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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070306
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】排泄物処理材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
A01K1/015 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180697
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101AA20
2B101GB05
(57)【要約】
【課題】製造工程の複雑化を招くことなく、疎水性の粒状体と吸水性の粒状体とが混在した排泄物処理材を得ることが可能な排泄物処理材の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置1は、排泄物を処理するための複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する装置であって、造粒機10を備えている。造粒機10は、プラスチックを含む造粒材料を押出造粒することにより、複数の粒状体を形成する押出造粒機である。造粒機10は、造粒材料を通過させる複数の貫通孔13が設けられたダイス12を有している。ダイス12は、押出造粒時にプラスチックの融点以上である第1の温度を有する部分12a、及び押出造粒時に当該融点未満である第2の温度を有する部分12bを含んでいる。複数の貫通孔13は、部分12aに存在する貫通孔13a、及び部分12bに存在する貫通孔13bを含んでいる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物を処理するための複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する方法であって、
押出造粒機を用いてプラスチックを含む造粒材料を押出造粒することにより、前記複数の粒状体を形成する造粒工程を含み、
前記押出造粒機は、前記造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有し、
前記ダイスは、押出造粒時に前記プラスチックの融点以上である第1の温度を有する第1の部分と、押出造粒時に前記融点未満である第2の温度を有する第2の部分とを含み、
前記複数の貫通孔は、前記第1の部分に存在する第1の貫通孔と、前記第2の部分に存在する第2の貫通孔とを含むことを特徴とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記プラスチックの前記融点をM℃としたとき、
前記第1の温度は、(M+5)℃以上であり、
前記第2の温度は、(M-5)℃以下である排泄物処理材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の温度は、(M+10)℃以上であり、
前記第2の温度は、(M-10)℃以下である排泄物処理材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の貫通孔の個数は、前記第1及び第2の貫通孔の個数の合計の30%以上70%以下である排泄物処理材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の貫通孔の個数は、前記第1及び第2の貫通孔の個数の合計の40%以上60%以下である排泄物処理材の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の貫通孔の径は、前記第2の貫通孔の径に等しい排泄物処理材の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の貫通孔の径は、前記第2の貫通孔の径よりも小さい排泄物処理材の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記複数の貫通孔は、前記第1及び第2の貫通孔のみからなる排泄物処理材の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至3の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記押出造粒機は、前記ダイスの中心部に位置する回転軸と、前記回転軸の周りに公転しながら前記造粒材料を前記各貫通孔に押し込むローラーとを有する排泄物処理材の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の部分の方が、前記第2の部分よりも、前記回転軸の近くに位置にしている排泄物処理材の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至3の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記造粒材料は、有機物を主材料とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記造粒材料は、有機物のみからなる排泄物処理材の製造方法。
