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特開2024-70261髄内ネイルと共に使用されるプレートにおける矢状方向調整スロット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070261
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】髄内ネイルと共に使用されるプレートにおける矢状方向調整スロット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/76 20060101AFI20240515BHJP
   A61B 17/80 20060101ALI20240515BHJP
   A61B 17/90 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A61B17/76
A61B17/80
A61B17/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023192262
(22)【出願日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】63/424,296
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/471,654
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519273267
【氏名又は名称】ストライカー・ユーロピアン・オペレーションズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・ザンダー
(72)【発明者】
【氏名】マンフレッド・ウィーラント
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック・クリューバー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL27
4C160LL32
4C160LL44
(57)【要約】
【課題】骨折固定システムを提供すること。
【解決手段】骨折固定システムは、骨の管に挿入されるように構成された骨ネイルと、骨の表面に当接するように構成された骨プレートと、を含み、骨ネイルは、第1、第2、および第3のネイル穴を含み、第2のネイル穴は、第1のネイル穴と第3のネイル穴との間に位置し、骨プレートは、第1および第3のプレート穴と、第1のプレート穴と第3のプレート穴との間に位置するスロットと、を含む。一実施形態では、骨プレートのスロットは、第1のプレート穴の中心点から一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折固定システムであって、
骨の管に挿入されるように構成された骨ネイルと、
前記骨の表面に当接するように構成された骨プレートと、
を含み、
前記骨ネイルは、第1のネイル穴、第2のネイル穴、および第3のネイル穴を含み、前記第2のネイル穴は、前記第1のネイル穴と前記第3のネイル穴との間に位置し、
前記骨プレートは、第1のプレート穴および第3のプレート穴と、前記第1のプレート穴と前記第3のプレート穴との間に位置するスロットと、を含む、骨折固定システム。
【請求項2】
前記第1のプレート穴の中心点と前記スロットの中心線との間の距離が、前記第1のネイル穴の中心点と前記第2のネイル穴の中心点との間の距離と実質的に等しい、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項3】
前記骨プレートの前記スロットは、前記第1のプレート穴の中心点から一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有する、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項4】
前記中心線に沿った前記スロットの長さは、3~25mmである、請求項3に記載の骨折固定システム。
【請求項5】
前記スロットは、前記骨プレートの端部間に延びる前記骨プレートの正中線に対して実質的に垂直に延びる、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項6】
前記骨プレートの前記スロットは、一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有し、
前記第1のプレート穴は、一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有するスロットである、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項7】
前記弧の中心点が同じである、請求項6に記載の骨折固定システム。
【請求項8】
前記弧の中心点が異なる、請求項6に記載の骨折固定システム。
【請求項9】
前記スロットは、前記骨プレートの端部間に延びる前記骨プレートの正中線に対して実質的に垂直に延びる、請求項6に記載の骨折固定システム。
【請求項10】
前記骨プレートの前記スロットは、前記骨プレートの端部間に延びる前記骨プレートの正中線に対して実質的に垂直な軸に沿って延びる中心線を有する、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項11】
前記第1のプレート穴の中心点と前記第3のプレート穴の中心点との間の距離が、前記第1のネイル穴の中心点と前記第3のネイル穴の中心点との間の距離に実質的に等しい、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項12】
前記スロットの周辺部が、ねじの頭部に係合し、かつ後退を防止するためにスカラップ形である、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項13】
前記第1のプレート穴および前記第1のネイル穴内に配置された第1のファスナと、
前記第3のプレート穴および前記第3のネイル穴内に配置された第2のファスナと、
前記スロットおよび前記第2のネイル穴内に配置された第3のファスナと、
をさらに含む、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項14】
前記第1のファスナ、前記第2のファスナ、および前記第3のファスナのうちの少なくとも1つが、ねじ、またはねじ山付きでないペグである、請求項13に記載の骨折固定システム。
【請求項15】
前記第1のプレート穴、前記第3のプレート穴、前記第1のネイル穴、前記第2のネイル穴、および前記第3のネイル穴のそれぞれが、円形の周辺部を有し、前記スロットは、非円形の周辺部を有する、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項16】
