(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070297
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】列車乗務員支援装置、列車乗務員支援システム、列車乗務員支援方法及び列車乗務員支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/14 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B61L23/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180682
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 修平
(72)【発明者】
【氏名】小岩 優汰
(72)【発明者】
【氏名】下原 一馬
(72)【発明者】
【氏名】菊池 彩
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB06
5H161CC02
5H161CC07
5H161EE05
5H161EE07
5H161FF01
(57)【要約】
【課題】列車の乗務員に通知する制動開始位置を適切に設定し易い列車乗務員支援装置、列車乗務員支援システム、列車乗務員支援方法及び列車乗務員支援プログラムを提供する。
【解決手段】対象列車の停止位置又は速度制限区間に係る情報を取得する取得手段(通信部13)と、対象列車の停止位置又は速度制限区間の前に対象列車の制動を開始すべき位置である制動開始位置を決定する制動開始位置決定手段(制御部11)と、を備える。制動開始位置決定手段は、対象列車の乗車率に係る情報、対象列車の走行速度に係る情報及び天候に係る情報のうち少なくとも一つを用いて、所定の速度まで対象列車の速度を低下させるために要する走行距離を予測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象列車の停止位置又は速度制限区間に係る情報を取得する取得手段と、
前記停止位置又は前記速度制限区間の前に前記対象列車の制動を開始すべき位置である制動開始位置を決定する制動開始位置決定手段と、
を備えることを特徴とする列車乗務員支援装置。
【請求項2】
前記制動開始位置決定手段は、前記対象列車の乗車率に係る情報、前記対象列車の走行速度に係る情報及び天候に係る情報のうち少なくとも一つを用いて、所定の速度まで前記対象列車の速度を低下させるために要する走行距離を予測することを特徴とする請求項1に記載の列車乗務員支援装置。
【請求項3】
前記制動開始位置は前記対象列車が停止位置前に制動を開始すべき位置であり、
前記制動開始位置決定手段は、前記対象列車を走行速度から停止させるまでに要する走行距離を予測することを特徴とする請求項2に記載の列車乗務員支援装置。
【請求項4】
前記制動開始位置決定手段は、列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報及び天候に係る情報を用いて前記列車を停止させるまでに要する走行距離を予測する予測モデルに、
前記対象列車の乗車率に係る情報、前記対象列車の走行速度に係る情報及び前記停止位置の天候に係る情報を入力することで、前記対象列車を走行速度から停止させるまでに要する走行距離を予測することを特徴とする請求項3に記載の列車乗務員支援装置。
【請求項5】
前記制動開始位置は前記対象列車が速度制限区間前に制動を開始すべき位置であり、
前記制動開始位置決定手段は、前記対象列車を走行速度から前記速度制限区間における制限速度まで減速させるのに要する走行距離を予測することを特徴とする請求項2に記載の列車乗務員支援装置。
【請求項6】
前記制動開始位置決定手段は、列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報、速度制限区間における制限速度に係る情報及び天候に係る情報を用いて前記列車を走行速度から制限速度まで減速させるのに要する走行距離を予測する予測モデルに、
前記対象列車の乗車率に係る情報、前記対象列車の走行速度に係る情報、前記速度制限区間における制限速度に係る情報及び前記速度制限区間の天候に係る情報を入力することで、前記対象列車を走行速度から制限速度まで減速させるのに要する走行距離を予測することを特徴とする請求項5に記載の列車乗務員支援装置。
【請求項7】
前記制動開始位置決定手段は、前記対象列車の車両形式に係る情報をさらに用いて、所定の速度まで前記対象列車の速度を低下させるために要する走行距離を予測することを特徴とする請求項2に記載の列車乗務員支援装置。
【請求項8】
前記制動開始位置は前記対象列車が速度制限区間前に制動を開始すべき位置であり、
列車が前記速度制限区間に差し掛かった際に制限速度で走行する必要のある区間である速度制限必要区間を決定する速度制限必要区間決定手段をさらに備え、
前記速度制限必要区間決定手段は、前記対象列車の長さに係る情報を用いて、前記速度制限必要区間を決定することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の列車乗務員支援装置。
【請求項9】
前記速度制限必要区間決定手段は、前記速度制限区間の終点から前記対象列車の長さの分、前記対象列車の進行方向に進んだ位置を、前記速度制限必要区間の終点と決定することを特徴とする請求項8に記載の列車乗務員支援装置。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の列車乗務員支援装置と、
列車の乗務員が所持する端末装置と、
を備え、
前記端末装置は、前記制動開始位置決定手段が決定した制動開始位置を、通知手段によって前記乗務員に通知させる通知制御手段を備えることを特徴とする列車乗務員支援システム。
【請求項11】
前記通知制御手段は、停止位置に係る通知と、速度制限区間に係る通知とが重複する場合に、
停止位置に係る制動開始位置が速度制限区間の始点よりも前に位置する場合には、停止位置に係る通知と、速度制限区間に係る通知と、の両者を前記通知手段によって実施させ、
停止位置に係る制動開始位置が速度制限区間内に位置する場合には、速度制限区間に係る通知のみを前記通知手段によって実施させることを特徴とする請求項10に記載の列車乗務員支援システム。
【請求項12】
対象列車の停止位置又は速度制限区間に係る情報を取得する取得ステップと、
前記停止位置又は前記速度制限区間の前に前記対象列車の制動を開始すべき位置である制動開始位置を決定する制動開始位置決定ステップと、
を含むことを特徴とする列車乗務員支援方法。
【請求項13】
コンピュータを、
対象列車の停止位置又は速度制限区間に係る情報を取得する取得手段、
前記停止位置又は前記速度制限区間の前に前記対象列車の制動を開始すべき位置である制動開始位置を決定する制動開始位置決定手段、
として機能させることを特徴とする列車乗務員支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車乗務員支援装置、列車乗務員支援システム、列車乗務員支援方法及び列車乗務員支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車の運転は、通常乗務員の操作によって行われるが、列車を運転する乗務員による操作のミスを抑制するためには、列車の運転を乗務員に完全に任せることなく、乗務員による列車の運転を適宜支援することが求められる。そこで、列車を運転中の乗務員に対して、適切なタイミングで運転支援のための情報を提供することを目的としたシステムが知られている。
特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗務員による列車の運転時の操作のうち最も重要なものが、駅等で列車を停止させる際や、徐行区間等で列車を減速させる際の制動操作である。すなわち、乗務員が制動操作の開始位置を誤った場合、所定の位置で列車を停止させることができなかったり、徐行区間において速度超過が発生したりする可能性があることから、乗務員に対して、制動操作の開始位置を通知し、支援することが重要となる。
【0005】
この点、特許文献1に記載のシステムにおいても、乗務員に対して制動操作の開始位置を通知することは可能であるものの、このような制動操作の開始位置を、停止位置や徐行区間等のそれぞれについて逐一正確に設定することは容易ではなかった。
【0006】