【請求項13】
排泄物を処理するための複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する装置であって、
プラスチックを含む造粒材料を押出造粒することにより、前記複数の粒状体を形成する押出造粒機を備え、
前記押出造粒機は、前記造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有し、
前記ダイスは、押出造粒時に前記プラスチックの融点以上である第1の温度を有する第1の部分と、押出造粒時に前記融点未満である第2の温度を有する第2の部分とを含み、
前記複数の貫通孔は、前記第1の部分に存在する第1の貫通孔と、前記第2の部分に存在する第2の貫通孔とを含むことを特徴とする排泄物処理材の製造装置。
【請求項14】
請求項13に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記プラスチックの前記融点をM℃としたとき、
前記第1の温度は、(M+5)℃以上であり、
前記第2の温度は、(M-5)℃以下である排泄物処理材の製造装置。
【請求項15】
請求項14に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第1の温度は、(M+10)℃以上であり、
前記第2の温度は、(M-10)℃以下である排泄物処理材の製造装置。
【請求項16】
請求項13乃至15の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第1の貫通孔の個数は、前記第1及び第2の貫通孔の個数の合計の30%以上70%以下である排泄物処理材の製造装置。
【請求項17】
請求項16に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第1の貫通孔の個数は、前記第1及び第2の貫通孔の個数の合計の40%以上60%以下である排泄物処理材の製造装置。
【請求項18】
請求項13乃至15の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第1の貫通孔の径は、前記第2の貫通孔の径に等しい排泄物処理材の製造装置。
【請求項19】
請求項13乃至15の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第1の貫通孔の径は、前記第2の貫通孔の径よりも小さい排泄物処理材の製造装置。
【請求項20】
請求項13乃至15の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記複数の貫通孔は、前記第1及び第2の貫通孔のみからなる排泄物処理材の製造装置。
【請求項21】
請求項13乃至15の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記押出造粒機は、前記ダイスの中心部に位置する回転軸と、前記回転軸の周りに公転しながら前記造粒材料を前記各貫通孔に押し込むローラーとを有する排泄物処理材の製造装置。
【請求項22】
請求項21に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第1の部分の方が、前記第2の部分よりも、前記回転軸の近くに位置にしている排泄物処理材の製造装置。
【請求項23】
請求項13乃至15の何れかに記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記造粒材料は、有機物を主材料とする排泄物処理材の製造装置。
【請求項24】
請求項23に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記造粒材料は、有機物のみからなる排泄物処理材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理材を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排泄物処理材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された排泄物処理材は、動物用トイレに用いられる動物用の排泄物処理材であって、複数の粒状体からなる。複数の粒状体には、性質の異なる2種類の粒状体が含まれている。