前記第3のプレート穴、前記第1のネイル穴、前記第2のネイル穴、および前記第3のネイル穴のそれぞれが、円形の周辺部を有し、前記スロットは、非円形の周辺部を有し、
前記第1のプレート穴は、非円形の周辺部を有するスロットである、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項17】
前記骨プレートは、前記骨プレートの第1の側縁と前記骨プレートの端部間に延びる前記骨プレートの正中線との間に位置する第4のプレート穴をさらに画定する、請求項1に記載の骨折固定システム。
【請求項18】
前記第1のプレート穴は、ファスナを単一の軸に沿った挿入に制限する周辺部を画定し、前記第4のプレート穴は、ファスナを前記単一の軸に平行な軸に沿った挿入に制限する周辺部を画定する、請求項17に記載の骨折固定システム。
【請求項19】
前記骨プレートは、前記骨プレートの前記正中線と、前記第1の側縁の反対側にある前記骨プレートの第2の側縁との間に位置する第5のプレート穴をさらに画定する、請求項17に記載の骨折固定システム。
【請求項20】
前記第4のプレート穴および前記第5のプレート穴は、いずれも、前記骨プレートの前記正中線に対して垂直な単一の軸と交差する、請求項19に記載の骨折固定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2023年6月7日に出願された米国出願第63/471,654号および2022年11月10日に出願された米国出願第63/424,296号の優先権を主張するものであり、それらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
複雑で多くの場合骨幹端で起こる骨折の治療には、髄内ネイルと外側または内側のロックプレートとを組み合わせて利用することが、実行可能な臨床的オプションとして確立されている。このような複合的な骨接合術の結果として生じる固定強度および剛性は、最終的に早期または即時の体重負荷プロトコルを可能にし、よって、骨折治癒、一般的な患者の転帰(生活の質)、または死亡率などの術後指標に良い影響を与える。
【0003】
ネイルとプレートの両方を組み合わせることにより生体力学的性能を最大化する試みは、プレートおよび髄内ネイルの両方に同時に通されたねじおよび/またはペグを使用することにより、連結した構築物をその場で生成することで強化されることが多い。このような構築物の有効性に関する最終的な臨床的および力学的証拠は不足しているが、現在の臨床文献では、さらなる安定性および適応した構築物の剛性を提供することで、体重負荷能力と骨折治癒に良い影響があると想定されている。
【0004】
とはいえ、インプラントを連結することの臨床的有効性が不明確であることに加え、潜在的な遠位連結オプションの数についても、依然として議論の的になっている。1つ(多くの場合、最遠位ネイルロック穴)で十分とする文献もあるが、所与のネイル-プレートコンビネーション(NPC)構築物の中にさらなる遠位連結オプションを設けて、術中の柔軟性と安定化の可能性を高めることの潜在的な臨床的利点があり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、インターロック式髄内ネイルおよびロックプレートを備えたシステムのさらなる改善が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、骨折固定システムを使用する方法であり、この方法は、骨ネイルを骨の管に挿入することと、骨プレートを骨の表面に接して挿入し、骨プレートの第1の端部を骨ネイルの第1の端部に隣接して位置させることと、第1のプレート穴を通して、かつ第1のネイル穴を通して整列器具を挿入することと、骨プレートの第3のプレート穴を骨ネイルの第3のネイル穴と整列させることと、第1のプレート穴を通して、かつ第1のネイル穴を通して骨に第1のボアを穿孔することと、第1のプレート穴および第1のネイル穴に第1のファスナを挿入して、骨ネイルと骨プレートとを結合することと、骨プレートのスロットおよび第2のネイル穴を通して骨に第2のボアを穿孔することであって、スロットは第1のプレート穴と第3のプレート穴との間に位置し、第2のネイル穴は第1のネイル穴と第3のネイル穴との間に位置する、ことと、スロットおよび第2のネイル穴に第2のファスナを挿入することと、を含む。
【0007】
第1の態様の他の実施形態によれば、本方法は、第3のプレート穴および第3のネイル穴を通して整列器具を挿入することをさらに含み得る。整列器具はそれぞれ、kワイヤとすることができる。骨ネイルを挿入するステップは、大腿骨の遠位端部における進入場所に逆行性大腿骨ネイルを挿入することを含み得る。本方法は、第3のプレート穴および第3のネイル穴を通して第3のボアを穿孔することと、第3のプレート穴および第3のネイル穴に第3のファスナを挿入することと、をさらに含み得る。第1のファスナを挿入するステップ、第2のファスナを挿入するステップ、および/または、第3のファスナを挿入するステップは、ねじを挿入し、ねじの頭部を第1のプレート穴、第3のプレート穴、および/またはスロットにそれぞれねじ込むことを含み得る。第1のファスナを挿入するステップおよび第3のファスナを挿入するステップは、ねじを挿入し、ねじの頭部を第1のプレート穴および第3のプレート穴にそれぞれねじ込むことを含み得、第2のファスナを挿入するステップは、第2のファスナのねじ山付きでない頭部をスロットに挿入することを含み得る。穿孔するステップのいずれも、骨ネイルに取り付けられた標的化アームを使用することを含み得る。穿孔するステップのいずれも、ドリルスリーブを使用することを含み得る。穿孔するステップのいずれも、第1の円錐面および第2の平面によって画定されるガイド穴を有するドリルガイドを使用することを含み得る。穿孔するステップのいずれも、第1の円錐面および第2の平面によってのみ画定されるガイド穴を有するドリルガイドを使用することを含み得る。
【0008】
本方法は、骨プレートの第4のプレート穴を通して、骨ネイル内の穴との整列を避けるように、骨に第4のボアを穿孔することと、第4のプレート穴に第4のファスナを挿入し、第4のファスナと骨ネイルとの接触を避けることと、をさらに含み得る。本方法は、骨プレートの第5のプレート穴を通して、骨ネイル内の穴との整列を避けるように、骨に第5のボアを穿孔することと、第5のプレート穴に第5のファスナを挿入し、第5のファスナと骨ネイルとの接触を避けることと、をさらに含み得る。第4のボアを穿孔するステップは、第4のボアを骨ネイルの第1の側に穿孔することを含み得、第5のボアを穿孔するステップは、第5のボアを第1の側とは反対側の骨ネイルの第2の側に穿孔することを含み得る。骨ネイルを挿入するステップは、骨ネイルを脛骨に挿入することを含み得る。骨ネイルを挿入するステップは、骨ネイルを上腕骨に挿入することを含み得る。骨ネイルを挿入するステップは、骨ネイルを大腿骨に挿入することを含み得る。