本発明の課題は、列車の乗務員に通知する制動開始位置を適切に設定し易い列車乗務員支援装置、列車乗務員支援システム、列車乗務員支援方法及び列車乗務員支援プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、列車乗務員支援装置において、
対象列車の停止位置又は速度制限区間に係る情報を取得する取得手段と、
前記停止位置又は前記速度制限区間の前に前記対象列車の制動を開始すべき位置である制動開始位置を決定する制動開始位置決定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の列車乗務員支援装置において、
前記制動開始位置決定手段は、前記対象列車の乗車率に係る情報、前記対象列車の走行速度に係る情報及び天候に係る情報のうち少なくとも一つを用いて、所定の速度まで前記対象列車の速度を低下させるために要する走行距離を予測することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の列車乗務員支援装置において、
前記制動開始位置は前記対象列車が停止位置前に制動を開始すべき位置であり、
前記制動開始位置決定手段は、前記対象列車を走行速度から停止させるまでに要する走行距離を予測することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の列車乗務員支援装置において、
前記制動開始位置決定手段は、列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報及び天候に係る情報を用いて前記列車を停止させるまでに要する走行距離を予測する予測モデルに、
前記対象列車の乗車率に係る情報、前記対象列車の走行速度に係る情報及び前記停止位置の天候に係る情報を入力することで、前記対象列車を走行速度から停止させるまでに要する走行距離を予測することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の列車乗務員支援装置において、
前記制動開始位置は前記対象列車が速度制限区間前に制動を開始すべき位置であり、
前記制動開始位置決定手段は、前記対象列車を走行速度から前記速度制限区間における制限速度まで減速させるのに要する走行距離を予測することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の列車乗務員支援装置において、
前記制動開始位置決定手段は、列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報、速度制限区間における制限速度に係る情報及び天候に係る情報を用いて前記列車を走行速度から制限速度まで減速させるのに要する走行距離を予測する予測モデルに、
前記対象列車の乗車率に係る情報、前記対象列車の走行速度に係る情報、前記速度制限区間における制限速度に係る情報及び前記速度制限区間の天候に係る情報を入力することで、前記対象列車を走行速度から制限速度まで減速させるのに要する走行距離を予測することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の列車乗務員支援装置において、
前記制動開始位置決定手段は、前記対象列車の車両形式に係る情報をさらに用いて、所定の速度まで前記対象列車の速度を低下させるために要する走行距離を予測することを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の列車乗務員支援装置において、
前記制動開始位置は前記対象列車が速度制限区間前に制動を開始すべき位置であり、
列車が前記速度制限区間に差し掛かった際に制限速度で走行する必要のある区間である速度制限必要区間を決定する速度制限必要区間決定手段をさらに備え、
前記速度制限必要区間決定手段は、前記対象列車の長さに係る情報を用いて、前記速度制限必要区間を決定することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の列車乗務員支援装置において、
前記速度制限必要区間決定手段は、前記速度制限区間の終点から前記対象列車の長さの分、前記対象列車の進行方向に進んだ位置を、前記速度制限必要区間の終点と決定することを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、列車乗務員支援システムにおいて、
請求項1から7のいずれか一項に記載の列車乗務員支援装置と、
列車の乗務員が所持する端末装置と、
を備え、
前記端末装置は、前記制動開始位置決定手段が決定した制動開始位置を、通知手段によって前記乗務員に通知させる通知制御手段を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の列車乗務員支援システムにおいて、
前記通知制御手段は、停止位置に係る通知と、速度制限区間に係る通知とが重複する場合に、
停止位置に係る制動開始位置が速度制限区間の始点よりも前に位置する場合には、停止位置に係る通知と、速度制限区間に係る通知と、の両者を前記通知手段によって実施させ、
停止位置に係る制動開始位置が速度制限区間内に位置する場合には、速度制限区間に係る通知のみを前記通知手段によって実施させることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、列車乗務員支援方法において、
対象列車の停止位置又は速度制限区間に係る情報を取得する取得ステップと、
前記停止位置又は前記速度制限区間の前に前記対象列車の制動を開始すべき位置である制動開始位置を決定する制動開始位置決定ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、列車乗務員支援プログラムにおいて、
コンピュータを、
対象列車の停止位置又は速度制限区間に係る情報を取得する取得手段、
前記停止位置又は前記速度制限区間の前に前記対象列車の制動を開始すべき位置である制動開始位置を決定する制動開始位置決定手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、列車の乗務員に通知する制動開始位置を適切に設定し易い列車乗務員支援装置、列車乗務員支援システム、列車乗務員支援方法及び列車乗務員支援プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る列車乗務員支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る列車乗務員支援システムの停止位置前の制動開始位置の決定時の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る列車乗務員支援システムの徐行区間における実際に徐行すべき区間の決定時の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る列車乗務員支援システムの徐行区間前の制動開始位置の決定時の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る列車乗務員支援システムの停止位置前の通知時の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る列車乗務員支援システムの徐行区間前の通知時の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る列車乗務員支援システムのポイント位置確認画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1から
図7に基づいて、本発明の実施形態である列車乗務員支援システム100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されるものではない。
【0023】
[第1 構成の説明]
列車乗務員支援システム100は、
図1に示すように、管理サーバ1と、乗務員端末2と、ウェアラブル端末3と、を備えて構成され、これらの間は、通信ネットワークNを介して接続されている。
【0024】
[1 管理サーバ]
管理サーバ1は、例えば、列車乗務員支援システム100を管理・運営する鉄道事業者が保有するコンピュータであり、後述のように制動開始位置の決定等を行う。
管理サーバ1は、
図1に示すように、例えば、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、を備えて構成されている。
【0025】