すなわち、疎水性(撥水性)を有する粒状体と、吸水性を有する粒状体とが混在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-55098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように性質の異なる粒状体が混在した排泄物処理材は、従来、疎水性を有する粒状体と吸水性を有する粒状体とを別々に形成した後、両者を混合することにより製造されていた。しかしながら、かかる混合工程を実行することは、排泄物処理材の製造工程の複雑化を招く要因であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造工程の複雑化を招くことなく、疎水性の粒状体と吸水性の粒状体とが混在した排泄物処理材を得ることが可能な排泄物処理材の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による排泄物処理材の製造方法は、排泄物を処理するための複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する方法であって、押出造粒機を用いてプラスチックを含む造粒材料を押出造粒することにより、上記複数の粒状体を形成する造粒工程を含み、上記押出造粒機は、上記造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有し、上記ダイスは、押出造粒時に上記プラスチックの融点以上である第1の温度を有する第1の部分と、押出造粒時に上記融点未満である第2の温度を有する第2の部分とを含み、上記複数の貫通孔は、上記第1の部分に存在する第1の貫通孔と、上記第2の部分に存在する第2の貫通孔とを含むことを特徴とする。
【0007】
この製造方法においては、ダイスに、プラスチックの融点以上の温度(第1の温度)を有する部分(第1の部分)と、プラスチックの融点未満の温度(第2の温度)を有する部分(第2の部分)とが含まれている。この場合、第1の部分に存在する第1の貫通孔を通過する造粒材料においてはプラスチックの融解が起こる一方、第2の部分に存在する第2の貫通孔を通過する造粒材料においてはプラスチックの融解が起こらない。これにより、第1の貫通孔を通過した造粒材料から疎水性の粒状体を得るとともに、第2の貫通孔を通過した造粒材料から吸水性の粒状体を得ることが可能となる。このため、押出造粒後に混合工程を実行しなくても、疎水性の粒状体と吸水性の粒状体とが混在した排泄物処理材を得ることができる。
【0008】
また、本発明による排泄物処理材の製造装置は、排泄物を処理するための複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する装置であって、プラスチックを含む造粒材料を押出造粒することにより、上記複数の粒状体を形成する押出造粒機を備え、上記押出造粒機は、上記造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有し、上記ダイスは、押出造粒時に上記プラスチックの融点以上である第1の温度を有する第1の部分と、押出造粒時に上記融点未満である第2の温度を有する第2の部分とを含み、上記複数の貫通孔は、上記第1の部分に存在する第1の貫通孔と、上記第2の部分に存在する第2の貫通孔とを含むことを特徴とする。
【0009】
この製造装置においては、ダイスに、プラスチックの融点以上の温度(第1の温度)を有する部分(第1の部分)と、プラスチックの融点未満の温度(第2の温度)を有する部分(第2の部分)とが含まれている。この場合、第1の部分に存在する第1の貫通孔を通過する造粒材料においてはプラスチックの融解が起こる一方、第2の部分に存在する第2の貫通孔を通過する造粒材料においてはプラスチックの融解が起こらない。これにより、第1の貫通孔を通過した造粒材料から疎水性の粒状体を得るとともに、第2の貫通孔を通過した造粒材料から吸水性の粒状体を得ることが可能となる。このため、押出造粒後に混合工程を実行しなくても、疎水性の粒状体と吸水性の粒状体とが混在した排泄物処理材を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造工程の複雑化を招くことなく、疎水性の粒状体と吸水性の粒状体とが混在した排泄物処理材を得ることが可能な排泄物処理材の製造方法及び製造装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。
図2】粒状体20を示す斜視図である。
図3】粒状体30を示す斜視図である。
図4】本発明による排泄物処理材の製造装置の一実施形態を示す平面図である。
図5】本発明による排泄物処理材の製造装置の一実施形態を示す底面図である。
図6図4のVI-VI線に沿った端面図である。