【0009】
第1のプレート穴はスロットであってよい。第1のファスナを挿入するステップおよび第2のファスナを挿入するステップは、骨に対するプレートのさらなる移動が許容されるように、第1のファスナおよび第2のファスナをプレートに対して締め付けることなく、第1のファスナおよび第2のファスナをそれぞれ第1のプレート穴およびスロットに挿入することを含み得る。第1のファスナを挿入するステップおよび第2のファスナを挿入するステップの後、本方法は、プレートの長手方向軸に実質的に垂直な方向においてプレートを骨に対して移動させることをさらに含み得る。本方法は、プレートに対して第1のファスナおよび第2のファスナを締め付けることをさらに含み得る。
【0010】
本発明の第2の態様は、骨折固定システムであり、これは、骨の管に挿入されるように構成された骨ネイルと、骨の表面に当接するように構成された骨プレートと、を含み、骨ネイルは、第1、第2、および第3のネイル穴を含み、第2のネイル穴は、第1のネイル穴と第3のネイル穴との間に位置し、骨プレートは、第1および第3のプレート穴と、第1のプレート穴と第3のプレート穴との間に位置するスロットと、を含む。
【0011】
第1の態様の他の実施形態によれば、第1のプレート穴の中心点とスロットの中心線との間の距離は、第1のネイル穴の中心点と第2のネイル穴の中心点との間の距離に実質的に等しくてよい。骨プレートのスロットは、第1のプレート穴の中心点から一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有し得る。中心線の弧に沿ったスロットの長さは、3~25mmであってよい。
【0012】
スロットは、骨プレートの端部間に延びる骨プレートの正中線に対して実質的に垂直に延びることができる。骨プレートのスロットは、一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有し得、第1のプレート穴は、一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有するスロットとすることができる。弧の中心点は同じであっても異なっていてもよい。スロットは、骨プレートの端部間に延びる骨プレートの正中線に対して実質的に垂直に延び得る。骨プレートのスロットは、骨プレートの端部間に延びる骨プレートの正中線に実質的に垂直な軸に沿って延びる中心線を有し得る。
【0013】
第1のプレート穴の中心点と第3のプレート穴の中心点との間の距離は、第1のネイル穴の中心点と第3のネイル穴の中心点との間の距離に実質的に等しくてよい。スロットの周辺部は、ねじの頭部に係合し、後退(backout)を防止するために、スカラップ形であってよい。
【0014】
骨折固定システムは、第1のプレート穴および第1のネイル穴内に配置された第1のファスナと、第3のプレート穴および第3のネイル穴内に配置された第2のファスナと、スロットおよび第2のネイル穴内に配置された第3のファスナと、をさらに含み得る。第1、第2および第3のファスナの少なくとも1つは、ねじであってよい。第1、第2および第3のファスナの少なくとも1つは、ねじ山付きでないペグであってよい。第1のプレート穴、第3のプレート穴、第1のネイル穴、第2のネイル穴、および第3のネイル穴の各々は、円形の周辺部を有してよく、スロットは非円形の周辺部を有し得る。第3のプレート穴、第1のネイル穴、第2のネイル穴、および第3のネイル穴の各々は、円形の周辺部を有してよく、スロットは、非円形の周辺部を有してよく、第1のプレート穴は、非円形の周辺部を有するスロットとすることができる。骨プレートは、骨プレートの第1の側縁と骨プレートの端部間に延びる骨プレートの正中線との間に位置する第4のプレート穴をさらに画定し得る。第1のプレート穴は、ファスナを単一の軸に沿った挿入に制限する周辺部を画定することができ、第4のプレート穴は、ファスナを単一の軸に平行な軸に沿った挿入に制限する周辺部を画定し得る。骨プレートは、骨プレートの正中線と、第1の側縁の反対側にある骨プレートの第2の側縁との間に位置する第5のプレート穴をさらに画定し得る。第4のプレート穴および第5のプレート穴は、いずれも、骨プレートの正中線に垂直な単一の軸と交差し得る。
【0015】
本明細書に記載された図面は、選択された実施形態の例示のみを目的とするものであり、全ての可能な実施態様ではなく、したがって、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による骨折固定システムを示す。
図2図1に示す骨折固定システムの骨プレートを示す。
図3図1に示す骨折固定システムの骨プレートを示す。
図4図1に示す骨折固定システムの骨プレートの遠位端部を示す。
図5図1に示す骨折固定システムの骨プレートの遠位端部を示す。
図6図1に示す骨折固定システムの骨プレートの穴の周辺部を示す。
図7図1に示す骨折固定システムの骨プレートのスロットの周辺部を示す。
図8図1に示す骨折固定システムの骨プレートの遠位端部を示す。
図9】骨に取り付けられた、図1に示す骨折固定システムを示す。
図10図1に示す骨折固定システムに関連した標的ガイドの使用を示す。
図11図1に示す骨折固定システムに関連した標的ガイドの使用を示す。
図12図1に示す骨折固定システムに関連した標的ガイドの使用を示す。
図13図1に示す骨折固定システムに関連した標的ガイドの使用を示す。
図14図1に示す骨折固定システムに関連した標的ガイドの使用を示す。
図15図1に示す骨折固定システムに関連した標的ガイドの使用を示す。
図16図1に示す骨折固定システムに関連した標的ガイドの使用を示す。
図17図1に示す骨折固定システムを使用する方法のステップを示す。
図18図1に示す骨折固定システムを使用する方法のステップを示す。
図19図1に示す骨折固定システムを使用する方法のステップを示す。
図20】本発明の別の実施形態による骨プレートの遠位端部を示す。
図21A図20に示す骨プレートの遠位端部を示す。
図21B図21Aに示す骨プレートにおけるスロットの配置を示す。
図22A】本発明の別の実施形態による骨プレートの遠位端部を示す。
図22B図22Aに示す骨プレートにおけるスロットの配置を示す。
図23A】本発明の他の実施形態による骨プレートにおけるスロットのさらなる配置を示す。
図23B】本発明の他の実施形態による骨プレートにおけるスロットのさらなる配置を示す。
図23C】本発明の他の実施形態による骨プレートにおけるスロットのさらなる配置を示す。