なお、管理サーバ1は、必ずしも単一のコンピュータによって実現されることを要せず、例えば、複数台のコンピュータが通信ネットワークNを介して接続されることで、複数台のコンピュータにより、管理サーバ1としての機能が実現されていてもよい。この場合、このような複数のコンピュータが接続されたものが、管理サーバ1に該当することとなる。
【0026】
制御部11は、管理サーバ1の動作を制御する部分であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、記憶部12に記憶されたプログラムデータ等とCPUとの協働により、管理サーバ1の各部を統括制御する。
【0027】
記憶部12は、管理サーバ1の運用に必要となる各種情報が記憶される部分であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ等により構成され、プログラムデータ等の管理サーバ1の動作に必要となるデータを、制御部11から読み書き可能に記憶する。
また、記憶部12には、後述の動作の説明において述べるように管理サーバ1を動作させるための制御部11への各種命令を含むプログラムが記憶されている。
なお、記憶部12に記憶されるデータの詳細については、動作の説明の中で述べる。
【0028】
通信部13は、管理サーバ1と乗務員端末2等との間の通信に用いられる部分であり、例えば、通信用IC(Integrated Circuit)及び通信コネクタ等を有する通信インターフェイスであり、制御部11の制御の元、所定の通信プロトコルを用いて、通信ネットワークNを介したデータ通信を行う。
【0029】
[2 乗務員端末]
乗務員端末2は、本システムを利用して制動開始位置に係る情報等の提供を受ける列車の乗務員のそれぞれが所持する、例えば、スマートフォン、タブレット端末等の情報機器であり、後述のように、制動開始位置に係る情報の管理サーバ1からの受信等に用いられる。
図1においては乗務員端末2を一つしか図示していないが、実際には、制動開始位置に係る情報等の提供を受ける列車の乗務員の数に応じて多数の乗務員端末2が、管理サーバ1と通信ネットワークNを介して接続されている。
【0030】
乗務員端末2は、
図1に示すように、例えば、管理サーバ1と同様に、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、を備えると共に、さらに、表示部24と、操作部25と、位置情報取得部26と、を備えて構成されている
【0031】
制御部21及び通信部23の構成は、それぞれ管理サーバ1における制御部11及び通信部13と変わるところはない。
記憶部22は、管理サーバ1における記憶部12と同様に、例えば、HDD、半導体メモリ等により構成され、後述の動作の説明において述べるように乗務員端末2を動作させるための制御部21への各種命令を含むプログラムが記憶されている。
なお、記憶部22に記憶されるデータの詳細については、動作の説明の中で述べる。
【0032】
表示部24は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイを備え、制御部21から出力された表示制御信号に基づいた画像を当該ディスプレイに表示する。
【0033】
操作部25は、例えば、文字入力キー、数字入力キー、その他各種機能に対応付けられたキーを有するキーボード等を備え、乗務員端末2の使用者からの操作入力を受け付けて、操作入力に応じた操作信号を制御部21へと出力する。操作部25は、例えば、表示部24と一体的に形成されたタッチパネル等であってもよい。
【0034】
位置情報取得部26は、乗務員端末2の所在位置に関する情報を取得する部分であり、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機が用いられる。GPS受信機は、GPSを構成する複数のGPS衛星から提供される測位用電波であるGPS信号を受信し、これを用いて、乗務員端末2、ひいては乗務員端末2を所持する列車の乗務員が運転中の列車の位置情報を取得する。なお、列車を運転する乗務員が乗車するのは列車の前端部であることから、列車の前端部の位置情報を取得することとなる。
位置情報取得部26は、乗務員端末2の位置情報を取得可能なものであればよく、GPS受信機には限られない。例えば、その他の衛星測位システムに係る信号の受信機等を使用してもよい。
【0035】
[3 ウェアラブル端末]
ウェアラブル端末3は、例えば、腕時計型等の列車を運転中の乗務員が着用できる形状に形成され、列車を運転中の乗務員のそれぞれが着用する情報機器であり、後述のように、乗務員端末2から受信した情報に基づき、鳴動部36の鳴動によって制動開始位置等について列車の乗務員に通知する。
図1においてはウェアラブル端末3を一つしか図示していないが、実際には、制動開始位置に係る情報等の提供を受ける列車の乗務員の数に応じて多数のウェアラブル端末3が備えられ、同一の乗務員が所持する乗務員端末2とウェアラブル端末3とが、通信ネットワークNを介して接続されている。
【0036】
ウェアラブル端末3は、
図1に示すように、例えば、乗務員端末2と同様に、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、表示部34と、操作部35と、を備えると共に、さらに、鳴動部36を備えて構成されている
【0037】
制御部31、通信部33、表示部34及び操作部35の構成は、それぞれ乗務員端末2における制御部21、通信部23、表示部24及び操作部25と変わるところはない。
記憶部32は、乗務員端末2における記憶部22と同様に、例えば、HDD、半導体メモリ等により構成され、後述の動作の説明において述べるようにウェアラブル端末3を動作させるための制御部31への各種命令を含むプログラムが記憶されている。
【0038】
鳴動部36は、音及び振動によりウェアラブル端末3を着用する列車の乗務員に情報を通知する部分であり、例えば、スピーカ及びバイブレータを備え、制御部31から出力された制御信号に基づいて、スピーカから所定の音を発し、かつバイブレータが振動することで、後述のように、制動開始位置への到達等を、ウェアラブル端末3を着用する列車の乗務員に通知する。
【0039】
[4 通信ネットワーク]
通信ネットワークNは、例えば、インターネット、電話回線網、携帯電話通信網、無線LAN通信網等であり、
図1に示すように、列車乗務員支援システム100を構成する各装置の間を接続する。
通信ネットワークNとしては、上記のように列車乗務員支援システム100を構成する各装置間を接続し、これらの間でデータの送受信を行うことが可能なものであれば特に限定されない。
【0040】
[第2 動作の説明]
次に、本実施形態に係る列車乗務員支援システム100の動作について説明する。
列車乗務員支援システム100の動作は、大きく分けて、列車運行前の設定(ステップS11からステップS13)と、列車運行中の通知(ステップS21からステップS22)と、の2つの工程からなる。
【0041】
[1 列車運行前の設定]
まず、列車の運行開始前に制動開始位置等について決定する際の本システムの動作について、
図2から
図4のフローチャートに従って説明する。
【0042】
[(1) ステップS11:停止位置前の制動開始位置の決定]
まず、列車の停止位置前の制動開始位置を決定する際の本システムの動作について、
図2のフローチャートに従って説明する。
【0043】
本システムを利用して、列車の停止位置前の制動開始位置を決定する場合、列車を運転予定の乗務員は、列車の運行開始前に、乗務員端末2の操作部25を用いて所定の操作を行い、自らが運転予定の列車の列車番号等の識別情報を入力する(ステップS11-1)。列車の識別情報としては、例えば列車番号を入力すればよい。また、列車番号に加えて、編成車両数、列車種別、車両形式等を入力するようにしてもよい。
【0044】
列車の識別情報が入力されると、乗務員端末2の制御部21は、入力された列車の識別情報(列車識別情報D1)を、通信部23から通信ネットワークNを介して、管理サーバ1へと送信する(ステップS11-2)。
【0045】
通信部13によって列車識別情報D1を受信した管理サーバ1においては、列車識別情報D1に係る列車の運行時の停止位置に係る情報(停止位置情報D2)を取得の上、列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS11-3)。停止位置情報D2としては、駅における列車の停止位置(停止時の列車の前端部の位置)を、線路に設定されたキロ程(線路の起点となる所定の位置からの線路に沿った距離)によって特定する情報とすればよい。