図7】本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態における造粒工程を説明するための図である。
図8】本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態における造粒工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。排泄物処理材6は、排泄物(主に尿)の処理に用いられる排泄物処理材である。排泄物処理材6は、猫や犬等の動物の排泄物の処理に用いられる動物用の排泄物処理材であってもよいし、人の排泄物の処理に用いられる人用の排泄物処理材であってもよい。排泄物処理材6は、排泄物を処理するための複数の粒状体からなる。排泄物処理材6は、例えば、複数の粒状体が箱状のトイレに敷設された状態で使用される。排泄物処理材6は、粒状体20及び粒状体30を備えている。すなわち、排泄物処理材6を構成する複数の粒状体は、粒状体20及び粒状体30を含んでいる。
【0014】
粒状体20は、疎水性を有している。すなわち、粒状体20は、尿等の液体を全く吸収しないか、あるいは吸収するとしても殆ど吸収しない性質を有する。粒状体20が疎水性を有するというには、次の試験により測定される液通過率が60%より大きいことが必要である。まず、内径10cm、目開き1mmの篩に50g相当の粒状体20(サンプル)を入れる。篩の下には、空のビーカーを設置する。そして、サンプルに対し、外筒の内径3cm、筒先の内径4mmのシリンジ(テルモ社製60mlシリンジ)を用いて、30mlの水を10秒かけて滴下する。1分間放置した後、ビーカー内の水量を計測する。計測した水量の滴下した水量(30ml)に対する割合をもって液通過率とする。すなわち、ビーカー内の水量が18mlより多ければ、液通過率が60%より大きくなるため、粒状体20が疎水性を有するといえる。
【0015】
粒状体30は、吸水性を有している。すなわち、粒状体30は、その内部に尿等の液体を取り込んで保持する。粒状体30が吸水性を有するというには、上述の試験により測定される液通過率が60%以下であることが必要である。粒状体20の液通過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。粒状体30の液通過率は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
【0016】
粒状体20及び粒状体30は、複数ずつ設けられている。排泄物処理材6においては、これらの粒状体20,30が混在している。粒状体20の個数は、粒状体20及び粒状体30の個数の合計の30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。粒状体20の粒径は、粒状体30の粒径に等しくてもよいし、異なっていてもよい。ここで、粒径は、当該粒状体を内包しうる最小の球の直径として定義するものとする。各粒状体20,30の粒径は、例えば5mm以上30mm以下である。
【0017】
図2は、粒状体20を示す斜視図である。粒状体20は、柱状をしている。本実施形態において粒状体20は、略円柱状をしている。粒状体20は、有機物を主材料とすることが好ましい。ここで、粒状体20の主材料とは、粒状体20を構成する材料のうち、当該粒状体20に占める重量割合が最大のものをいう。かかる有機物としては、例えば、紙類、植物類、又は有機汚泥類が挙げられる。粒状体20は、有機物のみからなっていてもよいし、有機物及び無機物からなっていてもよい。
【0018】
紙類としては、例えば、通常の紙(紙粉)の他にも、フラッフパルプ、塩ビ壁紙由来の紙(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生する紙)、石膏ボード由来の紙(石膏ボードの製造時又は分級時に発生する紙)、又は衛生用品由来の紙(紙を含む衛生用品の製造時又は分級時に発生する紙)を用いることができる。紙を含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生用紙(ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル等)が挙げられる。植物類としては、例えば、木粉、大鋸屑、又は植物性残渣(茶殻、オカラ等)を用いることができる。有機汚泥類としては、例えば、製紙スラッジ、又はパルプスラッジを用いることができる。
【0019】
粒状体20は、プラスチックを含有している。プラスチックは、粒状体20の主材料であってもよいし、主材料でなくてもよい。かかるプラスチックとしては、例えば、通常のプラスチックの他にも、塩ビ壁紙由来のプラスチック(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生するプラスチック)、又は衛生用品由来のプラスチック(プラスチックを含む衛生用品の製造時又は分級時に発生するプラスチック)を用いることができる。プラスチックを含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生マスクが挙げられる。