図23D】本発明の他の実施形態による骨プレートにおけるスロットのさらなる配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図9に示すように、本発明の第1の実施形態による骨折固定システム100は、以下に説明するように、骨ネイル70と、骨プレート10と、1つ以上のファスナと、を含む。ネイル70は、大腿骨、上腕骨、脛骨、腓骨などの長骨の管に挿入するための髄内ネイルである。一実施形態では、ネイル70は逆行性大腿骨ネイルである。ネイル70の形状および相対寸法は、システム100の使用が意図される任意の特定の長骨に使用するために設計することができる。
【0018】
ネイル70は形状が一般に長手方向であり、遠位端部71から近位端部72まで延びている。図1および図5に示すように、遠位端部71に隣接して、第1の遠位ネイル穴73および第2の遠位ネイル穴74がネイル70内に画定される。本明細書におけるネイル70の構成および使用を参照するために、第1の遠位ネイル穴73は、遠位端部71の比較的近くに設けられ、第2の遠位ネイル穴74は、ネイル70の近位端部72に比較的近接している。ネイル70の近位端部72において、近位ネイル穴75がネイル70内に画定され、第1の遠位ネイル穴73および第2の遠位ネイル穴74の両方に対して近位に位置付けられる。さらなる固定の目的に適するように、ネイル70のどの部分にもさらなる穴を設けることができる。
【0019】
プレート10も概して本質的に長手方向であり、外面11と、骨の外面に当接するように構成された内面と、を有する。プレート10は、遠位端部12から近位端部13まで延びており、プレート10の遠位端部12は、システム100が組み立てられたときに、ネイル70の遠位端部71との接続のためにネイル70の遠位端部71に隣接するように構成されている。
【0020】
プレート10の遠位端部12に隣接して、遠位スロット15と、本明細書では第1の遠位プレート穴14、第4のプレート穴19、および第5のプレート穴20と呼ばれるプレート穴とが、プレート10内に画定される。同様に、第1の遠位プレート穴14および遠位スロット15の近位に位置して、近位プレート穴16がプレート10の近位端部13に隣接して画定される。プレート穴19および20はそれぞれ、プレート10の対向する側縁のうちのそれぞれの一方とプレート10の正中線との間に位置し、正中線はプレート10の遠位端部12と近位端部13との間に延びる線である。このようにして、プレート穴19および20は、プレート10の正中線からオフセットされる。さらに、プレート穴19および20は、正中線に対して互いに正反対にあってよく、プレート穴19および20はそれぞれ、正中線に垂直な単一の軸と交差する。
【0021】
システム100の一実施形態では、第1の遠位プレート穴14および第4のプレート穴19はそれぞれ、それらのそれぞれの周辺部が、そこに挿入されるファスナを、それぞれの幾何学的周辺部によって規定される単一の軸に沿ってのみ配置されるように制限するよう、具体的に構成される。第1の遠位プレート穴14および第4のプレート穴19によって画定される挿入軸は、実質的に平行にすることができ、穴14、19のそれぞれに挿入されるファスナが、挿入時に互いに実質的に平行になるように制限される。第5のプレート穴20は、第1の遠位プレート穴14に関して同様に構成することができる。ファスナの平行挿入を確実にするための別のオプションは、後述する標的ガイド200を使用することによるものである。他の実施形態では、穴14、19、20は、30°のロックコーン(locking cone)を可能にする可変角度ロック穴とすることができ、そこに挿入されるねじは、前頭面に平行に位置付けられ得る。
【0022】
遠位スロットを除く、本明細書に記載の各プレート穴の周辺部は円形である。他の実施形態では、プレート穴の1つ以上は、(以下に記載されるように)スロットであってよく、または楕円形、三角形、スロット形状などの異なる周辺部を有することができる。
【0023】
図6および図7に示すように、遠位スロット15の周辺部は、ファスナの頭部との係合を容易にするために、離間された複数のスカラップ形領域によって画定されている。この可変角度ロックの概念は、プレートとねじとの間の多点フォームフィット/摩擦適合固定(multi-point form-/friction-fit fixation)に依存している。これにより、プレートとねじとの間の十分な締まりばめが可能となり、生体内での意図しないねじの後退を防ぐことができる。スカラップ形構成に関するさらなる開示は、米国特許第11,039,865号で見られ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される骨穴およびプレート穴のいずれかまたは全ては、図8に示されるように、このようなスカラップ形構成を含むこともできる。
【0024】
上記で示したように、プレートと髄内ネイルとの間で2つ以上の遠位連結を利用しようとすると、プレートの位置決めついて制約された状況が生じ、大腿骨骨幹部に向かう近位プレートエリアの整列不良(矢状面ずれ)につながる可能性がある。図2および図3に示すように、例えばネイルの進入入口のばらつきによって引き起こされる、ネイル70の遠位側面とプレート10との間の軽微な整列不良は、骨とプレート10との間の著しい近位ずれをもたらす可能性がある。このような前方または後方の両方向における配置不良は、手技全体の有効性を危険にさらす可能性があり、どの外科医にも受け入れられにくい。
【0025】
プレート10の植え込み時に、このような整列不良のリスクを大幅に低減するために、スロット付きロック穴、すなわち遠位スロット15が導入され、インプラント相互連結の第2の点として機能する。遠位スロット15は、固定中にプレート10の配置を微調整する能力を外科医に提供する。例えば遠位プレート穴14に、最遠位ロックねじを最初に挿入し相互連結した後でも、この矢状方向整列スロット(SAS)15は、依然としてプレート-骨幹の適切な整列を可能にしつつ、第2の相互連結オプションを依然として確保することができる。最小限のスロット長さであっても、近位プレートエリアの可能な十分な位置を許容する。
【0026】
図8にさらに明確に示されているように、遠位スロット15の構成は、遠位プレート穴14の構成および場所と関連して設計されている。遠位スロット15は、湾曲した中心線18を有し、この説明の目的のために、わずかに誇張された曲線で示されている。中心線18は、第1の遠位プレート穴14の中心点17を中心とする円の弧の一部である。別の言い方をすれば、遠位スロット15は、本質的に、最遠位の穴14を中心とする弧を描く。このようにして、遠位スロット15は、中心点17から一定の半径の中心線18の弧に沿って延びる。中心線の弧に沿ったスロットの長さは、3~25mm、または5~20mm、または8~15mmとすることができ、あるいは10mmまたは12mmとすることもできる。換言すれば、第1の遠位プレート穴14の中心点17と中心線18との間の距離Rは、中心線18の全長に沿って固定される。この固定距離Rは、20~40mm、または20~30mm、または25~30mmの値を有することができ、あるいは26mmとすることができる。プレート10内の遠位スロット15の構成および場所に基づくと、ファスナが遠位スロット15内のどこに配置されても、遠位スロット15内のそのファスナの頭部は、第1の遠位プレート穴14内のファスナの頭部から同じ距離になる。