【0046】
取得方法は特に限定されず、例えば、列車の路線情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得してもよいし、ステップS11-1で列車識別情報D1を入力した列車の乗務員に、例えば、乗務員端末2の表示部24に表示された地図上で指定する等の方法で入力させてもよい。
【0047】
続いて、管理サーバ1においては、列車識別情報D1に係る列車の各停止位置前における乗車率に係る情報(停止位置前乗車率情報D3)を取得の上、ステップS11-2で取得した列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS11-4)。停止位置前乗車率情報D3としては、同じ列車番号の列車の同一の曜日における、各停止位置の直前の区間の過去の乗車率に係る情報を取得すればよい。
なお、複数のデータがある場合にはその平均値をとってもよいし、直近のデータを取得するようにしてもよい。
【0048】
取得方法は特に限定されず、例えば、列車の過去の乗車率に係る情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得すればよい。
【0049】
続いて、管理サーバ1においては、列車識別情報D1に係る列車の各停止位置における制動開始前の走行速度に係る情報(停止位置前走行速度情報D4)を取得の上、ステップS11-2で取得した列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS11-5)。停止位置前走行速度情報D4としては、過去の同じ列車種別(普通、快速等)の列車の停止位置毎の制動開始前の走行速度に係る情報を取得すればよい。なお、複数のデータがある場合にはその平均値をとってもよいし、直近のデータを取得するようにしてもよい。
【0050】
取得方法は特に限定されず、例えば、列車の過去の走行速度に係る情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得すればよい。
【0051】
続いて、管理サーバ1においては、列車識別情報D1に係る列車の運行時刻における各停止位置の天候に係る情報(停止位置天候情報D5)を取得の上、ステップS11-2で取得した列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS11-6)。停止位置天候情報D5としては、列車が各停止位置に到達する時刻における当該位置の天候の予報(晴れ、曇り、雨等)に係る情報を取得すればよい。
【0052】
取得方法は特に限定されず、例えば、天候の予報に係る情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得すればよい。また、列車を運転予定の乗務員が、運行開始前に乗務員端末2の操作部25を用いて入力するようにしてもよい。
【0053】
続いて、管理サーバ1においては、制御部11が、ステップS11-2で列車識別情報D1を取得した列車について、各停止位置前における制動に要する距離(この場合停止位置前走行速度情報D4に係る走行速度から停止までに要する距離)を予測する(ステップS11-7)。
【0054】
具体的には、制動に要する距離の予測は、例えば、列車の乗車率、走行速度及び天候に係る情報が入力された場合に、列車の制動に要する距離(走行速度から停止までに要する距離)に係る情報を出力する予測モデルに、停止位置情報D2に係る停止位置毎に、ステップS11-4で取得した各停止位置前における列車の乗車率に係る情報、ステップS11-5で取得した各停止位置における制動開始前の列車の走行速度に係る情報及びステップS11-6で取得した各停止位置における天候に係る情報を入力することで、停止位置情報D2に係る停止位置毎に、制動に要する距離に係る情報を出力させることによって行えばよい。
【0055】
また、このような予測モデルは、列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報及び列車の走行場所の天候に係る情報と、列車の制動に要する距離の実測値に係る情報とが紐付けられたデータを教師データとした機械学習により予め生成の上、管理サーバ1の記憶部12に記憶させておいてもよいし、外部のシステムから呼び出して使用してもよい。
【0056】
ステップS11-7で、ステップS11-3で取得した停止位置情報D2に係る停止位置毎に制動に要する距離の予測値に係る情報を取得すると、制御部11は、当該情報に基づき、各停止位置について、制動開始位置を決定する(ステップS11-8)。
具体的には、各停止位置から、ステップS11-7で取得した制動に要する距離の予測値に加えて、確実に停止できるようにするための余裕分としての所定の距離手前の線路上の位置(停止位置よりも先に列車が差し掛かる線路上の位置)を、各停止位置における制動開始位置として決定する。
【0057】
例えば、ある停止位置について、ステップS11-7で取得した制動に要する距離の予測値が250m、所定の距離が100mであれば、線路上の停止位置から350m手前の位置を、制動開始位置として決定する。
【0058】
ステップS11-8で制動開始位置を決定すると、管理サーバ1の制御部11は、決定した停止位置毎の制動開始位置に係る情報である停止位置前制動開始位置情報D6を、通信部13から通信ネットワークNを介して、ステップS11-2で列車識別情報D1を送信した乗務員端末2へと送信する(ステップS11-9)。
停止位置前制動開始位置情報D6としては、線路に設定されたキロ程によって制動開始位置を特定する情報とすればよい。
【0059】
管理サーバ1から送信された停止位置前制動開始位置情報D6を通信部23によって受信することによって取得した乗務員端末2においては、制御部21が、取得した停止位置前制動開始位置情報D6を、記憶部22に記憶させる(ステップS11-10)。
【0060】
[(2) ステップS12:徐行区間における実際に徐行すべき区間の決定]
続いて、徐行区間において列車が実際に徐行すべき区間を決定する際の本システムの動作について、
図3のフローチャートに従って説明する。
【0061】
本システムを利用して、列車が実際に徐行すべき区間を決定する場合、列車を運転予定の乗務員は、列車の運行開始前に、ステップS11-1と同様に自らが運転予定の列車の列車番号等の識別情報を入力し(ステップS12-1)、列車の識別情報が入力されると、乗務員端末2の制御部21は、入力された列車の識別情報(列車識別情報D1)を、通信部23から通信ネットワークNを介して、管理サーバ1へと送信する(ステップS12-2)。
【0062】
通信部13によって、列車識別情報D1を受信した管理サーバ1においては、列車識別情報D1に係る列車の運行時の徐行区間に係る情報(徐行区間情報D7)を取得の上、列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS12-3)。徐行区間情報D7は、当該列車が走行予定の線路に設定された各徐行区間について、徐行区間の始点に係る情報(徐行区間始点情報D71)と徐行区間の終点に係る情報(徐行区間終点情報D72)とを含む。
徐行区間始点情報D71及び徐行区間終点情報D72としては、線路に設定されたキロ程によって、徐行区間の始点及び終点の位置を特定する情報とすればよい。
【0063】
取得方法は特に限定されず、例えば、列車の路線情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得してもよいし、ステップS12-1で列車識別情報D1を入力した列車の乗務員に、例えば、乗務員端末2の表示部24に表示された地図上で指定する等の方法で入力させてもよい。
【0064】
続いて、管理サーバ1においては、列車識別情報D1に係る列車の編成車両数に係る情報(車両数情報D8)を取得の上、ステップS12-2で取得した列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS12-4)。
【0065】
取得方法は特に限定されず、例えば、列車番号毎に編成車両数に係る情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得すればよい。
【0066】
続いて、管理サーバ1においては、ステップS12-4で取得した車両数情報D8に基づき、列車識別情報D1に係る列車の編成長(運行時の車両数に編成された列車の長さ)を算出する(ステップS12-5)。
