp型両方の不純物に求められる。
【0026】
高度にドープされたp型層のドーパントは、炭素、亜鉛、ベリリウム、またはマグネシウムである。高度にドープされたp型層について、本発明にてトンネル接合108cを形成するのに用いられる元素としては、以下に限定されないが、炭素が挙げられる。高度にドープされたn型層のドーピング元素は、例えば、シリコンまたはテルルとすることができる。高度にドープされたn型層について、トンネル接合108cを形成するのに用いられる元素としては、以下に限定されないが、テルルが挙げられる。
【0027】
ハイブリッド金属-半導体反射器110の第1の部分は、上記に開示されているようにpDBR110aと位相整合層110bとをエピタキシャルに成長させている。そこで、多接合底面発光型垂直キャビティ面発光レーザー10構造のメサの断面模式図を
図2に説明する。メサを複数の活性領域108の下へエッチングし、nDBR106層の始まりで止める。メサは、ドライまたはウェット・エッチングなどの任意の適したプロセスにより形成されている。典型的なドライ・エッチング・プロセスは、酸素イオン、塩素イオン、アルゴンイオン、窒素イオン、およびヘリウムイオンを用いるのに対し、ウェット・エッチング・プロセスは、硫酸またはリン酸のエッチングを用いる。本実施形態では、メサは、誘導結合プラズマを用いてドライ・エッチングされ、メサは、20から50ミクロン、または好ましくは約30から40ミクロンの径としてもよい。メサは概ね円形の断面を有する。
【0028】
電流狭窄開口108dは、多接合VCSEL10の閾値電流を低減するようにウェット酸化することによって電流狭窄層108b上に形成される。
図3は、電流狭窄層108bの酸化後の断面模式図を説明する。電流狭窄開口108dの外部酸化部は、概して輪状を有し、酸化が、メサのエッチングされた側壁から内側に向けて対称に延びている。そのため、電流狭窄開口108dはメサの中心にある。
【0029】
また、ハイブリッド金属-半導体反射器110は、次いでメサ・エッチングのプロセスの後に位相整合層110bの上に堆積される、金属反射器110cを有する。
図4は、金属反射器110cと、ハイブリッド金属-半導体反射器110上の金属電極との形成に関する断面模式図を説明する。
図4に示すように、ハイブリッド金属-半導体反射器110は、上部から下部まで、位相整合層110bおよび屈折率の異なる複数のpDBR110a対以外に、金属鏡などの金属反射器110cも含み、この金属は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、白金のような材料から作製される。しかし、金属鏡110cはまた、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、白金から選択される、多層の金属または少なくとも合金に形成されるものとすることができる。ハイブリッド金属-半導体鏡110で高い反射を得るためにpDBR層110aは、金属鏡110cと組み合わせて用いるものとする。これにより、DBRのみの鏡よりも半分のサイズのDBRの鏡を生じるものとする。そのため、本発明は、複合型かつ高反射率の上部鏡を与える、ハイブリッド金属-半導体鏡110を備えた多接合底面発光VCSEL10の製造を提供する。
【0030】
金、銀、白金のような金属の伝導性は無限ではなく、光は、金属の表面で反射すると、金属膜内を数十ナノメートル貫入し得る。そのため、金属膜からの光反射の位相変化は、貫入のゆえにπのみでなく余分のシフトを経る。光の反射を最大にするため、この位相シフトは補償されるべきであり、それは本発明では、位相整合層110bを挿入することによって実現することができる。ゆえに、前記位相整合層110bは、金属鏡110cとpDBR110aとの間に配置される。金属鏡110cからの反射光は、使用する金属多層の性質に応じた位相シフトを有する。そのため、定常波の機能を調整するためにpDBR110aと金属鏡110cとの間に位相シフト適応レーザーを有し、その結果、金属鏡110cおよびpDBR110aからの反射がレージング波長で位相整合されて、全反射率の最大化を達成することが好ましい。位相整合層110bは、以下に限定されないが、半導体材を含んでもよい。位相整合層110bは、ハイブリッド金属-半導体鏡110によって達成される全反射率において役割を果たすことから、pDBR110aの一部として考えられる。位相整合層110bの適切な厚さは、上部および下部の鏡によって反射されるレーザ発振動作の波長の約2分の1以下である。
【0031】
半導体上への金属の接着が難題であることが知られていることから、まずは例えば、GaAsを、極めて強くGaAsと結合するチタンまたはクロムのような材料と金属化することが通例である。しかし、接着層は、厚みにより反射性が低下するように、金属鏡にとって非常に有害となり得る。この接着層の厚さは、大きなばらつきがあるが、一般に約5~40nmの間となるように選択される。パラジウムまたはニッケルなどの他の接着層等も、前記層を置き換えることができる。
【0032】
また、
図4にさらに説明するように電気的p接触112が、金属鏡110c上にめっきされるのに対し、電気的n接触100が、基板102の裏側にめっきされる。本発明の実施形態の一例では、チタン、白金、および金の多層が電気的p接触112に用いられ、ゲルマン金、ニッケル、および金の多層が電気的n接触の導電体100に用いられ、結合層に伝導してn型またはp型の接触にてオーム接触を形成する。ハイブリッド金属-半導体鏡110を有する多接合VCSEL10は、上部電気的p接触112および下部電気的n接触100にわたって電流を印加することによって活性化される。
【0033】
基板102の裏側およびエッチ・ストップ層104は、選択的に薄層化され除去されて、底面発光窓114を形成する。基板102の除去は、エッチ・ストップ層104に対する選択的エッチング法を用いて行われる。ハイブリッド金属-半導体鏡110デバイスを備えた完成型の多接合底面発光VCSEL10は、任意の標準的な切断手法を用いて切断されて、別個のVCSELデバイスまたはVCSELアレイをチップに分け、ヒート・スプレッダ・サブマウント上にマウントされる。
【0034】
本発明の方法およびシステムは、多接合底面発光VCSEL10を形成するための半分サイズのDBRを提供する。半導体の数、DBRの厚さを低減する結果、良好な熱伝導性がもたらされる。多接合底面発光VCSEL10構造は、高い鏡反射性を要する一般的なVCSELキャビティにおいて低い往復利得を向上させるために往復利得を増加させることによって、閾値電流を低減し出力を高めるように、本発明に提供される。さらに別の複数の活性領域がこの構造に追加された際に、閾値電流密度は本発明にてさらに低減される。原則として、多接合VCSEL10において、この種類の活性領域を追加することに制限はない。
【0035】
上記に説明した本発明は、上述の実施形態および図面に限定されず、本発明の分野の当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な置換え、変形、および変更がなされ得ることが明らかとなる。