【0020】
図3は、粒状体30を示す斜視図である。粒状体30は、柱状をしている。本実施形態において粒状体30は、略円柱状をしている。粒状体30は、有機物を主材料とすることが好ましい。ここで、粒状体30の主材料とは、粒状体30を構成する材料のうち、当該粒状体30に占める重量割合が最大のものをいう。粒状体30は、有機物のみからなっていてもよいし、有機物及び無機物からなっていてもよい。粒状体30は、プラスチックを含んでいる。粒状体30は、粒状体20と同一組成の材料からなっている。
【0021】
図4及び図5は、それぞれ、本発明による排泄物処理材の製造装置の一実施形態を示す平面図及び底面図である。また、図6は、図4のVI-VI線に沿った端面図である。製造装置1は、上述の排泄物処理材6を製造する装置であって、造粒機10を備えている。造粒機10は、造粒材料(粒状体20,30を構成する材料)を押出造粒することにより、複数の粒状体(粒状体20,30)を形成する押出造粒機である。造粒材料は、プラスチックを含んでいる。造粒材料は、有機物を主材料とすることが好ましく、有機物のみからなることが特に好ましい。ここで、造粒材料の主材料とは、造粒材料に含まれる材料のうち、当該造粒材料に占める重量割合が最大のものをいう。
【0022】
造粒機10は、ダイス12、ローラー14、及びカッター16を有している。ダイス12は、平面視で円形をしている。ダイス12の厚みは、均一である。ダイス12には、造粒材料を通過させる複数の貫通孔13が設けられている。以下の記述において「複数の貫通孔13」は、別段の断りがない限り、ダイス12に設けられた全ての貫通孔13を指すものとする。複数の貫通孔13は、互いに等しい長さを有している。複数の貫通孔13は、ダイス12の表面の略全体にわたって点在している。各貫通孔13の断面(ダイス12の厚み方向に垂直な断面)の形状は、円形である。また、ダイス12の厚み方向について、各貫通孔13の径は一定である。すなわち、各貫通孔13は、円柱状の空間からなる。
【0023】
ダイス12は、押出造粒時に第1の温度を有する部分12a(第1の部分)、及び押出造粒時に第2の温度を有する部分12b(第2の部分)を含んでいる。第1の温度は、造粒材料に含まれるプラスチックの融点以上である。第2の温度は、当該融点未満である。融点が異なる2種類以上のプラスチックが造粒材料に含まれる場合、第1の温度は最も低い融点を有するプラスチックの融点以上であればよく、第2の温度は当該プラスチックの融点未満であればよい。プラスチックの融点をM℃としたとき、第1の温度、及び第2の温度は、それぞれ、(M+5)℃以上、及び(M-5)℃以下であることが好ましく、(M+10)℃以上、及び(M-10)℃以下であることがより好ましい。なお、ダイス12の温度は、貫通孔13の内面において計測するものとする。押出造粒時、ダイス12は、部分12aの温度(第1の温度)がプラスチックの融点以上になるとともに、部分12bの温度(第2の温度)が当該融点未満になるように制御される。かかる温度制御は、例えば、部分12aを加熱するヒーターと部分12bを加熱するヒーターとを別々に設けることにより行うことができる。各部分12a,12bの加熱は、誘導加熱により行ってもよい。
【0024】
本実施形態においては、部分12aが部分12bの内側に位置している。すなわち、部分12aの方が、部分12bよりも、後述する回転軸15の近くに位置している。平面視で、部分12aは円板状の領域であり、部分12bは円環状の領域である。部分12aと部分12bとの境界には、断熱材18が設けられている。すなわち、部分12aと部分12bとは、断熱材18によって分断されている。断熱材18は、筒状に設けられており、ダイス12の表面(造粒材料の入口側の面)から裏面(造粒材料の出口側の面)まで延びている。断熱材18の材料としては、例えば、第1の温度よりも充分に高い融点を有するプラスチックを用いることができる。
【0025】
複数の貫通孔13は、貫通孔13a(第1の貫通孔)、及び貫通孔13b(第2の貫通孔)を含んでいる。貫通孔13a及び貫通孔13bは、それぞれ、ダイス12の部分12a及び部分12bに存在する。貫通孔13aの径は、貫通孔13bの径に等しい。本実施形態において複数の貫通孔13は、貫通孔13a及び貫通孔13bのみからなる。ダイス12に設けられた貫通孔13aの個数は、ダイス12に設けられた貫通孔13a及び貫通孔13bの個数の合計の30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。
【0026】