【0027】
この固定距離Rは、第1の遠位ネイル穴73の中心点と第2の遠位ネイル穴74の中心点との間の固定距離にも実質的に等しい。よって、ファスナが第1の遠位プレート穴14を通って第1の遠位ネイル穴73に配置されると、遠位スロット15を通って配置された第2のファスナは、第2のねじが遠位スロット15内のどこに配置されるかにかかわらず、第2の遠位ネイル穴74と整列する。
【0028】
さらに、第1の遠位プレート穴14の中心点17と近位プレート穴16の中心点との間の距離は、第1の遠位ネイル穴73の中心点と近位ネイル穴75の中心点との間の距離と実質的に等しく、これによりプレート10およびネイル70のそれぞれの近位端部および遠位端部を一緒に固定することができる。これにより、プレート10を近位端部でネイル70に固定することができるが、他の実施形態では、プレート10およびネイル70の全長が同一である必要はなく、それらは同じでも異なっていてもよい。
【0029】
骨折固定システム100で使用するための骨プレート110および1110のさらなる実施形態を、図20図21A図21B図22A、および図22Bに示す。プレート110および1110は、プレート10と事実上同様であり、同様の要素には同様の番号が付されている。これらのプレートにおける第2の遠位スロットは、前後方向の自由度に関して、より多くの位置決めオプションを追加する。これは、連結オプションを保持しながら、それぞれのプレートを骨上により容易に位置決めするために特に有用である。複数のスロットが存在することで、前後方向において(両方のインプラントの相互連結を依然として可能にしながら、ネイルに対する)プレートの配置の柔軟性が高まる。プレートでは、スロットは非円形の周辺部を有し、プレートを横切るように、すなわち骨プレートの端部間に延びる正中線に対して実質的に垂直に延びるように配向される。
【0030】
図20および図21Aに示されるプレート110は、遠位スロット115およびプレート10と同じ構成のプレート穴を含むが、第1の遠位プレート穴14を第2のスロット114で置き換えている。すなわち、スロット114および115を除けば、その他のプレート穴は円形の周辺部を有する。遠位スロット114は、インプラント相互連結のもう1つの点として作用する。スロットでないプレート穴の周辺部の他の構成も可能である。
【0031】
遠位スロット115の構成は、スロット15に関連して上述したのと同じであり、湾曲した中心線118を有する。スロット114もまた、円の弧の一部である湾曲した中心線121を有する。スロットの中心線118と中心線121の両方は、プレート110上のどの点または特徴とも必ずしも一致しない中心点117を中心としている。実際、中心点117はプレート110の外側に位置している。したがって、遠位スロット114と115の両方は、中心点117からそれぞれの一定の半径の中心線の弧に沿って延びている。スロット114および115と中心点117の配置は、図21Bに示されている。
【0032】
中心線118および121に沿った2つのそれぞれの点の間の距離は、この距離が第1の遠位ネイル穴73の中心点と第2の遠位ネイル穴74の中心点との間の固定距離と実質的に等しくなる、いくつかの組み合わせを含む。したがって、一旦ファスナが遠位スロット114を通って第1の遠位ネイル穴73に配置されると、遠位スロット115を通って配置された第2のファスナは、第2の遠位ネイル穴74と整列すると共に、プレート110の正確な角度付けのためのいくらかの柔軟性を許容するので、プレート110はネイル70に対して骨に沿って適切に整列することができる。遠位スロット114および115の場所も、上述したように、近位プレート穴へのファスナの挿入を容易にする。プレート110のような2つの湾曲したスロットを備えたプレートを用いると、ネイル70に対するプレート110の並進運動および回転の両方が本質的に可能になる。
【0033】
プレート1110は、図22Aに示されており、プレート110と事実上同様であるが、第1のスロット1114および第2のスロット1115の両方が、それぞれ平行な直線状の中心線1121、1118に沿って延びている。スロット1114とスロット1115の配置も図22Bに概略的に示されている。これにより、スロット1114、1115内のねじが締め付けられる前にプレート1110を操作することができ、プレート1110を骨上で概ね前方または後方に、また概ね中心線1121および1118の軸に平行な方向に移動させることができる。図23Aに示すプレートの別のバージョンでは、スロット1114a、1115aも平行な中心線と平行であるが、両方ともプレートの中心線に対して角度をなしている。これは、中心線1121、1118が共にプレートの中心線に対して実質的に垂直であるプレート1110とは異なる。
【0034】
遠位スロットの他のバージョンでは、スロットの曲率は、両方のスロットの片側のほぼ同じ中心点(図23B)、スロットが中心点に関して対称であるように両方のスロットの間にあるほぼ同じ中心点(図23C)、または他方のスロットよりも一方のスロットに近い、両方のスロットの間にあるほぼ同じ中心点(図23D)とすることができる。中心線の曲率は、(図23Bのように)スロットとプレートの近位端部との間の点の周りでプレートの近位端部に向かっていてよい。他のバージョンでは、プレートは、(図23Cおよび図23Dのような)それぞれの中心線がスロット間の同じ点を中心とするように互いに向かって凹むように湾曲している2つの遠位スロットを有し得る。
【0035】
骨折固定システム100を使用する方法を、概してプレート10に関して以下に説明する。プレート10が参照されていても、説明の多くがプレート110および1110にも当てはまることが理解され、適切な場合には追加の説明が提供される。本方法は、まず、図17に示すように、脛骨、上腕骨、または大腿骨などの骨の管にネイル70を挿入することと、ネイル70に取り付けた標的化デバイスを用いて内側および/または外側のねじをネイル70に挿入し、遠位ロックを確立することと、を含む。ネイルの遠位ロックに続いて、ネイル70の近位ロックが、図18に示すように、前後方向に1つまたは2つのロックねじを用いることによって、行われる。ネイルのロックが完了すると、プレート10、110、または1110のような適切なサイズのプレートが選択される。図示のように、プレート10は、インサーター/標的化ハンドルに装着され、骨の表面に接して皮下挿入または配置され、そのため、プレート10の遠位端部12は、ネイル70の遠位端部71に隣接する、すなわち長骨の、ネイル70の遠位端部71と同じ端部に位置する。ネイル70とプレート10との間の正しい相対位置は、図19に示すように、ネイル70と接続された遠位標的化アームと、最遠位ロック穴内の対応するスリーブシステムとを用いて、プレートインサーターアセンブリを大腿骨の外側皮質に向かって押す(予備的に固定する)ことによって得ることができる。一実施形態では、ネイル70は、大腿骨の遠位端部における進入場所に挿入される逆行性大腿骨ネイルである。