具体的には、ステップS12-4で取得した車両数情報D8に係る車両数に、列車の車両一両当たりの長さとして予め定めた長さを乗ずることで、列車の編成長を算出すればよい。
例えば、車両数が2両、列車の一両当たりの長さが20mであれば、2×20=40mと編成長が算出されることとなる。
【0067】
ステップS12-5で列車識別情報D1に係る列車の編成長を算出すると、制御部11は、当該情報に基づき、ステップS12-3で取得した徐行区間情報D7に係る徐行区間のそれぞれについて、実際に徐行すべき区間を決定する(ステップS12-6)。
【0068】
列車は、その一部でも徐行区間内に位置している場合には、徐行速度で走行する必要があることから、列車が実際に徐行すべき区間は、設定された徐行区間より長くなる。
すなわち、列車が徐行速度で走行することを求められるのは、列車の前端部が徐行区間始点情報D71に係る徐行区間の始点に到達してから、列車の後端部が徐行区間終点情報D72に係る徐行区間の終点に到達するまで、すなわち、列車の前端部が徐行区間終点情報D72に係る徐行区間の終点から、列車の編成長の分進んだ位置に到達するまでということとなる。
【0069】
制御部11は、上記の点を踏まえ、列車が実際に徐行すべき区間を決定する。すなわち、上記の通り、列車の前端部を基準とする場合、このような区間の開始位置は、徐行区間始点情報D71に係る徐行区間の始点と一致するが、このような区間の終了位置は、徐行区間終点情報D72に係る徐行区間の終点から、ステップS12-5で算出した編成長の分進んだ位置となる。
【0070】
例えば、ある徐行区間について、徐行区間始点情報D71に係る徐行区間の始点が、所定の位置を基準としたキロ程で2k300m(基準となる線路の起点から2.3km進んだ位置)、徐行区間終点情報D72に係る徐行区間の終点が、上記キロ程で2k400m(基準となる線路の起点から2.4km進んだ位置)であり、ステップS12-5で算出した編成長が40mであれば、実際に徐行すべき区間の始点を2k300m、実際に徐行すべき区間の終点を2k440mと決定することとなる。
【0071】
ステップS12-6で実際に徐行すべき区間を決定すると、管理サーバ1の制御部11は、決定した実際に徐行すべき区間に係る情報である徐行必要区間情報D9を、通信部13から通信ネットワークNを介して、ステップS12-2で列車識別情報D1を送信した乗務員端末2へと送信する(ステップS12-7)。
【0072】
徐行必要区間情報D9は、当該列車が走行予定の線路に設定された各徐行区間について、列車の前端部を基準として、徐行速度で走行することを要する区間の始点(上記の例であれば2k300m)に係る情報である徐行必要区間始点情報D91と、徐行速度で走行することを要する区間の終点(上記の例であれば2k440m)に係る情報である徐行必要区間終点情報D92と、を含む。
【0073】
徐行必要区間始点情報D91及び徐行必要区間終点情報D92共に、上記のように線路に設定されたキロ程によって位置を特定する情報とすればよい。
【0074】
管理サーバ1から送信された徐行必要区間情報D9を通信部23によって受信することによって取得した乗務員端末2においては、制御部21が、取得した徐行必要区間情報D9を、記憶部22に記憶させる(ステップS12-8)。
【0075】
[(3) ステップS13:徐行区間前の制動開始位置の決定]
続いて、徐行区間前の制動開始位置を決定する際の本システムの動作について、
図4のフローチャートに従って説明する。
【0076】
本システムを利用して、徐行区間前の制動開始位置を決定する場合、列車を運転予定の乗務員は、列車の運行開始前に、ステップS11-1及びステップS12-1と同様に、自らが運転予定の列車の列車番号等の識別情報を入力し(ステップS13-1)、列車の識別情報が入力されると、乗務員端末2の制御部21は、入力された列車の識別情報(列車識別情報D1)を、通信部23から通信ネットワークNを介して、管理サーバ1へと送信する(ステップS13-2)。
【0077】
通信部13によって列車識別情報D1を受信した管理サーバ1においては、ステップS12-3と同様に徐行区間情報D7を取得すると共に、徐行区間情報D7に係る各徐行区間に設定された徐行速度に係る情報(徐行速度情報D10)を取得し、これらを列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS13-3)。
【0078】
徐行速度情報D10としては、徐行区間情報D7に係る徐行区間のそれぞれについて設定された具体的な徐行速度(時速10km等)に係る情報を取得すればよい。
【0079】
取得方法は特に限定されず、徐行区間情報D7、徐行速度情報D10共に、例えば、列車の路線情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得してもよいし、ステップS13-1で列車識別情報D1を入力した列車の乗務員に入力させてもよい。
【0080】
続いて、管理サーバ1においては、列車識別情報D1に係る列車の各徐行区間前における乗車率に係る情報(徐行区間前乗車率情報D11)を取得の上、ステップS13-2で取得した列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS13-4)。徐行区間前乗車率情報D11としては、同じ列車番号の列車の同一の曜日における、各徐行区間の直前の位置が属する区間の過去の乗車率に係る情報を取得すればよい。なお、複数のデータがある場合にはその平均値をとってもよいし、直近のデータを取得するようにしてもよい。
【0081】
取得方法は特に限定されず、例えば、列車の過去の乗車率に係る情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得すればよい。
【0082】
続いて、管理サーバ1においては、列車識別情報D1に係る列車の各徐行区間における制動開始前の走行速度に係る情報(徐行区間前走行速度情報D12)を取得の上、ステップS13-2で取得した列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS13-5)。徐行区間前走行速度情報D12としては、過去の同じ列車種別(普通、快速等)の列車の徐行区間毎の制動開始前の走行速度に係る情報を取得すればよい。なお、複数のデータがある場合にはその平均値をとってもよいし、直近のデータを取得するようにしてもよい。
【0083】
取得方法は特に限定されず、例えば、列車の過去の走行速度に係る情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得すればよい。
【0084】
続いて、管理サーバ1においては、列車識別情報D1に係る列車の運行時刻における各徐行区間の天候に係る情報(徐行区間天候情報D13)を取得の上、ステップS13-2で取得した列車識別情報D1と紐付けて記憶部12に記憶させる(ステップS13-6)。徐行区間天候情報D13としては、列車が各徐行区間に到達する時刻における当該位置の天候の予報(晴れ、曇り、雨等)に係る情報を取得すればよい。
【0085】
取得方法は特に限定されず、例えば、天候の予報に係る情報を管理する外部のシステムと通信の上、当該システムから送信された情報を通信部13によって受信することによって取得すればよい。また、列車を運転予定の乗務員が、列車の運行開始前に乗務員端末2の操作部25を用いて入力するようにしてもよい。
【0086】
続いて、管理サーバ1においては、制御部11が、ステップS13-2で列車識別情報D1を取得した列車について、各徐行区間前における制動に要する距離(この場合徐行区間前走行速度情報D12に係る走行速度から徐行速度情報D10に係る徐行速度に減速するまでに要する距離)を予測する(ステップS13-7)。
【0087】
具体的には、制動に要する距離の予測は、例えば、徐行速度、列車の乗車率、列車の走行速度及び天候に係る情報が入力された場合に、列車の制動に要する距離(走行速度から徐行速度に減速するまでに要する距離)に係る情報を出力する予測モデルに、徐行区間情報D7に係る徐行区間毎に、ステップS13-3で取得した各徐行区間における徐行速度に係る情報、ステップS13-4で取得した各徐行区間前における列車の乗車率に係る情報、ステップS13-5で取得した各徐行区間における制動開始前の列車の走行速度に係る情報及びステップS13-6で取得した各徐行区間における天候に係る情報を入力することで、徐行区間情報D7に係る徐行区間毎に、制動に要する距離に係る情報を出力させることによって取得すればよい。