ダイス12の表面側には、ローラー14が設けられている。ローラー14は、円柱状をしており、その中心軸がダイス12の径方向に延びている。本実施形態においては、複数(具体的には4つ)のローラー14が設けられている。各ローラー14の一端は、ダイス12の表面の中心部に位置する回転軸15に連結されている。回転軸15は、その中心軸の周りに回転(自転)するように構成されている。各ローラー14は、その中心軸の周りに回転(自転)しつつ、回転軸15の周りに回転(公転)する。このように、ローラー14は、回転軸15の周りに公転しながら造粒材料を各貫通孔13に押し込む。ローラー14は、ダイス12に設けられた全ての貫通孔13の入口上を通過することが可能である。
【0027】
ダイス12の裏面側には、カッター16が設けられている。カッター16は、ダイス12の裏面の中心部からダイス12の径方向に延びている。カッター16は、ダイス12の裏面に沿って回転しながら、各貫通孔13から押し出された造粒材料を切断する。詳細には、カッター16は、ダイス12の裏面に平行な面内で、ダイス12の中心部を軸として回転運動をする。なお、カッター16は、ローラー14とは独立して回転できるように構成されている。カッター16は、ダイス12に設けられた全ての貫通孔13の出口上を通過することが可能である。
【0028】
続いて、製造装置1の動作と併せて、本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態を説明する。この製造方法は、造粒工程を含むものである。造粒工程は、造粒機10を用いて造粒材料を押出造粒することにより、複数の粒状体(粒状体20,30)を形成する工程である。造粒に先立って、造粒材料には、粉砕、混練、加水等の前処理が必要に応じて行われる。
【0029】
造粒工程においては、図7に示すように、ダイス12の表面側に供給された造粒材料M1が、ダイス12の表面上を転動するローラー14によって貫通孔13に押し込まれる。このとき、ダイス12は、上述のとおり、部分12aの温度がプラスチックの融点以上になるとともに部分12bの温度が当該融点未満になるように制御される。具体的には、造粒材料が通過する直前において、貫通孔13aの内面の温度がプラスチックの融点以上になるとともに貫通孔13bの内面の温度が当該融点未満になるように制御される。貫通孔13に押し込まれた造粒材料M1は、ダイス12の裏面側から押し出される。造粒材料M1が押し出される際、ダイス12の裏面側では、カッター16が回転し続けている。これにより、貫通孔13から押し出された造粒材料M1は、図8に示すように、カッター16によって切断される。このようにして形成される造粒物が、粒状体20又は粒状体30となる。その後、篩分け、乾燥等の後処理が必要に応じて行われる。以上により、粒状体20と粒状体30とが混在した排泄物処理材6が得られる。
【0030】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、ダイス12に、プラスチックの融点以上の温度(第1の温度)を有する部分12aと、プラスチックの融点未満の温度(第2の温度)を有する部分12bとが含まれている。この場合、部分12aに存在する貫通孔13aを通過する造粒材料においてはプラスチックの融解が起こる一方、部分12bに存在する貫通孔13bを通過する造粒材料においてはプラスチックの融解が起こらない。融解したプラスチックは、造粒材料内の空隙に入り込んで当該空隙を塞ぐ。かかる空隙は、造粒物の内部に尿等の液体が浸入する経路となるものである。これにより、貫通孔13aを通過した造粒材料から疎水性の粒状体20を得るとともに、貫通孔13bを通過した造粒材料から吸水性の粒状体30を得ることが可能となる。このため、押出造粒後に混合工程を実行しなくても、疎水性の粒状体20と吸水性の粒状体30とが混在した排泄物処理材6を得ることができる。したがって、製造工程の複雑化を招くことなく、疎水性の粒状体20と吸水性の粒状体30とが混在した排泄物処理材6を得ることが可能な排泄物処理材の製造方法及び製造装置1が実現されている。
【0031】
第1の温度を高くした方が、貫通孔13aを通過する造粒材料に含まれるプラスチックを確実に融解させるようにするのに有利である。かかる観点から、第1の温度は、(M+5)℃以上であることが好ましく、(M+10)℃以上であることがより好ましい。他方、第1の温度が高すぎると、貫通孔13aを通過する造粒材料の造粒に支障が生じかねない。かかる観点から、第1の温度は、(M+30)℃以下であることが好ましい。
【0032】
第2の温度を低くした方が、貫通孔13bを通過する造粒材料に含まれるプラスチックを確実に融解させないようにするのに有利である。かかる観点から、第2の温度は、(M-5)℃以下であることが好ましく、(M-10)℃以下であることがより好ましい。他方、第2の温度が低すぎると、貫通孔13bを通過する造粒材料の造粒に支障が生じかねない。かかる観点から、第2の温度は、(M-30)℃以上であることが好ましい。