【0036】
次に、プレート10およびネイル70は、一時的に整列および固定される。これは、図19に示すように、第1の遠位プレート穴14を第1の遠位ネイル穴73と整列させ、次いで整列器具を、第1の遠位プレート穴14を通して骨内に、そして、植え込まれたネイル70の第1の遠位ネイル穴73を通して挿入することによって、行われる。整列器具は、kワイヤまたは任意の同様の一時的固定デバイスとすることができる。骨の全長に沿ってプレート10をネイル70と適切に整列させるために、プレート10およびネイル70の他の2つの穴が次に整列される。これは、近位プレート穴16を近位ネイル穴75と整列させるか、または同じ整列を容易にする別の対の穴を整列させることを含むことができる。
【0037】
次に、第1の遠位ボアが、例えば後述の標的ガイド200を使用することにより、第1の遠位プレート穴14を通して、かつ第1の遠位ネイル穴73を通して、骨に穿孔される。これは、上述したロックねじをネイル70に挿入する方法と同様の方法で、ネイル70に取り付けられた標的化デバイスを用いて行うことができる。これは、カニューレ状のドリルを用いてkワイヤの上から行われ得、または代わりに、kワイヤは、穿孔を行うために取り外されてもよい。第1の遠位ボアが穿孔された状態で、第1のファスナ52が第1の遠位プレート穴14を通って第1の遠位ボアおよび第1の遠位ネイル穴73に挿入されて、ネイル70とプレート10をそれらのそれぞれの遠位端部において結合する。プレート110またはプレート1110が利用される場合、このステップは、それぞれのスロット114、1114内の第1のファスナ52の位置が変化し得るので、第1のファスナ52を締め付けずに、それぞれスロット114またはスロット1114を通して第1のファスナ52を挿入することを含む。同じことが、図23A図23Dに示されるスロット配置についても当てはまる。プレート10とネイル70との間の全体的な整列を維持して、次に、第2の遠位ボアが、遠位スロット15および第2の遠位ネイル穴74を通して骨に穿孔される。次いで、第2のファスナ56が、遠位スロット15を通して、この第2の遠位ボアに、そして、第2の遠位ネイル穴74に挿入される。説明したプレートのいずれに関しても、特にプレート110またはプレート1110については、第2のファスナ56はこの時点ではまだ締め付けられていない。
【0038】
プレート10を使用する場合、本方法の一時的な固定は、第1の遠位プレート穴14を使用して行われ、それは、これが遠位スロット15の構成および形状を画定する穴であるためである。このようにして、骨上でのプレート10の適切な配置、すなわち、前方過ぎず後方過ぎない配置は、遠位スロット15の形状によって容易になる、第2の遠位リンクの実現が可能なままであることを確実にしながら、行うことができる。すなわち、骨に対するプレート10の最初の配置、およびプレート10の最遠位端部を単一のファスナでネイル70に最初に固定するステップが、最も最適な解剖学的場所でなくても、プレート10の近位端部のさらなる整列は、遠位スロット15を通した二次的な遠位固定の能力を維持および確保しながら達成され得る。湾曲した中心線18に沿った遠位スロットの構成により、これは可能になるが、それは、骨に対するプレート10の近位場所のわずかな変化により、第1の遠位プレート穴14に対してそれぞれ同じ固定距離Rである遠位スロット15に沿った複数の場所のうちの1つにおいてではあるが、遠位スロット15にファスナが挿入され、その後、第2の遠位ボアおよび第2の遠位ネイル穴74に挿入されることが可能になるためである。
【0039】
同様の機能性は、プレート110およびプレート1110と、図23A図23Dに示されるスロット配置とによって提供され、そのための適切な配置は、第1のファスナ52および第2のファスナ56それぞれがそれらの対応するスロット内で移動され得る最適な場所に、それぞれのプレートを操作することによって、可能になる。プレート110は、点117を中心に容易に枢動され得るので、適切な整列が達成され得る。プレート1110は、プレートが骨に沿って後方および前方に移動するように操作され得る。図23Aのスロット配置は、スロット中心線に平行な方向に沿ったプレートの並進運動を可能にし、図23B図23Dのスロット配置は、湾曲したスロット中心線の中心点を中心としたプレートの回転を可能にする。この点に関して、本方法の、締め付けずに第1のファスナ52および第2のファスナ56を挿入するステップの間、プレートは、骨に対して前後方向に、すなわちプレートの長手方向軸に対して概ね垂直な方向に、または骨に対して回転されることによって、移動され得る。この移動は、プレートの近位端部に配置されたファスナを中心とした枢動とすることができる。
【0040】
プレート10の遠位端部12をその下の骨に固定するために、追加のねじを使用することができる。第4のボアが、プレート穴19を通して穿孔され、第5のボアが、プレート穴20を通して穿孔される。重要なことに、穴19および穴20を通して穿孔された両方のボアは、ネイル70の穴との整列を避けるように、より具体的にはネイル70との接触を完全に避けるように、実行される。図5に示すように、ファスナ58が第4のプレート穴19に挿入され、ファスナ59が第5のプレート穴20に挿入される。上に示したように、第4のプレート穴19および第5のプレート穴20によって画定される挿入軸は、実質的に平行にすることができ、このことは、そこに挿入されるファスナ58および59が、挿入時に互いに実質的に平行になるように制限されることを規定する。したがって、ファスナ58および59はいずれも、ネイル70との接触を避けるように挿入され、外科医は、第4のプレート穴19および第5のプレート穴20の厳密な構成により、これが間違いないと強い自信を持つことができる。本方法の様々な実施形態では、ファスナ58および59のいずれかまたは両方は、骨へのプレート10の追加固定のために、必要に応じて利用することができる。遠位固定に続いて、プレートは、最適化された構築強度および安定性のために、大腿骨骨幹軸に沿ってロックされ得る。プレートが骨に対して適切に位置した状態で、本方法のこの時点で、全てのファスナは、それらの最終的な植え込み場所へと締め付けられ得る。この締め付けのステップは、必要に応じて、処置中、早期に行うこともできる。
【0041】