【0088】
また、このような予測モデルは、徐行区間における徐行速度に係る情報、列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報及び列車の走行場所の天候に係る情報と、列車の走行速度から徐行速度への制動に要する距離の実測値に係る情報とが紐付けられたデータを教師データとした機械学習により予め生成の上、記憶部12に記憶させておいてもよいし、外部のシステムから呼び出して使用してもよい。
【0089】
ステップS13-7で、ステップS13-3で取得した徐行区間情報D7に係る徐行区間毎に制動に要する距離の予測値に係る情報を取得すると、制御部11は、当該情報に基づき、各徐行区間について、制動開始位置を決定する(ステップS13-8)。
具体的には、徐行区間始点情報D71に係る徐行区間の始点から、ステップS13-7で取得した制動に要する距離の予測値に加えて、確実に徐行速度に減速できるようにするための余裕分としての所定の距離手前の線路上の位置(徐行区間よりも先に列車が差し掛かる線路上の位置)を、各徐行区間における制動開始位置として決定する。
【0090】
ステップS13-8で制動開始位置を決定すると、管理サーバ1の制御部11は、決定した徐行区間毎の制動開始位置に係る情報である徐行区間前制動開始位置情報D14を、通信部13から通信ネットワークNを介して、ステップS13-2で列車識別情報D1を送信した乗務員端末2へと送信する(ステップS13-9)。
徐行区間前制動開始位置情報D14としては、線路に設定されたキロ程によって制動開始位置を特定する情報とすればよい。
【0091】
管理サーバ1から送信された徐行区間前制動開始位置情報D14を通信部23によって受信することによって取得した乗務員端末2においては、制御部21が、取得した徐行区間前制動開始位置情報D14を、記憶部22に記憶させる(ステップS13-10)。
【0092】
[2 列車運行中の通知]
続いて、制動開始位置に差し掛かった際に列車を運転する乗務員に通知する際の本システムの動作について、
図5及び
図6のフローチャートに従って説明する。
【0093】
[(1) ステップS21:停止位置前の通知]
まず、ステップS11で制動開始位置を決定した停止位置に、ステップS11-10で停止位置前制動開始位置情報D6が記憶部22に記憶された乗務員端末2を所持する列車の乗務員が運転する列車が差し掛かった際の本システムの動作について、
図5のフローチャートに従って説明する。
【0094】
列車の運行開始前に、乗務員端末2を所持する列車の乗務員によって所定の操作がなされると、乗務員端末2の制御部21は、位置情報取得部26によって、所定の時間間隔で乗務員端末2の位置情報を取得させる(ステップS21-1)。
【0095】
乗務員端末2の制御部21は、位置情報取得部26によって乗務員端末2の位置情報が取得される度に、当該位置情報に係る位置が、ステップS11-10で記憶部22に記憶された停止位置前制動開始位置情報D6に係る位置から所定の距離内に位置しているかについて判定する(ステップS21-2)。
このような所定の距離は、予め特定の距離が設定されているようにしてもよいし、乗務員端末2を使用する列車の乗務員が設定できるようにしてもよい。
【0096】
ステップS21-2の判定の結果、所定の距離内に位置していないと判定した場合、制御部21は、位置情報取得部26によって乗務員端末2の位置情報が取得される度に、同様の判定を継続する。
これに対し、ステップS21-2の判定の結果、所定の距離内に位置していると判定した場合、乗務員端末2の制御部21は、鳴動部36を鳴動させる旨の所定の指令に係る情報(停止位置アラート開始指令情報D15)を、通信部23から通信ネットワークNを介して、ウェアラブル端末3へと送信する(ステップS21-3)。
【0097】
乗務員端末2から送信された停止位置アラート開始指令情報D15を通信部33によって受信したウェアラブル端末3においては、制御部31が、鳴動部36に鳴動を開始させる(ステップS21-4)。
【0098】
停止位置アラート開始指令情報D15を送信した後、乗務員端末2においては、制御部21が、ウェアラブル端末3において所定の時間又は回数鳴動部36を鳴動させたか否かを所定の間隔で判定する(ステップS21-5)。
【0099】
ステップS21-5の判定の結果、所定の時間又は回数鳴動部36を鳴動させたと判定した場合、乗務員端末2の制御部21は、鳴動部36の鳴動を停止させる旨の所定の指令に係る情報(停止位置アラート終了指令情報D16)を、通信部23から通信ネットワークNを介して、ウェアラブル端末3へと送信する(ステップS21-6)。
【0100】
乗務員端末2から送信された停止位置アラート終了指令情報D16を通信部33によって受信したウェアラブル端末3においては、制御部31が、鳴動部36の鳴動を終了させる(ステップS21-7)。
【0101】
[(2) ステップS22:徐行区間前の通知]
続いて、ステップS13で制動開始位置を決定した徐行区間に、ステップS13-10で徐行区間前制動開始位置情報D14が記憶部22に記憶された乗務員端末2を所持する列車の乗務員が運転する列車が差し掛かった際の本システムの動作について、
図6のフローチャートに従って説明する。
【0102】
ステップS21-1で説明したのと同様に、列車の運行開始前に、乗務員端末2を所持する列車の乗務員によって所定の操作がなされると、乗務員端末2の制御部21は、位置情報取得部26によって、所定の時間間隔で乗務員端末2の位置情報を取得させる(ステップS22-1)。
【0103】
乗務員端末2の制御部21は、位置情報取得部26によって乗務員端末2の位置情報が取得される度に、当該位置情報に係る位置が、ステップS13-10で記憶部22に記憶された徐行区間前制動開始位置情報D14に係る位置から所定の距離内に位置しているかについて判定する(ステップS22-2)。
このような所定の距離は、予め特定の距離が設定されているようにしてもよいし、乗務員端末2を使用する列車の乗務員が設定できるようにしてもよい。
【0104】
ステップS22-2の判定の結果、所定の距離内に位置していないと判定した場合、制御部21は、位置情報取得部26によって乗務員端末2の位置情報が取得される度に、同様の判定を継続する。
これに対し、ステップS22-2の判定の結果、所定の距離内に位置していると判定した場合、乗務員端末2の制御部21は、鳴動部36を鳴動させる旨の所定の指令に係る情報(徐行区間アラート開始指令情報D17)を、通信部23から通信ネットワークNを介して、ウェアラブル端末3へと送信する(ステップS22-3)。
【0105】
乗務員端末2から送信された徐行区間アラート開始指令情報D17を通信部33によって受信したウェアラブル端末3においては、制御部31が、鳴動部36に鳴動を開始させる(ステップS22-4)。なお、この際に鳴る音は、ステップS21-4とは異なる音とすることが好ましい。
【0106】
徐行区間アラート開始指令情報D17を送信した後、乗務員端末2においては、制御部21が、位置情報取得部26によって乗務員端末2の位置情報が取得される度に、当該位置情報が、ステップS12-8で記憶部22に記憶された徐行必要区間終点情報D92に係る位置から所定の距離内に位置しているかについて判定する(ステップS22-5)。
このような所定の距離は、予め特定の距離が設定されているようにしてもよいし、乗務員端末2を使用する列車乗務員が設定できるようにしてもよい。
【0107】
ステップS22-5の判定の結果、所定の距離内に位置していると判定した場合、乗務員端末2の制御部21は、鳴動部36の鳴動を停止させる旨の所定の指令に係る情報(徐行区間アラート終了指令情報D18)を、通信部23から通信ネットワークNを介して、ウェアラブル端末3へと送信する(ステップS22-6)。
【0108】
乗務員端末2から送信された徐行区間アラート終了指令情報D18を通信部33によって受信したウェアラブル端末3においては、制御部31が、鳴動部36の鳴動を終了させる(ステップS22-7)。
【0109】
なお、乗務員端末2においては、ステップS22-3で徐行区間アラート開始指令情報D17を送信した後、ステップS22-6で徐行区間アラート終了指令情報D18を送信するまでの間、所定の間隔で、当該乗務員端末2を所持する列車の乗務員が運転する列車の速度に係る情報を取得する。取得方法は特に限定されず、例えば、列車の速度に係る情報をリアルタイムに管理する他のシステムと通信して取得してもよいし、ステップS22-1で説明したように、位置情報取得部26は所定の間隔で位置情報を取得し続けていることから、このような位置情報取得部26が取得する二回の位置情報の間の距離から速度を算出してもよい。