【0033】
粒状体20と粒状体30とがバランス良く混合された排泄物処理材6を得る観点から、貫通孔13aの個数は、貫通孔13a及び貫通孔13bの個数の合計の30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。
【0034】
貫通孔13aの径は、貫通孔13bの径に等しい。この場合、粒状体20及び粒状体30は形状及び大きさが互いに略等しくなるため、排泄物処理材6全体の美観を高めることができる。
【0035】
複数の貫通孔13は、貫通孔13a及び貫通孔13bのみからなる。このように2種類の貫通孔13a,13bに限ることにより、ダイス12ひいては製造装置1の構造を徒に複雑化させることなく、性質の異なる粒状体20,30が混在した排泄物処理材6を得ることができる。
【0036】
ところで、造粒機10においては、回転軸15の周りに公転するローラー14によって、造粒材料が貫通孔13に押し込まれる。かかる構成の場合、回転軸15から遠ざかるにつれて、ローラー14が造粒材料を押し込む力が弱くなる。それゆえ、回転軸15に比較的近い貫通孔13を通過する造粒材料には比較的高い圧力が加わり、回転軸15から比較的遠い貫通孔13を通過する造粒材料には比較的低い圧力が加わることになる。造粒材料に加わる圧力が高いほど、造粒物内に空隙が生じにくくなるため、形成される粒状体の液通過率が大きくなる。それゆえ、貫通孔13aが存在する部分12aを、貫通孔13bが存在する部分12bよりも回転軸15の近くに配置することにより、貫通孔13a及び貫通孔13bを通過した造粒材料からそれぞれ疎水性の粒状体20及び吸水性の粒状体30を得やすくなる。
【0037】
造粒材料が有機物を主材料とする場合、焼却処分に適した粒状体20,30を得ることができる。このことは、使用済みの粒状体20,30の処分の便宜に資する。特に造粒材料が有機物のみからなる場合、焼却処分に一層適した粒状体20,30を得ることができる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、貫通孔13aの径が貫通孔13bの径に等しい場合を例示した。しかし、貫通孔13aの径は、貫通孔13bの径より小さくてもよい。貫通孔13の径が小さくなる程、貫通孔13を通過する造粒材料に加わる圧力が高くなる。それゆえ、貫通孔13aの径を貫通孔13bの径より小さくすることにより、貫通孔13a及び貫通孔13bを通過した造粒材料からそれぞれ疎水性の粒状体20及び吸水性の粒状体30を得やすくなる。
【0039】
上記実施形態においては、貫通孔13の断面形状が円形である場合を例示した。しかし、貫通孔13の断面形状は、任意であり、例えば、楕円形、多角形等であってもよい。貫通孔13の断面形状が円形でない場合、貫通孔13の径は、当該断面を内包し得る最小の円の直径として定義される。
【0040】
上記実施形態においては、ダイス12の厚み方向について各貫通孔13の径が一定である場合を例示した。しかし、各貫通孔13の径は、一定でなくてもよい。例えば、各貫通孔13の径は、ダイス12の表面から裏面に向かうにつれて次第に小さくなってもよい。このように各貫通孔13の径が一定でない場合、貫通孔13aの径と貫通孔13bの径との大小関係は、ダイス12の裏面における貫通孔13aの径と貫通孔13bの径とを比較することにより判定するものとする。
【0041】
上記実施形態においては、第1の温度を有する部分12aが第2の温度を有する部分12bの内側に位置する場合を例示した。しかし、部分12bが部分12aの内側に位置するようにしてもよい。
【0042】
上記実施形態においては、造粒機10にローラー14が設けられた場合を例示した。しかし、造粒機10には、ローラー14が設けられていなくてもよい。その場合、ローラー14以外の公知の手段によって、造粒材料を各貫通孔13に押し込めばよい。
【0043】
上記実施形態においては、造粒機10にカッター16が設けられた場合を例示した。しかし、造粒機10には、カッター16が設けられていなくてもよい。その場合、カッター16以外の公知の手段によって、各貫通孔13から押し出された造粒材料を切断すればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 製造装置
6 排泄物処理材
10 造粒機
12 ダイス
12a 部分(第1の部分)
12b 部分(第2の部分)
13 貫通孔
13a 貫通孔(第1の貫通孔)
13b 貫通孔(第2の貫通孔)
14 ローラー
15 回転軸
16 カッター
18 断熱材
20 粒状体
30 粒状体
M1 造粒材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8