第4のプレート穴19および第5のプレート穴20の構成の主な理由は、大腿骨の遠位端部の断面を示す図9によって示されている。罹患した骨内にねじを適切に配置するためのスペースの制限と、ねじ軌道の高い柔軟性を可能にする可変角度ロックシステムの利用可能性とを考慮すると、外科医は、ねじと髄内ネイルとの間の意図しない衝突のリスクの増大に直面している。これにより、影響を受けるインプラントの疲労寿命が大幅に短くなってしまう可能性がある。ねじとネイルの衝突を回避するための解決策は、ロック穴の0°軌道のみに対応することでロックのばらつきを排除する、特殊な固定角度ドリルスリーブまたは標的化ブロックによって得られるかもしれない。この技術には、それぞれのロックねじを、外科的嗜好(例えば、骨質が最も良い部位を標的化するか、または、他のインプラントもしくは繊細な解剖学的構造との衝突を避ける)に従って配置できないという欠点がある。
【0042】
図9では、平均的な大きさの骨の外側周辺部250が、その表面に配置された骨プレート210および髄内腔内に配置された骨ネイル270とともに示されている。ここでは、対応する第1のファスナ281が、ネイル270の穴と整列するように構成されたプレート210の穴に通されていることがわかる。第2のファスナ282は、周囲の骨との固定のためだけに構成されており、ネイル270との相互作用のためには構成されていない、プレート210の別の穴に通されている。ファスナ282はネイル270の近くに突出しているが、ネイル270と接触したり干渉したりすることはまったくないことが示されている。しかしながら、図9には、特大の骨の外側周辺部250aも重ねて示されている。骨プレート210と同一の骨プレート210aがその表面上に配置されている。対応する第1のファスナ281aが、ネイル270の穴と整列するように構成されたプレート210aの同じ穴に通される。第2のファスナ282aが、周囲の骨との固定のためだけに構成されており、ネイル270との相互作用のためには構成されていない、プレート210aの同じ別の穴に通されている。これは、ファスナ282aが、プレート281aの植え込み中に意図または所望されない、ネイル270に直接接触することを目的としている点で、大きさの異なる骨に同様の骨プレートを使用する際の重大な問題を浮き彫りにしている。よって、種々の骨のサイズおよび構成の違いを考慮すると、単一の骨プレートの使用は必ずしも可能であるとは限らない。
【0043】
この問題は、第4のプレート穴19および第1の遠位プレート穴14によって画定される挿入軸が、いくつかの実施形態では第5のプレート穴20によって画定される軸とともに、実質的に平行にされる、本発明のプレート10(および、本明細書に開示される、その他のプレート)によって対処される。したがって、植え込まれたネイル70から骨の外側周辺部までの距離に関係なく、外科医は、ネイル70と、プレート10と骨との間の固定にのみ使用されることを意図されたファスナ、すなわちファスナ52、58、59との間の意図しない接触を、穴の構成が防止することを確信して進行することができる。言い換えれば、これらのねじは、ネイルの損傷を防ぐために、標準的な平行ねじ軌道を使用者に提供するように整列される。特大の骨寸法の場合、角度のついた軌道ではネイル本体に触れる危険があるが、平行なアプローチではこれが防止される。
【0044】
他の実施形態では、プレート10(および、本明細書に開示される、その他のプレート)の様々なプレート穴は、特定の軸に沿ってファスナの挿入を制限するように構成されなくてもよく、代わりに、それらの穴へのファスナの可変角度挿入を提供し得る。その場合、ファスナとネイル70との接触を回避する上での付加的な支援が、図10図16に示す標的ガイド200によって提供され、これは、円錐状の挿入(cone of insertion)の特定の領域を除外しながら、プレート穴の角度付きロック軌道内の可変性を維持するための解決策を提供する。
【0045】
図10は、遠位大腿骨のネイルとプレートを組み合わせた構築物内におけるインプラントの衝突のリスクを示している。ロック機構の30°のロックコーンを利用することにより、ネイル70との干渉/衝突は、慎重なかつx線で支援されたねじ挿入プロセスのみによって回避することができる。すなわち、コーン300は、ファスナを挿入できる特定のプレート穴内の角度(この場合、プレート穴の法線から最大30°)を画定する。コーン300の下方部分は、「インプラント衝突の可能性」と示された場所でネイル70と交差しており、挿入されたファスナとネイル70との接触がこのような場合に起こることが示されているのが分かる。
【0046】
フリーハンドドリルスリーブ230を標的ガイド200と組み合わせて使用することにより、ロックコーン300を選択的に拘束してねじとネイルの衝突を回避すると共に、他の全ての方向についてファスナ挿入のための一般的な柔軟性を維持することができる。安全性の側面だけでなく、このようなガイド技術は、それぞれの処置において、速度を向上させ、x線被曝を減少させることができる。
【0047】
標的ガイド200は、例えばスナップ嵌めによってまたは止めねじとの接続によって、プレート10の遠位端部12に取り外し可能に接続されている。この説明はプレート10に関するものであるが、本明細書に開示される、その他のプレートにも等しく当てはまる。ガイド穴214は、第1の遠位プレート穴14(または、プレート110もしくは1110またはその他のスロット構成のいずれかが使用される場合には、この場所にあるスロット)と整列し、ガイドスロット215は、遠位スロット15と整列する。プレート穴19および20のために、ガイド200は平坦なガイド穴219および220をそれぞれ含む。平坦なガイド穴220は、例えば、片側で平面222と交差する円錐面221を有する。ドリルスリーブ230の外径は平坦なガイド穴220の内径より小さいので、ドリルスリーブ230は、ドリルスリーブ230の遠位端部がプレート穴20と係合されるかまたはこれに固定されるまで、平坦なガイド穴220に挿入され得る。一旦これが行われると、ドリルスリーブ230は、外科医の好みに応じてプレート穴20内で枢動され、ドリルおよび最終的なファスナを骨内の外科医が選択する場所に向けることができる。しかしながら、平面222は、ドリルスリーブ230が上方に枢動するのを妨げる(図12を参照すると、ドリルおよび最終的なファスナはネイル70に向けられることを制限され、それによってファスナとネイル70との間の接触を防止する)。ガイド穴214およびガイドスロット215は、ファスナをネイル70の対応する穴にガイドすることを意図しているので、平面壁を含まないが、平坦なガイド穴219および220のような、ガイド200の任意の他のガイド穴は、ガイド穴の平坦な表面がファスナとネイルの接触を避けるために限定されたロックコーンを形成するようにガイド200が使用されるために設計されたプレート10の寸法に基づいて特別に設計され得る。これにより、ファスナとネイル70との間の意図しない接触を避けるフェイルセーフを提供しながら、外科医の自主性を保つことができる。
【0048】