【0110】
乗務員端末2の制御部21は、上記のようにして取得した速度情報が所定の速度以下である場合、ステップS22-5で徐行必要区間終点情報D92に係る位置から所定の距離内に位置していると判定する前であっても、鳴動部36の鳴動を停止させる旨の所定の指令に係る情報を通信部23から通信ネットワークNを介してウェアラブル端末3へと送信し、これを受信したウェアラブル端末3においては、制御部31が、鳴動部36の鳴動を停止させる。
【0111】
また、上記のようにして鳴動部36の鳴動を停止させる旨の所定の指令に係る情報をウェアラブル端末3へと送信させた後、ステップS22-5で徐行必要区間終点情報D92に係る位置から所定の距離内に位置していると判定する前に、再び上記のようにして取得した速度情報が所定の速度を超えた場合に、乗務員端末2の制御部21は、鳴動部36の鳴動を再開させる旨の所定の指令に係る情報を通信部23から通信ネットワークNを介してウェアラブル端末3へと送信し、これを受信したウェアラブル端末3においては、制御部31が、鳴動部36の鳴動を再開させる。
【0112】
すなわち、ウェアラブル端末3においては、列車の前端部(乗務員端末2を所持する列車の乗務員は列車の前端部に乗車することから、乗務員端末2の位置は列車の前端部の位置となる。)が、徐行区間前制動開始位置情報D14に係る位置から所定の距離内の位置に到達してから、列車の前端部が、徐行必要区間終点情報D92に係る徐行必要区間の終点から所定の距離内の位置に達するまでの間において、列車の速度が所定の速度を超えている間にのみ、鳴動部36を鳴動させ、列車の乗務員に対するアラートを行うこととなる。
【0113】
[(3) 停止位置と徐行区間とが近接する場合のアラートについて]
列車の停止位置と徐行区間とが近接する場合においては、ステップS21で説明した停止位置に係る通知と、ステップS22で説明した徐行区間に係る通知とが重複することとなるが、このような場合の処理について説明する。
【0114】
まず、停止位置が徐行区間内に位置するか、徐行区間後に位置する場合において、当該停止位置についてステップS11で決定した制動開始位置が、徐行区間の始点よりも前に位置する場合には、ステップS21の処理とステップS22の処理とが両方なされ、ウェアラブル端末3においては、ステップS21で説明した停止位置に係る通知とステップS22で説明した徐行区間に係る通知とを重複して行うこととなる。
【0115】
次に、停止位置が徐行区間内に位置するか、徐行区間後に位置する場合において、当該停止位置についてステップS11で決定した制動開始位置が、徐行区間内に位置する場合には、ステップS22の処理のみがなされ、ウェアラブル端末3においては、ステップS22で説明した徐行区間に係る通知のみを行うこととなる。
【0116】
これによって、停止位置に係る制動開始位置が徐行区間内であり、停止位置に係る通知が不要な場合にのみ、ステップS21の処理を省略することが可能となる。
【0117】
[第3 効果の説明]
次に、本実施形態に係る列車乗務員支援システム100の効果について説明する。
【0118】
本実施形態に係る列車乗務員支援システム100によれば、管理サーバ1において、制動開始位置の決定の対象とする対象列車(この場合列車識別情報D1を乗務員端末2から取得した列車)について、停止位置情報D2又は徐行区間情報D7を取得し、停止位置情報D2に係る停止位置又は徐行区間情報D7に係る徐行区間前に当該対象列車の制動を開始すべき位置である制動開始位置を決定する。
これによって、管理サーバ1において制動開始位置が決定されることから、乗務員端末2を使用する列車の乗務員に対して通知する制動開始位置を、適切に設定することが容易となる。
【0119】
また、管理サーバ1において停止位置情報D2を取得し、停止位置情報D2に係る停止位置前に制動を開始すべき位置を決定するに際して、対象列車を走行速度から停止させるまでに要する走行距離を予測することで、対象列車を停止位置前に確実に停止させることができる位置を制動開始位置として決定することができる。
【0120】
また、予め列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報及び天候に係る情報を用いて列車を停止させるまでに要する走行距離を予測する予測モデルを生成しておき、当該予測モデルに、対象列車の乗車率に係る情報、対象列車の走行速度に係る情報及び停止位置の天候に係る情報を入力して、対象列車を走行速度から停止させるまでに要する走行距離を予測する場合、上記のような走行距離の予測の精度を向上することができる。
【0121】
また、管理サーバ1において徐行区間情報D7を取得し、徐行区間情報D7に係る徐行区間前に制動を開始すべき位置を決定するに際して、対象列車を走行速度から徐行区間情報D7に係る徐行区間における徐行速度まで減速させるのに要する走行距離を予測することで、対象列車を徐行区間前に確実に徐行速度まで減速させることができる位置を制動開始位置として決定することができる。
【0122】
また、予め列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報、徐行区間における徐行速度に係る情報及び天候に係る情報を用いて列車を走行速度から徐行速度まで減速させるのに要する走行距離を予測する予測モデルを生成しておき、当該予測モデルに、対象列車の乗車率に係る情報、対象列車の走行速度に係る情報、徐行区間における徐行速度に係る情報及び徐行区間の天候に係る情報を入力して、対象列車を走行速度から徐行速度まで減速させるのに要する走行距離を予測する場合、上記のような走行距離の予測の精度を向上することができる。
【0123】
また、管理サーバ1において、徐行区間情報D7を取得した対象列車が通過する各徐行区間について、対象列車の長さを考慮の上、列車が実際に徐行速度で走行する必要のある区間である徐行必要区間を決定することで、乗務員端末2を使用する列車の乗務員に対し、実際に徐行速度で走行する必要のある区間を通知することが可能となる。
【0124】
また、徐行区間の終点から対象列車の長さの分、対象列車の進行方向に進んだ位置を、徐行必要区間の終点と決定することで、列車の前端部を基準とした場合に、列車の後端部が徐行区間から出るまでの区間を徐行必要区間と決定することができる。
【0125】
[第4 変形例]
次に、本実施形態に係る列車乗務員支援システム100の変形例について説明する。
【0126】
[1 位置の特定方法の変更]
上記動作の説明においては、列車の制動開始位置や徐行必要区間の始点及び終点等の線路上の位置を、線路に設定されたキロ程で定める場合について説明した。この点、列車の乗務員等の鉄道事業者の職員が共通に認識し易いことから、上記のようにキロ程で各位置を定めることが好ましいが、各位置について他の定め方をすることも可能である。
例えば、線路にキロ程が設定されていない場合等においては、各位置を緯度及び経度によって特定するようにしてもよい。
【0127】
[2 通知方法の変更]
上記動作の説明においては、ウェアラブル端末3の鳴動部36の鳴動によって列車の乗務員に制動開始位置等を通知する場合について説明したが、通知方法はこれに限られない。
例えば、ウェアラブル端末3を省略し、乗務員端末2自体が鳴動部を備え、乗務員端末2が備える鳴動部の鳴動によって列車の乗務員に通知するようにしてもよいし、列車に備えられた他のシステムと乗務員端末2とが連動して、列車の乗務員に通知するようにしてもよい。
前者の場合、乗務員端末2に備えられた鳴動部が本発明における通知手段に該当し、後者の場合、他のシステムに備えられた列車の乗務員に通知するための機構が本発明における通知手段に該当することとなる。また、いずれの場合においても、これら通知手段に通知を実施させる乗務員端末2の制御部21が、本発明における通知制御手段に該当することとなる。
【0128】
また、列車の乗務員に制動開始位置等を通知する方法は、必ずしも鳴動部の鳴動に限らず、鳴動部の鳴動に代えて、又は鳴動部の鳴動に加えて、ウェアラブル端末3の表示部34や、乗務員端末2の表示部24に所定のメッセージを表示することで、列車の乗務員への通知を行うようにしてもよい。
【0129】
[3 使用する情報の追加又は削減]