手術方法の追加ステップとして、プレート10の近位固定を行うことができるが、必須ではない。整列器具が、プレート10の近位端部13を整列させて固定するために、近位プレート穴16を通して、骨内に、そして、近位ネイル穴75を通して挿入される。次に、近位ボアが、kワイヤの上で、またはkワイヤの取り外し後に、骨に穿孔され、このボアは、近位プレート穴16および近位ネイル穴75を通って延びる。次に、第3のファスナが、近位プレート穴16を通して、近位ボアおよび近位ネイル穴75内に挿入される。
【0049】
上述の穿孔ステップは、業界標準および技術に従って実施することができ、ドリルのガイドおよび照準のために、ネイル70に取り付けられた標的化アームおよび/またはドリルスリーブを使用することを含むことができる。整列および穿孔ステップは、骨内でシステムの構成要素を適切に配置し整列させるために、術中のX線透視検査を利用することができる。
【0050】
本明細書に記載される各ファスナは、ねじ山付き頭部もしくはねじ山付きでない頭部を有するねじ、またはねじ山付きでないペグとすることができる。一実施形態では、ねじ山付き頭部を有するねじが、方法中にプレート10の各穴および遠位スロットに挿入される。別の実施形態では、ねじ山付き頭部を有するねじが、プレート10の穴のそれぞれに挿入され、ねじ山付きでないペグが、遠位スロット15に挿入される。必要性および/または外科医の好みに基づいて、同じタイプまたは異なるタイプのファスナの任意の組み合わせを特定の処置で採用することができる。
【0051】
本明細書では、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途を単に例示するものであることを理解されたい。したがって、例示的な実施形態に多数の変更を加えることができ、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の配置を考案することができることを理解されたい。
【0052】
〔実施の態様〕
(1) 骨折固定システムであって、
骨の管に挿入されるように構成された骨ネイルと、
前記骨の表面に当接するように構成された骨プレートと、
を含み、
前記骨ネイルは、第1のネイル穴、第2のネイル穴、および第3のネイル穴を含み、前記第2のネイル穴は、前記第1のネイル穴と前記第3のネイル穴との間に位置し、
前記骨プレートは、第1のプレート穴および第3のプレート穴と、前記第1のプレート穴と前記第3のプレート穴との間に位置するスロットと、を含む、骨折固定システム。
(2) 前記第1のプレート穴の中心点と前記スロットの中心線との間の距離が、前記第1のネイル穴の中心点と前記第2のネイル穴の中心点との間の距離と実質的に等しい、実施態様1に記載の骨折固定システム。
(3) 前記骨プレートの前記スロットは、前記第1のプレート穴の中心点から一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有する、実施態様1に記載の骨折固定システム。
(4) 前記中心線に沿った前記スロットの長さは、3~25mmである、実施態様3に記載の骨折固定システム。
(5) 前記スロットは、前記骨プレートの端部間に延びる前記骨プレートの正中線に対して実質的に垂直に延びる、実施態様1に記載の骨折固定システム。
【0053】
(6) 前記骨プレートの前記スロットは、一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有し、
前記第1のプレート穴は、一定の半径の弧に沿って延びる中心線を有するスロットである、実施態様1に記載の骨折固定システム。
(7) 前記弧の中心点が同じである、実施態様6に記載の骨折固定システム。
(8) 前記弧の中心点が異なる、実施態様6に記載の骨折固定システム。
(9) 前記スロットは、前記骨プレートの端部間に延びる前記骨プレートの正中線に対して実質的に垂直に延びる、実施態様6に記載の骨折固定システム。
(10) 前記骨プレートの前記スロットは、前記骨プレートの端部間に延びる前記骨プレートの正中線に対して実質的に垂直な軸に沿って延びる中心線を有する、実施態様1に記載の骨折固定システム。
【0054】
(11) 前記第1のプレート穴の中心点と前記第3のプレート穴の中心点との間の距離が、前記第1のネイル穴の中心点と前記第3のネイル穴の中心点との間の距離に実質的に等しい、実施態様1に記載の骨折固定システム。
(12) 前記スロットの周辺部が、ねじの頭部に係合し、かつ後退を防止するためにスカラップ形である、実施態様1に記載の骨折固定システム。
(13) 前記第1のプレート穴および前記第1のネイル穴内に配置された第1のファスナと、
前記第3のプレート穴および前記第3のネイル穴内に配置された第2のファスナと、
前記スロットおよび前記第2のネイル穴内に配置された第3のファスナと、
をさらに含む、実施態様1に記載の骨折固定システム。
(14) 前記第1のファスナ、前記第2のファスナ、および前記第3のファスナのうちの少なくとも1つが、ねじ、またはねじ山付きでないペグである、実施態様13に記載の骨折固定システム。
(15) 前記第1のプレート穴、前記第3のプレート穴、前記第1のネイル穴、前記第2のネイル穴、および前記第3のネイル穴のそれぞれが、円形の周辺部を有し、前記スロットは、非円形の周辺部を有する、実施態様1に記載の骨折固定システム。
【0055】
(16) 前記第3のプレート穴、前記第1のネイル穴、前記第2のネイル穴、および前記第3のネイル穴のそれぞれが、円形の周辺部を有し、前記スロットは、非円形の周辺部を有し、
前記第1のプレート穴は、非円形の周辺部を有するスロットである、実施態様1に記載の骨折固定システム。
(17) 前記骨プレートは、前記骨プレートの第1の側縁と前記骨プレートの端部間に延びる前記骨プレートの正中線との間に位置する第4のプレート穴をさらに画定する、実施態様1に記載の骨折固定システム。
(18) 前記第1のプレート穴は、ファスナを単一の軸に沿った挿入に制限する周辺部を画定し、前記第4のプレート穴は、ファスナを前記単一の軸に平行な軸に沿った挿入に制限する周辺部を画定する、実施態様17に記載の骨折固定システム。
(19) 前記骨プレートは、前記骨プレートの前記正中線と、前記第1の側縁の反対側にある前記骨プレートの第2の側縁との間に位置する第5のプレート穴をさらに画定する、実施態様17に記載の骨折固定システム。
(20) 前記第4のプレート穴および前記第5のプレート穴は、いずれも、前記骨プレートの前記正中線に対して垂直な単一の軸と交差する、実施態様19に記載の骨折固定システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
【手続補正書】
【提出日】2024-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
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図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
【外国語明細書】