上記動作の説明においては、停止位置前の制動開始位置の決定において列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報及び天候に係る情報を用い、徐行区間前の制動開始位置の決定において列車の乗車率に係る情報、列車の走行速度に係る情報、徐行区間における徐行速度に係る情報及び天候に係る情報を用いる場合について説明したが、これら情報を用いつつ、さらなる情報を用いて制動開始位置の決定を行うことも可能である。
【0130】
例えば、列車の減速度(ブレーキをかけた際の減速時の負の加速度)は列車の車両形式によっても異なることが想定されることから、このような車両形式に係る情報を用いるようにしてもよい。
この場合、ステップS11-7又はステップS13-7において、例えば、予測モデルの生成時に列車の制動に要する距離の実測値に係る情報と紐付けて教師データとして使用される情報として列車の車両形式に係る情報を追加し、これによって生成された予測モデルに、ステップS11-7又はステップS13-7で述べた情報に加えて、制動に要する距離の予測を行う列車の車両形式に係る情報を入力するようにすればよい。
【0131】
また、特定の情報を取得できない場合等においては、上記動作の説明で使用した情報のうち一部を用いることなく、制動開始位置の決定を行うことも可能である。ただし、正確な制動開始位置の決定のために好ましくはない。また、一部の情報を使用しない場合においても、停止位置前の制動開始位置の決定においては少なくとも列車の走行速度に係る情報を使用し、徐行区間前の制動開始位置の決定においては少なくとも列車の走行速度に係る情報及び徐行区間における徐行速度に係る情報を使用することが好ましい。
【0132】
[4 リアルタイムの情報を用いた制動開始位置の決定]
上記動作の説明においては、ステップS11の停止位置前の制動開始位置の決定、ステップS13の徐行区間前の制動開始位置の決定のいずれにおいても、列車の運行開始前に事前に決定する場合について説明したが、運行中の列車の実際の乗車率及び走行速度並びに列車の走行地点の天候に係る情報をリアルタイムに取得できる場合には、このようなリアルタイムに取得した情報を用いて、列車の運行中に制動開始位置を決定して、これを通知するようにしてもよい。
【0133】
この場合、運行中の列車が停止位置又は徐行区間に近づいた時点で、管理サーバ1において当該列車の乗車率及び走行速度並びに当該列車の走行地点の天候に係る情報を取得し、取得した情報に基づいて制動開始位置を決定した上で、決定した制動開始位置に係る情報を即座に乗務員端末2へと送信するようにし、乗務員端末2において、取得した情報を用いて、ステップS21又はステップS22で説明したのと同様にして通知を行うこととなる。
【0134】
なお、乗車率に係る情報は、各列車の重量に係る情報をリアルタイムに取得し、これを基に算出することで取得するようにしてもよい。すなわち、各列車の重量から乗客が乗車していないときの重量を減算した上で、乗客一人の重量として予め定めた値で除することで列車の乗車人数を算出することができ、算出した乗車人数を所定の定員数で除することで、各列車の乗車率に係る情報をリアルタイムに取得することができる。
【0135】
[5 管理サーバにおける通知時の処理の実施]
上記動作の説明においては、ステップS21の停止位置前の通知では、乗務員端末2に記憶された停止位置前制動開始位置情報D6を用いて乗務員端末2において制動開始位置の到達の判定等の処理を行う場合について説明し、ステップS22の徐行区間前の通知では、乗務員端末2に記憶された徐行区間前制動開始位置情報D14を用いて乗務員端末2において制動開始位置の到達の判定等の処理を行う場合について説明したが、これに代えて、管理サーバ1の記憶部12に停止位置前制動開始位置情報D6及び徐行区間前制動開始位置情報D14を記憶させ、管理サーバ1において制動開始位置の到達の判定等の処理を行うようにしてもよい。
【0136】
この場合、乗務員端末2は、ステップS21-1又はステップS22-1で取得した位置情報を即時に管理サーバ1へと送信し、管理サーバ1において、制御部11が、ステップS21-2又はステップS22-2で説明したのと同様にして制動開始位置到達の判定を行い、停止位置前制動開始位置情報D6に係る位置又は徐行区間前制動開始位置情報D14に係る位置から所定の距離内に列車が位置していると判定した場合に、ウェアラブル端末3の鳴動部36を鳴動させる旨の指令を、通信部13から通信ネットワークNを介して乗務員端末2へと送信し、これを受信した乗務員端末2において、制御部21が、通信部23から通信ネットワークNを介して、ウェアラブル端末3へと鳴動部36を鳴動させる旨の指令を送信することとなる。
【0137】
また、通知終了時の判定処理(ステップS21-5及びステップS22-5)についても、管理サーバ1において制御部11が行った上で、ウェアラブル端末3の鳴動部36の鳴動を停止させる旨の指令を、通信部13から通信ネットワークNを介して乗務員端末2へと送信し、これを受信した乗務員端末2において、制御部21が、通信部23から通信ネットワークNを介して、ウェアラブル端末3へと鳴動部36の鳴動を停止させる旨の指令を送信するようにしてもよい。
【0138】
[6 速度制限区間の変更]
上記動作の説明においては、列車の走行速度が通常の区間と比較して制限された所定の速度(制限速度とする。徐行速度はこの一例である。)に規制される区間である速度制限区間の一例として、徐行区間を挙げて説明したが、徐行区間以外の速度制限区間についても、ステップS12で説明したのと同様にして実際に制限速度で走行すべき区間を決定し、ステップS13で説明したのと同様にして速度制限区間前の制動開始位置を決定した上で、ステップS22で説明したのと同様にして速度制限区間前の通知を行うことが可能である。
【0139】
徐行区間以外の速度制限区間としては、例えば、線路上に分岐器が設けられた区間や、線路が曲線状の区間(カーブしている区間)等において、列車の走行速度が通常の区間と比較して制限される場合が挙げられる。
【0140】
[7 各位置の表示部における表示]
ステップS11からステップS13で決定された位置(停止位置前制動開始位置情報D6、徐行必要区間始点情報D91、徐行必要区間終点情報D92、徐行区間前制動開始位置情報D14のいずれかに係る位置)を乗務員端末2の表示部24に表示させ、乗務員端末2を使用する列車の乗務員が、停止位置前制動開始位置情報D6に係る制動開始位置、徐行必要区間始点情報D91に係る徐行必要区間の始点、徐行必要区間終点情報D92に係る徐行必要区間の終点、及び徐行区間前制動開始位置情報D14に係る制動開始位置について確認できるようにしてもよい。
【0141】
この場合、例えば、
図7に示すポイント位置確認画面G1のように、地図を表示させた上で、地図内に存在する線路R上に、停止位置前制動開始位置情報D6に係る制動開始位置、徐行必要区間始点情報D91に係る徐行必要区間の始点、徐行必要区間終点情報D92に係る徐行必要区間の終点、徐行区間前制動開始位置情報D14に係る制動開始位置のいずれかが存在する場合に、当該位置に所定のアイコンAを表示する画面を表示部24に表示させることで、乗務員端末2を使用する列車の乗務員が各位置を確認できるようにすればよい。
【0142】
なお、アイコンAについては、
図7では各アイコンの中身を空欄として図示しているが、アイコン内に、例えば、鉄道のメーターや、徐行信号機等の鉄道特有のマークを表示することで、いかなる位置を示すアイコンであるかを識別可能とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0143】
100 列車乗務員支援システム
1 管理サーバ(列車乗務員支援装置)
11 制御部(制動開始位置決定手段、速度制限必要区間決定手段)
12 記憶部
13 通信部(取得手段)
2 乗務員端末(端末装置)
21 制御部(通知制御手段)
22 記憶部
23 通信部
24 表示部
25 操作部
26位置情報取得部
3 ウェアラブル端末(通知手段)
N 通信ネットワーク
D2 停止位置情報
D3 停止位置前乗車率情報
D4 停止位置前走行速度情報
D5 停止位置天候情報
D6 停止位置前制動開始位置情報
D7 徐行区間情報
D71 徐行区間始点情報
D72 徐行区間終点情報
D8 車両数情報
D9 徐行必要区間情報
D91 徐行必要区間始点情報
D92 徐行必要区間終点情報
D10 徐行速度情報
D11 徐行区間前乗車率情報
D12 徐行区間前走行速度情報
D13 徐行区間天候情報
D14 徐行区間前制動開始位置情報